説明

画像表示装置、印刷装置および画像キャッシュ方法

【課題】表示装置に表示する画像のキャッシュ動作を改善する。
【解決手段】メインプロセッサは、液晶モニタに表示する第1の画像データの選択を受け付けると、選択された画像データをメモリカードから入力する。キャッシュプロセッサは、メインプロセッサが入力した画像データを共有メモリにキャッシュする。キャッシュプロセッサがキャッシュ処理を行っている間に、ユーザから第2の画像データの選択を受け付けると、メインプロセッサは、第1の画像データのキャッシュ処理をキャッシュプロセッサから引き継いで実行する。その間に、キャッシュプロセッサは、新たに選択された第2の画像データのキャッシュを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示する画像をキャッシュする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及が進む複合機タイプの印刷装置は、スキャナやメモリカードリーダ、表示装置等の様々なデバイスを備えている。表示装置には、メモリカードから読み取った画像が表示される。ユーザは表示装置に表示された画像の中から、印刷を所望する画像を任意に選択することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−111843号公報
【0004】
一般的に、メモリカードのアクセス速度は、内部メモリほどは速くない。そのため、表示装置に表示する画像がユーザによって切り換えられる度にメモリカードから画像を読み取っていては、その入力処理やデコード処理に時間がかかり、動作速度が緩慢になってしまう。そこで、一度、メモリカードから入力した画像については、内部のメモリにキャッシュする手法を採用することが考えられる。このような手法を採用すれば、印刷装置は、同じ画像を再表示する場合には、内部メモリにキャッシュされた画像を利用することができるので、表示時間を大幅に短縮することができる。
【0005】
ところが、このような印刷装置において、未キャッシュの画像をメモリカードから読み込んで内部メモリにキャッシュしている最中に、表示画像が切り換えられると、切り換え前の画像のキャッシュ処理が途中で終了してしまうことになる。そうすると、同じ画像を再表示する場合に、キャッシュされたデータを正常に利用できない場合が生じてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、表示装置に表示する画像のキャッシュ動作を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を踏まえ、本発明の一態様である画像表示装置を次のように構成した。
【0008】
すなわち、画像データを表示装置に表示する画像表示装置であって、所定の記録媒体に記録された複数の画像データの中から前記表示装置に表示する画像データの選択を受け付ける受付部と、前記選択された画像データを前記記録媒体から読み込んでメモリにキャッシュするキャッシュ処理を実行するキャッシュ部と、前記キャッシュ部による一の画像データの前記キャッシュ処理中に、前記受付部が他の画像データの選択を受け付けた場合に、前記キャッシュ部による前記一の画像データの前記キャッシュ処理を中断させ、該中断した前記一の画像データの前記キャッシュ処理を前記キャッシュ部から引き継いで実行する引継処理部とを備えることを要旨とする。
【0009】
上記構成の画像表示装置によれば、先に選択された画像データをメモリにキャッシュしている間に、ユーザが他の画像データを選択した場合であっても、引継処理部によって、先に選択された画像データのキャッシュ処理を引き継いで実行することができる。そのため、キャッシュ部は、後から選択された画像データのキャッシュ処理を即座に開始することが可能になる。この結果、先に選択された画像データおよび後に選択された画像データともに、メモリに正常にキャッシュすることが可能になる。
【0010】
上記構成の画像表示装置において、更に、前記メモリにキャッシュされた前記画像データを参照して、該画像データの解析処理を行う画像解析部と、前記解析処理の結果に応じて、前記画像データの画質を調整する画質調整部とを備えるものとしてもよい。
【0011】
このような構成であれば、メモリにキャッシュされた画像データを利用して、画像の解析を行い、その解析結果に応じて、画像データの画質を向上させることが可能になる。また、画像解析には、メモリにキャッシュされた画像データを用いるので、高速に解析処理を行うことが可能になる。
【0012】
