説明

画像形成装置

【課題】内側覆い部材の装着口と着脱部品との間の隙間を通して放出される騒音が画像形成装置の外部まで漏れ出てしまうことを低減することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】筐体の内部に着脱自在に装着される着脱部品と、装着口が形成されている内側覆い部材と、外側覆い部材と、内側覆い部材と外側覆い部材との間に配置され、当該内側覆い部材の少なくとも装着口を露出させた状態及び覆って遮音する状態にするよう開閉操作される遮音部材とを有し、遮音部材16の少なくとも前記内側覆い部材の装着口と対向する部分に複数の貫通孔6を一定の配置パターンで形成する一方で、遮音部材と外側覆い部材とを互いに閉じた状態にしたときに貫通孔が形成された遮音部材の部分と当該外側覆い部材とが間隔をあけて対向する状態になるよう配置して両者の間に空気層7を形成し、貫通孔が形成された遮音部材の部分と空気層とによる吸音構造を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式等の記録方式を利用したプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置においては、その画像形成動作に伴う動作音が装置の外部に漏れ出ることにより騒音として認識されることがある。
【0003】
従来においては、騒音を発生する画像形成装置の外装材構造として、外装部材と内装部材の2部品で間隔をあけて対向させて密閉構造とし、これら外装部材と内装部材の間に稼動時に発生する周波数に対応する共鳴空間を形成してなり、その内容部材に画像形成装置本体の内部の少なくとも一部につながる通路を設けた外装材構造が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−235396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、筐体の内部を覆う内側覆い部材とその内側覆い部材を露出させた状態及び覆った状態にするよう開閉操作される外側覆い部材を有するとともに、その内側覆い部材に形成される装着口を通して着脱自在に装着される着脱部品を有する画像形成装置として、その内側覆い部材の装着口と着脱部品との間の隙間を通して放出される騒音が画像形成装置の外部まで漏れ出てしまうことを低減することができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(A1)の画像形成装置は、筐体の内部に着脱自在に装着される着脱部品と、
前記筐体にその内部を覆う状態で取り付けられるとともに前記着脱部品を着脱するときに通過させる装着口が形成されている内側覆い部材と、
前記内側覆い部材を露出させた状態及び覆った状態にするよう開閉操作される外側覆い部材と、
前記内側覆い部材と前記外側覆い部材との間に配置され、当該内側覆い部材の少なくとも装着口を露出させた状態及び覆って遮音する状態にするよう開閉操作される遮音部材とを有し、
前記遮音部材の少なくとも前記内側覆い部材の装着口と対向する部分に複数の貫通孔を一定の配置パターンで形成する一方で、当該遮音部材と前記外側覆い部材とを互いに閉じた状態にしたときに当該貫通孔が形成された遮音部材の部分と当該外側覆い部材とが間隔をあけて対向する状態になるよう配置して両者の間に空気層を形成し、前記貫通孔が形成された遮音部材の部分と前記空気層とによる吸音構造を構成していることを特徴とするものである。
【0007】
この発明(A2)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記吸音構造における吸音周波数f0を下記式で表した場合、
0=C/2π・√[12P/{h(12t+3πd)+4Ph3}]
[C:音速(mm/秒)、P:遮音部材の開口率、h:空気層の厚さ(mm)、t:遮音部材の厚さ(mm)、d:貫通孔の間隔(mm)]
前記遮音部材、貫通孔及び外側覆い部材については、前記吸音構造における吸音周波数f0が前記内側覆い部材の装着口と前記着脱部品との間の隙間を通して放出される騒音のうち吸音の対象とする音の周波数fnと一致する条件を満たすように設定されているものである。
【0008】
