説明

画像形成装置

【課題】維持回復動作に伴う液体消費量が多くなる。
【解決手段】タイマT1による第1空吐出動作後の第1経過時間が第1閾値時間以上で第2閾値未満ときに第1空吐出動作を実施し、タイマT1をリセットする。タイマT2による第2空吐出動作後の第2経過時間が第2閾値時間以上で第3閾値未満になったときに、第2の空吐出動作を実施し、タイマT1、T2をリセットする。タイマT3によるクリーニング動作後の第3経過時間が第3閾値時間以上になったときに、クリーニング動作を実施し、タイマT1、T2及びT3をリセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として、例えばインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置にあっては、記録ヘッドのノズルの吐出安定性を維持回復するための維持回復機構を備えている。維持回復動作としては、記録ヘッドのノズル面を吸引キャップで封止して吸引手段を駆動することで記録ヘッドのノズルから液体を吸引排出させる吸引回復動作、記録ヘッドに液体を加圧供給してノズルから液体を排出させる加圧回復動作、空吐出受けや吸引キャップに対して画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を吐出する空吐出動作などがある。
【0004】
従来、維持回復方法として、ノズルからインクを吐出させる通常フラッシング動作、ノズルから通常フラッシング動作より少量のインクを吐出させる微量フラッシング動作、ノズルからインク液を吸引して吐出させる吸引吐出動作の何れかのクリーニング動作を有し、クリーニング動作の終了後の経過時間をタイマで計測し、タイマによる計測時間が所定時間になったときに、微量フラッシング動作を行ってタイマをリセットすることで、待機状態が継続した場合に通常フラッシング動作や吸引吐出動作を繰り返すことによる液体消費量の低減を図るものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−118317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成にあっては、電源オン状態で装置が待機状態にあるとき、所定時間毎に微量フラッシング動作を繰り返すことになるため、微量フラッシング動作で記録ヘッドのノズルの状態を回復できる程度の滴吐出は必要になり、維持回復動作に伴う液体消費量の低減効果は十分でない。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、維持回復動作に伴う液体消費量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャップで密封し、前記キャップに接続された吸引手段を駆動して、前記記録ヘッドから液体を吸引する吸引動作を行う吸引制御手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作を行う空吐出制御手段と、
前記空吐出動作を行った後の第1経過時間を計測する第1計測手段と、
前記吸引動作を行った後の第2経過時間を計測する第2計測手段と、を備え、
前記吸引動作による液体排出量は、前記空吐出動作による液体排出量よりも多く設定されており、
前記第1経過時間が予め定めた第1閾値以上になったときに前記空吐出動作を行い、
前記第2経過時間が前記第1閾値より大きい予め定めた第2閾値以上になったときに、前記吸引動作を行う
構成とした。
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャップで密封し、前記キャップに接続された吸引手段を駆動して、前記記録ヘッドから液体を吸引する吸引動作を行う吸引制御手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作を行う空吐出制御手段と、
予め定めた第1空吐出量で前記空吐出動作を行った後の第1経過時間を計測する第1計測手段と、
前記第1空吐出量よりも多い予め定めた第2空吐出量で前記空吐出動作を行った後の第2過時間を計測する第2計測手段と、
前記吸引動作を行った後の第3経過時間を計測する第3計測手段と、を備え、
前記吸引動作による液体排出量は、前記第2空吐出量での前記空吐出動作による液体排出量よりも多く設定されており、
前記第1経過時間が予め定めた第1閾値時間以上であって予め定めた第2閾値時間未満になったときに前記第1空吐出動作を行い、
前記第2経過時間が前記第2閾値時間以上であって予め定めた第2閾値時間未満になったときに前記第2空吐出動作を行い、
前記第3経過時間が予め定めた前記第3閾値以上になったときに前記吸引動作を行う
構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像形成装置によれば、途中で空吐出動作が行われても最終的には吸引動作が行われるので、所定時間毎に繰り返す空吐出動作による液体排出量を少なくしても、記録ヘッドのノズルの状態を回復することができ、維持回復動作に伴う液体消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】インク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図4】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図5】維持回復動作に係わる部分の説明に供するブロック説明図である。
【図6】維持回復動作の制御の説明に供するフロー図である。
【図7】維持回復動作の実施タイミングの一例の説明に供する説明図である。
