説明

画像形成装置

【課題】ジャム処理等のメンテナンスを行うために、感光体ドラム近傍の開閉カバーを開いても、簡単な構成によって、感光体ドラムが装置本体外の温度・湿度の影響を受けることなく、感光体ドラム表面の水分を除去し、鮮明な画像を得る画像形成装置を提供する。
【解決手段】装置本体1Aの内部に通じ揺動自在な開閉カバー6の裏側に、用紙Pを搬送する搬送路5が設けられるとともに、この搬送路5に対して開閉カバー6の反対側に感光体ドラム3が設けられ、開閉カバー6の開操作に伴って、感光体ドラム3の搬送路5側に移動して感光体ドラム3を覆う保護状態となる一方、開閉カバー6の閉操作に伴って、感光体ドラム3の搬送路5側から退避する退避状態となるドラムカバー7が設けられ、保護状態においてドラムカバー7の感光体ドラム3に対向する面に面状のヒータ14が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像を形成する感光体の近傍に設けた開閉カバーを開いてジャム処理等のメンテナンスを行う複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、回転している感光体(感光体ドラム)の表面近傍で行われる帯電器による放電により、感光体表面に帯電処理を施す。この帯電処理が施された感光体の表面に露光装置から画像情報に基づく光が照射され、光が当たった部分の帯電状態の消滅によって静電潜像が形成される。この静電潜像に向けて現像装置からトナーが供給されることにより感光体の表面にトナー像が形成され、このトナー像が用紙に転写されるようになされている。
【0003】
そして、表面がアモルファスシリコン系感光層で形成されている感光体は、その表面硬度が大きい。また印字耐久性が高く、繰り返し使用に伴い、感光体を帯電させるために帯電器が放電すると、帯電器が発生するオゾンから派生するコロナ生成物により、その表面に水分子や水分を吸着した物質が付着するおそれがある。水分子や吸湿した物質が感光体表面に付着すると、表面抵抗が下がって電荷が移動するために、静電潜像が乱れ、画像が滲んだようにぼやけてしまい、画質が低下する。
【0004】
そこで、アモルファスシリコン感光体を加熱して表面に吸着した水分を蒸発させることが考えられる。特許文献1では、アルミニウム、銅等の熱伝導率の高い物質からなるローラ内にハロゲンランプ・電熱線等の発熱体を固定支持している。この構成により、ローラが感光体表面に接触しながら従動回転すると、感光体表面がローラとの接触によって傷がついたり劣化したりすることがなく、感光体の水分を発熱体により加熱して除去している。
【0005】
また、特許文献2では、中空の感光体ドラムの内側からアモルファスシリコン層を加熱するために、感光体ドラムに送風パイプと排気ファンを設け、また感光体ドラム内に中空軸等を設け、送風パイプから中空軸に熱風を送り、その熱風を排気ファンにより吸引する構成にしている。
【0006】
ところで、一般に画像形成装置では、用紙が搬送路中で詰まった場合のジャム処理等のメンテナンスを行えるように、装置本体の内部に通じる開閉カバーが設けられており、この開閉カバーを開けると、その開口を通して、搬送路や、それに面した各種パーツ等が、装置外に露出された状態となる。例えば、ジャム処理する場合には、開閉カバーを開けることで、その開口から装置内に手を入れて詰まった用紙を簡単に取り除く事ができる。しかしながら、上述の特許文献1及び2では、このような作業の際に、感光体ドラムが装置本体外の環境に曝されることになる。開閉カバーが閉じられている場合には、所定の温度・湿度に設定された感光体ドラムは装置本体内でその温度・湿度状態で維持されるが、開閉カバーが開いている場合には、その開口から外気が入り込み、感光体ドラム表面の温度が低下し湿度が高くなり、また装置外が非常に低温であると、結露が発生して、その表面に水分が付着するおそれがある。水分子や吸湿した物質が感光体表面に付着すると、静電潜像が乱れ、画像が滲んだようにぼやけてしまい、画質が低下するという不都合があった。
【特許文献1】特開昭59−111179号公報(2頁右上欄、図1)