この発明(A3)の画像形成装置は、上記発明A2の画像形成装置において、前記着脱部品が少なくとも感光体と帯電装置を装備する交換部品であり、かつ、前記騒音の周波数fnが前記帯電装置の帯電時に発生する騒音の周波数であるものである。
【0009】
この発明(A4)の画像形成装置は、上記発明A1からA3までのいずれかの画像形成装置において、前記空気層が、非密閉空間として形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
上記発明A1の画像形成装置によれば、筐体の内部を覆う内側覆い部材とその内側覆い部材を露出させた状態及び覆った状態にするよう開閉操作される外側覆い部材を有するとともに、その内側覆い部材に形成される装着口を通して着脱自在に装着される着脱部品を有する画像形成装置であるにもかかわらず、その内側覆い部材の装着口と着脱部品との間の隙間を通して放出される騒音が画像形成装置の外部まで漏れ出てしまうことを低減することができる。
【0011】
上記発明A2の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、上記発明A1による効果を的確に得ることができる。
【0012】
上記発明A3の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、帯電装置の帯電時に発生する騒音が画像形成装置の外部まで漏れ出てしまうことを低減することができる。
【0013】
上記発明A4の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、筐体の内部の温度が上昇することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の外観全体の概要(外装カバー等を閉じた状態)を示す斜視図である。
【図2】図1の画像形成装置における設置正面側の外装カバーを開けた状態を示す斜視図である。
【図3】図1の画像形成装置における遮音カバーを開けた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の画像形成装置における筐体の内部の主要な構成を示す説明図である。
【図5】図1の画像形成装置における作像部の構成を示す一部断面図である。
【図6】図5の内装カバーの装着口における遮音カバー及び外装カバーの構造(吸音構造)を拡大して示す概略断面図である。
【図7】遮音カバーに形成する複数の貫通孔の配置パターンを示す説明図である。
【図8】式1における記号の内容を示す説明図である。
【図9】式1及び式2における記号等の内容を示す説明図である。
【図10】式1を用いて表される貫通孔の孔間隔と周波数との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1はこの実施の形態に係る画像形成装置1の外観全体を斜視した状態を示し、図2はその画像形成装置における設置正面側の外装カバーを開けた状態を示し、図3はその画像形成装置における遮音カバーを開けた状態を示し、図4はその画像形成装置における筐体の内部の主要な構成を示している。
【0017】
画像形成装置1は、図1等に示すように、作像装置等が設置されている作像部2と、作像部2に供給する記録用紙9を収容して送り出す給紙部4とを有している。
【0018】
作像部2は、支持フレーム、板金等の材料を用いて箱状に形成される筐体10と、この筐体10の内部空間に設置される作像装置20、定着装置35等の設置機器と、筐体10の周囲を覆う状態で取り付けられる内装カバー12、外装カバー14、遮音カバー16等のカバー部材で構成されている。筐体10の上部に形成された一部斜面からなる曲面部19は、画像が形成された記録用紙9を排出させて収容する排紙部である。
【0019】
作像装置20は、図4に示すように、中間転写方式を採用したものであり、具体的には、互いに異なる色(本例ではイエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:Kの計4色)のトナー像を形成する複数(本例では4つ)の作像ユニット20(20Y,20M,20C,20K)を、中間転写方式における中間転写ベルト30の外周面と対向させた状態で、しかもその回転移動方向に間隔をあけて直列に並べて配置した構成になっている。
