説明

画像形成装置

【課題】印字率によらず最適な二次転写を行うことによって、弾性率の大きい中間転写体と凹凸の大きい被転写材とを用いた場合にも均一な転写を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】定電流制御により一次転写ローラ5に印加されて副走査方向で変化する一次転写電圧を検出する電源6と、検出された副走査方向で変化する一次転写電圧に応じて、電源26により二次転写対向ローラ23に供給する二次転写電流値を制御する制御部28を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光体等の像担持体に現像されたトナー像を一旦中間転写体上に一次転写した後、紙等の被転写材に二次転写して最終画像を得る中間転写方式の画像形成装置が広く知られている。特に、複数の感光体を有し、中間転写ベルトに複数色のトナー像を重ね合わせてフルカラートナー像を形成し、これを用紙に一括転写する中間転写ベルト方式のカラー画像形成装置が多く市販されている。この中間転写ベルト方式においては、高速駆動時の位置ズレや色ズレの低減の観点から、中間転写ベルトの材料として、弾性率の大きい、すなわち応力に対してひずみの小さい材料であるポリイミド系樹脂やポリアミドイミド系樹脂が多く採用されている(例えば特許文献1等)。
【0003】
しかしながら、中間転写ベルトとしてこのような高弾性率を示す材料を用いた場合には、凹凸の大きな紙で均一な転写画像を得られ難いという難点がある。用紙の凹部では、中間転写ベルト上のトナーとの間に空隙が生じてしまうため、凸部に比べて転写電界が小さくなってトナー像が紙に転写され難くなり、紙の地肌が見えてしまう。転写電界を強くするために、安易に二次転写電流や二次転写電圧を高くすると、凹部の空隙で放電が発生してトナーの極性が反転し、逆に転写効率が低下してしまい一層地肌が目立つ結果になる。特に、二次転写電流を同じ電流値で定電流制御している画像形成装置では、印字率、トナー帯電量及び用紙の抵抗によって、トナーが中間転写ベルトから紙へ移動(転写)することによって流れる電流量や放電量、及び紙の非画像部を直接流れる電流量のバランスが変わる。そのため、様々な印字率の画像に対して、均一な画像、すなわち一定の転写効率、画像濃度を実現するのは困難であった。
【0004】
弾性率の大きい中間転写ベルト上のトナーと表面の凹凸の大きな用紙の凹部との密着性を高くするために、転写ニップを構成するローラ(例えば、特許文献1の二次転写バイアスローラと二次転写対向ローラ)間の圧力を高くすることも考えられる。しかし、その場合には凸部に接するトナーに応力が集中してしまう。そのために、トナー粒子間や、トナーと中間転写ベルトの間の非静電的な付着力が増加してしまい、特に文字画像や細線画像においてトナーが転写されなくなる難点がある。そこで、高弾性率材料を基層とし、その上に低弾性率材料からなる層を積層した中間転写ベルトが多数提案されている(例えば、特許文献2等)。しかし、このような積層構造の中間転写ベルトは、導電性の接着剤等で各層を接着する必要があり、抵抗ムラや耐久性、コストの点で難点があった。
【0005】
凹凸の大きい紙に対し、印字率に依らずに均一な画像を実現するためには、紙の凹部で放電が発生しない範囲内で、最大の電界を安定して形成することが重要である。すなわち、無駄な放電は発生させずに、転写ニップに供給される電流の殆どが、中間転写ベルトから紙へのトナーの移動に使われるような状況を作る必要がある。しかし、上述したように、二次転写電流を定電流制御すると、転写ニップ中の主走査方向の印字率、つまり、転写されるトナーの総電荷量が変わるだけで、トナーが中間転写ベルトから紙へ移動することによって流れる電流量や放電量、及び紙の非画像部を直接流れる電流量のバランスが変わる。そのため、様々な画像に対して、トナーが転写するのに必要なだけの電流を付与することは原理的に不可能である。
【0006】
特許文献3や特許文献4では、二次転写ローラに付与する二次転写電流を定電流制御するのではなく、画像データに基づいて二次転写電流を変更する方式が提案されている。これにより、二次転写電流を定電流制御する場合に比べ、様々な印字率の画像に対して一定の転写効率を得ることが可能となる。
【0007】
