説明

画像形成装置

【課題】 現像容器内の現像剤を、現像容器の壁面に設けられた排出口よりオーバーフローして排出させる構成を備えた画像形成装置において、簡単な構成でありながら、現像容器内の現像剤の排出を適切に行い、現像容器内の現像剤量の変動を抑えることを目的とする。
【解決手段】 トナーとキャリアを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、二成分現像剤を搬送する搬送手段と、を備える現像装置を有する画像形成装置において、出力する画像の1枚又は複数枚分のトナー消費量が所定の閾値を超えるときに、超えないときと比べて現像剤搬送手段の搬送速度が速くなるように制御する制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置に関する。特に、トナー及びキャリアからなる二成分現像剤を使用する現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式や静電記録方式を採用する画像形成装置、特に電子写真方式によってフルカラーやマルチカラー画像を形成するカラー画像形成装置には、発色性や混色性といった観点から殆どの現像装置がトナーとキャリアを混合した二成分現像剤(以下、現像剤)を使用している。
【0003】
二成分現像方式においては、トナーは消費される一方でキャリアは消費されないため長期間現像容器内で撹拌されることになる。そのため、耐久によりキャリア表面にはトナーの外添剤やトナーが付着して劣化してしまう。その結果、キャリアのトリボ(摩擦帯電量)付与能力が下がってトナーのトリボ(摩擦帯電量)が低下し、かぶり等の画像不良が発生するという問題があった。そこで、長寿命現像の検討として耐久寿命を延ばす現像剤の開発や現像剤を劣化させないプロセスの開発が行われているが、現状の現像剤寿命はA4紙に標準的な画像を出力した場合に3万枚から5万枚であるのが実際である。
【0004】
上記課題に対して、現像容器内の現像剤を排出口から排出すると共に新たな現像剤の補給を行うことで、現像容器内のキャリアの劣化を抑制する装置が提案されている。所謂トリクル方式と呼ばれ、現像剤を現像装置の壁面に設けられた排出口より溢れさせて排出、回収する構成としてある。
【0005】
このようなトリクル方式の現像装置では、新しい現像剤又はキャリアの補給と、現像容器内の現像剤の排出とが逐次繰り返されることによって、現像容器内の劣化した現像剤は新たに供給されるトナー及びキャリアに置換されていく。そのため現像容器内のキャリアのトリボ付与能力が維持されるため、画像品質の低下を押さえることが出来、現像剤を交換する頻度の延長が図られる。
【0006】
ここで上記構成についてさらに詳しく説明する。上記構成においては、現像容器内への現像剤の補給が多い状態が続く場合には、現像容器内の現像剤量が増加し、現像剤の剤面が上昇する。一方、現像容器内への現像剤の補給が少ない、或いは補給が無い状態が続く場合であっても、現像剤は排出口よりオーバーフローして(溢れるように)排出されるため、現像容器内の現像剤の剤面は低下する。
【0007】
従って、トリクル方式の現像装置においては現像容器内の現像剤量は変動する。しかしながら、現像容器内の現像剤量が多過ぎると、現像剤の撹拌が不十分となってトナーへのトリボが低下して画像ムラやかぶりといった問題や、現像容器からの現像剤の溢れといった問題が生じてしまう。逆に現像容器内の現像剤量が少な過ぎると、静電潜像を形成する現像剤量の不足から、濃度ムラや画像部の一部が白く抜ける白抜けなどの画像不良が生じてしまう。そのため、現像容器内の現像剤量を適切な範囲内に維持する必要がある。
【0008】
特許文献1では、トナー濃度センサにより現像容器内の現像剤量を推測し、推測された現像剤量が少ない場合には、現像スリーブへとトナーを供給する供給スクリューの下流に設けられた排出スクリューの回転速度を上げ、多い場合には回転速度を下げる構成が開示されている。これにより、現像容器内の現像剤の排出量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−122418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1で提案された構成では、現像容器内の現像剤量をトナー濃度センサの出力変化や圧力センサの結果に基づいて推測しているため、センサの検知精度やセンサ周りの現像剤の嵩密度に左右され易く安定して正確な現像剤量の推測を行うのが難しい。ゆえに現像容器内の現像剤量が大きく変動してしまう恐れがあった。
【0011】
そこで本発明の目的は、現像容器内の現像剤量の変動を安定して抑える画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は以下の構成を有する。
【0013】
静電潜像を形成する像担持体と、トナーとキャリアを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、二成分現像剤を担持搬送して静電潜像をトナー像とする現像剤担持体と、現像容器に設けられ現像容器に収容された二成分現像剤を搬送して循環させる現像剤搬送手段と、現像容器に設けられ現像容器に収容された二成分現像剤を排出する排出口と、を備える現像装置と、出力する画像のトナー消費量に関する情報を検出する検出手段と、トナー消費量に関する情報に基づいて現像容器に現像剤を補給する補給手段と、を有し、
前記検出手段により検出した1枚又は複数枚分のトナー消費量が所定の閾値を超えるときに、超えないときと比べて前記現像剤搬送手段の搬送速度が速くなるように制御する制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現像容器内の現像剤量の変動を安定して抑えることができる。これにより、現像容器からの現像剤の溢れや、画像ムラやかぶり、画像部における白抜けといった画像不良を抑制し、安定して高画質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施1の画像形成装置の概略図を示したものである。
【図2】本実施1の現像装置の概略図を示したものである。
【図3】本実施1を適用した画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】トナー及びキャリアについての補給量と消費量の関係を示した表である。
【図5】本実施1の現像装置の長手方向の断面図を示したものである。
【図6】本実施1の現像装置における各搬送速度の現像剤の排出特性を示した図である。
【図7】実施例1における搬送スクリューの回転速度の制御方法を示したフローチャート図である。
【図8】実施例1における現像剤の排出特性を示した図である。
【図9】トナーの平均滞在時間を示した図である。
【図10】安息角の測定方法を示した図である。
【図11】実施例2における各搬送速度の初期と空回転時の現像剤の排出特性を示した図である。
【図12】実施例2における搬送スクリューの回転速度の制御方法を示したフローチャート図である。
【図13】実施例2における現像剤の排出特性を示した図である。
【図14】実施例3における各搬送速度の初期現像剤の排出特性について示した図である。