【0020】
作像装置20における各作像ユニット20Y,20M,20C,20Kはいずれも、回転するように配置されるドラム形態の感光体21と、その感光体21の周囲に配置される帯電装置22、露光装置23、現像装置24、一次転写装置25、清掃装置26等で構成されている。
【0021】
このうち感光体21は、回転自在に支持されるとともに接地された導電性の円筒状の基材の円筒周面に、有機感材等で構成される感光層(光導電層)等を形成したものである。感光体21は、図示しない回転駆動装置の動力により所要の方向(矢印で示す方向)に所要の速度で回転駆動する。帯電装置22は、感光体21の回転軸方向における少なくとも像形成有効領域に接触して回転する帯電ロール22aを配置し、その帯電ロール22aに図示しない電源部から直流のみの又は直流に交流を重畳した帯電用電圧を印加するものである。
【0022】
露光装置23は、画像形成装置1に入力される画像情報に応じた光を感光体21に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置23としては、例えば、半導体レーザとポリゴンミラー等の光学部品を用いて構成される走査型露光装置や、発光ダイオードと光学部品等を用いて構成される非走査型露光装置が使用される。この露光装置23には、画像形成装置1に入力された画像情報が図示しない画像処理装置で所要の処理をされた後の画像信号が入力されるようになっている。
【0023】
現像装置24は、現像方式に適応する現像剤(トナー)を感光体21の現像領域に供給して静電潜像を現像するものである。現像装置24としては、例えば、(非磁性の)トナーと(磁性の)キャリアを含む二成分現像剤を用いて反転現像を行う二成分現像装置が使用される。
【0024】
一次転写装置25は、感光体21の回転軸方向における少なくとも帯電された領域に接触して回転する一次転写ロール25aを配置し、その転写ロール25aに図示しない電源部からトナーの帯電極性とは反対側の極性の一次転写用電圧を印加するものである。清掃装置26は、感光体21の転写後の周面に接触する弾性板等の清掃部材と、その清掃部材で除去するトナー等の付着物を回収する回収容器等を設置したものである。
【0025】
中間転写ベルト30は、複数の支持ロール31a,31b,31c等にかけ回されて所用の張力下で回転自在に支持され、作像装置20の各作像ユニット20における感光体21と転写装置25(転写ロール25a)の間の一次転写位置を順次通過して移動する状態で配置されている。中間転写ベルト30は、図示しない駆動装置により回転駆動する駆動用ロール31により所要の方向(矢印で示す方向)に所要の速度で回転する。
【0026】
中間転写ベルト30としては、導電剤を含有させて所要の体積抵抗率に調製された樹脂、ゴム等の材料を用いて無端状に成形されたベルトが使用される。中間転写ベルト30の二次転写支持ロール31bで支持されている部分の外周面側には、そのベルトの外周面に所要の圧力で接触して回転する二次転写ロール32が設置されている。二次転写支持ロール31b又は二次転写ロール32のいずれか一方には、図示しない電源部から二次転写電圧が印加される。また、中間転写ベルト30の駆動用の支持ロール31aで支持されている部分の外周面側には、二次転写後のベルト外周面を清掃する図示しない清掃装置が設置されている。
【0027】
定着装置35は、断熱性を有する筐体36の内部に対し、矢印で示す方向に回転駆動するとともに表面温度が加熱手段により所要の温度に加熱して保持されるロール形態、ベルト形態等の加熱回転体37と、この加熱回転体37の軸方向にほぼ沿うように所要の圧力で接触して従動回転するロール形態、ベルト形態等の加圧回転体38等を設置して構成されている。
【0028】
作像部2の筐体10内には、給紙部4から供給される記録用紙9を二次転写位置まで搬送する、複数の用紙搬送ロール対39a,39b等と搬送ガイド材で構成される給紙路が設けられている。この他にも、定着装置35から排出される記録用紙9を排紙部19への排出口にむけて搬送する、用紙搬送ロール対39e等と搬送ガイド材で構成される排出路等が設けられている。
【0029】
