説明

画像表示装置、電子機器、画像表示システム、画像取得方法、プログラム

【課題】表示部の微小な光透過部を通して裏面に配置した撮像装置で表示面側の被写体を撮像するとき、光透過部で回折現象が生じることにより画像に現われる影響を抑制する。
【解決手段】画像表示装置1Aは、画像表示部10の複数の光透過部を通して撮像装置20により取得された画像情報に対して、光透過部による回折効果によって画像情報に現われる影響を信号処理の側面からの対処により抑制する回折補正部100を備える。回折補正部100は、画像を構成する信号成分の一部のみを処理対象とすることで全信号成分を対象として処理するよりも高速処理にする。たとえば、特定領域の画像情報のみを対象とする。さらには、画像情報を表す複数の信号の内の1つのみを処理対象とする。輝度情報との相関が強い信号成分(典型的には緑色成分)のみや輝度情報のみを処理対象とすることで、補正効果の低減を回避しつつ補正処理の高速化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、電子機器、画像表示システム、画像取得方法、プログラムに関する。より詳細には、画像表示部の背面側に撮像装置を配置して表示面側の被写体を撮像する仕組みに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置と撮像装置を組み合わせることで、画像表示装置に画像表示以外の機能を付加する試みが盛んに行なわれている(たとえば特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−176151号公報
【特許文献2】特開2005−010407号公報
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、画像表示装置の画像表示部を構成する画素の間に微小レンズを有する開口部を複数設け、これら複数の開口部を通過した光を複数のカメラで撮像する。ここで、画像表示装置を見る使用者の顔を複数の異なる角度から撮像し、得られた複数の画像を処理して使用者を正面から捉えた像を生成する。
【0005】
特許文献2に開示されている技術では、たとえば、その図15、図16に示されているように、複数の画素内に設けられた1つ光透過部を通過した光に基づき撮像装置において撮像する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術では、光透過部が微小な場合、光透過部において回折現象が生じる結果、撮像装置に結像する像にボケが生じ、その影響で撮像画像は鮮明さに欠ける場合がある。
【0007】
また、特許文献1に開示された技術にあっては、微小レンズを開口部に設ける必要があり、しかも、正確に像を撮像装置に結ぶためには高精度の微小レンズが必要とされるため、画像表示装置の製造コストの増加を招く。しかも、使用者の正面の顔を撮像しているわけではなく、異なる角度から撮像した複数の画像から正面の画像を作り出すため、実写ではなく、いわゆるCG(コンピュータグラフィックス)画像を相手側に提供するため、実際には違和感が大きい。
【0008】
特許文献2に開示されている技術も、特許文献1に開示されている技術と同様に、光透過部が微小な場合、光透過部において回折現象が生じる結果、撮像装置に結像する像にボケが生じ、その影響で撮像画像は鮮明さに欠ける場合がある。加えて、複数の画素内に設けられた1つ光透過部を通過した光に基づき撮像装置において撮像するので、撮像装置に十分な光量の光を集光させることが困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表示部の微小な光透過部を通して裏面に配置した撮像装置で表示面側の被写体を撮像するときに、光透過部で回折現象が生じることにより画像に現われる影響を抑制できる仕組みを提供することを主の目的とする。
【0010】
また、本発明は、好ましくは、低コストで製造することができ、画像表示部に正対する使用者の画像を容易に取得し得る仕組みを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、好ましくは、撮像装置に十分な光量の光を集光させることができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、表示素子を含む画素が複数配列されており、背面側に画像を撮像する撮像部(あるいは撮像装置:以下この項において同様)が配置可能になっているとともに、撮像部と対応する領域に複数の光透過部が設けられている画像表示部と、複数の光透過部を通して撮像部により取得された画像情報に対して、光透過部による回折効果によって画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行なう回折補正部と、を備えるものとした。光透過部において回折現象が生じることにより画像に与える影響を信号処理の側面からの対処により抑制するものである。
【0013】
ここで、回折補正部は、画像を構成する信号成分の一部のみを回折補正処理の対象とすることで、全信号成分を対象として処理する場合よりも処理の高速化を図る。「信号成分の一部」を如何様に決めるかは種々の態様を採り得るが、本発明では、先ず、撮像部により取得された画像情報から抽出した特定領域の画像情報のみを対象とする手法を採り、処理対象面積を削減することで、処理の高速化を図る。この際には、予め定められている特定の対象物(人物、人物の顔、人物の顔の特注部位など)の領域を特定領域として処理することで、感覚的な補正効果を劣化させずに、処理の高速化を図るとよい。
【0014】
さらに好ましくは、撮像部により取得された画像情報を表す複数の信号の内の少なくとも1つ(ただし全てではない)について回折補正処理を行なうとよい。この際には、輝度情報との相関が強い信号成分(典型的には緑色成分)のみや、輝度情報のみについて回折補正処理を行なうことで、補正効果の低減を回避しつつ補正処理の高速化を図るとよい。
【0015】
好ましくは、外光の波長分布を測定する波長分布測定部をさらに設け、波長分布測定部により測定された外光の波長分布を参照して回折補正処理を行なうようにするとよい。
【0016】
好ましくは、光透過部そのものの側面から回折現象を抑制するようにするとよい。たとえば、撮像部と対応する光透過領域における光透過部の配置状態(光透過部の大きさ、形状、分布(配置ピッチ)など)を不均一にするのとよい。あるいは、光透過部を第1光透過部および第2光透過部で構成し、第1光透過部を取り囲むように第2光透過部を配置してもよい。
【0017】
さらに好ましくは、光透過部を通過した光を撮像部に集光する集光部を画像表示部と撮像部との間に配置することで、光透過部を通過した光が撮像部に確実に集光するようにするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、画像表示部の背面側に撮像部(あるいは撮像装置:以下この項において同様)を配置し、光透過部を通して表示面側の被写体を撮像するので、ディスプレイに正対している使用者の画像を容易に取得できる。
【0019】
この際に、光透過部において回折現象が生じることにより画像に与える影響を信号処理の側面からの対処により抑制できる。このとき、画像の全領域ではなく特定領域の画像情報のみを処理対象とすることで、全信号成分を対象として処理する場合よりも処理時間を短縮できる。
【0020】
また、好ましくは、画像を構成する複数の信号成分の一部のみを回折補正処理の対象とすれば、全信号成分を対象として処理する場合よりも処理時間を短縮できる。この際に、輝度信号成分や輝度との相関が強い信号成分(たとえば緑色成分)のみを回折補正処理の対象とすれば、処理時間を短縮できることに加えて、全信号成分を対象として処理する場合と遜色のない(同等の)精度で補正処理ができる。
【0021】
さらに好ましくは、光透過領域に配置する光透過部そのものの側面からの対処も行なうようにすれば、光透過部において回折現象が生じることを予め抑制しておくことができる。その結果、回折現象が生じることにより画像に与える影響をより確実に抑制できる。
【0022】
好ましくは、画像表示部と撮像部との間に集光部を配置するようにすれば、光透過部を通過した光が撮像部に確実に集光されるので撮像部に十分な光量の光を集光させることができる。正確に像を撮像部の撮像面に結ぶために高精度の微小レンズを必要とせず、画像表示装置の製造コストの増加を招くことがなく、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、第1実施形態の画像表示装置および画像表示システムの概念図である。
【図2】図2は、画像表示部を構成する複数の画素の最も典型的な配置の模式図である。
【図3】図3は、撮像装置の配置位置と表示される画像との関係を説明する概念図である。
【図4】図4は、画像表示装置による撮像イメージを表す図である。
【図5】図5は、画像表示部の詳細を説明する図である。
【図6】図6は、回折現象による撮像画像への影響を説明する模式図である。
【図7】図7は、撮像装置の手前にガラス板を配置して撮像した画像例を示す図である。
【図8】図8は、第1実施形態の画像表示装置のブロック図である。
【図9】図9は、第1実施形態の画像表示システムのブロック図である。
【図10】図10は、光透過部(開口部)から回折光強度とMTFを求める概念図である。
【図11】図11は、光透過部の形状の一例を模式的に示す図(その1)である。
【図12】図12は、光透過部の形状の一例を模式的に示す図(その2)である。
【図13】図13は、第2実施形態の画像表示装置および画像表示システムの概念図である。
【図14】図14は、第2実施形態の画像表示装置のブロック図である。
【図15】図15は、第2実施形態の画像表示システムのブロック図である。
【図16】図16は、回折補正処理の第1例を説明する図である。
【図17】図17は、回折補正処理の第2例を説明する図である。
【図18】図18は、回折補正処理の第3例を説明する図である。
【図19】図19は、回折補正処理の第4例を説明する図である。
【図20】図20は、回折補正処理の第5例を説明する図である。
【図21】図21は、光透過部の第1変形例(その1&2)を示す図である。
【図22】図22は、光透過部の第1変形例(その3)と第2変形例を示す図である。
【図23】図23は、光透過部の第3変形例(その1&2)を示す図である。
【図24】図24は、本実施形態の画像表示装置が適用される電子機器の一例を示す図である。
【図25】図25は、画像表示装置の第1変形例を示す図である。
【図26】図26は、画像表示システムの第1変形例を示す図である。
【図27】図27は、画像表示装置の第2変形例を示す図である。
【図28】図28は、画像表示システムの第2変形例を示す図である。
【図29】図29は、画像表示装置およびシステムの第3変形例(その1)を示す図である。
【図30】図30は、画像表示装置およびシステムの第3変形例(その2)を示す図である。
【図31】図31は、画像表示装置の第4変形例を示す図である。
【図32】図32は、画像表示システムの第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について実施形態別に区別する際には、A,B,…などのように大文字の英語の参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。各実施形態における種々の数値や材料は例示であり、それらに限定されるものではない。
【0025】
説明は以下の順序で行なう。
1.基本概念(全体概要、回折補正処理、波長分布測定、光透過領域、撮像装置、画像表示部)
2.第1実施形態(全体概要、撮像装置の配置位置、画像表示部の断面構造、回折補正に対応した構成、回折現象の対策原理)
3.第2実施形態(第1実施形態+波長分布測定処理)
4.回折補正処理(第1例:処理面積縮小の手法)
5.回折補正処理(第2例:第1例+全信号)
6.回折補正処理(第3例:第1例+全信号+色変換)
7.回折補正処理(第4例:第1例+特定の色信号→輝度情報と相関ある信号)
8.回折補正処理(第5例:第1例+輝度情報、第1例〜第5例の纏め)
9.光透過部の変形例
第1変形例(ランダム配置)
第2変形例(二重環状構造)
第3変形例(井桁状やL字状など)
10.電子機器のモニタ装置の代替
11.総括(第1変形例:位置検出、第2変形例:3次元画像表示+位置検出、第3変形例:TV会議システム、第4変形例:デジタルミラー)
【0026】
<基本概念>
[全体概要]
本実施形態の撮像装置付き画像表示装置(以下単に「画像表示装置」と記す)にあっては、画像表示部の背面に撮像装置(あるいは撮像部:以下同様)を配置し、画像表示部の撮像装置と対応する光透過領域部分に、微小な光透過部を複数設ける。そして、各光透過部を通して表示面側の被写体を撮像する。
【0027】
光透過部を通過した光が撮像装置に集光される。画像表示部の背面側に撮像装置が配置されているので、ディスプレイに正対している使用者の顔、目、動作などを撮像装置によって正確に撮像することができる。画像表示部(表示装置の表示パネル)に裏面まで光が到達するような光透過部を設けて、対応する位置に撮像装置を設置することにより、ディスプレイに正対している使用者の顔、目、動作などを撮像装置で撮像することで正確に把握することができるので、表示装置の付加価値を簡便かつ安価に高めることができる。
【0028】
必須ではないが、画像表示部と撮像装置との間に集光部を配置することで、光透過部を通過した光が撮像装置に確実に集光されるようにする。集光部を配置することで、正確に像を撮像装置に結ぶために高精度の微小レンズを必要とせず、画像表示装置の製造コストの増加を招くことがないし、撮像装置に十分な光量の光を集光させることができる。
【0029】
ここで、本実施形態の画像表示装置では、光透過領域を構成する光透過部の開口が小さい場合、開口を通して画像を撮像すると、いわゆる回折現象が生じる結果、撮像装置に結像する像にボケが生じる場合や鮮明さに欠ける場合がある。
【0030】
この対策として、本実施形態では、先ず、信号処理の側面から、光透過部において生じた回折現象が撮像画像に与える影響を補正する。好ましくは、光透過部そのものの側面(たとえば形状、大きさ、分布など)から、回折現象が生じることを抑制する。
【0031】
[回折補正処理]
信号処理の側面から、光透過部において生じた回折現象による影響を補正するべく、本実施形態の画像表示装置および画像表示システムは、回折補正部を備えた構成とする。なお、このような構成のものを「第1実施形態の構成」と称する。
【0032】
回折補正部は、撮像装置を介して取得された撮像画像情報やその他の画像データに対して、光透過領域を構成する光透過部において生じる回折の補正を施す。因みに「その他の画像データ」は、たとえば、撮像装置によって使用者などを撮像して得られた画像表示部に表示すべき画像データである。以下では、撮像画像情報と「その他の画像データ」を纏めて、単に「画像データ」と称することもある。
【0033】
たとえば、光透過部(の開口)の一部または全部を、画像表示部の第1の方向および第2の方向に沿って周期的に設ける。このとき、第1の方向に沿った光透過部の長さをLtr-1、第1の方向に沿った画素のピッチをPpx-1としたとき、第1の方向の線開口率Ltr-1/Ppx-1は、「Ltr-1/Ppx-1≧0.5」を満足するようにするのがよく、さらに好ましくは、「Ltr-1/Ppx-1≧0.8」を満足するようにするのがよい。線開口率Ltr-1/Ppx-1の上限値には、光透過部が形成できる限りにおいて、特段の制約はない。ここで、第1の方向に沿った光透過部の長さLtr-1は、第1の方向に光透過部を射影したときの、その形状に対応する線分の1周期当たりの長さを意味し、第1の方向に沿った画素のピッチPpx-1は、第1の方向に沿った画素の1周期当たりの長さを意味する。
