説明

画像形成装置

【課題】クリーニング装置に設けられたシール部材に付着した残留トナーによる機内汚れを抑制することを目的とする。
【解決手段】転写ロール20に印加される転写バイアス電圧と逆極性の予備バイアス電圧で残留トナーを帯電する予備帯電部材26と、転写ロール20から感光体ドラム12の流入する転写電流値に基づいて残留トナーの帯電量を推定する推定手段と、推定手段によって推定された前記残留トナーの帯電量が、所定範囲の値となるように予備帯電部材26の帯電電流値を増減する帯電電流増減手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザープリンターに代表される一般的な電子写真方式の画像形成装置において、像保持体に形成されたトナー画像は、通常、直接記録媒体に転写されるか、又は中間転写媒体を介して記録媒体に転写される。記録媒体又は中間転写媒体に転写されずに像保持体の表面に残留した残留トナーは、クリーニング装置によって回収される。
【0003】
クリーニング装置では、回収された残留トナーが回収容器外へ漏れ出さないように、回収容器と像保持体の表面との間をシール部材で塞ぐことが一般的に行われている。
【0004】
一方、特許文献1に開示された画像形成装置では、中間転写ベルトに残留した二次転写残トナーをトナー帯電ローラによって正極性に帯電し、この二次転写残トナーを負極性に帯電された感光体ドラムに再び静電吸着させることにより、感光体ドラム上の残留トナーと共に感光ドラムクリーナ(クリーニング装置)によって除去している。
【0005】
ここで、残留トナーの帯電量は、温度や湿度によって変動するところ、特許文献1の画像形成装置では、トナー帯電ローラの上流側にトナー帯電補助ローラを設け、トナー帯電ローラに先立って二次転写残トナーを正極性に帯電している。そして、温湿度センサによって検出された画像形成装置内の温度や湿度に応じて、トナー帯電補助ロールから残留トナーに付与される電荷を調整することより、トナー帯電ローラと中間転写ベルトとのニップ部周辺に発生する二次転写残トナーの飛沫を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−117892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、クリーニング装置に設けられたシール部材に付着した残留トナーによる機内汚れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の画像形成装置は、像保持体と、帯電バイアス電圧が印加され、前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、前記帯電装置によって帯電された前記像保持体の表面を露光し、該表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像を現像剤により現像し、前記像保持体の表面にトナー画像を形成する現像装置と、前記帯電バイアス電圧と逆極性の転写バイアス電圧が印加され、前記トナー画像を被転写媒体に転写する転写装置と、前記転写バイアス電圧と逆極性の予備バイアス電圧が印加され、前記被転写媒体に転写されずに前記像保持体の表面に残留した残留トナーを帯電する請求項1〜4の何れか1項(修正ください。請求の範囲も同様です)に記載の予備帯電装置と、開口部を前記像担持体の表面に向け、該開口部から前記残留トナーを回収する回収容器と、前記回収容器内に設けられ、前記像保持体の表面から前記残留トナーを前記開口部へ掻き落とす清掃部材と、前記残留トナーの搬送方向上流側の前記開口部の縁に設けられ、該縁と前記像担持体との隙間を塞ぐシール部材と、を有するクリーニング装置と、を備えている。
【0009】
請求項2に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の予備帯電装置において、前記現像転写条件が、前記転写装置の転写電流値である。
【0010】
請求項3に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の予備帯電装置において、前記現像剤がキャリア及びトナーを含む二成分現像剤であり、前記現像転写条件が、前記二成分現像剤のトナー濃度を検出する検出手段によって検出されたトナー濃度である。
【0011】
