説明

画像形成装置

【課題】 転写圧接部と定着ニップ部とに同時に記録媒体が挟持される小型の画像形成装置において、記録媒体を介して転写バイアス電流が定着ニップ部からリークするのを抑制し転写不良を防止するとともに、トナーのオフセットを防止する。
【解決手段】 加圧ローラ22の表面を形成する表面層22c(離型層)の体積抵抗を該表面層22cの直下に形成された直下層22b(弾性層)の体積抵抗よりも高く設定し、直下層22bを接地する。表面層22c及び直下層22bの体積抵抗は合計して108Ω以上で1014Ω以下とするのが望ましく、直下層22bの体積抵抗は108Ω未満となるように設定するのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電電位の差による潜像にトナーを選択的に付着させてトナー像を形成し、これを記録媒体上に転写した後、加熱及び加圧して定着画像とする画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一様に帯電した感光体ドラムの表面に像光を照射することによって静電潜像が形成され、この静電潜像へトナーを静電的に転移させることにより、感光体ドラム上にトナー像が形成される。このトナー像は直接または中間転写体を介して記録媒体に転写され、この記録媒体上に定着される。
【0003】
感光体ドラム上のトナー像を記録媒体に転写する転写装置としては、感光体ドラムに圧接される転写ローラとの間に転写バイアス電圧を印加し、これらの圧接部を通過する記録媒体にトナー像を静電的に転写するものが知られている。また、中間転写体にトナー像を一旦転写した後に記録媒体へトナー像を転写する画像形成装置においても、感光体ドラムから中間転写体へのトナー像の転写、又は中間転写体から記録媒体への転写に同様の転写装置が用いられる。
【0004】
また、記録媒体上の未定着トナー像を定着する定着装置としては、無端状周面が周回移動する加熱回転体と、この周面にトナー像を圧接する加圧部材として加圧ローラを有するものが広く用いられている。この定着装置では、加熱回転体と加圧部材とが互いに圧接され、これらの圧接部(定着ニップ部)にトナー像が担持された記録媒体が介挿される。これにより、加熱回転体の回転にともなって記録媒体が定着ニップ部を通過し、記録媒体上の未定着トナー像が加熱され圧着される。
【0005】
このような定着装置で用いられる加熱回転体は、例えばアルミニウムなどの中空の芯金と、その内部に支持されたヒータとを有する加熱ローラ、ヒータ又は電磁誘導加熱装置によって加熱され周回移動する無端状ベルト等が知られている。これらの周面は、トナー等の付着を防止するために表面がフッ素樹脂等で被覆されている。一方、加圧部材としては、金属の芯金の上にシリコーンゴム等の耐熱性を有する弾性体層を有する加圧ローラが広く用いられる。この加圧ローラの表面には、加熱回転体に転移したトナーつまりオフセットとなったトナーが転移して記録媒体の裏面を汚すのを防止するため、加圧ローラにもトナーが付着しにくいフッ素樹脂系の表層を設けることが提案されている。例えば加圧ローラの周面を薄いチューブ状のPFA樹脂層で被覆するものである。
【0006】
このように加圧ローラの表面がフッ素樹脂系の材料で被覆されている定着装置では、表面が高い絶縁性を有するために、記録媒体が上記定着ニップ部を通過するときの摩擦によって加圧ローラの表面が帯電する。フッ素樹脂は一般に紙との摩擦によって負極性に帯電し、加圧ローラの表面における負の電位が大きくなると、記録媒体上の負帯電性のトナーが加圧ローラの表面との間で電気的に反発し、加熱回転体の表面に転移するいわゆる静電オフセットが生じやすくなる。
【0007】
特許文献1には、上記のようなオフセットを防止する技術が開示されており、加圧ローラの表面をカーボン等のフィラーを含有させたフッ素樹脂で被覆して導電性とすることが提案されている。つまり、特許文献1に記載の定着装置では、加圧ローラの表面抵抗値を1010Ω以下とし、これにより加圧ローラの表面の帯電を防止してトナーが静電的に加熱回転体の表面に転移するオフセットを防止しようとするものである。