【0034】
また、第2の方向に沿った光透過部の長さをLtr-2、第2の方向に沿った画素のピッチをPpx-2としたとき、第2の方向の線開口率Ltr-2/Ppx-2は、「Ltr-2/Ppx-2≧0.5」を満足するようにするのがよく、さらに好ましくは、「Ltr-2/Ppx-2≧0.8」を満足するようにするのがよい。線開口率Ltr-2/Ppx-2の上限値には、光透過部が形成できる限りにおいて、特段の制約はない。ここで、第2の方向に沿った光透過部の長さLtr-2は、第2の方向に光透過部を射影したときの、その形状に対応する線分の1周期当たりの長さを意味し、第2の方向に沿った画素のピッチPpx-2は、第2の方向に沿った画素の1周期当たりの長さを意味する。
【0035】
第1の方向と第2の方向とは、直交している場合もあるし、場合によっては、90度以外の角度で交わっている場合もある。後者の場合、光透過部の一部または全部は、画像表示部の第1の方向および第2の方向だけでなく、第3の方向、第4の方向、…に沿って周期的に設けられている場合もあり、このような場合には、各方向の内の少なくとも2方向に沿った光透過部の長さと、これらの少なくとも2方向に沿った画素のピッチとが、前記の関係(具体的には0.5倍以上、より好ましくは0.8倍以上)を満足していることが好ましい。
【0036】
回折補正部における回折補正処理としては、撮像装置で取得された画像の鮮鋭度(解像度)を評価するレスポンス関数(空間周波数特性を示すもの)を用いて、その振幅(絶対値)であるMTF(modulation transfer function)を指標値とする処理にするとよい。公知のようにレスポンス関数は点像または線像強度分布をフーリエ変換して求められるものである。光透過部を通して撮像装置で撮像することにより画像に現れる解像度低下の影響(画像のボケの程度)は光透過部(微小開口部)の配置パターンと対応している。たとえば、MTFにおける高周波成分の大小により解像度低下の影響(画像のボケの程度)を評価できる。
【0037】
したがって、光透過部の配置パターンを参照して撮像画像に対して逆フーリエ変換を施せば、光透過部を通して撮像装置で撮像することにより画像に現れる解像度低下の影響が排除された画像を復元できる。つまり、撮像装置により取得された画像情報をフーリエ変換し、フーリエ変換した情報を、光透過部の配置状態と対応したレスポンス関数(ここではMTF)を用いて、逆フーリエ変換することで、回折補正処理を行なうとよい。
【0038】
たとえば、光透過部の配置パターン(形状、大きさ、分布など)に基づき算出されるMTF逆変換処理(画像復元処理)を画像情報に対して施すことが好ましい。MTF逆変換処理では、撮像画像の信号成分についてMTF形状データを用いてMTF逆変換処理を行なう。この際には、回折補正部に記憶部を設けて、光透過部の形状、大きさ、分布などの配置パターンを表すMTF形状データを予め記憶部に記憶しておくとよい。レスポンス関数の特定は、画像(を表す信号)をフーリエ解析するフーリエ変換法を適用すればよい。
【0039】
ここで示した回折補正処理の手法は、光透過部を通して撮像装置で撮像することにより画像に現れる解像度低下の影響(画像のボケの程度)を補正する手法の一例に過ぎず、その他の公知の手法を適用してもよい。
【0040】
回折補正部は、たとえば、入出力部を有するCPUとメモリから構成された回路として画像表示装置や画像表示装置を搭載した電子機器に設けることが考えられる。また、画像表示装置と撮像装置を別体(着脱可能)に構成する場合には、画像表示装置の裏面に配置される撮像装置(電子機器の一例)に回折補正部を設けることも考えられる。また、画像表示装置にパーソナルコンピュータ(電子計算機)などの周辺機器が接続された画像表示システムにあっては周辺機器に回折補正部の機能を持たせることも考えられる。
【0041】
MTF逆変換処理を画像情報に対して施すに当たっては、画像情報を構成する各信号成分(たとえばR,G,Bの色画像情報)のそれぞれについて処理する方法や信号成分の一部について処理することで補正処理時間の短縮を図る方法が考えられる。
【0042】
前者の場合は画像情報を構成する全ての信号成分についてMTF逆変換処理を施すので、処理負荷は掛かるが補正効果は後者よりも高い。一方、後者の場合は画像情報を構成する一部の信号成分についてMTF逆変換処理を施すので、補正効果は前者よりも低いが処理負荷は低減される。
【0043】
後者の場合には、本実施形態では、先ず、撮像装置で取得された撮像画像の全領域の信号成分ではなく一部の領域の信号成分について処理する方法(「処理面積縮小の手法」と称する)を採ることで、補正処理時間の短縮を図る。つまり、処理面積の側面から一部の信号成分についてMTF逆変換処理を施す。
【0044】
処理面積縮小の手法において、MTF逆変換処理の対象とする画像の一部の領域を「特定領域」と称し、撮像画像の全領域から「特定領域」を除いた領域を「背景領域」と称する。撮像画像を「特定領域」と「背景領域」に分離して「特定領域」のみにMTF逆変換処理を施す。その後、回折補正済みの「特定領域」の画像(その信号成分)と回折補正処理を施していない「背景領域」の画像(その信号成分)を合成して処理を完了させる。
【0045】
撮像画像の全領域から分離(抽出)された「特定領域」は、撮像画像全体と比べると面積は小さいので、撮像画像の全領域を対象として処理する場合と比較して計算量が少なくなり、補正処理時間は短縮されるから、処理を高速化できる。
【0046】
「特定領域」を如何様に設定するかは種々の観点が考えられる。たとえば、撮像画像の中央部や隅など場所の側面から規定する手法(「場所重視の手法」と称する)と、使用者など予め定められている特定の(着目すべき)対象物の側面から規定する手法(「被写体重視の手法」と称する)に大別できる。後者の場合、全画面を対象として回折補正処理を行なう場合と比べて、たとえば人物像に対してのみ回折補正処理を行なうため高速処理が可能である。
【0047】
場所重視の手法では、撮像装置により取得された画像情報から抽出するべき場所を予め決めておく、あるいは幾つかの候補場所を提示して使用者が選択できるようにしてもよい。場所重視の手法ではさらに、撮像画像から「特定領域」を抽出する際の形状(たとえば矩形や丸など)を規定することが考えられる。抽出する際の形状に関しても、予め決めておく、あるいは幾つかの候補形状を提示して使用者が選択できるようにしてもよい。
【0048】
回折補正処理では、一例として後述のように、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)およびその逆変換(IFFT)を実行する。FFT処理やIFFT処理のし易さを考えると、「特定領域」を抽出する際の領域形状は矩形とすることが好ましく、予め「矩形」と決めておく手法だけにしてもよい。
【0049】
被写体重視の手法では、さらに、被写体の一部の領域の側面から規定する手法(「特定部位重視の手法」と称する)を採ることが考えられる。たとえば光透過部によるボケのある画像(解像度が劣化した不鮮明な画像)から人物像を鮮明にしようとしたとき、人物の全体が鮮明でなくても、顔全体や、さらには、目、鼻、口などの顔の特徴を表わす特定部位のみを鮮明とする処理にしても違和感はない。こうすることで、処理対象となる画像の面積比がより少なくなるので、処理をより高速にできるし、実態的には補正効果は劣るものの感覚的な補正効果を劣化させずに済む。
【0050】
被写体重視の手法(特定部位重視の手法を含む)では、全体画像から特定した被写体領域を抽出する際には、忠実にその輪郭に沿って抽出する方法を採ることもできるが、FFT処理やIFFT処理のし易さを考えると、被写体の部分(被写体の一部の場合を含む)を抽出する際の領域形状は、矩形とすることが好ましい。
【0051】
被写体重視の手法(特定部位重視の手法を含む)は、画像全体から被写体や特定部位の部分を抽出(特定)する処理が必要となり、一般的には処理負荷が重くなる。これに対して、場所重視の手法は、画像全体から抽出する「特定領域」を予め決められた形状にできるので、抽出処理は簡単である。
【0052】
被写体重視の手法(特定部位重視の手法も含む)を採る場合には、その被写体(特定部位を含む)の動きに「特定領域」を追従させることも考えられる。
【0053】
場所重視の手法と被写体重視の手法(特定部位重視の手法も含む)を組み合わせることも考えられる。たとえば、最初は場所重視の手法を採ってたとえば撮像画像の中央部を処理対象とするが、途中からは被写体重視の手法(特定部位重視の手法)に切り替えることで、その被写体(特定部位を含む)の動きに「特定領域」を追従させることが考えられる。被写体が画面中央部からはみ出るような場合でも、着目すべき被写体(特定部位を含む)を重視した補正処理を確実に実行できる。
【0054】
さらに好ましくは、本実施形態では、各信号成分を代表する少なくとも1つ(全てではない)について処理する方法(「特定信号重視の手法」と称する)も併用する。つまり、回折補正処理を行なう際に、任意の信号成分のみを対応する色光または輝度あるいは任意の色光の点広がり関数を用いて補正する。その後、回折補正済みの信号成分と、回折補正処理を施していない残りの信号成分とを合成して処理を完了させる。画像を表わす全ての信号成分の数よりも補正処理の対象とする信号成分の数が少ないので、全ての信号成分を回折補正処理の対象とする場合と比較して計算量が少なくなり、補正処理時間は短縮されるから、処理を高速化できる。
【0055】
特定信号重視の手法の場合、たとえば各色(たとえばR,G,B)の何れか一色に着目した処理にすることが考えられるが、その場合でも、特に、輝度信号成分や輝度信号成分との相関がある(相対的に強い)色画像情報に着目して処理するのが好ましい。また、処理対象の画像情報の信号成分と逆変換に用いるMTF形状データの成分は必ずしも同種のものであることは必要でなく、両者の相関が強い関係にあるものを利用できる。実質的な(見た目の)補正効果を全信号を対象とする場合と同程度に維持しながら、補正処理の高速化を図ることができる。
【0056】
たとえば、人間の視覚特性として特に輝度(明暗)に対する感受性が強い(敏感性がある)ことや、輝度成分は画像の緑成分と相関が強いことが一般的に知られており、このような人間の輝度に対する感受性を利用したMTF逆変換処理とすることが考えられる。すなわち、撮像画像の輝度成分のみMTF逆変換処理を行なう。
【0057】
このような人間の視覚特性に着目した方法によれば、復元処理した画像は、画像情報を構成する各信号成分全てに復元処理した画像と比較するとボケという観点では遜色ないということが確認された。さらに、各信号成分全てに復元処理を行なう場合と比べて処理時間を短縮できる。つまり、回折補正処理の高速化を実現できる。
【0058】
輝度成分に着目した処理を行なう際には、逆変換に用いるMTF形状データは忠実に輝度成分に対応するMTF形状データを用いる手法を採ってもよいし、輝度成分と相関が強い緑色成分に対応するMTF形状データを代用する手法を採ってもよい。後者の場合、回折補正処理を行なう際に、輝度信号成分のみを緑色光の点広がり関数を用いて補正することで、補正処理時間の短縮を図ることになる。人間の視覚特性では輝度成分に大きな割合を占めるのは緑成分のため、輝度成分のMTF逆変換処理に緑色成分のMTF形状データを代用してもよいからである。撮像によって得られる緑色成分のMTF形状データを代用するので、輝度成分のMTF形状データを求める必要がなく処理負荷が軽減される。
【0059】
本実施形態では、これらの各種の回折補正処理手法の中から、利用者が処理速度や補正精度などの観点から好みのものを選択できるようにしておく。
【0060】
[波長分布測定]
本実施形態の画像表示装置および画像表示システムは、外光の波長分布を測定する波長分布測定部をさらに備えている構成とすることができる。このような構成のものを「第2実施形態の構成」と称する。
【0061】
第2実施形態の構成を採用することで、回折補正処理では、光透過部の形状、大きさ、分布だけでなく、外光の波長分布も考慮することができ、MTF逆変換処理の精度向上を図ることができ、外光(外部照明環境)に依らず、最適な画像を得ることができる。加えて、撮像装置を介して取得された画像情報の精度の向上(たとえば色情報の精度向上)を図ることもできる。
【0062】
波長分布測定部は、たとえば、ホトセンサなどの受光装置から構成することができる。波長分布測定部の制御は、たとえば、入出力部を有するCPUとメモリから構成された制御回路として画像表示装置や画像表示装置を搭載した電子機器に設けることが考えられる。また、画像表示装置にパーソナルコンピュータ(電子計算機)などの周辺機器が接続された画像表示システムにあっては、周辺機器に波長分布測定部の制御の機能を持たせることも考えられる。
【0063】
[光透過領域]
本実施形態の画像表示装置の画像表示部に設ける光透過領域は、撮像装置が配設される部分と対応した部分に形成されていればよい。そして、光透過領域には、表示面側の被写体像を表す光が通過する微小な開口部が形成された光透過部を好ましくは複数設ける。
【0064】
ここで、光透過領域は、光透過部が複数の画素に設けられている第1構成例とすることができる。また、光透過領域は、少なくとも1つ以上(好ましくは、少なくとも2つ以上)の画素の周囲に光透過部が設けられている第2構成例とすることもでき、この場合、光透過部は、画素の全ての周囲に設けられていてもよいし、画素の周囲の一部に(具体的には、画素の境界に相当する辺の内の連続する2辺以上に)設けられていてもよいが、後者の場合、画素の全周の1/4倍以上の長さ(連続する2辺にあっては、各一辺の長さの1/2倍以上)に亙り光透過領域が設けられていることが好ましい。
【0065】
このような構成にあっては、複数の画素に設けられた光透過部を通過した光が撮像装置に集光され、あるいは、少なくとも1つ以上の画素の周囲に設けられた光透過部を通過した光が撮像装置に集光される。したがって、正確に像を撮像装置に結ぶために高精度の微小レンズを必要とせず、撮像装置付き画像表示装置の製造コストの増加を招くことがないし、撮像装置に十分な光量の光を集光させることができる。
【0066】
第1構成例の場合、光透過部は複数の画素に設けられているが、たとえば(限定するものではないが)、3個以上の画素に設けられていることが望ましく、光透過領域を構成する光透過部の外形形状は、本質的には任意であり、長方形や正方形といった四角形を挙げることができる。
【0067】
第2構成例の場合、光透過領域は、少なくとも1つ以上の画素の周囲に光透過部が設けられているが、たとえば(限定するものではないが)、3個以上の画素の周囲に設けられていることが望ましく、光透過部の外形形状は、本質的には任意である。たとえば、「L」字形状(光透過部が画素の境界に相当する辺の内の連続する2辺に設けられている形態)、「コ」の字形状(光透過部が画素の境界に相当する辺の内の連続する3辺に設けられている形態)、「ロ」の字形状(光透過部が画素の境界に相当する辺の全てに設けられている形態)、井桁状の形状(光透過部が画素の境界に相当する辺の全てに設けられており、かつ隣接する画素の間に共通して設けられている形態)を例示することができる。あるいは、撮像装置に備えられたレンズの射影像が含まれる画素群の周囲に光透過部を設ける構成とすることも考えられる。
【0068】