上記構成の画像表示装置において、前記画像解析部は、前記キャッシュ部による前記一の画像データの前記キャッシュ処理中に、前記受付部が前記他の画像データの選択を受け付けた場合には、前記引継処理部によってキャッシュされた前記一の画像データに対する前記解析処理を行った後に、前記他の画像データに対する前記解析処理を行うものとしてもよい。
【0013】
このような構成であれば、表示装置に表示される画像データのすべてについて、キャッシュ処理と画像解析とを行うことができる。
【0014】
上記構成の画像表示装置において、前記キャッシュ部は、前記選択された画像データの解像度を、前記表示装置の解像度に応じて設定された解像度に減じた上で、前記キャッシュ処理を実行するものとしてもよい。
【0015】
このような構成であれば、キャッシュする画像データの容量を低減することができるので、メモリ容量を節減することができる。
【0016】
上記構成の画像表示装置において、前記キャッシュ部は、一のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することで実現され、前記引継処理部は、他のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することで実現されるものとしてもよい。
【0017】
このような構成であれば、キャッシュ処理と引継処理とを複数のプロセッサで分担して効率的に行うことが可能になる。
【0018】
上記構成の画像表示装置において、前記選択された画像データが、前記メモリにキャッシュされている場合に、該メモリから前記選択された画像データを入力して前記表示装置に表示し、前記メモリにキャッシュされていない場合には、前記記録媒体から前記選択された画像データを入力して前記表示装置に表示する表示制御部を備えるものとしてもよい。
【0019】
このような構成であれば、メモリにキャッシュされた画像データを利用して、画像の表示を高速に行うことが可能になる。
【0020】
本発明は、上述したいずれかの構成の画像表示装置と、前記表示装置に表示された画像データに対して印刷枚数の設定を行う設定部と、前記印刷枚数が1枚以上に設定された画像データの印刷を行う印刷部とを備える印刷装置として構成することもできる。本発明によれば、表示装置に表示された画像を見ながら、印刷を所望する画像を容易に選択することができる。
【0021】
なお、本発明は、上述した画像表示装置や印刷装置としての構成のほか、画像キャッシュ方法や、コンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、上述した本発明の作用・効果を一層明らかにするため、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.印刷装置の構成:
B.印刷処理:
C.割り込み操作がない場合の各プロセッサの処理:
D.割り込み操作が行われた場合の各プロセッサの処理:
【0023】
A.印刷装置の構成:
図1は、本発明の実施例としての印刷装置10の外観図である。印刷装置10は、光学的に画像を読み込むスキャナ20や、メモリカードMCを挿入するためのメモリカードスロット30を備えている。印刷装置10は、スキャナ20によって取り込んだ画像や、メモリカードMCから読み込んだ画像を印刷用紙Pに印刷することができる。
【0024】
印刷装置10は、操作パネル40と液晶モニタ50とを備えている。操作パネル40には、画像切換ボタン41と、印刷枚数設定ボタン43と、印刷ボタン44とが備えられている。液晶モニタ50には、メモリカードMCから入力した画像が表示される。ユーザは、画像切換ボタン41を用いて、液晶モニタ50に表示させる画像を切り換えることができる。このとき、ユーザは、表示された画像毎に印刷枚数設定ボタン43を用いて印刷枚数を設定することができる。印刷枚数の設定が終了し、ユーザによって印刷ボタン44が押されると、印刷装置10は、指定された画像を指定された枚数分、印刷用紙Pに印刷する。
【0025】
図2は、印刷装置10の内部構成を示すブロック図である。図示するように、印刷装置10は、メインプロセッサ100と複数のサブプロセッサ200a〜200e(中間制御プロセッサ200a、デコードプロセッサ200b、キャッシュプロセッサ200c、画質調整プロセッサ200d、ハーフトーンプロセッサ200e)を備えている。これらのプロセッサは、1つの半導体パッケージの中に複数のCPUコアを含むマルチプロセッサとして構成されている。これらのプロセッサは、所定のバスを介して相互に接続されており、種々のデータやコマンドを相互に授受することができる。各プロセッサを結ぶバスとしては、例えば、リングバスを採用することができる。