【図8】維持回復動作の実施タイミングの他の例の説明に供する説明図である。
【図9】画像形成装置の電源ON期間とOFF期間における維持回復動作の一例の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
【0013】
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに架け渡されたガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0014】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0015】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0016】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0017】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0018】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0019】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0020】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0021】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0022】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0023】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0024】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0025】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0026】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0027】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0028】
次に、インク供給排出系について図3を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ(メインタンク)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ポンプユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、送液ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する送液動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す逆送動作とを行なえるようにしている。
【0029】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃液は廃液タンク100に排出される。また、空吐出を吸引キャップ82aに対して行うこともでき、この場合も空吐出された廃液は廃液タンク100に排出される。
【0030】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する押圧部材である大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気開放機構207を開放することができる。さらに、装置本体側にはヘッドタンク35の検知フィラ205を検知する光学センサからなるセンサ301が設けられている。
【0031】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明に係る制御(吸引制御、空吐出制御)を実行させるプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0032】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、ヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する大気開放ソレノイド302を駆動するソレノイド駆動部512と、送液ポンプ241を駆動するポンプ駆動部516と、インクカートリッジ10に設けられて不揮発性メモリ(ここでは、EEPROM)521に対するデータの読み出し及び書き込みのための通信を行うカートリッジ通信部522などを備えている。
【0033】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0034】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0035】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0036】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0037】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0038】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。このI/O部513に入力されるセンサ群515には、前述したヘッドタンク35の検知フィラ205を検知する検知センサ301、検知電極ピン208a、208bなどの信号も入力される。