給紙部4は、支持フレーム、板金等の材料を用いて箱状に形成される図示しない筐体と、この筐体の内部空間に設置される用紙収容体41と、用紙収容体41に収容される記録用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置42、筐体の内部を覆い隠す外装カバー40等で構成されている。用紙収容体41は、筐体に対して抜き挿し自在に取り付けられており、所望のサイズ、種類等の収容対象となる記録用紙9を積載した状態で保持する保持板43を有している。
【0030】
この画像形成装置1による画像形成は、次のようにして行われる。ここでは、Y,M,C,Kの4色のトナー像で構成されるフルカラー画像を形成するフルカラープリントが要求された場合を想定し、そのときの動作内容について説明する。
【0031】
フルカラープリントが要求されると、図4に示すように、作像部2の各作像ユニット20(Y,M,C,K)において、回転始動する感光ドラム21が帯電装置22によって所定の電位に帯電され、その帯電後の感光ドラム21に露光装置23から画像信号に基づく露光が行われて各色成分に応じて静電潜像が形成された後、その静電潜像が現像装置24において対応する色のトナーによって現像されて各色(Y,M,C,K)のトナー像が形成される。この各作像ユニット20で形成された各トナー像は、感光ドラム21が一次転写装置25と対向する一次転写位置において中間転写ベルト30に次々と重ね合せられるように静電転写され、しかる後、その中間転写ベルト30が二次転写ロール35と対向する二次転写位置まで搬送される。
【0032】
続いて、給紙部4から所要のタイミングで搬送される記録用紙9が作像部2の二次転写位置に送り込まれると、中間転写ベルト30上のトナー像が記録用紙9の片面に一括して静電転写される。トナー像が転写された記録用紙9は、作像部2の定着装置35に導入される。定着装置35では、トナー像が転写された用紙9が加熱回転体37と加圧回転体38の間の接触部を通過する際に加熱及び加圧され、これによりトナー像を溶融させて用紙9に定着させる。定着が終了した後の記録用紙9は、定着装置35から排出された後、筐体10の上部に形成された排出部19等に搬送される。
【0033】
以上により、1枚の記録用紙9の片面に対してフルカラー画像が形成される。また複数枚分のフルカラー画像の形成が要求された場合は、上記した動作が同様に繰り返される。さらに、画像形成装置1では、複数の作像ユニット20のうちブラック色の作像ユニット20Kのみを作動させることにより、K色のトナー像で構成される白黒画像を形成することも可能である。
【0034】
また、画像形成装置1は、図5に示すように、作像装置20の4つの作像ユニット20における感光体21と帯電装置22(帯電ロール22a)が、支持フレームに一体的に装着された交換ユニット29として形成されているとともに作像部2の筐体10の内部(装着空間部11)に対して着脱自在に装着されるように構成されている。
【0035】
作像部2の筐体10は、図2、図5に示すように、複数の支持フレーム、板金等の材料10a〜10dで形成されており、また、その内部空間が外部(主に設置正面側の外部)から覆い隠された状態になるよう筐体10の設置正面側となる周囲に板状の内装カバー12が取り付けられている。また、内装カバー12の各作像ユニット20(Y,M,C,K)の各装着空間部11の開口部と対応する位置には、図2等に示すように、その各作像ユニット20の交換ユニット29を着脱するときに通過させる装着口13(Y,M,C,K)が形成されている。
【0036】
作像部2の筐体10には、図2〜図3、図5等に示すように、装着口13が形成された内装カバー12を外部に露出させた状態と外部から覆い隠した状態にするよう開閉操作される板状の外装カバー14が取り付けられている。外装カバー14は、筐体10の所定の部位に対して蝶番(ヒンジ部)15aを介して開閉動(揺動)する状態で取り付けられている。
【0037】
図2、図3等における符号15bは外装カバー14を開けたときの状態を所要の位置で固定して保持するための保持アーム、符号15c、15dは外装カバー14を閉じたときの状態を保持するためのマグネット式の固定補助手段(マグネット体と磁性板の組み合わせなど)、点線の両矢印B,Cは外装カバー14の開ける方向(B)と閉じる方向(C)を示すものである。また、図5における符号14Bは筐体10の上面側から見える内部空間を塞ぐ状態で取り付けられる上面外装カバー、14Cは筐体10の背面側(設置正面とは反対の裏面の側)から見える内部空間を塞ぐ状態で取り付けられる背面外装カバーである。
