説明

画像形成装置

【課題】障害が発生した際に、障害要因の解明に必要なパケット情報を容易に抽出することができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置16は、送受信されるパケット情報を継続的に採取するパケット情報採取手段50と、採取されたパケット情報をカテゴリ別に分類しログ情報として記憶するパケット情報分類・記憶手段52と、障害が発生したとき、当該障害に応じた障害IDを特定する障害ID特定手段54と、障害リストを記憶する障害リスト記憶手段56と、障害リストに基づきパケット情報の検索条件を決定する検索条件決定手段58と、検索条件に基づき、ログ情報として記憶されたパケット情報を検索するパケット情報検索手段60と、検索されたパケット情報を外部の障害解析装置に転送するパケット情報転送手段62とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク等を介してデータ通信機能を備えた画像形成装置に関し、特に、画像形成装置に障害が発生したとき、障害要因を解明するために必要なパケット情報を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スキャナやプリンタ等の機能を備えた画像形成装置は、ネットワークを介して接続された他の電子装置と通信することにより、電子文書を印刷したり、読取った画像情報を送信したりしている。データ通信には、パケット通信方式等が用いられ、パケットと呼ばれる小容量の情報を送受し、通信回線を占有することなく効率の良い通信を行っている。パケット情報は、実データ以外にも、送信元または送信先のアドレス、パケットの種類、伝送順序および誤り訂正符号等の制御情報を含んでいる。これらのパケット情報は、画像形成装置内のメモリやハードディスク(HDD)にログ情報として記憶され、画像形成装置に障害が生じたとき、障害要因の解明のため利用されている。
【0003】
特許文献1は、ネットワークを介してパケット情報を送受信する情報処理装置において、送受信されたパケット情報を保存し、保存したパケット情報を所定の指示に従いネットワークに送信する技術を開示している。この情報処理装置では、採取されたパケット情報を一時的に記憶し、メモリに蓄積している容量がしきい値を超えた時点でパケット情報をハードディスクへ移している。
【0004】
特許文献2は、ネットワークプリンタに関し、ネットワークプリンタに障害が発生した時、障害の原因を究明するためのパケットデータの抽出を容易にする技術を開示している。特許文献2では、受信したジョブに識別情報(ID)をつけ、ジョブIDと該当するパケット情報を関連付けて一緒に保存し、障害が発生したとき、障害が発生したジョブのジョブIDから解析に必要なパケット情報を特定し、パケットの抽出を容易にしている。
【特許文献1】特開2000−187575号
【特許文献2】特開2004−362386号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置に障害が発生すると、管理者は、メモリやハードディスク等に保存されたパケット情報を採取し、これを障害要因の解明に供している。特許文献1では、蓄積容量の大きなハードディスクにパケット情報を保存するため、管理者は、膨大なパケット情報から障害要因の解析に必要なパケット情報を検索しなければならず、障害の解析に多大な時間と労力を要してしまう。
【0006】
一方、特許文献2は、ジョブIDとパケット情報を関連付けることより、障害要因を解明するためのパケット情報を比較的容易に抽出することができるが、関連付けされたパケット情報の容量が大きい場合には、依然として、障害要因の解明に必要なパケット情報を抽出するのに時間を要し、その結果、解析作業にかかる負担が大きかった。さらに、特許文献2は、ジョブにのみパケット情報を関連付けするため、画像形成装置がジョブ以外のユーザ操作により障害を発生したときには、これに迅速に対処することができなかった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、障害が発生した際に、障害要因の解明に必要なパケット情報を容易に抽出することができる情報処理装置およびこれを利用した障害解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る情報処理装置は、ネットワークに接続されパケット通信可能であり、送受信するパケット情報を継続的に採取し、採取したパケット情報をカテゴリ別に分類して記憶する分類記憶手段と、障害と当該障害に対応するパケット情報の検索情報を記憶する検索情報記憶手段と、障害が発生したとき、前記検索情報記憶手段に記憶された検索情報に基づき前記分類記憶手段に記憶されたパケット情報から該当するパケット情報を検索する検索手段とを有する。
【0009】
