説明

画像表示装置の制御方法

【課題】種々の原因により表示処理部の誤動作が発生した場合でも、必要最小限の時間で表示処理の正常化が可能となる画像表示装置の制御方法等を提供する。
【解決手段】第1の表示処理部20及び第2の表示処理部30を有するプロジェクター10は、第1の表示処理部20の初期設定を行い、第1の表示処理部20の初期設定状態を検査する。プロジェクター10は、第1の表示処理部20の初期設定状態が異常であると検出されたとき、第1の表示処理部20の再初期設定を行う。また、プロジェクター10は、第2の表示処理部30の初期設定を行い、第2の表示処理部30の初期設定状態を検査する。プロジェクター10は、第2の表示処理部30の初期設定状態が異常であると検出されたとき、第2の表示処理部30の再初期設定を行う。表示処理部毎に、初期設定状態を検査し、再初期設定を行うことで、表示処理の正常化に要する時間を短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の制御方法等に関し、画像表示装置として例えばプロジェクターの制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置としてのプロジェクターは、画像調整、画質向上等の複数の表示処理を行うことにより表示画質のより一層の向上を図っている。そのため、プロジェクターは、各表示処理を行う表示処理デバイス等を複数備えており、外部電源投入等によるプロジェクターの電源起動時に各表示処理デバイスが有するレジスターセットに対して初期設定を行う。例えばプロジェクターは、初期設定が行われたレジスターセットの設定値に対応した動作条件で画像表示を行う。
【0003】
ところが、初期設定時の通信エラーやランプ点灯ノイズ等により、表示処理デバイスが誤動作を起こし、プロジェクターが異常動作を行う場合がある。そこで、例えば特許文献1及び特許文献2には、ランプ点灯ノイズに起因した誤動作を回避する技術が開示されている。特許文献1には、液晶プロジェクターの光源用ランプの点灯動作準備期間において、画像メモリーへのアクセスを禁止することで、ランプ点灯ノイズに起因した画像メモリーの誤設定を回避する技術が開示されている。また、特許文献2には、ランプ点灯後、ランプ点灯ノイズの発生時期を除いた期間内に映像信号処理回路の初期設定処理を行うようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−146047号公報
【特許文献2】特開2007−34263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の表示処理デバイスを備えたプロジェクターにおいて、ランプ点灯ノイズや通信エラー等が発生した場合に、いずれかの表示処理デバイスが誤動作を起こすと、異常表示状態になったり、構成部品の劣化や故障に至ったりする可能性がある。しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された技術を用いて、正常表示への復帰を図るため、無条件に全表示処理デバイスに対して再初期設定を行うと、電源投入時から表示開始までの時間が長くなるという問題がある。この点については、プロジェクターに限らず、画像表示装置全般についても同様である。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、種々の原因により表示処理部の誤動作が発生した場合でも、必要最小限の時間で表示処理の正常化を可能とする画像表示装置の制御方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の第1の態様は、第1の表示処理部及び第2の表示処理部を有する画像表示装置の制御方法が、前記第1の表示処理部の初期設定を行う第1の初期設定ステップと、前記第1の初期設定ステップにおいて行われた前記第1の表示処理部の初期設定状態を検査する第1の検査ステップと、前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部の再初期設定を行う第1の再初期設定ステップと、前記第2の表示処理部の初期設定を行う第2の初期設定ステップと、前記第2の初期設定ステップにおいて行われた前記第2の表示処理部の初期設定状態を検査する第2の検査ステップと、前記第2の検査ステップにおいて前記第2の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第2の表示処理部の再初期設定を行う第2の再初期設定ステップとを含む。
【0008】
本態様によれば、表示処理部毎に、初期設定後に初期設定状態を検査し、初期設定状態が異常であると検出された表示処理部のみ再初期設定を行うようにしたので、通信エラー等による誤動作に対して、必要最小限の時間で表示処理の正常化が可能となる。
【0009】
(2)本発明の第2の態様に係る画像表示装置の制御方法は、第1の態様において、前記第2の初期設定ステップでは、前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が正常であると検出されたとき、前記第2の表示処理部の初期設定を行う。
本態様によれば、第1の表示処理部の初期設定状態が正常と検出されない限り、第2の表示処理部の良き設定を行わないようにすることで、表示処理部単位で初期設定状態を正常化して、必要最小限の時間での表示処理の正常化が可能となる。
【0010】
