説明

画像形成装置

【課題】装置の大型化を招くことなく、色ずれを効果的に低減できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】一次転写ローラ5aないし5dの角速度を速度検知手段によりそれぞれ検知する。これにより、各ステーションの一次転写部TaないしTdでの中間転写ベルト6の回転速度がわかるため、これに基づいて、中間転写ベルト6の回転速度を調整する。この結果、感光ドラム1aないし1dの周速の差などによる外力の影響を小さくして、一次転写部TaないしTdで色ずれを低減できる。また、速度検知手段は、一次転写ローラ5aないし5dに設けられているため、装置の大型化を招くことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体から一次転写されたトナー像を記録材に二次転写する中間転写ベルトや、その表面に記録材を載せて搬送し、像担持体上のトナー像を該記録材に転写する記録材搬送ベルト等のベルト状回転体を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真作像プロセスを用いた電子写真カラー画像形成装置は、1つもしくは複数の感光ドラムを備えている。そして、感光ドラム上に担持された単色のトナー像を、中間転写ベルト又は記録材搬送ベルトにより搬送される記録材に転写するプロセスを複数回繰り返す。これにより、記録材上にフルカラーのトナー像を形成する。
【0003】
また、近年では、カラー画像形成装置の生産性向上のため、いわゆるタンデム型の構造が主流となってきている。即ち、複数の感光ドラムを中間転写ベルト又は記録材搬送ベルトの回転方向に並べて配置し、中間転写ベルト又は記録材搬送ベルトにより搬送される記録材に順次転写していく画像形成装置が主流となってきている。
【0004】
タンデム型のカラー画像形成装置の場合、中間転写ベルトや記録材搬送ベルト(以下、ベルト状回転体と総称する)を回転させ、その表面又はその表面に載せた記録材上で、各感光ドラム上に形成された複数色のトナー像を重ね合わせる。このため、そのベルト状回転体の回転速度の変動等により、各色のトナー像が転写される位置が回転方向にずれるといった問題(以下、色ずれと呼ぶ)が生じる可能性がある。
【0005】
具体的に説明すると、タンデム型のカラー画像形成装置は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の感光ドラムを有する各ステーションを、ベルト状回転体の回転方向に並べている。そして、ベルト状回転体の回転方向上流から各ステーションにより、各色のトナー像を順次重ねていく。例えば、Yステーションにより転写されたトナー像は、ベルト状回転体の回転によりMステーションに移動し、Mのトナー像が重ねられる。同様に、Cステーション、Kステーションで各色のトナー像を重ねる。このように各色のトナー像を重ねるべく、各ステーションの感光ドラムは、回転方向下流側に向かう程、ベルト状回転体の移動分遅れて作像される。したがって、ベルト状回転体の移動が所望のタイミングとずれた場合には、回転方向(副走査方向)の色ずれが生じる。
【0006】
ベルト状回転体のタイミングがずれる原因として、ベルト状回転体の厚さムラや張力ムラ等により、ベルト状回転体の回転速度が一周内で一定でないことが挙げられる。即ち、ベルト状回転体は、駆動ローラや従動ローラ、感光ドラム、クリーニングブレード等の当接物やベルト自体の物性の不均一性等により、ベルト一周内で張力が均一でない。このため、ベルト状回転体の回転速度は一周内で一定とならない。したがって、上述のような色ずれを低減するためには、ベルト状回転体の回転速度の速度変動が各ステーションで小さくなるように制御することが重要となる。このような制御をするために、ベルト状回転体上に設けたマーカを検知したり、ベルト状回転体の従動ローラの角速度を検出して、ベルト状回転体の回転速度を制御する構造が知られている(特許文献1ないし4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−108169号公報
【特許文献2】特開2005−115398号公報
【特許文献3】特開2005−24616号公報