請求項4に記載の画像形成装置は、請求項2に記載の予備帯電装置において、前記現像転写条件が、前記転写電流値の増減率である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、シール部材に付着した残留トナーによる機内汚れを低減し、画像形成装置の長寿命化を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写条件の変動によってシール部材に付着した残留トナーによる機内汚れを低減することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、トナー濃度の変動によってシール部材に付着した残留トナーによる機内汚れを低減することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、制御を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の要部を模式的に示す図である。
【図2】温度及び湿度とトナーの帯電電位との関係を模式的に示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る残留トナー帯電量制御における、出力転写電流値と出力帯電電流値との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る残留トナー帯電量制御の出力帯電電流値と残留トナーの帯電量との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る転写電流制御、及び残留トナー帯電量制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る転写電流制御における、プロセス速度と出力転写電流値との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の要部を模式的に示す図である。
【図8】トナー濃度とトナーの帯電電位との関係を模式的に示すグラフである。
【図9】温度及び湿度毎のトナー濃度とトナーの帯電量との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る残留トナー帯電量制御における、トナー濃度と出力帯電電流値との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る残留トナー帯電量制御の流れを示すフローチャートである。
【図12】(A)は、従来の予備帯電部材による残留トナーの帯電電位の制御範囲を示す模式図であり、(B)は、本発明の第1の実施形態に係る予備帯電部材による残留トナーの帯電電位の制御範囲を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
先ず、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10について説明する。図1は、画像形成装置10の要部を模式的に示す図である。
【0018】
画像形成装置10は、表面に感光層(不図示)が形成され、矢印K方向に回転する感光体ドラム12(像保持体)を備えている。この感光体ドラム12は、帯電バイアス電圧電源(不図示)から帯電バイアス電圧が印加された帯電装置14によって、所定の帯電電位(本実施形態では、−700v)に帯電される。なお、帯電バイアス電圧は、直流電圧(DC)のみであっても良いし、直流電圧に交流電圧を重畳した、いわゆるAC+DC重畳電圧であっても良い。なお、感光体ドラム12は、アースに接地されている。
【0019】
帯電装置14の感光体ドラム12の回転方向下流側には、露光装置16が設けられている。露光装置16はLEDアレイから構成され、帯電された感光体ドラム12の表面を出力画像に応じて露光し、当該露光部位の表面電位を所定の露光後電位に減衰して静電潜像を形成する。
【0020】
この静電潜像は、露光装置16の感光体ドラム12の回転方向下流側に設けられた現像装置18によって現像され、感光体ドラム12の表面にトナー画像が形成される。現像装置18は現像ロール17を備えており、この現像ロール17には、図示せぬ現像バイアス電圧電源から現像バイアス電圧が印加され、現像装置18内に収容されたトナー(現像剤G中のトナー)が保持される。現像装置18は、現像ロール17に保持されたトナーを感光体ドラム12の表面に付着させて静電潜像を現像し、感光体ドラム12の表面にトナー画像を形成する。なお、現像剤Gとしては、少なくともトナー及びキャリアを含む二成分現像剤が使用されているが、キャリアを含まない一成分現像剤を使用しても良い。
【0021】
感光体ドラム12の表面に形成されたトナー画像は、現像装置18の感光体ドラム12の回転方向下流側に設けられた転写ロール20によって、所定の転写バイアス電圧で印刷用紙P(記録媒体)に転写される。転写ロール20には転写バイアス電圧電源22が接続され、前述した帯電バイアス電圧と逆極性(本実施形態では、正極性)の転写バイアス電圧が印加されている。この転写バイアス電圧電源22には、後述する制御部44が接続されており、転写ロール20の転写電流が制御される。