【図15】実施例3における170分空回転現像剤の排出特性について示した図である。
【図16】実施例3における搬送スクリューの回転速度の制御方法について示したフローチャート図である。
【図17】実施例3における搬送スクリューの回転速度を制御する制御テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下に本発明の画像形成装置について図面に基づき詳しく説明する。
図1は本実施例の画像形成装置の概略図を示したものである。画像形成装置100には、像担持体である感光ドラム1が回転可能に設けられ、まずその感光ドラム表面が一次帯電器2によって一様に帯電される。その後、感光ドラム1の表面を露光手段であるレーザー発光素子3によって露光することで感光ドラム上に静電潜像が形成される。この静電潜像を現像装置4で現像しトナー像とする。その後トナー像を転写帯電器5により転写紙7へと転写し、更に定着装置8にて転写紙上に定着して定着画像を得る。また、感光ドラム上の転写残トナーはクリーニング装置9により除去され、更に前露光ランプ10にて感光ドラム上の電位が消去される。その後、感光ドラム1は再び上述した画像形成プロセスにより画像を形成する。
【0017】
次に、現像装置4について詳しく説明する。
図2は本実施例の現像装置の概略図を示したものである。現像装置4は、現像容器20を有し、現像容器20には現像剤としてトナーとキャリアを含む二成分現像剤(以下、現像剤)が収容されている。また現像装置4は、現像剤担持体である現像スリーブ24と、現像スリーブ24上に担持され搬送される現像剤の層厚を規制するブレード25と、を有している。また現像容器20の感光ドラム1に対向した位置に開口部があり、この開口部に現像スリーブ24が一部露出するように回転可能に設けられている。尚、現像スリーブ24は、アルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成され、内部には磁界手段であるマグネットローラ50が非回転状態で設置されている。現像スリーブ24は、現像時に図示矢印方向(反時計方向)に回転し、ブレード25によって層厚を規制された現像剤を担持搬送する。
【0018】
また現像容器20は、本紙面に垂直方向に延設された隔壁23によって、現像スリーブ24に現像剤を供給する現像室21aと、現像スリーブ24から現像剤を回収して撹拌する撹拌室21bとに隔てられ、現像剤を循環させる循環路を形成している。本実施例では、鉛直方向上下に現像室21a、撹拌室21bを設ける縦撹拌型であるが、これに限定されず現像室21a、撹拌室21bを水平方向左右に設ける横撹拌型であっても良い。更に、現像室21a及び撹拌室21bには、現像剤を撹拌し搬送する搬送手段として第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bがそれぞれ配置されている。
【0019】
現像装置4の上部には、トナーとキャリアを混合した補給用の現像剤を収容するホッパー31が配置される。トナー補給手段を構成するこのホッパー31は、下部にスクリュー状の補給部材である補給スクリュー32を備え、補給スクリュー32の一端が現像装置4に設けられた現像剤補給口30の位置まで延びている。現像剤の補給量は、補給スクリュー32の回転速度により決まるが、補給スクリュー32の回転速度は後述するビデオカウント値の他、図1中に示した感光ドラム1上の基準潜像を現像してそのトナー像の濃度を検知するパッチ検センサ11の検知結果に基づいて制御される。また、トナー濃度検知の方法としては、光学的に検知する方法や超音波センサを用いて検知する方法でも良い。
【0020】
ここで短期的な視点から見ると、出力画像及び制御用のパッチ画像で消費されたトナー量に対して、同じ量だけトナーを含むように、現像剤を補給すれば良い。従って、現像剤のトナーとキャリアの混合比率によって、必要な補給量は異なってくる。即ち、キャリアの混合比率が高い程、必要な補給量が増えてコストが増大する反面、新しいキャリアが大量に補給される為、常に安定した帯電量をトナーに付与することができるメリットがある。一方、キャリアの混合比率が低い程、必要な補給量が減ってランニングコストを削減できる反面、現像容器内の現像剤に含まれる劣化キャリアの比率が増えるためにトナーへの帯電付与が不安定になり、長期に渡る画質の安定が困難になるデメリットがある。本実施例では現像剤におけるトナーとキャリアの混合比率は9対1としてある。ただし、この比率に限定されず、適切な混合比率を設定すれば良い。このように、画像形成によって消費された分のトナーは、補給スクリュー32の回転によりホッパー内の現像剤が搬送されてホッパー31から現像剤補給口30を通過して、現像容器20に補給される。
【0021】
現像装置4の壁面には、排出口40が設けられており、排出口40から劣化した現像剤が排出され回収容器42へと回収される。現像剤の補給等により現像容器内の現像剤の剤面が上がると、剤面の上昇に応じて、現像剤はこの排出口40より溢れ出るようにして排出される。排出された現像剤は回収部材である回収スクリュー41により図示しない回収現像剤貯蔵庫まで搬送される。
【0022】
以下、ビデオカウント値について詳しく説明する。まず図3は、本実施例を適用した画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。図3において、213は外部入力インタフェース(外部入力I/F)であり、外部入力インタフェース213を介して必要に応じて原稿スキャナ、コンピュータ(情報処理装置)等の不図示の外部装置からRGB画像データとしてカラー画像データを入力する。204はLOG変換部であり、ROM210に格納されているデータ等により構成されるルックアップ制御テーブル(LUT)に基づいて入力されたRGB画像データの輝度データをCMYの濃度データ(CMY画像データ)に変換する。205はマスキング・UCR部であり、CMY画像データから黒(Bk)成分データを抽出し、記録色材の色濁りを補正すべく、CMKY画像データにマトリクス演算を施す。206はルックアップ制御テーブル部(LUT部)であり、画像データをプリンタ部の理想的な階調特性に合わせるためにガンマルックアップ制御テーブル(γルックアップ制御テーブル)を用いて入力されたCMYK画像データの各色毎に濃度補正を施す。なお、γルックアップ制御テーブルはRAM211上に展開されたデータに基づいて作成され、その制御テーブル内容はCPU209によって設定される。207はパルス幅変調部であり、LUT部206から入力された画像データ(画像信号)の色濃度レベルに対応するパルス幅のパルス信号を出力する。このパルス信号に基づいてレーザードライバ102がレーザー発光素子3を駆動し、感光ドラム1上を照射することで静電潜像が形成される。
【0023】