【0026】
メインプロセッサ100およびサブプロセッサ200a〜200eは、図示していないメモリコントローラを介して、同一の共有メモリ70に接続されている。そのため、各プロセッサは、相互にデータの転送を行うことなく、共有メモリ70内のデータを共同して利用することができる。共有メモリ70としては、例えば、DDR−SDRAMを用いることができる。
【0027】
メインプロセッサ100には、カードインタフェース35と、液晶コントローラ55と、入力インタフェース45と、スキャナ制御回路25と、印刷機構60と、ROM80とが接続されている。
【0028】
カードインタフェース35は、メインプロセッサ100からの指示に応じて、メモリカードスロット30に挿入されたメモリカードMCに対するデータの読み書きを制御する回路である。
【0029】
液晶コントローラ55は、液晶モニタ50を制御して、メインプロセッサ100から指示された画像の表示を制御する回路である。本実施例の液晶モニタ50は、QVGA(320×240ドット)の解像度を有している。もちろん、他の解像度の液晶モニタ50を採用してもよい。
【0030】
入力インタフェース45は、操作パネル40を用いたユーザからの入力操作を受け付け、これをメインプロセッサ100に伝達するための回路である。
【0031】
スキャナ制御回路25は、スキャナ20を制御して、読み取った画像をメインプロセッサ100に転送するための回路である。
【0032】
印刷機構60は、インク吐出機構や紙送り機構、ヘッド搬送機構を備えるとともに、これらの動作を制御する回路を備えている。印刷機構60は、メインプロセッサ100からの指示に応じて、印刷用紙にインクを吐出して画像を形成する。印刷機構60としては、例えば、インクジェット方式の機構を採用することができる。
【0033】
ROM80には、メインプロセッサ100とサブプロセッサ200a〜200eとが実行する制御プログラムが記憶されている。メインプロセッサ100は、印刷装置10の電源投入時に、この制御プログラムを読み込んで、共有メモリ70にロードする。各プロセッサは、共有メモリ70にロードされた制御プログラムを実行することで、以下に説明する種々の機能をソフトウェア的に実現する。
【0034】
メインプロセッサ100は、ソフトウェア的に実現される機能部として、ファイル管理部110と、表示制御部120と、操作受付部130と、画像解析部140と、引継処理部150と、印刷制御部160とを備えている。
【0035】
ファイル管理部110は、カードインタフェース35を制御して、メモリカードMCに対する画像データの入出力を管理する。メモリカードMCには、画像データが、JPEG形式の画像ファイルとして記録されている。ファイル管理部110は、このファイル形式に従って、メモリカードMCに対する画像データの入出力を管理する。
【0036】
表示制御部120は、液晶コントローラ55を制御して、液晶モニタ50にメモリカードMCから入力した画像データや印刷に関するGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を表示する。画像データを表示する場合には、表示制御部120は、液晶モニタ50の解像度に合わせて画像のリサイズを行う。
【0037】
図3は、表示制御部120によって液晶モニタ50に画像データとGUIとが表示された例を示す説明図である。図示するように、液晶モニタ50には、画像データが全面に表示されるとともに、右上隅に印刷枚数が表示される。更に、画像データの下部には、操作パネル40の説明が表示される。本実施例では、この操作パネル40の説明に示すように、画像切換ボタン41の右方向のボタンが押されると、表示される画像が、次にメモリカードMCに記録されている画像に進み、左向きのボタンが押されると、直前にメモリカードMCに記録されている画像に戻る。画像切換ボタン41によるこのような操作を、以下では、「切り換え操作」と呼ぶ。また、印刷枚数設定ボタン43の上方向のボタンが押されると、現在表示中の画像の印刷枚数が増加し、下方向のボタンが押されると印刷枚数が減少する。こうして増減させられた印刷枚数は、液晶モニタ50の右上部に表示される。画像の表示中に、ユーザによって印刷ボタン44が押されると、印刷枚数を1枚以上に設定した画像が印刷される。
【0038】
操作受付部130は、上述した画像切換ボタン41や印刷枚数設定ボタン43、印刷ボタン44の操作の受け付けを行う。
【0039】
