説明

画像形成装置

【課題】像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域に作用する現像電界に起因するキャリアへの誘導電荷注入を抑制し、良質な画像を形成することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】金属製スリーブ102表面には、現像剤担持体13に保持された二成分現像剤12が現像剤担持体13と対向している像担持体14と接触する領域である現像ニップ部での磁性キャリア10の体積抵抗値よりも、大きい体積抵抗値の抵抗層103が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された静電潜像を、現像剤担持体上に保持された二成分現像剤のトナーにより現像、可視像化する電子写真技術を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザープリンタや複写機などの電子写真技術を利用した画像出力機器に関して、像担持体上に形成された静電潜像を現像し可視像を形成するための現像剤として、トナーとキャリアとから成る二成分現像剤と、トナー単体から成る一成分現像剤とが用いられてきた。これらのうち、二成分現像剤を用いた磁気ブラシ現像方式は、他の現像方式と比較して画質の面で優れており、カラー化も可能で、比較的安価であるため、これまでに幅広く利用されてきた。
【0003】
従来の磁気ブラシ現像方式を用いた画像形成装置には、円筒形状の金属スリーブと、その内部に備えられた磁界発生手段である永久磁石がN極とS極と交互に配設されたマグネットローラとで構成される現像剤担持体が備えられている。この現像剤担持体の金属スリーブ表面に二成分現像剤を担持させ、マグネットローラを固定したまま金属スリーブのみを回転させることで、静電潜像の形成された像担持体と対向する現像領域へ二成分現像剤を搬送することができる。そして、現像剤担持体と像担持体との間に印加された現像電界により、帯電したトナーのみを像担持体に静電付着させ、可視像を形成することができる。
【0004】
ところが、従来の磁気ブラシ現像方式を用いた画像形成装置においては、現像電界により、像担持体に対してトナーのみでなく、キャリアまでもが付着する、所謂キャリア付着が生じる。そして、このキャリア付着が画像欠陥を引き起こすことが大きな問題となっている。具体的には、画像領域に対しては白抜けによる画像欠陥を引き起こす。また、非画像領域に対しては、現像剤担持体上でキャリアに付着していたトナーも合わせて付着するため、画像カブリを引き起こす。特に近年では高画質化の要求に応えるために、トナーの小粒径化が進んでおり、合わせてキャリアも小粒径化される傾向にある。このキャリアの小粒径化に伴って、現像剤担持体へのキャリアの磁気拘束力が小さくなるため、キャリア付着に対する対策が益々必要性を増してきている。
【0005】
この様なキャリア付着を制御する因子としては、一般的にキャリアの飽和磁化、現像領域に対向する位置でのマグネットローラの磁束密度などに依存する現像剤担持体に対するキャリアの磁気拘束力や、トナーや現像剤担持体との摩擦に起因するキャリアのチャージアップ等が挙げられる。キャリア付着の抑制に向けて、磁気拘束力やキャリアのチャージアップ等の制御因子に係わる多種多様な改善策が試みられている。
【0006】
例えば、特許文献1では、非磁性の金属スリーブ表面に磁性材料であるマルテンサイト系ステンレス鋼からなる粗面化された被覆層を設ける技術が開示されている。特許文献1に記載の技術により、現像ロール内部の永久磁石部材の表面から外へ向かう磁束の一部が被覆層内を通過すると共に、粗面化された被覆層の凸部に局部的な誘導磁極を生じる。そのため、キャリアをスリーブに保持する磁気拘束力が増大し、像担持体へのキャリア付着を防止することができる。
【0007】
また、特許文献2では、キャリアの重量平均粒径、キャリアの体積抵抗、マグネットローラの現像極の法線方向の磁束密度、現像スリーブ回転方向に対して現像極下流側の磁極の磁束密度、現像ギャップをそれぞれ規定値とする技術が記載されている。この技術により、キャリア付着を抑制して、高品質の画像を得ることができる。
【0008】
また、特許文献3では、導電性粒子を分散した体積抵抗10Ω・cm以下の樹脂被覆層を設ける技術が開示されている。現像剤担持体とキャリアとの摩擦帯電のため、キャリアがトナーと反対極性に強帯電することにより感光体の非画像部に付着する問題に対し、特許文献3に記載の技術を用いることで、キャリアの摩擦帯電量を減らし、非画像部へのキャリア付着を低減することができる。
【0009】
また、特許文献4には、感光体表層が低抵抗層である場合に起こる、かぶり及び画像濃度の低下を抑制するためであり、キャリア付着の抑制に向けての技術とは目的は異なるが、現像剤担持体表面にめっき層を形成し、現像剤担持体の体積抵抗率σとめっき層の層厚dの積を、1×10−6Ω・cm≦σ×d≦1×10Ω・cmとする技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献5には、スリーブ基体表面に被覆層を有した現像スリーブの体積抵抗率を10Ω・cm以下とし、被覆層は硬化型樹脂、カーボン微粒子、酸化チタン微粒子を含有し、硬化型樹脂の含有量Bと、カーボン微粒子及び酸化チタン微粒子の含有量Pとの重量比が、P:B=1:1.5〜1:3.5の範囲とする技術について開示されている。特許文献5に記載の技術により、高耐久、濃度安定性、ゴーストレスに優れた画像形成を実現することができる。
【0011】
また、特許文献6には、現像スリーブ表面に設けられたサンドブラストの谷間に現像スリーブよりも材料硬度の低い材料からなる軟質表面化処理層を形成することで、経時的な現像剤の搬送量の低下を防ぐ技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−26701号公報(1997年1月28日公開)
【特許文献2】特開2003−323050号公報(2003年11月14日公開)