ここで、本実施形態の画像表示装置は、光透過領域が複数の微小な光透過部から構成されている場合、光透過部そのものについても、たとえば形状、大きさ、分布(配置ピッチや配置位置関係など)などに関して、予め回折現象が生じることを抑制するように回折現象抑制手法を施して(工夫して)おくことが好ましい。「微小な」とは、本実施形態の回折現象抑制手法を施さない場合に、複数の光透過部の開口部のサイズ(大きさ)が、それぞれの開口部を光(電磁波)が通ることにより回折効果が発生してボケの問題が発生する程度であることを意味する。
【0069】
光透過部そのものについての第1の回折現象抑制手法は、光透過領域における複数の光透過部の配置状態を不均一(ランダム)にするものである。光透過部の大きさ、形状、分布などが均一(同じ)であることで、回折効果によるボケの問題が強く表れるので、その観点からボケが発生しないように(発生し難くなるように)する趣旨である。光透過部の大きさ、形状、分布(配置ピッチ)の最適化を図ることで、回折現象が生じることを確実に抑制することができる。
【0070】
具体的には、複数の光透過部の大きさをランダムとする[ケースA]、複数の光透過部の形状をランダムとする[ケースB]、複数の光透過部の分布をランダムとする[ケースC]といった3種の形態の内、少なくとも1種の形態を採用する。つまり、[ケースA]、[ケースB]、[ケースC]を単独で採用してもよいし、これらを任意に組み合わせて採用してもよい。
【0071】
[ケースA]の形態は具体的には、一の光透過部に対し水平方向および/または垂直方向に隣接する少なくとも2つの光透過部のそれぞれは、この一の光透過部の大きさと異なる形態である。
【0072】
[ケースB]の形態は、具体的には、一の光透過部に対し水平方向および/または垂直方向に隣接する少なくとも2つの光透過部のそれぞれは、この一の光透過部の形状と異なる形態である。
【0073】
[ケースC]の形態は、複数の光透過部の配置ピッチや配置位置関係により分布をランダムとする形態であり、具体的には、一の光透過部に対し水平方向および/または垂直方向に隣接する少なくとも2つの光透過部との配置位置関係が、この一の光透過部に対し水平方向および/または垂直方向に隣接する光透過部についての一の光透過部と同様の関係における配置位置関係と異なる形態である。換言すると、2つの光透過部間の配列ピッチに関して、着目する一の配列ピッチに対し水平方向および/または垂直方向に隣接する少なくとも2つの配列ピッチのそれぞれは、この一の配列ピッチと異なる形態である。
【0074】
光透過部そのものについての第2の回折現象抑制手法としては、光透過部を二重環状構造(二重中抜き構造)とした[ケースD]の形態を採用する。具体的には、光透過部は、第1光透過部および第2光透過部から構成され、第1光透過部を取り囲むように第2光透過部が配置されている形態としてもよい。第1光透過部および第2光透過部の大きさ、形状、配置状態、第1光透過部と第2光透過部との位置関係の最適化を図ることで、回折現象が生じることを確実に抑制することができる。
【0075】
[ケースD]は、[ケースA]、[ケースB]、[ケースC]の単独のものと組み合わせることもできるし、[ケースA]、[ケースB]、[ケースC]を任意に組み合わせた態様と組み合わせることもできる。
【0076】
光透過領域においてこれらの回折現象抑制手法を適用することで、光透過部による回折現象が生じることを抑制することができる。信号処理の側面からの回折補正処理と組み合わせることで、回折現象によるボケや解像度の問題をより確実に抑制することができる。
【0077】
[撮像装置]
本実施形態の画像表示装置において、撮像装置は、画像表示部の背面側に配置されていればよいが、画像表示部の中央部に配置されていることが好ましい。撮像装置は、1個であってもよいし、複数個であってもよい。撮像装置は、たとえば、CCD素子やCMOSセンサを備えた周知、市販の固体撮像素子を用いればよい。
【0078】
本実施形態の画像表示装置においては、画像表示部と撮像装置との間に、光透過領域の光透過部を通過した光を撮像装置に集光する集光部を設けることが好ましい。集光部としては、周知のレンズを挙げることができる。レンズとして、具体的には、両凸レンズ、平凸レンズ、メニスカス凸レンズの何れかから構成することができるし、反射鏡やフレネルレンズから構成してもよいし、これらの各種の凸レンズを組み合わせて構成することもできるし、凹レンズとこれらの各種の凸レンズとを組み合わせて構成することもできる。
【0079】
撮像装置としては、周知、市販のビデオカメラやウェブカメラといった固体撮像装置を用いることもでき、これらの場合には、集光部と撮像装置が一体化している。
【0080】
本実施形態の画像表示装置においては、画像表示部に入射し、光透過部を通過し、画像表示部から出射し、集光部に入射する光の光路には、カラーフィルタを配置しないことが好ましく、また、マイクロレンズなどの結像系を配置しないことが好ましい。
【0081】
[画像表示部]
本実施形態の画像表示装置に用いる画像表示部は、画素(の表示部分)の隙間に光透過部を形成できればよく、印加される電圧や流れる電流によって輝度が変化する電気光学素子を画素の表示素子として用いたものであれば何でもよい。
【0082】
たとえば、印加される電圧によって輝度が変化する電気光学素子としては液晶表示素子が代表例であり、流れる電流によって輝度が変化する電気光学素子としては、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence, 有機EL, Organic Light Emitting Diode, OLED;以下、有機ELと記す)素子が代表例である。後者の有機EL素子を用いた有機EL表示装置は、画素の表示素子として、自発光型の発光素子(自発光素子)を用いたいわゆる自発光型の表示装置である。一方、液晶表示装置を構成する液晶表示素子は、外部からの光(前面や背面からの光、前面の場合は外光でもよい)の通過を制御するものであり、画素が発光素子を含むものではない。
【0083】
たとえば、近年、フラットパネル表示装置(FP表示装置)として、有機EL表示装置に関心が高まっている。現在、FP表示装置として液晶表示装置(LCD)が主流を占めているが、自発光デバイスではなく、バックライトや偏光板などの部材を必要とする。それ故、FD表示装置の厚さが増す、輝度が不足するなどの問題点がある。一方、有機EL表示装置は自発光デバイスであり、バックライトなどの部材が原理的に不要であり、薄型化、高輝度であるなど、LCDと比較して多数の利点を有する。特に、各画素にスイッチング素子を配したアクティブマトリクス型有機EL表示装置は、各画素をホールド点灯させることで消費電流を低く抑えることができ、しかも、大画面化および高精細化が比較的容易に行なえることから、各社で開発が進められており、次世代FP表示装置の主流になると期待されている。
【0084】
自発光型の表示装置としては、有機EL表示装置の他に、プラズマ表示装置(PDP:Plasma Display Panel)、電界放出型表示装置(FED:Field Emission. Display )、表面伝導型電子放出素子表示装置(SED:Surface-conduction Electron-emitter Display )などがあり、これらも本実施形態の画像表示部に適用できる。
【0085】
ただし、本実施形態の画像表示装置としては、画像表示部の発光素子は自発光型の発光素子であることが望ましく、さらには有機EL素子からなる形態とすることがより好ましい。発光素子を有機EL素子から構成する場合、有機EL素子を構成する有機層(発光部)は有機発光材料からなる発光層を備えているが、具体的にはたとえば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層と電子輸送層を兼ねた発光層との積層構造、正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層との積層構造から構成することができる。
【0086】
電子輸送層、発光層、正孔輸送層および正孔注入層を「タンデムユニット」とする場合、有機層は、第1のタンデムユニット、接続層、および、第2のタンデムユニットが積層された2段のタンデム構造も有していてもよく、さらには、3つ以上のタンデムユニットが積層された3段以上のタンデム構造も有していてもよい。これらの場合、発光色を赤色、緑色、青色と各タンデムユニットで変えることで、全体として白色を発光する有機層を得ることができる。
【0087】
有機層の厚さの最適化を図ることで、たとえば、第1電極と第2電極との間で発光層において発光した光を共振させ、この光の一部を第2電極を介して外部に出射する構成とすることもできる。
【0088】
本実施形態の画像表示装置において画像表示部の発光素子を有機EL素子とする場合、第1基板、第1基板上に設けられた駆動回路、駆動回路を覆う層間絶縁層、層間絶縁層上に設けられた発光部、発光部上に設けられた保護層、保護層上に設けられた遮光層、および、保護層および遮光層を覆う第2基板、を備えている形態とすることができる。
【0089】
さらに、各画素は、駆動回路および発光部を備えており、遮光層には、開口部が設けられており、開口部、並びに、開口部の下方に位置する保護層の部分および層間絶縁層の部分によって光透過部が構成されており、第2基板と対向しない第1基板の面の側に、撮像装置が配置されている形態とすることができる。
【0090】
ここで、画素の配列として、たとえば、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、デルタ配列、レクタングル配列を挙げることができる。また、第1基板や第2基板として、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)基板、硼珪酸ガラス(Na2O・B23・SiO2)基板、フォルステライト(2MgO・SiO2)基板、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)基板、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。
【0091】
駆動回路は、たとえば、1または複数の薄膜トランジスタ(TFT)などから構成すればよい。層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミドなどの絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。画素を有機EL素子から構成する場合、発光部は上述した通りである。保護膜を構成する材料として、発光部で発光した光に対して透明であり、緻密で、水分を透過させない材料を用いることが好ましく、具体的には、たとえば、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xx)、アモルファス酸化シリコン(α−Si1-yy)、アモルファスカーボン(α−C)、アモルファス酸化・窒化シリコン(α−SiON)、Al23を挙げることができる。遮光膜(ブラックマトリクス)は周知の材料から構成すればよい。必要に応じて、カラーフィルタを設けてもよい。
【0092】
画像表示部は、表示素子(発光素子)を含む画素ユニットを複数配置してなるが、ここで、画素ユニットの数を(M,N)で表したとき、VGA(640,480)、S−VGA(800,600)、XGA(1024,768)、APRC(1152,900)、S−XGA(1280,1024)、U−XGA(1600,1200)、HD−TV(1920,1080)、Q−XGA(2048,1536)の他、(1920,1035)、(720,480)、(854,480)、(1280,960)など、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0093】
カラー表示を行なう画像表示部において、1つの画素ユニットは、たとえば、赤(R)色成分を表示する赤色画素、緑(G)色成分を表示する緑色画素、および、青(B)色成分を表示する青色画素の3種の画素から構成される。あるいは、これらの3種の画素に加え、輝度向上のために白色光を表示する画素、色再現範囲を拡大するために補色を表示する画素、色再現範囲を拡大するためにイエローを表示する画素、色再現範囲を拡大するためにイエローおよびシアンを表示する画素など、4種あるいはそれ以上の画素から構成することもできる。
【0094】
本実施形態の画像表示装置は、電子機器の一例であり、表示パネル部分の裏面側に撮像装置を配置できるようになっていればよく、撮像装置が着脱可能なものでもよいし、固定的に装着されたものでもよい。
【0095】
画像表示装置は、たとえば、パーソナルコンピュータを構成するモニタ装置の代替として使用することができるし、ノート型パーソナルコンピュータに組み込まれたモニタ装置の代替として使用することができる。さらには、携帯電話やPDA(携帯情報端末,Personal Digital Assistant)、ゲーム機器に組み込まれたモニタ装置、従来のテレビジョン受像機の代替として使用することもできる。
【0096】
<第1実施形態>
[全体概要]
図1〜図2は、第1実施形態の画像表示装置および画像表示システムの概念を説明する図である。ここで、図1(1)は画像表示装置の概念図であり、図1(2)は画像表示システムの概念図である。図1(1−1)は画像表示装置を正面から眺めた概念図であり、図1(1−2)は画像表示装置を側面から眺めた概念図である。図1(2−1)は画像表示システムを正面から眺めた概念図であり、図1(2−2)は画像表示システムを側面から眺めた概念図である。図2は、画像表示部を構成する複数の画素の最も典型的な配置を模式的に示した図である。
【0097】
図1(1)に示すように、第1実施形態の画像表示装置1Aは、画像表示部10、画像表示部10の背面側に配置された撮像装置20、画像表示部10に形成された光透過部30、光透過部30を通過した光を撮像装置20に集光する集光部21を有する。撮像装置20は画像表示装置1の背面に対して着脱可能に構成してもよい。画像表示部10の撮像装置20と対応する部分が光透過領域12とされる。たとえば、画像表示部10の少なくとも撮像装置20の有効撮像領域と対応する部分が光透過領域12とされる。撮像装置20の有効撮像領域よりも光透過領域12の方が狭い場合には、撮像装置20での実際の撮像領域が狭くなる。
【0098】
撮像装置20は、画像表示部10の背面側、より具体的には、画像表示部10の背面側の中央部に配置されており、備えられた撮像装置20は1つである。ここで、撮像装置20および集光部21は、これらが一体化された、すなわちCCD素子を備えた周知、市販のビデオカメラからなる。または、画像表示部10の背面側に配置するように最適化さ
れた集光部と撮像素子からなるカメラを用いてもよい。
【0099】
画像表示装置1Aは、たとえばパーソナルコンピュータを構成するモニタ装置の代替として使用される。すなわち、図1(2)に示すように、第1実施形態の画像表示システム2Aは、画像表示装置1A_2にパーソナルコンピュータ(電子計算機)の本体などの周辺機器70Aが接続されている。周辺機器70A(後述の他の周辺機器70も同様)は電子機器の一例である。画像表示装置1A_2は、周辺機器70Aのモニタ装置として機能するようになっている。画像表示装置1A_2は、画像表示装置1Aから一部の機能部を取り外したものである。その取り外した機能部は周辺機器70Aに組み込まれている。周辺機器70Aと画像表示部10および撮像装置20とはケーブル72,73で接続されている。
【0100】
画像表示部10の画素11としては、自発光型の発光素子、具体的には、有機EL素子からなるものを使用する。画像表示部10は、カラー表示のXGAタイプの有機EL表示装置からなる。すなわち、画素ユニットの数を(M,N)で表したとき、(1024,768)である。
【0101】
