説明

画像形成装置

【課題】 現像材の転写位置を通って回転する第1搬送手段の被記録媒体搬送時の速度変化を、被記録媒体を汚損することなく測定可能な画像形成装置の提供。
【解決手段】 用紙4がレジストローラ16,17から搬送されるのに先立ち、搬送ベルト23表面の図4(A)に示す範囲Aに第1レジパッチが形成される。すると、その第1レジパッチのレジセンサ83による検出間隔に基づき、用紙4の先端がブラック(K)に対応する感光体ドラム31と搬送ベルト23とにニップされてから、用紙4の後端がレジストローラ16,17の間を通過するまでの搬送ベルト23の速度変化が分かる。ブラック(K)に対応する感光体ドラム31を用紙4が通過してから第2レジパッチが印刷される。すると、その用紙4が加熱ローラ51,加圧ローラ52と搬送ベルト23との共働で搬送されるときの速度変化に応じて第2レジパッチの形成間隔が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に現像材を転写して画像を形成する画像形成装置に関し、詳しくは、上記現像材の転写位置を通って回転する第1搬送手段の表面に測定用画像を転写してその測定用画像を検出可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成手段による現像材の転写位置を通って、被記録媒体を載せて回転するベルト等の第1搬送手段を備えた画像形成装置では、その第1搬送手段の表面に測定用画像を転写して検出することにより、色ずれ等の補正を行うことが考えられている。また、この種の画像形成装置では、被記録媒体を載せているときと載せていないときとでは第1搬送手段の回転速度が変化する場合がある。そこで、第1搬送手段に実際に被記録媒体を載せた状態で、第1搬送手段と被記録媒体との双方に測定用画像を形成して、色ずれ補正を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−292789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、第1搬送手段の回転速度に影響を与え易い被記録媒体は腰の強い厚紙等であり、この種の被記録媒体は高価な画材である場合もある。このため、特許文献1のように被記録媒体に測定用画像を形成してしまうと、少なくとも1枚の被記録媒体が汚損されるので余り好ましくない。そこで、本発明は、現像材の転写位置を通って回転する第1搬送手段の被記録媒体搬送時の速度変化を、被記録媒体を汚損することなく測定可能な画像形成装置の提供を目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達するためになされた本発明の画像形成装置は、現像材を転写して画像を形成する画像形成手段と、該画像形成手段による現像材の転写位置を通って回転する表面を有し、被記録媒体を搬送する第1搬送手段と、該第1搬送手段の被記録媒体搬送方向上流側または下流側に設けられ、上記第1搬送手段と共働して被記録媒体を搬送する第2搬送手段と、上記画像形成手段を制御して、上記第1搬送手段の表面に測定用画像を転写する測定用画像転写手段と、該測定用画像転写手段によって上記第1搬送手段の表面に転写された測定用画像を検出する測定用画像検出手段と、を備え、上記測定用画像転写手段は、上記第1搬送手段表面の、被記録媒体が上記第1搬送手段のみによって搬送されるときに上記測定用画像検出手段と対向する位置と、被記録媒体が上記第1搬送手段と上記第2搬送手段との共働で搬送されるときに上記測定用画像検出手段と対向する位置との、少なくとも2箇所に上記測定用画像を転写することを特徴としている。
【0005】
このように構成された本発明の画像形成装置では、第1搬送手段は画像形成手段による現像材の転写位置を通って回転する表面を有し、被記録媒体には、その第1搬送手段によって搬送される間に画像が形成される。また、第1搬送手段の被記録媒体搬送方向上流側または下流側に設けられた第2搬送手段は、第1搬送手段と共働して被記録媒体を搬送する。このため、被記録媒体が上記第1搬送手段のみによって搬送されるときと、被記録媒体が上記第1搬送手段と上記第2搬送手段との共働で搬送されるときとで、第1搬送手段の速度は変化する。第1搬送手段は、上記転写位置を通って回転するため、その速度の変化を測定することは正確な画像を形成する上で極めて重要である。