(3)本発明の第3の態様は、第1の表示処理部、第2の表示処理部及びランプを有する画像表示装置の制御方法が、前記第1の表示処理部の初期設定を行う第1の初期設定ステップと、前記第2の表示処理部の初期設定を行う第2の初期設定ステップと、前記第1の表示処理部及び前記第2の表示処理部の初期設定後、前記ランプの点灯を行うランプ点灯ステップと、前記ランプの点灯後、前記第1の表示処理部の初期設定状態を検査する第1の検査ステップと、前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部の再初期設定を行う第1の再初期設定ステップと、前記ランプの点灯後、前記第2の表示処理部の初期設定状態を検査する第2の検査ステップと、前記第2の検査ステップにおいて前記第2の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第2の表示処理部の再初期設定を行う第2の再初期設定ステップとを含む。
【0011】
本態様においては、各表示処理部の初期設定を行った後にランプ点灯を行い、少なくともランプ点灯直後に各表示処理部の初期設定状態を検査し、異常であると検出された表示処理部のみ、再初期設定を行う。これにより、ランプ点灯ノイズで初期設定状態が異常となり、表示処理部が誤動作してしまう場合であっても、必要最小限の時間で表示処理の正常化を可能にすることができる。その結果、画像表示装置の構成部品のダメージをできるだけ小さくし、異常な動作状態の期間を短縮することができる。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、第1の表示処理部、第2の表示処理部及びランプを有する画像表示装置の制御方法が、読み出し可能に構成される初期設定対象のレジスターセットを有する前記第1の表示処理部の初期設定を行う第1の初期設定ステップと、読み出し不可能に構成される初期設定対象のレジスターセットを有する前記第2の表示処理部の初期設定を行う第2の初期設定ステップと、前記第1の表示処理部及び前記第2の表示処理部の初期設定後、前記ランプの点灯を行うランプ点灯ステップと、前記ランプの点灯後、前記第1の表示処理部の初期設定状態を検査する第1の検査ステップと、前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部の再初期設定を行う第1の再初期設定ステップと、前記ランプの点灯後、前記第2の表示処理部の再初期設定を行う第2の再初期設定ステップとを含む。
【0013】
本態様においては、読み出しが不可能に構成されたレジスターセットを有する表示処理部については、ランプ点灯直後に、再初期設定を必ず行うようにしている。これにより、読み出しが不可能に構成されたレジスターセットにより初期設定状態が正常であるか否かの検査ができない場合であっても、この種のレジスターセットを有する表示処理部の初期設定を確実に行うことができる。その結果、初期設定対象として、読み出しが可能なレジスターと読み出しが不可能なレジスターとが混在する画像表示装置において、短期間での表示処理の正常化を確実に行うことができる。
【0014】
(5)本発明の第5の態様に係る画像表示装置の制御方法は、第1の態様乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記第1の再初期設定ステップでは、前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部及び前記第2の表示処理部の再初期設定を行う。
本態様によれば、表示処理部の初期設定の順序を考慮する必要がある場合には、前段側に配置される表示処理部の再初期設定に続けて、後段側に配置される表示処理部の再初期設定を行うことで、表示処理の正常化を短期間で行うことができるようになる。
【0015】
(6)本発明の第6の態様に係る画像表示装置の制御方法は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記第1の検査ステップ及び前記第2の検査ステップのうち少なくとも一方では、検査対象の表示処理部が有するレジスターのライトデータ値がリードデータ値と不一致のとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出する。
本態様によれば、簡素な制御により初期設定状態の異常又は正常を検出することができるようになる。
【0016】
(7)本発明の第7の態様に係る画像表示装置の制御方法は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記第1の検査ステップ及び前記第2の検査ステップのうち少なくとも一方では、検査対象の表示処理部が有するレジスターのリードデータ値がデフォルト値と一致したとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出する。
本態様によれば、リセット信号を伝搬する信号線にノイズが混入して誤ってリセットがかかったときの表示処理部の初期設定状態の異常を検出することができるようになる。
【0017】
(8)本発明の第8の態様に係る画像表示装置の制御方法は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記第1の設定状態検査ステップ及び前記第2の設定状態検査ステップのうち少なくとも一方では、所定時間経過後にビジー信号が非アクティブに設定されないとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出する。
本態様によれば、簡素な時間監視により表示処理部の初期設定状態が異常であるか否かを検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態におけるプロジェクターの構成例の機能ブロック図。