なお、特許文献5には、後述する課題を解決するための手段における「一次転写電圧検出手段によって検出された一次転写電圧に応じて二次転写電流値を制御する制御手段」と同様に、検出された一次転写電圧に応じて二次転写電源を制御する制御方式が提案されている。しかしながら、この制御方式においては、一次転写電圧と温湿度との相関から、検出された一次転写電圧に応じて二次転写電源を制御するものである。この制御方式においては、後述するように、副走査方向に変化する一次転写電圧を検出しているのではないため、副走査方向に変化する印字率によらず最適な二次転写は行えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3及び4に記載されるように、単純に画像データに基づいて二次転写電流を制御しても、印字率によらずに均一な画像を得ることができない。温度や湿度の変化、及び感光体や現像剤の劣化によって、感光体上のトナー量や電荷量が変動してしまうため、画像データの印字率と実際の印字率(感光体上のトナー画像の面積率)とが異なってしまうからである。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものである。その目的は、印字率によらず最適な二次転写を行うことによって、弾性率の大きい中間転写体と凹凸の大きい被転写材とを用いた場合にも均一な転写を行うことができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、像担持体と、該像担持体上に形成されるトナー像が転写される中間転写体と、該像担持体に対して該中間転写体を介して対向する位置に配設される一次転写部材と、定電流制御により該像担持体と該一次転写部材との間に該像担持体上のトナー像を該中間転写体に転写させる電界を形成する一次転写電界形成手段と、該中間転写体との間に被転写材を挟持する導電部材と、該導電部材に対して該中間転写体を介して対向する位置に配設される二次転写部材と、該導電部材と該二次転写部材との間の二次転写ニップ部に該中間転写体上のトナー像を該被転写材に転写させる電界を形成する二次転写電界形成手段とを有する画像形成装置において、上記一次転写電界形成手段により該一次転写部材に印加されて副走査方向で変化する一次転写電圧を検出する一次転写電圧検出手段と、該一次転写電圧検出手段により検出された副走査方向で変化する一次転写電圧に応じて、上記二次転写電界形成手段により上記二次転写部材に供給する二次転写電流値を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記制御手段は、上記一次転写電圧検出手段により検出された一次転写電圧が大きいほど、検出した位置の一次転写画像が二次転写ニップ部に到達するタイミングで上記二次転写電界手段により上記二次転写部材に付与する二次転写電流値が大きくなるように制御することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記制御手段は、画像データによる印字率及び/又は画素数を参照し、該印字率及び/又は画総数が大きいほど、上記二次転写電界手段により上記二次転写部材に供給する電流値が大きくなるように制御することを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項2又は3の画像形成装置において、上記制御手段は、上記中間転写体上のトナー像の電荷量を参照し、該電荷量の絶対値が大きいほど、上記二次転写電界手段により上記二次転写部材に供給する電流値が大きくなるように制御することを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1、2、3、又は4の画像形成装置において、上記中間転写体は、引張弾性率が2GPa以上のベルト部材であることを特徴とするものである。