ビデオ信号カウント部214はLUT部206に入力された画像データの600dpi1画素ごとの色濃度レベル(0〜255レベル)を画像1面分積算する。この画像データ積算値を、ビデオカウント値と呼ぶ。このビデオカウント値は出力画像が全面すべて255レベルだった場合に最大値1023となる。尚回路の構成上制限があるときは、ビデオ信号カウント部214のかわりにレーザー信号カウント部215を用いて、レーザードライバ102からの画像信号を同様に計算することで、ビデオカウント値を求めることが可能である。この、外部入力I/F213、LOG変換部204、マスキングUCR部205、LUT部206、ビデオ信号カウント部214を合わせた検出手段により出力する画像のビデオカウント値から、本実施例ではトナー消費量を検出している。
【0024】
ビデオカウント値の信号はプリンタ制御部に入力され、その信号に基づいてスリーブ駆動手段301、スクリュー駆動手段302の回転速度を制御する。
【0025】
図4はトナー及びキャリアについての補給量と消費量の関係を示した表である。出力する画像によってビデオカウント値が決まる。更に、そのトナー消費量と同量のトナー量を補給するため、補給する現像剤量が決まり、この補給されるキャリア量が現像容器内の剤容量の増加分に相当する。ここで、ビデオカウント値とその画像のトナー消費量は略比例し、ビデオカウント値と補給されるキャリア量も略比例する。
【0026】
また、本実施例では出力する画像のビデオカウント値に基づいて搬送スクリューの回転速度を制御しているが、これを印字率に基づいて制御しても良い。ここで言う、印字率とは『出力画像のビデオカウント値/出力画像の紙サイズでの最大ビデオカウント値』である。
【0027】
図5は本実施例の現像装置の長手方向の断面図を示したものである。第1の搬送スクリュー22aは、現像室21aに現像スリーブ24の軸方向に沿ってほぼ平行に配置されており、回転することで現像室21a内の現像剤を軸線方向に沿って一方向に搬送する。また、第2の搬送スクリュー22bは、撹拌室21bに第1の搬送スクリュー22aとほぼ平行に配置され、撹拌室21b内の現像剤を第1の搬送スクリュー22aとは反対方向に搬送する。このようにして、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bによって、現像剤が隔壁23の両端部の開口部(即ち、連通部)26、27を通じて現像室21aと撹拌室21bとの間で循環される。
【0028】
本実施例において、現像スリーブ24の回転駆動と、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転駆動とは、それぞれ駆動手段であるスリーブ駆動手段301と、スクリュー駆動手段302とを備えており、任意の回転駆動で制御することができる。
【0029】
次に、本実施例の現像装置4の現像剤排出特性について説明する。
排出口40の位置は、図に示すように、現像室21aの側面で、現像剤補給口30の位置より現像剤搬送方向上流側で、かつ現像室21aの現像剤搬送方向において真ん中に位置する点(中間点)よりも下流側に位置するように設けられている。これは、補給された新しい現像剤がすぐに排出されないようにするためである。ただし、現像剤補給口30の位置より現像剤搬送方向下流側や撹拌室21bに形成してあっても良い。
【0030】
現像剤排出特性は、排出口40の大きさや位置と、現像剤搬送手段である第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの羽根の大きさやスクリューの回転速度等で決まる搬送能力と、によって決まるものである。例えば、搬送スクリュー22a、22bの搬送能力を大きくすると現像剤排出特性は大きくなる。
【0031】
本実施例において、排出口40は縦15mm×横(現像剤搬送方向にほぼ平行)10mmの長方形の穴である。またその位置は、排出口40の下方端部が第1搬送スクリュー22aの軸の中心から5mm上方、かつ、連通部27側の隔壁23の端部から5mm搬送方向上流、に存在する。一方、第1搬送スクリュー22aと第2搬送スクリュー22bについては、両者は同様の構成となっており、軸径8mmの回転軸に、軸方向に渡ってピッチ30mm、外径28mmの撹拌羽根、即ち、螺旋翼部であるスクリュー羽根が均等に設けられている。第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの駆動手段は不図示の共通のモーターとなっており、搬送速度(回転速度)は300rpm〜700rpmの間で可変である。
【0032】
ここで、本発明者らは本実施例の現像装置4の現像剤排出特性を調べるために以下のような実験を行った。
【0033】
すなわち、所定の現像剤量を現像容器20に入れ、1分間排出口40から現像剤が排出されないように蓋をして閉じておき、現像スリーブ24と第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bを空回転させる。また、この時の現像容器20に入れる現像剤量は320gから600gまで各20g刻みの現像剤量とする。ここで、1分間蓋をして排出口を閉じておくのは、現像容器内の現像剤の剤面を安定させるためである。その後、今度は排出口から現像剤が排出されるように蓋をせずに排出口を開けておき、さらに1分間現像スリーブ24と第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bを空回転させる。そして、この1分間の間に、排出口40から溢れ出てくる現像剤の重量を測定した。ただし、実験では現像スリーブ24の回転速度は画像形成時の回転速度、本実施例では350rpmで固定し、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bについては回転速度300rpm、500rpmのそれぞれで測定した。また、この実験では現像剤の補給等は行わずに測定した。また、現像容器20内の現像剤におけるトナーの重量比率(「T/D比」と呼ぶ)は、T/D比=8%のものを使用した。実際の画像形成装置使用時にはT/D比は約6%〜12%で変動するが、代表としてT/D比8%の現像剤を用いて実験を行った。その実験結果を図6に示す。
【0034】
図6は搬送スクリュー速度と現像容器内の現像剤量に応じた現像剤排出特性を示した図である。横軸は現像容器20内の現像剤量(g)、縦軸は単位時間当たりに排出口40から排出される現像剤の重量(mg)としてある。また、搬送スクリューの搬送速度としては300,500rpmの2つの搬送速度を用いた。ここでの単位時間とは、画像形成装置100がA3用紙片面1枚あたりに必要とする現像スリーブ24と第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転時間である。即ち縦軸の単位は(mg/A3片面)は、実験に用いた画像形成装置のプリントスピードがA3換算で40枚/分であることから、1.5秒間に排出口から排出される現像剤の重量(mg)を示している。
【0035】
図6に示すように、現像容器内の現像剤量に応じて単位時間当たりに排出口40から排出される現像剤の重量である現像剤排出特性は、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度に大きく依存する。即ち、回転速度が速い(500rpm)ときには、遅いとき(300rpm)と比べて、同一現像剤量であれば、現像容器20内の現像剤の排出量が多く排出特性は大きくなっている。また、現像容器20内の現像剤量が少なくても現像剤の排出が起こる。これらは、搬送スクリューの回転速度が速い場合は遅い場合に比べて、現像室への現像剤の汲み上げ性が高まるためである。