【図2】第1の実施形態におけるプロジェクターのハードウェア構成例のブロック図。
【図3】第1の実施形態におけるプロジェクターの起動シーケンスの一例を示すフロー図。
【図4】第1の実施形態の比較例におけるプロジェクターの起動シーケンスの一例を示すフロー図。
【図5】第2の実施形態におけるプロジェクターの起動シーケンスの一例を示すフロー図。
【図6】第2の実施形態におけるプロジェクターの起動シーケンスの一例を示すフロー図。
【図7】第3の実施形態におけるプロジェクターの起動シーケンスの一例を示すフロー図。
【図8】第3の実施形態におけるプロジェクターの起動シーケンスの一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
以下、本発明に係る画像表示装置としてプロジェクターを例に説明するが、本発明に係る画像表示装置はこれに限定されるものではない。
【0020】
〔第1の実施形態〕
図1に、本発明の第1の実施形態におけるプロジェクターの構成例の機能ブロック図を示す。
画像表示装置としてのプロジェクター10は、第1の表示処理部20、第2の表示処理部30、投射部40、ランプ50、及び制御部60を備えている。制御部60は、第1の初期設定部61、第1の検査部62、第1の再初期設定部63、第2の初期設定部64、第2の検査部65、第2の再初期設定部66、及びランプ点灯部70を備えている。
第1の表示処理部20は、図示しない画像信号供給装置からの画像信号に対して第1の表示処理を行う。第2の表示処理部30は、第1の表示処理部20によって行われた第1の表示処理後の画像信号に対して第2の表示処理を行う。投射部40は、ランプ50からの光を、第2の表示処理後の画像信号に基づいて変調し、図示しないスクリーンに画像を投写する。制御部60は、プロジェクター10の全体の制御を司り、例えばプロジェクター10の外部電源投入後に行われる起動シーケンスにおいて、第1の表示処理部20及び第2の表示処理部30の初期化処理やランプ50の点灯制御を行う。
なお、図1においてプロジェクター10は、2つの表示処理部を備える例を示したが、3以上の複数の表示処理部を備えてもよい。また、第1の表示処理及び第2の表示処理は、画像調整、画質向上等を目的とした公知の表示処理である。
【0021】
プロジェクター10の外部電源投入後の起動シーケンスにおいては、第1の初期設定部61は、第1の表示処理部20の初期設定を行う。第1の検査部62は、第1の初期設定部61によって行われた第1の表示処理部20の初期設定状態を検査する。第1の再初期設定部63は、第1の検査部62によって第1の表示処理部20の初期設定状態が異常であると検出されたとき、第1の表示処理部20の再初期設定を行う。
また、第2の初期設定部64は、第2の表示処理部30の初期設定を行う。第2の検査部65は、第2の初期設定部64によって行われた第2の表示処理部30の初期設定状態を検査する。第2の再初期設定部66は、第2の検査部65によって第2の表示処理部30の初期設定状態が異常であると検出されたとき、第2の表示処理部30の再初期設定を行う。
更にランプ点灯部70は、第1の表示処理部20及び第2の表示処理部30の各々の初期設定後にランプ50を点灯する制御を行う。
【0022】
このような構成を有するプロジェクター10は、第1の表示処理部20及び第2の表示処理部30の少なくとも1つの表示処理部により表示処理された画像信号に対応した画像を表示することができる。このとき、プロジェクター10は、電源起動時に各表示処理部の初期設定を行い、初期設定直後に各表示処理部の初期設定状態を検査する。そして、プロジェクター10は、初期設定状態が異常であると検出された表示処理部のみ、再初期設定を行う。
こうすることで、通信エラー等により初期設定状態が異常となり、表示処理部が誤動作してしまう場合であっても、必要最小限の時間で表示処理の正常化を可能にすることができるようになる。
【0023】
また、第2の初期設定部64は、第1の表示処理部20の初期設定状態が正常と検出されない限り、第2の表示処理部30の初期設定を行わないことが望ましい。
こうすることで、表示処理部単位で初期設定状態を正常化して、必要最小限の時間でプロジェクター10の表示処理の正常化が可能となる。
【0024】
以下、図1のプロジェクター10のより具体的な構成例及び制御例について説明する。
図2に、第1の実施形態におけるプロジェクターのハードウェア構成例のブロック図を示す。図2は、表示パネルを用いたプロジェクターの構成例を表す。
プロジェクター100は、第1の表示処理デバイス110、第2の表示処理デバイス120、第3の表示処理デバイス130、第4の表示処理デバイス140、表示パネル150、電源部160、及びランプ170を備えている。また、プロジェクター100は、メイン中央演算処理装置(Central Processing Unit:以下、CPU)200、及びサブCPU210を備えている。なお、図2ではプロジェクター100が4つの表示処理デバイスを有するものとして説明するが、2つ以上の表示処理デバイスを有していればよい。
メインCPU200は、バスBUS1や各種信号線(図示せず)を介して、第1の表示処理デバイス110、第3の表示処理デバイス130、及び第4の表示処理デバイス140と接続されており、これらの表示処理デバイスの制御や監視を行う。サブCPU210は、バスBUS2を介して第2の表示処理デバイス120と接続されており、第2の表示処理デバイス120の制御や監視を行う。メインCPU200は、サブCPU210を介して、第2の表示処理デバイス120の制御や監視を行う。