本発明において、制御部は、一次転写電圧検出手段によって検出された一次転写電圧に応じて二次転写電流値を決定する。そのため、例えば、現像剤や像担持体の劣化により像担持体上のトナー量や電荷量が変動し、画像データからなる印字率と実際の印字率(像担持体上のトナー像の面積率)とが異なっても、検出された一次転写電圧に応じた実際の印字率を算出して最適な二次転写電流値を決定することができる。また、転写電圧検出手段は副走査方向に変化する一次転写電圧を検出するので、制御部は、副走査方向に変化する印字率によらず最適な二次転写電流値を決定することができる。弾性率の高い中間転写体を用いた場合には、表面の凹凸の大きな被転写材に対する密着性は小さいが、実際の印字率に応じた二次転写電流値を制御することによって、被転写材の凹部での転写電界の不足や放電の発生を抑制し、被転写材の地肌が目立たない均一な二次転写を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印字率によらず最適な二次転写を行うことによって、弾性率の大きい中間転写体と凹凸の大きい被転写材とを用いた場合にも均一な転写を行うことができる画像形成装置を提供できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るプリンタの構成を示す概略構成図。
【図2】二次転写ニップ通過時のA3用紙を例とする、印字率の定義を説明した模式図。
【図3】トナー画像の主走査方向の印字率を変えた際の、一次転写電流と一次転写電圧との関係を示す特性図。
【図4】印字率50%で印刷を行った場合の二次転写ニップ通過時のA3用紙を例とする模式図。
【図5】同プリンタが新品の状態と、250K〜300K枚印刷し現像剤及び感光体1が劣化した状態(2種)とで印刷した時の一次転写電流と一次転写電圧の関係を示す特性図。
【図6】二次転写率と二次転写電流との関係の印字率依存性を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るタンデム型中間転写ベルト方式の画像形成装置であるプリンタの構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの構成を示す概略構成図である。図1に示すように、このプリンタは、像担持体であるドラム状感光体1a、1b、1c、1dに形成したトナー像を中間転写体である中間転写ベルト21上に一次転写し一次転写画像を形成する一次転写画像形成部10a、10b、10c、10dを備えている。この一次転写画像形成部10a、10b、10c、10dは、上記感光体1a、1b、1c、1dの周囲に、各感光体1表面を一様に帯電する非接触帯電ローラ2a、2b、2c、2d、各感光体1表面に形成される静電潜像を現像する現像器4a、4b、4c、4dを備えている。また、一次転写画像形成部10a、10b、10c、10dは、各感光体1a、1b、1c、1dの一様に帯電された表面に画像情報に応じたレーザ光Lを照射して静電潜像を形成する図示しない露光装置を備えている。また、一次転写画像形成部10a、10b、10c、10dは、中間転写ベルト21の内部に一次転写手段としての一次転写ローラ5a、5b、5c、5dを備えている。一次転写ローラ5a、5b、5c、5dは、中間転写ベルト21を介して感光体1a、1b、1c、1dに押し当てられて一次転写ニップ部を形成する。一次転写電界形成手段と一次転写電圧検出手段を兼ねる電源6a、6b、6c、6dは、一次転写ローラ5a、5b、5c、5dに同じ電流値を付与する定電流制御を行って、一次転写ニップ部に転写電界を形成し、各感光体1a、11c、1d上のトナー像を中間転写ベルト21に転写する。
【0014】
上記一次転写画像形成部10a、10b、10c、10dの下方には、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像を記録媒体となる用紙に転写する二次転写部20を備えている。二次転写部20では、無端ベルト状の中間転写ベルト21が駆動ローラを含む複数のローラ22、23、24に掛け回され、所定のタイミングで図中時計回り方向に回転駆動する。本実施例では、中間転写ベルト21として、カーボン分散ポリイミド樹脂ベルト、厚さ60μm、抵抗率が10Ω・cm(三菱化学製ハイレスターUP MCP HT450、印加電圧100V測定値)、引っ張り弾性率が2.6GPaであるものを用いた。二次転写部20は、導電部材たる二次転写ローラ25に二次転写部材たる二次転写対向ローラ23を押し当てて二次転写ニップ部を形成する。二次転写電界形成手段たる電源27は、後述するように二次転写対向ローラ23に対して所定の二次転写電流を付与し、二次転写ニップ部に二次転写電界を形成する。本実施例では、二次転写対向ローラ23及び二次転写ローラ26には、ローラ材料(芯金を除く)の体積抵抗率が10Ω・cmなるものを用いた。また、転写ユニット20は、機内の温湿度を検出する温湿度センサ27等を備えている。