【0006】
そこで、本発明では、測定用画像転写手段が、画像形成手段を制御して、第1搬送手段表面の、被記録媒体が第1搬送手段のみによって搬送されるときに測定用画像検出手段と対向する位置と、被記録媒体が第1搬送手段と第2搬送手段との共働で搬送されるときに測定用画像検出手段と対向する位置との、少なくとも2箇所に測定用画像を転写する。
【0007】
このため、測定用画像転写手段によって第1搬送手段の表面に転写された測定用画像を測定用画像検出手段検出によって検出すれば、第1搬送手段の被記録媒体搬送時の速度変化を、次のように測定することができる。すなわち、被記録媒体が第1搬送手段のみによって搬送されるときと第1搬送手段,第2搬送手段の共働で搬送されるときとで第1搬送手段の速度が変化すれば、第1搬送手段に形成された測定用画像が測定用画像検出手段の対向部を移動する速度も変化する。従って、本発明では、第1搬送手段の被記録媒体搬送時の速度変化を被記録媒体を汚損せずに検出することができる。
【0008】
また、本発明の画像形成装置は、現像材を転写して画像を形成する画像形成手段と、該画像形成手段による現像材の転写位置を通って回転する表面を有し、被記録媒体を搬送する第1搬送手段と、該第1搬送手段の被記録媒体搬送方向上流側または下流側に設けられ、上記第1搬送手段と共働して被記録媒体を搬送する第2搬送手段と、上記画像形成手段を制御して、上記第1搬送手段の表面に測定用画像を転写する測定用画像転写手段と、該測定用画像転写手段によって上記第1搬送手段の表面に転写された測定用画像を検出する測定用画像検出手段と、を備え、上記測定用画像転写手段は、上記第1搬送手段表面の、被記録媒体が上記第1搬送手段のみによって搬送されるときに上記転写位置に配設され、かつ、被記録媒体が重畳されない位置と、被記録媒体が上記第1搬送手段と上記第2搬送手段との共働で搬送されるときに上記転写位置に配設され、かつ、被記録媒体が重畳されない位置との、少なくとも2箇所に上記測定用画像を転写することを特徴とするものであってもよい。
【0009】
本発明の画像形成装置でも、第1搬送手段は画像形成手段による現像材の転写位置を通って回転する表面を有し、被記録媒体には、その第1搬送手段によって搬送される間に画像が形成される。また、第1搬送手段の被記録媒体搬送方向上流側または下流側に設けられた第2搬送手段は、第1搬送手段と共働して被記録媒体を搬送する。そして、本発明の画像形成装置では、測定用画像転写手段が、画像形成手段を制御して、第1搬送手段表面の少なくとも次の2箇所に測定用画像を転写する。すなわち、第1搬送手段表面の、被記録媒体が第1搬送手段のみによって搬送されるときに上記転写位置に配設され、かつ、被記録媒体が重畳されない位置と、被記録媒体が第1搬送手段と第2搬送手段との共働で搬送されるときに上記転写位置に配設され、かつ、被記録媒体が重畳されない位置との、少なくとも2箇所に上記測定用画像を転写する。
【0010】
このため、測定用画像転写手段によって第1搬送手段の表面に転写された測定用画像を測定用画像検出手段検出によって検出すれば、第1搬送手段の被記録媒体搬送時の速度変化を、次のように測定することができる。すなわち、被記録媒体が第1搬送手段のみによって搬送されるときと第1搬送手段,第2搬送手段の共働で搬送されるときとで第1搬送手段の速度が変化すれば、第1搬送手段の表面に測定用画像が転写される位置も変化する。従って、本発明でも、第1搬送手段の被記録媒体搬送時の速度変化を被記録媒体を汚損せずに検出することができる。
【0011】