【特許文献4】特開2005−91861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述のような張力ムラなどの要因に加えて、次のような外力によりベルト状回転体の回転速度が変動する。即ち、各感光ドラムの周速とベルト状回転体の周速とは、各感光ドラムからのトナー像の転写性を考慮して略同一となるように設定されるが、各部品の公差やモータの個体差等によりこれらの周速を完全に一致させることは難しい。したがって、ベルト状回転体は、各感光ドラムとの周速差により各感光ドラムから力(外力)を受け、回転速度が変動する。また、このような外力は、各感光ドラムと対向しベルト状回転体を挟むように配置された転写ローラによる加圧力や、各感光ドラム表面の摩擦係数等により、大きさ及び方向が変化する。したがって、色ずれを低減させるためには、上述の外力の影響をなるべく小さくできるように、ベルト状回転体の回転速度を制御する必要がある。
【0009】
これに対して、特許文献1ないし4に記載された構造の場合、上述の外力を考慮した速度検知及び制御を行っていないため、色ずれの低減を十分に図れない。但し、特許文献4に記載された構造の場合、各感光ドラムの間部分でベルト状回転体の速度検知を行っているため、前記特許文献1ないし3に記載された構造よりも、色ずれの低減を図れると考えられる。
【0010】
しかしながら、各感光ドラムの間部分で検出される回転速度は、ベルト状回転体の撓みや伸びが生じるため、各感光ドラムにより転写されるそれぞれの転写部での回転速度と異なる。即ち、各感光ドラム同士も、例えば、周速が同一となるようにそれぞれ独立のモータで駆動されるが、各モータの個体差や部品精度のばらつき等により、実際に各周速を同一にすることは難しい。このような各感光ドラム同士の周速の違いにより、各感光ドラムの間部分でベルト状回転体が撓んだり伸びたりして、この間部分で検出される速度と転写部での速度とが一致しない。また、ベルト状回転体が中間転写ベルトである場合、各転写部でのトナーの載り量の違いにより、中間転写ベルトと感光ドラムとの摩擦係数が変化する。このため、各転写部で中間転写ベルトが受ける力(外力)が異なり、各転写部で中間転写ベルトの回転速度がずれる可能性がある。したがって、特許文献4に記載された構造の場合、上述の外力により速度変動が生じる部分である転写部での回転速度を正確に検出できず、やはり、色ずれの低減を十分に図れない。
【0011】
また、特許文献4に記載された構造の場合、各感光ドラムの間部分に速度検知手段を配置するため、装置全体が大型化する。即ち、感光ドラムの周囲には、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段等の多くの部品が配置される。このため、特許文献4に記載された構造のように、各感光ドラムの間部分に速度検知手段を配置した場合には、各感光ドラム同士の間隔を大きくする必要があり、装置全体が大型化する。
【0012】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、装置の大型化を招くことなく、色ずれを効果的に低減できる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、像担持体と、回転可能に張架され該像担持体と当接するベルト状回転体と、該ベルト状回転体に従動して回転し、該像担持体に担持されたトナー像を該ベルト状回転体の表面又はその表面に載せた記録材に転写させる転写ローラと、該ベルト状回転体を回転駆動する駆動手段と、を備えた画像形成装置において、前記転写ローラの回転速度を検知する速度検知手段と、該速度検知手段により検知した前記転写ローラの回転速度に基づいて、前記駆動手段を制御して前記ベルト状回転体の回転速度を調整する制御手段と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写ローラの回転速度を検知しているため、転写部でのベルト状回転体の回転速度を検知できる。このため、ベルト状回転体が像担持体から受ける外力の影響による誤差が少なくなるように、ベルト状回転体の回転速度を調整できる。この結果、像担持体及びベルト状回転体の周速の設定や像担持体の駆動方式によらず、副走査方向の色ずれの低減を効果的に図れる。また、このような制御を行うために、転写ローラに速度検知手段を設けており、感光ドラムに隣接した位置に新たな部材を設けていないため、装置全体の大型化を招くことはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の断面を示す概略図。