【特許文献1】特開平9−222816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように加圧ローラの表面層の抵抗を小さくすると、加圧ローラの表面の帯電を抑制してトナーの静電オフセットを防止することはできるが、次のような問題点が生じる。
【0009】
画像形成装置の小型化により、転写圧接部と定着ニップ部との間の距離が短くなっており、搬送される記録媒体のサイズによっては記録媒体が転写圧接部と定着ニップ部との双方にわたって同時に保持されることがある。つまり、同一の記録媒体の後部が転写圧接部に挟持されながら、同時に前部が定着ニップ部に介挿されることとなる。このような場合、加圧ローラの表面層の抵抗が小さく設定されている定着装置では、転写バイアス電圧が印加されている転写圧接部から記録媒体を介して加圧ローラへ転写電流がリークし、転写不良を引き起こすことがある。特に、高湿度の環境下では、記録媒体の電気抵抗が低下して、この現象は顕著となる。
【0010】
また、転写圧接部で記録媒体は転写バイアス電圧の作用によりトナーと逆極性つまりトナーが負極性である場合には正極性に強く帯電する。このように正極性に強く帯電した記録媒体が加圧ローラと当接されたとき、加圧ローラの抵抗が小さく設定され接地されていると、静電誘導が発生して加圧ローラの表面に誘導電荷が生じる。この負電荷によって記録媒体の裏面に付着している正電荷を有する紙粉、特に中性紙に含まれる炭酸カルシウムに静電引力が作用し、紙粉が加圧ローラの表面に付着する。そして、記録媒体が加熱ローラと加圧ローラとの圧接部を通過した後、加圧ローラに付着した紙粉が加熱ローラに押し付けられ、加熱ローラの表面に転移する。加熱ローラの表面に転移した紙粉は、除去されずに堆積すると加熱ローラの表面が正極性に帯電した状態となり、負極性に帯電したトナーを引き寄せて、オフセットを誘引することになる。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、定着ニップ部に挟持された記録媒体を介して転写バイアス電流のリークが生じることを防止し、良好な転写を実現させるとともに、加熱ローラへトナーが転移するオフセットを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、 像担持体上に形成された静電電位の差による潜像に粉状のトナーを選択的に付着させてトナー像を形成する像形成手段と、 前記像担持体と、又は前記像担持体からトナー像が一旦転写される中間転写体と圧接され、前記像担持体又は中間転写者体との間を通過する記録媒体に前記トナー像を転写する転写部材と、 前記トナー像が転写された記録媒体を、加熱回転体と加圧部材とが圧接される定着ニップ部に挟持させて、前記トナー像を加熱定着する定着装置と、を備えた画像形成装置であって、 前記転写部材が前記像担持体又は中間転写体に圧接される転写圧接部と前記定着ニップ部との間の距離が、前記記録媒体の搬送方向における長さより短く設定されており、 前記加圧部材は、基材上に複数の層が積層され、 該複数の層のうち、表面を形成する表面層の体積抵抗が、該表面層の直下に形成された直下層の体積抵抗よりも高く設定され、 該直下層が接地されていることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記表面層及び前記直下層の体積抵抗が合計して108Ω以上1014Ω以下であるものとする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2の記載の画像形成装置において、 前記直下層の体積抵抗は、108Ω未満であるものとする。
【0015】
この画像形成装置では、加圧部材の表面層の体積抵抗が大きく設定されているので、定着ニップ部に介挿された記録媒体を介して転写圧接部に作用する転写バイアスがリークすることがない。また、表面層が記録媒体との摩擦により帯電することがあっても、直下層の体積抵抗が小さくなっているので、この直下層から接地によって電荷が除去される。さらに、表面層の体積抵抗が大きくなっていることにより、直下層が接地されていても、記録媒体の電荷によって加圧ロールの表面に誘導電荷が生じることはない。