画像解析部140は、ファイル管理部110によって入力した画像を解析する処理を行う。この解析処理では、入力した画像の平均輝度や最小輝度、最大輝度、顔領域や赤目の有無を判別する。この解析処理は、メインプロセッサ100が他の処理を行っていないアイドル時間に実行される。アイドル時間とは、例えば、メインプロセッサ100が、サブプロセッサに処理を依頼してその応答を待っている時間や、ユーザからの操作を待っている時間である。画像解析部140は、液晶モニタ50に表示された画像のすべてについて、この画像解析を行い、その解析結果を、各画像データのファイル名に関連付けて共有メモリ70に記憶する。
【0040】
引継処理部150は、表示制御部120によって画像が完全に表示される前にユーザが表示画像の切り換え操作を行った場合に、デコードプロセッサ200bが実行するデコード処理や、キャッシュプロセッサ200cが実行するキャッシュ処理を中断させ、これらの処理をデコードプロセッサ200bやキャッシュプロセッサ200cに代わって引き継いで実行する。画像が完全に表示される前にユーザが表示画像の切り換え操作を行うことを、以下では、「割り込み操作」と呼ぶ。割り込み操作があった場合に、引継処理部150が行う処理内容については、後で詳細に説明する。
【0041】
印刷制御部160は、ユーザによって印刷枚数の設定された画像を、印刷機構60を制御して印刷する。
【0042】
ここで、各サブプロセッサの役割について順に説明する。中間制御プロセッサ200aは、他のサブプロセッサ200b〜200eの管理を行うとともに、メインプロセッサ100が液晶モニタ50に表示する画像をリサイズする処理を行う。
【0043】
デコードプロセッサ200bは、JPEG形式でエンコードされた画像データのデコードを行う。具体的には、デコードプロセッサ200bは、8×8画素のMCUというブロック単位で周波数領域にエンコードされているJPEGデータを、複数のラインからなる所定のバンド幅単位で、RGBデータに変換する処理を行う。このとき、デコードプロセッサ200bは、共有メモリ70内の所定のデコード領域を一時バッファとして用いる。
【0044】
キャッシュプロセッサ200cは、デコードプロセッサ200bによってデコードされた画像データを、共有メモリ70に一時的に蓄えるキャッシュ処理を行う。このとき、キャッシュプロセッサ200cは、デコードされた画像を、所定の解像度(例えば、VGA(640*480))に減ずる処理も行う。こうすることで、共有メモリ70の容量を節減することができる。リサイズ後の解像度は、液晶モニタ50の解像度よりも大きなサイズであり、後述する画像解析が適切に行うことのできるサイズに設定されている。本実施例では、共有メモリ70には、リサイズされた画像が10枚、キャッシュ可能であるものとする。キャッシュプロセッサ200cは、キャッシュする画像の枚数が、この数を超える場合には、古い画像から削除を行い、新たな画像をキャッシュする。
【0045】
画質調整プロセッサ200dは、メインプロセッサ100の画像解析部140による画像解析の結果に応じて、印刷画像に対し、所定の画像処理を行う。例えば、画像解析部140によって最小輝度値と最大輝度値とが解析されていれば、これらの値に基づいて、自動的にコントラストを調整する処理を行う。また、赤目が検出されていれば、赤目を低減する画像処理を行う。なお、画質調整プロセッサ200dによって画像処理を行うか否かは、ユーザが任意に設定することができる。また、画質調整プロセッサ200dは、液晶モニタ50によって表示する画像に対しても、印刷画像と同様の画像処理を施すものとすることができる。こうすることで、画像処理が施された場合の印刷の結果を、液晶モニタ50で事前に確認することができる。
【0046】
ハーフトーンプロセッサ200eは、メモリカードMCから入力した画像データを印刷データに変換するハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、RGB形式の画像データをCMY形式に色変換し、さらに、色変換された画像データを二値化して、ドットのオンオフを表すデータに変換する処理である。なお、印刷機構60が、印刷媒体に形成するドットのサイズを複数種類に可変できる場合には、ハーフトーンプロセッサ200eは、二値化ではなくそのサイズの種類に応じた多値化を行う。
【0047】
B.印刷処理:
図4は、印刷装置10が実行する印刷処理の概略を示すフローチャートである。この印刷処理は、ユーザによる操作パネル40の所定の操作によって、メモリカードMCに記録された画像を印刷するモードが選択された場合に実行される処理である。
【0048】