【0015】
上記二次転写部20の図中下方には、図示しない給紙トレイから給紙される用紙を搬送する搬送経路31、38が形成される。搬送経路31には、給紙トレイからの給紙される用紙を搬送する導電性の搬送ローラ対32や、用紙のスキューを補正し用紙を二次転写ニップ部へ所定のタイミングで送り出すレジストローラ(ステンレス製)対33が配設される。また、この搬送経路31には、トナー像が転写された用紙を搬送する搬送ベルト34や、用紙上の転写トナー像を定着する定着器35が配設される。定着器35は、定着ローラ36(設定温度165℃)に加圧ローラ37を押し当てて、熱と圧力により用紙上のトナー像を定着せしめる。また、搬送経路38には、用紙の両面に画像を記録すべく用紙を反転する用紙反転機構37も配設されている。本実施例の画像形成プロセスの線速は約280mm/sである。
【0016】
以上のように構成されるプリンタにおいて、次のように画像形成が行われる。スキャナ等でカラー画像データが発生すると、まず用紙が図示しない給紙トレイから搬送ローラ対32によって搬送され、用紙の先端はこれらの搬送ローラ対32に挟持されながら、レジストローラ対33まで送られる。一方、これに平行して、一次転写画像形成部10aでは、まず、電源3aによってマイナスにバイアスされた非接触帯電ローラ2aが感光体ドラム1aを均一にマイナス帯電し、露光装置が感光体ドラム1a表面に静電潜像を形成する。続いて、現像器4aがマイナスの電荷を有するトナー(ポリエステル系、粉砕トナー)を反転現像することによって、感光体ドラム1a上にトナー像が形成される。一次転写ローラ5aには、電源6aによってトナーの極性とは逆極性の所定の一次転写電流が付与され、感光体ドラム1a上のトナー像は一次転写ローラ5aとの間の一次転写ニップ部に形成される転写電界によって中間転写ベルト21上に転写される。中間転写ベルト21に転写されずに感光体ドラム1aに残留するトナーは、図示しない感光体クリーナで除去され、次の静電潜像の形成に備えられる。これと同様に、他の一次転写画像形成部1b、1c、1dにおいても、各タイミングに応じて画像形成が行われ、中間転写ベルト21上には4色のトナーからなる一次転写画像が形成される。続いて、中間転写ベルト21上の一次転写画像が二次転写ニップ部に到達するタイミングに合わせて、用紙がレジストローラ対33から二次転写ニップ部に搬送される。一次転写画像が二次転写ニップ部に到達する時間(τ)は、例えば下式(1)を用いて計算することができる。
τ=L1t_2t/Vtvelt ・・・(1)
(但し、L1t_2tは一次転写ニップ部から二次転写ニップ部までの転写ベルト上の距離[m]、Vtveltは転写ベルト速度[m/s]である。)
【0017】
そして、二次転写部21でフルカラー画像が一括転写された用紙は、搬送ベルト34によって搬送されて定着器35でトナー像が定着された後、画像形成モードが片面印字モードである場合には搬送経路31に沿って図示しない排紙トレイに排出される。画像形成モードが両面印字モードである場合には、トナー画像が定着された用紙は、用紙反転装置39によって搬送経路38に沿って搬送され、再び二次転写ニップ部へと導かれ、裏面にもトナー像を記録した後、排紙トレイ等に排出される。一方、トナー像転写後の中間転写ベルト21は、図示しないベルトクリーニング装置により残留トナーが除去され、画像形成部10a、10b、10c、10dによる再度の画像形成に備える。
【0018】
次に、本実施形態に係るプリンタの特徴部となる構成について説明する。上記プリンタにおいては、電源6bにより検出された副走査方向で変化する一次転写電圧に応じて、検出した箇所の一次転写画像が二次転写ニップ部に到達するタイミングで二次転写対向ローラ23に供給する二次転写電流値を制御する制御手段たる制御部28が設置されている。図2は二次転写ニップ通過時のA3用紙を例とする、印字率の定義を説明した模式図である。ここで印字率とは二次転写ニップ出口部において、紙の幅に対する画像部の割合を指す。図3は、トナー画像の主走査方向の印字率を変えた際の、一次転写電流と一次転写電圧との関係を示す特性図である。図3に示すように、印字率が大きいほど同じ一次転写電流を付与した際の一次転写電圧が高くなっている。これは、トナーの移動に使われる電流よりも、非画像部に流れる電流の方が大きいためである。