【0022】
トナー画像が転写された印刷用紙Pは、熱源を有する定着装置(不図示)に搬送され、印刷用紙Pにトナー画像が定着される。
【0023】
一方、印刷用紙Pに転写されずに感光体ドラム12の表面に残留した残留トナーは、転写ロール20の感光体ドラム12の回転方向下流側に設けられた予備帯電部材26によって、所定の帯電電位に帯電される。予備帯電部材26には、帯電バイアス電圧電源36が接続されており、転写ロール20と逆極性(本実施形態では、負極性)の帯電バイアス電圧が印加されている。この帯電バイアス電圧電源36には後述する制御部44が接続されており、予備帯電部材26の帯電電流値が制御される。これらの予備帯電部材26、制御部44によって予備帯電装置が構成されている。なお、本実施形態では、予備帯電部材26としてコロトロンやスコロトロン等のコロナ放電を用いた帯電器を用いているが、導電ロール等を用いても良い。
【0024】
予備帯電部材26によって所定の帯電電位に帯電された残留トナーは、感光体ドラム12の回転方向下流側に設けられたクリーニング装置28によって除去される。クリーニング装置28は、残留トナーを回収するハウジング30(回収容器)と、ハウジング30内に設けられたクリーニングブレード32(清掃部材)と、を備えており、ハウジング30の開口部を感光体ドラム12の表面に向けて配置されている。クリーニングブレード32はゴム等の弾性体からなる板状に形成され、このクリーニングブレード32を感光体ドラム12の表面に接触させて、残留トナーをクリーニングする(掻き落とす)。クリーニングされた残留トナーは、一旦ハウジング30内に収容(回収)され、図示せぬ排出孔からハウジング30の外部へ排出される。
【0025】
また、ハウジング30には、クリーニングブレード32によってクリーニングされた残留トナーが飛沫し、ハウジング30の外部へ漏れるのを防ぐシール部材34が設けられている。シール部材34はフィルム状(薄板状)に形成されており、その一端がハウジング30の開口部の縁(内壁)に接着剤等によって固定され、その他端が感光体ドラム12の表面に接触され、当該開口部の縁と感光体ドラム12との隙間を塞ぐように設けられている。なお、図1では、理解を容易にするためにシール部材34の厚みを誇張して示している。また、シール34の材質、形状等は適宜変更可能である。
【0026】
クリーニング装置28の感光体ドラム12の回転方向下流側には、除電装置40が設けられている。除電装置40はイレーズランプから構成されており、感光体ドラム12の表面を露光することで、感光体ドラム12の表面を除電する。除電された感光体ドラム12は、再び帯電装置14によって帯電される。
【0027】
次に、転写電流制御について説明する。
【0028】
感光体ドラム12の表面に形成されたトナー画像(トナー画像を形成するトナー)の帯電量は、画像形成装置10内外の温度及び湿度によって変動する。そのため、制御部44において転写電流制御が行われている。
【0029】
制御部44には、画像形成装置10内の温度及び湿度を検出する温湿度センサ42が接続されており、この温湿度センサ42によって検出された温度及び湿度に応じて転写ロール20に印加する転写バイアス電圧を増減し、転写ロール20から感光体ドラム12に対して放電される転写電流が所定値となるように制御される。
【0030】
制御部44は、不揮発性メモリ等からなる出力転写電流テーブル記憶部46を備えている。この出力転写電流テーブル記憶部46には、画像形成装置10内の温度及び湿度毎に、転写ロール20から感光体ドラム12に流入させる出力転写電流値が予め記憶されている。この温度及び湿度と出力転写電流値は実験から得られたものであり、例えば、下記のように設定される。
環境1(高温高湿):温度28℃、湿度85% 出力転写電流値:28.6uA
環境2(常温常湿):温度22℃、湿度55% 出力転写電流値:26.0uA
環境3(低温低湿):温度10℃、湿度15% 出力転写電流値:23.4uA
なお、上記のデータは後述する実験から得られたものである。
【0031】
制御部44は、温湿度センサ42によって検出された温度及び湿度に対応する出力転写電流値を出力転写電流テーブル記憶部46から読み出すと共に、この出力転写電流値に対応する転写バイアス電圧値を転写バイアス電圧電源22に設定することにより、転写ロール20の転写電流値を制御する。なお、制御部44には、実験から得られた転写ロール20及び各種配線、回路の抵抗値が記憶されており、この抵抗値と出力転写電流値とから転写バイアス電圧電源22に設定する転写バイアス電圧値を算出している。
【0032】