【図2】同じく中間転写ベルト周辺の構成を示す概略図。
【図3】(A)は一次転写ローラの弾性部の自由状態を、(B)は一次転写ローラと中間転写ベルトとが当接している状態をそれぞれ示す、図2のイ−イ断面に相当する図。
【図4】本発明の実施形態に係る信号処理を表すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一の実施形態>
図1ないし図4により、本発明の第一の実施形態について説明する。まず、図1により、本発明の対象となる画像形成装置の概略について説明する。図1に示す画像形成装置は、中間転写方式のタンデム型カラーデジタルプリンタである。それぞれが像担持体である4本の感光ドラム1aないし1dは、それぞれ帯電ローラ2aないし2dにより表面を一様な電荷に帯電される。レーザスキャナ3aないし3dにはそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像信号が入力され、この画像信号に応じてドラム表面をレーザ光で照射することにより電荷を中和し、潜像を形成する。各感光ドラム1aないし1d上に形成された潜像は、現像器4aないし4dにより、Y、M、C、Kのトナーで現像され、各感光ドラム1aないし1dの表面にトナー像が形成される。
【0017】
各感光ドラム1aないし1d上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ5aないし5dと各感光ドラム1aないし1dとの間で、ベルト状回転体である中間転写ベルト6を挟持することにより、中間転写ベルト6に順番に一次転写される。そして、中間転写体ベルト6にフルカラーのトナー像が形成される。各感光ドラム1aないし1d上の転写残トナーは、ドラムクリーナ7aないし7dにより回収される。
【0018】
一方、カセット8、9もしくは手差し給紙部10の何れかから給紙された紙等の記録材は、搬送ローラ11によりレジストローラ12に向かって送られる。停止しているレジストローラ12に対して記録材の先端が突き当たり、ループを形成して斜行を補正した後、中間転写ベルト6上のトナー像と同期してレジストローラ12の回転を開始させる。中間転写ベルト6上のトナー像は二次転写ローラ13及び二次転写内ローラ19によって記録材に転写され、定着器14で熱及び圧力により記録材に定着される。その後、記録材は排紙部15から機外へと排出される。また、二次転写部において転写されなかった中間転写ベルト6上の転写残トナーは、中間転写ベルトクリーナ16により回収される。
【0019】
次に図2及び図3により、中間転写ベルト6の速度検知に関する部分について説明する。中間転写ベルト6は、駆動手段である駆動ローラ17、テンションローラ18、二次転写内ローラ19の3本のローラにより回転可能に張架されている。駆動ローラ17及び二次転写内ローラ19は、装置に固定されたフレーム20に回転可能に支持されている。また、駆動ローラ17は、駆動手段を構成する駆動モータ34により、例えば歯車などを介して駆動され、中間転写ベルト6を回転駆動する。図示の例の場合、駆動ローラ17が図2の時計方向に回転することにより、中間転写ベルト6も時計方向に回転する。テンションローラ18及び二次転写内ローラ19は、中間転写ベルト6が回転することにより従動回転する。
【0020】
テンションローラ18は、フレーム20に対して、図2の左右方向に移動可能な軸受21により、その両端近傍を回転可能に支持されている。また、軸受21は、ばね22により図2の左方向に付勢されている。そして、テンションローラ18により中間転写ベルト6の張力を調整している。即ち、中間転写ベルト6の長さやその他の部品の寸法が部品の寸法公差により振れても、テンションローラ6の位置が図2の左右方向にずれることにより吸収され、中間転写ベルト6はほぼ一定の張力で張架される。
【0021】
また、中間転写ベルト6の表面に当接するように、感光ドラム1aないし1dが、回転方向に並べて配置されている。各感光ドラム1aないし1dは、1本ずつ独立のモータ(不図示)により、中間転写ベルト6との当接部において中間転写ベルト6表面と各感光ドラム1aないし1d表面との進行方向が同じになるように回転される。即ち、各感光ドラム1aないし1dは、図2の反時計方向に回転される。各感光ドラム1aないし1dと同軸上の一部には、エンコーダなどの各感光ドラム1aないし1dの角速度を検知する検知手段(不図示)がそれぞれ取り付けられている。そして、それぞれの検知手段の出力信号により、各感光ドラム1aないし1dの角速度が一定になるようにモータを制御する。ここで、各感光ドラム1aないし1dから中間転写ベルト6ヘのトナー像の転写性を考慮して、各感光ドラム1aないし1dの表面の周速と中間転写ベルト6の表面の周速とは、初期状態で、同一になるように設定されている。