【0036】
現像剤排出特性が、搬送スクリュー回転速度に依存するメカニズムは以下でも説明できる。まず、現像容器20内の現像剤に対する搬送スクリューの搬送能力は一般に以下の式で表される。即ち、搬送能力は、スクリューの羽根1ピッチ分をスクリュー1回転分積分した体積にスクリューの搬送速度と現像剤搬送効率を掛け合わせたもので定義され、
「搬送能力」=π*{(スクリューの羽根の外径)^2−(スクリューの軸径)^2}*(スクリューのピッチ間隔)*(スクリューの回転速度)*(現像剤搬送効率)
と表される。ここで、現像剤搬送効率は、本実施例のスクリューでは80%として計算した。前記の搬送能力の計算式より、スクリューの回転速度が大きくなると搬送能力が大きくなり、搬送能力が大きくなると単位時間に排出口40の近傍を流動する現像剤の量が増えて、排出口40から排出される現像剤の量が増えるためである。
【0037】
次に、現像容器内の現像剤量の安定(バランス)について説明する。現像容器内の現像剤量は、現像剤の補給量と現像剤の排出量が釣り合ったところで安定する。
【0038】
ここで、現像剤の補給量については、前述した通り、出力画像及び制御用のパッチ画像で消費されたトナー量と同じ量のトナーを含むように、現像剤を補給することとする。例えば、本実施例において、出力画像がA3片面の全面すべて255レベルの画像だった場合(前述のビデオカウント値は1023)、このときのトナー消費量は約900mgと非常に多くなる。従って、トナーとキャリアの混合比率が9対1であることから、トナーが900mgとキャリアが100mgで合計1000mgの多量の現像剤を補給する。
【0039】
一方、出力画像がA3片面の全面すべて0レベルの画像だった場合(前述のビデオカウント値が0)のトナー消費量は、かぶりトナー量に相当する約8mgとなる。ただし、本実施例では、感光ドラム上のパッチ画像の濃度を検知するパッチ検センサ11を用いて画像濃度の安定制御(制御方法は不図示))を行っているため、少量のトナー(A3片面1枚あたり約1mg)を消費している。よって、出力画像がA3片面の全面すべて0レベルの画像だった場合、このときの合計トナー消費量は約9mgと非常に少量である。従って、同じだけトナーを含むように現像剤を補給する必要があり、その量はトナーとキャリアの混合比率が9対1であることから、トナーが9mgとキャリアが1mgで合計10mgの少量の現像剤を補給する。
【0040】
ここで、図6で示した排出特性より、現像容器20内の現像剤量が増加していけば排出口40からの現像剤の排出量も増えていく。第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度が300rpmのときには、現像剤量が580gまで増加すると、A3片面出力時間あたり100mgの現像剤を排出口から排出する。従って、ビデオカウント値1023の画像を連続で出力し続けると、現像容器20内の現像剤量が580gまで増加したところで、「補給される現像剤の量(1000mg)」と「消費されるトナー量(900mg)と排出口から排出される現像剤(100mg)の和」がつり合い、現像剤量の増加は止まる。
【0041】
逆に、現像容器内の現像剤量が減少していけば排出口40からの排出も減っていく。第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度が300rpmのときには、現像剤量が460gまで減少すると、A3片面出力時間あたり1mgしか現像剤を排出口から排出しなくなる。従って、ビデオカウント値0の画像を連続で出力し続けていると、現像容器20内の現像剤量が460gまで減少したところで、「補給される現像剤の量(10mg)」と「消費されるトナー量(9mg)と排出口から排出される現像剤(1mg)の和」がつり合い、現像容器内の現像剤量の減少は止まる。
【0042】
以上のように、現像容器20内の現像剤量の変動幅は、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度が300rpmのときには460g〜580gである。また、同様にして第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度を上げて500rpmとしたときには400g〜520gである。
【0043】
ここで、本発明の第1及び第2搬送スクリューの回転速度の制御方法について詳しく説明する。
前述のように、出力画像のトナー消費量が多いと現像容器20内の現像剤量は「増加」してバランスする。また、出力画像のトナー消費が少ないと現像容器20内の現像剤量は「減少」してバランスする。そこで、本実施例では図7に示す制御を行うことで、現像剤量の変動を抑えることが出来る。即ち、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度を300rpmと500rpmの2つの回転速度に切り替え制御することで、300rpmの回転速度のときの現像剤量の下限である460gと、500rpmの回転速度のときの現像剤量の上限である520gとの間に現像剤量の変動を抑えている。つまり、出力画像のトナー消費量が多いときには、搬送スクリューの回転速度を速くし、一方で出力画像のトナー消費量が少ないときには、搬送スクリューの回転速度を遅くする制御とすることで、現像剤量の変動を抑える構成としている。
【0044】
図7は本実施例の搬送スクリューの回転速度の制御方法を示したフローチャート図であり、以下に詳しく説明する。
【0045】
外部から画像が入力されると(ステップS1)、ビデオ信号カウント部214が出力画像のビデオカウント値を測定する(ステップS2)。ビデオカウント値が0〜196であるときは搬送スクリューの回転速度を300rpmに、ビデオカウント値が197〜1023であるときは搬送スクリューの回転速度を500rpmに、プリンタ制御部300により制御する(ステップS3)。その後、画像形成プロセス動作を実行する(ステップS4)。このように、本実施例ではビデオカウント値196を閾値とし、この閾値を超えた場合には500rpm、超えない場合には300rpmとしている。上記の閾値とすることで、300rpmの回転速度のときの現像剤量の下限である460gと、500rpmの回転速度のときの現像剤量の上限である520gとの間に、現像容器内の現像剤量の変動を抑えることができるため、望ましい。ただし、閾値はこのビデオカウント値196に限定されず、200や300としても現像剤量の変動を抑えることは出来る。さらに、出力する1枚分の画像のトナー消費量に合わせて搬送スクリューの速度を制御する構成としており、現像容器内の剤面検知するような構成と比べて、現像容器内の現像剤量の増減に対する応答性が高く、より安定して現像剤量の変動を抑えることができる構成と言える。
【0046】
図8は本実施例の画像形成装置の現像剤排出特性を示した図である。本実施例の排出特性としては、「実施例1」として示した曲線(A、B、C、Dで示された曲線)になる。即ち、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度が300rpmの場合の排出特性の曲線と、500rpmの場合の排出特性の曲線とを組み合わせた排出特性の曲線になる。