【0016】
特に、表面層と直下層の体積抵抗が合計して108Ω以上であることにより、定着ニップ部に挟持される記録媒体を介して加圧部材から転写バイアス電流がリークすることを効率よく防止できる。また、表面層と直下層の体積抵抗が合計して1014Ω以下に設定され、直下層の体積抵抗が108Ω未満に設定されることにより、加圧部材の表面に摩擦帯電による電荷が生じても、直下層から接地へ容易に除去される。したがって、転写圧接部と定着ニップ部の距離が短い画像形成装置において、トナー像の転写と定着が同一の記録媒体上で同時に行われる場合であっても転写不良を防止でき、トナーを加熱回転体に転移させることもない。
なお、表面層の体積抵抗とは、加熱回転体と加圧部材との定着ニップ部から接地へ電流が流れるときの表面層が有する抵抗値をいう。また、直下層の体積抵抗とは、定着ニップ部から接地へ電流が流れるときの直下層が有する抵抗値をいうものであり、本願に係る発明において以下同様である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本願発明に係る画像形成装置では、転写圧接部と定着ニップ部に同時に挟持される記録媒体を介して転写バイアス電流が定着装置の加圧部材からリークするのが防止され、転写不良を回避することができる。また、加圧部材の表面に誘導電荷が生じて紙粉の転移が生じるのを防止することができるとともに、加圧部材の表面が記録媒体との摩擦により帯電しても接地によって電荷を効率よく除去することができる。したがってトナーのオフセットも防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。
この画像形成装置は、一様帯電後に像光を照射することにより表面に潜像が形成される円筒状の感光体ドラム1(像担持体)を備えており、この感光体ドラム1の周囲に、感光体ドラム1の表面を一様に帯電させる帯電装置2と、感光体ドラム1に像光を照射して表面に潜像を形成する露光装置3と、感光体ドラム1上の静電潜像をトナーの選択的な付着によって可視化する現像装置4と、感光体ドラム1との間に転写バイアス電圧が印加され、形成される電界によって感光体ドラム上のトナー像を記録媒体に転写する転写ローラ5と、トナー像を転写した後の感光体ドラム1上に残留するトナーを除去するクリーニング装置6とを備えている。
【0019】
また、トナー像が転写される記録媒体を収容する給紙トレイ7と、この給紙トレイ7から一枚ずつ送り出された記録媒体を感光体ドラム1と転写ローラ5とが対向する転写圧接部5aに搬送する搬送路8と、搬送される記録媒体を所定のタイミングで転写圧接部5aに送り込むレジストローラ9と、記録媒体に転写されたトナー像を加熱ローラ21と加圧ローラ22とが圧接される定着ニップ部10aに挟持して加熱・圧着する定着装置10と、記録媒体を排紙トレイ12へ送り出す排紙ローラ11と、が設けられている。
なお、本実施の形態では、転写圧接部5aと定着ニップ部10aとの距離は80mmとなっており、A4サイズやB5サイズ等の記録媒体が通紙されるときに転写圧接部5aと定着ニップ部10aの双方に同時に挟持されることとなる。
【0020】
上記感光体ドラム1は、金属製ドラムの表面にSe、a-Si、a-SiC、Cds等の各種無機感光材料、有機感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光体層を形成したものを用いることができる。
【0021】
上記帯電装置2は、ステンレススチール、アルミニウム等の導電性を有する金属のローラに高抵抗材料のコーティングを施したものであり、感光体ドラム1に当接され、従動回転するようになっている。そして、所定の電圧が印加されることにより、該ローラと感光体ドラム1との接触部近傍における微小間隙内で継続的な放電を生じ、感光体ドラム1の表面をほぼ一様に帯電するものである。
【0022】
上記露光装置3は、画像信号に基づいて画素毎に点滅するレーザーを出力するものであり、ポリゴンミラーによって感光体ドラム1の周面を露光走査するものである。これにより感光体ドラム1の周面上で露光部の電位が減衰し、静電電位の差による潜像が形成される。
【0023】