【0019】
制御部28は、予め図3に示したデータを取得しておくことで、付与した一次転写電流に対する一次転写電圧値から主走査方向の印字率を算出する。そして、制御部28は、副走査方向の画素毎に、対向ローラ23に付与する二次転写電流I[−μA]の値を以下の式(2)から算出する。すなわち、二次転写ニップ出口部における、各色のトナー画像の主走査方向の印字率と各色のトナーの帯電量の推定値とに基づき、二次転写電流を算出する。この時、トナー画像の主走査方向の印字率は、式(3)で示すように、電源6a、6b、6c、6dが検出した一次転写電圧値から算出された値と、画像データから算出した値とを重み付け平均したものである。
I=A×Σ(ηi×Qi)+B ・・・式(2)
(但し、A、B:係数、ηiは各色のトナーの印字率(0〜1の値)、Qiは各色のトナーの帯電量[μC/g]である。iは、一次転写画像形成部の順番を意味する。つまり、式2における「Σ(ηi×Qi)」は、各一次転写画像形成部における「ηi×Qi」を合算することを意味している。)
ηi=α×ηi’+(1−α)×ηi’’ ・・・式(3)
(但し、αは定数(0〜1)である。ηi’は一次転写電圧から算出した印字率、ηi’’は画像データから算出した印字率である。)
【0020】
次に、実験結果を基に具体的に説明する。図4は、印字率50%で印刷を行った場合の二次転写ニップ通過時のA3用紙を例とする模式図である。図5は、図4に示す印字率で、上記構成のプリンタが新品の状態と、250K〜300K枚印刷し現像剤及び感光体1が劣化した状態(2種)とで印刷した時の一次転写電流と一次転写電圧の関係を示す特性図である。図5に示すように、同じ印字率50%にもかかわらず、新品の状態と劣化した状態とで一次転写電流と一次転写電圧との関係が異なっている。これは、現像剤及び感光体1の劣化により、感光体1上のトナー付着量が変化し、ドット画像が太った又は細ったためである。つまり、画像データの印字率に対して、実際の感光体1上の印字率(トナー画像の面積率)は、現像剤及び感光体の劣化により変化し得るということである。よって、制御部28は、検出された一次転写電圧値に基づいて主走査方向の印字率を算出し、算出された印字率を考慮して二次転写電流値を算出する。そして、制御部28は、検出した箇所の一次転写画像が二次転写ニップ部に到達するタイミング(式(1)により求められる)で算出された二次転写電流を二次転写対向ローラ23に付与する。
【0021】
図6は、二次転写率(用紙に二次転写されたトナーの質量/中間転写ベルト上に予め一次転写されたトナーの質量)と二次転写電流との関係の印字率依存性を示す特性図である。図6に示すように、二次転写効率が最大となる電流値は、印字率が高いほど大きくなっている。よって、制御部28は、主走査方向の印字率が高いほど、二次転写電流値が大きくなるように電源26を制御する。なお、図6に示す実験では、一度定着器を通した(両面印刷時の裏面)普通紙(NBSリコー マイペーパー)、ブラックトナー(帯電量約−20μC/g)を使用した。
【0022】
下記の表1は、上記構成プリンタを用い、印字率5%の単色画像と、印字率100%の二色重ね画像を、表面の凹凸が大きい用紙(一度定着器を通したNBSリコー FC和紙タイプ「さざ波」)を二次転写する際に二次転写電流値を変えた場合の、凸部の画像濃度と、凹部の地肌の見え具合を主観評価した結果である。図6及び表1の結果からわかるように、印字率が高いほど、最適な二次転写電流値が大きくなることがわかる。また、表面の凹凸が大きい用紙では、いずれの印字率でも、二次転写電流値が大きくなると、用紙の凹部の地肌が目立ち、画像品質が低下することがわかる。これは、二次転写電流が大きくなると放電が発生するためであり、紙の凹部では放電によって中間転写ベルト上のトナーの電荷が反転し、紙に転写されないためである。
【表1】

【0023】