【特許文献3】特開2003−5504号公報(2003年1月8日公開)
【特許文献4】特開2004−37951号公報(2004年2月5日公開)
【特許文献5】特許3297549号(2002年4月12日登録)
【特許文献6】特開2003−330263号公報(2003年11月19日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、像担持体へのキャリア付着は、前述した磁気拘束力やキャリアのチャージアップのみに支配されず、これらに加えて現像領域における実効電界に起因するキャリアの誘導帯電もその要因の一つとなっている。
【0013】
ここで、図9(a),(b)を用いて誘導帯電現象について説明する。図9(a)に示すように、キャリア(磁性キャリア)10およびトナー11から成る二成分現像剤12は、現像領域にて図示しないマグネットローラが内部に配設された現像剤担持体13の金属製スリーブ13表面にて磁気ブラシを形成して像担持体14と接している。ここで金属製スリーブ13に印加する直流バイアス電圧を−400V、像担持体14の金属基体を接地した場合、画像部においては、像担持体14表面の帯電電荷はキャンセルされているため表面電位は0Vである。そして、現像ニップ部にて形成される電界により、磁気ブラシ先端部のキャリア10に負の誘導電荷が現像スリーブ側より注入される。この誘導電荷により、磁気ブラシ先端部のキャリア10には像担持体14へと移行する方向にクーロン力が働き、これが現像剤担持体に対する磁気拘束力に打ち勝った場合には、像担持体14へのキャリア付着を引き起こし、白抜け画像を発生させる。一方、非画像部においては、図9(b)に示すように、像担持体14表面の負の帯電電荷は残存しており、表面電位を−600Vとすると、現像ニップ部にて形成される電界により、磁気ブラシ先端部のキャリア10には正の誘導電荷が金属製スリーブ13側より注入される。この誘導電荷により、画像部と同様に、磁気ブラシ先端部のキャリア10には像担持体14へと移行する方向にクーロン力が働き、これが現像剤担持体に対する磁気拘束力に打ち勝った場合には像担持体14へのキャリア付着を引き起こし、トナー11も引き連れて行くことから画像カブリを発生させる。
【0014】
図10は、像担持体に対するA4用紙一枚あたりのキャリア付着個数の現像バイアス依存を示したものである。ここで現像バイアスとは、像担持体の表面電位をVOPC、現像剤担持体の現像スリーブに印加された電圧をVdevとした場合に、VOPC−Vdevで表される値である。つまり正バイアス領域は画像領域(黒ベタ画像領域)を、負バイアス領域は非画像領域(背景領域)をそれぞれ示している。本図において、実線はキャリアのみでのキャリア付着個数を、破線はキャリアとトナーとが混在した二成分現像剤でのキャリア付着個数を示している。図10より判るように、キャリアのみにおいても、キャリアとトナーが混在した状態においてもキャリア付着が生じている。また画像領域、非画像領域共にキャリア付着が見られることから、上述した通り、キャリアは正負両極性に誘導帯電していることが判る。ここで、キャリアのみの場合に比べキャリアとトナーが混在した場合の方がキャリア付着量が減少しているのは、トナーの体積抵抗率の方がキャリアの体積抵抗率よりも高いため、トナーの混在により現像剤体全体としての抵抗値が上昇し、誘導帯電が起こり難い系となっているためである。
【0015】
以上に説明したように、像担持体へのキャリア付着の一因として、現像電界によるキャリアの誘導帯電現象が挙げられ、換言すれば、キャリア付着を軽減するには誘導帯電を誘発し難いシステムを構築する必要がある。
【0016】
以上の現象を踏まえると、特許文献1の技術では、局部的に現像スリーブ表面の磁束密度が増加し、現像スリーブに対するキャリアの磁気拘束力を向上できるが、キャリアの誘導帯電現象を防ぐことはできない。そのため、磁気拘束力に対して誘導帯電によるクーロン力が勝った場合には、像担持体へのキャリア付着が発生する。また、キャリアの磁気拘束力を増加させることにより磁気ブラシの硬さが増加する。そのため、現像画像に対する掃けスジを引き起こしたり、像担持体とのストレスが増大してキャリアや像担持体のライフが短くなったりするといった問題が生じる。
【0017】
また、特許文献2に記載の技術では、特許文献1の技術と同様に磁気拘束力は増加できるが、誘導帯電現象を防止できない。そのため、キャリア付着を誘発すると共に、現像画像に対する掃けスジや、キャリアや像担持体のライフ短縮を引き起こす。
【0018】
また、特許文献3の技術では、現像スリーブ表面に低抵抗の被覆層を設けることにより、キャリアのチャージアップに起因するキャリア付着は防止できる。しかし、低抵抗ゆえにキャリアへの誘導電荷の注入は防止できず、キャリア付着を招くこととなる。
【0019】
また、特許文献4の技術では、現像剤担持体の体積抵抗率σとめっき層の層厚dとの積を、1×10−6Ω・cm≦σ×d≦1×10Ω・cmとしているが、従属項に記載のめっき層厚1〜25μmから導出される体積抵抗率σの範囲は、4×10−4Ω・cm≦σ≦1×10Ω・cmと低抵抗であり、誘導電荷はめっき層を通過してキャリアに流れ込みやすく、キャリア付着を発生させる懸念がある。
【0020】
また、特許文献5,6の技術でもキャリアの誘導帯電現象を防ぐことはできない。
【0021】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域に作用する現像電界に起因するキャリアへの誘導電荷注入を抑制することのできる画像形成装置を実現することにある。さらに、キャリアへの誘導電荷注入を抑制することで、像担持体へのキャリア付着を低減させ、現像画像に対する掃けスジや、キャリアや像担持体のライフ短縮を誘発することなく、画像抜けや画像カブリの無い、極めて良質な画像を形成することのできる画像形成装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る画像形成装置は、上記課題を解決するために、内部に磁界発生手段が配置され、回転可能な非磁性のスリーブを備えた現像剤担持体の表面に、磁性キャリアと非磁性トナーとを含む現像剤を保持させ、当該現像剤により像担持体表面に形成された静電潜像を顕像化する画像形成装置において、上記スリーブ表面には、上記現像剤担持体に保持された上記現像剤が上記現像剤担持体と対向している上記像担持体と接触する領域である現像ニップ部での上記磁性キャリアの体積抵抗値よりも、大きい体積抵抗値の抵抗層が設けられていることを特徴としている。