なお、本実施形態では、温湿度センサ42を画像形成装置10内に設置し、画像形成装置10内の温度及び湿度を検出する場合を例に説明するが、温湿度センサ42を画像形成装置10外に設置し、画像形成装置10外の温度及び湿度に基づいて転写電流制御を行っても良い。
【0033】
次に、残留トナー帯電量制御について説明する。
【0034】
感光体ドラム12の表面に残留した残留トナーの帯電量は、転写ロール20から感光体ドラム12に出力される出力転写電流値によって変動する。そのため、制御部44において残留トナー帯電量制御が行われている。
【0035】
図2(A)〜図2(C)には、比較例として、本実施形態に係る残留トナー帯電量制御が適用されていない画像形成装置10において、温度及び湿度が異なる3つの環境(環境1(高温高湿):28℃、85%、環境2(常温常湿):22℃、55%、環境3(低温低湿):10℃、15%)におけるトナーの帯電電位が模式的に示されている。図2(A)は転写ロール20によって印刷用紙Pに転写される前のトナー(トナー画像)の帯電電位であり、図2(B)は印刷用紙Pに転写されずに感光体ドラム12の表面に残留した残留トナーの帯電電位であり、図2(C)は予備帯電部材26によって帯電された残留トナーの帯電電位を示している。なお、図中の符号50、52、54は、それぞれ環境1、2、3に対応する。また、縦軸は、感光体ドラム12の画像形成可能領域の単位面積当たりのトナー数(粒子数)であり、横軸はトナーの帯電電位である。また、図4には、一般的な転写電流値と残留トナーの帯電量との相関関係が示されている。
【0036】
図2(A)に示されるように、環境1〜環境3によって感光体ドラム12の表面に形成されたトナー画像(トナー)の帯電電位が異なる。従って、上述した転写電流制御により、環境1〜環境3に応じてトナー画像を印刷用紙Pに転写する転写電流値を増減している。この転写電流値の増減により、印刷用紙Pに転写されずに感光体ドラム12の表面に残留した残留トナーの帯電電位が増減される(図2(B)参照)。このように各環境1〜環境3によって帯電電位が変動する残留トナーに対し、予備帯電部材26から一定の電荷(帯電電流)を付与した場合、帯電電位が低い環境1では残留トナーの帯電電位が不足する。これにより、例えば、クリーニングブレード32の感光体ドラム12の回転方向上流側(残留トナーの搬送方向上流側)の開口部の縁に設けられたシール部材34によって残留トナーが掻き落とされ、画像形成装置10内(特に、予備帯電部材26)を汚染する恐れがある。(帯電電位が不足すると、残留トナーと感光体との静電的付着力が低下するため、シール部材による掻き落しが発生する。)一方、帯電電位が高い環境3では残留トナーの帯電電位が過大となる。残留トナーの帯電電位が過大となると、残留トナーと感光体との静電的付着力が増加し、クリーニングブレードによるクリーニング性が低下する。従って、残留トナーの帯電電位(帯電量)を所定範囲の値に制御することが望ましい。
【0037】
また、図12(A)には、従来の予備帯電部材による残留トナーの帯電電位の制御範囲が模式的に示されており、図12(B)には、本実施形態の予備帯電部材26による残留トナーの帯電電位の制御範囲が模式的に示されている。
【0038】
従来の予備帯電部材は、残留トナーの帯電量を少なくし、また、転写後の感光体ドラム12の表面電位ムラの補正を行っている。残留トナーの帯電量が少なくなると、残留トナーと感光体ドラム12との静電的付着力が弱くなるためクリーニング性が向上する。また、転写後の感光体ドラム12の表面電位は、画像の差(トナー量)などによりムラが存在し、次プロセスの帯電時にそのムラが残ってしまう場合があることから予備帯電部材により補正を行っている。従来は、予備帯電部材通過後の残留トナーの帯電量が、図12(A)に示す符号80の範囲に設定されれば、クリーニング性を確保することができていた(実際は、電位ムラ補正に必要な帯電出力があるため、符号82で示すように、マイナス帯電側で使用していた)。
【0039】
しかし、昨今、感光体ドラム12の長寿命化をはかるために感光体ドラム12の表面に潤滑剤を塗布したり、高画質化をはかるためトナーの形状がより球形状に近くなっているため、予備帯電部材26通過後の残留トナーと感光体ドラム12との非静電的付着力が低下している。そのため、予備帯電部材26通過後の残留トナーの帯電量が0付近(図12(B)の符号84参照)になるとシール部材34により掻き落しが発生したり、トナー帯電量の上限値が小さくなっている。したがって、予備帯電部材26通過後の残留トナーの帯電範囲を図12(B)で示す符号86のようにする必要がある(実際は、電位ムラ補正に必要な帯電出力があるため、符号88で示すようにマイナス帯電側で使用することになる)。
【0040】
