画像形成装置
【課題】隔壁で囲まれた領域内への塗工量誤差を大幅に低減し、高精度なインクジェット塗工を可能にした画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置において、インクジェットヘッドは画素の行方向または列方向に一定のピッチで配列され、かつ隔壁20で囲まれた複数の領域20aへのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、このインク吐出用ノズルからインク粒が吐出される複数の領域20aのうち、互いに隣接する少なくとも2つの領域20a間を隔てる隔壁部分20bに、それら領域20a間を連通しインク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域20a間を流動できる流路21が形成され、この流路21で連通された少なくとも2つの領域20a内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように領域21a内へインク粒を吐出する前記インク吐出用ノズルの吐出量を制御するように構成した。
【解決手段】画像形成装置において、インクジェットヘッドは画素の行方向または列方向に一定のピッチで配列され、かつ隔壁20で囲まれた複数の領域20aへのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、このインク吐出用ノズルからインク粒が吐出される複数の領域20aのうち、互いに隣接する少なくとも2つの領域20a間を隔てる隔壁部分20bに、それら領域20a間を連通しインク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域20a間を流動できる流路21が形成され、この流路21で連通された少なくとも2つの領域20a内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように領域21a内へインク粒を吐出する前記インク吐出用ノズルの吐出量を制御するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録法を用いた画像形成装置に関し、特にカラーフィルタや有機半導体による発光表示器等の光学素子を基板上の隔壁(バンクとも呼ばれる)内に精密に定量塗工して形成するインクジェット精密パターンコート方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット法でカラーフィルタ等を塗工する場合、フラットベットステージにガラス等の基板を載置し、インクジェットヘッドを保持したヘッドユニットから基板に直接塗工液を吐出させることにより画像を形成するようにしている(特許文献1参照)。
例えば、図1に示すように、基板5上の予め形成したブラックマトリックス1を隔壁として利用し、その内部にインクジェットヘッド4からインク粒(以後ドロップレットと呼ぶ)3を吐出させて色材層2を得る。
尚、この図1において、インクジェットヘッド4もしくは基板(ブラックマトリックス1を含む基板)の走査方向は矢印Sで示す方向である。
【0003】
インクジェット精密パターンコート方式による画像の形成に際しては、図1に示すようにブラックマトリックス(隔壁)1で囲まれたインク注入用の開口部1aを有する基板5を作る。以下、このブラックマトリックス1の開口部1a中に実際に各ノズルからインクを入れ込む場合の動作について図面を参照して説明する。
図2は、ブラックマトリックス1と、各ノズルから吐出されるドロップレット3を表したもので、ここでは、説明を簡単にするために、1本のインクジェットヘッドから、複数のノズルとその各々のノズルから吐出される各ドロップレットとカラーフィルタの1画素(以下、セルと呼ぶ)との関係を示している。
この図2では、ノズル番号26〜30の5つのノズルから吐出される5つのドロップレット3で、1つのセルを塗工している。但し、ノズル番号25と31に対応するノズルは、ブラックマトリックス1と干渉する位置にあるため、これらノズルからインクが吐出されないように休止ノズルとしてある。
なお、実際にはノズルのピッチとブラックマトリックスのピッチとが一致して互いに重なるような位置関係にはならないことが多いが、ここでは、説明を簡単にするために、重なる形で示されている。
上記図2において、ドロップレット3の径(簡易的にドット径と考えても良い)が大きくなっていることがわかる。この現象について、図3を参照して説明する。
図3は、ドロップレット3,つまりノズル番号28に対応するノズルの吐出量が増えてしまう理由を説明するもので、ノズル番号25,26等の下に付したA,B,Cは吐出相を表し、この図3の例では、複数のノズルを3つの相に分割した場合を示している。
【0004】
インクジェットヘッドには、大別して、連続噴射法(コンティニアス方式とも呼ばれる)とドロップオンデマンド法(通称DOD)との2種類がある。
連続噴射法では、ドロップレットの着弾精度が概して悪く、かつドロップレットの粒度が大きく、更にインクに荷電性能を付与させたり、顔料などの色材使用に制限があるなどの観点から、カラーフィルタや有機エレクトロルミネッセンス等塗膜に対する純度や塗工量管理の厳しい用途には使用できない。
従って、画像形成させるときのみ、ノズルからドロップレット(インク粒)を吐出させるドロップオンデマンド方式(DOD方式)が用いられている。
ドロップオンデマンド方式でドロップレットを吐出させる場合、全ノズルを同時に吐出させる場合と、ノズルを2つ以上の相に分割して分割吐出させる場合がある。図3は3相分割式の場合を示している。
【0005】
3相分割式では、隣接するノズルの振動圧力の影響を受けにくい等の理由で、小型で高密度のインクジェットヘッドが実現できるメリットを有する。
そして、図3では、ブラックマトリックス1と干渉するノズル番号25,31に対応する休止ノズルは共にA相で同相にある。この休止したノズルと同相のノズル、すなわちインクを吐出しているノズル番号28に対応するノズルもA相にあるため、他のB,C相のノズルと違って、休止ノズルの圧力干渉を受ける。この干渉はクロストーク等と呼ばれているもので、休止ノズルの影響が吐出ノズルに影響を及ぼし、結果として吐出液量が変わってしまう。
つまり、ノズル番号28のノズルはノズル番号25のノズルからすると、4番目で1番目(A相)と同相の隣接ノズルになり、また、ノズル番号31のノズルからも、同様に4番目で1番目(A相)と同相の隣接ノズルとなる。この場合、その影響を受けて吐出ドロップレット3Aが図3に示すように多くなっている。
図3では、吐出量として、通常のノズルでは6plを表しているが、ノズル番号28のノズルでは7.2plと増えていることがわかる。
【0006】
ところで、インクジェットヘッドの各ノズルのピッチとブラックマトリックスの開口部のピッチが一致することは殆ど無く、ズレが生じる。このズレを考慮して現実に近い形で各ノズル41とブラックマトリックス1の開口部1Aとの位置関係を示すと図4のような配列状態となる。
この図4において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブラックマトリックス1の各開口部1A内における各ノズルによる塗工液量は図4に示すような値(例えば120pl)となる。