【特許文献2】実開昭60−82657号公報(実用新案登録請求の範囲、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ジャム処理等のメンテナンスを行うために、感光体ドラム近傍に設けた開閉カバーを開いても、簡単な構成によって、感光体ドラムが装置本体外の温度・湿度の影響を受けることなく、感光体ドラム表面の水分を除去し、鮮明な画像を得る画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、装置本体の内部に通じる揺動自在な開閉カバーの裏側に、用紙を搬送する搬送路が設けられるとともに、前記搬送路に対して前記開閉カバーの反対側に感光体ドラムが設けられ、前記開閉カバーの開操作に伴って、前記感光体ドラムの前記搬送路側に移動して前記感光体ドラムを覆う保護状態となる一方、前記開閉カバーの閉操作に伴って、前記感光体ドラムの前記搬送路側から退避する退避状態となるドラムカバーが設けられ、前記ドラムカバーの保護状態で前記感光体ドラムに対向する面に面状のヒータが設けられることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、開閉カバーの開操作に伴って、ドラムカバーが感光体ドラムの搬送路側に移動すると、ドラムカバーに設けたヒータが感光体ドラムに対面し、感光体ドラムを加熱する。
【0010】
また、本発明は、上記の構成の画像形成装置において、前記ヒータの通電を切り換えるスイッチ部材が設けられ、前記開閉カバーの開操作に伴って、前記スイッチ部材が前記ヒータを通電させることを特徴としている。この構成によれば、開閉カバーが開いているときにはヒータが発熱し、開閉カバーが閉じているときには、ヒータが発熱しない。
【0011】
また、本発明は、上記の構成の画像形成装置において、前記ドラムカバーを取り付けるフレームが設けられるとともに、前記フレームの端部を嵌合させて、保護状態と退避状態間の移動を案内するスライドガイド部材が装置本体に設けられ、前記開閉カバーと前記フレームとに揺動自在に取り付けられるアーム部材が設けられ、前記開閉カバーの開閉操作に伴って、前記アーム部材が揺動して、前記ドラムカバーが保護状態と退避状態とに移動する画像形成装置であって、前記スイッチ部材の一方の接点部が前記スライドガイド部材に設けられ、前記スイッチ部材の他方の接点部が前記端部に設けられることを特徴としている。この構成によれば、開閉カバーの開閉操作に連動して、スイッチ部材が作動し、ヒータが通電と非通電に切り換えられる。
【0012】
また、本発明は、上記の構成の画像形成装置において、装置本体の内外の温度を検出する温度センサが設けられ、前記ドラムカバーが保護状態にあるときに、前記温度センサにより検出された装置本体の内外の温度差が所定値を越えると、前記ヒータが通電されることを特徴としている。この構成によれば、開閉カバーが開いて、装置本体内に外気が入り込んでも、感光体ドラムの表面温度が低下することがなく、また、この温度差が所定値を越えていないときには、ヒータが通電されない。
【0013】
また、本発明は、上記の構成の画像形成装置において、前記ドラムカバーは可撓性を有するシート材で形成され、前記ヒータが該シート材に貼り付けられることを特徴としている。この構成によれば、ヒータを貼り付けたドラムカバーの移動経路が、屈曲し、また僅かの隙間に設定されても、ドラムカバーがその経路に沿って移動する。
【0014】
また、本発明は、上記の構成の画像形成装置において、前記感光体ドラムは、該表面にアモルファスシリコン層が形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、開閉カバーの開操作に伴って、ドラムカバーが感光体ドラムの搬送路側に移動すると、ドラムカバーに設けたヒータが感光体ドラムに対面し、感光体ドラムを加熱するので、ジャム処理等の作業者の手や装身具、工具等が感光体ドラムに接触し傷つけるのを保護することができるとともに、感光体ドラムが装置本体外の温度・湿度の影響を受けることなく、感光体ドラム表面の水分を除去することができ、静電潜像の乱れや画像の滲みが抑制され、鮮明な画像が得られる。また、ヒータがドラムカバーに取り付けられるだけであるので、装置が大型化することがなく、簡単な装置構成になる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、開閉カバーが開いているときにはヒータが発熱し、開閉カバーが閉じているときには、ヒータが発熱しないので、省電力にすることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明によれば、簡単なスイッチ構成により、開閉カバーの開閉操作に連動したスイッチ部材が作動し、ヒータの通電・非通電を切り換えることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、開閉カバーが開いて、装置本体内に外気が入り込み、装置本体の内外の温度差が所定値を越えると、ヒータが通電されるために、感光体ドラムの表面温度が低下することがないので、結露等による感光体ドラム表面の水分を除去することができ、静電潜像の乱れや画像の滲みが抑制され、鮮明な画像が得られる。