なお、本発明は以下の構成に限定されるものではないが、上記いずれかの画像形成装置において更に、上記測定用画像検出手段による上記測定用画像の検出結果に基づき、被記録媒体が上記第1搬送手段のみによって搬送されるときと、被記録媒体が上記第1搬送手段と上記第2搬送手段との共働で搬送されるときとの、上記第1搬送手段の表面の速度変化を算出する速度変化算出手段と、該速度変化算出手段が算出した上記速度変化に基づき、上記画像形成手段による画像形成タイミングを補正する補正手段と、を備えてもよい。この場合、被記録媒体が第1搬送手段のみによって搬送されるときと第1搬送手段,第2搬送手段の共働で搬送されるときとでの第1搬送手段の速度変化を算出し、その速度変化に応じて画像形成手段による画像形成タイミングを補正することができる。よって、一層正確な画像を被記録媒体に形成することができる。
【0012】
また、上記画像形成手段は、上記被記録媒体搬送方向に沿って複数の像担持体を備え、上記第1搬送手段は、上記各像担持体との対向部を通って被記録媒体を搬送しながら、上記各像担持体に担持された現像材像をその被記録媒体に転写する転写ベルトであってもよい。この場合、上記検出された速度変化に基づいて、各像担持体から被記録媒体への現像材像の転写位置を合わせることが容易になる。
【0013】
更に、上記測定用画像転写手段による上記測定用画像の転写は、特殊モードの実行時にのみ実行されてもよい。この場合、厚紙印刷など、特殊な場合にのみ上記制御を実行させることができ、装置の操作性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された画像形成装置1の概略構成を示す側断面図である。なお、以下の説明においては、図1における左側を前方とし、図1における手前側を右とする。
【0015】
(画像形成装置の全体構成)
この画像形成装置1は、直接転写タンデム方式のカラープリンタであって、図1に示すように、略箱型の筐体2を備えている。筐体2の前面には、前面カバー3が設けられている。また、筐体2の上面には、画像形成後の被記録媒体としての用紙4が積載される排紙トレイ5Aが形成され、その排紙トレイ5Aが一体に設けられて画像形成装置1を上方から覆うトップカバー5は、画像形成装置1の後方上端を中心に開閉可能に設けられている。このトップカバー5を開放することにより、後述の画像形成ユニット30及びベルトユニット20を筐体2の内部から上方へ引き出すことが可能となる。
【0016】
筐体2の下部には、画像を形成するための用紙4が収容される給紙トレイ7が前方へ引き出し可能に装着されている。給紙トレイ7内には、用紙4を積載して支持し、その用紙4の前端側を持ち上げるように傾動可能な圧板9が設けられている。また、給紙トレイ7の前端上方位置には、用紙4を搬送する給紙ローラ11が設けられ、その給紙ローラ11による用紙搬送方向下流側には、給紙ローラ11にて搬送される用紙4を1枚毎に分離する分離ローラ12と分離パッド13とが設けられている。
【0017】
給紙トレイ7の最上位の用紙4は、分離ローラ12によって1枚毎に分離された後、更に、紙粉取りローラ14と対向ローラ15とに挟まれて搬送され、板金シュート70に案内されて一対のレジストローラ16,17の間へ送られる。レジストローラ16,17は、その用紙4を所定のタイミングで、後方のベルトユニット20上へ送り出す。
【0018】
また、前面カバー3の一部は、図1に示すように手差しトレイ18として開放可能に構成されている。使用者によってこの手差しトレイ18を介して直接挿入された用紙4は、フロントシュート部60の手差し側シュート面62と前面カバー3の対向面3Aとの間を通って、レジストローラ16,17の間へ挿入される。このように手差しトレイ18を介して挿入された用紙4も、レジストローラ16、17によって同様にベルトユニット20上へ送り出される。
【0019】
なお、手差し側シュート面62と前面カバー3の対向面3Aとの、用紙4の厚さ方向の間隔は、図1に示すようにレジストローラ16,17に向かって徐々に狭くなっており、その部分に後述の用紙センサ82(図2参照)の当接部81が突出している。レジストローラ16,17は、手差しトレイ18を介して挿入された用紙4によってこの当接部81が倒されたときに用紙4を搬送すべく駆動制御がなされるが、その制御については後に詳述する。
【0020】