【0023】
上記構成によると、現像剤担持体におけるスリーブの表面に、現像ニップ部での磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きい体積抵抗値を有する抵抗層を設けることで、像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域において誘導帯電が起こるのを妨げることができる。よって、像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域に作用する現像電界に起因する、現像剤担持体からの磁性キャリアへの誘導電荷注入を抑制することができる。磁性キャリアへの誘導電荷注入を抑制することができるので、像担持体へのキャリア付着を低減させることができる。キャリア付着を低減させることができるので、画像抜けや画像カブリの無い極めて良質な画像を形成することができる。また、従来技術のように磁気拘束力を増加させているのではないため、現像画像に対する掃けスジや、キャリアや像担持体のライフ短縮を誘発することなく、高品質な画像を形成することができる。
【0024】
また、本発明に係る画像形成装置では、上記構成に加え、上記磁性キャリアは、上記現像ニップ部において100Vの直流電圧印加の下で計測される動的抵抗値から求められる体積抵抗率が、2.2×1010Ω・cm以上であることが好ましい。
【0025】
上記構成によると、体積抵抗率が2.2×1010Ω・cm以上のキャリアを用いることで、現像剤担持体からの誘導電荷の注入を、確実に抑制することができる。よって、像担持体へのキャリア付着をより低減させることができ、より高品質な画像を形成することができる。
【0026】
また、本発明に係る画像形成装置では、上記構成に加え、上記磁性キャリアは、帯電防止加工が施されていてもよい。
【0027】
上記構成によると、磁性キャリアに帯電防止加工が施されていることで、磁性キャリアのチャージアップを抑制することができる。よって、像担持体へのキャリア付着をさらに軽減することができる。
【0028】
なお、磁性キャリアにおける帯電防止加工として、磁性キャリアの表面に帯電防止効果を有する界面活性剤を分散させたコーティング層を形成してもよい。この場合、界面活性剤は、磁性キャリア表面の全面に亘って均一に分散させるのが好ましい。ここで、チャージアップを防ぐためには導電性粒子を分散させる方法も考えられる。しかし、導電性粒子を用いると、粒子の含有量に比例してキャリア粒子の抵抗値は急激に低下するため、誘導帯電現象を促進させることとなる。つまり、チャージアップの抑制と誘導帯電の防止とはトレードオフの関係となる。これに対して、帯電防止効果を有する界面活性剤を用いると、同一導入量に対する抵抗値の減少が、導電性粒子に比べて抑えられ、比較的高い抵抗値を維持したまま発生した電荷を漏洩させるという特徴を持つ。そのため、チャージアップの抑制と誘導帯電の防止とを両立できる。よって、帯電防止効果を有する界面活性剤を用いることで、帯電防止効果を有する界面活性剤を使用することにより、抵抗値をさほど低下させること無く、キャリアのチャージアップを抑制することができ、画質劣化を防止することができる。
【0029】
また、本発明に係る画像形成装置では、上記構成に加え、上記抵抗層は、帯電防止加工が施されていてもよい。
【0030】
上記構成によると、抵抗層に帯電防止加工が施されていることで、磁性キャリアのチャージアップを抑制できすることができ、像担持体への磁性キャリア付着を防止することができる。さらに抵抗層のチャージアップを抑制できるため、現像電界の低下防止と電界均一性の確保とが可能となる。
【0031】
なお、抵抗層における帯電防止加工として、抵抗層に帯電防止効果を有する界面活性剤が分散されていてもよい。この場合、界面活性剤は、抵抗層の全面に亘って均一に分散させるのが好ましい。ここで、分散粒子として導電性粒子ではなく帯電防止効果を有する界面活性剤を用いるのは、抵抗値をさほど低下させること無く、磁性キャリアのチャージアップを抑制できるためである。
【0032】
また、本発明に係る画像形成装置では、上記構成に加え、上記抵抗層は、体積抵抗値が上記現像ニップ部での磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくなるような体積抵抗率の高い材料からなっていてもよい。
【0033】
ここで、体積抵抗値Rは、体積抵抗率ρ、接触面積S、抵抗層の層厚(抵抗層厚み)lから、R=ρ×l/Sにて表される。よって、体積抵抗値Rを大きくするには、(1)体積抵抗率ρを大きくする、(2)接触面積を小さくする、(3)抵抗層の層厚を大きくする、のいずれかで行うことができる。ここで接触面積は、画像形成装置の仕様である程度決まるため制御が難しい。よって、体積抵抗率あるいは抵抗層の層厚にて制御するのが好ましい。ここで、上記構成の画像形成装置では、抵抗層は、体積抵抗値が現像ニップ部の磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくなるような体積抵抗率の高い材料からなっていている。そのため、上記構成によれば、体積抵抗値が現像ニップ部の磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくする際に、抵抗層の層厚を大きくする必要がないため、抵抗層を構成する材料コストや現像剤担持体の製造コストを抑えることができる。
【0034】