【0025】
第1の表示処理デバイス110は、図示しない画像信号供給装置により供給される画像信号に対して画像調整を目的とした表示処理を行う集積回路装置である。第1の表示処理デバイス110は、台形歪み補正、ガンマ補正処理、色補正処理、明るさ補正処理、及びコントラスト補正処理の少なくとも1つの処理を行う。第1の表示処理デバイス110は、バスBUS1を介してメインCPU200によって書き込み及び読み出しが可能に構成された1又は複数のレジスター(設定レジスター、制御レジスター)を有するレジスターセットRS1を備えている。第1の表示処理デバイス110は、レジスターセットRS1に設定された設定値に対応した表示処理を行う。
【0026】
第2の表示処理デバイス120は、第1の表示処理デバイス110の出力に対して画質向上を目的とした表示処理を行う集積回路装置である。第2の表示処理デバイス120は、超解像処理、及び中間フレーム生成処理(2倍速、4倍速等)の少なくとも1つの処理を行う。第2の表示処理デバイス120は、バスBUS2を介してサブCPU210によって書き込み及び読み出しが可能に構成された1又は複数のレジスターを有するレジスターセットRS2を備えている。第2の表示処理デバイス120は、レジスターセットRS2に設定された設定値に対応した表示処理を行う。サブCPU210は、メインCPU200からの指示に対応した設定値をレジスターセットRS2に設定する。
【0027】
第3の表示処理デバイス130は、第2の表示処理デバイス120の出力に対して表示パネル150における画質補正を目的とした表示処理を行う集積回路装置である。第3の表示処理デバイス130は、色むら補正処理、筋むら補正処理、ゴースト補正処理、及びクロストーク補正処理の少なくとも1つの処理を行う。第3の表示処理デバイス130は、バスBUS1を介してメインCPU200によって書き込み及び読み出しが可能に構成された1又は複数のレジスターを有するレジスターセットRS3を備えている。第3の表示処理デバイス130は、レジスターセットRS3に設定された設定値に対応した表示処理を行う。
【0028】
第4の表示処理デバイス140は、第3の表示処理デバイス130の出力に基づいて表示パネル150の駆動処理(広義には、表示処理)を行う集積回路装置である。具体的には、第4の表示処理デバイス140は、画像信号のシリアル−パラレル変換処理、画像信号のディジタル−アナログ変換処理、及び駆動タイミング信号を生成する。第4の表示処理デバイス140は、バスBUS1を介してメインCPU200によって書き込みが可能で、且つ、読み出しが不可能に構成された1又は複数のレジスターを有するレジスターセットRS4を備えている。第4の表示処理デバイス140は、レジスターセットRS4に設定された設定値に対応した駆動条件で、表示パネル150の駆動処理を行う。
【0029】
表示パネル150は、第4の表示処理デバイス140の出力に基づいて、各画素に照射されるランプ170からの光の透過率を制御することにより画像を形成する光変調素子である。表示パネル150が液晶ライトバルブにより実現される場合、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶が密閉封入されて形成される。
電源部160は、プロジェクター100の外部電源の投入後、プロジェクター100を構成する各部に対応した電源を供給する。具体的には、電源部160は、メインCPU200に対してCPU系電源として電源PW1を供給し、第1の表示処理デバイス110〜第4の表示処理デバイス140に対してディジタル系電源として電源PW2を供給する。また、電源部160は、第4の表示処理デバイス140及び表示パネル150に対してアナログ系電源として電源PW3を供給し、ランプ170に対して電源PW4を供給する。電源PW2〜PW4については、電源部160は、メインCPU200からの制御により各部に供給を開始する。
ランプ170は、例えば超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、又はキセノンランプ等の放電発光を利用したランプや、ハロゲンランプ等の熱発光型のランプであり、照射光を表示パネル150に照射する。
【0030】
メインCPU200は、プログラムが記憶されるメモリー(図示せず)を備えており、該メモリーに記憶されるプログラムに対応した処理を実行することで、ソフトウェア処理を行うことができる。メインCPU200は、このソフトウェア処理により、第1の表示処理デバイス110、第3の表示処理デバイス130、及び第4の表示処理デバイス140における各表示処理のオン・オフ制御、表示処理条件の設定等の制御を行ったり、各表示処理デバイスの監視を行ったりする。具体的には、メインCPU200は、まず、アクセス対象の表示処理デバイスのチップセレクト信号をアクティブに設定する。そして、メインCPU200は、当該表示処理デバイスに対してクロック信号を供給し、該表示処理デバイスが有するレジスターセットに対してクロック信号に同期したデータ(ライトデータ、リードデータ)の送信又は受信を行う。
【0031】