ここで、本実施形態に係る残留トナー帯電量制御では、転写ロール20の転写電流値(現像転写条件)から残留トナーの帯電量を推定し、推定された残留トナーの帯電量に基づいて予備帯電部材26から感光体ドラム12に対して放電(感光体ドラム12に流入)される帯電電流値を増減し、残留トナーの帯電量が所定範囲の値になるように制御する。例えば、転写電流値が大きい場合、正極性に帯電された残留トナーの帯電電位が高くなり、残留トナーを逆極性(負極性)に帯電させるのに必要な電荷が大きくなるため、帯電電流値を大きくする必要がある。逆に、転写電流値が小さい場合、残留トナーの帯電電位が低くなり、残留トナーを逆極性に帯電させるのに必要な電荷が小さくなるため、帯電電流値を小さくする必要がある。このような転写電流値と帯電電流値との相関関係を用いて残留トナーに付与する電荷、即ち、帯電電流値を決定する。
【0041】
具体的には、制御部44は、不揮発性メモリ等からなる出力帯電電流テーブル記憶部48(推定手段)を備えている。この出力帯電電流テーブル記憶部48には、転写ロール20から感光体ドラム12に流入する転写電流値(出力転写電流値)毎に、予備帯電部材26から感光体ドラム12に流入する出力帯電電流値が予め記憶されている。この出力転写電流値及び出力帯電電流値は実験から得られたものであり、一例として、図3に示されるような出力転写電流値と出力帯電電流値との相関関係が記憶されている。なお、図3は、後述する実験結果から得られたものである。
【0042】
制御部44は、出力転写電流値に対応する出力帯電電流値を出力帯電電流テーブル記憶部48から読み出すと共に、この出力帯電電流値に対応する予備帯電バイアス電圧値を帯電バイアス電圧電源36に設定することにより、予備帯電部材26から感光体ドラム12に流入する帯電電流値を出力帯電電流値に制御する。なお、制御部44には、実験から得られた予備帯電部材26及び各種配線、回路の抵抗値が記憶されており、この抵抗値と出力帯電電流値とから帯電バイアス電圧電源36に設定する予備帯電バイアス電圧値を算出している。
【0043】
次に、転写電流制御、及び残留トナー帯電量制御の流れを図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0044】
現像装置18による現像プロセスの終了後、ステップ100で、温湿度センサ42により画像形成装置10内の温湿度を検出し、制御部44に出力する。次に、ステップ102で、温湿度センサ42によって検出された温度及び湿度に対応する出力転写電流値を、出力転写電流テーブル記憶部46から読み出す。次に、ステップ104で、出力転写電流テーブル記憶部46から読み出した出力転写電流値に対応する転写バイアス電圧値を、転写バイアス電圧電源22に設定する。これにより、転写ロール20の転写電流値が出力転写電流値となり、トナー画像が印刷用紙Pに転写される。次に、ステップ106で、転写ロール20による転写プロセスが終了する。
【0045】
転写ロール20による転写プロセスが終了した後、ステップ108で、出力転写電流値に対応する出力帯電電流値を出力帯電電流テーブル記憶部48から読み出す。次に、ステップ110で、出力帯電電流テーブル記憶部48から読み出した出力帯電電流値に対応する予備帯電バイアス電圧値を帯電バイアス電圧電源36に設定する。これにより、予備帯電部材26の帯電電流値が出力帯電電流値となり、残留トナーが所定の帯電電位に帯電される。次に、ステップ112で、予備帯電部材26による予備帯電プロセスが終了する。
【0046】
次に、実験結果の一例を示す。
【0047】
先ず、上記の環境1〜環境3において、転写ロール20に出力する出力転写電流値を変更し、シール部材34による残留トナーの掻き落としが発生することを確認した。なお、本実験は、環境2、環境1、環境3の順に行い、感光体ドラム12表面の画像形成可能領域の5%にトナー画像を形成し、各環境1〜環境3で印刷用紙3万枚相当の出力を行った。また、図4は、予備帯電部材26によって帯電された後の残留トナーの帯電量を示す実験結果である。
【0048】
<実験条件>
・記録用紙サイズ:A4LEF(Long Edge Feed)
・プロセス速度(感光体ドラム12の周速度):220mm/s
・最大画像濃度(Dmax):1.65
・現像剤(二成分現像剤)
トナー:ポリエステル樹脂製(乳化重合法により製造)、平均粒径5.8um、添加剤(チタン化合物、シリカ、酸化セリウム等)、添加剤の粒径20nm〜150nm
キャリア:メタクリル樹脂で皮膜された磁性粉(平均粒径35um)、抵抗12.0logΩ(現像バイアス電圧−600V)
・シール部材:熱可塑性ポリウレタン製、厚さ0.2mm、自由長6.0mm、感光体ドラム12の表面に対する接触角20度
・感光体ドラムに出力される出力転写電流値
環境2(常温常湿):26.0uA(基準出力転写電流値)