上記現像装置4は、感光体ドラム1と近接・対向する位置に現像ローラ4aを有し、この現像ローラ4aと感光体ドラム1との間に現像バイアス電圧が印加されるものである。そして、現像ローラ4aの周面上にトナーを担持して感光体ドラム1との対向部に搬送し、電界内で周面上に担持するトナーを潜像に転移して可視像を形成するものである。
【0024】
上記転写ローラ5は、金属シャフト5bの外周部に厚さが数ミリメートル程度の半導電性ゴム層5cを形成したものであり、感光体ドラム1の周面に当接され、従動回転するものとなっている。そして、図2に示すように金属シャフト5bには電源装置13から転写バイアス電圧が印加され、接地されている感光体ドラム1との間に転写電界が形成されている。
この転写ローラ5と感光体ドラム1との間に送り込まれた記録媒体は、感光体ドラム1上のトナー像に当接され、転写ローラ5と感光体ドラム1との間に形成された電界の作用によって電荷を有するトナーが記録媒体上に静電的に転移する。
【0025】
上記定着装置10は、記録媒体の搬送方向おける転写圧接部5aの下流側に設けられ、図2に示すように、熱源としてのハロゲンランプ23を内蔵する加熱ローラ21と、加熱ローラ21に圧接される加圧ローラ22とを有している。加熱ローラ21は、ギヤ等の駆動伝達手段(図示せず)を介して回転駆動され、加圧ローラ22はこの加熱ローラ21の回転駆動に従動して回転するものとなっている。そして、加熱ローラ21と加圧ローラ22とは、300Nの圧力で互いに圧接され、周方向に約6mmの幅のニップ部が形成されている。そして、このニップ部10aは、転写圧接部5aから80mm離れた位置となっている。
【0026】
加熱ローラ21と加圧ローラ22とが圧接される定着ニップ部8aの下流側には加熱ローラ21に記録媒体Pが巻き付くことを防ぐ分離爪24が配置されている。そして、加熱ローラ21の周面には温度検知手段としてのサーミスタ25が配置され、このサーミスタの検知温度に基づいてハロゲンランプ23の点滅が制御される。これにより、加熱ローラ21の表面温度が約180°となるように制御されるものとなっている。
【0027】
上記加熱ローラ21は、厚さ1mmのアルミニウムからなり外径が25mmの中空円筒状の芯金21aと、芯金21aの外周面上にPFA樹脂を焼成し、厚さが30μmとなるように形成された表面離型層21bとで構成されている。
【0028】
上記加圧ローラ22は、鉄製の円筒状部材を芯金22aとし、この芯金22aの表面にスポンジやゴムなどの弾性層22b(直下層)が設けられ、その上にPFA樹脂からなる表面層22cが積層されたものである。本実施形態では、芯金22aは外径が10mmの鉄部材である。弾性層22b(直下層)は、厚さが7.5mmの多孔質のシリコーンゴムであり導電性フィラーが分散して混合され、体積抵抗が106Ωになるように調整されている。そして、芯金22aが電気的に接地されている。
【0029】
表面層22cは、前記弾性層22b(直下層)に厚さ50μmのチューブ状のPFA樹脂を被覆したものであり、カーボン粒子などの導電性フィラーが分散されて、その体積抵抗は1010Ωに調整されている。
なお、本実施の形態では、体積抵抗を上記のように調整したが、表面層22c及び前記直下層22bの体積抵抗を合計して108Ω以上1014Ω以下に調整し、直下層22bの体積抵抗を108Ω未満となる範囲で適宜に設定してもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、PFA樹脂からなる表面層22cの厚さを50μmとしたが、10μm程度以上の厚さを有していればよく、加熱ローラ21との定着ニップ部10aから円筒状の芯金22cへ電流が流れるときの体積抵抗が上記値となるものであれば、厚さは適宜に設定することができる。
【0031】
上記のような画像形成装置は、次のように動作する。