【特許文献1】特願2001−228320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5は、上記休止ノズルの影響で各ノズルからの吐出量に誤差が生じた場合を示している。
この図5において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブラックマトリックス1の各開口部1A内における各ノズルによる塗工液量は図4に示すような値(例えば120pl)となる。
また、図5から明らかように、ノズルピッチとブラックマトリックスピッチが一致しないことからクロストークの影響により、A,C相にある吐出ノズルの基準吐出量が他の相Cの吐出ノズルの基準吐出量より多くなり、各ノズルの吐出量にバラツキが生じ、カラーフィルタのブラックマトリックス1の開口部毎に、その塗工液量が異なってしまう。さらに、実際には各ノズルから吐出される吐出インク量にもバラツキがあり、その結果、クロストークの影響が同じであっても、開口部1A毎で実際の吐出量は異なってしまう。
このように異なる吐出量は、カラーフィルタでは透過色むらとなり、有機ELでは発光ムラとなり、画像に筋状のムラ不良を起こしてしまい、インクジェット塗工最大の問題となっていた。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、隔壁で囲まれた領域内への塗工量誤差を大幅に低減し、高精度なインクジェット塗工を可能にした画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、基板と、互いに直行する方向である行方向及び列方向に配列された画素毎に該画素を囲むようにして前記基板上に形成された隔壁と、前記隔壁で囲まれた領域内の前記基板上にインク粒を所定量吐出するインクジェットヘッドとを備える画像形成装置であって、前記インクジェットヘッドは前記画素の行方向または列方向に一定のピッチで配列され、かつ前記隔壁で囲まれた複数の領域へのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、前記インク吐出用ノズルからインク粒が吐出される前記複数の領域のうち、互いに隣接する少なくとも2つの前記領域間を隔てる隔壁部分に、それら領域間を連通し前記インク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域間を流動できる流路が形成され、前記流路で連通された前記少なくとも2つの領域内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように前記少なくとも2つの領域内へインク粒を吐出する前記インク吐出用ノズルの吐出量を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、特許請求項1記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、特許請求項2記載の画像形成装置において、前記インクジェットヘッドは、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で前記各インク吐出用ノズルからの吐出量が可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドであり、前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように前記各インク吐出用ノズルの吐出ドロップ数を変化させることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、特許請求項1記載の画像形成装置において、前記流路は、前記隔壁の一部を切り欠くか、前記隔壁を形成する組成物の膜厚を薄くするか、前記隔壁を形成する撥インク剤を含む組成物の撥液性を下げるかの何れかで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置によれば、流路で連通された少なくとも2つの領域内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように前記少なくとも2つの領域内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御手段で制御するようにしたので、隔壁で囲まれた領域内への塗工量誤差を大幅に低減できるとともに、高精度なインクジェット塗工を可能になる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置によれば、制御手段により、各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御するようにしたので、休止ノズルによるクロストーク(圧力干渉)での塗工量バラツキの他に、各ノズル毎の塗工量バラツキや温度差で生じる塗工量バラツキ等様々な現象毎に生じている塗工量誤差を最小化する上で非常に簡易に扱うことができる。
また、本発明の画像形成装置によれば、インクジェットヘッドに、微少ドロップを1個以上の連続した吐出数で各ノズルからの吐出量を可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドを使用しているので、吐出量誤差の最小化に際して、塗工量誤差を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明にかかる画像形成装置は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図6は、本実施の形態1における画像形成装置の全体図である。
この図6において、画像形成装置は、矢印Y方向に移動可能な精密搬送ステージ10、この精密搬送ステージ10上に吸着板18を介して載置された基板11、第1ガントリー12上に矢印X1に移動可能に支持された第1ヘッドユニット14、第2ガントリー13上に矢印X2に移動可能に支持された第2ヘッドユニット15、精密搬送ステージ10の左右側方にそれぞれ位置して配設された第1ヘッドユニット用メンテナンスステーション16及び第2ヘッドユニット用メンテナンスステーション17、第1ヘッドユニット14及び第2ヘッドユニット15へのインク吐出用ノズルの吐出量を制御する制御手段19を備えて構成される。吸着板18は、基板11を吸着保持または解除開放するものである。
【0017】
図6において、精密搬送ステージ10上に設けた吸着板18上には、図示しない基板搬送ロボットにより、予め隔壁となるブラックマトリックスを表面に形成してあるガラス基板11がセットされる。この場合、基板11から見て、これより上方位置する2つのヘッドユニット14,15を塗工すべき所定の位置に搬送する門型の第1ガントリー12及び第2ガントリー13によって矢印X1,X2の方向に移動できるようになっている。
そして、この第1ガントリー12には約600mmの塗工エリアを持つ第1ヘッドユニット14が搭載され、第2ガントリー13には第1ヘッドユニット14と同様な第2ヘッドユニット15が搭載されており、ガラス基板11上の図示しない隔壁内に、第1ヘッドユニット14及び第2ヘッドユニット15のそれぞれのインク吐出用ノズルにて目標液量を塗工する。