また、開閉カバーが開いても、この温度差が所定値を越えていないときには、ヒータが通電されないので、省電力にすることができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明によれば、ヒータを貼り付けたドラムカバーの移動経路が、屈曲し、また僅かの隙間に設定されても、ドラムカバーがその経路に沿って移動するので、画像形成装置内における各機構の配置上の制約を少なくすることができ、装置のコンパクト化が図り易くなる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明によれば、感光体ドラム表面にアモルファスシリコン層が形成されても、ヒータの加熱により、アモルファスシリコン層の水分を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。本発明の実施形態は発明の最も好ましい形態を示すものであり、また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の要部を示す平面図である。この画像形成装置1は、例えば、複写機やファクシミリやプリンタ等として構成されている。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置1は、給紙カセット31に収納した用紙Pをピックアップローラ32によって1枚ずつ取り出し、搬送ローラ33を経てレジストローラ対34にまで搬送する。表面にアモルファスシリコン層が積層された感光体ドラム3が帯電器35による放電により帯電され、帯電処理が施された感光体ドラム3の表面に露光装置から画像情報に基づく光が照射され、光が当たった部分の帯電状態の消滅によって静電潜像が形成される。この静電潜像に向けて現像装置36からトナーが供給されると、感光体ドラム3の表面にトナー像が形成され、このトナー像がレジストローラ34によって所定のタイミングで給紙される用紙Pに転写される。転写後の用紙Pが定着部4に搬送されるように構成されており、これら一連の用紙Pの搬送路5が、装置本体1Aの縦方向に設定されている。
【0024】
また、装置本体1Aの側壁を構成する片側壁部分には、装置本体1Aの内部に通じる開閉カバー6が搬送路5の近傍に配設される。開閉カバー6は、その下縁部を、装置本体1Aに対して回転可能に軸支して連結されており、その支軸周りに揺動操作すると、装置本体1Aと開閉カバー6との間で開口が形成される開状態(図1に一点鎖線で示す)と画像形成が可能である閉状態とに切り換えられる。開閉カバー6が閉操作されて閉状態にあるときには、後述するカバー移動機構8との連動により、ドラムカバー7が感光体ドラム3の上方側にあるが、この開閉カバー6が開操作されて開状態にあるときには、カバー移動機構8との連動により、ドラムカバー7が開閉カバー6と感光体ドラム3との間の搬送路5側に移動するように構成されている。
【0025】
以下に、ドラムカバー7とカバー移動機構8とについて詳しく説明する。ドラムカバー7は、開閉カバー6の開操作に伴って、感光体ドラム3の搬送路5側に移動し、ジャム処理等の作業者の手や装身具、工具等が感光体ドラム3に接触し傷つけるのを保護するものである。また、ドラムカバー7は、耐熱性高分子量ポリエチレン製で、可撓性を有する矩形状のシート材で形成してあり、感光体ドラム3の幅方向(図1に示す紙面の奥行き方向)寸法が感光体ドラム3の幅方向長さ以上に設定されるとともに、横方向(図1に示す左右方向)寸法が感光体ドラム3の外径の約2倍程度に設定され、開閉カバー6の閉状態では、感光体ドラム3の上方側に配置される。
【0026】
カバー移動機構8は、ドラムカバー7を移動させるものである。つまり、カバー移動機構8は、開閉カバー6の開操作に伴って、ドラムカバー7を搬送路5側に位置させる保護状態と、開閉カバー6の閉操作に伴って、ドラムカバー7を感光体ドラム3の上方側に位置させる退避状態とに移動させるように構成されている。
【0027】
次に図2、図3に基づいて、カバー移動機構8の構成を詳細に説明する。図2は、開閉カバー6の閉状態におけるカバー移動機構8を示す平面図である。図3は、開閉カバー6の閉状態におけるカバー移動機構8を示す斜視図である。
【0028】
