説明

画像形成装置

【課題】白黒画像とフルカラー画像とが混在するジョブに対して、画質低下を招くことなく、最も効率よく画像形成処理を行う。
【解決手段】CWプロセススピードとFCバイアスの組み合わせと、FCプロセススピードとCWバイアスの組み合わせを可能とし、混在ジョブにおいて、1枚目がCWの場合はCWプロセススピードに固定し、1枚目がフルカラー画像の場合はFC用プロセススピードに固定し、バイアスのみ切り換える。プロセススピードを切り換える手間が省け、また、このプロセススピードの切り換えのために、切換直前の記録用紙14の排出を待たなくてもよく、上流側の感光体ドラムから順にバイアスを切り換えることができるため、処理能力(処理速度)を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置では、像担持体としての感光体ドラムを中心として、この感光体ドラムの周面に対向するように帯電部、光走査部、現像部、転写部等が配置されている。
【0003】
すなわち、帯電部へ所定の電圧を印加することによって感光体ドラムの表面を一様に帯電し、光走査部からの光ビームによって静電潜像を形成し、現像部においてトナーを供給して現像する。
【0004】
ここで、フルカラー画像形成装置の場合、各色(CMYK)毎に感光体ドラムを備えている。
【0005】
代表的な構造としての、所謂タンデム型画像形成装置では、感光体ドラムが、無端ループ状で所定のプロセススピードで周回駆動する中間転写ベルトの直線搬送経路上に1列に配列されている。各感光体ドラムには、当該中間転写ベルトを挟んで転写部材が対峙されており、所定の電圧を印加することで、各感光体ドラムに形成されたトナー像は、中間転写ベルト上で重なるように転写される。
【0006】
このフルカラー画像形成装置において、白黒画像をプリンとする場合には、K色専用の感光体ドラム(通常は、最下流側に配設されている)のみを用いて白黒画像を形成する。
【0007】
近年では、白黒画像の生産性を向上するため、上記フルカラー画像形成時と、白黒画像形成時とでは、プロセススピードや、転写部材等への印加電圧を含む画質調整手段(プロセスコントロール)を異ならせ、要求(白黒画像かフルカラー画像か)によって切り換えることがなされている。
【0008】
すなわち、白黒画像とフルカラー画像とでは、転写に必要なバイアスが大きく異なる。色の重ね合わせが必要なフルカラー画像の場合、白黒画像よりも大きなバイアスが必要となる。
【0009】
このため、白黒画像のバイアスでフルカラー画像をプリントすると、転写電圧不足による転写不良が発生する。逆にフルカラー画像のバイアスで白黒画像をプリントすると、電圧過多となり、リトランスファーによる濃度低下や、プラーと呼ばれる細線の飛び散りが悪化する。
【0010】
また、白黒画像とフルカラー画像での違いほどではないが、プロセススピードによっても多少バイアスは変化する。
【0011】
白黒画像とフルカラー画像とをプリント可能な画像形成装置の関連技術としては、以下の特許文献1乃至特許文献4が挙げられる。
【0012】
特許文献1には、白黒画像をフルカラー画像よりもプロセススピードを速くすることが開示されている。
【0013】
また、特許文献2には、白黒画像とフルカラー画像を読取る機能を有し、白黒優先モードとフルカラー優先モードの切り替えスイッチを持つことが開示されている。
【0014】
さらに、特許文献3には、プロセススピード切り換えに要する時間を短縮するべく、白黒用の高速回転する画像形成ユニットと、フルカラー用の画像形成ユニットとを設け、中間転写体のファーストBTRを離間させることで中間転写体のスピードを落とさずに速度変更することが開示されている。
【0015】
また、特許文献4には、白黒画像のときは、中間転写ユニットをフルカラー用の感光体から離間させることが開示されている。
【0016】
ここで、白黒画像とフルカラー画像とが混在するジョブにおいて、既存の画像形成装置では、大きく分けて、以下の2種類の対応をとっている。
【0017】
・ 白黒画像からフルカラー画像への切り換えを1回だけ実行
1枚目の画像が白黒の場合は、白黒のプロセススピードでスタートし、フルカラー画像になると、記録用紙の排出を待ってサイクルダウンし、プロセススピードを切り換えて再スタートする。以後、白黒画像がきても切り換えずに、フルカラー画像設定のままとする。なお、1枚目がフルカラー画像の場合は、フルカラー画像のプロセススピードで全てをプリントする。
【0018】
(2) ユーザが、「白黒モード」を選択したときのみ、白黒画像のプロセススピードを利用する。自動モードの場合には、フルカラー画像のプロセススピードに固定する。