【0018】
尚、実際の塗工では吸着板18を方向Y側に走査し、この走査毎に、各ヘッドユニット14及び15をX1方向またはX2方向に移動して1枚の基板11に塗工を行う。
また、基板11上において、隔壁で囲まれた画素領域に一定量の塗工が終了すると、インクジェットヘッドの表面に付着したミスト等を除去して清浄に保つために、メンテナンスステーション16は第1ヘッドユニット14がメンテナンスの対象となり、メンテナンスステーション17は第2ヘッドユニット15がメンテナンスの対象となる。
【0019】
各ヘッドユニット14,15とカラーフィルタ塗工との関係を図7及び図8を用いて説明する。
最初に図8を用いて説明する。図8は、図6に示した2つのヘッドユニット14,15を上部からみた図面であり、予め隔壁となるブラックマトリックスを表面に形成してあるガラス基板11に対し第1ヘッドユニット14と第2ヘッドユニット15の2ユニットにて塗工を行っているところを示したものである。
ここで、各ヘッドユニット14,15は走査幅500mmで3色分のインクジェットヘッド14a,15aがそれぞれ600dpiのノズル密度で配置してある。従って1つのユニットでは約42μmごとに各色のノズルが配置されていることになる。
また、各ノズルは6plを基準ドロップとして4ビットのマルチドロップ駆動を行っており、6〜90plの吐出液量を6pl刻みで変更できる。しかしながら、各ノズルのクロストーク等により実際の吐出量は異なることは前述した通りである。
【0020】
ところで、図8では2つのヘッドユニット14,15を、あたかも連結して1200dpiの大きなヘッドユニットとして見なせるように使用している。これをタンデムモードと呼んでいるが、隔壁で囲まれた各画素領域に対応するインク吐出用ノズルの数を増やすことによって、塗工速度を早くする、あるいは1つのヘッドユニットでは往復して塗工する条件を片道のみの塗工で済ませるといった塗工時間短縮のために、このような装置にしてある。つまり、各画素毎に約21μmずつのピッチでノズルが配置されていることに相当する。
この実施の形態では、1200dpiのタンデムモードにて約40インチのカラーフィルタ6面付け基板を片道塗工のみで、200mm/sec,3色同時にできることを確認された。
【0021】
次に、図7について説明する。上記のようにタンデムモードで塗工できる場合は、塗工タクト上有利であるが、インクジェットで塗工する場合、ノズルの定期的なメンテナンスをしないと不吐出や吐出方向の曲がり(ミスディレクションと呼ばれている)が生じて製品不良を作成してしまうことになる。また、突発的に不吐出やミスディレクション等でノズルメンテナンスをしなくてはならないケースもありうる。
更にインクジェットヘッドは消耗品であり定期的に交換する必要もある。このような各種トラブルや保守の度に塗工装置を止めてしまっては安定生産が実現できない。従って、本実施の形態では、ヘッドユニット14,15のうち、どちらか1方のヘッドユニットが何らかの事情で使用できない場合であっても、片側のヘッドユニットのみで塗工できるシングルモードが備わっている。これを示したのが図7であり、この図7では、第1ヘッドユニット14のみで運転をしている状態である。但し、タンデムモードとの塗工条件が違うと塗工後のカラーフィルタ品質に違いができてしまうので、ここでは、600dpiで片側塗工したあと、1/1200dpiピッチに相当する21μmガントリー位置をずらしてもう片方を塗工する疑似1200dpi塗工を行っている。従って、片側での塗工では往復して1つの塗工スキャンが終了する。
但し、隔壁内に対する各インク吐出用ノズルはシングルモードとタンデムモードでは違うので各モード毎にレシピを作成し、かつ、後述するように流路で連通された隔壁内での吐出量を揃えるように誤差最小化計算を制御手段19(図6参照)で各ノズルの計数より実施し、別レシピとして管理している。
【0022】
次に、図9〜図11を参照して本発明の画像形成装置における領域内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御する場合について説明する。
図9は、画像形成装置のカラーフィルタをインクジェット精密パターンコート方式で形成する場合を示すものである。この図9において、図示省略の基板上には、互いに直行する方向である行方向及び列方向に配列された画素毎に該画素を囲むようにして格子状の隔壁20が形成されている。この格子状の隔壁20において、行方向(横方向)に配列された各行の隔壁20がカラーフィルタ用の赤、緑、青に対応するものである。
また、隔壁20で囲まれた領域20a内の基板上にインク粒を所定量吐出するインクジェットヘッド(図6のヘッドユニット14,15に相当)は前記画素の行方向(または列方向)に一定のピッチで配列され、かつ隔壁20で囲まれた複数の領域20aへのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、このインク吐出用ノズルからインク粒が吐出される前記複数の領域20aのうち、図9に示すように、互いに隣接する少なくとも2つの領域20a間を隔てる隔壁部分20bに、それら領域20a間を連通しインク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域20a間を流動できる流路21が形成されている。この流路21で連通された少なくとも2つの領域20a内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように少なくとも2つの領域20a内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御手段19で制御するように構成されている。
【0023】
前記制御手段19は、各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御する構成されている。
なお、インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数をテーブルで構成し、このテーブルを利用して、インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じた係数を自動的に選択し、この選択された係数に基づいて関数処理すればよい。
また、本実施の形態におけるインクジェットヘッドは、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で各インク吐出用ノズルからの吐出量が可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドであり、制御手段19は、各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように各インク吐出用ノズルの吐出ドロップ数を変化させるようになっている。
【0024】
図10において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブ隔壁20で囲まれた領域20a内における各ノズルによる塗工液量は図10に示すような値(例えば130.4plと132pl)となる。