【0047】
ここで、現像剤量が480gで安定(バランス)しているときにトナー消費量が最大であるビデオカウント値1023の画像を連続出力する場合には、搬送スクリュー回転速度は500rpmとなる。このとき現像剤量の増加分に当たる補給されるキャリア量は図4より100mgである。以上より、ビデオカウント値1023の画像を連続出力すると、搬送スクリュー回転速度500rpmにおいて、補給されるキャリア量100mgと排出される現像剤量がバランスする520g(Dの位置)へと現像剤量は増加していく。
【0048】
現像剤量が520gでバランスした後、続けてトナー消費量が最小であるビデオカウント値0の画像(ベタ白)を連続出力するときには、搬送スクリュー回転速度は300rpmへとプリンタ制御部300により切り替えられる。このとき現像容器内の現像剤量の増加分に当たる、補給されるキャリア量は1mgである。そのため、搬送スクリュー回転速度300rpmにおいて補給されるキャリア量1mgと排出現像剤量がバランスする460g(Bの位置)へと現像剤量は減少していく。
【0049】
これにより、搬送スクリュー速度を制御しない場合には現像剤量の変動幅が120gであったのに対して、本実施例においては現像剤量の変動幅を460g〜520gと60gにすることができる。また、第1及び第2の搬送スクリューの速度を切り替えるのみで新たな部材やスペースを必要としないため、現像装置をコンパクトにすることが可能となる。
【0050】
尚、本実施例では第1及び第2の搬送スクリューの回転速度の制御は同一としてあるが、これに限定されず第1、第2の搬送スクリューをそれぞれ別個に制御しても良く、一方又は他方又は両方の現像剤搬送部材の搬送速度を制御すれば良い。
【0051】
また、本実施例では搬送スクリューの回転速度を300rpmと500rpmの2種類で制御したが、ビデオカウント値に応じてより細かく場合分けして3種類以上の回転速度で制御しても良い。その場合には、2種類の回転速度の場合よりも現像剤の変動を抑えることが可能となる。
【0052】
また、現像剤搬送手段としてはスクリュー形状の搬送スクリューに限定されず、搬送コイルやすのこ部材を駆動することで搬送するすのこ搬送等であっても良い。また、現像剤搬送手段としては、現像剤搬送部材である搬送スクリューを2つ有することに限定されず、1つや3つ以上有する構成であっても良い。
【0053】
また、トナー消費量として、ビデオカウント値ではなく、レーザー信号カウント部215がカウントしたレーザー信号カウント値やトナー像のトナー濃度を光学センサにより測定する方法としても良い。
【0054】
また、本実施例ではビデオ信号カウント部214によるビデオカウント値測定直後に出力する1枚分の画像のビデオカウント値に基づいて搬送スクリューの回転速度を制御しているが、これに限定されず過去に出力した複数枚分の画像のビデオカウント値の平均値に応じて搬送スクリューの回転速度を制御しても良い。所定枚数分のビデオカウント値の平均値に応じて制御しても良い。ただし、その場合でも現像剤排出量を細かく制御するために1〜100枚程度とするのが望ましいと考えられる。
【0055】
また、搬送スクリューの回転速度の制御として、所定枚数毎ではなく、連続して画像出力を行う連続プリント枚数毎のトナー消費量に応じて搬送スクリューの回転速度を制御しても良い。
【0056】
(実施例2)
実施例1においてはビデオ信号カウント部214或いはレーザー信号カウント部215から、プリンタ制御部300に出力する画像のビデオカウント値情報が送られる毎に、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度を切り替え可能とする制御を行なっていた。
【0057】
一方、本実施例では現像剤劣化度に応じて第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度を切り替える制御を行なうことで、現像容器内の現像剤量の変動を現像剤が劣化したときでも抑制する。ここで、本実施例で言う現像剤劣化度とは、現像剤が現像スリーブや搬送スクリュー、ブレードによって摺擦されることにより、トナーの外添剤が剥れたりキャリア表面にトナーや外添剤が付着したりすることにより、現像剤が劣化して流動性が変化する度合いとする。本実施例では、この現像剤劣化度を、出力する画像の平均印字率によって推測している。印字率が低い画像の出力が続く場合には現像剤が劣化して流動性が変化するが、その場合においても現像容器内の現像剤量の下限値が小さくなるのを抑制し、現像剤量の変動を抑える。これにより、現像容器からの現像剤の溢れや、現像容器内の現像剤量が少なすぎる場合に起こる画像部の白抜けや現像装置の搬送スクリュー跡のムラが画像に出てしまい画像ムラになるといった画像不良を抑制することができる。
【0058】
以下、図面に基づき詳しく説明する。ただし、本実施例において、画像形成装置の構成は実施例1と同様であり、これらの説明については省略する。
【0059】
図9は本実施例におけるトナーの平均滞在時間と印字率の関係を示した図である。トナーの平均滞在時間とは、トナー毎に異なる現像容器内に補給されてからの現像容器滞在時間を平均したものである。また、ここで言う印字率とは『出力画像のビデオカウント値/出力画像の紙サイズでの最大ビデオカウント値』である。図9は、横軸に印字率(%)、縦軸に平均のトナー滞在時間(分)をとり、現像容器内の現像剤量が500gでかつトナー濃度(T/D比)が8%で一定と仮定した場合の現像容器内のトナー平均滞在時間を示した図である。最大紙サイズであるA3片面1枚当たりの現像スリーブ回転時間を1.5秒(紙間0.1秒を含めて)、印字率100%における感光ドラム上へのトナー消費を0.62mg/cm^2、の一定条件下で、A3片面1枚の各々の印字率の画像を100K枚印刷した後の、平均滞在時間を計算してある。平均滞在時間が長ければ、現像スリーブや搬送スクリュー、ブレードによって摺擦される回数が増えるため、本実施例ではこのトナーの平均滞在時間を現像剤劣化度として、搬送スクリューの回転速度の制御を行っている。ただし、これに限定されず、現像スリーブの駆動時間を直接測定して駆動時間が長いほど劣化が進むとし、かつトナー消費量をトナー入れ替え量として、現像剤劣化度を現像スリーブの回転時間/トナー消費量として求める等しても良い。
【0060】
紙サイズが同じであれば、印字率が低い画像の、感光ドラム1上に現像されて現像容器内から消費されるトナー量は、印字率が高い画像に比べて少なくなる。さらに、消費されるトナー量が少ないということは、補給されるトナー量も少ない。現像容器内のトナー粒子1個が現像に用いられて容器内から出て行く確率は、印字率が低いほど低くなる。従って、現像容器内のトナーは、紙サイズと容器内のトナー濃度(T/D比)が一定の条件下では、印字率が低いほど現像容器内のトナーの平均滞在時間は長くなる。
【0061】