ベルトユニット20は、筐体2に対して着脱可能とされており、前後に離間して配置されたベルト駆動ローラ21,テンションローラ22の間に水平に架設される第1搬送手段及び転写ベルトの一例としての搬送ベルト23(いわゆる転写搬送ベルト)を備えている。搬送ベルト23は、ポリカーボネート等の樹脂材からなる無端状のベルトであり、後側のベルト駆動ローラ21が回転駆動されることにより図1の時計方向に循環移動して、その上面に載せた用紙4を後方へ搬送する。
【0021】
(画像形成部の構成)
搬送ベルト23の内側には、後述する画像形成ユニット30が有する各感光体ドラム31と対向配置される4つの転写ローラ24が前後方向に一定間隔で並んで設けられ、各感光体ドラム31と対応する転写ローラ24との間に搬送ベルト23を挟んだ状態となっている。後述のトナー像の転写時には、この転写ローラ24と感光体ドラム31との間に転写バイアスが印加され、所定量の転写電流が通電される。
【0022】
画像形成ユニット30は、LEDユニット40と対をなしてブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの各色に対応して4つ設けられていると共に、それら画像形成ユニット30,LEDユニット40は、用紙の搬送方向に沿って直列に設けられている。なお、各色に対応する画像形成ユニット30とLEDユニット40とが画像形成手段の一例に相当する。
【0023】
各画像形成ユニット30は、像担持体の一例としての感光体ドラム31、スコロトロン型帯電器32、及び、現像カートリッジ34等を備えて構成されている。感光体ドラム31は、接地された金属製のドラム本体を備え、その表層を正帯電性の感光層で被覆することにより構成されている。スコロトロン型帯電器32は、感光体ドラム31の後側斜め上方において、感光体ドラム31と接触しないように所定間隔を隔てて、感光体ドラム31と対向配置されている。このスコロトロン型帯電器32は、コロナ放電を発生させることにより感光体ドラム31の表面を一様に正極性に帯電させる。
【0024】
現像カートリッジ34は、略箱形をなし、その内部には、上部にトナー収容室35が設けられ、その下側に供給ローラ36、現像ローラ37、及び、層厚規制ブレード38が設けられている。各現像カートリッジ34のトナー収容室35には、現像剤として、ブラック、イエロー、マゼンタ、またはシアンの各色の正帯電性非磁性1成分トナーがそれぞれ収容されている。
【0025】
トナー収容室35から放出されたトナーは、供給ローラ36の回転により現像ローラ37に供給され、供給ローラ36と現像ローラ37との間で正に摩擦帯電される。更に、現像ローラ37上に供給されたトナーは、現像ローラ37の回転に伴って、層厚規制ブレード38と現像ローラ37との間に進入し、ここで更に十分に摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ37上に担持される。
【0026】
感光体ドラム31の表面は、その回転時、先ずスコロトロン型帯電器32により一様に正帯電される。その後、LEDユニット40の下端に用紙幅方向(左右方向)に一列に配設されたLED(図示省略)により露光されて、用紙4に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
【0027】
次いで、現像ローラ37の回転により、現像ローラ37上に担持され正帯電されているトナーが、感光体ドラム31に対向して接触するときに、感光体ドラム31の表面上に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム31の静電潜像は、可視像化され、感光体ドラム31の表面には、露光部分にのみトナーが付着した現像材像の一例としてのトナー像が担持される。
【0028】
その後、各感光体ドラム31の表面上に担持されたトナー像は、搬送ベルト23によって搬送される用紙4が感光体ドラム31と転写ローラ24との間を通る際に、上記転写電流によって、用紙4に順次転写される。こうして各色のトナー像が重ねて転写された用紙4は、次いで定着器50に搬送される。
【0029】