図2に示すように、1つの画素ユニットは、赤色を発光する赤色発光画素11R、緑色を発光する緑色発光画素11G、および、青色を発光する青色発光画素11Bの3つの画素から構成されている。なお、画素の外縁を点線で示している(後述する他の例でも同様である)。
【0102】
画像表示部10には、表示素子を含む画素11(11R,11G,11B)が複数配置されており、画像表示部10の光透過領域12の複数の画素11には光透過部30が設けられている。この例では光透過部30は画素11ごとに各別のものとなっているが、このことは必須でなく、複数の画素11に跨っていてもよい。また、この例では光透過部30が画素11ごとに(光透過領域12の全ての画素11に)設けられているが、このことは必須でなく、少なくとも光透過領域12の複数の画素11に光透過部30が設けられていればよく、たとえば2画素おきなど光透過領域12の一部の画素11に光透過部30が設けられていないものがあってもよい。
【0103】
光透過部30は、限定するものではないが、たとえば6×3=18個の画素11に設けられている。1つの画素に1つの光透過部30が設けられている。集光部21は、これらの6×3=18個の画素11における光透過部30を通過した光を撮像装置20に集光する。各光透過部30の形状は長方形である。
【0104】
図示しないが、画像表示部10には、各走査線を駆動する走査信号供給IC、および、映像信号を供給する映像信号供給ICが配されている。そして、走査信号供給ICには走査線制御回路が、映像信号供給ICには信号線制御回路が、それぞれ、接続されている。画像表示部10に入射し、光透過部30を通過し、画像表示部10から出射し、集光部21に入射する光の光路には、カラーフィルタは配置されていないし、マイクロレンズなどの結像系も配置されていない。
【0105】
[撮像装置の配置位置]
図3〜図4は、撮像装置の配置位置と表示される画像との関係を説明する概念図である。ここで、図3(1)は、第1実施形態の画像表示装置1の場合を示し、図3(2)は、撮像装置が画像表示部の外側に固定された比較例の画像表示装置1Xの場合を示す。
図4は、画像表示装置1Aによる撮像イメージを表す図である。
【0106】
図3(2)に示すように、撮像装置20Xが画像表示部10Xの外側に固定されている場合、撮像装置20Xは画像表示装置1Xの使用者を斜めから撮像することになり、係る画像を画像表示部10Xにて表示したとき、画像表示部10Xには、斜めから撮像された使用者の画像が表示される。したがって、使用者の顔を正確に表示することができないし、画像表示部10Xのどこを使用者が注視しているかを正確に判別することもできない。さらには、使用者が画像表示部10Xに近づいた場合には、撮像範囲外になってしまう可能性が大である。
【0107】
一方、図3(1)に示すように、第1実施形態の画像表示装置1Aにあっては、撮像装置20が画像表示部10の背面側の中央部に配置されているので、画像表示装置1Aの使用者を、撮像装置20は正面から撮像することができ、係る画像を画像表示部10にて表示したとき、画像表示部10には、正面から撮像された使用者の画像が表示される。したがって、使用者の顔を正確に表示することができるし、画像表示部10のどこを使用者が注視しているかを容易に、しかも、正確に判別することができる。また、使用者が画像表示部10に近づいた場合でも、使用者の撮像を行なうことができる。
【0108】
画像表示装置1Aにあっては、光透過領域12の複数の画素11のそれぞれに設けられた光透過部30(複数の光透過部30)を通過した光が撮像装置20に集光される。したがって、正確に像を撮像装置20に結ぶために高精度の微小レンズを必要とせず、画像表示装置1Aの製造コストの増加を招くことがないし、撮像装置20に十分な光量の光を集光させることができる。
【0109】
たとえば図4(1)には、一例として、観察者(撮像装置20にとっての被写体)が画像表示部10の表示画像を見ながら、ペンで指示している状態が示されている。画像表示装置1A(画像表示部10)の裏面には撮像装置20が設けられており、図4(2)に示すように、表示面に正対している観察者の顔や目、および手やペンを撮像することができる。これにより、たとえば、観察者の視線を撮像画像から検出することができる。また、手やペンなどの向きから画像表示部10の対応する指示点を特定することができるので、いわゆるポインタ機能を画像表示装置1Aに容易に付加することができる。さらには、ポインタ機能以外にも、使用者の顔や目、手の動き、周辺の明るさなども撮像画像から分かるので、様々の情報を画像表示装置1Aから得て、種々のシステムに送出することができ、画像表示装置1Aの付加価値を高めることができる。
【0110】
[画像表示部の断面構造]
図5は、画像表示部10の詳細を説明する図である。ここで、図5(1)は、画像表示部10の模式的な一部断面図である。図5(2)は、画像表示部10の発光素子の詳しい構成を纏めた図表である。
【0111】
画像表示部10は、第1基板40、第1基板40上に設けられた複数のTFTから構成される駆動回路、駆動回路を覆う層間絶縁層41、層間絶縁層41上に設けられた有機層63(発光部)、有機層63上に設けられた保護層64、保護層64上に設けられた遮光層65、保護層64および遮光層65を覆う第2基板67を備えている。
【0112】
各画素11は、駆動回路および発光部を備えており、遮光層65には、開口部65Aが設けられており、開口部65A、並びに、開口部65Aの下方に位置する保護層64の部分、第2電極62の部分、および、層間絶縁層41の部分などによって光透過部30が構成されている。集光部21および撮像装置20は、第2基板67と対向しない第1基板40の面の側に配置されている。
【0113】
より具体的には、ソーダガラスからなる第1基板40上には駆動回路が設けられている。駆動回路を構成するTFTは、第1基板40上に形成されたゲート電極51、第1基板40およびゲート電極51上に形成されたゲート絶縁膜52、ゲート絶縁膜52上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域53、並びに、ソース/ドレイン領域53の間であって、ゲート電極51の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域54から構成されている。図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。
【0114】
TFTのゲート電極51は、走査線(図示せず)に接続されている。そして、層間絶縁層41(41A,41B)が、第1基板40および駆動回路を覆っている。また、有機EL素子を構成する第1電極61は、SiOXやSiNY、ポリイミド樹脂などからなる層間絶縁層41B上に設けられている。TFTと第1電極61とは、層間絶縁層41Aに設けられたコンタクトプラグ42、配線43、コンタクトプラグ44を介して電気的に接続されている。図においては、1つの有機EL素子駆動部につき、1つのTFTを図示した。
【0115】
層間絶縁層41上には、開口46を有し、開口46の底部に第1電極61が露出した絶縁層45が形成されている。絶縁層45は、平坦性に優れ、しかも、有機層63の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料、具体的には、ポリイミド樹脂から構成されている。開口46の底部に露出した第1電極61の部分の上から、開口46を取り囲む絶縁層45の部分に亙り設けられ、有機発光材料からなる発光層を備えた有機層63が形成されている。有機層63は、たとえば、正孔輸送層、および、電子輸送層を兼ねた発光層の積層構造から構成されているが、図面では1層で表す。
【0116】
第2電極62上には、有機層63への水分の到達防止を目的として、プラズマCVD法に基づき、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xx)からなる絶縁性の保護層64が設けられている。保護層64の上には、黒色のポリイミド樹脂からなる遮光層65が形成されており、保護層64および遮光層65上にはソーダガラスからなる第2基板67が配されている。保護層64および遮光層65と第2基板67とは、アクリル系接着剤からなる接着層66によって接着されている。
【0117】
第1電極61をアノード電極として用い、第2電極62をカソード電極として用いる。具体的には、第1電極61は、厚さ0.2μm〜0.5μmのアルミニウム(Al)、銀(Ag)、あるいは、これらの合金で構成される光反射材料からなり、第2電極62は、厚さ0.1μmのITOやIZOといった透明導電材料や、厚さ5nm程度の銀(Ag)、マグネシウム(Mg)などの光をある程度透過する金属薄膜(半透明金属薄膜)からなる。第2電極62はパターニングされておらず、1枚のシート状に形成されている。場合によっては、有機層63と第2電極62との間に、厚さ0.3nmのLiFからなる電子注入層(図示せず)を形成してもよい。
【0118】
以上、纏めると、本実施形態の画像表示装置1Aにおける画像表示部10の発光素子の詳しい構成は、図5(2)に示す通りである。
【0119】
第1基板40から保護層64および遮光層65までが表示素子基板である。第2基板67は封止基板として機能する。ここで、第2基板67に設けられる光透過部30をなす開口部65Aは、表示素子基板の画素電極(第1電極61)、TFT(ゲート電極51を含む)および配線がない部分にある。また、封止剤として機能する保護層64、EL共通電極として機能する第2電極62、画素分離膜として機能する絶縁層45、平坦化絶縁膜として機能する層間絶縁層41(41A,41B)、ソース/ドレイン領域53、ゲート絶縁膜52は光透過性を持っている。したがって、表示面(第2基板67)側より入射する外光は、開口部65Aを通って裏面(第1基板40側)に到達することができる。
【0120】
パネル裏面に設置される撮像装置20は、光透過部30(開口部65A)があるパネル裏面に撮像面を近接するように(ただし本例では集光部21を介在させる)設置される。よって、表示面側より入射される外光は、撮像装置20のレンズ(図示せず)で結像され、CCDやCMOSなどの固体撮像素子に入るので、表示面側に存在する被写体を撮像することができる。
【0121】
[回折補正に対応した構成]
図6〜図9は、回折現象とその対策を説明する図である。ここで、図6は、回折現象による撮像画像への影響を説明する模式図である。図7は、撮像装置20の手前にガラス板を配置して撮像して得られた画像の一例を示す図である。図8は、回折現象による影響を信号処理面から補正(補償)するようにした第1実施形態の画像表示装置1Aのブロック図である。図9は、回折現象による影響を信号処理面から補正(補償)するようにした第1実施形態の画像表示システム2Aのブロック図である。
【0122】
第1実施形態の画像表示装置1Aでは、表示素子に有機EL素子を使用しており、光透過部30を設けるだけで、裏面(第1基板40)側に撮像装置20を設置することで、表示面(第2電極62)側に存在する被写体を撮像できる。
【0123】
このような簡便な構成は、いわゆるLCDでは不可能ではないが困難性があるし、また可視光波長も含めて透過させる構造はさらに困難である。これに対して第1実施形態の画像表示装置1Aは、光透過部30を設けるだけであり、簡便な構成で裏面から表示面側にいる被写体を撮像できる。
【0124】
ところで、一般に、ある小さい光透過開口部を通して画像を撮像した場合、光透過開口部で、いわゆる回折現象が発生する。すなわち、図6に示すように、微小な光透過部30が所定ピッチで設けられた物体(画像表示部10)の背面に撮像装置20を設置して、光透過部30を通して撮像すると、光透過部30が光スリットとして作用する。このため、回折現象によって、画像「C」と同じ画像が等ピッチで画像「A」および画像「B」として出現する結果、画像にボケが生じる。
【0125】
撮像装置20の手前に光透過部が設けられていない透明なガラス板を配置して撮像して得られた画像が図7(1)に示されている。撮像装置20の手前にある形状、大きさ、分布を有する光透過部を設けた透明なガラス板を配置して撮像して得られた画像が図7(2)に示されている。図7(2)に示す画像にはボケが認められる。一方、図7(1)に示す画像にはボケが認められない。
【0126】
回折光の強度と分布は、光透過部の形状、大きさ、分布、並びに、入射光(外光)の波長に依存する。回折によるボケが小さい場合には、撮像画像に対して回折を補正(補償)する処理を行なう必要は無いが、高品質な撮像画像を必要とする場合には、回折現象による影響を補正(補償)することが好ましい。
【0127】
図8には、回折現象による影響を信号処理面から補正する第1実施形態の画像表示装置1Aが示されている。
【0128】
第1実施形態の画像表示装置1Aは、装置全体の動作を制御する制御部90、画像表示部10の表示動作を制御する表示用タイミングコントローラ92、撮像装置20(撮像部20a)の撮像動作を制御する撮像用タイミングコントローラ94を有する。
【0129】
制御部90は表示データやタイミング信号などを、表示用タイミングコントローラ92に供給する。制御部90は、撮像タイミング信号、シャッタ制御信号、ゲイン制御信号などを、撮像用タイミングコントローラ94へ供給する。
【0130】
表示用タイミングコントローラ92は、図示しない信号線制御回路を具備し、信号線制御回路は、表示データや水平タイミング信号を図示しない映像信号供給ICを介して画像表示部10に供給する。表示用タイミングコントローラ92は、図示しない走査線制御回路を具備し、走査線制御回路は垂直タイミング信号を図示しない走査信号供給ICを介して画像表示部10に供給する。
【0131】
第1実施形態の画像表示装置1Aは、撮像装置20を介して取得された画像情報に対して、光透過部30において生じる回折の補正(補償)を施す回折補正部100を備えている。撮像装置20(電子機器の一例)を画像表示装置1Aと別体にする場合には、図に一点破線で示すように、回折補正部100(場合によっては撮像用タイミングコントローラ94も)を撮像装置20側に配置することも考えられる。回折補正部100は、MTF形状記憶部102とMTF逆変換部104を有する。MTF逆変換部104は、図示しない画像格納メモリを有しており、撮像装置20から供給される撮像画像データを画像格納メモリに記憶する。回折補正部100の処理動作は制御部90により制御される。
【0132】
制御部90は使用者から各種の指示を受付けて、回折補正部100やその他の各機能部の動作を制御する。たとえば、詳細を後述するように、本実施形態の回折補正処理として種々の手順が考えられるが、それらは処理速度と補正精度の各面で優劣があるので、何れの手法を採用するかを、利用者の指示により適宜選択できるようにするのがよい。
【0133】
MTF形状記憶部102は、光透過部30の大きさ、形状、分布といったMTF形状データを記憶する。たとえば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)ごとの外光の波長と2次元FFTにて得られている光透過部30のMTF形状データをMTF形状記憶部102に記憶しておく。
【0134】
撮像装置20を介して取得された画像情報が、回折補正部100を構成するMTF逆変換部104に送られる。MTF逆変換部104は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)ごとの外光の波長と2次元FFTにて得られている光透過部30のMTF形状データをMTF形状記憶部102から読み出してMFT逆変換を行ない、原画像に復元し、制御部90に送出する。この際には、計算を簡素化して処理時間を短縮するべく、全信号成分についてではなく、一部の信号成分に着目した処理を行なってもよい。この点については詳細を後述する。