更に、トナーの現像容器内の滞在時間が長くなると、トナーは搬送スクリューによる撹拌やブレードを通過するときの摺擦を受ける確率が高くなってしまう。トナーは摺擦を受けると、外添剤が剥れたりトナー表面に埋め込まれたりすることで劣化し、現像剤の流動性が変化する。つまり、出力した画像の平均印字率を求めることによって現像剤の流動性や現像剤劣化度が予測できる。
【0062】
本発明者らは、またトナーの平均滞在時間と現像剤の流動性との関係を明らかにするために以下のような実験を行った。即ち、本発明を適用できる画像形成装置100の現像装置4において、初期現像剤と、現像スリーブと搬送スクリューを170分空回転させた170分空回転現像剤とを用意し、それぞれの流動性の指標として安息角を測定した。つまり平均トナー滞在時間の異なる現像剤を用意し流動性の違いを測定した。本実施例の画像形成装置において結果は、初期現像剤(平均滞在時間0分の現像剤)の安息角は30度、170分空回転現像剤(平均滞在時間170分の現像剤)の安息角は42度であった。つまり空回転現像剤の方が搬送スクリューやブレード周辺での摺擦によるトナーの劣化によって、現像剤の流動性が低下していることが分かった。
【0063】
ここで、安息角の測定方法は、温度23℃湿度50%の環境で、図10に示すようにフルイ(710μm目開き、線径φ450μm)400の上に置かれた現像剤が振動により落ち、フルイの下にあるロート(トナー噴出穴φ5mm)401を通過する。その後、その下に置かれた測定用制御テーブル(φ80mm円形)402に現像剤が積もり山となる。現像剤が積もると図10に示す角度θが徐々に大きくなり、ある一定以上に積もると現像剤はすべり落ちてしまい、角度θは一定の値となる。その時の角度θが安息角となる。
【0064】
現像剤の流動性が変わると、現像剤の排出特性も変化すると考えられる。そこで本実施例においても実施例1で行ったものと同様の実験を行った。
【0065】
つまり、320gから600gまで各20g刻みの現像剤量を現像容器20に入れ、1分間、現像スリーブ24と第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bを回転させることで現像剤の剤面を安定させ、その後、さらに1分間、現像スリーブ24と第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bを回転させる間に、排出口40から溢れ出てくる現像剤の重量を測定した。
【0066】
ただし、現像スリーブ24の回転速度は350rpmで固定し、第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度は300rpm、500rpmのそれぞれで測定した。また、本実施例では流動性の初期現像剤(「初期」と表示)と170分空回転現像剤(「空回転」と表示)の2種類の現像剤でそれぞれ実験を行った。その実験結果を図11に示す。
【0067】
図11は本実施例における初期と空回転時の現像剤排出特性を示した図である。横軸は現像容器内の現像剤量(g)、縦軸は単位時間(A3片面))当たりに排出口40から排出される現像剤量(mg)である。
【0068】
初期現像剤においても170分空回転現像剤においても、現像剤排出特性は第1及び第2の搬送スクリュー22a、22bの回転速度に大きく依存する。また、本実施例では同一の搬送スクリュー回転速度においては、初期現像剤よりも170分空回転現像剤の排出量の方が多くなった。これは、劣化していない現像剤に比べて劣化した現像剤の方が、かさ密度が小さく現像容器内の剤面が上がるため、現像容器の排出口40の壁から溢れ出るように現像剤を排出させる構成においては、より排出され易くなったからと考えられる。このような、現像剤が劣化してくると劣化していない場合に比べて、排出特性が大きくなるような現像装置においては、以下に説明する搬送スクリューの回転速度の制御を行うことで現像容器内の現像剤量の変動を抑制することができる。
【0069】
図12は本実施例における搬送スクリューの回転速度の制御方法を示したフローチャート図である。以下、説明する。
【0070】
出力する画像が入力され(ステップS101)、ビデオ信号カウント部214が出力する画像のビデオカウント値を測定する(ステップS102)。さらに、既に出力した1000枚分のビデオカウント値と紙サイズから、既に出力した1000枚分の印字率の平均値を求める(ステップS103)。ここで、既に出力した1000枚分の印字率の平均値が0%〜20%で現像剤劣化度が高いときは搬送スクリューの回転速度を300rpmに、印字率が20%よりも大きく現像剤劣化度が低いときはスクリュー回転速度を500rpmとするように制御する(ステップS104)。この設定の下で、画像形成プロセス動作を実行する(ステップS105)。その後、次の画像形成プロセスへと移行する。このように、印字率20%を閾値とし、この閾値を超えた場合には500rpm、超えない場合には300rpmとすることで、この2つの回転速度を用いて、現像容器内の現像剤量の変動を抑えることができる。印字率が20%以上であれば、トナーの平均滞在時間、即ち現像剤劣化度が高くない状態のため、搬送スクリューの回転速度を500rpmとして現像剤の排出量を増やす。一方、印字率が20%以下のトナーの劣化度が高い状態では、現像剤の排出量が多くなり過ぎないように300rpmとすることで、現像剤量の変動を抑えることが出来る。ただし、閾値はこの値20%に限定されず、30%や40%としても現像剤量の変動を抑えることは出来る。
【0071】
本実施例の画像形成装置の現像剤排出特性は、図13における「実施例2の曲線」のようになる。即ち、初期現像剤における搬送スクリューの回転速度が500rpmの場合の排出特性曲線と、170分空回転現像剤における搬送スクリューの回転速度が300rpmの場合の排出特性曲線と、の間の領域の排出特性を持つことになる。つまり、低印字率の画像出力が続き現像剤が劣化した場合でも、より排出量が少なく排出特性の小さい300rpmの搬送スクリューの回転速度とすることで、現像容器内の現像剤量の下限値を360gとし、空回転現像剤の500rpmの現像剤量の下限値である340gまで少なくなるのを抑制する。また、現像剤量の上限としても、初期300rpmの560gまで増えすぎないように、高印字率の画像出力が続く場合にはより排出量が多く排出特性の大きい500rpmの回転速度とすることで、520gに抑制している。つまり、現像剤が劣化した場合であっても、360g〜520gの範囲に現像剤量の変動を収めることができる。
【0072】
尚、本実施例では既に出力した1000枚分の印字率の平均値を求めているが、これに限定されずに製品に応じて適当な所定枚数分の印字率の平均値とすれば良い。ただし、現像剤の劣化による流動性の変化を考慮することに鑑みて、現像剤の劣化度を測定するのにある程度適した枚数である100〜10000枚程度の印字率平均とするのが望ましいと考えられる。
【0073】
(実施例3)
本実施例では、実施例1と実施例2を組み合わせて、「既に出力した1000枚分の印字率の平均値」と「ビデオカウント値」との両方の情報に応じて、より最適に搬送スクリューの回転速度を制御する。本実施例においては実施例1及び実施例2とは異なる流動性をもつトナーで構成された現像剤を用いてある。具体的にはトナーに含まれるワックスの量が多くなっている。そのため、現像剤が劣化した時の流動性の変化が前述の実施例とは少し異なる。