【0022】
中間転写ベルト6を挟んで各感光ドラム1aないし1dに対向した位置(内側)には、図3に示すように、それぞれ両端を軸受23により回転可能に支持された一次転写ローラ5aないし5dが配置されている。本実施形態の場合、一次転写ローラ5aないし5dが、特許請求の範囲に記載した転写ローラに相当する。軸受23は、フレーム20により一方向(図2、3の上下方向)に移動可能にガイドされており、ばね24により感光ドラム1aないし1dに向けて付勢されている。このように一次転写ローラ5aないし5dは、中間転写ベルト6を挟んで各感光ドラム1aないし1dに付勢されているため、中間転写ベルト6が回転することにより従動回転を行なう。
【0023】
一次転写ローラ5aないし5dは、両端部を軸受23に支持された芯金25の軸方向中間部の周りに円筒状の弾性部26を、芯金25の軸方向両端寄り部分に円筒状突き当て部であるカラー27を、それぞれ固定してなる。弾性部26は、発泡ポリウレタン等の弾性に富む部材を円筒状に形成してなるもので、各一次転写ローラ5aないし5dの径方向に弾性変形可能である。カラー27は、ポリアセタール等の摺動性の良い合成樹脂を円筒状に形成してなるもので、弾性部26の自由状態での外径よりも小さい外径を有し、且つ、弾性部26よりも高い剛性を有する。
【0024】
カラー27の外径は、弾性部26の半径とカラー27の半径との差分、弾性部26が中間転写ベルト6に弾性的に当接することにより、必要な一次転写圧が確保できるように設定されている。即ち、カラー27が中間転写ベルト6と当接することにより、弾性部26の弾性変形量を一定値に規制する。そして、弾性部26の弾性変形量が大きすぎたり小さすぎたりしないようにして、必要な一次転写圧を確保している。したがって、使用状態では、弾性部26が中間転写ベルト6を介して各感光ドラム1aないし1dに当接して弾性変形し、両端のカラー27が、中間転写ベルト6を挟んで各感光ドラム1aないし1dと当接する。これにより、各感光ドラム1aないし1dと一次転写ローラ5aないし5dとの中心距離が一定に保たれ、中間転写ベルト6と一次転写ローラ5aないし5dの中心との距離も一定に保たれる。また、弾性部26は、その表面の摩擦係数が高いため、中間転写ベルト6を介して感光ドラム1aないし1dに当接した状態では、一次転写ローラ5aないし5dは中間転写ベルト6に対してすべることなく従動回転する。
【0025】
図3に示すように、一次転写ローラ5aないし5dの芯金25の一端には、エンコーダ28がそれぞれ固定されている。エンコーダ28は、例えば、円板の回転方向に関して複数のスリットを形成したもので、光や磁気の変化を検知する検知部35を側面に対向させて配置している。したがって、各一次転写ローラ5aないし5dと共にエンコーダ28が回転すると、この回転に応じた信号が検知部35からそれぞれ出力され、各一次転写ローラ5aないし5dの角速度が検知される。本実施形態の場合、エンコーダ28と検知部35とにより速度検知手段を構成する。また、特許請求に範囲に記載した転写ローラの回転速度は、転写ローラの角速度や周速を含む概念である。したがって、速度検知手段は、一次転写ローラ5aないし5dの角速度や周速をそれぞれ検知できれば、その他の構成であっても良い。また、本実施形態の場合、エンコーダ28及び検知部35を全ての一次転写ローラ5aないし5dに設け、各エンコーダ28及び検知部35により全ての転写ローラ5aないし5dの角速度をそれぞれ検知している。
【0026】
ここで、一次転写ローラ5aないし5dの両端寄りにはカラー27が固定されているため、上述したように、一次転写ローラ5aないし5dの中心と中間転写ベルト6との距離は一定に保たれる。従って、一次転写ローラ5aないし5dの角速度を検知することにより、この角速度とカラー27の半径とから一次転写ローラ5aないし5dの周速が求められる。そして、この周速から、一次転写ローラ5aないし5dに接している部分である各一次転写部TaないしTdでの中間転写ベルト6の回転速度が求められる。これにより、中間転写ベルト6が各ステーションの感光ドラム1aないし1dから受ける力が異なり、各ステーション間で僅かに撓みや伸びが生じているような場合に関しても、各一次転写部TaないしTdでの中間転写ベルト6の回転速度を正確に検知できる。