【0135】
制御部90は、回折補正部100(MTF逆変換部104)で得られた復元画像から、たとえば、使用者の視線検出、使用者の手の動作の検出など、多様な検出を行ない、画像表示部10での表示に反映させる。
【0136】
画像表示部10における画像表示は、制御部90の制御によって行なわれる。すなわち、制御部90から表示データおよびタイミング信号などが表示用タイミングコントローラ92に送られ、表示用タイミングコントローラ92から表示データおよび水平タイミング信号が図示しない信号線制御回路に送られ、一方、垂直タイミング信号が図示しない走査線制御回路に送られる。そして、画像表示部10において、周知の方法に基づき画像表示がなされる。一方、制御部90から、撮像タイミング信号、シャッター制御信号、ゲイン制御信号などが撮像用タイミングコントローラ94に送られ、撮像用タイミングコントローラ94からこれらの信号が撮像装置20に送られ、撮像装置20の動作が制御される。
【0137】
図9には、回折現象による影響を信号処理面から補正する第1実施形態の画像表示システム2Aが示されている。図8に示した画像表示装置1Aとの相違点は、画像表示装置1Aから、制御部90と回折補正部100を取り外して画像表示装置1A_2とし、その取り外した制御部90と回折補正部100が周辺機器70A(電子機器の一例)に組み込まれている。
【0138】
すなわち、制御部90は、画像表示装置1Aに備えられてもよいし、画像表示装置1A_2に接続されたパーソナルコンピュータなどの周辺機器70Aに備えられてもよい。回折補正部100も、画像表示装置1Aに備えられてもよいし、画像表示装置1A_2に接続されたパーソナルコンピュータなどの周辺機器70Aに備えられてもよい。
【0139】
画像表示装置1Aや画像表示システム2Aにおける回折補正部100や制御部90の制御機能(特に回折補正部100を制御する機能)は、ソフトウェアで実現することもでき、このためのプログラムやこのプログラムを格納した記録媒体を発明として抽出することも可能である。これらの点は、外光の波長分布の測定結果を反映させることで、撮像装置を介して取得された画像情報の精度の向上(たとえば色情報の精度向上)やMTF逆変換処理の精度向上を図る場合においても同様である。
【0140】
すなわち、本実施形態において、回折補正処理や波長分布測定処理並びにこれらの処理に関わる制御処理を行なう制御構成の仕組みは、ハードウェア処理回路により構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づき電子計算機(コンピュータ)の仕組みを用いてソフトウェア的に実現され得る。ソフトウェアにより実行させる仕組みでは、ハードウェアの変更を伴うことなく処理手順などが容易に変更し得ることとなる。
【0141】
プログラムは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、有線あるいは無線による通信手段を介した配信により提供されてもよい。
【0142】
回折補正処理や波長分布測定処理並びにこれらの処理に関わる制御処理の各機能を実現するプログラムコードを記述したファイルとしてプログラムが提供されるが、この場合、一括のプログラムファイルとして提供されることに限らず、コンピュータで構成されるシステムのハードウェア構成に応じて個別プログラムモジュールとして提供されてもよい。
【0143】
また、回折補正処理や波長分布測定処理並びにこれらの処理に関わる制御処理の各機能を実現するための各部(機能ブロックを含む)の具体的手段は、ハードウェア、ソフトウェア、通信手段、これらの組み合わせ、その他の手段を用いることができ、このこと自体は当業者において自明である。また、機能ブロック同士が複合して1つの機能ブロックに集約されてもよい。また、コンピュータにプログラム処理を実行させるソフトウェアは、組合せの態様に応じて分散してインストールされる。
【0144】
ソフトウェアで行なう仕組みは、並列処理や連続処理に柔軟に対処し得るものの、処理が複雑になるに連れ、処理時間が長くなるため、処理速度の低下が問題となる。これに対して、ハードウェア処理回路で構築すると、処理が複雑であっても、処理速度の低下が防止され、高いスループットを得る高速化を図ったアクセラレータシステムが構築される。
【0145】
[回折現象の対策原理]
図10〜図12は、回折現象による影響を信号処理の側面から対策する手法を説明する図である。ここで、図10は、光透過部30(開口部65A)から回折光強度とMTFを求める概念図である。図11〜図12は、光透過部30の形状の一例(図2とは異なる)を模式的に示す図である。
【0146】
回折分布Pdiffは、光透過部30のパターン形状、大きさ、分布、並びに、入射光(外光)の波長が決定している場合、式(1)で算出することができる。二重積分においては、xおよびyに関して−∞から+∞まで積分する。
【0147】
【数1】

【0148】
ここで、Pat(x,y)は光透過部30のxy平面での2次元パターンであり(図10(1)を参照)、λは入射光(外光)の波長であり、θx,θyはx方向およびy方向の回折角である。ここでは、計算を簡素化するために入射光(外光)の波長λの値を525nmで一定とした。
【0149】
式(1)は、Pat(x,y)の2次元フーリエ変換であるので、高速フーリエ変換(FFT)を用いることで高速に算出することができる。Pdiff(kx,ky)は位相情報を含んでいるが、実際には、撮像装置では回折光強度Hdiff(kx,ky)を検出する。式(2)に示すように、回折光強度Hdiff(kx,ky)は、Pdiff(kx,ky)の絶対値の二乗に等しい(図10(2)を参照)。
【0150】
【数2】

【0151】
ここで、回折光により撮像装置20の空間解像度に変調が加えられたとして、式(3)からMTF(Modulation Transfer Function)を算出する(図10(3)を参照)。「FFT[ ]」は、高速フーリエ変換を実行することを意味し、「IFFT[ ]」は、高速逆フーリエ変換を実行することを意味する。
【0152】
【数3】

【0153】
ここで、fx,fyは、撮像装置20を構成する各々の撮像素子におけるx方向およびy方向の空間周波数を表す。そして、撮像装置20で得られる光透過部30を通した画像Icam(x,y)と、光透過部30を通さないとしたときの原画像Ireal(x,y)との間には、式(4)に示す関係が成立する。画像Icam(x,y)は、たとえば、赤(R)色成分であれば撮像RデータRcam(x,y)、緑(G)色成分であれば撮像GデータGcam(x,y)、青(B)色成分であれば撮像BデータBcam(x,y)とする。
【0154】
【数4】

【0155】
すなわち、空間周波数領域において、画像Icam(x,y)は、原画像Ireal(x,y)とMTFの積となる。よって、画像Icam(x,y)から原画像Ireal(x,y)を得るには、式(5)に基づいた処理を行なえばよい。換言すると、光透過部30の形状、大きさ、分布、並びに、入射光(外光)の波長(纏めて「MTF形状データ」)に基づき算出されるMTF逆変換処理を画像情報に対して施せばよい。原画像Ireal(x,y)は、たとえば、赤(R)色成分であれば赤色原画像Rreal(x,y)、緑(G)色成分であれば緑色原画像Greal(x,y)、青(B)色成分であれば青色原画像Breal(x,y)とする。
【0156】
【数5】

【0157】
ここで、MTFは、光透過部30の大きさ、形状、分布が決まれば、光透過部30の2次元パターンをフーリエ変換したものを入射光(外光)の波長によりスケーリングすればよいので、容易に求めることができ、式(5)で示した関係から、原画像を容易に復元することができる。
【0158】
たとえば、光透過部30の形状が、図11(1),(2)や図12に例示されている。光透過部30の一部または全部は、画像表示部10の第1の方向(水平方向)および第2の方向(垂直方向)に沿って周期的に設けられている。
【0159】
図11(1)に示す例にあっては、画素の下部を第1の方向(水平方向)に沿って延びる光透過部30Hは、3つの画素(11R,11G,11B)から構成された1つの画素ユニットに跨って設けられており、第2の方向(垂直方向)に沿って延びる光透過部30Vは、各画素11R,11G,11Bに設けられ、しかも、画素と画素との間に設けられている。図11(2)に示す例にあっては、光透過部30Hと光透過部30とが繋がっている。図12に示す例にあっては、光透過部30Hは、3つの画素(11R,11G,11B)から構成された1つの画素ユニットに跨って設けられているが、図11(1)とは異なり、2つの部分から構成されている。
【0160】
第1の方向に沿った光透過部30の長さをLtr-1、第1の方向に沿った画素11のピッチをPpx-1としたとき、第1の方向の線開口率Ltr-1/Ppx-1は、「Ltr-1/Ppx-1≧0.5」を満足し、第2の方向に沿った光透過部30の長さをLtr-2、第2の方向に沿った画素11のピッチをPpx-2としたとき、第2の方向の線開口率Ltr-2/Ppx-2は、「Ltr-2/Ppx-2≧0.5」を満足する。これは、MTFの定義から説明できる。
【0161】
MTFは、式(2)および式(3)から導かれる式(6)に示すように、光透過部30のxy平面での2次元パターンPat(x,y)から得られる回折分布を二乗したものを高速フーリエ変換し、その結果をさらに二乗したものとして得られる。
【0162】
【数6】

【0163】
そして、いわゆるウィナー・キンチンの定理から、自己相関関数のフーリエ変換はパワースペクトラムに等しいので、MTFは、光透過部30で生ずる回折分布の自己相関関数の絶対値の二乗に等しい。自己相関関数が、空間周波数領域においていわゆる無相関である点(すなわち、0になる点)が存在しない条件は、「Ltr-1/Ppx-1≧0.5」、「Ltr-2/Ppx-2≧0.5」である。MTFが0になる点を持たない場合、式(5)は特異点を持たないので、原画像の再現が容易になる。それ故、第1の方向の線開口率Ltr-1/Ppx-1および第2の方向の線開口率Ltr-2/Ppx-2の値は0.5以上であるといった要請を満足することが好ましい。
【0164】
<第2実施形態>
図13〜図15は、第2実施形態の画像表示装置および画像表示システムを説明する図である。ここで、図13は、第2実施形態の画像表示装置および画像表示システムの概念を説明する図である。図13(1)は画像表示装置の概念図であり、図13(2)は画像表示システムの概念図である。図13(1−1)は画像表示装置を正面から眺めた概念図であり、図13(1−2)は画像表示装置を側面から眺めた概念図である。図13(2−1)は画像表示システムを正面から眺めた概念図であり、図13(2−2)は画像表示システムを側面から眺めた概念図である。図14は、波長分布測定を可能にした第2実施形態の画像表示装置1Bのブロック図である。図15は、波長分布測定を可能にした第2実施形態の画像表示システム2Bのブロック図である。
【0165】
図13(1)に示すように、第2実施形態の画像表示装置1Bは、第1実施形態の画像表示装置1Aに加えて、外光の波長分布を測定する波長分布測定部110を備えている。波長分布測定部110は画像表示装置1に対して着脱可能に構成してもよい。本例では、波長分布測定部110は、画像表示部10のパネル上部に配置されているが、これは一例であって、外光の波長分布を測定し得る場所である限り、何れの箇所に配置してもよい。
【0166】
図13(2)に示すように、第2実施形態の画像表示システム2Bは、第1実施形態の画像表示システム2Aに加えて、外光の波長分布を測定する波長分布測定部110をさらに備えている。波長分布測定部110により取得された情報が回折補正部100に供給される。波長分布測定部110は、外光の波長分布を測定し得る場所である限り、画像表示装置1B_2の近傍の何れの場所に配置してもよい。
【0167】
波長分布測定部110は、たとえば、赤色フィルタが取り付けられたホトセンサ、緑色フィルタが取り付けられたホトセンサ、および、青色フィルタが取り付けられたホトセンサの組から構成されている。
【0168】
図14に示すように、画像表示装置1Bでは、同装置内の制御部90が、波長分布測定部110の測定動作を制御する。波長分布測定部110により取得された情報が回折補正部100に供給される。図15に示すように、画像表示システム2Bにおいては、周辺機器70Bに組み込まれた制御部90が、波長分布測定部110の測定動作を制御する。
【0169】
第1実施形態で説明したように、光透過部30のxy平面での回折分布Pdiff(kx,ky)を求める式(1)には、入射光(外光)の波長λが含まれている。したがって、外光の波長分布を測定することで、各波長のMTFを外部環境に応じて適合させることができ、一層正確に回折に対する補正、補償を行なうことができ、より高品質な撮像画像を得ることができる。
【0170】
波長分布測定部110を設けることで、外光の波長分布(光のスペクトル)を得ることができる。そして、得られた外光の波長分布と撮像装置20の分光スペクトルを掛け合わせることで、撮像画像の各原色(赤色、緑色、青色)ごとの波長分布を得ることができる。そして、波長ごとにMTF逆変換処理した画像を撮像画像の波長分布で重み付けすることで、一層正確に回折に対する補正、補償を行なうことができる。
【0171】
第2実施形態にあっては、このような構成を採用することで、一層正確に回折に対する補正、補償を行なうことができるだけでなく、撮像装置20を介して取得された画像情報の精度の向上(たとえば、色情報の精度向上)を図ることができる。
【0172】
なお、本実施形態の仕組みとは直接的には関係ないが、回折によるボケが小さい場合には、撮像画像に対して回折を補正(補償)する処理を行なう必要はない。しかしながら、このような場合にあっても、外光の波長分布を測定する波長分布測定部110をさらに備えることで、たとえば回折補正部100は撮像装置20で取得された画像を撮像画像の波長分布で重み付けすることができる。その結果、撮像装置20を介して取得された画像情報の精度の向上を図ることができる。
【0173】
<回折補正処理:第1例(処理面積縮小処理)>
図16は、回折補正部100による回折補正処理の第1例を説明する図(フローチャート)である。なお、理解を容易にするため、処理の状況に対応した画像の模式図も併せて示す。第1例の回折補正処理は、処理面積縮小の手法を適用するものである。
【0174】
一例として、撮像装置20から撮像データとしてR,G,Bの色画像データ(撮像Rデータ、撮像Gデータ、撮像Bデータ:纏めて撮像RGBデータ)が回折補正部100のMTF逆変換部104に供給されるものとする(S10)。MTF逆変換部104は、撮像装置20から供給される撮像画像データを画像格納メモリに記憶する。
【0175】
MTF逆変換部104は、撮像画像を、「特定領域」と「背景領域」に分離し、「特定領域」を抽出する。たとえば、「被写体重視の手法」を適用し、「特定領域」を被写体の一部の領域(たとえば使用者の顔の領域)とし、顔とそれ以外の領域に分離して、顔領域を抽出する。顔領域の抽出アルゴリズムは、たとえばハール(Haar)状特徴分類などの公知の顔検出手法を用いればよい。因みに、特定した顔を内包する矩形領域を抽出するものとする。当然ながら、抽出された顔領域は、撮像画像全体と比べると面積は小さい。
【0176】
また「特定領域」の抽出においては、特定の形状や色を有する領域を抽出したり、たとえば時刻をずらして撮像した複数の撮像画像の差分に基づいて、その撮像画像の変化(たとえば被写体の移動)を検出し、その変化があった部分の領域を抽出したりしてもよい。
【0177】