また、本発明に係る画像形成装置では、上記構成に加え、上記抵抗層の層厚は、当該抵抗層の体積抵抗値が上記現像ニップ部での磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくなるような層厚であってもよい。
【0035】
上記構成では、抵抗層の層厚は、当該抵抗層の体積抵抗値が現像ニップ部の磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくなるような層厚になっていている。そのため、上記構成によると、体積抵抗値が現像ニップ部の磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくする際に、抵抗層を構成する材料の選択性を広げることができる。そして、抵抗層の材料として、帯電序列において磁性キャリア表層の母材に近い材料を選択すると、チャージアップの影響を受けにくく、安定した現像電界を得ることができる。
【0036】
また、本発明に係る画像形成装置では、上記構成に加え、上記抵抗層は、上記磁性キャリア表面の母材と同一の材料を含有していてもよい。
【0037】
ここで、磁性キャリア表面の母材とは、磁性キャリア表面に含まれる材料のうち、最も含有量の多い材料であるとする。上記構成によれば、現像剤担持体の表面の抵抗層には、磁性キャリア表面の母材と同一の材料が含まれているので、現像剤担持体と磁性キャリア表面との摩擦帯電を抑制することができる。よって、現像剤担持体表面と磁性キャリア表面におけるチャージアップを減少させることができるため、現像電界の変動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る画像形成装置は、以上のように、上記スリーブ表面には、上記現像剤担持体に保持された上記現像剤が上記現像剤担持体と対向している上記像担持体と接触する領域である現像ニップ部での上記磁性キャリアの体積抵抗値よりも、大きい体積抵抗値の抵抗層が設けられていることを特徴としている。
【0039】
上記構成によると、現像剤担持体におけるスリーブの表面に、現像ニップ部での磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きい体積抵抗値を有する抵抗層を設けることで、像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域において誘導帯電が起こるのを妨げることができる。よって、像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域に作用する現像電界に起因する、現像剤担持体からのキャリアへの誘導電荷注入を抑制することができる。磁性キャリアへの誘導電荷注入を抑制することができるので、像担持体への磁性キャリア付着を低減させることができる。磁性キャリア付着を低減させることができるので、画像抜けや画像カブリの無い極めて良質な画像を形成することができる。また、従来技術のように磁気拘束力を増加させているのではないため、現像画像に対する掃けスジや、磁性キャリアや像担持体のライフ短縮を誘発することなく、高品質な画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の実施の形態について、図1〜図8に基づいて説明すると以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
図2は、本実施形態の画像形成装置1の主要な構成の概要を示す模式図である。図2に示すように、画像形成装置1では、現像槽30の内部に予め投入された磁性キャリアと非磁性トナーとから成る二成分現像剤(現像剤)12が攪拌スクリュー31により攪拌・帯電される。そして、二成分現像剤12は、内部に磁界発生手段であるマグネットローラを配設した現像剤担持体13に搬送されることで、現像剤担持体13表面に磁気拘束力により保持される。次に、現像剤担持体13表面に保持された二成分現像剤12は、層規制ブレード32により一定層厚に規制され、現像剤担持体13と像担持体14との対向部において磁気ブラシを形成し、図示しない露光手段により像担持体14の表面に形成された静電潜像にトナーのみを付着させることにより可視像を形成する。また、図1に示すように、現像剤担持体13が備えるマグネットローラ100は固定部材、金属製スリーブ102は回転体なので、現像剤担持体13には、摺擦回避のために空隙101が設けられている。
【0042】
また、画像形成装置1において、現像剤担持体13の内部に配設されたマグネットローラは計5極で構成され、そのうち現像剤担持体13と像担持体14とが対向する現像領域に位置する磁極の法線方向の磁束密度は110[mT]であるとする。これらの数値は単なる例であり、これらに限定されることはない。また、現像領域における現像剤担持体13と像担持体14とのギャップは、本実験例では、0.45[mm]に設定されている。もちろん、これも単なる例示でありこの数値に限定されることはない。
【0043】
ここで、図1に示すように、現像剤担持体13の金属製スリーブ(非磁性のスリーブ)102の表層には抵抗層103が形成されている。この抵抗層103の体積抵抗値は、現像ニップ部(現像剤担持体13に保持された二成分現像剤12が現像剤担持体13と対向している像担持体14と接触する領域)での磁性キャリア10の体積抵抗値よりも、大きい体積抵抗値となっている。
【0044】
このように、画像形成装置1では、現像剤担持体13における金属製スリーブ102の表面に、現像ニップ部での磁性キャリア10の体積抵抗値よりも大きい体積抵抗値を有する抵抗層を設けることで、像担持体14と現像剤担持体13とが対向する現像領域において誘導帯電が起こるのを妨げることができる。よって、像担持体14と現像剤担持体13とが対向する現像領域に作用する現像電界に起因する、現像剤担持体13からの磁性キャリア10への誘導電荷注入を抑制することができる。磁性キャリアへの誘導電荷注入を抑制することができるので、画像形成装置1では、像担持体14へのキャリア付着を低減させることができる。よって、画像形成装置1では、キャリア付着を低減させることができるので、画像抜けや画像カブリの無い極めて良質な画像を形成することができる。また、画像形成装置1は、従来の画像形成装置のように磁気拘束力を増加させているのではないため、現像画像に対する掃けスジや、キャリアや像担持体のライフ短縮を誘発することなく、高品質な画像を形成することができる。