【0027】
前述したように、タンデム型カラー画像形成装置においては、各ステーションの一次転写部TaないしTdで、中間転写ベルト6が各感光ドラム1aないし1dから受ける外力の影響等により、中間転写ベルト6の回転速度が変動する。したがって、副走査方向の色ずれを低減するためには、このような外力の影響をなるべく小さくできるように、中間転写ベルト6の回転速度を制御すれば良い。隣接する2ステーション間を考えた場合、2個所の一次転写部での中間転写ベルト6の回転速度が同一であれば、2ステーション間で中間転写ベルト6が伸びたり撓んだりしていない状態であり、2個所の一次転写部で受ける外力の和が最小である。つまり、隣接する2ステーションの一次転写部での中間転写ベルト6の速度の平均値を、中間転写ベルト6の目標速度になるように制御することが、2個所の一次転写部で受ける外力の和を最小にすることであり、副走査方向の色ずれの低減になる。
【0028】
本実施形態の画像形成装置では、図1に示したように、感光ドラム1aないし1dが4本配置されているため、イエロー〜マゼンタ間、マゼンタ〜シアン間、シアン〜ブラック間の3個所について、それぞれ中間転写ベルト6の回転速度の平均値を計算する。Y、M、C、Kの各ステーションの一次転写ローラ5aないし5dにそれぞれ設けられたエンコーダ28と検知部35とから成る速度検知手段36aないし36dからの出力信号を、Vy、Vm、Vc、Vkとする(図4参照)。即ち、これら各出力信号Vy、Vm、Vc、Vkは、各一次転写ローラ5aないし5dの角速度に対応する値である。また、隣接する2ステーション間の平均値を、Vym、Vmc、Vckとすると、各平均値は、次のように表される。
Vym=(Vy+Vm)/2
Vmc=(Vm+Vc)/2
Vck=(Vc+Vk)/2
【0029】
制御対象は、中間転写ベルト6を駆動する駆動ローラ17の回転速度のみであるため、これら3つの平均値のさらに平均値Vaveを計算し、この値が中間転写ベルト6の目標速度となるように制御する。
Vave=(Vym+Vmc+Vck)/3
=(Vy+2Vm+2Vc+Vk)/6
【0030】
つまり、回転方向中間に位置するM及びCステーションの速度検知手段36b、36cの出力信号は、回転方向最上流及び最下流に位置するY及びKステーションの速度検知手段36a、36dの出力信号の2倍の重み付けがされている。即ち、特定の速度検知手段である速度検知手段36b、36cの出力信号を、他の速度検知手段である速度検知手段36a、36dの出力信号よりも、中間転写ベルト6の回転速度の調整に与える影響が大きくなるように扱っている。これは、例えばMステーションの速度は、Y及びCステーション間の中間転写ベルト6の挙動に影響を与えるのに対して、Kステーションの速度は、Cステーションとの間の中間転写ベルト6の挙動にしか影響を与えていないからである。したがって、このような考え方から、中間転写ベルト6の回転方向最上流及び最下流に位置する転写ローラ以外(一次転写ローラ5a、5d以外)の転写ローラである一次転写ローラ5b、5cの速度検知手段36b、36cの出力信号に重み付けをする。このような重み付けは、制御手段であるCPU29により行う。
【0031】
以上の考え方に基づき、図4により各ステーションの一次転写部で測定された中間転写ベルト6の速度信号の実際の処理について説明する。Y、M、C、Kの各ステーションの一次転写ローラ5aないし5dに配置された速度検知手段36aないし36dの出力信号Vy、Vm、Vc、Vkは、CPU29に入力される。CPU29内では各速度検知手段36aないし36dの出カ信号に、重み調整部30aないし30dにより所定の係数をかける。ここでは、前述の式により、Y及びKの重み調整部30a、30dの係数は1.0、M及びCの重み調整部30b、30cの係数は2.0となる。重み調整部30aないし30dにより所定の係数をかけられた信号Vsy、Vsm、Vsc、Vskは、平均値演算回路31に入力され、平均値Vaveが計算される。ここでは上記の重み係数がかけられているため、Vave=(Vy+2Vm+2Vc+Vk)/6となる。比較器32では、この平均値Vaveと中間転写ベルト6の目標値Vt(目標速度)を比較し、中間転写ベルト6の速度との誤差信号Vdを算出する。