【0038】
また、内装カバー12には、図2〜図3等に示すように、その4つの装着口13(Y,M,C,K)とその周囲を外部に露出させた状態と外部から覆い隠して遮音した状態にするよう開閉操作される板状の遮音カバー16が取り付けられている。
【0039】
遮音カバー16は、図3等に示すように、4つの装着口13を一度に覆う大きさからなる平板状の基板16aに対し、内装カバー12の各装着口13の周囲部分と密接して密閉するように、基板16aの端部を囲むような状態で外枠(縁板)16bを形成するとともに、各装着口13を個別に囲む領域を区画するような状態で仕切り板16c、16dを形成した構造になっている。この遮音カバー16は、内装カバー12の装着口13の下方となる部分に蝶番(ヒンジ部)17aを介して点線の両矢印方向B,Cに開閉動(揺動)する状態で取り付けられている。また、遮音カバー16と内装カバー12との間には、遮音カバー16が閉じたときの状態を保持するための図示しない固定補助手段が設けられている。
【0040】
ここで、交換ユニット29の交換作業について説明する。
【0041】
はじめに画像形成装置1において、その正面の外装カバー14を開けた状態(図2)にした後、遮音カバー16を開けた状態にする(図3)。この状態において内装カバー12に形成された4つの装着口13に露出している交換ユニット29をその装着口13を通過させるようにして装着空間部から引き出すことで取り外される。一方、新たな交換ユニット29をその4つの装着口13を通して装着空間部11に押し込んで装着する。この装着後は、遮音カバー16を閉じて4つの装着口13を覆って遮音する状態にしてから、最後に外装カバー14を閉じる。これにより、画像形成装置1は、図1に示すように、外装カバー14(遮音カバー16を含む)が閉じられた状態になる。
【0042】
そして、遮音カバー16には、図2〜図3、図5〜図6等に示すように、その内装カバー12の少なくとも各装着口13とそれぞれ対向する部分(平板状の基板16aの各装着口13とその周囲部分と対向する分)に複数の貫通孔6を形成している。
【0043】
複数の貫通孔6は、一定の配置パターンで形成されるものであり、この実施の形態では、図7に例示するように隣り合う各貫通孔6の中心点61の離間距離dがすべて同じ値になるパターンで形成されている。図7に一点鎖線で示す複数の三角形はいずれも、その一辺が寸法dの正三角形である。また、この実施の形態では、貫通孔6として円形の孔形状のものを形成しているが、中心点を定めることができる他の孔形状の孔、例えば正多角形などであっても構わない。
【0044】
また、遮音カバー16は、外装カバー14と共に互いに閉じた状態にしたとき(図6等を参照)、その貫通孔6が形成された基板16aの部分と外装カバー14とが所定の間隔hをあけて対向する状態になるように配置して、遮音カバー16と外装カバー14(の内側面)との間に空気層7が形成されるように構成している。そして、この画像形成装置1では、その複数の貫通孔6が形成された遮音カバー16の基板16aの部分と空気層7とによる吸音構造を構成している。
【0045】
空気層7は、複数の貫通孔6が形成された遮音カバー16の基板16aの外側面部分と外装カバー14の平面状の内側面側とが所要の間隔をあけて配置することで形成される。また、空気層7については、遮音カバー16の基板16aと外装カバー14の内側面との間に仕切り部材を配置して密閉空間として形成することなく、上記間隔の隙間のみからなる非密閉空間として形成した(図5、図6参照)。
【0046】
さらに、この吸音構造を構成する遮音カバー16、貫通孔6及び外側カバー14の構成については以下のように設定している。
【0047】
すなわち、上記吸音構造における吸音周波数f0を下記式(1)で表した場合、
0=C/2π・√[12P/{h(12t+3πd)+4Ph3}] …(1)