【0045】
また、抵抗層103は、帯電防止加工が施されていてもよい。この帯電防止加工としては、図1に示すように、現像剤担持体13上の金属製スリーブ102の表層に形成する抵抗層103には、帯電防止効果を有する界面活性剤104を均一に分散させてもよい。あるいは、帯電防止加工としては、界面活性剤を用いた帯電防止コーティングを施すことが望ましい。ここで、分散粒子として導電性粒子ではなく帯電防止効果を有する界面活性剤を用いるのは、抵抗値をさほど低下させること無く、磁性キャリア10のチャージアップを抑制できるためである。
【0046】
上記のように、抵抗層103に帯電防止加工が施されていることで、磁性キャリア10のチャージアップを抑制することができ、像担持体への磁性キャリア付着を防止することができる。さらに抵抗層103のチャージアップを抑制できるため、現像電界の低下防止と電界均一性の確保とが可能となる。
【0047】
次に、抵抗層103の体積抵抗値を、磁性キャリアの現像ニップ部における体積抵抗値
よりも大きくする手段について考える。体積抵抗値R[Ω]は、体積抵抗率ρ[Ω・cm]、接触面積S[cm]、および抵抗層の層厚l[cm]から、R=ρ・l/Sにより求められる。ここで接触面積は、画像形成装置の仕様である程度決まるため制御が難しい。よって、体積抵抗値は、接触面積Sを除く、抵抗層の体積抵抗率ρおよび層厚lにて制御することができる。
【0048】
まず、体積抵抗率ρにより体積抵抗値Rを制御する場合、抵抗層103として、体積抵抗値が現像ニップ部での磁性キャリア10の体積抵抗値よりも大きくなるような、体積抵抗率の高い材料を用いればよい。このような体積抵抗値の高い材料を用いることで、抵抗層103の層厚を必要以上に大きくする必要がない。そのため、抵抗層103を構成する材料コストや現像剤担持体13の製造コストを抑えることができる。
【0049】
次に、抵抗層の層厚lにより体積抵抗値Rを制御する場合では、抵抗層103を構成する材料の選択性が広がり、帯電序列において磁性キャリア10表層の母材に近い材料を選択できる。そのため、チャージアップの影響を受けにくく、安定した現像電界を得ることができる。
【0050】
また、金属製スリーブ102表層に形成する抵抗層103には、磁性キャリアのコーティング層に含まれる材料のうち、最も含有量の多い母材と同一の材料を含んでいることが望ましい。なぜなら、キャリアのコーティング層と抵抗層との接触摩擦帯電を考慮した場合、互いに同一材料を含んでいる方が帯電電荷は発生し難く、万が一発生したとしてもその発生量は互いに異なる材料を用いた場合と比較して少量であるため、チャージアップの影響を受けにくくなる。つまり、キャリアあるいは抵抗層に帯電電荷が堆積し難く、チャージアップに起因する現像電界の変動に伴う濃度変動や濃度むら、キャリアの帯電による像担持体へのキャリア付着を抑制できる。そのため、良質な画像を形成することができる。
【0051】
また、本実施形態の画像形成装置1に用いられる磁性キャリア10に関しては、図3に示す様に、磁性キャリア10のコア90表面に、帯電防止効果を有する界面活性剤91を分散させたコーティング層92を設けてもよい。もしくは、界面活性剤を用いた帯電防止コーティングを施してもよい。ここで用いる界面活性剤としては、優れた帯電防止効果を有する陽イオン系界面活性剤が好ましい。具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩やモノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。しかしこれらに限定されることはない。
【0052】
ここで、チャージアップを防ぐためには導電性粒子を分散させる方法も考えられる。しかし、導電性粒子を用いると、粒子の含有量に比例してキャリア粒子の抵抗値は急激に低下するため、誘導帯電現象を促進させることとなる。つまり、チャージアップの抑制と誘導帯電の防止とはトレードオフの関係となる。これに対して、帯電防止効果を有する界面活性剤は、同一導入量に対する抵抗値の減少が、導電性粒子に比べて抑えられ、比較的高い抵抗値を維持したまま発生した電荷を漏洩させるという特徴を持つ。そのため、帯電防止効果を有する界面活性剤を用いることで、チャージアップの抑制と誘導帯電の防止とを両立できる。よって、帯電防止効果を有する界面活性剤を用いることで、磁性キャリア10の抵抗値をさほど低下させること無く、磁性キャリア10のチャージアップを抑制することができ、画質劣化を防止することができる。
【0053】
(実験例1)
本実験例では、初めに、磁性キャリアに施されたコーティングによる磁性キャリアへの誘導帯電への影響を検証するため、画像形成装置として、図2を用いて上記で説明した画像形成装置1の構成と同様であるが現像剤担持体13表面に抵抗層103は設けていないものを用いた。
【0054】
ここで、本実験例の画像形成装置において、現像剤担持体13の内部に配設されたマグネットローラは計5極で構成され、そのうち現像剤担持体13と像担持体14とが対向する現像領域に位置する磁極の法線方向の磁束密度は110[mT]であるとする。これらの数値は単なる例であり、これらに限定されることはない。また、現像領域における現像剤担持体13と像担持体14とのギャップは、本実験例では、0.45[mm]に設定されている。もちろん、これも単なる例示でありこの数値に限定されることはない。
【0055】