【0032】
なお、この目標値Vtは、中間転写ベルト6と各感光ドラム1aないし1dとの周速が一致するように、予め設定された中間転写ベルト6の回転速度に基づく値である。具体的には、目標値Vtは、この回転速度と一次転写ローラ5aないし5dのカラー27の半径とから求めた、一次転写ローラ5aないし5dの角速度に対応する値となる。このような目標値Vtは、各一次転写部TaないしTdで、中間転写ベルト6が各感光ドラム1aないし1dから受ける外力の影響がない場合の値である。
【0033】
以上のようにして計算された演算結果である誤差信号Vdは、駆動回路33に入力される。そして、駆動回路33により、中間転写ベルト6の速度の平均値Vaveが目標値Vtになるよう速度制御しながら、中間転写ベルト6の駆動手段としての駆動ローラ17を駆動するための駆動モータ34を駆動する。例えば、平均値Vaveが目標値Vtよりも速い場合、中間転写ベルト6の回転速度が各感光ドラム1aないし1dの平均回転速度に対し速いため、何れかの一次転写部で中間転写ベルト6を撓ませるような外力が作用していると考えられる。このため、この場合には、中間転写ベルト6の回転速度を遅くする制御を行えば、外力の影響を小さくできる。同様に、平均値Vaveが目標値Vtよりも遅い場合、中間転写ベルト6の回転速度を速くするような制御を行う。
【0034】
このように、平均値Vaveを目標値Vtとなるように制御することで、各ステーション間での中間転写ベルト6の撓みや伸びを最小に抑えることができる。このため、各ステーションの一次転写部TaないしTdにおいて中間転写ベルト6が受ける外力が最小となり、副走査方向の色ずれを最小に抑えることが可能となる。なお、上述のような制御は、中間転写ベルト6の回転時に常に行っても良いし、例えば、画像形成装置の電源を入れたときや、各ジョブの開始直前、或は、所定時間の間隔をあけて定期的に行っても良い。このように、中間転写ベルトの回転速度の制御を、常に又は定期的に行えば、各ステーションや中間転写ベルト6の各構成部品の誤差や劣化などに拘らず、中間転写ベルト6を色ずれが生じにくいように制御できる。
【0035】
また、本実施形態の場合、中間転写ベルト6の速度を検知するために、画像形成装置にすでに配置されている一次転写ローラ5aないし5dの長手方向端部に速度検知手段36aないし36dを設けただけである。このため、機能部品が密集しているステーション間に新たに速度検知手段を配置する必要がなく、画像形成装置の大型化を防ぐことが可能となる。
【0036】
なお、本実施形態では、各ステーションの速度検知手段36aないし36dの出力信号Vy、Vm、Vc、Vkに、CPU29内の重み調整部30aないし30dにて重み付けを行なっているが、重み付けの係数は、上述の数値に限定されるものではない。上述した各感光ドラム1aないし1dからの外力以外の要因等を考慮して、重み付けの係数を決定しても良い。
【0037】
また、上述の説明では、一次転写ローラ5aないし5dの角速度(出力信号)により計算を行ったが、これら各角速度から各一次転写部TaないしTdでの中間転写ベルト6の回転速度を求めてから、同様の計算を行っても良い。この場合、目標値も(角速度に対応する値ではなく)中間転写ベルト6の回転速度となる。
【0038】
また、本実施形態では、一次転写ローラ5aないし5dの角速度に基づいて中間転写ベルト6の回転速度を制御して、各ステーションの色ずれを抑えているが、この制御で不十分な場合には、各ステーションの感光ドラムの露光位置をずらす制御を行っても良い。例えば、ドラム表面に静電潜像を形成するためのレーザ光を照射するタイミングを所定のタイミングからずらすことにより、露光位置を感光ドラムの回転方向にずらす。このために、各一次転写ローラ5aないし5dの回転速度を検出し、中間転写ベルト6の回転速度Vaveと比較して、各ステーションで転写されるトナー像のずれを検出する。そして、このトナー像のずれに応じて露光のタイミングをずらす。これにより例えば各一次転写ローラの回転速度の差が大きいような場合において、色ずれの低減をより図れる。
【0039】
<第二の実施形態>