感光体ドラム1は、帯電装置2によってほぼ一様な負極性に帯電され、露光装置3は画像データに基づき、帯電された感光体ドラム1の周面に像光を照射する。感光体ドラム1の表面の露光された部分は帯電電位が減衰し、非露光部との電位差による潜像が形成される。現像装置4は、負の電荷を有するトナーを現像ローラ4aの周面上に薄層化して担持し、感光体ドラム1の周面と対向する位置に搬送する。感光体ドラム1と現像ローラ4aとの間には、双方間に印加された現像バイアス電圧による電界が形成されており、負電荷を有するトナーが露光部に転移する。このようにして形成されたトナー像は、感光体ドラム1の回転により、転写ローラ5が圧接される転写圧接部5aへと搬送される。
【0032】
一方、用紙トレイ7から一枚ずつ送り出された記録媒体は、レジストローラ9で一旦保持され、感光体ドラム1上のトナー像と当接されるタイミングで転写圧接部5aへ送り込まれる。記録媒体は転写圧接部5aの上流側で感光体ドラム1の表面に接触し、密着した状態で転写圧接部5aを通過する。
転写圧接部5a及びその周辺には転写バイアス電圧によって電界が形成されており、この電界内でトナー像は記録媒体に転写される。
【0033】
その後、トナー像Tを担持した記録媒体が転写ローラ5から剥離されるときの放電によって記録媒体にプラスの電荷が付与され、トナー像Tを記録媒体上に保持した状態で定着装置10へと送られる。
【0034】
定着装置10では、加熱ローラ21と加圧ローラ22との定着ニップ部10aにトナー像を担持した記録媒体Pが挟みこまれ、加熱ローラ21に圧接されたトナーが加熱・溶融されて記録媒体P上に圧着される。定着ニップ部10aを通過した記録媒体Pは加熱ローラ21又は加圧ローラ22から剥離され、排紙ローラ11へと送られる。
【0035】
上記画像形成装置では、転写圧接部5aと定着ニップ部10aとの距離が80mmと短くなっており、転写圧接部5aを通過した記録媒体の前部P1が定着ニップ部10aに介挿されたときに後部P2がまだ転写圧接部5aに挟持されている。このような状態であっても、加圧ローラ22の表面層が電気抵抗の大きい材料で形成され、定着ニップ部10aから接地までの体積抵抗が大きくなっているので、定着ニップ部10aに挟持された記録媒体Pを介して転写バイアス電流がリークすることはない。したがって、良好な転写を維持することが可能となる。
【0036】
また、トナー像が定着される工程で、負に帯電したトナーは正電荷を有する記録媒体Pに引きつけられた状態で定着ニップ部10aを通過する。そして、加圧ローラ22の表面層22cの体積抵抗が1010Ω、直下層22bの体積抵抗が106Ωに調整されているので、表面層22cは記録媒体Pとの摩擦で帯電し難く、電荷が生じても導電性の高い直下層22bを介する接地によって除電される。したがって、加圧ローラ22が強い電荷を有することはなく、加圧ローラ22の帯電に起因する静電オフセットは生じない。
【0037】
さらに、加圧ローラ22の表面層は、体積抵抗が1010Ωとやや高い値に設定され、厚さも10μm以上となっているので、記録媒体Pが有する電荷によって加圧ローラ22の表面に誘導電荷が生じることもない。したがって、加圧ローラ22の表面に生じた誘導電荷によって記録媒体の裏面に分離可能に存在する正の電荷を有する紙粉が加熱ローラ21の表面に転移することも防止される。これにより、紙紛が加熱ローラ21に転移して堆積することによって誘発されるトナーのオフセットも防止される。
【0038】
以上に説明したように、転写バイアス電流が記録媒体を介して定着装置10からリークするという問題点は、加圧ローラ22を高抵抗に設定すれば解決されるものであるが、加圧ローラ22を高抵抗にすることによって定着時にトナーのオフセットが生じ易くなる。これに対して、加圧ローラ22が複数の層を有するものとし、これらの体積抵抗を適切に設定することによって転写バイアス電流のリークの防止とオフセットの防止との両立が実現されるものである。
【0039】
次に、本願に係る発明の効果を確認するための実験について説明する。
この実験は、従来の定着装置及び本願発明に係る上記定着装置10を使用して、転写圧接部と定着ニップ部との距離をそれぞれ変更しながらトナー像を定着したときの転写不良の発生状態を比較したものである。