【特許文献1】特開平10−177283号公報
【特許文献2】特開平8−265583号公報
【特許文献3】特開2004−78128公報
【特許文献4】特開2005−99436公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、白黒画像とフルカラー画像とが混在するジョブの対応としての、前記(1)及び(2)では、サイクルダウンによる生産性の大幅低下、フルカラー画像用の設定のまま白黒画像をプリントすることによる画質低下が発生する。
【0020】
本発明は上記事実を考慮し、白黒画像とカラー画像とが混在するジョブに対して、画質低下を招くことなく、最も効率よく画像形成処理を行うことができる画像形成装置を得る事が目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の発明は、記録用紙の搬送方向に沿って配列された複数の像担持体と、それぞれの像担持体と対をなす転写部材と、を有し、所定のプロセススピード、並びに所定の静電プロセスに基づく前記転写部材を含む各行程への印加電圧を設定し、各像担持体に形成されたトナー画像が、前記転写部材から直接、或いは中間転写体への転写工程を介して前記記録用紙へ重ねられて転写されることで、当該記録用紙へ画像を形成する画像形成装置であって、白黒画像形成時とカラー画像形成時とが異なるプロセススピードに設定されており、白黒画像とカラー画像の混在画像を連続して画像形成処理するときに、
1枚目の画像に基づいたプロセススピードで全ての画像形成処理を実行することを特徴としている。
【0022】
第1の発明によれば、画像形成処理装置の構成として、記録用紙の搬送方向に沿って配列された複数の像担持体と、それぞれの像担持体と対をなす転写部材と、を有し、所定のプロセススピード、並びに所定の静電プロセスに基づく前記転写部材を含む各行程への印加電圧を設定し、各像担持体に形成されたトナー画像が、前記転写部材から直接、或いは中間転写体への転写工程を介して前記記録用紙へ重ねられて転写されることで、当該記録用紙へ画像を形成するタンデム型が適用される。
【0023】
1枚目の画像が白黒画像の場合は白黒画像に適したプロセススピードで画像形成処理を実行する。また、1枚目の画像がカラー画像の場合はカラー画像に適したプロセススピードが全ての画像形成処理を実行する。
【0024】
プロセススピードを一定とすることで、スピード変更のための待機時間が不要であり、処理効率を高めることができる。
【0025】
第2の発明は、複数の像担持体と、少なくとも複数の像担持体からのトナー画像が重ねられて転写される中間転写部材と、前記中間転写部材からのトナー画像が重ねられて転写される最終転写部材と、を有し、所定のプロセススピード、並びに所定の静電プロセスに基づく前記中間転写部材及び最終転写部材を含む各行程への印加電圧を設定し、各像担持体に形成されたトナー画像を、前記中間転写部材を介して最終的に最終転写部材によって転写されることで、前記記録用紙へ画像を形成する画像形成装置であって、白黒画像形成時とカラー画像形成時とが異なるプロセススピードに設定されており、白黒画像とカラー画像の混在画像を連続して画像形成処理するときに、1枚目の画像に基づいたプロセススピードで全ての画像形成処理を実行することを特徴としている。
【0026】
第2の発明によれば、画像形成処理装置の構成として、複数の像担持体と、少なくとも複数の像担持体からのトナー画像が重ねられて転写される中間転写部材と、前記中間転写部材からのトナー画像が重ねられて転写される最終転写部材と、を有し、所定のプロセススピード、並びに所定の静電プロセスに基づく前記中間転写部材及び最終転写部材を含む各行程への印加電圧を設定し、各像担持体に形成されたトナー画像を、前記中間転写部材を介して最終的に最終転写部材によって転写されることで、前記記録用紙へ画像を形成するタンデム型が適用される。
【0027】
1枚目の画像が白黒画像の場合は白黒画像に適したプロセススピードで画像形成処理を実行する。また、1枚目の画像がカラー画像の場合はカラー画像に適したプロセススピードが全ての画像形成処理を実行する。
【0028】
プロセススピードを一定とすることで、スピード変更のための待機時間が不要であり、処理効率を高めることができる。
【0029】
上記第1の発明又は第2の発明において、前記白黒画像とカラー画像の混在画像の連続画像形成処理時には、前記白黒画像からカラー画像へ、或いはカラー画像から白黒画像への切り換えの際、静電プロセスにおける各行程への印加電圧値のみを切り換えることを特徴としている。