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態の場合、Yステーションの一次転写ローラ5aに固定された速度検知手段36aの出力信号Vyに対し、重み調整部30aで係数0.8をかけている点のみ、第一の実施の実施形態と異なる。その他の構造及び作用は、第一の実施形態と同じである。以下、CPU29内でYの信号にのみ小さい係数を掛けている理由を説明する。
【0040】
図1、2に示すように、中間転写ベルト6の回転方向最上流に位置する一次転写ローラ5aの上流には、中間転写ベルト6の張力を調整するテンションローラ18を配置している。最上流の感光ドラム1aはYのトナーを有し、一次転写ローラ5aは、このYのトナーを有する感光ドラム1aと対向する。即ち、各ステーションのうち、Yステーションがテンションローラ18に最も近い位置に存在する。このため、テンションローラ18の位置が変動すると、Yステーションにより検知される出力信号Vyの変動が、他のステーションにより検知される出力信号Vm、Vc、Vkと比較して大きくなる。そして、Yステーションの信号Vyにつられて、M、C、Kの色ずれが相対的に悪化してしまう可能性がある。テンションローラ18の位置変動の要因としては、中間転写ベルト6を張架している各ローラの偏芯などがある。
【0041】
一方で、Yのトナー像は他の色のトナー像と比較して見えにくいため、M、C、Kの色ずれが極小であれば、Yのずれが他の色に対して若干大きくても、出力された画像としては色ずれが目立ちにくい。従って、Yステーションの中間転写ベルト6の速度の出カ信号Vyのみ、他のステーションの信号Vm、Vc、Vkより重み付けを軽くした上で平均化する。これにより、テンションローラ18の位置変動の影響を受けやすいYステーションの信号Vyにつられて、M、C、Kの色ずれが相対的に悪化してしまうという問題を解消できる。
【0042】
本実施形態の場合、中間転写ベルト6の平均値はVaveは、次のように表される。
Vave=(0.8Vy+2Vm+2Vc+Vk)/5.8
【0043】
なお、本実施形態の場合も、各ステーションの速度検知手段36aないし36dの出力信号Vy、Vm、Vc、VkにCPU29内の重み調整部30aないし30dにて重み付けを行なっているが、重み付けの係数は、上述の数値に限定されるものではない。特に、Yステーションの出力信号Vyにかける重み付け係数は、テンションローラ18の影響を低減する観点から、0を含み1未満の数値(0≦Vyの重み係数<1)とすることができる。即ち、最上流のYステーションの速度検知手段36aの出力信号Vyが、0ないし他のステーションの速度検知手段36bないし36dの出力信号Vm、Vc、Vkよりも小さくなるように、信号Vyに重み付けを行う。このような重み付けの係数は、例えば、テンションローラ18により中間転写ベルト6を付勢する向きや大きさ、中間転写ベルト6の材質などを考慮して定める。
【0044】
また、重み付けを0とする考え方により、例えばYステーションの速度検知手段は実装しないなど、目標とする色ずれ低減のレベルに応じて速度検知手段の数を減らしても良い。即ち、最上流のYステーションの一次転写ローラ5aにはエンコーダ及び検知部を設けないようにしても良い。これにより、エンコーダ及び検知部の数を減らして装置の低コスト化を図れる。
【0045】
また、上述のように重み係数を0を含む1未満の数値とするのは、最上流のYステーション以外に、最下流のKステーションであっても良い。即ち、画像形成装置によっては、二次転写部が最下流のKステーションの近傍に位置する場合がある。この場合、Kステーションが、二次転写部に記録材が進入する際の中間転写ベルトの速度変動の影響を受ける可能性がある。したがって、上述のYステーションと同様の考えで、このような二次転写部の影響を少なくするために、Kステーションの重み係数を0を含む1未満の数値とする。勿論、Kステーションに速度検知手段を設けないようにしても良い。何れにしても、最上流及び最下流に位置するステーションで検知される回転速度は、一次転写部での外力以外の影響を受け易い。従って、このような影響が大きい場合には、最上流及び最下流に位置するステーションの出力信号に、中間に位置するステーションの出力信号よりも小さくなるような重み付けを行う。また、最上流又は最下流に位置するステーションの色ずれを低減させるために、このステーションで前述の露光位置の制御も行っても良い。
【0046】