この処理が実行されると、メインプロセッサ100は、まず、表示する画像を特定する(ステップS10)。この印刷処理が開始された直後は、メモリカードMCに最初に記録された画像が表示画像として特定される。
【0049】
次に、メインプロセッサ100は、共有メモリ70の中を検索し、ステップS10で特定した画像が共有メモリ70内にキャッシュされているかを判断する(ステップS15)。キャッシュされていると判断した場合には(ステップS15:Yes)、共有メモリ70からその画像を入力する(ステップS20)。そして、その画像を表示制御部120によって液晶モニタ50に表示する(ステップS30)。
【0050】
これに対して、共有メモリ70内に画像がキャッシュされていないと判断した場合には、メインプロセッサ100は、ファイル管理部110によってメモリカードMCから、ステップS10で特定した画像を入力し(ステップS25)、その画像を液晶モニタ50に表示する(ステップS30)。ステップS25では、メインプロセッサ100は、サブプロセッサ(具体的には、中間制御プロセッサ200a、デコードプロセッサ200b、キャッシュプロセッサ200c)に、画像のデコード処理やキャッシュ処理を依頼する。また、このときメインプロセッサ100は、デコードプロセッサ200bによってデコードされた画像データを用いて、画像解析部140により画像解析を行う。これらの各プロセッサによる処理の流れの詳細については後述する。
【0051】
ステップS30によって、液晶モニタ50に画像を表示すると、メインプロセッサ100は、操作受付部130によってユーザが表示画像の切り換え操作を行ったかを判断する(ステップS35)。切り換え操作があった場合には、メインプロセッサ100は、処理をステップS10に戻し、切り換え後の画像を表示画像として特定する。一方、切り換え操作がない場合には、メインプロセッサ100は、操作受付部130によって、ユーザからの印刷枚数の設定を受け付ける(ステップS40)。
【0052】
印刷枚数の設定を受け付けると、メインプロセッサ100は、ユーザが印刷ボタン44を押したかを操作受付部130によって判断する(ステップS45)。印刷ボタン44が押されなければ、処理をステップS35に戻し、再度、表示画像の切り換え操作があったかを判断する。
【0053】
上記ステップS45において、印刷ボタン44が押されたと判断すれば(ステップS45:Yes)、メインプロセッサ100は、印刷枚数が1枚以上に設定された画像データをメモリカードMCから入力する(ステップS50)。そして、その画像データの画像解析結果に基づき、画質調整プロセッサ200dに画質を調整させる(ステップS55)。その後、ハーフトーンプロセッサ200eにハーフトーン処理を行わせ、印刷制御部160によって印刷機構を制御しつつ印刷を行う(ステップS60)。
【0054】
以上、本実施例の印刷装置10による印刷処理の流れを説明した。上述した説明では、ステップS30において画像が表示された後に、ステップS35で、表示画像の切り換え操作があったかを判断している。しかし、ユーザは、このようなタイミングではなく、画像のデコード処理中など、画像が完全に表示される前に、画像の切り換え操作を行う場合がある。そこで、以下では、ステップS25およびステップS30における処理中に、画像の切り換え操作が行われた場合の処理の詳細を説明する。なお、以下では、画像が完全に表示される前にユーザが表示画像を切り換える操作のことを、「割り込み操作」という。
【0055】
C.割り込み操作がない場合の各プロセッサの処理:
割り込み操作があった場合の説明に先立ち、まず、以下では、割り込み操作がない場合の各プロセッサの処理内容について説明する。
【0056】
図5は、割り込み操作がない場合において、図4のステップS25およびステップS30で実行される各プロセッサの処理内容を示す説明図である。図示するように、メインプロセッサ100は、まず、中間制御プロセッサ200aに対して、表示対象として特定された画像(ここでは、「画像A」とする)のデコード処理を依頼する(ステップSa10)。すると、中間制御プロセッサ200aは、この依頼をデコードプロセッサ200bに転送する(ステップSa12)。デコードプロセッサ200bは、この依頼を受けると、共有メモリ70内のデコード領域を用いてバンド毎に画像Aのデコードを行う(ステップさSa14)。
【0057】