【0074】
以下、図面に基づき説明する。ただし、本実施例において、画像形成装置の構成は実施例1と同様であり、これらの説明については省略する。
【0075】
本実施例の現像装置4の現像剤排出特性は図14、図15のようになる。ここで、図14は初期現像剤、図15は170分空回転現像剤の現像剤排出特性について示した図であり、現像剤の特性が異なるため実施例1及び実施例2の排出特性とは少し異なり、搬送スクリューの回転速度が500rpmにおいて、同一現像剤量であっても現像剤排出量が少し多くなっている。図14、図15において、横軸は現像容器内の現像剤量(g)であり、縦軸は単位時間当たりに排出口40から排出される現像剤の重量(mg)である。
【0076】
まずここで比較のため、実施例1の制御方法に従って、ビデオカウント値の情報がプリンタ制御部に送信される度、つまりは画像を出力する度に、搬送スクリューの回転速度を300、500、700rpmに切り替える制御とした場合を考える。
【0077】
ここでビデオカウント値1023の画像を大量部数連続出力した直後において、現像剤の特性は印字率の高い画像の連続出力により流動性が上昇し、排出特性は図14のようになる。ゆえに、搬送スクリューの回転速度は700rpmで現像剤量は420gでつりあっている。ここで、出力する画像のビデオカウント値が急に0になると、プリンタ制御部300は搬送スクリューの回転速度を300rpmに切り替える。このとき、搬送スクリューの回転速度300rpmにおける現像剤量の変動の下限である460gを下回っているため、現像容器内の剤面が下がり過ぎて白抜けや搬送スクリュー跡のムラが画像に出てしまうといった画像不良が発生する恐れがある。というのも、同じ現像剤量であっても700rpmに比べ300rpmの場合では、現像室21aへの現像剤量を汲み上げる力が弱いため、剤面が下がり過ぎてしまうからである。そのため、排出特性が図14のようになる現像剤が劣化していない状態においては、300rpmと500rpmの回転速度を用い、700rpmの回転速度は用いないとする制御が望ましい。つまり、搬送スクリューの回転速度として最小速度300rpm、最大速度500rpmを使用する制御とする。
【0078】
一方で、ビデオカウント値0の画像を大量部数連続出力した直後において、現像剤の特性は印字率の低い画像の連続出力により流動性が低下し、排出特性は図15のようになる。このとき、現像剤の排出特性は、搬送スクリュー回転速度が違っていても劣化前の現像剤と比べてかなり似通った排出特性となる。そのため、300rpmと500rpmを用い、700rpmの回転速度は用いないとする制御では、現像剤の変動幅の抑制が十分でない。つまりは、300rpmと500rpmに加えて700rpmの回転速度を用いることで、より現像剤量の変動幅を抑えることが可能となる。つまり、最小速度300rpm、最大速度700rpmを使用する制御とする。
【0079】
以上より、初期状態の現像剤と劣化が進んだ現像剤とでは排出特性が変わるために、最適な搬送スクリューの回転速度が異なることが分かる。そこで、これらの問題を軽減する搬送スクリューの回転速度の制御方法を示す。つまり、本実施例では現像剤劣化度によって変わる現像剤の排出特性に最適な搬送スクリューの回転速度とするために、後述する図17に示す、平均印字率とトナー消費量とに基づいて搬送スクリューの回転速度を決める制御テーブルを用いている。これにより、本実施例では初期状態の現像剤においても、劣化後の現像剤においても上述した問題を出来るだけ軽減することができる。つまり、白抜けや搬送スクリュー跡のムラが画像に出てしまうといった画像不良を抑制し、かつ現像剤が劣化した場合でも現像剤の変動幅を抑制することができる。以下、制御方法について詳しく説明する。
【0080】
図16は本実施例における搬送スクリューの制御方法についてのフローチャート図である。まず、外部から画像が入力され(ステップS201)、ビデオ信号カウント部214が出力画像のビデオカウント値を測定する(ステップS202)。さらに、既に出力した過去1000枚分の印字率の平均値を求める(ステップS203)。さらに、出力する1枚分のビデオカウント値を求める(ステップS204)。次に、搬送スクリューの回転速度を後述する制御テーブルに基づき制御する(ステップS205)。
【0081】
図17は本実施例における搬送スクリューの回転速度を制御する制御テーブルである。横軸をステップS203で求めた過去1000枚分の平均印字率、縦軸を搬送スクリューの回転速度として表したものである。ステップS204で求めたビデオカウント値から5本の折れ線のうち最もビデオカウント値が近いものを選び、ステップS203で求めた平均印字率の搬送スクリューの回転速度を求める。
【0082】
ここで示す制御テーブルは、現像剤の劣化度によって変わる現像剤の排出特性に最適な搬送スクリューの回転速度とするために、過去1000枚分の平均印字率が高いほど搬送スクリューの使用する最大速度と最小速度の幅を小さくした制御テーブルを用いている。図17に示す通り、平均印字率が0%の場合には、300〜700rpmで搬送スクリューの回転速度を制御している。一方、平均印字率が100%の場合には、300〜500rpmの速度で搬送スクリューの回転速度を制御している。このような制御により白抜けや搬送スクリュー跡のムラが画像に出てしまうといった画像不良を抑制し、かつ現像剤が劣化した場合でも現像剤の変動幅を抑制することができる。
【0083】
搬送スクリューの回転速度の決定についても説明する。過去1000枚分の平均印字率が0%、100%の場合に上述した最大速度と最小速度とした上で、更に平均印字率が30%、60%の場合における現像剤の排出特性についても測定して決定している。30%、60%の場合においても、搬送スクリューの回転速度の下限を300rpmとした上で、回転速度の上限については現像容器内の剤面が下がり過ぎて白抜けや搬送スクリュー跡のムラが画像に出てしまうといった画像不良が発生しない回転速度、つまりは300rpmにおける現像剤量の最小値よりも、回転速度の上限における現像剤量の最大値が略同じで少し大きくなるような値に決定している。ここで、劣化前と劣化後とで、最小速度を変えずに最大速度を変える制御としたのは、劣化後と劣化前の排出特性をより近づけることが出来るためであり、その方がより望ましい。
【0084】
尚、本実施例では、最小速度を300rpmとして最大速度を平均印字率によって変えているが、これに限定されず最大速度、最小速度を共に平均印字率によって変えても良い。
【0085】
また、上述した制御テーブルに限定されず、排出口の位置や現像剤の特性等によって現像剤排出特性が異なる場合には、平均印字率が高いほどスクリュー回転速度の使用する最大速度と最小速度の幅を大きくする制御テーブルを用いても良い。
【0086】
また、ビデオカウント値から5本の折れ線のうち最もビデオカウント値が近いものを選んではいるが、これに限定されず更に多い折れ線や少ない折れ線を用いた制御テーブルとしても良い。
【0087】
また、本実施例では既に出力した1000枚分の印字率の平均値により現像剤の劣化による流動性の変化を考慮しているが、これに限定されず、現像スリーブ回転時間とトナー消費量を用いて求めても、現像剤の劣化度を考慮できるため良い。