環境1(高温高湿):28.6uA(基準出力転写電流値の110%)
環境3(低温低湿):23.4uA(基準出力転写電流値の90%)
・感光体ドラムに出力される出力帯電電流値
環境2(常温常湿):−300uA
環境1(高温高湿):−300uA
環境3(低温低湿):−300uA
【0049】
次に、残留トナー帯電量制御を行い、転写ロール20から感光体ドラム12に出力される出力転写電流値に応じて、予備帯電部材26から感光体ドラム12に出力される出力帯電電流値を増減し、シール部材34による残留トナーの掻き落としが発生しないことを確認した。なお、上記実験と同じ実験条件は適宜省略する。
【0050】
<実験条件>
・感光体ドラムに出力される出力転写電流値
環境2(常温常湿):26.0uA(基準出力転写電流値)
環境1(高温高湿):28.6uA(基準出力転写電流値の110%)
環境3(低温低湿):23.4uA(基準出力転写電流値の90%)
・感光体ドラムに出力される出力帯電電流値
環境2(常温常湿):−300uA(基準出力帯電電流値)
環境1(高温高湿):−330uA(基準出力転写電流値の110%)
環境3(低温低湿):−270uA(基準出力転写電流値の90%)
【0051】
上記実験結果から分かるように、環境2(常温常湿)における出力転写電流値、及び出力帯電電流値をそれぞれ基準出力転写電流値、基準出力帯電電流値とした場合、基準出力転写電流値に対する環境1及び環境3の出力転写電流値の増減率と、基準出力帯電電流値に対する環境1及び環境3の出力帯電電流値の増減率と、が一致している。従って、残留トナー帯電量制御において、予め設定された所定の基準転写電流値に対する出力転写電流の増減率を算出し、この増減率で予め設定された所定の基準帯電電流値を増減することにより、各環境1〜環境3に対応する出力帯電電流値が求められる。
【0052】
なお、上述した転写電流制御では、温湿度センサ42で検出された温度及び湿度に基づいて、転写ロール20に出力する転写電流値を制御したが、プロセス速度に基づいて転写電流値を制御しても良い。なお、プロセス速度とは、帯電装置14から除電装置40までの一連の画像形成プロセスの速度を意味し、具体的には感光体ドラム12の周速度である。
【0053】
図6には、プロセス速度と出力転写電流値との関係が示されている。プロセス速度は、例えば、被印刷媒体である印刷用紙Pの厚み(例えば、ハガキ印刷など)に応じて増減される。プロセス速度が速くなると、転写ロール20による帯電時間が短くなるため転写するのに必要な帯電電流が大きくなり、逆にプロセス速度が遅くなると、転写時間が長くなるため転写するのに必要な帯電電流が小さくなる。このようなプロセス速度と出力転写電流値との相関関係から残留トナーの帯電量を推定し、予備帯電部材26による出力帯電電流値を制御しても良い。
【0054】
次に、第2の実施形態に係る画像形成装置60について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
【0055】
感光体ドラム12の表面に形成されたトナー画像(トナー)の帯電量は、現像剤Gのトナー濃度によっても変動する。そのため、画像形成装置60ではトナー濃度に基づく残留トナー帯電量制御が行われている。
【0056】
図7に示すように、現像装置18は、現像装置18内に収容された現像剤Gのトナー濃度(残像剤G中のトナーの割合)を測定するトナー濃度センサ62(検出手段)を備えている。トナー濃度センサ62は、現像装置18内に収容された現像剤Gの透磁率を検出することによりトナー濃度を検出するATC(Automatic Threshold Control)センサであり、検出したトナー濃度を制御部44へ出力する。制御部44は、トナー濃度センサ62によって検出されたトナー濃度に対応する予備帯電バイアス電圧値を帯電バイアス電圧電源36に設定することにより、予備帯電部材26の帯電電流値を出力帯電電流値に制御する。
【0057】
図8(A)〜図8(C)には、比較例として、本実施形態に係る残留トナーの帯電制御が適用されていない画像形成装置10において、トナー濃度が異なる2つの現像剤(現像剤1(低濃度):6.5%、現像剤2(高濃度):7.5%)におけるトナーの帯電電位が模式的に示されている。図8(A)は転写ロール20によって印刷用紙Pに転写される前のトナー(トナー画像)の帯電電位であり、図8(B)は印刷用紙Pに転写されずに感光体ドラム12の表面に残留した残留トナーの帯電電位であり、図8(C)は予備帯電部材26によって帯電された残留トナーの帯電電位を示している。なお、図中の符号66、68は、それぞれ現像剤1、2に対応する。また、縦軸は、感光体ドラム12のトナー画像形成可能領域の単位面積当たりのトナー数(粒子数)であり、横軸はトナーの帯電電位である。