図2、図3に示すように、フレーム9は、前フレーム9aと後フレーム9bとを備え、前フレーム9aがドラムカバー7の前方縁部7aをほぼ全幅にわたって固定指示し、後フレーム9bが後方縁部7bをほぼ全幅にわたって固定支持する。また、これら両フレーム9a、9bには、各一対の端部9c、9dが形成される。各一対の端部9c、9dが各一対のスライドガイド溝10a、10bにそれぞれ嵌合されており、フレーム9がスライドガイド溝10a、10bに沿って移動自在に支持されることになる。
【0029】
スライドガイド部材は、縦スライドガイド部材10cと横スライド部材10dを備える。縦スライドガイド部材10cと横スライド部材10dは、それぞれ上記のスライドガイド溝10a、10bを備え、装置本体1Aに固定支持される。その溝には、縦方向のものと横方向のものとの二種類があり、縦スライドガイド溝10aは、感光体ドラム3と開閉カバー6との間で縦配置(図2に示す略上下方向)に形成され、横スライドガイド溝10bは感光体ドラム3の上方で横配置(図2に示す左右方向)に形成される。縦スライドガイド溝10aには、ドラムカバー7の前方縁部7aに取り付けられた前フレーム9aの端部9cが嵌合されている。一方、横スライドガイド溝10bには、後方縁部7bに取り付けられた後フレーム9bの端部9dが嵌合されている。
【0030】
一対のリンクアーム11は、その一端部がそれぞれ前フレーム9aの一対の端部9cにおいて揺動自在に取り付けられ、その他端部がそれぞれ開閉カバー6の裏面部において揺動自在に取り付けられる。この一対のリンクアーム11によって、開閉カバー6と前フレーム9aとの連動が可能となっており、開閉カバー6が閉状態にあるときには、縦スライドガイド溝10aの上端部に前フレーム9aが位置し、一方開閉カバー6が開状態にあるときは、縦スライドガイド溝10aの下端部に前フレーム9aが位置するように、フレーム9が移動されることになる。
【0031】
一対の帯状体12は、ポリエステル(PET)樹脂製で薄板状に形成され、その一端部が一対のコイルバネ12aに取り付けられ、その他端部が後フレーム9bの一対の端部9dに取り付けられる。一対のコイルバネ12aが装置本体1Aに固設される。従って、コイルバネ12aの付勢力により、後フレーム9bが帯状体12を介して後方側(図2に示す実線矢印の逆方向)に引き寄せられ、さらに、ドラムカバー7が常に伸張した状態に保持される。そして、開閉カバー6の開操作に伴って、ドラムカバー7が図2に示す実線矢印方向に移動すると、帯状体12を介してコイルスプリング12aが伸びることで、ドラムカバー7の移動を許容しながら、ドラムカバー7の伸長状態を維持するように構成されている。
【0032】
尚、一対のシートガイド13がドラムカバー7の下面に沿う状態で配置されており、ドラムカバー7は、開閉カバー6の開閉操作に伴って移動する際に、シートガイド13の円弧部13aに当接して移動経路を案内される。
【0033】
図3に示すように、ヒータ14は、シート状の発熱体で形成され、開閉カバー6が開状態にあるときに感光体ドラム3の表面を加熱するものであり、感光体ドラム3に対向するようにドラムカバー7の下面に貼り付けられる。
【0034】
図4は、ヒータの通電を切り換えるスイッチ部材を示す側面図である。スイッチ部材15は、板状のスイッチ片15aが縦スライドガイド部材10cに固設され、接点15bが前フレーム9aの端部9cに設けられる。開閉カバー6が閉状態にあるときには、図4に示すように、接点15bがスイッチ片15aに接触せず、ヒータ14は通電していない。一方、開閉カバー6が開操作されると、端部9cが縦スライドガイド溝10aに案内され、図4に示す矢印方向に移動して、開閉カバー6の開状態において、接点15bがスイッチ片15aに接触して、ヒータ14が通電される。
【0035】
次に、カバー移動機構8によるドラムカバー7とヒータ14の移動動作について、図2、図3及び図5、図6に基づいて説明する。図5は、開閉カバー6の開状態におけるカバー移動機構8を示す平面図であり、図6は、開閉カバー6の開状態におけるカバー移動機構8を示す斜視図である。
【0036】
開閉カバー6の開操作に伴って、図2の二点鎖線の矢印に示すように、開閉カバー6が移動すると、リンクアーム11により、前フレーム9aが開閉カバー6に連動して、端部9cが縦スライドガイド溝10aの上端部の位置から、その溝に沿って図2の実線矢印方向に案内され、前フレーム9aが図2の実線矢印方向に移動する。また、前フレーム9aの移動に伴い、ドラムカバー7を介して、端部9dが横スライドガイド溝10bの右端部の位置から、その溝に沿って図2の実線矢印方向に案内され、後フレーム9bが図2の実線矢印方向に移動する。このとき、帯状体12のコイルスプリング12aが引っ張られるので、ドラムカバー7は、伸張した状態で、シートガイド13に案内され、図2の実線矢印方向に移動する。そして、前フレーム9aが縦スライドガイド溝10aの下端部の位置まで移動すると、ドラムカバー7は、図5、図6に示すように、感光体ドラム3に搬送路5(図1参照)側で対向して覆う保護状態に至る。また、前フレーム9aが縦スライドガイド溝10aの下端部の位置まで移動すると、スイッチ部材15(図4参照)の接点15bがスイッチ片15aに接触し、ドラムカバー7に設けたヒータ14が通電される。ヒータ14が発熱することにより、感光体ドラム3の表面が加熱される。