【0039】
また、この制御部500は、時間を計測する計時手段(RTC)520を備えている。
【0040】
次に、この制御部による維持回復動作に係わる部分について図5のブロック説明図を参照して説明する。
【0041】
まず、本実施形態では、維持回復動作として、第1空吐出動作、第2空吐出動作、クリーニング動作を有している。第1空吐出動作では、記録ヘッド34から空吐出受け84又は吸引キャップ82aに対して予め定めた第1空吐出量での空吐出を行う。第2空吐出動作では、記録ヘッド34から空吐出受け84又は吸引キャップ82aに対して予め定めた第2空吐出量での空吐出を行う。クリーニング動作では、記録ヘッド34のノズル面を吸引キャップ82aにて覆い、維持回復機構81の吸引ポンプ812を駆動することで記録ヘッド34のノズルからインクを吸引する。
【0042】
ここで、空吐出量は、空吐出する滴数或いは滴量で定めることができる。また、クリーニング動作による液体排出量は、第2空吐出動作での液体排出量(第2空吐出量)よりも多く設定されている。
【0043】
図5において、タイマ701は、第1計測手段であり、第1空吐出量での第1空吐出動作を行った後の第1経過時間T1を計測する。タイマ702は、第2計測手段であり、第1空吐出量よりも多い第2空吐出量での第2記空吐出動作を行った後の第2経過時間T2を計測する。タイマ703は、クリーニング動作(吸引動作)を行った後の第3経過時間T3を計測する。これらのタイマ701、702、703はRTC520からの現在時刻を読み込んで経過時間を計測する。
【0044】
比較部704は、タイマ701〜703の各計測時間である経過時間T1〜T3と予め定めた第1、第2、第3閾値時間t1〜t3とを比較し、比較結果を印刷及び維持回復制御部705に与える。
【0045】
維持回復制御部705は、吸引制御手段及び空吐出制御手段を兼ねており、比較部704の比較結果に基づいて、第1、第2空吐出動作、クリーニング動作を制御し、第1、第2空吐出動作、クリーニング動作を行ったときにはタイマ701〜703の所要のタイマをリセットする。また、印刷が行われたときにも、タイマ701〜703のリセットを行う。
【0046】
次に、維持回復動作の制御について図6のフロー図を参照して説明する。なお、図6中では、分かり易くするために、タイマ701をタイマT1、タイマ702をタイマT2、タイマ703をタイマT3と表記している。
【0047】
クリーニング動作が完了したときには、タイマ701〜703をリセットすることで経過時間T1〜T3をリセットする。その後、タイマ701〜703のカウントを開始して経過時間T1〜T3の計測を開始する。
【0048】
そして、タイマ701の計測結果である第1経過時間T1が予め定めた第1閾値時間t1以上になった(T1≧第1閾値t1)か否かを判別する。
【0049】
ここで、第1経過時間T1が第1閾値時間t1以上であれば、吸引キャップ82aに対して第1空吐出動作を行い、その後タイマ701(経過時間T1)をリセットし、吸引キャップ82a内のインクを吸引排出して、再度キャッピングを行う。
【0050】
これに対し、第1経過時間T1が第1閾値時間t1以上でなければ、タイマ702の計測結果である第2経過時間T2が予め定めた第2閾値時間t2(t2>t1)以上になった(T2≧第2閾値t2)か否かを判別する。
【0051】
そして、第2経過時間T2が第2閾値時間t2以上であれば、吸引キャップ82aに対して第2空吐出動作を行い、その後タイマ701及び702(経過時間T1、T2)をリセットし、吸引キャップ82a内のインクを吸引排出して、再度キャッピングを行う。
【0052】
これに対し、第2経過時間T2が第2閾値時間t2以上でなければ、タイマ703の計測結果である第3経過時間T3が予め定めた第3閾値時間t3(t3>t2)以上になった(T3≧第3閾値t3)か否かを判別する。
【0053】
そして、第3経過時間T3が第3閾値時間t3以上であれば、吸引キャップ82aによって記録ヘッド34をキャッピングしてクリーニング動作を行い、その後タイマ701〜703(経過時間T1〜T3)をリセットし、再度キャッピングを行う。
【0054】
つまり、タイマ701で第1空吐出動作を行った後の第1経過時間T1を、タイマ702で第2空吐出動作を行った後の第2経過時間T3を、タイマ703でクリーニング動作を行った後の経過時間T3を計測する。なお、経過時間の計測は各記録ヘッド34について行う。
【0055】
一方、第1閾値時間t1は第2閾値時間t2より短く、第2閾値時間t2は第3閾値時間t3より短く設定している。
【0056】
そこで、タイマ701〜703による計測結果である経過時間T1〜T3と第1〜3閾値時間t1〜t3とを比較し、タイマ601による第1経過時間T1が第1閾値時間t1以上で第2閾値時間t2未満のときに第1空吐出動作を実施し、第1経過時間T1をリセットする。タイマ702による第2経過時間T2が第2閾値時間t2以上で第3閾値時間t3未満になったときに、第2空吐出動作を実施し、第1、第2経過時間T1、T2をリセットする。タイマ703による第3経過時間T3が第3閾値時間t3以上になったときに、クリーニング動作を実施し、第1ないし第3経過時間T1、T2及びT3をリセットする。
【0057】
また、前記経過時間に応じたクリーニング動作以外の要因で実行されるクリーニング動作や印刷動作が実施された場合にも、計測している第1ないし第3経過時間T1〜T3をリセットする。つまり、第1閾値時間t1未満のタイミングで印刷が繰返されている場合には、経過時間T1〜T3が各閾値時間t1〜t3を超える前にタイマ701〜703がリセットされるので、前記経過時間に応じた維持回復動作は実施されないことになる。