定着器50は、筐体2内における搬送ベルト23の後方に配置されている。この定着器50は、ハロゲンランプ等の熱源を備えて回転駆動される加熱ローラ51と、加熱ローラ51の下方において、加熱ローラ51を押圧するように対向配置され従動回転される加圧ローラ52とを備えている。この定着器50では、各色のトナー像が転写された用紙4を、加熱ローラ51と加圧ローラ52とによって狭持搬送しながら加熱することにより、トナー像を用紙4に定着させる。そして、トナー像が定着された用紙4は、定着器50の斜め後上方に配置された搬送ローラ53により更に搬送され、筐体2の上部に設けられた排紙ローラ54により、前述の排紙トレイ5A上に排出される。なお、前述のレジストローラ16,17の組、及び、この加熱ローラ51と加圧ローラ52との組が、それぞれ第2搬送手段の一例に相当する。
【0030】
また、ベルト駆動ローラ21の斜め下方における搬送ベルト23の表面との対向位置には、測定用画像検出手段の一例としてのレジセンサ83が設けられている。このレジセンサ83は、搬送ベルト23に向かって赤外光を照射する発光部と、その搬送ベルト23からの反射光を検出する受光部とを備え、搬送ベルト23に画像形成ユニット30によって後述のレジパッチ等が形成されたときにそのレジパッチ等を検出する周知のものである。更に、ベルト駆動ローラ21とテンションローラ22との間に架設された搬送ベルト23の下面には、その搬送ベルト23の表面に形成された上記レジパッチ等を消去する周知のベルトクリーナ84が当接している。
【0031】
(画像形成装置の制御系の構成)
次に、図2は、上記のように構成された画像形成装置1の制御系の構成を表すブロック図である。図2に示すように、当接部81(図1参照)の揺動に基づいて手差し側シュート面62に用紙4が挿入されたことを検出する用紙センサ82は、前述のレジセンサ83と共に制御部90に接続されている。また、この制御部90には、ベルト駆動ローラ21を駆動するメインモータ85、レジストローラ16,17の停止/駆動を切り替えるクラッチ86、液晶ディスプレイ及び各種ボタン等(いずれも図示省略)を備えて筐体2の表面に設けられた周知の操作パネル87、並びに、上記4つのLEDユニット40等も接続されている。
【0032】
制御部90は、CPU91,ROM92,RAM93を備えたマイクロコンピュータを中心に構成され、ROM92に記憶されたプログラムに基づきメインモータ85,クラッチ86,各LEDユニット40等を制御する。また、制御部90は、電源が切られても記憶内容を保持するEEPROM94も備えている。なお、制御部90には、各種駆動回路やバッファ等も設けられているが、これらの構成は周知であるので図示及び説明を省略する。
【0033】
(上記制御系における制御)
続いて、制御部90によって実行される制御のうち、操作パネル87にて特殊モードが設定されたときの処理について説明する。すなわち、画像形成装置1では、搬送ベルト23のみによって用紙4が搬送されるときと、レジストローラ16,17の組または加熱ローラ51,加圧ローラ52の組と搬送ベルト23との共働で用紙4が搬送されるときとで、搬送ベルト23の速度が変化する場合がある。このような速度変化は、手差しトレイ18を介して腰の強い厚紙等が用紙4として挿入されたときに大きくなる傾向が強く、その速度変化が大きいと用紙4への画像形成位置が変化する可能性がある。
【0034】
そこで、画像形成装置1は、そのような用紙4への画像形成を行う場合に設定される特殊モードを備えており、制御部90は、操作パネル87を介して特殊モードが設定されると、図3のフローチャートに示す処理を実行する。以下、この特殊モード設定時の処理について説明する。なお、メインモータ85はこの処理の最初から駆動され、搬送ベルト23は循環移動されている。
【0035】
図3に示すように、この処理では、先ず、S1(Sはステップを表す:以下同様)にて、操作パネル87の液晶ディスプレイに、「特殊紙1をセットして下さい」と表示される。すなわち、上記のような特殊な用紙4を手差しトレイ18にセットすることを使用者に促すメッセージが表示されるのである。なお、本処理では、上記のような特殊な用紙4に対して露光タイミング補正テーブルが作成されるが(後述のS11参照)、そのテーブルは、処理毎に序数が増加する特殊紙1,2,3,…に対応付けてEEPROM94に記憶される。このため、S1にて表示されるメッセージは、この処理が実行される毎に特殊紙1,2,3,…と変化する。