本実験例では、画像形成装置を用いて、現像槽30にキャリアのみを投入し、現像剤担持体13と像担持体14との間に電位差を設けて互いに回転させた際に、像担持体14に付着したA4用紙一枚当りのキャリア個数を測定した結果を図4に示す。本実験例では、磁性キャリア10として、体積平均粒径55[μm]、飽和磁化65[emu/g]のMgを含有したフェライトキャリアを用い、キャリア表面にコーティング1、コーティング2、コーティング3の異なるコーティングを施したものを用いた。本実験例では、コーティング1〜3の材質は、いずれもシリコーン系樹脂であり、厚みは1μmである。そして、コーティングは浸漬法を用いている。もちろんこれ以外の方法でコーティングされていてもよい。
【0056】
ここで、現像バイアスとは前述したように、像担持体14の表面電位をVOPC、現像剤担持体13の金属製スリーブ102に印加された電圧をVdevとした場合に、VOPC−Vdevで表される値である。つまり正バイアス領域は画像領域(黒ベタ画像領域)を、負バイアス領域は非画像領域(背景領域)をそれぞれ示している。
【0057】
図4を見るとわかるように、まず、コーティング1の磁性キャリアを用いた場合、画像領域、非画像領域共に、バイアス絶対値の増加と共にキャリア付着個数は急激に増加している。これは、誘導帯電現象によるキャリア付着が誘発されているということである。次に、コーティング2の磁性キャリアを用いた場合には、コーティング1の磁性キャリアに比べて画像領域、非画像領域共にキャリア付着個数は大きく減少していることがわかる。特に非画像領域においてはバイアス依存性が極めて小さくなっていることがわかる。また、コーティング3の磁性キャリアを用いた場合には、コーティング2の磁性キャリアに比べて更にキャリア付着個数は減少し、特に画像領域における付着個数が急激に減少していることがわかる。
【0058】
ここで、コーティング1、コーティング2、コーティング3のそれぞれの磁性キャリアに対して体積抵抗率の測定を行い、キャリア付着個数との相関を調べた。体積抵抗率の測定方法を、図5を用いて説明する。図5に示した画像形成装置5を用い、現像槽30にコーティング1〜3の磁性キャリア10のみをそれぞれ投入する。そして、磁性キャリア10を表面に保持した現像剤担持体13と感光層が表面に形成されていないアルミ素管50とを対向させる。次に、現像剤担持体13とアルミ素管50との間に直流電源により電位差Vを設け、アルミ素管50を静止させた状態で現像剤担持体13を回転させた際、磁気ブラシ51を形成した磁性キャリアを介して流れる電流Iを電流計52より読み取る。そして、オームの法則よりキャリアの体積抵抗値Rを求める。ここで、図6に示す通り、現像ニップ部におけるニップ幅をa[cm]、奥行きをb[cm]、現像ギャップをl[cm]とすると、現像ニップ部における磁性キャリア10の体積抵抗率ρ[Ω・cm]は、ρ=R×a×b/lで求められる。
【0059】
上記方法により、コーティング1、コーティング2、コーティング3の各コーティングを施した磁性キャリアの体積抵抗率を測定した結果を図7に示す。ここで、印加電圧とは現像剤担持体13とアルミ素管50との間に設けた電位差Vを指す。図7よりわかるように、体積抵抗値の大小関係は、コーティング1<コーティング2<コーティング3となっている。図4を参照して、キャリア付着個数が最も多いコーティング1の磁性キャリアが最も体積抵抗率が低く、キャリア付着個数が最も少ないコーティング3の磁性キャリアが最も体積抵抗率が高いことがわかる。従って、より体積抵抗率が高い磁性キャリアを用いた方が、誘導帯電による電荷注入を抑制でき、像担持体へのキャリア付着を低減できることがわかる。
【0060】
ここで、キャリア付着個数と体積抵抗率との関係から、コーティング2の磁性キャリア以上の体積抵抗率を有することが、キャリア付着を軽減するために有効である。つまり、コーティング2キャリアにおける100Vの直流電圧印加時での体積抵抗率である、2.2×1010[Ω・cm]以上の体積抵抗率を有することが望ましい。さらにはコーティング3の磁性キャリアの体積抵抗率1.2×1012[Ω・cm]を上回る体積抵抗率を有することがより好ましい。
【0061】
ここで、樹脂材料および厚みが同一なのにコーティング1〜3の磁性キャリアで抵抗値が違うのは、コーティング層の均一性の違いに起因しているものと考えられる。具体的には均一コートされている方が抵抗値は高くなり、従ってコーティング1<コーティング2<コーティング3の順で均一性が高くなっているものと思われる。なお、コーティングの均一性の相違の要因は、分子量の違いや硬化方法の違いに起因しているのではないかと考えられる。
【0062】
(実験例2)
次に、本実験例では、磁性キャリアへの誘導帯電を抑制する手段として、現像剤担持体13からの電荷の流れ込みを抑えるため、現像剤担持体13表面に抵抗層103を設けることによる効果を検証した。なお、本実験例に使用した磁性キャリア10は実験例1の3種のコーティングをそれぞれした磁性キャリアより低い体積抵抗値のものであり、飽和磁化は65[emu/g]、体積平均粒径55[μm]のものを用いた。なお、コーティング材料はシリコーン樹脂で、コーティング厚みは0.5μm、コーティングは浸漬法を用いている。上記実験例1の3種のコーティングをそれぞれした磁性キャリアよりも体積抵抗値が低いのは、コーティング層が薄いためと思われる。
【0063】
また本実験例での検討に用いた検討機は、図5に示した画像形成装置5ではなく、現像剤担持体として下部に磁界発生手段を配したアルミ平板を備え、平板表面に抵抗層として、体積抵抗率1.0×1016[Ω・cm]、厚み40μmの延伸ポリプロピレン(OPP)製フィルムテープを貼り付けたものである。このような現像剤担持体上にキャリア粒子を乗せて磁気ブラシを形成し、円筒形状の感光ドラムに接触させて電位差を与えた際のキャリア付着量を測定した。なお、本検討機における磁界発生手段の法線方向の磁束密度は76[mT]であり、アルミ平板と感光ドラムとのギャップを0.45[mm]とした。
【0064】
キャキャリア付着量の測定の結果を図8に示す。アルミ平板に抵抗層を設けない場合に比べ、抵抗層を設けた方が、画像領域、非画像領域共に、単位面積当りに付着するキャリアの個数を低減できることがわかる。
【0065】