一方、上述の第一、第二の実施形態と異なり、演算手段に重み調整部を設けず、即ち各ステーションの出力信号に重み付けをせず、各ステーションの信号を同一に扱うことも可能である。これは、例えば、各感光ドラム1aないし1dの角速度同士の誤差が殆どない等、各ステーションの速度信号の差が比較的小さい場合には、重み付けをしなくても大きな誤差とならず有効である。このような演算手段の簡素化により、演算に要する時間を短縮でき、装置全体の処理速度の向上に寄与する。また、この場合に、速度検知手段であるエンコーダを、各一次転写ローラ5aないし5dのうちの何れか1個に設けても良い。即ち、各ステーションの速度信号の差が小さい場合には、少なくとも1個の一次転写ローラの回転速度を検知することにより、一次転写部での中間転写ベルト6の回転速度を制御可能である。この場合に好ましくは、最上流及び最下流を除く転写ローラのうちの少なくとも1個に速度検知手段を配置することが好ましい。但し、制御の精度を向上させるためには、多くの(少なくとも2個の)転写ローラの回転速度を検知することが好ましい。
【0047】
また、上述の各実施形態では、中間転写ベルトを用いた画像形成装置を例に説明を行ったが、本発明は、記録材搬送ベルトを用いた直接転写の画像形成装置にも適用可能である。即ち、ベルト状回転体が、記録材を搬送する記録材搬送ベルトであり、記録材搬送ベルトにより搬送される記録材を、転写ローラと感光ドラムとの間で挟持することにより、記録材にトナー像を直接転写する構造に、本発明を適用可能である。この構造の場合も、転写ローラの回転速度を検知し、検知された信号に基づいて記録材搬送ベルトの回転速度を調整する。
【符号の説明】
【0048】
1a〜1d・・・感光ドラム、5a〜5d・・・一次転写ローラ、6・・・中間転写ベルト、17・・・駆動ローラ、18・・・テンションローラ、19・・・二次転写内ローラ、25・・・芯金、26・・・弾性部、27・・・カラー、28,28a〜28d・・・エンコーダ、29・・・CPU、34・・・駆動モータ、35・・・検知部、36a〜36d・・・速度検知手段、Ta〜Td・・・一次転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、回転可能に張架され該像担持体と当接するベルト状回転体と、該ベルト状回転体に従動して回転し、該像担持体に担持されたトナー像を該ベルト状回転体の表面又はその表面に載せた記録材に転写させる転写ローラと、該ベルト状回転体を回転駆動する駆動手段と、を備えた画像形成装置において、
前記転写ローラの回転速度を検知する速度検知手段と、
該速度検知手段により検知した前記転写ローラの回転速度に基づいて、前記駆動手段を制御して前記ベルト状回転体の回転速度を調整する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体及び前記転写ローラは、前記ベルト状回転体の回転方向に複数並べて配置され、
前記速度検知手段は、前記各転写ローラのうちの少なくとも2個にそれぞれ配置され、該各転写ローラの回転速度に基づく信号をそれぞれ出力し、
前記制御手段は、前記少なくとも2個の速度検知手段の出力信号に基づいて制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、特定の速度検知手段の出力信号を、他の速度検知手段の出力信号よりもベルト状回転体の回転速度の調整に与える影響が大きくなるように扱うことを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記特定の速度検知手段は、ベルト状回転体の回転方向最上流及び最下流に位置する転写ローラ以外の転写ローラに配置された速度検知手段であることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写ローラは、前記ベルト状回転体に弾性的に当接する弾性部と、該ベルト状回転体と当接して該弾性部の弾性変形量を一定値に規制する円筒状突き当て部と、を備えたことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−27932(P2011−27932A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172470(P2009−172470)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】