【0037】
次に、開閉カバー6の閉操作に伴って、図5の二点鎖線の矢印に示すように、開閉カバー6が移動すると、リンクアーム11により、前フレーム9aが開閉カバー6に連動して、端部9cが縦スライドガイド溝10aの下端部の位置から、その溝に沿って図5の実線矢印方向に案内され、前フレーム9aが図5の実線矢印方向に移動する。また、前フレーム9aの移動に伴って、コイルスプリング12aの縮まろうとする力により、端部9dが横スライドガイド溝10bに沿って図5の実線矢印方向に案内され、後フレーム9bが図5の実線矢印方向に移動する。このとき、ドラムカバー7は、伸張した状態でシートガイド13に案内され、感光体ドラム3の上方に移動して退避状態に至る。また、前フレーム9aが縦スライドガイド溝10aの下端部の位置から移動すると、スイッチ部材15(図4参照)の接点15bがスイッチ片15aに非接触となり、ドラムカバー7に設けたヒータ14が非通電になる。
【0038】
第1実施形態によれば、装置本体1Aの内部に通じ揺動自在な開閉カバー6の裏側に、用紙Pを搬送する搬送路5が設けられるとともに、この搬送路5に対して開閉カバー6の反対側に感光体ドラム3が設けられ、開閉カバー6の開操作に伴って、感光体ドラム3の搬送路5側に移動して感光体ドラム3を覆う保護状態となる一方、開閉カバー6の閉操作に伴って、感光体ドラム3の搬送路5側から退避する退避状態となるドラムカバー7が設けられ、ドラムカバー7の保護状態で感光体ドラム3に対向する面に面状のヒータ14が設けられる。
【0039】
この構成によれば、開閉カバー6の開操作に伴って、ドラムカバー7が感光体ドラム3の搬送路5側に移動することによって、ドラムカバー7が感光体ドラム3の搬送路5側を覆い、ジャム処理等の作業者の手や装身具、工具等が感光体ドラム3に接触し傷つけるのを保護することができる。また、開閉カバー6を開けてジャム処理等の作業をする際に、装置本体1A内が開放されていると、感光体ドラム3は、装置本体1A外の環境の影響により、その表面の温度が低下し湿度が高くなり、また急激な温度変化により結露が発生することがある。しかし、この構成によれば、開閉カバー6の開操作に伴って、ドラムカバー7が感光体ドラム3の搬送路5側に移動すると、ドラムカバー7に設けたヒータ14が感光体ドラム3に対面して、感光体ドラム3を加熱するので、感光体ドラム3が装置本体1A外の温度・湿度の影響を受けることなく、感光体ドラム3表面の水分を除去することができ、静電潜像の乱れや画像の滲みが抑制され、鮮明な画像が得られる。
【0040】
また、この構成によれば、面状のヒータ14がドラムカバー7に取り付けられるだけであるので、装置が大型化することがなく、簡単な装置構成になる。
【0041】
また、第1実施形態によれば、ヒータ14の通電を切り換えるスイッチ部材15が設けられ、開閉カバー6の開操作に伴って、スイッチ部材15がヒータ14を通電させることによって、開閉カバー6が開いているときにはヒータ14が発熱し、開閉カバー6が閉じているときには、ヒータ14が発熱しないので、省電力にすることができる。
【0042】
また、第1実施形態によれば、ドラムカバー7を取り付ける前フレーム9a及び後フレーム9bが設けられるとともに、前フレーム9aの端部9cと後フレーム9bの端部9dとを嵌合させて、保護状態と退避状態間の移動を案内する縦スライドガイド溝10a、横スライドガイド溝10bが装置本体1Aに設けられ、開閉カバー6と前フレーム9aとに揺動自在に取り付けられるリンクアーム11が設けられ、開閉カバー6の開閉操作に伴って、リンクアーム11が揺動し、ドラムカバー7が保護状態と退避状態とに移動する。そして、スイッチ部材15のスイッチ片15aが縦スライドガイド部材10cに設けられ、接点15bが前フレーム9aの端部9cに設けられる。このことによって、簡単なスイッチ構成により、開閉カバー6の開閉操作に連動したスイッチ部材15が作動して、ヒータ14が通電と非通電に切り換えられる。
【0043】