遮音カバー16、貫通孔6及び外装カバー14については、上記吸音周波数f0が内装カバー12の装着口13と交換ユニット29との間の隙間S(図6参照)を通して放出される騒音のうち吸音の対象とする音の周波数fnと一致する条件を満たすように設定している。式(1)中における各記号については、図8に示すように、Pが遮音カバー16(基板16a)の開口率、hが空気層の厚さ(換言すれば遮音カバー16の外面と外装カバ014の内面との間隔)(mm)、tが遮音カバー16(基板16a)の厚さ(mm)、dが貫通孔の間隔(mm)を示している。また、記号Cは音速(mm/秒)を示す。この式1は、例えば、日本音響学会編音響工学講座3 建築音響(永田穂著、出版:コロナ社、1988年)の第80〜81頁に記載の事項を参照および引用したものである。
【0048】
つまり、f0=fnとなるように、遮音カバー16、貫通孔6及び外装カバー14に関する上記開口率P、空気層の厚さh、遮音カバー16の厚さt、貫通孔6の間隔dなどについて調整して設定する。
【0049】
ここで、遮音カバー16(基板16a)の開口率Pについては、貫通孔6の形状とその配置パターンによって種々変化するものである。そこで、この実施の形態では、図7、図9に示すように、貫通孔6の形状を半径rの円形とし、その配置パターンを孔間隔dの稠密配置(例えば隣り合う貫通孔6の中心点61が、配置パターンの単位基準となる1辺dからなる正三角形の頂点に位置する状態の配置)として場合、その開口率Pについては、下記の式(2)にて求められる値とした。すなわち、この場合の開口率Pは、図9(B)に拡大して示すように、正三角形Eに存在する貫通孔6(一部分6´)の占める割合(面積占有率)を求めることで得られる。
P=[3・(πr2/6)]/[(1/2)・√(3/2)d・d]
=(2π/√3)・(r2/d2) …(2)
【0050】
また、この画像形成装置1においては、内装カバー12の装着口13と交換ユニット29との間の隙間S(図6参照)を通して放出される騒音として、交換ユニット29における帯電装置22の帯電時に帯電ロール22aと感光体21との間で起こる放電現象に伴って発生する高周波の騒音が存在する。このため、帯電装置22の帯電時に発生する騒音を吸音の対象とする騒音とし、上記吸音対象の音の周波数fnについては帯電時に発生する騒音の周波数とした。この周波数fnは、一般に、帯電装置22に印加される交流電圧の周波数の2倍になる。
【0051】
そして、この実施の形態では、上記吸音構造によって周波数fnが「2.7kHz」の帯電騒音を吸音するため、厚さtが「2mm」の遮音カバー16(基板16a)を閉じた状態にあるときの外装カバー14の平面状の内面に対して「4mm」の間隔hが確保されるように配置したうえで、その遮音カバー16に対して半径rが「1.5mm」の円形孔からなる貫通孔6を上記稠密配置として形成することを前提として、その貫通孔6の間隔dを設定することとした。図10は、式2を式1に代入して孔間隔dを求める式に展開するとともに、上記t,h,rの値と音速Cの値(340,000mm/秒)を代入した式(周波数f0)について、横軸に孔間隔d、縦軸に周波数をとって表したものである。この他、内装カバー14、外装カバー14、遮音カバー16は、ABS樹脂を用いて得られるプラスチック成形品で作製したものを使用した。
【0052】
この結果、この実施の形態では、「2.7kHz(=fn)」の帯電騒音を吸音するために、貫通孔6をその孔間隔dが約「7.53mm」となる条件を満たすように形成することとした。ちなみに、この場合、1つの装着口13の開口面積は、3,596mm2であり、遮音カバー16の基板16aの面積が22,875mm2であり、その基板16aに対して貫通孔6を計306個形成した。
【0053】
画像形成装置1では、この遮音カバー16を外装カバー14と共に閉じた状態にしてプリント動作を行った場合、4つの作像ユニット20(Y,M,C,K)における各交換ユニット29の帯電装置22(帯電ロール22a)からの周波数2.7kHzの帯電騒音が画像形成装置1の外部にほとんど漏れ出ることがない。
【0054】
また、この画像形成装置1では、遮音カバー16に複数の貫通孔6が形成されているとともに遮音カバー16と外装カバー14の間に形成される空気層7が前述したように非密閉空間として形成されているため、筐体10の内部で露光装置23等の設置機器から発生する熱気が、交換ユニット29とその装着空間部11(装着口13を含む)の隙間Sから漏れ出た後、遮音カバー16の貫通孔6を通過して空気層7に漏れ出ることにより排出(排気)される。これにより、筐体10の内部の温度が上昇することが抑制される。