好ましくは情報処理装置はさらに、前記検索手段により検索されたパケット情報を外部の障害解析装置に転送する転送手段を含む。好ましくは、検索情報は、障害毎にパケット情報を検索するための検索期間や、障害毎にパケット情報が記憶されるカテゴリ情報を含む。また、分類記憶手段は、採取したパケット情報をカテゴリ別にツリー構造で記憶することが望ましい。カテゴリは、少なくとも起動、ジョブおよび操作を含む。
【0010】
さらに本発明の障害解析システムは、上記した情報処理装置と、情報処理装置に接続され、情報処理装置から転送されたパケット情報に基づき情報処理装置の障害を解析する障害解析装置とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、障害が発生したとき、予め用意された検索情報に基づきパケット情報を検索するようにしたので、障害要因の解析に必要なパケット情報を迅速にかつ簡単に抽出し、これを障害解析装置に転送することができる。これにより、従来と比較して、管理者は、膨大に記憶されたパケット情報から障害要因の解析に必要な部分を探し出すための時間および労力が軽減され、効率良く障害要因を解明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本実施例に係る情報処理システムの構成例を示す図である。情報処理システム10は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やネットワークプリンタ等の外部情報処理装置14と、電子文書等を印刷したり、紙文書を光学的に読み取り複写する機能等を備えた多機能型の画像形成装置16と、画像形成装置16の障害要因を解析するための障害解析装置18とを含み、これらの機器は、LAN等のネットワーク12を介して接続されている。
【0014】
画像形成装置16は、パケット通信方式により、外部情報処理装置14から電子文書などのファイル情報や指示を受け取ったり、自身が読取った画像データ等をネットワーク12を介して外部情報処理装置14へ送信する。また、画像形成装置16は、障害が発生したとき、障害要因を特定するために必要なパケット情報を障害解析装置18へ自動的にまたはユーザの指示により送信する。
【0015】
図2は、画像形成装置のハードウェアの構成例を示す図である。画像形成装置16は、ユーザからの指示を入力する入力部30、操作メニュー等の情報をディスプレイに表示する表示部32、紙文書や画像等を光学的に読み取る読取部34、読取った電子情報や受信した電子情報を紙等の媒体に印刷する印刷部36、ネットワーク12に接続された外部情報処理装置14とデータ通信を可能にするインターフェース(I/F)38、画像形成装置の動作を制御するプログラムや採取されたパケット情報等のデータを記憶する主記憶部40、ハードディスク(HDD)等の大容量記憶装置を含み、採取されたパケット情報や障害リスト等を記憶する記憶部42、プログラムに従い各部を制御するCPU44、およびこれらを接続する内部バス46を含んでいる。
【0016】
図3は、画像形成装置の機能的な構成を示すブロック図である。この機能に示される手段は、画像形成装置のプログラムによって実行することができる。画像形成装置16は、外部情報処理装置14と送受信されるパケット情報を継続的に採取するパケット情報採取手段50と、パケット情報採取手段50により採取されたパケット情報をカテゴリ別に分類し、ログ情報として記憶するパケット情報分類・記憶手段52と、画像形成装置16に障害が発生した際に、障害の種類から障害IDを特定する障害ID特定手段54と、障害IDと障害要因の解析に必要なパケット情報との関係を示す障害リストを記憶する障害リスト記憶手段56と、障害リスト記憶手段56により記憶された障害リストに基づき転送するパケット情報の検索条件を決定する検索条件決定手段58と、検索条件決定手段58により決定された検索条件に基づき、パケット情報分類・記憶手段52により記憶されたログ情報からパケット情報を検索するパケット情報検索手段60と、パケット情報検索手段60より検索されたパケット情報をデータ解析装置18に転送するパケット情報転送手段62とを有している。
【0017】
図4は、パケット情報分類・記憶手段に記憶されるログ情報の管理例を示す図である。同図に示すように、ログ情報は、データを階層的に記憶するツリー構造になっており、複数のディレクトリによって分類されている。ディレクトリは、例えば、動作別に設定され、ここでは、起動動作に関するパケット情報82を記憶する起動ログディレクトリ72と、ジョブ動作に関するパケット情報84を記憶するジョブログディレクトリ74と、操作動作に関するパケット情報86を記憶する操作ログディレクトリ76とを含んでいる。また好ましくは、ジョブログディレクトリ74は、さらにその下の階層に複数のディレクトリを設定し、ジョブ別のパケット情報を記憶する。なお、ログ情報は、パケット情報を記憶するディレクトリ以外に、障害リストを記憶する障害リストディレクトリ80を含むようにしてもよい。
【0018】