また、図10において、ノズルピッチとブラックマトリックスピッチが一致しないことからクロストークの影響により、A,C相にある吐出ノズルの基準吐出量が他の相Cの吐出ノズルの基準吐出量より多くなり、各ノズルの吐出量にバラツキが生じ、カラーフィルタのブラックマトリックスに相当する隔壁20で囲まれた領域20aに、その塗工液量が異なってしまい、各ノズルから吐出される吐出インク量にもバラツキが生じる。その結果、従来手法では隔壁により、図10に示すように、塗工液量に130.4plと132plという1.2%の誤差が生じているが、本実施の形態では、各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように、領域20a内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御手段19で自動的に制御すれば、図11に示すように、塗工液量に120.0plと120.0plという小数点以上第1位までの誤差、即ち塗工量バラツキが解消していることがわかる。
図11において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブ隔壁20で囲まれた領域20a内における各ノズルによる塗工液量は図11に示すような値(例えば120.0)となる。
【0025】
これにより、目標液量に対しても実際の塗工液量が大幅に違いだけでなく、違う液量同士の隔壁毎の誤差も生じていた塗工量誤差の減少を120.0plにそろえる事が出来るため、高精度なインクジェット塗工と塗工膜厚で完成された製品を提供することができる。
また、上述した吐出液量誤差最小化を行うに際して、上記インクジェットヘッドの各ノズル毎に吐出減少毎の係数を付与し、各現象毎の係数を足す、掛ける等の関数処理によって、隔壁の設計が変わっても自動的に吐出液量の誤差を最小化することができる。
このため、圧力クロストークやノズル毎に持っている吐出量バラツキを係数にしたり、各部の温度による吐出量のバラツキやインクジェットヘッド内部の配線パターンや駆動回路が持つ電気抵抗による駆動電圧の電圧降下等による吐出量バラツキ等も係数化することにより、それらの係数を掛け合わす等の関数処理によって簡便に吐出量バラツキを抑えることができる。
更にインクジェットヘッドに、1回の吐出(1ショット)に対し、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で各ノズルからの吐出量を可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドを使用しているので、上記吐出量の誤差最小化を行うに際して、6plや3plといった基準微少ドロップのn倍と担当ノズルの組み合わせで実施することができるため、塗工量誤差を少なくすることができると同時に各種隔壁サイズと目標液量を素早く変更、調整することができる。
【0026】
上記実施の形態では、互いに隣接する2つの領域20a間を隔てる隔壁部分20bの一部を切り欠くことで流路21を構成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、隔壁21を形成する組成物の膜厚を薄くするか、または隔壁21を形成する撥インク剤を含む組成物の撥液性を下げることによって流路21を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の画像形成装置におけるインクジェットヘッドと基板に形成したブラックマトリックス(隔壁)内へのインク粒の吐出状態を示す説明用斜視図である。
【図2】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図3】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図4】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図5】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態における画像形成装置の全体図である。
【図7】本発明の実施の形態における画像形成装置の第1ヘッドユニットと基板との配置関係を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態における画像形成装置の第1及び第2ヘッドユニットと基板との配置関係を示す平面図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるインクジェットヘッドユニットの各ノズルと隔壁との位置関係を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるインクジェットヘッドユニットの各ノズルと隔壁との位置関係を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるインクジェットヘッドユニットの各ノズルと隔壁との位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10……精密搬送ステージ、11…… 基板、12……第1ガントリー、13……第2ガントリー、14……第1ヘッドユニット、15……第2ヘッドユニット、16……第1ヘッドユニット用メンテナンスステーション、17……第2ヘッドユニット用メンテナンスステーション、18……吸着板、19……制御手段、20……隔壁、20a……領域、21……流露。
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録法を用いた画像形成装置に関し、特にカラーフィルタや有機半導体による発光表示器等の光学素子を基板上の隔壁(バンクとも呼ばれる)内に精密に定量塗工して形成するインクジェット精密パターンコート方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット法でカラーフィルタ等を塗工する場合、フラットベットステージにガラス等の基板を載置し、インクジェットヘッドを保持したヘッドユニットから基板に直接塗工液を吐出させることにより画像を形成するようにしている(特許文献1参照)。
例えば、図1に示すように、基板5上の予め形成したブラックマトリックス1を隔壁として利用し、その内部にインクジェットヘッド4からインク粒(以後ドロップレットと呼ぶ)3を吐出させて色材層2を得る。
尚、この図1において、インクジェットヘッド4もしくは基板(ブラックマトリックス1を含む基板)の走査方向は矢印Sで示す方向である。
【0003】
インクジェット精密パターンコート方式による画像の形成に際しては、図1に示すようにブラックマトリックス(隔壁)1で囲まれたインク注入用の開口部1aを有する基板5を作る。以下、このブラックマトリックス1の開口部1a中に実際に各ノズルからインクを入れ込む場合の動作について図面を参照して説明する。
図2は、ブラックマトリックス1と、各ノズルから吐出されるドロップレット3を表したもので、ここでは、説明を簡単にするために、1本のインクジェットヘッドから、複数のノズルとその各々のノズルから吐出される各ドロップレットとカラーフィルタの1画素(以下、セルと呼ぶ)との関係を示している。