【0036】
続くS2では、用紙センサ82の検出信号に基づき、手差しトレイ18に用紙4があるか否かが判断される。手差しトレイ18に用紙4がない場合は(S2:N)、処理はそのままS2にて待機し、用紙4がセットされると(S2:Y)、処理はS3へ移行する。S3では、クラッチ86に駆動信号が出力されることによって、手差しトレイ18にセットされた用紙4の先端がレジストローラ16,17によってニップされ、続く測定用画像転写手段の一例としてのS4にて、搬送ベルト23の所定範囲に測定用画像の一例としての第1レジパッチが印刷(画像形成)される。
【0037】
ここで、S4では、搬送ベルト23表面の図4(A)に矢印で示す範囲Aに、左右方向に伸びる線分が搬送ベルト23の移動方向一定間隔で配設された第1レジパッチが、ブラック(K)に対応するLEDユニット40に駆動信号が出力されることによって形成される。また、範囲Aとは、図4(A)に例示するように、レジストローラ16,17より搬送された用紙4の先端がブラック(K)に対応する感光体ドラム31と搬送ベルト23とにニップされたときにレジセンサ83に対向する位置から、図4(B)に例示するように、用紙4の後端がレジストローラ16,17の間を通過したときにレジセンサ83に対向する位置までの範囲である。
【0038】
続くS5では、クラッチ86に駆動信号が出力されてレジストローラ16,17より用紙4の搬送が開始され、S6にて、レジセンサ83を介して上記第1レジパッチが検出される。この処理により、前述のように、用紙4の先端がブラック(K)に対応する感光体ドラム31と搬送ベルト23とにニップされてから、用紙4の後端がレジストローラ16,17の間を通過するまでの搬送ベルト23の速度変化が、第1レジパッチの検出結果から取得される。腰の強い用紙4の場合、通常、その用紙4がレジストローラ16,17と搬送ベルト23との共働で搬送されるときは、レジストローラ16,17によって用紙4が押し込まれる分だけ搬送ベルト23の速度が速くなり、第1レジパッチの検出間隔が短くなる。このため、S6による第1レジパッチの検出間隔が短いほど、上記押し込みによる搬送ベルト23の速度上昇が大きかったことが分かる。
【0039】
続くS8では、用紙センサ82の検出信号に基づき、手差しトレイ18に用紙4があるか否か、すなわち、特殊紙1としての用紙4の後端が当接部81を通過したか否かが判断される。手差しトレイ18に用紙4がある場合は(S8:Y)、処理はそのままS8にて待機し、手差しトレイ18から用紙4がなくなると(S8:N)、処理は測定用画像転写手段の一例としてのS9へ移行する。S9では、ブラック(K)に対応する感光体ドラム31(Kドラム)と搬送ベルト23とのニップ部を用紙4が通過するタイミングで、搬送ベルト23に測定用画像の一例としての第2レジパッチが印刷される。
【0040】
すなわち、S9では、LEDユニット40との対向面から搬送ベルト23との対向面まで感光体ドラム31が回転するのに要する時間だけ、上記タイミングよりも早くLEDユニット40の駆動が開始され、第1レジパッチと同様の第2レジパッチが搬送ベルト23に印刷される。また、この第2レジパッチの印刷は、用紙4の後端がシアン(C)に対応する感光体ドラム31と搬送ベルト23とのニップ部を通過するタイミングまで継続して実行される。すると、この第2レジパッチ印刷中に、図4(C),(D)に例示するように、用紙4は加熱ローラ51と加圧ローラ52とによってもニップされるようになり、最後にシアン(C)に対応する感光体ドラム31と搬送ベルト23とのニップ部を抜ける。
【0041】
腰の強い用紙4の場合、通常、その用紙4が加熱ローラ51,加圧ローラ52と搬送ベルト23との共働で搬送されるときは、加熱ローラ51,加圧ローラ52から加わる抵抗によって搬送ベルト23の速度が遅くなり、第2レジパッチの形成間隔は短くなる。そこで、続くS10では、レジセンサ83を介して上記第2レジパッチが検出される。このため、S10による第2レジパッチの検出間隔が短いほど、上記抵抗による搬送ベルト23の速度低下が大きかったことが分かる。