起動動作に関するパケット情報82、ジョブ動作に関するパケット情報84、操作動作に関するパケット情報86は、画像形成装置16の動作が開始されると、CPU44によって記憶部42に分類して蓄積され、画像形成装置の動作が終了した後も一定期間保存される。
【0019】
次に、画像形成装置16におけるパケット情報の記憶動作について図5のフローチャートを参照して説明する。画像形成装置16がパケット情報の送受を開始すると、パケット情報採取手段50は、インターフェース38を介し、送受信しているパケット情報を継続的に採取する(ステップS101)。採取するタイミングは、採取するパケット情報のサイズとこれを記憶する記憶容量の関係から適宜設定される。
【0020】
パケット情報採取手段50は、採取したパケット情報を一時的に主記憶部40であるメモリに格納する(ステップS102)。次に、パケット情報分類・記憶手段52は、主記憶部40に記憶したパケット情報の容量が所定の容量を超えたか否かを判定する(ステップS103)。
【0021】
パケット情報の容量が所定の容量を超えたと判定されると、パケット情報分類・記憶手段52は、格納された順にメモリからパケット情報を取り出し(ステップS104)、取り出しパケット情報に含まれる制御情報に基づき当該パケット情報の動作カテゴリを特定する(ステップS105)。動作カテゴリは、図4のディレクトリに対応するように、起動動作、ジョブ動作、操作動作である。
【0022】
パケット情報分類・記憶手段52は、特定された動作カテゴリ別にパケット情報を分類し、図4に示すディレクトリ内にパケット情報を記憶する(ステップS106)。これにより、パケット情報は、起動動作、ジョブ動作、操作動作に分類され、画像形成装置のログ情報として保存される。
【0023】
次に、画像形成装置において障害が発生した時のパケット情報の検索および転送動作について図6のフローチャートを参照して説明する。画像形成装置16が動作中に障害が発生すると(ステップS201)、障害ID特定手段54は、発生した障害の種類に基づき障害IDを特定する(ステップS202)。例えば、障害が発生したとき、この障害に対応する障害IDは予め関連付けされており、障害ID特性手段54は、この関連付けに従い障害IDを特定する。特定された障害IDは、エラーコードとして表示部32に表示される。
【0024】
次に、検索条件決定手段58は、障害リスト記憶手段56に記憶されている障害リストを読み込む(ステップS203)。図7は、障害リストの一例を示すテーブルである。障害リストは、設計者または管理者により予め作成され、障害ID、動作カテゴリおよび障害要因の解析に必要なパケット情報を検索するための期間との関係を示している。
【0025】
例えば、障害IDとして「112−334」が特定された場合、この障害は、起動時に発生したものであり、パケット情報を検索する期間は、「全機能モジュール(すなわち、画像形成装置とデータ送受が可能な外部情報処理装置)がReady状態になるまで」である。障害IDとして「112−335」が特定された場合、この障害は、ジョブ時に発生したものであり、パケット情報を検索する期間は、「入出力モジュール1開始時」となる。障害IDとして「112−336」が特定された場合、この障害は、操作時に発生したものであり、パケット情報を検索する期間は、「外部アクセス画面に入ってからトップ画面に戻るまで」となる。このように、障害リストには、障害IDと、障害IDに対応する動作カテゴリと、障害要因の解析に必要な部分のみを探し出すためのパケット情報の検索期間の関係が定められている。
【0026】
検索条件決定手段58は、障害リストを参照し、障害IDに対応する動作カテゴリおよびパケット情報の検索期間を検索条件として決定し(ステップS204)、これをパケット情報検索手段60へ提供する。
【0027】
パケット情報検索手段60は、検索条件を受け取ると、これに応答してパケット情報分類・記憶手段52に記憶されているログ情報からパケット情報を抽出する。例えば、障害IDが「112−334」であれば、パケット情報検索手段60は、図4に示すツリー構造から起動ログ72のディレクトリを参照し、そこに含まれるパケット情報82から、検索条件に該当する期間のパケット情報を抽出する。同様に、障害IDが「112−335」であれば、ジョブログ74のディレクトリを参照し、そこから該当する期間のパケット情報を抽出し、障害IDが「112−336」であれば、操作ログ76のディレクトリを参照し、そこから該当する期間のパケット情報を抽出する。ログ情報は、ツリー構造を採用しているため、パケット情報検索手段60は、高速にパケット情報の検索および抽出を行うことができる。
【0028】
次に、パケット情報検索手段60により検索または抽出されたパケット情報は、パケット情報転送手段62へ与えられ、パケット情報転送手段62は、このパケット情報をネットワーク12に接続された障害解析装置18へ転送する(ステップS206)。障害解析装置18は、受け取ったパケット情報に基づき障害要因の解析を行う。