【0088】
(その他の実施例)
本実施例では、実施例1〜3で用いた現像剤と異なる特性の現像剤を用い、排出口の位置や形状についても変えることで、実施例1〜3とは異なる排出特性の現像装置であることを特徴としている。具体的には、現像剤が劣化すると劣化していないときに比べて、現像剤の排出特性が小さくなる現像装置である。
【0089】
このような現像装置においては、現像剤量の変動を抑制する搬送スクリューの制御について、実施例2とは異ならせる必要がある。以下、搬送スクリューの制御について詳しく説明する。本実施例における画像形成装置の構成等は実施例1、実施例2と同様であるため、これらの説明については省略する。
【0090】
実施例2では、印字率20%を閾値とし、この閾値を超えた場合には500rpm、超えない場合には300rpmとすることで、この2つの回転速度を用いて、現像容器内の現像剤量の変動を抑える構成としていた。本実施例では、印字率20%を閾値とするのは同様であるが、この閾値を超えた場合には300rpm、超えない場合には500rpmとすることで、この2つの回転速度を用いて、現像容器内の現像剤量の変動を抑える構成としている。というのも、本実施例では、現像剤が劣化すると劣化していないときに比べて、現像剤の排出特性が小さくなる現像装置であるため、現像剤劣化が進んだ場合には、300rpmではなく、より排出特性が大きい500rpmに切り替えることで、現像容器内の現像剤量の変動を抑えられるためである。
【符号の説明】
【0091】
1 感光ドラム
4 現像装置
20 現像容器
21a 現像室
21b 撹拌室
22a 第1の搬送スクリュー
22b 第2の搬送スクリュー
24 現像スリーブ
25 ブレード
30 補給口
31 ホッパー
40 排出口
42 回収容器
50 マグネットローラ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を形成する像担持体と、
トナーとキャリアを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、二成分現像剤を担持搬送して静電潜像をトナー像とする現像剤担持体と、前記現像容器に設けられ前記現像容器に収容された二成分現像剤を搬送して循環させる現像剤搬送手段と、前記現像容器に設けられ前記現像容器に収容された二成分現像剤を排出する排出口と、を備える現像装置と、
出力する画像のトナー消費量に関する情報を検出する検出手段と、
前記トナー消費量に関する情報に基づいて前記現像容器に現像剤を補給する補給手段と、を有する画像形成装置において、
前記検出手段により検出した1枚又は複数枚分のトナー消費量が所定の閾値を超えるときに、超えないときと比べて前記現像剤搬送手段の搬送速度が速くなるように制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記搬送手段を複数の搬送速度に切り替えることができ、前記現像容器内の現像剤劣化度によって前記現像剤搬送手段の搬送速度の最大速度と最小速度を変えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像装置が、現像剤が劣化すると劣化していないときに比べて前記排出口から排出される二成分現像剤の排出特性が大きい場合に、前記制御手段は、前記現像容器内の現像剤劣化度が高いときには、現像剤劣化度が低いときに比べて、前記現像剤搬送手段の搬送速度の最大速度と最小速度の差を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、現像剤劣化度が高いときには、現像剤劣化度が低いときに比べて、前記現像剤搬送手段の搬送速度の最大速度を大きくすることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検出手段は出力する画像のビデオカウント値を検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像剤劣化度は、前記検出手段により検出するトナー消費量と、出力する紙サイズとから求めた所定枚数分の平均印字率であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像剤劣化度は、前記検出手段により検出するトナー消費量と、前記現像剤搬送手段の駆動時間とから求めることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
静電潜像を形成する像担持体と、
トナーとキャリアを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、二成分現像剤を担持搬送して静電潜像をトナー像とする現像剤担持体と、前記現像容器に設けられ前記現像容器に収容された二成分現像剤を搬送して循環させる現像剤搬送手段と、前記現像容器に設けられ前記現像容器に収容された二成分現像剤を排出する排出口と、を備える現像装置と、
前記現像容器内の現像剤劣化度に関する情報を検出する検出手段と、
前記現像容器に二成分現像剤を補給する補給手段と、を有する画像形成装置において、
前記検出手段により検出した前記現像容器内の現像剤劣化度に基づいて前記現像剤搬送手段の搬送速度を切り替え制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記現像装置が、現像剤が劣化すると劣化していないときに比べて前記排出口から排出される二成分現像剤の排出特性が大きい場合に、前記制御手段は、前記現像容器内の現像剤劣化度が所定の閾値を超えるときに、超えないときと比べて前記現像剤搬送手段の搬送速度を速くすることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像容器は、前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像室と現像剤を撹拌する撹拌室とに隔壁により隔てられ、前記現像剤搬送手段は、前記現像室及び前記撹拌室にそれぞれ備えられた現像剤搬送部材であり、前記制御手段は、一方又は他方又は両方の該現像剤搬送部材の搬送速度を制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記排出口は前記現像室の側面で、かつ前記現像室の現像剤搬送方向において中間点よりも下流側に位置することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記排出口から排出される二成分現像剤の現像剤排出特性に基づいて前記現像剤搬送手段の搬送速度を定めた制御テーブルにより、前記現像剤搬送手段を制御することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−163628(P2012−163628A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22043(P2011−22043)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】