【0058】
また、第1、第2空吐出動作やクリーニング動作のタイミングで、ヘッドタンク35内の負圧が正常に維持できているかどうかの確認を実施することで、定期的にヘッドタンク35内の状態を把握することもできる。負圧が正常に維持できているか否かは、ヘッドタンク35にある電極ピンが導通していないか否か、検知フィラ205が所定位置以上の位置で検知していないか否かにより判断することができる。
【0059】
次に、維持回復動作の実施タイミングの異なる例について図7及び図8を参照して説明する。
【0060】
図7及び図8を参照して、実線は本実施形態を、破線は比較例をそれぞれ示している。ここで、比較例では、1回当たりの空吐出によってノズルのインクの乾燥度合いを元の状態に復元できる空吐出量としている。これに対して、本実施形態では、比較例の空吐出量よりも少ない空吐出量、例えば、比較例の0.8倍程度の空吐出量としている。
【0061】
ここでは説明を簡単にするため、前記第2空吐出動作を実施しないとして、図7の例では、5回の第1空吐出動作を行った後、前回のクリーニング動作を終了後からの経過時間が第3閾値時間以上に達してクリーニング動作が行われている。また、図8の例では、4回の第1空吐出動作を行った後、前回のクリーニング動作を終了後からの経過時間が第3閾値時間以上に達する前に印刷指示がなされて印刷が行われている。
【0062】
この結果、比較例では空吐出動作が実施されることに乾燥度合いは初期状態に復元されるが、本実施形態では空吐出動作を行っても徐々に乾燥度合いが増加する。このとき、液体消費量を比較すると、本実施形態では比較例の0.8倍になり、液体消費量を低減することができる。なお、本実施形態では、印刷前時点での記録ヘッド34のノズル内のインク乾燥度合いは乾燥が高くなっているが、画像品質に影響を及ぼさない範囲で乾燥している分には影響はないので、その範囲になるように空吐出動作による空吐出量を設定すればよい。
【0063】
また、印刷を実施した時点でも用紙への滴吐出、印刷中の定期的な空吐出動作が実施されることにより、経過時間によるノズル乾燥度合いはリセットされているため、印刷完了後に経過時間T1〜T3をリセットする。
【0064】
上述したように、第2空吐出動作で排出する液体排出量は第1空吐出動作で排出するインク量よりも多く、吸引動作(クリーニング動作)で排出する液体排出量は第2空吐出動作で排出する液体排出量(空吐出量)よりも多い。そのため、第2閾値時間は第1閾値時間に第2吐出量と第1空吐出量との比率を乗じた数値以上とする。
【0065】
仮に、第2空吐出量が第1空吐出量の1.5倍とすると、第2閾値時間は第1閾値時間の1.5倍以上の時間に設定する。同様に、第3閾値時間は第1閾値時間にクリーニング動作による液体排出量と第1空吐出量との比率を乗じた値以上とする。また、第2閾値時間及び第3閾値時間は、第1閾値時間の2倍以上とすることが好ましい。
【0066】
また、空吐出量を環境センサ(例えば温度センサ)の検知結果により変化させる場合は、それに応じて閾値時間も変化する方が好ましい。
【0067】
次に、画像形成装置の電源ON期間とOFF期間における維持回復動作の一例について図9を参照して説明する。
【0068】
電源ON期間と電源OFF期間とでは、印刷を実施されるタイミングが異なるので、経過時間によるトータルの動作としては異なる。
【0069】
電源ON期間は、どのタイミングで印刷を実施されてもよいように、経過時間T1〜T3の計測結果が第1閾値時間t1を経過したときに第1空吐出動作を、第2閾値時間t2が経過したときに第2空吐出動作を、第3閾値時間t3が経過したときにクリーニング動作を実行する。
【0070】
例えば、t3=2×t2=4×t1の場合、第1閾値時間t1を経過したときにはトータルで第1空吐出動作が1回実施され、第2閾値時間t2を経過したときには第1空吐出動作1回と第2空吐出動作1回が実施され、第3閾値時間t3まで経過したときにはトータルで第1空吐出動作2回と第2空吐出動作1回、クリーニング動作1回が実施される。
【0071】
電源OFF期間は、電源ONタイミングがタイマ701〜703の計測時間である経過時間が第1閾値時間t1以上第2閾値時間t2未満の間であるときには第1空吐出動作を、電源ONタイミングが第2閾値時間t2以上第3閾値時間t3未満であるときには第2空吐出動作を、電源ONタイミングが第3閾値時間t3以上のときにはクリーニング動作を実行する。
【0072】
液体排出量の多い動作を優先して実施するため、第2空吐出動作が実施されたときには第1空吐出動作は実施せず、クリーニング動作が実施されたときには第1、第2空吐出動作は実施しない。
【0073】
例えば、t3=2×t2=4×t1の場合、第1閾値時間t1を経過したときにはトータルで第1空吐出動作1回が実施され、第2閾値時間t2まで経過したときにはトータルで第2空吐出動作1回が実施され、第3閾値時間t3まで経過したときにはトータルでクリーニング動作1回が実施される。
【0074】
上記実施形態では、空吐出動作を空吐出量が異なる第1、第2空吐出動作に分ける例で説明しているが、空吐出動作としては1種類の空吐出動作とすることもできる。
【0075】
この場合には、空吐出動作を行った後の経過時間を第1経過時間として計測する計測手段を第1計測手段とし、吸引動作を行った後の経過時間を第2経過時間として計測する計測手段を第2計測手段とし、吸引動作による液体排出量は空吐出動作による液体排出量よりも多く設定し、第1経過時間が予め定めた第1閾値以上になったときに空吐出動作を行い、第2経過時間が予め定めた第2閾値以上になったときに吸引動作を行うようにすればよい。