この図2では、ノズル番号26〜30の5つのノズルから吐出される5つのドロップレット3で、1つのセルを塗工している。但し、ノズル番号25と31に対応するノズルは、ブラックマトリックス1と干渉する位置にあるため、これらノズルからインクが吐出されないように休止ノズルとしてある。
なお、実際にはノズルのピッチとブラックマトリックスのピッチとが一致して互いに重なるような位置関係にはならないことが多いが、ここでは、説明を簡単にするために、重なる形で示されている。
上記図2において、ドロップレット3の径(簡易的にドット径と考えても良い)が大きくなっていることがわかる。この現象について、図3を参照して説明する。
図3は、ドロップレット3,つまりノズル番号28に対応するノズルの吐出量が増えてしまう理由を説明するもので、ノズル番号25,26等の下に付したA,B,Cは吐出相を表し、この図3の例では、複数のノズルを3つの相に分割した場合を示している。
【0004】
インクジェットヘッドには、大別して、連続噴射法(コンティニアス方式とも呼ばれる)とドロップオンデマンド法(通称DOD)との2種類がある。
連続噴射法では、ドロップレットの着弾精度が概して悪く、かつドロップレットの粒度が大きく、更にインクに荷電性能を付与させたり、顔料などの色材使用に制限があるなどの観点から、カラーフィルタや有機エレクトロルミネッセンス等塗膜に対する純度や塗工量管理の厳しい用途には使用できない。
従って、画像形成させるときのみ、ノズルからドロップレット(インク粒)を吐出させるドロップオンデマンド方式(DOD方式)が用いられている。
ドロップオンデマンド方式でドロップレットを吐出させる場合、全ノズルを同時に吐出させる場合と、ノズルを2つ以上の相に分割して分割吐出させる場合がある。図3は3相分割式の場合を示している。
【0005】
3相分割式では、隣接するノズルの振動圧力の影響を受けにくい等の理由で、小型で高密度のインクジェットヘッドが実現できるメリットを有する。
そして、図3では、ブラックマトリックス1と干渉するノズル番号25,31に対応する休止ノズルは共にA相で同相にある。この休止したノズルと同相のノズル、すなわちインクを吐出しているノズル番号28に対応するノズルもA相にあるため、他のB,C相のノズルと違って、休止ノズルの圧力干渉を受ける。この干渉はクロストーク等と呼ばれているもので、休止ノズルの影響が吐出ノズルに影響を及ぼし、結果として吐出液量が変わってしまう。
つまり、ノズル番号28のノズルはノズル番号25のノズルからすると、4番目で1番目(A相)と同相の隣接ノズルになり、また、ノズル番号31のノズルからも、同様に4番目で1番目(A相)と同相の隣接ノズルとなる。この場合、その影響を受けて吐出ドロップレット3Aが図3に示すように多くなっている。
図3では、吐出量として、通常のノズルでは6plを表しているが、ノズル番号28のノズルでは7.2plと増えていることがわかる。
【0006】
ところで、インクジェットヘッドの各ノズルのピッチとブラックマトリックスの開口部のピッチが一致することは殆ど無く、ズレが生じる。このズレを考慮して現実に近い形で各ノズル41とブラックマトリックス1の開口部1Aとの位置関係を示すと図4のような配列状態となる。
この図4において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブラックマトリックス1の各開口部1A内における各ノズルによる塗工液量は図4に示すような値(例えば120pl)となる。
【特許文献1】特願2001−228320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5は、上記休止ノズルの影響で各ノズルからの吐出量に誤差が生じた場合を示している。
この図5において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブラックマトリックス1の各開口部1A内における各ノズルによる塗工液量は図4に示すような値(例えば120pl)となる。
また、図5から明らかように、ノズルピッチとブラックマトリックスピッチが一致しないことからクロストークの影響により、A,C相にある吐出ノズルの基準吐出量が他の相Cの吐出ノズルの基準吐出量より多くなり、各ノズルの吐出量にバラツキが生じ、カラーフィルタのブラックマトリックス1の開口部毎に、その塗工液量が異なってしまう。さらに、実際には各ノズルから吐出される吐出インク量にもバラツキがあり、その結果、クロストークの影響が同じであっても、開口部1A毎で実際の吐出量は異なってしまう。
このように異なる吐出量は、カラーフィルタでは透過色むらとなり、有機ELでは発光ムラとなり、画像に筋状のムラ不良を起こしてしまい、インクジェット塗工最大の問題となっていた。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、隔壁で囲まれた領域内への塗工量誤差を大幅に低減し、高精度なインクジェット塗工を可能にした画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、基板と、互いに直行する方向である行方向及び列方向に配列された画素毎に該画素を囲むようにして前記基板上に形成された隔壁と、前記隔壁で囲まれた領域内の前記基板上にインク粒を所定量吐出するインクジェットヘッドとを備える画像形成装置であって、前記インクジェットヘッドは前記画素の行方向または列方向に一定のピッチで配列され、かつ前記隔壁で囲まれた複数の領域へのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、前記インク吐出用ノズルからインク粒が吐出される前記複数の領域のうち、互いに隣接する少なくとも2つの前記領域間を隔てる隔壁部分に、それら領域間を連通し前記インク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域間を流動できる流路が形成され、前記流路で連通された前記少なくとも2つの領域内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように前記少なくとも2つの領域内へインク粒を吐出する前記インク吐出用ノズルの吐出量を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、特許請求項1記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、特許請求項2記載の画像形成装置において、前記インクジェットヘッドは、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で前記各インク吐出用ノズルからの吐出量が可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドであり、前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように前記各インク吐出用ノズルの吐出ドロップ数を変化させることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、特許請求項1記載の画像形成装置において、前記流路は、前記隔壁の一部を切り欠くか、前記隔壁を形成する組成物の膜厚を薄くするか、前記隔壁を形成する撥インク剤を含む組成物の撥液性を下げるかの何れかで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置によれば、流路で連通された少なくとも2つの領域内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように前記少なくとも2つの領域内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御手段で制御するようにしたので、隔壁で囲まれた領域内への塗工量誤差を大幅に低減できるとともに、高精度なインクジェット塗工を可能になる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置によれば、制御手段により、各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御するようにしたので、休止ノズルによるクロストーク(圧力干渉)での塗工量バラツキの他に、各ノズル毎の塗工量バラツキや温度差で生じる塗工量バラツキ等様々な現象毎に生じている塗工量誤差を最小化する上で非常に簡易に扱うことができる。
また、本発明の画像形成装置によれば、インクジェットヘッドに、微少ドロップを1個以上の連続した吐出数で各ノズルからの吐出量を可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドを使用しているので、吐出量誤差の最小化に際して、塗工量誤差を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明にかかる画像形成装置は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図6は、本実施の形態1における画像形成装置の全体図である。
この図6において、画像形成装置は、矢印Y方向に移動可能な精密搬送ステージ10、この精密搬送ステージ10上に吸着板18を介して載置された基板11、第1ガントリー12上に矢印X1に移動可能に支持された第1ヘッドユニット14、第2ガントリー13上に矢印X2に移動可能に支持された第2ヘッドユニット15、精密搬送ステージ10の左右側方にそれぞれ位置して配設された第1ヘッドユニット用メンテナンスステーション16及び第2ヘッドユニット用メンテナンスステーション17、第1ヘッドユニット14及び第2ヘッドユニット15へのインク吐出用ノズルの吐出量を制御する制御手段19を備えて構成される。吸着板18は、基板11を吸着保持または解除開放するものである。
【0017】
図6において、精密搬送ステージ10上に設けた吸着板18上には、図示しない基板搬送ロボットにより、予め隔壁となるブラックマトリックスを表面に形成してあるガラス基板11がセットされる。この場合、基板11から見て、これより上方位置する2つのヘッドユニット14,15を塗工すべき所定の位置に搬送する門型の第1ガントリー12及び第2ガントリー13によって矢印X1,X2の方向に移動できるようになっている。
そして、この第1ガントリー12には約600mmの塗工エリアを持つ第1ヘッドユニット14が搭載され、第2ガントリー13には第1ヘッドユニット14と同様な第2ヘッドユニット15が搭載されており、ガラス基板11上の図示しない隔壁内に、第1ヘッドユニット14及び第2ヘッドユニット15のそれぞれのインク吐出用ノズルにて目標液量を塗工する。
【0018】
尚、実際の塗工では吸着板18を方向Y側に走査し、この走査毎に、各ヘッドユニット14及び15をX1方向またはX2方向に移動して1枚の基板11に塗工を行う。
また、基板11上において、隔壁で囲まれた画素領域に一定量の塗工が終了すると、インクジェットヘッドの表面に付着したミスト等を除去して清浄に保つために、メンテナンスステーション16は第1ヘッドユニット14がメンテナンスの対象となり、メンテナンスステーション17は第2ヘッドユニット15がメンテナンスの対象となる。
【0019】
各ヘッドユニット14,15とカラーフィルタ塗工との関係を図7及び図8を用いて説明する。
最初に図8を用いて説明する。図8は、図6に示した2つのヘッドユニット14,15を上部からみた図面であり、予め隔壁となるブラックマトリックスを表面に形成してあるガラス基板11に対し第1ヘッドユニット14と第2ヘッドユニット15の2ユニットにて塗工を行っているところを示したものである。
ここで、各ヘッドユニット14,15は走査幅500mmで3色分のインクジェットヘッド14a,15aがそれぞれ600dpiのノズル密度で配置してある。従って1つのユニットでは約42μmごとに各色のノズルが配置されていることになる。
また、各ノズルは6plを基準ドロップとして4ビットのマルチドロップ駆動を行っており、6〜90plの吐出液量を6pl刻みで変更できる。しかしながら、各ノズルのクロストーク等により実際の吐出量は異なることは前述した通りである。
【0020】
ところで、図8では2つのヘッドユニット14,15を、あたかも連結して1200dpiの大きなヘッドユニットとして見なせるように使用している。これをタンデムモードと呼んでいるが、隔壁で囲まれた各画素領域に対応するインク吐出用ノズルの数を増やすことによって、塗工速度を早くする、あるいは1つのヘッドユニットでは往復して塗工する条件を片道のみの塗工で済ませるといった塗工時間短縮のために、このような装置にしてある。つまり、各画素毎に約21μmずつのピッチでノズルが配置されていることに相当する。
この実施の形態では、1200dpiのタンデムモードにて約40インチのカラーフィルタ6面付け基板を片道塗工のみで、200mm/sec,3色同時にできることを確認された。
【0021】
次に、図7について説明する。上記のようにタンデムモードで塗工できる場合は、塗工タクト上有利であるが、インクジェットで塗工する場合、ノズルの定期的なメンテナンスをしないと不吐出や吐出方向の曲がり(ミスディレクションと呼ばれている)が生じて製品不良を作成してしまうことになる。また、突発的に不吐出やミスディレクション等でノズルメンテナンスをしなくてはならないケースもありうる。
更にインクジェットヘッドは消耗品であり定期的に交換する必要もある。このような各種トラブルや保守の度に塗工装置を止めてしまっては安定生産が実現できない。従って、本実施の形態では、ヘッドユニット14,15のうち、どちらか1方のヘッドユニットが何らかの事情で使用できない場合であっても、片側のヘッドユニットのみで塗工できるシングルモードが備わっている。これを示したのが図7であり、この図7では、第1ヘッドユニット14のみで運転をしている状態である。但し、タンデムモードとの塗工条件が違うと塗工後のカラーフィルタ品質に違いができてしまうので、ここでは、600dpiで片側塗工したあと、1/1200dpiピッチに相当する21μmガントリー位置をずらしてもう片方を塗工する疑似1200dpi塗工を行っている。従って、片側での塗工では往復して1つの塗工スキャンが終了する。