デコードプロセッサ200bは、バンド毎に画像Aをデコードすると、1つのバンドのデコードが終了する毎に、中間制御プロセッサ200aに、デコードが終了した旨を報告する(ステップSa16)。すると、中間制御プロセッサ200aは、この報告を受けて、キャッシュプロセッサ200cにデコード後の画像をキャッシュするよう指示を与える(ステップSa18)。キャッシュプロセッサ200cは、このキャッシュ指示を受けると、デコード後の画像を1バンド分、デコード領域から読み取り、これを、所定のサイズ(本実施例では、VGAサイズ)にリサイズして、キャッシュ領域に書き込む(ステップSa20)。キャッシュプロセッサ200cによるこのキャッシュ動作は、画像A内のすべてのバンドのデコードが完了するまで繰り返し行われる。
【0058】
キャッシュプロセッサ200cは、上記ステップSa20において、1バンド分のキャッシュ処理を終了すると、1バンド分のキャッシュが完了した旨を中間制御プロセッサ200aに通知する(ステップSa22)。中間制御プロセッサ200aは、この通知を受けると、共有メモリ70のデコード領域からデコード済みの画像を1バンド分読み取り、これを液晶モニタ50の解像度(本実施例では、QVGAサイズ)に合わせてリサイズする(ステップSa24)。そして、このリサイズ後の画像データを1バンド分、メインプロセッサ100に転送する(ステップSa26)。
【0059】
メインプロセッサ100は、中間制御プロセッサ200aから画像データの転送を受けると、表示制御部120によってその画像を液晶モニタ50に表示する(ステップSa28)。以上で説明した各プロセッサによる処理が、画像内の全てのバンドについて行われると、共有メモリ70への画像Aのキャッシュと、液晶モニタ50への画像Aの表示が完了することになる。
【0060】
なお、上述した処理において、メインプロセッサ100は、ステップSa10において中間制御プロセッサ200aに画像のデコードを依頼すると、ユーザから画像の切り換え操作がない限り、ステップSa26において画像データの転送を受けるまで、実質的に何も処理を行わないアイドル状態になる。そこで、メインプロセッサ100は、この時間を利用して、画像解析部140によって、現在キャッシュ処理中の画像データをキャッシュ領域から読み込み、かかる画像の解析を行う(ステップSa30)。こうすることで、図4のステップS60における印刷の開始時に画像の解析を行う必要がなくなるため、印刷処理全体の速度を向上させることができる。
【0061】
以上、割り込み操作がない場合の各プロセッサの処理内容を説明した。次に、図5中に「ステップSa32」として示したタイミングで、割り込み操作が行われた場合の各プロセッサの処理内容を説明する。
【0062】
D.割り込み操作が行われた場合の各プロセッサの処理:
図6は、割り込み操作が行われた場合の各プロセッサの処理内容を示す説明図である。メインプロセッサ100は、操作受付部130によってユーザから割り込み操作があったことを検出すると、図示するように、まず、次に表示する画像Bのデコードを中間制御プロセッサ200aに依頼する(ステップSa40)。すると、中間制御プロセッサ200aは、この依頼をデコードプロセッサ200bに転送する(ステップSa42)。デコードプロセッサ200bは、この依頼を受けると、画像Aのデコードを中断し、画像Bのデコードを開始する(ステップSa44)。
【0063】
メインプロセッサ100は、上記ステップSa40において、中間制御プロセッサ200aに画像Bのデコード処理を依頼すると、画像Aのキャッシュ領域から、キャッシュ途中のデータを読み込んで、画像解析部140によって、画像Aの解析処理を行う(ステップSa62)。そして、メインプロセッサ100は、画像Aのデコード処理の中断に伴って残存した画像Aの未デコード部分をメモリカードMCから読み込み、引継処理部150を用いて、その残存部分のデコード処理を行う(ステップSa64)。デコード処理を行うと、引継処理部150は、デコードした部分のサイズをリサイズし(ステップSa66)、リサイズされた画像データを用いて残りの画像解析を行う(ステップSa68)。更に、引継処理部150は、リサイズされたデコード済みのデータを、画像Aのキャッシュ領域に保存する。こうすることで、メインプロセッサ100は、割り込み操作によって中断された画像Aのデコード処理、キャッシュ処理、画像解析をすべて完了することができる。
【0064】
メインプロセッサ100が、上述した処理(ステップSa62〜Sa70)を実行している間、デコードプロセッサ200bは、画像Bのデコードを行い(ステップSa44)、キャッシュプロセッサは、デコードされた画像Bのリサイズおよびキャッシュ領域への書込を行う(ステップSa50)。また、中間制御プロセッサ200aは、デコードプロセッサ200bとキャッシュプロセッサ200cへの指示および各種通知の受領(ステップSa42,Sa46,Sa48,Sa52)を行うとともに、表示用画像のリサイズを行う(ステップSa54)。つまり、メインプロセッサ100以外のプロセッサは、図5に示した通常時の処理と同様の処理を画像Bについて行うのである。