そこで、本実施形態に係るプリンタの制御部28は、凹凸の大きな紙については、二次転写率が0.9となる二次転写電流を各印字率、トナー帯電量に対して設定する。具体的には、ユーザが、パソコンから書類をプリントする際のプリント画面や、もしくはプリンタ本体で書類をコピーする際の操作パネル上で、例えば、「NBSリコー FC和紙タイプ さざ波」のような特定の紙を選択できるようにし、また用紙の種類がわからなくても、ユーザが「凹凸紙」を選択できるようにする。そして、このように凹凸の大きな用紙が選択された場合には、式(4)(5)を使って二次転写電流値を設定する。これにより、凹凸の大きな用紙を用いた場合でも、凹部での放電が抑えられ、地肌が目立たない、良好な最終画像を実現することができる。普通紙が選択された場合には、凹部での放電が起きないため、転写率を優先して、式(6)を使って、式(4)に比べて高めの二次転写電流を設定する。
I=0.41×Σηi×Qi+13.0 ・・・式(4)
ηi=0.5×ηi’+0.5×ηi’’ ・・・式(5)
I=0.41×Σηi×Qi+23.7 ・・・式(6)
【0024】
本実施形態に係るプリンタにおいては、特に表面の凹凸な大きな用紙を用いた場合に均一な画像を得られる効果が大きいが、普通紙を用いた場合でも、一定の電流値で制御する場合に比べて転写率も数パーセントのオーダで向上する点で優れている。
【0025】
なお、本実施形態に係るプリンタにおいては、一次転写電圧の検出バラツキを考慮し、二次転写電流値を設定するにあたって、図3を基に一次転写電圧から算出した印字率と画像データから算出した印字率との平均値を用いた。しかし、本発明においては、一次転写電圧から算出される印字率のみで、二次転写電流値を制御してもかまわない。その場合、制御部28では、画像データから印字率を算出する必要がなくなるため、処理時間が減り安価な演算装置を用いることができる。
【0026】
また、本実施形態に係るプリンタにおいては、式(4)(6)で示したように、転写される各色のトナーの電荷量に基づいて二次転写電流を制御することによって、最適な転写を実現している。しかし、各色のトナーの帯電量にあまり差がない場合や、現像器4内のトナーの帯電量が環境やストレスに対して安定している場合は、印字率だけで二次転写電流を制御しても大きな効果が得られる。
【0027】
また、制御部28による制御で用いる関数の形も式(2)や式(4)(6)に限られるものではなく、もっと単純な関数や、逆に、温湿度や中間転写ベルト21上のトナーの付着量といった、他の物理量を考慮した、より複雑な関数を使うことも可能である。特に、トナーの帯電量は湿度によって大きく変化するため、温湿度センサ27で得られる湿度情報によって、式(2)中のQiや、切片、傾きを補正するのは有効である。また、関数を使わず、各トナーの帯電量や印字率に応じて予め定められたテーブルに基づいて制御しても良い。
【0028】
また、本実施形態に係るプリンタにおいて、制御する上で基準となる印字率は、二次転写ニップの出口部に限らず、二次転写ニップの中央や、二次転写ニップ内に存在する印字率の平均値を使うことも可能である。また、二次転写電流値の制御も副走査方向の画素毎に行うのではなく、もっと粗く(例えば、二次転写ニップの幅/プロセス線速 秒毎、画像1枚毎に)行ってもよい。
【0029】
以上、本実施形態に係るプリンタによれば、制御部28は、一次転写電圧測定手段である電源6a、6b、6c、6dによって検出された一次転写電圧に応じて実際の印字率(感光体1上のトナー画像の面積率)を算出し、二次転写電流値を決定する。感光体1上のトナー量や電荷量が変動して、画像データからなる印字率と実際の印字率とが異なっても最適な二次転写を行うことができる。また、電源6は副走査方向の画素毎に一次転写電圧を検出するので、副走査方向に変化する印字率によらず、最適な二次転写を行うことができる。
また、本実施形態に係るプリンタによれば、二次転写において高い転写効率となる電流値は、印字率が高いほど大きくなる。一方、定電流制御における一次転写電圧は、印字率が高いほど大きくなる。よって、制御部28は、電源6で検出した位置の一次転写画像の一次転写電圧が大きいほど、検出した一次転写画像が二次転写ニップ部に到達するタイミングで、二次転写部材たる二次転写対向ローラ23に付与する二次転写電流値が大きくなるように制御する。これにより、印字率によらず最適な二次転写を行うことができる。