但し、隔壁内に対する各インク吐出用ノズルはシングルモードとタンデムモードでは違うので各モード毎にレシピを作成し、かつ、後述するように流路で連通された隔壁内での吐出量を揃えるように誤差最小化計算を制御手段19(図6参照)で各ノズルの計数より実施し、別レシピとして管理している。
【0022】
次に、図9〜図11を参照して本発明の画像形成装置における領域内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御する場合について説明する。
図9は、画像形成装置のカラーフィルタをインクジェット精密パターンコート方式で形成する場合を示すものである。この図9において、図示省略の基板上には、互いに直行する方向である行方向及び列方向に配列された画素毎に該画素を囲むようにして格子状の隔壁20が形成されている。この格子状の隔壁20において、行方向(横方向)に配列された各行の隔壁20がカラーフィルタ用の赤、緑、青に対応するものである。
また、隔壁20で囲まれた領域20a内の基板上にインク粒を所定量吐出するインクジェットヘッド(図6のヘッドユニット14,15に相当)は前記画素の行方向(または列方向)に一定のピッチで配列され、かつ隔壁20で囲まれた複数の領域20aへのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、このインク吐出用ノズルからインク粒が吐出される前記複数の領域20aのうち、図9に示すように、互いに隣接する少なくとも2つの領域20a間を隔てる隔壁部分20bに、それら領域20a間を連通しインク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域20a間を流動できる流路21が形成されている。この流路21で連通された少なくとも2つの領域20a内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように少なくとも2つの領域20a内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御手段19で制御するように構成されている。
【0023】
前記制御手段19は、各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御する構成されている。
なお、インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数をテーブルで構成し、このテーブルを利用して、インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じた係数を自動的に選択し、この選択された係数に基づいて関数処理すればよい。
また、本実施の形態におけるインクジェットヘッドは、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で各インク吐出用ノズルからの吐出量が可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドであり、制御手段19は、各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように各インク吐出用ノズルの吐出ドロップ数を変化させるようになっている。
【0024】
図10において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブ隔壁20で囲まれた領域20a内における各ノズルによる塗工液量は図10に示すような値(例えば130.4plと132pl)となる。
また、図10において、ノズルピッチとブラックマトリックスピッチが一致しないことからクロストークの影響により、A,C相にある吐出ノズルの基準吐出量が他の相Cの吐出ノズルの基準吐出量より多くなり、各ノズルの吐出量にバラツキが生じ、カラーフィルタのブラックマトリックスに相当する隔壁20で囲まれた領域20aに、その塗工液量が異なってしまい、各ノズルから吐出される吐出インク量にもバラツキが生じる。その結果、従来手法では隔壁により、図10に示すように、塗工液量に130.4plと132plという1.2%の誤差が生じているが、本実施の形態では、各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように、領域20a内へインク粒を吐出するインク吐出用ノズルの吐出量を制御手段19で自動的に制御すれば、図11に示すように、塗工液量に120.0plと120.0plという小数点以上第1位までの誤差、即ち塗工量バラツキが解消していることがわかる。
図11において、ノズル番号10〜45に対応する各ノズルはA,B,Cの3相に分割され、そして、この各ノズルのうち、休止ノズルには×印が付けられ、吐出ノズルは無印となっている。また、各ノズルの基準吐出量、吐出数(吐出回数)及びブ隔壁20で囲まれた領域20a内における各ノズルによる塗工液量は図11に示すような値(例えば120.0)となる。
【0025】
これにより、目標液量に対しても実際の塗工液量が大幅に違いだけでなく、違う液量同士の隔壁毎の誤差も生じていた塗工量誤差の減少を120.0plにそろえる事が出来るため、高精度なインクジェット塗工と塗工膜厚で完成された製品を提供することができる。
また、上述した吐出液量誤差最小化を行うに際して、上記インクジェットヘッドの各ノズル毎に吐出減少毎の係数を付与し、各現象毎の係数を足す、掛ける等の関数処理によって、隔壁の設計が変わっても自動的に吐出液量の誤差を最小化することができる。
このため、圧力クロストークやノズル毎に持っている吐出量バラツキを係数にしたり、各部の温度による吐出量のバラツキやインクジェットヘッド内部の配線パターンや駆動回路が持つ電気抵抗による駆動電圧の電圧降下等による吐出量バラツキ等も係数化することにより、それらの係数を掛け合わす等の関数処理によって簡便に吐出量バラツキを抑えることができる。
更にインクジェットヘッドに、1回の吐出(1ショット)に対し、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で各ノズルからの吐出量を可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドを使用しているので、上記吐出量の誤差最小化を行うに際して、6plや3plといった基準微少ドロップのn倍と担当ノズルの組み合わせで実施することができるため、塗工量誤差を少なくすることができると同時に各種隔壁サイズと目標液量を素早く変更、調整することができる。
【0026】
上記実施の形態では、互いに隣接する2つの領域20a間を隔てる隔壁部分20bの一部を切り欠くことで流路21を構成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、隔壁21を形成する組成物の膜厚を薄くするか、または隔壁21を形成する撥インク剤を含む組成物の撥液性を下げることによって流路21を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の画像形成装置におけるインクジェットヘッドと基板に形成したブラックマトリックス(隔壁)内へのインク粒の吐出状態を示す説明用斜視図である。