【0030】
プロセススピードを一定年、静電プロセスにおける各工程への印加電圧値を切り換えることで、画質の低下を防止することができる。
【0031】
また、第1の発明又は第2の発明において、複数の前記転写部材への印加電圧源が独立していることを特徴としている。
【0032】
複数、例えば全ての転写部材への印加電圧源が独立している場合は、記録材料が通過した時点で順次印加電圧を変更することができ、処理効率を高めることができる。
【0033】
また、第1の発明又は第2の発明において、少なくとも2以上の前記転写部材への印加電圧源が共通していることを特徴としている。
【0034】
印加電圧の切り換えのための制御が簡便化できる。
【0035】
さらに、第1の発明又は第2の発明において、前記混在画像の連続画像形成処理時において、白黒画像からカラー画像へ、或いはカラー画像から白黒画像への切り換えの際、切り換え直前の記録用紙の画像形成処理が終了するまで前記印加電圧の切り換えを待機することを特徴としている。
【0036】
特に画質を優先する場合には、白黒画像からカラー画像へ、或いはカラー画像から白黒画像への切り換えが必要な場合、切り換え直前に処理される記録用紙の画像形成処理が終了するまで、印加電圧の切り換えを待機する。これにより、印加電圧切り換え時の電圧変動に起因する画質低下を抑制することができる。
【0037】
また、第1の発明又は第2の発明において、前記混在画像の画像形成処理時には、濃度調整を含む画質調整手段を、白黒画像又はカラー画像の非混在時の連続画像形成処理時よりも、短いサイクルで実行することを特徴としている。
【0038】
白黒画像又はカラー画像の混在による印加電圧の切り換え動作により、濃度が不安定となる場合がある。そこで、白黒画像又はカラー画像が混在している場合の濃度調整を含む画質調整手段を、混在しないときの画質調整手段よりも短いサイクルで実行し、早期に濃度変化を補正することで、画質の低下を抑制する。
【0039】
さらに、第1の発明又は第2の発明において、上記の前記画像形成処理は、ユーザーの指示があった場合のみ実行し、それ以外の混在画像の画像形成処理時においては、カラー画像形成処理条件を用いて画像形成処理を実行することを特徴としている。
【0040】
処理能力(処理効率)を期待しない、或いは必要としない場合には、画像形成装置の標準仕様(例えば、従来技術の項で示した対応(1)又は(2))により白黒画像とカラー画像とが混在する画像形成処理を行うことで、標準的な画質、処理能力での処理が可能となる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明した如く本発明によれば、白黒画像とカラー画像とが混在するジョブに対して、画質低下を招くことなく、最も効率よく画像形成処理を行うことができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(第1の実施の形態)
図1には、第1の実施の形態に係る画像形成装置のエンジン部10の概略構成図が示されている。
【0043】
エンジン部10は、像担持体である4個の感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kを主体として構成されている。
【0044】
第1の実施の形態のエンジン部10は、所謂タンデム型であり、感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kは、直列に配列されており、それぞれの接線を直線に結んだ延長線が、記録用紙14の搬送経路となっている。
【0045】
感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kは、搬送経路の上流側から順番にY→M→C→Kの各色に対応している。少なくとも、K色の感光体ドラム12Kが最下流であることが好ましい。
【0046】
感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kには、その周囲にそれぞれ帯電ロール16、光走査装置18、現像部20、並びにクリーナー部22が配設されている。
【0047】
エンジン部10では、感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kが所定のプロセススピードで定速度回転させ、まず、所定の電圧が印加された帯電ロール16によって表面を一様に帯電し、光走査装置18から出力される光ビームによって静電潜像を形成し、所定の電圧が印加された現像部20から供給されるトナーによってトナー現像し、前記搬送経路との接点である転写部24へと至る構成である。