【0029】
このように本実施例によれば、パケット情報を動作カテゴリ別に記憶しておき、障害が発生したときには、予め用意された障害リストに従い検索条件を決定し、障害の解析に必要なパケット情報を迅速に検索し、抽出することができるようになったので、従来と比較して、障害要因の解析に必要なパケット情報の検索が容易となり、障害の解析をより効率よく行うことができる。
【0030】
なお上記実施例において、動作カテゴリは、起動、ジョブ、操作に分類した例を示したが、これらは一例であって、動作カテゴリは他のカテゴリを含むものであってもよい。さらに、ログ情報の管理において、動作カテゴリをさらに細分化するようなディレクトリを設定してもよい。例えば、ジョブであれば、そのジョブを細分化したカテゴリを設定することができる。
【0031】
また上記実施例では、検索されたパケット情報をネットワークを介して障害解析装置に転送したが、パケット情報をUSBメモリ等の記憶媒体に保存し、管理者は、記憶媒体を障害解析装置へ接続するようにしてもよい。
【0032】
上記実施例は例示的なものであり、これによって本発明の範囲が限定的に解釈されるべきものではなく、本発明の構成要件を満足する範囲内で他の方法によっても実現可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ネットワークに接続される複写機や画像形成装置等の電子機器において利用される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【図2】情報処理装置のハードウェアの構成例を示す図である。
【図3】本実施例に係る情報処理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】パケット情報の管理例を示す概念図である。
【図5】本実施例に係る情報処理装置におけるパケット情報の管理動作を説明するフローチャートである。
【図6】本実施例に係る情報処理装置におけるパケット情報の検索転送動作を説明するフローチャートである。
【図7】障害リストの例を示すテーブルである。
【0035】
10:情報処理システム 12:ネットワーク
14:外部情報処理装置 16:画像形成装置
30:入力部 32:表示部
34:読取部 36:印刷部
38:インターフェース 40:主記億部
42:記憶部 44:中央演算装置(CPU)
46:内部バス 50:パケット情報採取手段
52:パケット情報分類・記憶手段 54:障害ID特定手段
56:障害リスト記憶手段 58:検索条件決定手段
60:パケット情報検索手段 62:パケット情報転送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続され、パケット通信可能な情報処理装置であって、
送受信するパケット情報を継続的に採取し、採取したパケット情報をカテゴリ別に分類して記憶する分類記憶手段と、
障害と当該障害に対応するパケット情報の検索情報を記憶する検索情報記憶手段と、
障害が発生したとき、前記検索情報記憶手段に記憶された検索情報に基づき前記分類記憶手段に記憶されたパケット情報から該当するパケット情報を検索する検索手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
情報処理装置はさらに、前記検索手段により検索されたパケット情報を外部の障害解析装置に転送する転送手段を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記検索情報は、障害毎にパケット情報を検索するための検索期間を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記検索情報は、障害毎にパケット情報が記憶されるカテゴリ情報を含む、請求項1または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記分類記憶手段は、採取したパケット情報をカテゴリ別にツリー構造で記憶する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
カテゴリは、少なくとも起動、ジョブおよび操作を含む、請求項1または5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1つに記載の情報処理装置と、前記情報処理装置に接続され、前記情報処理装置から転送されたパケット情報に基づき前記情報処理装置の障害を解析する障害解析装置とを含む、障害解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−182416(P2008−182416A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13659(P2007−13659)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】