また、第1実施形態によれば、ドラムカバー7は可撓性を有するシート材で形成され、面状のヒータ14がこのシート材に貼り付けられることによって、ヒータ14を貼り付けたドラムカバー7の移動経路が、屈曲し、また僅かの隙間に設定されても、その経路に沿ってドラムカバー7を移動させることができるので、画像形成装置1内における各機構の配置上の制約を少なくすることができ、装置のコンパクト化が図り易くなる。
【0044】
また、第1実施形態によれば、感光体ドラム3表面にアモルファスシリコン層が積層されても、ヒータ14の加熱により、アモルファスシリコン層の水分を除去することができる。
【0045】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態である画像形成装置のヒータ制御を示すブロック図である。第1実施形態と異なる、温度センサに基づいてヒータを制御する構成について説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0046】
図7に示すように、画像形成装置1は、制御手段21、サーミスター等の温度センサ22、23、ヒータ14及び開閉スイッチ24を備える。
【0047】
温度センサ22は、感光体ドラム3の近傍に設けられ、感光体ドラム3の表面温度を測定し、その測定結果をCPU等の制御手段21に出力する。また別の温度センサ23は、装置本体1Aの開閉カバー6を備える側壁に、センサ面を装置本体1Aの外側に向けて設けられ、装置本体1Aの外気の温度を測定し、その測定結果を制御手段21に出力する。
【0048】
ヒータ14は、開閉カバー6の開操作に伴って、搬送路5側に移動するドラムカバー7の感光体ドラム3に対向する面に設けられる。
【0049】
開閉スイッチ24は、開閉カバー6の開閉操作に伴い、オンオフするスイッチであり、開閉カバー6の開操作により、オンする。開閉スイッチ24がオンすると、制御手段21は、開閉スイッチ24がオンしたときの温度センサ22、23から出力される各温度の差を算出する。この温度差は、開閉レバー6の開操作により装置本体1Aが開放されて、感光体ドラム3に入り込む直前の外気温度と感光体ドラム3の表面温度との違いである。装置本体1A内に外気が入り込むと、感光体ドラム3の表面温度は、例えば、温度差が大きければ外気温度の近くまで低下し、結露が発生するおそれがあり、一方、この温度差が小さければ感光体ドラム3の表面温度から僅かに低下するのみで、水分が感光体ドラム3表面に付着するおそれがないことになる。よって、制御手段21は、この温度差が結露等によりその表面に水分が付着するおそれがある所定の温度を超えると、ヒータ14を通電して発熱させる。
【0050】
第2実施形態によれば、装置本体1A内の感光体ドラム3の表面温度を検出する温度センサ22と装置本体1Aの外気温度を検出する温度センサ23が設けられ、開閉カバー6が開いて、装置本体内に外気が入り込み、各温度センサ22、23により検出した装置本体1Aの内外の温度差が所定値を越えると、ヒータ14が通電されることによって、感光体ドラム3の表面温度が低下することがないので、結露等による感光体ドラム3表面の水分を除去することができ、静電潜像の乱れや画像の滲みが抑制され、鮮明な画像が得られる。また、開閉カバー6が開いても、この温度差が所定値を越えていないときには、ヒータ14が通電されないので、省電力にすることができる。
【0051】
また、この構成によれば、開閉カバー6が開くと直ぐに、必要ならばヒータ14が通電されることによって、装置本体1A内に外気が入り込んで感光体ドラム3表面の温度が低下する直前から、ヒータ14が発熱されるので、ヒータ14の温度上昇にタイムラグがあっても、感光体ドラム3表面の水分を除去することができる。
【0052】
尚、上記第1および第2実施形態では、ドラムカバー7は可撓性を有するシート材で形成され、ヒータ14がこのシート材に貼り付けられる構成を示したが、本発明はこれに限らず、剛性を備えるプラスチックで形成されたドラムカバーにヒータを設けても良い。この場合、ドラムカバー7は、感光体ドラム3の外周の一部を覆うように、断面円弧形状にするとよい。
【0053】
また、上記第1および第2実施形態では、面状ヒータ14がドラムカバー7に貼り付けられる構成を示したが、本発明はこれに限らず、トラムカバー7が面状ヒータで構成されてもよい。この場合も上記同様、効果を奏することができる。
【0054】
また、上記第1および第2実施形態では、感光体ドラム3はその表面にアモルファスシリコン層が積層される構成を示したが、本発明はこれに限らず、その表面に他の感光層を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の要部を示す平面図である。