【0055】
[他の実施の形態]
前記した実施の形態では、遮音カバー16を内装カバー14に対して開閉自在に取り付けたが、遮音カバー16については、外装カバー14の内面側に固定した状態で取り付け、その外装カバー16の開閉操作に併せて遮音カバー16も開閉されるように構成することも可能である。この場合、遮音カバー16は、外装カバー14の内面側に対して所要も間隔dをあけて対向する状態で取り付けて空気層7を形成するが、このように取り付ける場合にも空気層7は非密閉空間となるように構成する。
【0056】
前記した実施の形態では、作像装置20として中間転写方式を採用した画像形成装置1を例示したが、作像装置20としては、各作像ユニット20(Y,M,C,K)における感光体21上に形成されるトナー像を用紙搬送ベルト等で搬送される記録用紙9に直接転写する方式のものであっても構わない。また、画像形成装置1における作像装置20は、中間転写方式を採用しない1つの作像ユニットで構成されるものであっても、あるいは4以外の複数の数の作像ユニットで構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 …画像形成装置
6 …貫通孔
7 …空気層
10…筐体
12…内装カバー(内側覆い部材)
13…装着口
14…外装カバー(外側覆い部材)
15…遮音カバー(遮音部材)
21…感光体
22…帯電装置
29…交換ユニット(着脱部品、交換部品)
S …隙間(内側覆い部材の装着口と着脱部品との間の隙間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に着脱自在に装着される着脱部品と、
前記筐体にその内部を覆う状態で取り付けられるとともに前記着脱部品を着脱するときに通過させる装着口が形成されている内側覆い部材と、
前記内側覆い部材を露出させた状態及び覆った状態にするよう開閉操作される外側覆い部材と、
前記内側覆い部材と前記外側覆い部材との間に配置され、当該内側覆い部材の少なくとも装着口を露出させた状態及び覆って遮音する状態にするよう開閉操作される遮音部材とを有し、
前記遮音部材の少なくとも前記内側覆い部材の装着口と対向する部分に複数の貫通孔を一定の配置パターンで形成する一方で、当該遮音部材と前記外側覆い部材とを互いに閉じた状態にしたときに当該貫通孔が形成された遮音部材の部分と当該外側覆い部材とが間隔をあけて対向する状態になるよう配置して両者の間に空気層を形成し、前記貫通孔が形成された遮音部材の部分と前記空気層とによる吸音構造を構成していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吸音構造における吸音周波数f0を下記式で表した場合、
0=C/2π・√[12P/{h(12t+3πd)+4Ph3}]
[C:音速(mm/秒)、P:遮音部材の開口率、h:空気層の厚さ(mm)、t:遮音部材の厚さ(mm)、d:貫通孔の間隔(mm)]
前記遮音部材、貫通孔及び外側覆い部材については、前記吸音構造における吸音周波数f0が前記内側覆い部材の装着口と前記着脱部品との間の隙間を通して放出される騒音のうち吸音の対象とする音の周波数fnと一致する条件を満たすように設定されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記着脱部品が少なくとも感光体と帯電装置を装備する交換部品であり、かつ、前記騒音の周波数fnが前記帯電装置の帯電時に発生する騒音の周波数である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記空気層が、非密閉空間として形成されている請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−217664(P2010−217664A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65891(P2009−65891)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】