また、第2の表示処理デバイス120については、メインCPU200は、第2の表示処理デバイス120の制御等を行うサブCPU210を介して、第2の表示処理デバイス120の制御を行う。具体的には、メインCPU200は、サブCPU210を介して、第2の表示処理デバイス120における表示処理のオン・オフ制御、表示処理条件の設定等の制御を行ったり、第2の表示処理デバイス120の監視を行ったりする。このとき、サブCPU210は、メインCPU200に対してビジー信号Busyを出力し、メインCPU200がサブCPU210にアクセス可能であるか否かを通知する。サブCPU210は、例えば制御対象の第2の表示処理デバイス120が有するレジスターセットへのアクセス処理中にビジー信号Busyをアクティブに設定する。一方、サブCPU210は、第2の表示処理デバイス120が有するレジスターセットへのアクセスが可能になったときにビジー信号Busyを非アクティブに設定する。メインCPU200は、ビジー信号Busyが非アクティブに設定されたときコマンドを発行して、サブCPU210に対して上記の第2の表示処理デバイス120の制御等を指示する。
【0032】
サブCPU210は、メインCPU200と同様に、プログラムが記憶されるメモリー(図示せず)を備えており、該メモリーに記憶されるプログラムに対応した処理を実行することで、ソフトウェア処理を行うことができる。サブCPU210は、このソフトウェア処理により、第2の表示処理デバイス120の制御等を行う。具体的には、サブCPU210は、第2の表示処理デバイス120に対して例えばクロック信号を供給し、第2の表示処理デバイス120が有するレジスターセットに対してクロック信号に同期したデータ(ライトデータ、リードデータ)の送信又は受信を行う。
【0033】
図2において、図1の制御部60の機能は、メインCPU200によって実現される。図1の第1の表示処理部20の機能は、例えば第1の表示処理デバイス110によって実現される。図1の第2の表示処理部30の機能は、例えば第2の表示処理デバイス120及びサブCPU210によって実現される。図1の投射部40の機能は、表示パネル150及び図示しない投射レンズ等によって実現される。図1のランプ50の機能は、ランプ170によって実現される。
プロジェクター100の外部電源投入時の起動シーケンスにおいて、メインCPU200が、各表示処理デバイスに対応したリセット信号の発行及び解除を行った後、初期化を行う。メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110に対してリセット信号Reset1、サブCPU210に対してリセット信号Reset2、第3の表示処理デバイス130に対してリセット信号Reset3の発行及び解除を行う。
【0034】
図3に、プロジェクター100の起動シーケンスの一例を示す。図3において、第1の表示処理デバイス110は図1の第1の表示処理部20に対応させ、第2の表示処理デバイス120及びサブCPU210は図1の第2の表示処理部30に対応させることができる。
外部電源が投入されると、電源部160は、メインCPU200に対して電源PW1の供給を開始する(ステップS1)。これ以降、メインCPU200は、プロジェクター100の初期設定等を行うことができるようになる。
プロジェクター100は、図示しない電源ボタンを有しており、メインCPU200は、この電源ボタンの押下を監視する(ステップS2:N)。電源ボタンの押下が検出されたとき(ステップS2:Y)、メインCPU200は、電源部160を制御して、第1の表示処理デバイス110〜第4の表示処理デバイス140に対して電源PW2の供給を開始させる(ステップS3)。
電源PW2の供給が開始されると、メインCPU200は、電源が安定する電源安定期間として20m秒だけ待つ(ステップS4)。
【0035】
電源安定期間が経過すると、メインCPU200は、リセット信号Reset1を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset1を解除する(ステップS5)。
次に、メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110の初期設定を行う(ステップS6、第1の初期設定ステップ)。具体的には、メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110が有する初期設定対象のレジスターセットRS1に対して初期設定を行う。この初期設定は、初期設定対象のレジスターセットを構成する各レジスターに、予め決められた初期設定値を設定することで実現される(以下、同様)。
続いて、メインCPU200は、ステップS6において初期設定が行われた第1の表示処理デバイス110の初期設定状態を検査する(ステップS7、第1の検査ステップ)。
ステップS7において初期設定状態が異常であると検出されたとき(ステップS7:N)、メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110の再初期設定(リトライ)を行うか否かを判別する(ステップS8)。
外部電源投入後における第1の表示処理デバイス110の再初期設定の繰り返し回数が0回〜2回のとき(ステップS8:Y)、メインCPU200は、ステップS5に戻り、第1の表示処理デバイス110の再初期設定を行う。このとき、再初期設定時におけるステップS6は、第1の再初期設定ステップに相当する。
再初期設定の繰り返し回数が3回目のとき(ステップS8:N)、メインCPU200は、所与の異常処理を行い(ステップS9)、一連の処理を終了する(エンド)。異常処理が行われたとき、プロジェクター100は、少なくとも電源PW4をオフし、表示を開始しないことが望ましい。
【0036】
ステップS7において初期設定状態が正常であると検出されたとき(ステップS7:Y)、メインCPU200は、リセット信号Reset2を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset2を解除する(ステップS10)。