【0048】
転写部24には、搬送経路を挟んで感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kと対峙する転写ロール26C、26M、26Y、26Kが設けられている。
【0049】
転写ロール26C、26M、26Y、26Kはそれぞれ独立した電源28C、28M、28Y、28Kを有しており、この結果、それぞれ異なる制御で印加電圧を調整することが可能となっている。
【0050】
転写ロール26C、26M、26Y、26Kに所定の電圧が印加された状態でトナー画像が搬送経路に至ると、この搬送経路を通過する記録用紙14へ画像が転写される。
【0051】
なお、転写部24による画像転写での転写後の感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kはクリーナー22によって表面がクリーニングされ、再度帯電ロール16へ戻り、上記工程が繰り返される。
【0052】
ここで、第1の実施の形態では、カラー画像(以下、「フルカラー画像」という)と白黒画像との双方に対応可能なプロセススピードと、前記画像形成プロセスにおける各工程での印加電圧(バイアス)と、が定められており、白黒画像が指定された場合、或いはフルカラー画像が指定された場合にそれぞれに適したプロセススピード、バイアス(以下、適宜「プロセス条件」という)が選択されて、その準備がなされて画像形成処理が実行される。
【0053】
ところで、ユーザーが指定するジョブには、白黒画像のみ、フルカラー画像のみの他、白黒画像とフルカラー画像が混在しているジョブが存在する。このような場合、前述したように、白黒画像とフルカラー画像とでは適正なプロセス条件が異なるため、一方を犠牲にするか、或いは、適宜プロセス条件を切り換えるかを選択しなければならない。これには、表1にも示される如く、白黒画像のプロセス条件(2種類)と、フルカラー画像のプロセス条件(2種類)とを互いに組み合わせて適用することができないためである(2パターン)。
【0054】
そこで、第1の実施の形態では、上記プロセス条件の組み合わせのバリエーションを増やし、白黒画像/フルカラー画像混在のジョブ(以下、単に「混在ジョブ」という)に対応するようにした(4パターン)。
【0055】
【表1】

【0056】
なお、表中の「○」は組み合わせ可能、「×」は組み合わせ不可能を示す。
【0057】
より具体的には、混在ジョブの画像形成指示があった場合、1枚目の記録用紙が白黒(BW)か、フルカラー(FC)かによって、スタート時のプロセス条件を決定し、BW→FC、FC→BWの切り換え毎にプロセス条件の内のバイアスのみ切り換えるようにした。
【0058】
以下に第1の実施の形態の作用を図2のフローチャートに従い説明する。
【0059】
ステップ100では、画像形成処理の指示があったか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ102へ移行してジョブの内容を判別する。
【0060】
次のステップ104では、前記ジョブの判別の結果、混在ジョブか否かが判断される。
【0061】
このステップ104で否定判定された場合は、通常ジョブ(白黒画像のみのジョブ(CWジョブ)、或いはフルカー画像のみのジョブ(FCジョブ))であると判断し、ステップ106へ移行して、通常ジョブの種類を判別する。
【0062】
ステップ106でCWジョブと判別された場合には、ステップ108へ移行してCWプロセススピード、CWバイアスとし、ステップ112へ移行して処理の実行を指示する。
【0063】
また、ステップ108でFCジョブと判別された場合は、ステップ110へ移行してFCプロセススピード、FCバイアスとし、ステップ112へ移行して処理の実行を指示する。
【0064】
次のステップ114では、通常ジョブが終了したか否かが判断され、否定判定された場合は、ステップ112へ戻る。また、ステップ114で肯定判定された場合はこのルーチンは終了する。
【0065】
前記ステップ104において、混在ジョブと判別された場合は、ステップ116へ移行して、当該混在ジョブの1枚目の色判別(CW/FC)を実行し、ステップ118へ移行する。
【0066】
ステップ118で1枚目がCWである場合には、ステップ120へ移行してCWプロセススピードに固定し、かつCWバイアスに設定して、ステップ124へ移行する。
【0067】