MTF逆変換部104は、抽出した特定領域のみに対して、MTF逆変換処理を施し回折の影響を取り除く(S30)。たとえば、TV電話では、背景よりも通話者間の表情や顔色の画質が重要であり、顔部分だけ回折除去した画像でも違和感なく通話できる。
【0178】
MTF逆変換部104は、回折補正済みの顔領域(特定領域)の抽出画像(その信号成分)と、回折補正処理を施していない背景領域の画像(その信号成分)とを合成して処理を完了させる(S40)。
【0179】
撮像画像の全領域から分離(抽出)された抽出領域(特定領域:この例では顔領域)は、撮像画像全体と比べると面積は小さいので、撮像画像の全領域を対象として回折除去する場合と比較して計算量が少なくなり、補正処理時間は短縮されるから、処理を高速化できる。たとえば、全体領域に対して特定領域の面積が1/X倍である場合、処理速度は「α・X」倍となる。αは、1未満の値であり、全体領域から特定領域を抽出する処理(S20)と、回折補正処理済みの特定領域の画像と未処理の背景領域の画像とを合成する処理(S40)によるオーバーヘッド分である。
【0180】
<回折補正処理:第2例(全信号成分を対象)>
図17は、回折補正部100による回折補正処理の第2例を説明する図(フローチャート)である。第2例の回折補正処理は、撮像装置20で取得される画像情報を構成する各信号成分のそれぞれについて処理する方法である。
【0181】
MTF逆変換部104は、抽出した特定領域のみに対して、MTF逆変換処理を施し回折の影響を取り除く(S30)。この際、MTF逆変換部104は、式(5)に基づいて、光透過部30の形状、大きさ、分布、並びに、入射光(外光)の波長に基づき算出されるMTF逆変換処理をR,G,Bの色画像データ別に施す。
【0182】
たとえば、MTF逆変換部104は、式(2)と式(3)に基づいて、R,G,Bの色別にMTFを求める(S130)。具体的には、R,G,B別の回折光強度Hdiff(kx,ky)を検出し、式(3)に基づいてR,G,B別にMTFを算出する。R,G,B別のMTFをそれぞれ、MTF(赤成分)、MTF(緑成分)、MTF(青成分)とする。
【0183】
MTF逆変換部104は、光透過部30を通して撮像装置20で取得したR,G,B別の撮像データ(撮像Rデータ、撮像Gデータ、撮像Bデータ)について高速フーリエ変換して色別にFFT[ ]を求める(S140)。具体的には、光透過部30を通して撮像装置20で撮像することで得た撮像RデータRcam(x,y)、撮像GデータGcam(x,y)、撮像BデータBcam(x,y)のそれぞれについて高速フーリエ変換を実行することで、FFT[Rcam(x,y)]、FFT[Gcam(x,y)]、FFT[Bcam(x,y)]を求める。
【0184】
MTF逆変換部104は、R,G,Bの色別に、ステップS140で求めたFFT[ ]をステップS130で求めた対応する色のMTFで除算する(S150)。具体的には、FFT[Rcam(x,y)]/MTF(赤成分)、FFT[Gcam(x,y)]/MTF(緑成分)、FFT[Bcam(x,y)]/MTF(青成分)を求める。
【0185】
MTF逆変換部104は、R,G,Bの色別にステップS150で求めた除算結果について高速逆フーリエ変換を実行して色別に原画像Ireal(x,y)を復元する(S160)。具体的には、式(5)に従って、IFFT[FFT[Rcam(x,y)]/MTF(赤成分)]により赤色原画像Rreal(x,y)を取得し、IFFT[FFT[Gcam(x,y)]/MTF(緑成分)]により緑色原画像Greal(x,y)を取得し、IFFT[FFT[Bcam(x,y)]/MTF(青成分)]により青色原画像Breal(x,y)を取得する。
【0186】
MTF逆変換部104は、ステップS160でR,G,Bの色別に復元した赤色原画像Rreal(x,y)、緑色原画像Greal(x,y)、青色原画像Breal(x,y)に基づいて、特定領域に関して、カラーの復元画像を取得する(S180)。
【0187】
MTF逆変換部104は、回折補正済みの特定領域の抽出画像(その信号成分)と、回折補正処理を施していない背景領域の画像(その信号成分)とを合成して処理を完了(画像表示部10に表示)させる(S40)。
【0188】
第2例の回折補正処理は、画像情報を構成するR,G,Bの各信号成分についてMTF逆変換処理を施すので、処理負荷は掛かるが、一部の信号成分に着目した処理に比べて補正効果が高く、回折現象により撮像画像に現れる不鮮明さを精度よく補正できる。
【0189】
<回折補正処理:第3例(全信号成分を対象&色変換)>
図18は、回折補正部100による回折補正処理の第3例を説明する図(フローチャート)である。第3例の回折補正処理は、撮像装置20で取得される画像情報を構成する各成分の撮像データの色空間を変換し、変換後の画像データについてデータ別に処理する方法である。以下、第2例との相違点を中心に説明する。なお、処理ステップを200番台で示し、第2例と同様の処理ステップには第2例と同じ10番台と1番台で示す。
【0190】
MTF逆変換部104は、抽出した特定領域のみに対して、MTF逆変換処理を施し回折の影響を取り除く(S30)。この際、MTF逆変換部104は、抽出された特定領域の画像について、RGB色空間の撮像Rデータ、撮像Gデータ、撮像Bデータを、他の色空間(たとえばXYZ色空間やYuv色空間)の画像データに変換する(S210)。
【0191】
この例では、先に特定領域の画像情報を抽出してから色空間変換処理をするようにしているが、逆に、画像表示部10で取得された全画像領域について色空間変換処理をしてから特定領域の画像情報を抽出してもよい。後者の場合は、特定領域の画像情報のみを対象として色空間変換処理する場合と比較して処理量が多くなり変換処理時間が掛る。この点を勘案して、本例では前者の手法を採っている。
【0192】
MTF逆変換部104は、式(5)に基づき、光透過部30の形状、大きさ、分布、入射光(外光)の波長に基づき算出されるMTF逆変換処理を、ステップS210で取得された色変換後の画像データのそれぞれについて施す。色変換は、少なくとも輝度情報を表す信号成分が含まれたものとするのがよい。図18(1)はRGB色空間からXYZ色空間に変換した場合を示し、図18(2)はRGB色空間からYuv色空間に変換した場合を示す。以下では、RGB色空間からXYZ色空間に変換したものとして説明する。
【0193】
たとえば、MTF逆変換部104は、式(2)と式(3)に基づいて、X,Y,Zの画像データ別にMTFを求める(S230)。具体的には、X,Y,Z別の回折光強度Hdiff(kx,ky)を検出し、式(3)に基づいてX,Y,Z別にMTFを算出する。X,Y,Z別のMTFをそれぞれ、MTF(X成分)、MTF(Y成分)、MTF(Z成分)とする。
【0194】
MTF逆変換部104は、色空間変換後のX,Y,Z別の画像データ(変換Xデータ、変換Yデータ、変換Zデータ)について高速フーリエ変換してX,Y,Z別にFFT[ ]を求める(S240)。具体的には、変換XデータXcam(x,y)、変換YデータYcam(x,y)、変換ZデータXcam(x,y)のそれぞれについて高速フーリエ変換を実行することで、FFT[Xcam(x,y)]、FFT[Ycam(x,y)]、FFT[Zcam(x,y)]を求める。
【0195】
MTF逆変換部104は、X,Y,Z別に、ステップS240で求めたFFT[ ]をステップS230で求めた対応する信号成分のMTFで除算する(S250)。具体的には、FFT[Xcam(x,y)]/MTF(X成分)、FFT[Ycam(x,y)]/MTF(Y成分)、FFT[Zcam(x,y)]/MTF(Z成分)を求める。
【0196】
MTF逆変換部104は、X,Y,Z別にステップS250で求めた除算結果について高速逆フーリエ変換を実行してX,Y,Z別に原画像Ireal(x,y)を復元する(S260)。具体的には、式(5)に従って、IFFT[FFT[Xcam(x,y)]/MTF(X成分)]によりX原画像Xreal(x,y)を取得し、IFFT[FFT[Ycam(x,y)]/MTF(Y成分)]によりY原画像Yreal(x,y)を取得し、IFFT[FFT[Zcam(x,y)]/MTF(Z成分)]によりZ原画像Zreal(x,y)を取得する。
【0197】
MTF逆変換部104は、ステップS260でX,Y,Z別に復元したX原画像Xreal(x,y)、Y原画像Yreal(x,y)、Z原画像Zreal(x,y)を、RGB色空間の原画像に戻す、つまりRGB色空間の画像データに変換する(S270)。これにより、赤色原画像Rreal(x,y)、緑色原画像Greal(x,y)、青色原画像Breal(x,y)が復元される。
【0198】
MTF逆変換部104は、ステップS270でR,G,Bの色別に復元した赤色原画像Rreal(x,y)、緑色原画像Greal(x,y)、青色原画像Breal(x,y)に基づいて、特定領域に関してのカラーの復元画像を取得する(S280)。ステップS270の色変換処理を割愛して直接に、カラーの復元画像を取得するようにしてもよい。
【0199】
MTF逆変換部104は、回折補正済みの特定領域の抽出画像(その信号成分)と、回折補正処理を施していない背景領域の画像(その信号成分)とを合成して処理を完了させる(S40)。
【0200】
第3例の回折補正処理は、色変換処理を伴うので処理負荷は掛かるが、輝度成分と色成分とに分けて回折補正処理を行うので、補正係数を輝度成分と色成分とで異ならせることができる利点がある。また、画像情報を構成する各信号についてMTF逆変換処理を施すので、一部の信号に着目した処理よりも補正効果が高く、回折現象により撮像画像に現れる不鮮明さを精度よく補正できる。たとえば、3つ(たとえばR,G,B)の色成分の信号で画像を表わす場合に、第3例の補正処理とすることで、補正速度は、0.8倍程度(0.2は色変換処理によるロス分)になる。
【0201】
<回折補正処理:第4例(特定信号重視処理:輝度信号成分との相関が強い緑色)>
図19は、回折補正部100による回折補正処理の第4例を説明する図(フローチャート)である。第4例の回折補正処理は、撮像装置20で取得される画像情報を構成する複数の信号成分の少なくとも1つ(ただし全てではない)について処理する特定信号重視の手法を適用する方法である。
【0202】
以下では、画像情報を構成する複数(たとえばR,G,Bや色変換後のX,Y,ZやY,u,v)の内の何れか1つのみに着目した処理とする。以下、第2例との相違点を中心に説明する。なお、処理ステップを300番台で示し、第2例と同様の処理ステップには第2例と同じ10番台と1番台で示す。
【0203】
MTF逆変換部104は、式(5)に基づいて、光透過部30の形状、大きさ、分布、並びに、入射光(外光)の波長に基づき算出されるMTF逆変換処理をR,G,Bの何れか一色についてのみ施す、つまり、何れか一色についてのみ回折補正処理を施す。この際には、好ましくは、輝度信号成分との相関が相対的に強い緑色画像情報に着目して処理する、つまり、輝度信号成分との相関が強い緑色についてのみ回折補正処理を施す。
【0204】
たとえば、MTF逆変換部104は、式(2)と式(3)に基づいて、G色のMTFを求める(S330)。具体的には、G色の回折光強度Hdiff(kx,ky)を検出し、式(3)に基づいてG色のMTF(緑成分)を算出する。
【0205】
MTF逆変換部104は、光透過部30を通して撮像装置20で取得したG色の撮像Gデータについて高速フーリエ変換してG色のFFT[ ]を求める(S340)。具体的には、光透過部30を通して撮像装置20で撮像することで得た撮像GデータGcam(x,y)について高速フーリエ変換を実行することでFFT[Gcam(x,y)]を求める。
【0206】
MTF逆変換部104は、G色について、ステップS340で求めたFFT[Gcam(x,y)]をステップS330で求めたG色のMTF(緑成分)で除算することで、FFT[Gcam(x,y)]/MTF(緑成分)を求める(S350)。
【0207】
MTF逆変換部104は、G色についてステップS350で求めた除算結果について高速逆フーリエ変換を実行してG色についての原画像Greal(x,y)を復元する(S360)。具体的には、式(5)に従って、IFFT[FFT[Gcam(x,y)]/MTF(緑成分)]により緑色原画像Greal(x,y)を取得する。
【0208】
MTF逆変換部104は、ステップS360でG色について復元した緑色原画像Greal(x,y)と、それぞれ未処理のR色の撮像RデータRcam(x,y)およびB色の撮像BデータBcam(x,y)に基づいて、カラーの復元画像を取得する(S380)。
【0209】
第4例の回折補正処理は、画像情報を構成するR,G,Bの少なくとも一色(ただし全色でない)についてMTF逆変換処理を施すので、全信号成分について処理する第2例や第3例に比べて補正効果は劣るが処理負荷が軽減され、回折補正処理の高速化が図れる。たとえば、3つ(たとえばR,G,B)の色成分の信号で画像を表わす場合に、1色に着目した処理とすることで、補正速度が3倍になる。
【0210】
第4例では、R色やB色に着目して処理することも考えられるが、好ましくは輝度信号成分との相関が相対的に強い緑色画像情報に着目して処理することで、全信号成分について処理する第2例や第3例に比べても遜色のない補正効果が得られることが確認された。また、たとえば波長分布測定部によって外光における最も強い色成分を検出し、あるいは撮像した画像の信号から撮像画像における最も強い色成分を検出し、その色成分に対して処理を行なってもよい。補正効果と処理負荷の両面からバランスのよい回折補正処理が実現された。後述する第5例との比較では、色変換処理を伴わないので処理負荷は第5例よりも軽くなる。
【0211】
また、「処理面積縮小の手法」と「特定信号重視の手法」を併用することで、抽出した特定領域のみに対しての回折補正処理による効果(処理速度α・X倍)が加わるので、全体としての処理時間を大幅に短縮できる。また、たとえば、「処理面積縮小の手法」において、特定の色(たとえば青色)の領域あるいは特定の色成分が多い領域(たとえばRGB三原色のうち、Bの成分が最も多い領域)を「特定領域」として抽出し、かつ、その領域に対して、その特定の色成分についてMTF逆変換処理を行なえば、高速に処理を行ない かつその領域の補正効果も確保することもできる。
【0212】
図19に示した第4例の処理手順を第3例に対して適用する場合には、色変換処理(S210,S270)と対応した処理ステップを追加するととともに、輝度信号成分に着目して処理するとよい。この場合、MTFに関しては、MTF(Y成分)を特定して、FFT[Ycam(x,y)]/MTF(Y成分)について高速逆フーリエ変換を実行する。後述する第5例との比較では、輝度信号成分Yについて忠実に高速逆フーリエ変換を実行するので、処理負荷は第5例よりも重くなるが、輝度信号成分に着目するという点では忠実性が確保されるため第5例よりも補正効果が高くなる。たとえば、3つ(たとえばR,G,B)の色成分の信号で画像を表わす場合、補正速度は、3倍にはならないものの、2.5倍程度(0.5は色変換処理によるロス分)になる。
【0213】
<回折補正処理:第5例(特定信号重視処理:輝度信号成分)>
図30は、回折補正部100による回折補正処理の第5例を説明する図(フローチャート)である。第5例の回折補正処理は、撮像装置20で取得される画像情報を構成する各成分の撮像データの色空間を変換し、色変換後の複数の画像データの少なくとも1つ(ただし全てではない)について処理する方法である。以下では、色変換された複数(たとえばX,Y,ZやY,u,v)の画像データの内の何れか1つのみに着目した処理とする。以下、第3例との相違点を中心に説明する。なお、処理ステップを400番台で示し、第3例と同様の処理ステップには第3例と同じ10番台と1番台で示す。