【0076】
そして、第2閾値時間は第1閾値時間に、空吐出動作による液体排出量と吸引動作による液体排出量との比率を乗じた時間以上とすることが好ましい。また、第2閾値時間は空吐出動作による液体排出量と吸引動作による液体排出量との比率2倍以上の時間であることが好ましい。
【0077】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0078】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0079】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0080】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0081】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
81 維持回復機構
500 制御部
600 ホスト(情報処理装置)
T1〜T3 タイマ
600 維持回復制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャップで密封し、前記キャップに接続された吸引手段を駆動して、前記記録ヘッドから液体を吸引する吸引動作を行う吸引制御手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作を行う空吐出制御手段と、
前記空吐出動作を行った後の第1経過時間を計測する第1計測手段と、
前記吸引動作を行った後の第2経過時間を計測する第2計測手段と、を備え、
前記吸引動作による液体排出量は、前記空吐出動作による液体排出量よりも多く設定されており、
前記第1経過時間が予め定めた第1閾値以上になったときに前記空吐出動作を行い、
前記第2経過時間が前記第1閾値より大きい予め定めた第2閾値以上になったときに、前記吸引動作を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記空吐出動作を行った後は前記第1計測手段の計測結果をリセットし、
前記吸引動作を行った後は前記第1計測時間の計測結果及び第2計測手段の計測結果をリセットする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2閾値時間は前記第1閾値時間に、前記空吐出動作による液体排出量と前記吸引動作による液体排出量との比率を乗じた時間以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2閾値時間は前記空吐出動作による液体排出量と前記吸引動作による液体排出量との比率2倍以上の時間であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャップで密封し、前記キャップに接続された吸引手段を駆動して、前記記録ヘッドから液体を吸引する吸引動作を行う吸引制御手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない空吐出滴を吐出させる空吐出動作を行う空吐出制御手段と、
予め定めた第1空吐出量で前記空吐出動作を行った後の第1経過時間を計測する第1計測手段と、
前記第1空吐出量よりも多い予め定めた第2空吐出量で前記空吐出動作を行った後の第2過時間を計測する第2計測手段と、
前記吸引動作を行った後の第3経過時間を計測する第3計測手段と、を備え、
前記吸引動作による液体排出量は、前記第2空吐出量での前記空吐出動作による液体排出量よりも多く設定されており、
前記第1経過時間が予め定めた第1閾値時間以上であって予め定めた第2閾値時間未満になったときに前記第1空吐出動作を行い、
前記第2経過時間が前記第2閾値時間以上であって予め定めた第2閾値時間未満になったときに前記第2空吐出動作を行い、
前記第3経過時間が予め定めた前記第3閾値以上になったときに前記吸引動作を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記第1空吐出動作を行った後は前記第1計測手段の計測結果をリセットし、
前記第2空吐出動作を行った後は前記第1計測手段の計測結果及び第2計測手段の計測結果をリセットし、
前記吸引動作を行った後は前記第1計測手段の計測結果、第2計測手段の計測結果及び第3計測手段の計測結果をリセットする
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2閾値時間は、前記第1閾値時間に、前記第1空吐出動作による液体排出量と前記第2空吐出動作による排出量との比率を乗じた時間以上であり、
前記第3閾値時間は、前記第1閾値時間に前記第1空吐出動作による液体排出量と前記吸引動作による液体排出量との比率を乗じた時間以上である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第2閾値時間は、前記第1空吐出動作による液体排出量と前記第2空吐出動作による排出量との比率の2倍以上の時間であり、
前記第3閾値時間は、前記第1空吐出動作による液体排出量と前記吸引動作による液体排出量との比率2倍以上の時間である
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39686(P2013−39686A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176267(P2011−176267)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】