一方、ステップ118で1枚目がFCである場合には、ステップ122へ移行してFCプロセススピードに固定し、かつFCバイアスに設定して、ステップ124へ移行する。
【0068】
ステップ124では、1枚分の処理の実行開始を指示し、ステップ126へ移行する。ステップ126では、混在ジョブの処理が全て終了したか否かが判断され、否定判定の場合にはステップ128へ移行する。また、ステップ126で肯定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0069】
ステップ128では、次ページの色判別を行ない、次いでステップ130でCWからFCへ、或いはFCからCWの切換時期か否かが判断され、切換時期となった場合にはステップ132へ移行して、バイアスを切り換え、ステップ124へ戻る。また、ステップ130で否定判定された場合はステップ132へ戻る。
【0070】
表2は、第1の実施の形態において、1枚目が白黒画像指定である場合(表2の(a)参照)と、1枚目がフルカラー画像指定である場合(表2の(b)参照)のプロセス条件の切り換えパターンを示している。
【0071】
なお、参考として、従来例1、従来例2を併記した。
【0072】
【表2】

【0073】
この表2を見てわかるように、総合評価は何れも第1の実施の形態(すなわち、バイアスのみ切り換え)は処理能力、画質共に「良」判定となる。
【0074】
すなわち、白黒画像、フルカラー画像の何れであっても、1枚目の画像形成処理の状態で最適なプロセススピードを混在ジョブの間は、継続して適用することで、プロセススピードを変更するための準備時間を短縮することができる。
【0075】
準備時間とは、例えば、切り換え直線の記録用紙14が、画像形成処理中である場合は、その途中で速度変更はできないため、全ての画像処理が完了するまで待機しなければならない。
【0076】
一方、バイアスは、それぞれの感光体ドラム12C、12M、12Y、12Kの転写部24を記録用紙14が通過した時点で、上流側から順次印加電圧を切り換えることが可能である。このため、プロセススピードを一定、バイアスを変更という従来にないパターンが処理能力に関しては最も適していることになる。
【0077】
ここで、白黒画像の設定のバイアスでフルカラー画像の画像形成処理をした場合、或いはフルカラー画像の設定のバイアスで白黒画像の画像形成処理をした場合、それぞれ最適なバイアスではないことは承知であるが、それぞれの不具合(転写不良、細線の飛び散り等)を抑制し得る(目立たなくすることができる)プロセススピードを設定しておけばよい。言い換えれば、白黒画像とフルカラー画像とのプロセススピード差を従来よりも狭める設定とすればよい。
【実施例1】
【0078】
第1の実施の形態のプロセス条件での混在ジョブの処理速度に関して、表3の条件の下で実施した。なお、混在ジョブは、JEITA−11に定められている順序(BW→FC→FC→FC→FC→BW→FC→FC→FC→FC→BW→FC)の12枚とした。
【0079】
【表3】

【0080】
表4は、上記表3の条件の下での結果を示しており、第1の実施の形態の構成(4パターンのプロセス条件、1枚目色判定によるプロセススピード固定)の他、従来から実施されているパターン(1回の切換、全切換、全FC速度)の実施結果も併せて表記する。
【0081】
【表4】

【0082】
但し、画像の順番は、JEITA−11の画像に基づく
図3は上記表4を横軸を時間軸として示したタイミングチャートである。
【0083】
図3、並びに上記表4において、「1回の切換」は、1度切り換えるとBW画像をFC画像で出さねばならず、画質が落ちる。
【0084】
また、「全切換」は、画質重視だが、生産性が極端に悪化する。
【0085】
さらに、「全FC速度」はBW画像の生産を活かすことができず、BW画像の画質が落ちる。
【0086】
これに対して、「実施例1」では、生産性もトップであり、かつ画質も良好となる。
【0087】
以上説明したように、第1の実施の形態では、白黒画像に最適なプロセススピード、バイアスの組み合わせと、フルカラー画像に最適なプロセススピード、バイアスの組み合わせ以外に、所謂たすきがけのパターン(白黒画像用プロセススピードとフルカラー画像用バイアスの組み合わせと、フルカラー画像用プロセススピードと白黒画像用バイアスの組み合わせ)を可能とし、混在ジョブにおいて、1枚目が白黒画像の場合は白黒画像用プロセススピードに固定し、フルカラー画像のページのときはバイアスのみ切り換える、並びに、1枚目がフルカラー画像の場合はフルカラー画像用プロセススピードに固定し、白黒画像のページのときはバイアスのみ切り換えるようにした。これにより、プロセススピードを切り換える手間が省け、また、このプロセススピードの切り換えのために、切換直前の記録用紙14の排出を待たなくてもよく、上流側の感光体ドラムから順にバイアスを切り換えることができるため、処理能力(処理速度)を高めることができる。