【0214】
MTF逆変換部104は、式(5)に基づいて、光透過部30の形状、大きさ、分布、並びに、入射光(外光)の波長に基づき算出されるMTF逆変換処理を、ステップS410で取得された色変換後の複数の画像データの内の何れか1つについてのみ施す、つまり、何れか1つの信号成分についてのみ回折補正処理を施す。この際には、好ましくは、輝度信号成分に着目して処理する、つまり、色変換後の複数の画像データから輝度信号成分を抽出して、輝度信号成分との相関が相対的に強い緑色画像情報を参照して、輝度信号成分のみ回折補正処理を施す。以下では、RGB色空間をXYZ色空間に色変換したものとして説明する。
【0215】
たとえば、MTF逆変換部104は、式(2)と式(3)に基づいて、輝度信号成分YのMTFを求める(S430)。具体的には、G色の回折光強度Hdiff(kx,ky)を検出し、式(3)に基づいてG色のMTF(緑成分)を算出する。
【0216】
MTF逆変換部104は、色変換後のXYZデータから抽出した輝度信号成分Yの画像データ(変換Yデータ)について高速フーリエ変換して輝度信号成分YのFFT[ ]を求める(S440)。具体的には、変換YデータYcam(x,y)について高速フーリエ変換を実行することでFFT[Ycam(x,y)]を求める。
【0217】
MTF逆変換部104は、輝度信号成分Yについて、ステップS440で求めたFFT[Ycam(x,y)]をステップS430で求めたG色のMTF(緑成分)で除算することで、FFT[Ycam(x,y)]/MTF(緑成分)を求める(S450)。
【0218】
MTF逆変換部104は、輝度信号成分YについてステップS450で求めた除算結果について高速逆フーリエ変換を実行して輝度信号成分Yについての原画像Yreal(x,y)を復元する(S460)。具体的には、式(5)に従って、IFFT[FFT[Ycam(x,y)]/MTF(緑成分)]により緑色原画像Yreal(x,y)を取得する。
【0219】
MTF逆変換部104は、ステップS460で輝度信号成分Yについて復元した原画像Yreal(x,y)と、それぞれ未処理の変換XデータXcam(x,y)および変換ZデータZcam(x,y)を、RGB色空間の原画像に戻す、つまりRGB色空間の画像データに変換する(S470)。これにより、赤色原画像Rreal(x,y)、緑色原画像Greal(x,y)、青色原画像Breal(x,y)が復元される。
【0220】
MTF逆変換部104は、ステップS470でR,G,Bの色別に復元した赤色原画像Rreal(x,y)、緑色原画像Greal(x,y)、青色原画像Breal(x,y)に基づいて、カラーの復元画像を取得する(S480)。ステップS470の色変換処理を割愛して直接に、カラーの復元画像を取得するようにしてもよい。
【0221】
第5例の回折補正処理は、色変換処理を伴うので処理負荷は掛かるが、色変換後の各信号成分の少なくとも1つ(ただし全てでない)についてMTF逆変換処理を施すので全信号成分について処理する場合に比べて処理負荷が軽減される。したがって、全信号成分について処理する場合に比べて補正効果は劣るが、全体としての処理負荷は軽減される方向にあり、回折補正処理の高速化が図れる。
【0222】
第5例において、輝度信号成分に着目するとともに、輝度信号成分との相関が相対的に強い緑色画像情報を参照して輝度信号成分のみ回折補正処理を施すようにすれば、全信号成分について処理する場合に比べても遜色のない補正効果が得られることが確認された。補正効果と処理負荷の両面からバランスのよい回折補正処理となる。
【0223】
第5例は、MTFに関してはMTF(G成分)を特定して、FFT[Ycam(x,y)]/MTF(緑成分)について高速逆フーリエ変換を実行するので、輝度信号成分に着目するという点では第4例より忠実性が劣るが、MTF(Y成分)を求めずにMTF(緑成分)で代用するため処理負荷は第4例よりも軽くなる。たとえば、3つ(たとえばR,G,B)の色成分の信号で画像を表わす場合に、第5例の補正処理とすることで、補正速度は、3倍にはならないものの、2.8倍程度(第4例に対して0.3の改善がある)になる。
【0224】
[第1例〜第5例の纏め]
以上の説明から理解されるように、本実施形態の回折補正処理では、たとえば第1例〜第5例に挙げたものなど種々の手順が考えられるが、それらは処理速度と補正精度の各面で優劣がある。したがって、何れの手法を採用するかを、利用者が適宜選択できるようにするのがよい。
【0225】
<光透過部の変形例>
図31〜図33は、光透過領域12の光透過部30の変形例を示す図である。ここで、図31〜図32(1)は第1変形例を示し、図32(2)は第2変形例を示し、図33は第3変形例を示す。図31〜図32(1)においては、図面の簡素化のため、全ての光透過部30において、1つのある光透過部30に隣接する4つの光透過部30のそれぞれが、このある光透過部30の大きさと異なっているようには図示していない。
【0226】
[第1変形例]
光透過部30が微小な場合、光透過部30において回折現象が生じる結果、撮像装置20に結像する像にボケが生じ、また鮮明さに欠ける場合がある。そこで、第1変形例や第2変形例では、光透過部そのものについて、たとえば大きさ、形状、分布(配置ピッチや配置位置関係など)などに関して、予め回折現象が生じることを抑制するように工夫しておく。第1変形例(後述の第2変形例も)は、このような観点に基づくものである。
【0227】
図31〜図32(1)に示す第1変形例では、光透過領域12の光透過部30の状態をランダムにする、具体的には、光透過部30の大きさ、形状、分布の少なくとも1つをランダムとする。
【0228】
複数の光透過部30の大きさをランダムとする場合、着目する1つの光透過部30Aに対して水平方向や垂直方向に隣接する少なくとも2つの光透過部30のそれぞれの大きさを、光透過部30Aの大きさと異ならせることが望ましい。つまり、光透過部30Aの水平方向および/または垂直方向に配置された2つの光透過部30、より好ましくは、光透過部30Aに隣接する3つの光透過部30、より一層好ましくは、光透過部30Aに隣接する4つの光透過部30の大きさを、光透過部30Aの大きさと異ならせるとよい。
【0229】
図31に示す例は、一例として光透過領域12に6×3=18箇所の光透過部30を設け、着目する1つの光透過部30を光透過部30Aとし、光透過部30Aに対して水平方向に隣接する2つの光透過部30を光透過部30Bと光透過部30Cとし、垂直方向に隣接する2つの光透過部30を光透過部30Dと光透過部30Eとしている。光透過部30Bに対して水平方向に隣接する光透過部30A以外のものを光透過部30fとし、垂直方向に隣接する2つの光透過部30を光透過部30gと光透過部30hとしている。
【0230】
図31(1)に模式的に示すように、18箇所の光透過部30の全てにおいて、1つのある光透過部30に隣接する他の4つの光透過部30のそれぞれが、このある光透過部30の大きさと異なる構成とした。図31(1)において、光透過部30Aに着目すると、光透過部30Aの水平方向に隣接して配置された2つの光透過部30B,30C、および、垂直方向に隣接して配置された2つの光透過部30D,30Eのそれぞれは、光透過部30Aと大きさが異なっている。また、光透過部30Bに着目すると、光透過部30Bの水平方向に隣接して配置された2つの光透過部30A,30f、および、垂直方向に隣接して配置された2つの光透過部30g,30hのそれぞれは、光透過部30Bと大きさが異なっている。これによって、光透過領域12において回折現象が発生することを回避することができた。
【0231】
複数の光透過部30の形状をランダムとする場合、着目する1つの光透過部30Aに対して水平方向や垂直方向に隣接する少なくとも2つの光透過部30のそれぞれの形状を、この1つの光透過部30Aの形状と異ならせることが望ましい。つまり、光透過部30Aの水平方向および/または垂直方向に配置された2つの光透過部30、より好ましくは、光透過部30Aに隣接する3つの光透過部30、より一層好ましくは、光透過部30Aに隣接する4つの光透過部30の形状を、光透過部30Aの形状と異ならせるとよい。
【0232】
たとえば、図31(2)に模式的に示すように、18箇所の光透過部30の全てにおいて、1つのある光透過部30に隣接する他の4つの光透過部30のそれぞれが、このある光透過部30の形状と異なる構成とした。図31(2)において、光透過部30Aに着目すると、光透過部30Aの水平方向に隣接して配置された2つの光透過部30B,30C、および、垂直方向に隣接して配置された2つの光透過部30D,30Eのそれぞれは、光透過部30Aと形状が異なっている。また、光透過部30Bに着目すると、光透過部30Bの水平方向に隣接して配置された2つの光透過部30A,30f、および、垂直方向に隣接して配置された2つの光透過部30g,30hのそれぞれは、光透過部30Bと形状が異なっている。これによっても、光透過部30において回折現象が発生することを回避することができた。
【0233】
複数の光透過部30の分布をランダムとする場合、着目する1つの光透過部30Aに対して水平方向や垂直方向に隣接する少なくとも2つの光透過部30との配置位置関係が、この光透過部30Aに対し水平方向および/または垂直方向に隣接する光透過部30についての光透過部30Aと同様の関係における配置位置関係と異ならせることが望ましい。換言すると、着目する一の配列ピッチに対して水平方向および/または垂直方向に隣接する少なくとも2つの配列ピッチのそれぞれは、この一の配列ピッチと異なる形態である。つまり、水平方向に着目する配列ピッチPHAの水平方向に配置された2つの配列ピッチPを配列ピッチPHAと異ならせるとよいし、垂直方向に着目する配列ピッチPVAの垂直方向に配置された2つの配列ピッチPを配列ピッチPVAと異ならせるとよい。
【0234】
図32(1)に示す例は、一例として光透過領域12には5×5=25箇所の光透過部30を設け、水平方向における着目する光透過部30Aとの1つの配列ピッチPを配列ピッチPHAとし、配列ピッチPHAに対して水平方向に隣接する2つの配列ピッチPを配列ピッチPHBと配列ピッチPHCとしている。また、配列ピッチPHBに対して水平方向に隣接する配列ピッチPHA以外のものを配列ピッチPHfとしている。さらに、垂直方向における着目する光透過部30Aとの1つの配列ピッチPを配列ピッチPVAとし、配列ピッチPVAに対して垂直方向に隣接する2つの配列ピッチPを配列ピッチPVBと配列ピッチPVCとしている。また、配列ピッチPVBに対して垂直方向に隣接する2つの配列ピッチPを配列ピッチPVgと配列ピッチPVhとしている。
【0235】
図32(1)に模式的に示すように、25箇所の光透過部30の全てにおいて、水平方向における1つのある配列ピッチPに隣接する他の2つの配列ピッチPHのそれぞれがこのある配列ピッチPと異なり、かつ垂直方向における1つのある配列ピッチPに隣接する他の2つの配列ピッチPVのそれぞれがこのある配列ピッチPと異なる構成とした。図32(1)において、光透過部30Aに着目すると、配列ピッチPHAの水平方向に隣接して配置された2つの配列ピッチPHB,PHCのそれぞれは、配列ピッチPHAと異なっているし、配列ピッチPVAの垂直方向に隣接して配置された2つの配列ピッチPVB,PVCのそれぞれは、配列ピッチPVAと異なっている。また、光透過部30Bに着目すると、配列ピッチPHBの水平方向に隣接して配置された2つの配列ピッチPHA,PHfのそれぞれは、配列ピッチPVBと異なっているし、配列ピッチPVbの垂直方向に隣接して配置された2つの配列ピッチPVa,PVcのそれぞれは、配列ピッチPVbと異なっている。これによっても、光透過領域12において回折現象が発生することを回避することができた。
【0236】
光透過部30を構成する開口部65Aを、このような構成、構造が得られるように加工すればよい。ここで、光透過部30の大きさの最小値や最小形状は、光透過部30を設けるためのフォトリソグラフィ技術やエッチング技術における最小加工寸法(たとえば、F:0.5μm)に依存する。したがって、光透過部30の大きさは、面積F2の矩形形状(あるいは面積F2の矩形形状からフォトリソグラフィ技術上導かれる形状)を1ユニットとしたこのユニットの集合体によって規定されるし、光透過部30の形状も、このユニットの集合体によって規定される。
【0237】
第1変形例における光透過部の構成、構造は、第1〜第2実施形態における光透過部30に適用することができる。
【0238】
[第2変形例]
第2変形例では、光透過部を二重環状構造(二重中抜き構造)とした。具体的には、画像表示装置1における画像表示部10を構成する複数の画素の配置を図32(2)に模式的に示すが、光透過部30は、第1光透過部30Aおよび第2光透過部30Bから構成され、第1光透過部30Aを取り囲むように第2光透過部30Bが配置されている。図32(2)では、第1光透過部30Aおよび第2光透過部30Bの明確化のために、第1光透過部30Aおよび第2光透過部30Bに斜線を付した。第1光透過部30Aおよび第2光透過部30Bの大きさ、形状、配置状態、第1光透過部30Aと第2光透過部30Bとの位置関係の最適化を図ることで、回折現象が生じることを確実に抑制できた。
【0239】
第2変形例における光透過部の構成、構造は、第1〜第2実施形態における光透過部30に適用することができる。さらには、第1変形例と第2変形例を組み合わせてもよい。
【0240】
[第3変形例]
第3変形例は、光透過部30を井桁状や「L」字の形状にしたものである。すなわち、図33(1),(2)に画像表示部10を構成する複数の画素11(11R,11G,11B)の配置を模式的に示すように、第3変形例の撮像装置付き画像表示装置は、表示素子を含む画素11を複数配置してなる画像表示部10、画像表示部10に設けられた光透過領域12(光透過部30)、画像表示部10の背面側に配置された撮像装置20、並びに、光透過部30を通過した光を撮像装置20に集光する集光部21を有する。
【0241】
たとえば、図33(1)に示す例にあっては、光透過部30は、画素11の全ての周囲に設けられており、井桁状の形状を有する。すなわち、光透過部30が画素の境界に相当する辺の全てに設けられており、かつ隣接する画素11の間に共通して設けられている。また、図33(2)に示す例にあっては、光透過部30は、画素11の周囲の一部に設けられており、「L」字形状を有する。すなわち、光透過部30が画素11の境界に相当する辺の内の連続する2辺に設けられている。
【0242】
第3変形例では、光透過部30は、少なくとも1つ以上の画素11の周囲に設けられているが、具体的には、6×3=18個の画素11の周囲に設けられている。
【0243】
以上の点を除き、撮像装置付き画像表示装置は、第1〜第2実施形態の画像表示装置1と同様の構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0244】
第3変形例では、少なくとも1つ以上の画素11の周囲に設けられた光透過部30を通過した光が撮像装置20に集光される。したがって、正確に像を撮像装置20に結ぶために高精度の微小レンズを必要とせず、撮像装置付き画像表示装置の製造コストの増加を招くことがないし、撮像装置20に十分な光量の光を集光させることができる。
【0245】
<電子機器のモニタ装置の代替>