また、本実施形態に係るプリンタによれば、制御部28は、中間転写ベルト21上のトナー像の電荷量を参照することで、より最適な二次転写電流値を算出することができる。
また、本実施形態に係るプリンタによれば、中間転写ベルト21には、引張弾性率が2GPa以上となり、ゴム(概ね1〜10MPa)に比べて高い弾性率を有するベルト部材を用いている。色ずれや位置ずれを抑制するには、中間転写ベルトの材料として、少なくとも2GPa以上の弾性率を有する材料を使用することが望ましい。このような高弾性率の中間転写ベルト21は、表面の凹凸の大きな用紙に対する密着性は小さいが、印字率とトナー帯電量に応じて二次転写電流値を低めに制御することによって凹部での放電を抑制し、用紙の地肌が目立たない均一な二次転写を実現できる。つまり、従来から課題であった、凹凸の大きな紙での均一な転写と、一次転写部での色ずれや位置ずれの抑制、及び耐久性の向上を実現できる。
【符号の説明】
【0030】
1 感光体
2 帯電ローラ
4 現像器
5 一次転写ローラ
6 電源
10 一次転写画像形成部
20 二次転写部
21 中間転写ベルト
23 二次転写対向ローラ
25 二次転写ローラ
26 電源
28 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2007−121619号公報
【特許文献2】特開2001−100545号公報
【特許文献3】特開平06−289682号公報
【特許文献4】特許3340221号公報
【特許文献5】特開平9−236964号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、該像担持体上に形成されるトナー像が転写される中間転写体と、該像担持体に対して該中間転写体を介して対向する位置に配設される一次転写部材と、定電流制御により該像担持体と該一次転写部材との間に該像担持体上のトナー像を該中間転写体に転写させる電界を形成する一次転写電界形成手段と、該中間転写体との間に被転写材を挟持する導電部材と、該導電部材に対して該中間転写体を介して対向する位置に配設される二次転写部材と、該導電部材と該二次転写部材との間の二次転写ニップ部に該中間転写体上のトナー像を該被転写材に転写させる電界を形成する二次転写電界形成手段とを有する画像形成装置において、
上記一次転写電界形成手段により該一次転写部材に印加されて副走査方向で変化する一次転写電圧を検出する一次転写電圧検出手段と、
該一次転写電圧検出手段により検出された副走査方向で変化する一次転写電圧に応じて、上記二次転写電界形成手段により上記二次転写部材に供給する二次転写電流値を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記制御手段は、上記一次転写電圧検出手段により検出された一次転写電圧が大きいほど、検出した位置の一次転写画像が二次転写ニップ部に到達するタイミングで上記二次転写電界手段により上記二次転写部材に付与する電流値が大きくなるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記制御手段は、画像データによる印字率及び/又は画素数を参照し、該印字率及び/又は画総数が大きいほど、上記二次転写電界手段により上記二次転写部材に供給する電流値が大きくなるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3の画像形成装置において、
上記制御手段は、上記中間転写体上のトナー像の電荷量を参照し、該電荷量の絶対値が大きいほど、上記二次転写電界手段により上記二次転写部材に供給する電流値が大きくなるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1、2、3、又は4の画像形成装置において、
上記中間転写体は、引張弾性率が2GPa以上のベルト部材であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−217258(P2010−217258A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60809(P2009−60809)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】