【0088】
また、プロセススピードの白黒画像−フルカラー画像間の差を狭めることで、プロセススピードに起因する適正バイアスとの差による画質低下を抑制することができる。
【0089】
(第2の実施の形態)
以下に本発明の第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一構成部分には、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0090】
図4に示される如く、第2の実施の形態のエンジン部10Aの特徴は、前記転写ロール26C、26M、26Y、26Kの電源30が共通とされている点にある。
【0091】
この結果、白黒画像とフルカラー画像とのバイアスの切り換え(CW→FC、或いはFC→CW)の際に、記録用紙14が最下流側の感光体ドラム12Kを通過するまで、バイアスの切り換えを待機する必要がある。この結果、第1の実施の形態よりも処理速度が劣るものの、従来の仕様(1回の切換、全切換、全FC速度)よりは速い。
【実施例2】
【0092】
表5は、この第2の実施の形態における処理速度の推移を示している。なお、エンジン部10Aの条件は、表3の同一である。
【0093】
【表5】

【0094】
上記表5を横軸を時間軸として示したタイミングチャートである。
【0095】
上記表5において、「1回の切換」は、1度切り換えるとBW画像をFC画像で出さねばならず、画質が落ちる。
【0096】
また、「全切換」は、画質重視だが、生産性が極端に悪化する。
【0097】
さらに、「全FC速度」はBW画像の生産を活かすことができず、BW画像の画質が落ちる。
【0098】
これに対して、「実施例2」では、生産性もトップであり、かつ画質も良好となる。
【0099】
(第3の実施の形態)
以下に本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0100】
この第3の実施の形態では、図5に示される如く、画像形成装置のエンジン部10Bは、第1の実施の形態及び第2の実施の形態とは異なる構成となっている。
【0101】
4個の感光体ドラム50Y、50M、50C、50Kは、縦方向に一列に配列され、所謂タンデム型を構成しており、当該感光体ドラム50Y、50M、50C、50Kの周囲には、それぞれ帯電ロール52、現像部54、クリーナー部(図示省略)が配設されている。
【0102】
また、現像部54よりも図5の右側には、光走査装置56が設けられ、それぞれの感光体ドラム50Y、50M、50C、50Kへ光ビームを照射するようになっている。
【0103】
感光体ドラム50Y、50M、50C、50Kは、それぞれ、2個ずつがペアとなって、一対の第1の中間転写体58、60のそれぞれに接触している。
【0104】
すなわち、図5の上部2個の感光体ドラム50C、50Mは第1の中間転写ロール58に接触し、下部2個の感光体ドラム50Y、50Kは第1の中間転写ロール60に接触し、この接触点が第1の転写部となる。
【0105】
一対の第1の中間転写ロール58、60は、それぞれ第2の中間転写ロール62に接触されている。この結果、感光体ドラム50Y、50Mに形成されたトナー像は、第1の中間転写ロール58に重ねられて転写され、一方、感光体ドラム50Y、50Kに形成されたトナー像は、第1の中間転写ロール60に重ねられて転写される。
【0106】
この一対の第1の中間転写ロール58、60からのトナー像が、第2の中間転写ロール62上で全て重ねられて転写され、第2の転写部において最終転写ロール64との間で挟まれて搬送される記録用紙66へ転写される。
【0107】
上記構成のエンジン部10Bにおいて、混在ジョブを処理する場合、まず、1枚目の色(CW又はFC)によってプロセススピードを固定し、ページ間のCW→FC、FC→CWの切り換え時期に、例えば、第1の中間転写ロール58、60、第2の中間転写ロール62、並びに最終転写ロール64へ印加する電圧(バイアス)を切り換える。
【0108】