図34は、本実施形態の画像表示装置1が適用される電子機器の一例を示す図である。画像表示装置1Aや画像表示装置1Bは、たとえばパーソナルコンピュータを構成するモニタ装置の代替に限らず、各種の電子機器のモニタ装置の代替として使用することができる。たとえば、ノート型パーソナルコンピュータ(図34(1)参照)に組み込まれたモニタ装置の代替として使用することができる。携帯電話(図34(2)参照)や、図示しないが、PDA(携帯情報端末,Personal Digital Assistant)、ゲーム機器に組み込まれたモニタ装置、従来のテレビジョン受像機などの代替として使用することができる。何れも、画像表示部10には、図示しない光透過部30が形成されている光透過領域12が設けられ、表示面側と反対側の裏面には撮像装置20が設けられる。
【0246】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0247】
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0248】
さらには、前記の実施形態で説明した画像表示装置1や画像表示システム2は、さらなる変形を加えることができ、さらなる発明を抽出することもできる。以下に、幾つかの変形例を挙げる。なお、何れも第1実施形態に対する変形例で示すが、これには限らず他の実施形態にも適用できる。
【0249】
[第1変形例:位置検出]
図35〜図36に示す第1変形例は、撮像装置20を介して取得された画像情報に基づき被写体の位置情報を求める位置検出部71Cを備えるようにしたものである。位置検出部71Cは画像表示装置1Cに設けてもよいし周辺機器70Cに設けてもよい。
【0250】
先に説明した回折補正部100を備えた構成による作用効果も享受できるので、光透過部30による回折現象によるボケの影響を抑制でき、被写体の位置情報を精度よく取得できる。被写体として、たとえば、画像表示部10を観察する観察者(使用者)の手や指、眼球、使用者が手に持っている棒状の物体などを挙げることができる。
【0251】
位置検出部71Cによって被写体(たとえば、手や指、眼球、棒状の物体(たとえば、ペンや鉛筆など))の位置情報を時系列に連続して求めれば、被写体の動きを求めることができる。このため、被写体の動きに対応した各種の処理(たとえば、パーソナルコンピュータのモニタ装置における画像の上下、左右への移動、画面を閉じる処理、別の画面を開く処理など)を行なうことができる。被写体の動きと各種の処理との関係を位置検出部71Cに登録しておけばよい。
【0252】
場合によっては、被写体の位置情報から被写体の形状(たとえば、身体や手の形で表現される形状や、指の組合せで表現される形状、仕草など)を位置検出部71Cによって周知のアルゴリズムやソフトウェアに基づいて求めることで、被写体の形状に対応した各種の処理を行なうこともできる。また、位置検出部71Cによって被写体の向いている方向を求めれば、被写体の向いている方向に対応した各種の処理を行なうことができる。
【0253】
[第2変形例:3次元画像表示+位置検出]
図37〜図38に示す第2変形例は、画像表示部10の裏面側に複数(典型的には2つ)の撮像装置20を配置し、撮像装置20のそれぞれからの画像情報に基づき画像表示部10から使用者までの距離を位置検出部71Dが求めるようにしたものである。位置検出部71Dは画像表示装置1Dに設けてもよいし周辺機器70Dに設けてもよい。
【0254】
先に説明した回折補正部100を備えた構成による作用効果も享受できるので、光透過部30_1,30_2による回折現象によるボケの影響を抑制でき、観察者の位置情報を精度よく取得できる。
【0255】
観察者の位置情報を、観察者の両眼の位置データとすることができるし、画像表示部10から観察者までの距離データとすることもできる。また、観察者の位置情報を、複数の撮像装置20_1,20_2を介して撮像された画像データの観察者の両眼に基づき求めることができる。観察者の位置情報を画像表示部10に表示する構成とすることができ、これによって、観察者が3次元画像を容易に観察できるように、最適な3次元画像観察位置を観察者に明確に指示し、あるいは最適な3次元画像観察位置に観察者を誘導することができる。あるいは、画像表示部10に表示する画像を観察者の位置情報に基づいて最適化する構成とすることができる。
【0256】
[第3変形例:TV会議システム]
図39〜図50に示す第3変形例は、前記実施形態の仕組みをいわゆるテレビジョン電話会議システム(テレビ電話装置)に適用したものである。第3変形例は、撮像装置20を介して取得された画像情報を送出する情報送出部80と、外部から入力された画像情報に基づく画像を画像表示部10に表示する表示制御部82をさらに備えている。撮像装置20を介して取得された画像情報を情報送出部80によって外部に送出し、外部から入力された画像情報に基づく画像を表示制御部82によって画像表示部10に表示する。
【0257】
情報送出部80と表示制御部82は画像表示装置1Eに設けてもよいし周辺機器70Eに設けてもよい。図39では、便宜的に、情報送出部80と表示制御部82を画像表示装置1F(の本体)の台座部分に示している。同様の図示の手法は後述する他の変形例も適用する。
【0258】
第3変形例によれば、撮像装置20が画像表示部10の背面側に配置されているので、画像表示部10の正面に位置する使用者の顔を撮像することができ、画像表示部10に映し出される相手側の使用者の顔が自分の方を向いているため、従来のTV電話システムにあった互いの視線が合わないといった違和感を与えることがない。先に説明した回折補正部100を備えた構成による作用効果も享受できるので、光透過部30による回折現象によるボケの影響が抑制された状態の使用者の顔などの画像が相手方の画像表示部10に映し出される。
【0259】
[第4変形例:デジタルミラー]
図51〜図52に示す第4変形例は、前記実施形態の画像表示装置1をいわゆるデジタルミラーとして機能させるものである。
【0260】
第4変形例は、撮像装置20を介して取得された画像情報を記憶する画像情報記憶部86と、撮像装置20を介して取得された(取得されている状態も含み得る)画像情報および画像情報記憶部86に記憶された画像情報に基づく画像を画像表示部10に表示する表示制御部88をさらに備えている。画像情報記憶部86と表示制御部88は、画像表示装置1Fに設けてもよいし周辺機器70Fに設けてもよい。
【0261】
第4変形例によれば、画像表示部10において、過去と現在の使用者の比較結果を、別々のウインドウに表示することができる。先に説明した回折補正部100を備えた構成による作用効果も享受できるので、光透過部30による回折現象によるボケの影響が抑制された状態の使用者の顔などの画像が画像表示部10に映し出される。
【符号の説明】
【0262】
1…画像表示装置、2…画像表示システム、10…画像表示部、100…回折補正部、102…MTF形状記憶部、104…MTF逆変換部、11…画素、110…波長分布測定部、12…光透過領域、20…撮像装置、20a…撮像部、21…集光部、30…光透過部、70…周辺機器、90…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子を含む画素が複数配列されており、背面側に画像を撮像する撮像部が配置可能になっているとともに、前記撮像部と対応する領域に複数の光透過部が設けられている画像表示部と、
前記複数の光透過部を通して前記撮像部により取得された画像情報から抽出した特定領域の画像情報に対して前記光透過部による回折効果によって前記画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行ない、前記特定領域を除く背景領域の前記回折補正処理がなされていない画像情報と前記特定領域について前記回折補正処理を行なった画像情報とを合成する回折補正部と、
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
前記回折補正部は、前記画像情報をフーリエ変換し、フーリエ変換した情報を、前記光透過部の配置状態と対応したレスポンス関数を用いて逆フーリエ変換することで、前記回折補正処理を行なう
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記回折補正部は、前記撮像部により取得された画像情報の内の、予め定められている領域の画像を抽出する
請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記回折補正部は、前記撮像部により取得された画像情報の内の、予め定められている特定の対象物の領域の画像を抽出する
請求項1または請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記回折補正部は、前記特定の対象物を人物、人物の顔、人物の顔の特注部位の何れかとする
請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記回折補正部は、前記画像情報を表す複数の信号のそれぞれについて、前記回折補正処理を行なう
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記回折補正部は、前記画像情報を表す複数の信号の内の少なくとも1つ(ただし全てではない)について、前記回折補正処理を行なう
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記回折補正部は、前記画像情報を表す複数の信号の内で、輝度情報との相関があるものについて、前記回折補正処理を行なう
請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記回折補正部は、前記画像情報を表す複数の信号を少なくとも輝度情報を表す信号成分が含まれるように色空間変換し、変換後の複数の信号の内で、前記輝度情報を表す信号成分について、前記回折補正処理を行なう
請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記回折補正部は、前記画像情報を表す複数の信号を少なくとも輝度情報を表す信号成分が含まれるように色空間変換し、前記輝度情報を表す信号成分をフーリエ変換し、フーリエ変換した情報を、輝度情報との相関がある成分についての前記光透過部の配置状態と対応したレスポンス関数を用いて逆フーリエ変換することで、前記回折補正処理を行なう
請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項11】
外光の波長分布を測定する波長分布測定部を備え、
前記回折補正部は、前記波長分布測定部により測定された外光の波長分布を参照して前記回折補正処理を行なう
請求項1から請求項10の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記光透過部の配置状態が不均一である
請求項1から請求項11の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記光透過部は、第1光透過部および第2光透過部から構成され、
前記第1光透過部を取り囲むように前記第2光透過部が配置されている
請求項1から請求項11の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記光透過部を通過した光を前記撮像部に集光する集光部
を備えた請求項1から請求項13の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記表示素子は、発光素子である
請求項1から請求項14の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項16】
画像を撮像する撮像部と、
表示素子を含む画素が複数配列されており、背面側に前記撮像部が配置されているとともに、前記撮像部と対応する領域に複数の光透過部が設けられている画像表示部と、
前記複数の光透過部を通して前記撮像部により取得された画像情報から抽出した特定領域の画像情報に対して前記光透過部による回折効果によって前記画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行ない、前記特定領域を除く背景領域の前記回折補正処理がなされていない画像情報と前記特定領域について前記回折補正処理を行なった画像情報とを合成する回折補正部と、
を備えた電子機器。
【請求項17】
表示素子を含む画素が複数配列されており、背面側に画像を撮像する撮像部が配置可能になっているとともに、前記撮像部と対応する領域に複数の光透過部が設けられている画像表示部の前記複数の光透過部を通して前記撮像部により取得された画像情報に対して、前記光透過部による回折効果によって前記画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行なう回折補正部を備え、
前記回折補正部は、
前記複数の光透過部を通して前記撮像部により取得された画像情報から特定領域の画像情報し、
抽出した特定領域の画像情報に対して前記光透過部による回折効果によって前記画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行ない、
前記特定領域を除く背景領域の前記回折補正処理がなされていない画像情報と前記特定領域について前記回折補正処理を行なった画像情報とを合成する
電子機器。
【請求項18】
画像を撮像する撮像装置と、
表示素子を含む画素が複数配列されており、背面側に前記撮像装置が配置可能になっているとともに、前記撮像装置と対応する領域に複数の光透過部が設けられている画像表示部を具備した画像表示装置と、
前記複数の光透過部を通して前記撮像装置により取得された画像情報から抽出した特定領域の画像情報に対して前記光透過部による回折効果によって前記画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行ない、前記特定領域を除く背景領域の前記回折補正処理がなされていない画像情報と前記特定領域について前記回折補正処理を行なった画像情報とを合成する回折補正部と、
を備えた画像表示システム。
【請求項19】
表示素子を含む画素が複数配列されており、背面側に画像を撮像する撮像部が配置可能になっているとともに、前記撮像部と対応する領域に複数の光透過部が設けられている画像表示部に画像を表示し、
表示面側の被写体を前記複数の光透過部を通して前記撮像部により撮像して画像情報を取得し、
取得された画像情報から特定領域の画像情報を抽出し、
抽出した特定領域の画像情報に対して前記光透過部による回折効果によって前記画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行ない、
前記特定領域を除く背景領域の前記回折補正処理がなされていない画像情報と前記特定領域について前記回折補正処理を行なった画像情報とを合成する
画像取得方法。
【請求項20】
表示素子を含む画素が複数配列されており、背面側に画像を撮像する撮像部が配置可能になっているとともに前記撮像部と対応する領域に複数の光透過部が設けられている画像表示部の前記複数の光透過部を通して前記撮像部により表示面側の被写体を撮像して取得された画像情報から特定領域の画像を抽出する工程と、
抽出した前記特定領域の画像情報に対して前記光透過部による回折効果によって前記画像情報に現われる影響を抑制する回折補正処理を行なう工程と、
前記特定領域を除く背景領域の前記回折補正処理がなされていない画像情報と前記特定領域について前記回折補正処理を行なった画像情報とを合成する工程と、
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−259089(P2011−259089A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130272(P2010−130272)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】