【図2】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の開閉カバーの閉状態におけるドラムカバーとヒータを示す平面図である。
【図3】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の開閉カバーの閉状態におけるドラムカバーとヒータを示す斜視図である。
【図4】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置のスイッチ部材を示す側面図である。
【図5】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の開閉カバーの開状態におけるドラムカバーとヒータを示す平面図である。
【図6】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の開閉カバーの開状態におけるドラムカバーとヒータを示す斜視図である。
【図7】は、本発明の第2実施形態である画像形成装置のヒータ制御を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1A 装置本体
3 感光体ドラム
5 搬送路
6 開閉カバー
7 ドラムカバー
7a 前方縁部
7b 後方縁部
8 カバー移動機構
9 フレーム
9a 前フレーム(フレーム)
9b 後フレーム(フレーム)
9c、9d 端部
10a 縦スライドガイド溝(スライドガイド溝)
10b 横スライドガイド溝(スライドガイド溝)
10c 縦スライドガイド部材(スライドガイド部材)
10d 横スライドガイド部材(スライドガイド部材)
11 リンクアーム(アーム部材)
12 帯状体
14 ヒータ
15 スイッチ部材
15a スイッチ片(接点部)
15b 接点(接点部)
22、23 温度センサ
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の内部に通じる揺動自在な開閉カバーの裏側に、用紙を搬送する搬送路が設けられるとともに、前記搬送路に対して前記開閉カバーの反対側に感光体ドラムが設けられ、前記開閉カバーの開操作に伴って、前記感光体ドラムの前記搬送路側に移動して前記感光体ドラムを覆う保護状態となる一方、前記開閉カバーの閉操作に伴って、前記感光体ドラムの前記搬送路側から退避する退避状態となるドラムカバーが設けられ、前記ドラムカバーの保護状態で前記感光体ドラムに対向する面に面状のヒータが設けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ヒータの通電を切り換えるスイッチ部材が設けられ、前記開閉カバーの開操作に伴って、前記スイッチ部材が前記ヒータを通電させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ドラムカバーを取り付けるフレームが設けられるとともに、前記フレームの端部を嵌合させて、保護状態と退避状態間の移動を案内するスライドガイド部材が装置本体に設けられ、前記開閉カバーと前記フレームとに揺動自在に取り付けられるアーム部材が設けられ、前記開閉カバーの開閉操作に伴って、前記アーム部材が揺動して、前記ドラムカバーが保護状態と退避状態とに移動する画像形成装置であって、前記スイッチ部材の一方の接点部が前記スライドガイド部材に設けられ、前記スイッチ部材の他方の接点部が前記端部に設けられることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
装置本体の内外の温度を検出する温度センサが設けられ、前記ドラムカバーが保護状態にあるときに、前記温度センサにより検出された装置本体の内外の温度差が所定値を越えると、前記ヒータが通電されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ドラムカバーは可撓性を有するシート材で形成され、前記ヒータが該シート材に貼り付けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体ドラムは、該表面にアモルファスシリコン層が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−69387(P2009−69387A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236632(P2007−236632)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】