これにより、混在ジョブであってもプロセススピードが一定になる分、処理能力をある程度高めることができるが(最速ではない)、特に、この構成のエンジン部においては、ある程度の処理能力を維持した状態で、画質の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置のエンジン部の概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るプロセス条件設定処理制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】表4に示す処理のタイミングチャートである。
【図4】第2の実施の形態に係る画像形成装置のエンジン部の概略図である。
【図5】痔3の実施の形態に係る画像形成装置のエンジン部の概略図である。
【符号の説明】
【0110】
10 エンジン部
12C、12M、12Y、12K 感光体ドラム
14 記録用紙
16 帯電ロール
18 光走査装置
20 現像部
22 クリーナー部
24 転写部
26C、26M、26Y、26K 転写ロール
28C、28M、28Y、28K 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙の搬送方向に沿って配列された複数の像担持体と、それぞれの像担持体と対をなす転写部材と、を有し、所定のプロセススピード、並びに所定の静電プロセスに基づく前記転写部材を含む各行程への印加電圧を設定し、各像担持体に形成されたトナー画像が、前記転写部材から直接、或いは中間転写体への転写工程を介して前記記録用紙へ重ねられて転写されることで、当該記録用紙へ画像を形成する画像形成装置であって、
白黒画像形成時とカラー画像形成時とが異なるプロセススピードに設定されており、
白黒画像とカラー画像の混在画像を連続して画像形成処理するときに、
1枚目の画像に基づいたプロセススピードで全ての画像形成処理を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
複数の像担持体と、少なくとも複数の像担持体からのトナー画像が重ねられて転写される中間転写部材と、前記中間転写部材からのトナー画像が重ねられて転写される最終転写部材と、を有し、所定のプロセススピード、並びに所定の静電プロセスに基づく前記中間転写部材及び最終転写部材を含む各行程への印加電圧を設定し、各像担持体に形成されたトナー画像を、前記中間転写部材を介して最終的に最終転写部材によって転写されることで、前記記録用紙へ画像を形成する画像形成装置であって、
白黒画像形成時とカラー画像形成時とが異なるプロセススピードに設定されており、
白黒画像とカラー画像の混在画像を連続して画像形成処理するときに、
1枚目の画像に基づいたプロセススピードで全ての画像形成処理を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記白黒画像とカラー画像の混在画像の連続画像形成処理時には、前記白黒画像からカラー画像へ、或いはカラー画像から白黒画像への切り換えの際、静電プロセスにおける各行程への印加電圧値のみを切り換えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
複数の前記転写部材への印加電圧源が独立していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
少なくとも2以上の前記転写部材への印加電圧源が共通していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記混在画像の連続画像形成処理時において、白黒画像からカラー画像へ、或いはカラー画像から白黒画像への切り換えの際、切り換え直前の記録用紙の画像形成処理が終了するまで前記印加電圧の切り換えを待機することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記混在画像の画像形成処理時には、濃度調整を含む画質調整手段を、白黒画像又はカラー画像の非混在時の連続画像形成処理時よりも、短いサイクルで実行することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成処理は、ユーザーの指示があった場合のみ実行し、それ以外の混在画像の画像形成処理時においては、カラー画像形成処理条件を用いて画像形成処理を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−147775(P2007−147775A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339306(P2005−339306)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】