本実験で使用した従来の定着装置は、本実施の形態の定着装置における加圧ローラ22に代えて、高抵抗の弾性層と、体積抵抗を105Ωに調整した離型層とを有する加圧ローラを用い、離型層を接地したものである。上記弾性層は、芯金の周りに導電フィラーを含有しないシリコーンゴムによって形成したものであり、離型層は導電フィラーを含有させることによって体積抵抗を105Ωに調整したPFAチューブを弾性層の外周面に巻き付けて形成したものである。なお、加熱ローラや他の部分は本実施形態の定着装置と同じものである。記録媒体は富士ゼロックスオフィスサプライ社製P紙を用い、28℃で相対湿度が85%の環境下に約12時間放置して含水させたものである。
【0040】
表1中のA4LEFとは、A4サイズの用紙の長辺を先頭にして通紙したものであり、搬送方向の長さは210mmとなる。A4SEFは、A4サイズの用紙の短辺を先頭にして通紙したもので、搬送方向の長さは297mmとなる。また、A3SEFは、A3サイズの用紙の短辺を先頭にして通紙したもので、その搬送方向の長さは420mmである。
【0041】
表1に示すように、従来の定着装置では、トナー像を担持した記録媒体Pが転写圧接部と定着ニップ部の双方に同時に挟持される場合は、転写不良が発生した。これは、転写バイアス電流が定着ニップ部に挟持された記録媒体を介して加圧ローラからリークしたものと思われる。
一方、本実施形態の定着装置を用いた場合には、転写圧接部と定着ニップ部の距離が搬送される記録媒体の長さよりも短く、記録媒体Pが定着ニップ部と転写圧接部とに同時に挟持された場合であっても転写不良は発生しなかった。また、このような場合であっても本実施の形態では定着装置におけるオフセットも発生しなかった。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願に係る発明の実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置において、転写圧接部と定着ニップ部とに同時に記録媒体が挟持された状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1:感光体ドラム、 2:帯電装置、 3:露光装置、 4:現像装置、 5:転写ローラ、 5a:転写圧接部、 6:クリーニング装置、 7:用紙トレイ、 8:搬送路、 9:レジストローラ、 10:定着装置、 10a:定着ニップ部、 11:排紙ローラ、 12:排紙トレイ、
21:加熱ローラ、 22:加圧ローラ、 23:ハロゲンランプ、 24:分離爪、 25:サーミスタ、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された静電電位の差による潜像に粉状のトナーを選択的に付着させてトナー像を形成する像形成手段と、
前記像担持体と、又は前記像担持体からトナー像が一旦転写される中間転写体と圧接され、前記像担持体又は中間転写者体との間を通過する記録媒体に前記トナー像を転写する転写部材と、
前記トナー像が転写された記録媒体を、加熱回転体と加圧部材とが圧接される定着ニップ部に挟持させて、前記トナー像を加熱定着する定着装置と、を備えた画像形成装置であって、
前記転写部材が前記像担持体又は中間転写体に圧接される転写圧接部と前記定着ニップ部との間の距離が、前記記録媒体の搬送方向における長さより短く設定されており、
前記加圧部材は、基材上に複数の層が積層され、
該複数の層のうち、表面を形成する表面層の体積抵抗が、該表面層の直下に形成された直下層の体積抵抗よりも高く設定され、
該直下層が接地されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記表面層及び前記直下層の体積抵抗が合計して108Ω以上1014Ω以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記直下層の体積抵抗は、108Ω未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−163866(P2007−163866A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360452(P2005−360452)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】