【図2】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図3】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図4】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図5】従来におけるインクジェットヘッドの各ノズルとブラックマトリックス(隔壁)との位置関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態における画像形成装置の全体図である。
【図7】本発明の実施の形態における画像形成装置の第1ヘッドユニットと基板との配置関係を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態における画像形成装置の第1及び第2ヘッドユニットと基板との配置関係を示す平面図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるインクジェットヘッドユニットの各ノズルと隔壁との位置関係を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるインクジェットヘッドユニットの各ノズルと隔壁との位置関係を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるインクジェットヘッドユニットの各ノズルと隔壁との位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10……精密搬送ステージ、11…… 基板、12……第1ガントリー、13……第2ガントリー、14……第1ヘッドユニット、15……第2ヘッドユニット、16……第1ヘッドユニット用メンテナンスステーション、17……第2ヘッドユニット用メンテナンスステーション、18……吸着板、19……制御手段、20……隔壁、20a……領域、21……流露。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、互いに直行する方向である行方向及び列方向に配列された画素毎に該画素を囲むようにして前記基板上に形成された隔壁と、前記隔壁で囲まれた領域内の前記基板上にインク粒を所定量吐出するインクジェットヘッドとを備える画像形成装置であって、
前記インクジェットヘッドは前記画素の行方向または列方向に一定のピッチで配列され、かつ前記隔壁で囲まれた複数の領域へのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、
前記インク吐出用ノズルからインク粒が吐出される前記複数の領域のうち、互いに隣接する少なくとも2つの前記領域間を隔てる隔壁部分に、それら領域間を連通し前記インク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域間を流動できる流路が形成され、
前記流路で連通された前記少なくとも2つの領域内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように前記少なくとも2つの領域内へインク粒を吐出する前記インク吐出用ノズルの吐出量を制御する制御手段を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御することを特徴とする特許請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドは、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で前記各インク吐出用ノズルからの吐出量が可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドであり、前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように前記各インク吐出用ノズルの吐出ドロップ数を変化させることを特徴とする特許請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記流路は、前記隔壁の一部を切り欠くか、前記隔壁を形成する組成物の膜厚を薄くするか、前記隔壁を形成する撥インク剤を含む組成物の撥液性を下げるかの何れかで構成されることを特徴とする特許請求項1記載の画像形成装置。
【請求項1】
基板と、互いに直行する方向である行方向及び列方向に配列された画素毎に該画素を囲むようにして前記基板上に形成された隔壁と、前記隔壁で囲まれた領域内の前記基板上にインク粒を所定量吐出するインクジェットヘッドとを備える画像形成装置であって、
前記インクジェットヘッドは前記画素の行方向または列方向に一定のピッチで配列され、かつ前記隔壁で囲まれた複数の領域へのインク粒の吐出を可能とした複数のインク吐出用ノズルを有し、
前記インク吐出用ノズルからインク粒が吐出される前記複数の領域のうち、互いに隣接する少なくとも2つの前記領域間を隔てる隔壁部分に、それら領域間を連通し前記インク吐出用ノズルから吐出されたインク粒がそれら領域間を流動できる流路が形成され、
前記流路で連通された前記少なくとも2つの領域内に吐出されるインク粒の総吐出液量が所定の液量に等しくなるように前記少なくとも2つの領域内へインク粒を吐出する前記インク吐出用ノズルの吐出量を制御する制御手段を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズル毎に該インク吐出用ノズルの吐出量の減少に応じて設定された係数に基づいて関数処理し、該関数処理された指令値に従って前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように自動的に制御することを特徴とする特許請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドは、微少ドロップを1個以上の連続した吐出回数で前記各インク吐出用ノズルからの吐出量が可変できるマルチドロップレット方式のインクジェットヘッドであり、前記制御手段は、前記各インク吐出用ノズルから吐出される吐出量の誤差が最小となるように前記各インク吐出用ノズルの吐出ドロップ数を変化させることを特徴とする特許請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記流路は、前記隔壁の一部を切り欠くか、前記隔壁を形成する組成物の膜厚を薄くするか、前記隔壁を形成する撥インク剤を含む組成物の撥液性を下げるかの何れかで構成されることを特徴とする特許請求項1記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−86155(P2009−86155A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254062(P2007−254062)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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