【0065】
メインプロセッサ100は、中間制御プロセッサ200aから表示用画像の転送を受けると、上述したステップSa62〜Sa70までの処理を中断し、受信した画像Bの表示を行う。この表示処理が終わると、メインプロセッサ100は、上述したステップSa62〜Sa70の処理を、画像A全体について完了するまで実行する。
【0066】
メインプロセッサ100は、画像Aについてのデコードおよびキャッシュが完了すると、今度は、画像Bのキャッシュデータを用いて、画像解析を開始する(ステップSa72)。この解析途中で、ユーザによって、更に、割り込み操作が行われれば、各プロセッサは、図6に示した処理を繰り返し実行する。
【0067】
なお、図6には、画像Bの表示が完了した後に、画像Bの画像解析を行う例を示している。しかし、画像Aの解析、デコード、キャッシュの各処理が終了するタイミングは、必ずしも、画像Bの表示が完了するタイミングと一致する訳ではない。そこで、画像Aについての各処理が終了するタイミングが、画像Bの表示が完了するタイミングよりも早ければ、メインプロセッサ100は、画像Bの表示が完了する前に、画像Bについての解析を開始する。また、画像Aについての各処理が終了するタイミングが、画像Bの表示が完了するタイミングよりも遅ければ、これらの画像Aについての処理が終了し次第、画像Bの解析処理を始める。このようにすることで、メインプロセッサ100は、画像の表示と、画像の解析とを非同期に実行することができ、効率的に、印刷処理を進めることができる。
【0068】
以上で説明した本実施例の印刷装置10によれば、ユーザによる割り込み操作によって、表示中の画像のキャッシュ処理が中断したとしても、キャッシュプロセッサ200cに代わってメインプロセッサ100がこのキャッシュ処理を引き継ぐことができる。そのため、わずかな間でも液晶モニタ50に表示させた画像であれば、共有メモリ70内に画像全体が正常にキャッシュされることになる。この結果、ユーザが、次々に表示画像を切り換えたとしても、キャッシュされた画像を利用して、画像の再表示を高速に行うことが可能になる。
【0069】
また、本実施例では、画像データの解析を、メインプロセッサ100のアイドル時間に行うものとした。そのため、印刷の開始時に画像の解析を行う必要がなく、印刷処理を高速に行うことが可能になる。また、本実施例では、メインプロセッサ100は、キャッシュプロセッサ200cからキャッシュ処理を引き継いだ場合であっても、画像の解析を完了させてから、引継処理を開始する。そのため、液晶モニタ50に表示された画像すべてについて画像解析を行うことができる。この結果、表示された画像の中で、どの画像が印刷対象として選択された場合であっても、適切に画質の調整を行うことが可能になる。
【0070】
また、本実施例では、画像のデコードを行うプロセッサや、画像解析を行うプロセッサとは異なるプロセッサによって、デコード後の画像のキャッシュ処理を行うものとした。そのため、画像データのキャッシュ処理に伴い、デコード処理が停止することや、画像解析の中断してしまうことを防止することができ、効率的に、画像の表示を行うことが可能になる。
【0071】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】印刷装置の外観図である。
【図2】印刷装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】表示制御部によって液晶モニタに画像データとGUIとが表示された例を示す説明図である。
【図4】印刷処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】割り込み操作がない場合の各プロセッサの処理内容を示す説明図である。
【図6】割り込み操作が行われた場合の各プロセッサの処理内容を示す説明図である。
【符号の説明】
【0073】
10…印刷装置
20…スキャナ
25…スキャナ制御回路
30…メモリカードスロット
35…カードインタフェース
40…操作パネル
41…画像切換ボタン
43…印刷枚数設定ボタン
44…印刷ボタン
45…入力インタフェース
50…液晶モニタ
55…液晶コントローラ
60…印刷機構
70…共有メモリ
80…ROM
100…メインプロセッサ