よって、現像剤担持体表面に抵抗層を設けることにより、誘導帯電現象を抑制でき、像担持体へのキャリア付着を低減して、画質の向上が望めることがわかる。
【0066】
上述した検討機において使用したフィルムテープは、体積抵抗率ρ[Ω・cm]から求められる体積抵抗値R[Ω]が、磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きいものを用いたが、磁性キャリアよりも小さい体積抵抗値を有するフィルムテープを用いて同様の検討を行った。その結果、抵抗層を設けない場合と比べてキャリア付着個数に大きな差は無く、キャリア付着低減効果は確認できなかった。従って、現像剤担持体表面に設ける抵抗層としては、磁性キャリアよりも大きな体積抵抗値を有することが望ましいことがわかる。
【0067】
実験1および実験2からわかるように、画像形成装置1において、磁性キャリア10を高抵抗とし、金属製スリーブ102表面に現像ニップ部の磁性キャリア10よりも体積抵抗値が高い抵抗層103を設けることにより、像担持体14へのキャリア付着が軽減されることが判った。しかしながら、これらを高抵抗とすることにより、電荷保持性が向上する故の弊害が生じる恐れがある。つまり、磁性キャリア10の現像剤担持体13や像担持体14やトナー11との相互間における接触摩擦によるチャージアップ、抵抗層103と磁性キャリア10との相互間における接触摩擦によるチャージアップが生じやすく、現像領域における電界変動が発生する懸念がある。これらにより、濃度変動や濃度むら、像担持体へのキャリア付着等を引き起こす可能性があり、良好な画質を得難くなるといった問題が生じる。そこで、磁性キャリア10および抵抗層103の双方に、チャージアップに対する対策を施すのが好ましい。
【0068】
磁性キャリア10に関しては、実施の形態で示したように、図3に示す様に、磁性キャリア10のコア90表面に、帯電防止効果を有する界面活性剤91を分散させたコーティング層92を設ける、もしくは、界面活性剤を用いた帯電防止コーティングを施すことが好ましい。ここで用いる界面活性剤としては、優れた帯電防止効果を有する陽イオン系界面活性剤が好ましく、具体的にはアルキルトリメチルアンモニウム塩やモノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。帯電防止効果を有する界面活性剤は、同一導入量に対する抵抗値の減少が、導電性粒子に比べて抑えられ、比較的高い抵抗値を維持したまま発生した電荷を漏洩させるという特徴を持つ。そのため、チャージアップの抑制と誘導帯電の防止とを両立できる。よって、帯電防止効果を有する界面活性剤を使用することにより、抵抗値をさほど低下させること無く、キャリアのチャージアップを抑制することができ、画質劣化を防止できる。
【0069】
また抵抗層に関しては、実施の形態で示したように、図1に示すように、抵抗層103には、帯電防止効果を有する界面活性剤104を均一に分散させる、もしくは、界面活性剤を用いた帯電防止コーティングを施すことが望ましい。
【0070】
次に、抵抗層103の体積抵抗値を磁性キャリア10の現像ニップ部における体積抵抗値よりも大きくするためには、実施の形態で示したように、一つの方法ととしては、抵抗層103に、体積抵抗値が現像ニップ部での磁性キャリア10の体積抵抗値よりも大きくなるような、体積抵抗率の高い材料を用いればよい。体積抵抗値の高い材料を用いることで、抵抗層103の層厚を必要以上に大きくする必要がないため、抵抗層103を構成する材料コストや現像剤担持体13の製造コストを抑えることができる。他の方法としては、抵抗層の層厚lにより体積抵抗値Rを制御することもできる。この場合、抵抗層103を構成する材料の選択性が広がり、帯電序列において磁性キャリア10表層の母材に近い材料を選択することもできるため、チャージアップの影響を受けにくく、安定した現像電界を得ることができる。
【0071】
また、金属製スリーブ102表層に形成する抵抗層103には、磁性キャリア10のコーティング層に含まれる材料のうち、最も含有量の多い母材と同一の材料を含んできることが望ましい。なぜなら、磁性キャリア10のコーティング層と抵抗層103との接触摩擦帯電を考慮した場合、互いに同一材料を含んでいる方が帯電電荷は発生し難く、万が一発生したとしてもその発生量は互いに異なる材料を用いた場合と比較して少量であるため、チャージアップの影響を受けにくくなるからである。つまりは、磁性キャリア10あるいは抵抗層103に帯電電荷が堆積し難く、チャージアップに起因する現像電界の変動に伴う濃度変動や濃度むら、磁性キャリア10の帯電による像担持体14へのキャリア付着を抑制できるため、良質な画像を得ることができる。
【0072】
本発明は上述した実施形態や各実験例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
また、本発明の画像形成装置は、次のような構成の画像形成装置として表現してもよい。すなわち、内部に磁界発生手段である永久磁石が配置され、前記永久磁石とは独立して回転可能な非磁性の金属製スリーブを備えた現像剤担持体の表面に磁性キャリアと非磁性トナーとで構成される二成分現像剤を保持し、前記二成分現像剤により像担持体表面に形成された静電潜像を顕像化する画像形成装置において、前記磁性キャリアは、前記像担持体と前記現像剤担持体との対向領域において100Vの直流電圧印加の下で計測される動的抵抗値から求められる体積抵抗率が2.2×1010Ω・cm以上であり、かつ前記現像剤担持体には、前記金属製スリーブ表面に対して前記磁性キャリアよりも体積抵抗値の大きい抵抗層を設けている画像形成装置。
【0074】
また、上記画像形成装置は、上記構成に加え、前記磁性キャリアの表面には、全面に亘って均一に帯電防止効果を有する界面活性剤を分散させたコーティング層が表面に形成されている、もしくは、表面に対して全面に亘って均一に帯電防止コーティングが施されていてもよい。
【0075】
また、上記画像形成装置は、上記構成に加え、前記抵抗層には全面に亘って均一に帯電防止効果を有する界面活性剤を分散させる、もしくは、表面に全面に亘って均一に帯電防止コーティングを施してもよい。