次に、メインCPU200は、第2の表示処理デバイス120の初期設定を行うために、サブCPU210を起動する(ステップS11)。
そして、メインCPU200は、起動したサブCPU210を介して、第2の表示処理デバイス120の初期設定を行う(ステップS12、第2の初期設定ステップ)。即ち、ステップS12では、ステップS7において第1の表示処理デバイス110の初期設定状態が正常と検出されない限り、第2の表示処理デバイス120の初期設定が行われない。このステップS12では、具体的には、メインCPU200からの指示を受けたサブCPU210が、第2の表示処理デバイス120が有する初期設定対象のレジスターセットRS2に対して初期設定を行う。
続いて、メインCPU200は、ステップS12において初期設定が行われた第2の表示処理デバイス120の初期設定状態を検査する(ステップS13、第2の検査ステップ)。
ステップS13において初期設定状態が異常であると検出されたとき(ステップS13:N)、メインCPU200は、第2の表示処理デバイス120の再初期設定を行うか否かを判別する(ステップS14)。
外部電源投入後における第2の表示処理デバイス120の再初期設定の繰り返し回数が0回〜2回のとき(ステップS14:Y)、メインCPU200は、ステップS10に戻り、第2の表示処理デバイス120の再初期設定を行う。このとき、再初期設定時におけるステップS12は、第2の再初期設定ステップに相当する。
再初期設定の繰り返し回数が3回目のとき(ステップS14:N)、メインCPU200は、ステップS9に進む。
【0037】
ステップS13において初期設定状態が正常であると検出されたとき(ステップS13:Y)、メインCPU200は、リセット信号Reset3を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset3を解除する(ステップS15)。
次に、メインCPU200は、第3の表示処理デバイス130の初期設定を行う(ステップS16)。具体的には、メインCPU200は、第3の表示処理デバイス130が有する初期設定対象のレジスターセットRS3に対して初期設定を行う。
続いて、メインCPU200は、ステップS16において初期設定が行われた第3の表示処理デバイス130の初期設定状態を検査する(ステップS17)。
ステップS17において初期設定状態が異常であると検出されたとき(ステップS17:N)、メインCPU200は、第3の表示処理デバイス130の再初期設定(リトライ)を行うか否かを判別する(ステップS18)。
外部電源投入後における第3の表示処理デバイス130の再初期設定の繰り返し回数が0回〜2回のとき(ステップS18:Y)、メインCPU200は、ステップS15に戻り、第3の表示処理デバイス130の再初期設定を行う。再初期設定の繰り返し回数が3回目のとき(ステップS18:N)、メインCPU200は、ステップS9に進む。
【0038】
ステップS17において初期設定状態が正常であると検出されたとき(ステップS17:Y)、メインCPU200は、第4の表示処理デバイス140の初期設定を行う(ステップS19)。具体的には、メインCPU200は、第4の表示処理デバイス140が有する初期設定対象のレジスターセットRS4に対して初期設定を行う。
続いて、メインCPU200は、電源部160を制御して、第4の表示処理デバイス140に対して電源PW3の供給を開始させる(ステップS20)。
更に、メインCPU200は、電源部160を制御して、ランプ170に対して電源PW4の供給を開始させる(ステップS21)。そして、プロジェクター100は、ランプ170の点灯を行う(ステップS22)。
ランプ点灯後は、プロジェクター100は、第1の表示処理デバイス110〜第4の表示処理デバイス140の少なくとも1つによる表示処理後の画像信号に基づいて、ランプ170からの光を光変調して画像を表示する(ステップS23)。その後、プロジェクター100は、一連の処理を終了する(エンド)。
【0039】
なお、ステップS7、ステップS13及びステップS17の少なくとも1つでは、検査対象の表示処理部が有するレジスターのライトデータ値がリードデータ値と不一致のとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出される。
これにより、簡素な制御により初期設定状態の異常又は正常を検出することができるようになる。
【0040】
或いは、ステップS7、ステップS13及びステップS17の少なくとも1つでは、検査対象の表示処理部が有するレジスターのリードデータ値がデフォルト値と一致したとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されるようにしてもよい。
これにより、リセット信号を伝搬する信号線にノイズが混入して誤ってリセットがかかったときの異常を検出することができるようになる。
【0041】
また、ステップS13では、所定時間経過後にビジー信号Busyが非アクティブに設定されないとき、第2の表示処理デバイス120の初期設定状態が異常であると検出される。なお、サブCPU210の他に、第1の表示処理デバイス110、第3の表示処理デバイス130及び第4の表示処理デバイス140のいずれかがビジー信号BusyをメインCPU200に対して出力するようにしてもよい。この場合には、ステップS7又はステップS17でも、所定時間経過後にビジー信号Busyが非アクティブに設定されないとき、検査対象の表示処理デバイスの初期設定状態が異常であると検出されるようにしてもよい。