【0058】
図8(B)に示されるように、現像剤Gのトナー濃度によって転写後の残留トナーの帯電電位が変動する。また、図9に示されるように、環境1〜環境3によっても残留のトナーの帯電電位が変動する。このようにトナー濃度や環境1〜3によって帯電電位が異なる残留トナーに対し、予備帯電部材26から一定の電荷(帯電電流)を付与した場合、帯電電位が低い現像剤1では残留トナーの帯電電位が不足して、例えば、シール部材34との接触によって掻き落とされ、予備帯電部材26の汚れや画像形成装置10内の汚染が発生する。(帯電電位が不足すると、残留トナーと感光体との静電的付着力が低下するため、シール部材による掻き落しが発生する。)一方、帯電電位が高い現像剤2では残留トナーの帯電電位が過大となる。残留トナーの帯電電位が過大となると、残留トナーと感光体との静電的付着力が増加し、クリーニングブレードによるクリーニング性が低下する。従って、残留トナーの帯電電位(帯電量)を所定範囲の値に制御することが望ましい。
【0059】
ここで、本実施形態に係る残留トナー帯電量制御では、温湿度センサ42で検出された温度及び湿度(現像転写条件)と、トナー濃度センサ62で検出されたトナー濃度(現像転写条件)から残留トナーの帯電量を推定し、推定された残留トナーの帯電量に基づいて、予備帯電部材26の帯電電流値を増減し、残留トナーの帯電量が所定範囲の値になるように制御する。例えば、低温度、低湿度環境で且つトナー濃度が低い場合、正極性に帯電された残留トナーの帯電電位が高くなり、残留トナーを逆極性(負極性)に帯電させるのに必要な電荷が大きくなるため、帯電電流値を大きくする必要がある。逆に、高温度、高湿度環境で且つトナー濃度が高い場合、残留トナーの帯電電位が低くなり、残留トナーを逆極性に帯電させるのに必要な電荷が小さくなるため、帯電電流値が小さくする必要がある。このような転写電流と帯電電流との相関関係を用いて、残留トナーを帯電させる帯電電流値を決定する。
【0060】
具体的には、制御部44は、不揮発性メモリ等からなる出力帯電電流テーブル記憶部72(推定手段)を備えている。この出力帯電電流テーブル記憶部72には、各環境(例えば、環境1〜環境3)におけるトナー濃度毎に、予備帯電部材26の出力帯電電流値が予め記憶されている。このトナー濃度及び出力帯電電流値は実験から得られたものであり、一例として、図10に示されるトナー濃度と出力帯電電流値との相関関係が記憶されている。なお、図10は、後述する実験結果から得られたものである。
【0061】
制御部44は、温湿度センサ42で検出された温度及び湿度と、トナー濃度センサ62で検出されたトナー濃度に対応する出力帯電電流値を出力帯電電流テーブル記憶部72から読み出すと共に、この出力帯電電流値に対応する予備帯電バイアス電圧値を帯電バイアス電圧電源36に設定する。これにより、予備帯電部材26から感光体ドラム12に流入する帯電電流値を出力帯電電流値に制御する。なお、制御部44には、実験から得られた予備帯電部材26及び各種配線、回路の抵抗値が記憶されており、この抵抗値と出力帯電電流値とから帯電バイアス電圧電源36に設定する予備帯電バイアス電圧値を算出している。
【0062】
次に、残留トナー帯電量制御の流れを図11に示すフローチャートに従って説明する。
【0063】
転写ロール20による転写プロセスの終了した後、ステップ120で、温湿度センサ42によって画像形成装置10内の温度及び湿度を検出し、制御部44へ出力する。次に、ステップ122で、トナー濃度センサ62によって現像剤Gのトナー濃度を検出し、制御部44へ出力する。次に、ステップ124で、温湿度センサ42によって検出された温度及び湿度と、トナー濃度センサ62で検出されたトナー濃度と、に対応する出力帯電電流値を出力帯電電流テーブル記憶部72から読み出す。次に、ステップ126で、出力帯電電流テーブル記憶部72から読み出した出力帯電電流値に対応する予備帯電バイアス電圧値を帯電バイアス電圧電源36に設定する。これにより、予備帯電部材26の帯電電流値が出力帯電電流値に制御され、残留トナーが所定の帯電電位に帯電される。次に、ステップ128で、予備帯電部材26による予備帯電プロセスが終了する。
【0064】
次に、実験結果の一例を示す。
【0065】
先ず、上記環境1、3において現像剤Gのトナー濃度に応じて予備帯電装置26の帯電電流値を変更し、シール部材34による残留トナーの掻き落としが発生しないことを確認した。なお、第1の実施形態で示した実験と同じ実験条件は適宜省略する。
【0066】
<実験条件>
・各環境1、3における現像剤Gのトナー濃度の設定値
環境1(高温高湿):6%、6.5%、7.0%(基準トナー濃度6.5%)
環境3(低温低湿):7%、7.5%、8.0%(基準トナー濃度7.5%)