【0076】
また、上記画像形成装置は、上記構成に加え、前記抵抗層の体積抵抗値を前記磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくする手段として、前記抵抗層の基材として体積抵抗率の高い材料を用いてもよい。
【0077】
また、上記画像形成装置は、上記構成に加え、前記抵抗層の体積抵抗値を前記磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくする手段として、前記抵抗層の層厚を大きくしてもよい。
【0078】
また、上記画像形成装置は、上記構成に加え、前記抵抗層は、前記磁性キャリア最表層の母材と同一の材料を含有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の画像形成装置は、磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いた電子写真式画像形成システムを適用した、例えば、レーザプリンタや複写機、複合機などに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る画像形成装置における抵抗層を設けた現像剤担持体と磁性キャリアとの構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の主要な構成の概要を示す模式図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置に用いられる磁性キャリアの内部構成の一例を示す概略構成図である。
【図4】同一コアに対して異なるコーティングを施した磁性キャリアについて、像担持体表面におけるA4用紙一枚当りのキャリア付着個数の現像バイアス依存性をそれぞれ測定した結果を示す図である。
【図5】磁性キャリアの体積抵抗率導出に用いた測定系の主要な構成の概要を示す模式図である。
【図6】磁性キャリアの体積抵抗率を導出する過程を説明する際の補足図である。
【図7】同一コアに対して異なるコーティングを施した磁性キャリアについての、体積抵抗率の印加電圧依存性を示す図である。
【図8】現像剤担持体表面に抵抗層を形成した場合と形成しない場合とにおける、それぞれ像担持体表面における単位面積当りのキャリア付着個数の現像バイアス依存性を測定した結果を示す図である。
【図9】従来の二成分現像剤を使用した画像形成装置において、現像剤担持体と像担持体との間に作用する電界によって生じる誘導帯電現象を説明する図である。
【図10】従来の二成分現像剤を使用した画像形成装置を用いた場合の、像担持体表面におけるA4用紙一枚当りのキャリア付着個数の現像バイアス依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
10 磁性キャリア
11 トナー
12 二成分現像剤(現像剤)
13 現像剤担持体
14 像担持体
50 アルミ素管
52 電流計
90 コア
91 帯電防止効果を有する界面活性剤
92 コーティング層
100 マグネットローラ
101 空隙
102 金属製スリーブ
103 抵抗層
104 帯電防止効果を有する界面活性剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に磁界発生手段が配置され、回転可能な非磁性のスリーブを備えた現像剤担持体の表面に、磁性キャリアと非磁性トナーとを含む現像剤を保持させ、当該現像剤により像担持体表面に形成された静電潜像を顕像化する画像形成装置において、
上記スリーブ表面には、上記現像剤担持体に保持された上記現像剤が上記現像剤担持体と対向している上記像担持体と接触する領域である現像ニップ部での上記磁性キャリアの体積抵抗値よりも、大きい体積抵抗値の抵抗層が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記磁性キャリアは、上記現像ニップ部において100Vの直流電圧印加の下で計測される動的抵抗値から求められる体積抵抗率が、2.2×1010Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記磁性キャリアは、帯電防止加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記磁性キャリアの表面に帯電防止効果を有する界面活性剤を分散させたコーティング層が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記抵抗層は、帯電防止加工が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
上記抵抗層は、帯電防止効果を有する界面活性剤が分散されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
上記抵抗層は、体積抵抗値が上記現像ニップ部での磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくなるような体積抵抗率の高い材料からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
上記抵抗層の層厚は、当該抵抗層の体積抵抗値が上記現像ニップ部での磁性キャリアの体積抵抗値よりも大きくなるような層厚であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
上記抵抗層は、上記磁性キャリア表面の母材と同一の材料を含有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−108538(P2007−108538A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300966(P2005−300966)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】