これにより、簡素な時間監視により初期設定状態が異常であるか否かを検出することができるようになる。
【0042】
以上のような第1の実施形態に対して、第1の実施形態の比較例では、複数の表示処理デバイスを有するプロジェクターの起動シーケンスが、次のように動作するものと考える。
【0043】
図4に、第1の実施形態の比較例におけるプロジェクターの起動シーケンスの一例を示す。図4において、本比較例におけるプロジェクターの構成が、図3と同様であるものとし、メインCPUの制御のみが異なるものとする。
外部電源が投入されると、電源部は、メインCPUに対して電源PW1の供給を開始する(ステップS200)。
メインCPUは、プロジェクターが有する電源ボタンの押下を監視している(ステップS201:N)。電源ボタンの押下が検出されたとき(ステップS201:Y)、メインCPUは、電源部を制御して、第1の表示処理デバイス〜第4の表示処理デバイスに対して電源PW2の供給を開始させる(ステップS202)。
電源PW2の供給が開始されると、メインCPUは、電源が安定する電源安定期間として20m秒だけ待つ(ステップS203)。
【0044】
例えば、この時点において第1の表示処理デバイス〜第4の表示処理デバイスの各々に対してリセット信号が発行されているものとする。電源安定期間が経過すると、メインCPUは、リセット信号Reset1の解除を行い(ステップS204)、第1の表示処理デバイスの初期設定を行う(ステップS205)。
次に、メインCPUは、リセット信号Reset2の解除を行い(ステップS206)、サブCPUを起動し(ステップS207)、サブCPUを介して第2の表示処理デバイスの初期設定を行う(ステップS208)。
続いて、メインCPUは、リセット信号Reset3の解除を行い(ステップS209)、第3の表示処理デバイスの初期設定を行う(ステップS210)。
その後、メインCPUは、第4の表示処理デバイスの初期設定を行い(ステップS211)、電源部を制御して第4の表示処理デバイス、及び表示パネルに対して電源PW3の供給を開始させる(ステップS212)。
更に、メインCPUは、電源部を制御して、ランプに対して電源PW4の供給を開始させる(ステップS213)。そして、プロジェクターは、ランプの点灯を行う(ステップS214)。
ランプ点灯後は、プロジェクターは、第1の表示処理デバイス〜第4の表示処理デバイスの少なくとも1つによる表示処理後の画像信号に基づいて、ランプからの光を光変調して画像を表示し(ステップS215)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0045】
図4に示すように、本比較例では、各表示処理デバイスの再初期設定を行わないため、通信エラーやランプ点灯ノイズ等により初期設定状態が異常となったときに、表示処理デバイスが誤動作を起こしたり、異常表示状態になったりする。これは、表示デバイスの劣化や故障に至るおそれがある。そこで、正常表示への復帰を図るために、無条件に図4のシーケンスで再初期設定を行うと、外部電源投入後から正常表示までの時間が長くなる。これに対して、第1の実施形態によれば、初期設定状態が異常であると検出された表示処理デバイスのみ再初期設定を行うようにしたので、通信エラー等による誤動作に対して、必要最小限の時間で表示処理の正常化が可能となる。
【0046】
〔第2の実施形態〕
第1の実施形態では、プロジェクターが有するランプの点灯前に各表示処理デバイスの初期設定状態を検査するようにしていたが、第2の実施形態では、ランプの点灯後に各表示処理デバイスの初期設定状態を検査し、必要に応じて再初期設定を行う。
【0047】
このような第2の実施形態におけるプロジェクターは、図1の機能ブロック図と同様の構成を有している。第2の実施形態におけるプロジェクターの起動シーケンスにおいて、第1の初期設定部61は、第1の表示処理部20の初期設定を行い、第2の初期設定部64は、第2の表示処理部30の初期設定を行う。ランプ点灯部70は、第1の表示処理部20及び第2の表示処理部30の初期設定後、ランプ50の点灯を行う。
第1の検査部62は、ランプ50の点灯後、第1の表示処理部20の初期設定状態を検査する。第1の検査部62により第1の表示処理部20の初期設定状態が異常であると検出されたとき、第1の再初期設定部63は、第1の表示処理部20の再初期設定を行う。第2の検査部65は、ランプ50の点灯後、第2の表示処理部30の初期設定状態を検査する。第2の検査部65により第2の表示処理部30の初期設定状態が異常であると検出されたとき、第2の再初期設定部66は、第2の表示処理部30の再初期設定を行う。
【0048】
第2の実施形態におけるプロジェクターの具体的な構成は、図2と同様とすることができ、以下では第1の実施形態と同一符号を付して説明する。
図5及び図6に、第2の実施形態におけるプロジェクター100の起動シーケンスの一例を示す。ここでは、第1の表示処理デバイス110は図1の第1の表示処理部20に対応させ、第2の表示処理デバイス120及びサブCPU210は図1の第2の表示処理部30に対応させることができる。
外部電源が投入されると、電源部160は、メインCPU200に対して電源PW1の供給を開始する(ステップS30)。
メインCPU200は、電源ボタンの押下を監視している(ステップS31:N)。電源ボタンの押下が検出されたとき(ステップS31:Y)、メインCPU200は、電源部160を制御して、第1の表示処理デバイス110〜第4の表示処理デバイス140に対して電源PW2の供給を開始させる(ステップS32)。