・感光体ドラムに出力される出力帯電電流値:−300uA(基準出力帯電電流値)
【0067】
上記実験結果及び図10に示されるように、各環境1、3の基準トナー濃度をそれぞれ6.5%、7.5%とした場合、出力帯電電流値Iは、式(1)によって求めることができる。
=I+(TC−TC)×200 ・・・(1)
ここで、I:基準出力帯電電流値、TC:各環境における基準トナー濃度、TC:トナー濃度の測定値(本実験では、トナー濃度の設定値に対応する)、である。
【0068】
なお、本実施形態では、温湿度センサ42で検出された温度及び湿度と、トナー濃度センサ62で検出されたトナー濃度から出力帯電電流値を推定したが、トナー濃度センサ62で検出されたトナー濃度のみを用いて出力帯電電流値を推定しても良い。
【0069】
また、本実施形態では、トナー濃度センサ62としてATCセンサを用いたがこれに限らない。例えば、感光体ドラム12の表面にトナー濃度検出用のパッチ画像を形成し、このパッチ画像の濃度を感光体ドラム12の側方に設けられた濃度センサによって検出しても良い。
【0070】
また、上記第1、第2の実施形態では、転写ロール20で印刷用紙Pにトナー画像を転写する場合を例に説明したが、印刷用紙Pに替えて中間転写ベルト等にトナー画像を転写しても良い。
【0071】
また、上記で示した実験結果は、あくまでも一例であって、本発明の構成を何ら限定するものではない。実験で使用した各設定値は、画像形成装置の構成や、画像形成装置の置かれる環境によって適宜変更可能である。
【0072】
以上、本発明の第1、第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1、第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10 画像形成装置
12 感光体ドラム(像保持体)
14 帯電装置
16 露光装置
17 現像ロール(現像装置)
18 現像装置
20 転写ロール(転写装置)
26 予備帯電部材(予備帯電装置)
28 クリーニング装置
30 ハウジング(回収容器)
32 クリーニングブレード(清掃部材)
34 シール部材
44 制御部(帯電電流増減手段)
48 出力帯電電流テーブル記憶部(想定手段)
60 画像形成装置
62 トナー濃度センサ(検出手段)
72 出力帯電電流テーブル記憶部(想定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体と、
帯電バイアス電圧が印加され、前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
前記帯電装置によって帯電された前記像保持体の表面を露光し、該表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像を現像剤により現像し、前記像保持体の表面にトナー画像を形成する現像装置と、
前記帯電バイアス電圧と逆極性の転写バイアス電圧が印加され、前記トナー画像を被転写媒体に転写する転写装置と、
前記転写バイアス電圧と逆極性の予備バイアス電圧が印加され、前記被転写媒体に転写されずに前記像保持体の表面に残留した残留トナーを帯電する請求項1〜4の何れか1項(修正)に記載の予備帯電装置と、
開口部を前記像担持体の表面に向け、該開口部から前記残留トナーを回収する回収容器と、前記回収容器内に設けられ、前記像保持体の表面から前記残留トナーを前記開口部へ掻き落とす清掃部材と、前記残留トナーの搬送方向上流側の前記開口部の縁に設けられ、該縁と前記像担持体との隙間を塞ぐシール部材と、を有するクリーニング装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記現像転写条件が、前記転写装置の転写電流値である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像剤がキャリア及びトナーを含む二成分現像剤であり、
前記現像転写条件が、前記二成分現像剤のトナー濃度を検出する検出手段によって検出されたトナー濃度である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像転写条件が、前記転写電流値の増減率である請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−217327(P2010−217327A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61752(P2009−61752)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】