110…ファイル管理部
120…表示制御部
130…操作受付部
140…画像解析部
150…引継処理部
160…印刷制御部
200a…中間制御プロセッサ
200b…デコードプロセッサ
200b…サブプロセッサ
200c…キャッシュプロセッサ
200d…画質調整プロセッサ
200e…ハーフトーンプロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを表示装置に表示する画像表示装置であって、
所定の記録媒体に記録された複数の画像データの中から前記表示装置に表示する画像データの選択を受け付ける受付部と、
前記選択された画像データを前記記録媒体から読み込んでメモリにキャッシュするキャッシュ処理を実行するキャッシュ部と、
前記キャッシュ部による一の画像データの前記キャッシュ処理中に、前記受付部が他の画像データの選択を受け付けた場合に、前記キャッシュ部による前記一の画像データの前記キャッシュ処理を中断させ、該中断した前記一の画像データの前記キャッシュ処理を前記キャッシュ部から引き継いで実行する引継処理部と
を備える画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置であって、更に、
前記メモリにキャッシュされた前記画像データを参照して、該画像データの解析処理を行う画像解析部と、
前記解析処理の結果に応じて、前記画像データの画質を調整する画質調整部と
を備える画像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示装置であって、
前記画像解析部は、前記キャッシュ部による前記一の画像データの前記キャッシュ処理中に、前記受付部が前記他の画像データの選択を受け付けた場合には、前記引継処理部によってキャッシュされた前記一の画像データに対する前記解析処理を行った後に、前記他の画像データに対する前記解析処理を行う
画像表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像表示装置であって、
前記キャッシュ部は、前記選択された画像データの解像度を、前記表示装置の解像度に応じて設定された解像度に減じた上で、前記キャッシュ処理を実行する
画像表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像表示装置であって、
前記キャッシュ部は、一のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することで実現され、
前記引継処理部は、他のプロセッサが所定の制御プログラムを実行することで実現される
画像表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像表示装置であって、更に、
前記選択された画像データが、前記メモリにキャッシュされている場合に、該メモリから前記選択された画像データを入力して前記表示装置に表示し、前記メモリにキャッシュされていない場合には、前記記録媒体から前記選択された画像データを入力して前記表示装置に表示する表示制御部を備える
画像表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の画像表示装置と、
前記表示装置に表示された画像データに対して印刷枚数の設定を行う設定部と、
前記印刷枚数が1枚以上に設定された画像データの印刷を行う印刷部と、
を備える印刷装置。
【請求項8】
表示装置に表示する画像データをキャッシュする画像キャッシュ方法であって、
所定の記録媒体に記録された複数の画像データの中から前記表示装置に表示する画像データの選択を受け付け、
前記選択された画像データを前記記録媒体から読み込んでメモリにキャッシュするキャッシュ処理を所定のプロセッサによって実行し、
前記所定のプロセッサによる一の画像データの前記キャッシュ処理中に、他の画像データの選択を受け付けた場合に、前記所定のプロセッサによる前記一の画像データの前記キャッシュ処理を中断させ、該中断させた前記一の画像データの前記キャッシュ処理を前記所定のプロセッサから他のプロセッサに引き継がせて実行させる
画像キャッシュ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−245018(P2008−245018A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84468(P2007−84468)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】