【0042】
続く速度変化算出手段及び補正手段の一例としてのS11では、S6,S10にて検出された第1レジパッチ,第2レジパッチの検出結果に基づき、各色に対応するLEDユニット40の露光タイミング補正テーブルが作成されて、処理が終了する。すなわち、前述のようにS6,S10にて検出された第1レジパッチ,第2レジパッチの検出結果は、搬送ベルト23の速度変化を良好に反映している。そこで、S11では、上記速度変化が算出され(速度変化算出手段に相当)そのような速度変化を相殺すべく各LEDユニット40の露光タイミングを補正するためのテーブルが作成されるのである(補正手段に相当)。なお、このようにして作成された露光タイミング補正テーブルは、「特殊紙1(前述のように特殊紙2,3,…である場合もある)」に対応付けてEEPROM94に記憶される。
【0043】
このような処理がなされた後は、その特殊紙1としての用紙4に対する画像形成時には、操作パネル87またはプリンタドライバのユーザインタフェースにおいて、給紙トレイとして「手差しトレイ」が指定されると共に、用紙種類として「特殊紙1」が指定される。すると、EEPROM94からその特殊紙1に対応した露光タイミング補正テーブルが読み出され、上記速度変化を相殺して、色ずれ等のない正確な画像を用紙4に形成することができる。
【0044】
(本実施の形態の効果及びその変形例)
このように、本実施の形態では、用紙4が搬送ベルト23のみによって搬送されるときと、レジストローラ16,17または加熱ローラ51,加圧ローラ52との共働で搬送されるときとで、搬送ベルト23の速度変化を上記のように検出することができる。このため、その速度変化に応じて上記露光タイミング補正テーブルを作成し、厚紙等の用紙4にも色ずれ等のない正確な画像を形成することができる。しかも、搬送ベルト23の上記第1レジパッチ及び第2レジパッチが形成される位置は、いずれも、用紙4と重畳しないように搬送方向上流側または下流側に用紙4からずれた位置であるので、搬送ベルト23の上記速度変化の検出に当って用紙4を汚損することもない。更に、本実施の形態では、特殊モードが設定されたときにのみ上記処理が実行されるので、厚紙印刷など、特殊な場合にのみ上記制御を実行させることができ、装置の操作性が一層向上する。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、第1搬送手段はドラム状に構成されたものであってもよく、いわゆる中間転写ベルトまたは中間転写ドラムを用いた画像形成装置に適用された場合はその中間転写ベルトまたは中間転写ドラムが第1搬送手段に相当する。また、上記のように露光タイミング補正テーブルを作成したり、その他の方法で画像形成タイミングを補正する構成は、プリンタドライバ等に持たせることも可能である。更に、上記のような露光タイミング補正テーブルまたはその他の方法による補正は、レジストローラ16,17と搬送ベルト23との共働による搬送時、搬送ベルト23のみによる搬送時、搬送ベルト23と加熱ローラ51,加圧ローラ52との共働による搬送時といった、3段階程度の大まかなものであってもよい。
【0046】
また更に、測定用画像としては、上記第1レジパッチ,第2レジパッチ以外にも種々の形態が考えられる。また、レジセンサ83の位置を工夫したり、シアン(C)に対応する感光体ドラム31を介して測定用画像を形成することなどにより、その形成タイミングも種々に変更することができる。また、画像形成手段は電子写真方式以外の方法で画像を形成するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明が適用された画像形成装置の概略構成を示す側断面図である。
【図2】その画像形成装置の制御系の構成を表すブロック図である。
【図3】その制御系で実行される処理を表すフローチャートである。
【図4】その処理の原理を模式的に表す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1…画像形成装置 4…用紙 16,17…レジストローラ
18…手差しトレイ 20…ベルトユニット 21…ベルト駆動ローラ
22…テンションローラ 23…搬送ベルト 24…転写ローラ
30…画像形成ユニット 31…感光体ドラム 34…現像カートリッジ
40…LEDユニット 50…定着器 51…加熱ローラ
52…加圧ローラ 82…用紙センサ 83…レジセンサ
85…メインモータ 86…クラッチ 87…操作パネル
90…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像材を転写して画像を形成する画像形成手段と、
該画像形成手段による現像材の転写位置を通って回転する表面を有し、被記録媒体を搬送する第1搬送手段と、
該第1搬送手段の被記録媒体搬送方向上流側または下流側に設けられ、上記第1搬送手段と共働して被記録媒体を搬送する第2搬送手段と、
上記画像形成手段を制御して、上記第1搬送手段の表面に測定用画像を転写する測定用画像転写手段と、
該測定用画像転写手段によって上記第1搬送手段の表面に転写された測定用画像を検出する測定用画像検出手段と、
を備え、
上記測定用画像転写手段は、上記第1搬送手段表面の、被記録媒体が上記第1搬送手段のみによって搬送されるときに上記測定用画像検出手段と対向する位置と、被記録媒体が上記第1搬送手段と上記第2搬送手段との共働で搬送されるときに上記測定用画像検出手段と対向する位置との、少なくとも2箇所に上記測定用画像を転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
現像材を転写して画像を形成する画像形成手段と、
該画像形成手段による現像材の転写位置を通って回転する表面を有し、被記録媒体を搬送する第1搬送手段と、
該第1搬送手段の被記録媒体搬送方向上流側または下流側に設けられ、上記第1搬送手段と共働して被記録媒体を搬送する第2搬送手段と、
上記画像形成手段を制御して、上記第1搬送手段の表面に測定用画像を転写する測定用画像転写手段と、
該測定用画像転写手段によって上記第1搬送手段の表面に転写された測定用画像を検出する測定用画像検出手段と、
を備え、
上記測定用画像転写手段は、上記第1搬送手段表面の、被記録媒体が上記第1搬送手段のみによって搬送されるときに上記転写位置に配設され、かつ、被記録媒体が重畳されない位置と、被記録媒体が上記第1搬送手段と上記第2搬送手段との共働で搬送されるときに上記転写位置に配設され、かつ、被記録媒体が重畳されない位置との、少なくとも2箇所に上記測定用画像を転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
更に、
上記測定用画像検出手段による上記測定用画像の検出結果に基づき、被記録媒体が上記第1搬送手段のみによって搬送されるときと、被記録媒体が上記第1搬送手段と上記第2搬送手段との共働で搬送されるときとの、上記第1搬送手段の表面の速度変化を算出する速度変化算出手段と、
該速度変化算出手段が算出した上記速度変化に基づき、上記画像形成手段による画像形成タイミングを補正する補正手段と、
を備えたことを請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記画像形成手段は、上記被記録媒体搬送方向に沿って複数の像担持体を備え、
上記第1搬送手段は、上記各像担持体との対向部を通って被記録媒体を搬送しながら、上記各像担持体に担持された現像材像をその被記録媒体に転写する転写ベルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記測定用画像転写手段による上記測定用画像の転写は、特殊モードの実行時にのみ実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−44252(P2010−44252A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208705(P2008−208705)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】