電源PW2の供給が開始されると、メインCPU200は、電源が安定する電源安定期間として20m秒だけ待つ(ステップS33)。
【0049】
電源安定期間が経過すると、メインCPU200は、リセット信号Reset1を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset1を解除する(ステップS34)。
次に、メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110の初期設定を行う(ステップS35、第1の初期設定ステップ)。具体的には、メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110が有する初期設定対象のレジスターセットRS1に対して初期設定を行う。
続いて、メインCPU200は、リセット信号Reset2を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset2を解除する(ステップS36)。
次に、メインCPU200は、第2の表示処理デバイス120の初期設定を行うために、サブCPU210を起動する(ステップS37)。
次に、メインCPU200は、起動したサブCPU210を介して、第2の表示処理デバイス120の初期設定を行う(ステップS38、第2の初期設定ステップ)。具体的には、メインCPU200からの指示を受けたサブCPU210が、第2の表示処理デバイス120が有する初期設定対象のレジスターセットRS2に対して初期設定を行う。
次に、メインCPU200は、リセット信号Reset3を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset3を解除する(ステップS39)。
次に、メインCPU200は、第3の表示処理デバイス130の初期設定を行う(ステップS40)。具体的には、メインCPU200は、第3の表示処理デバイス130が有する初期設定対象のレジスターセットRS3に対して初期設定を行う。
次に、メインCPU200は、第4の表示処理デバイス140の初期設定を行う(ステップS41)。具体的には、メインCPU200は、第4の表示処理デバイス140が有する初期設定対象のレジスターセットRS4に対して初期設定を行う。
次に、メインCPU200は、電源部160を制御して、第4の表示処理デバイス140、及び表示パネルに対して電源PW3の供給を開始させる(ステップS42)。
次に、メインCPU200は、電源部160を制御して、ランプ170に対して電源PW4の供給を開始させる(ステップS43)。そして、プロジェクター100は、ランプ170の点灯を行う(ステップS44、ランプ点灯ステップ)。
【0050】
続いて、メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110の初期設定状態を検査する(ステップS45、第1の検査ステップ)。
ステップS45において初期設定状態が異常であると検出されたとき(ステップS45:N)、メインCPU200は、外部電源投入後における第1の表示処理デバイス110の再初期設定の繰り返し回数を判別する(ステップS46)。
第1の表示処理デバイス110の再初期設定の繰り返し回数が0回〜2回のとき(ステップS46:Y)、メインCPU200は、リセット信号Reset1を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset1を解除する(ステップS47)。続いて、メインCPU200は、第1の表示処理デバイス110の初期設定を行う(ステップS48)。そして、メインCPU200は、リセット信号Reset2を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset2を解除する(ステップS49)。引き続き、メインCPU200は、サブCPU210を起動し(ステップS50)、サブCPU210を介して第2の表示処理デバイス120の初期設定を行う(ステップS51)。更に、メインCPU200は、リセット信号Reset3を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset3を解除し(ステップS52)、第3の表示処理デバイス130の初期設定を行う(ステップS53)。その後、メインCPU200は、ステップS45に戻る。
ステップS46において再初期設定の繰り返し回数が3回のとき(ステップS46:N)、メインCPU200は、所与の異常処理を行い(ステップS67)、一連の処理を終了する(エンド)。異常処理が行われたとき、プロジェクター100は、少なくとも電源PW4をオフし、表示を開始しないことが望ましい。
【0051】
ステップS45において初期設定状態が正常であると検出されたとき(ステップS45:Y)、メインCPU200は、第2の表示処理デバイス120の初期設定状態を検査する(ステップS54、第2の検査ステップ)。
ステップS54において初期設定状態が異常であると検出されたとき(ステップS54:N)、メインCPU200は、外部電源投入後における第2の表示処理デバイス120の再初期設定の繰り返し回数を判別する(ステップS55)。
第2の表示処理デバイス120の再初期設定の繰り返し回数が0回〜2回のとき(ステップS55:Y)、メインCPU200は、リセット信号Reset2を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset2を解除する(ステップS56)。引き続き、メインCPU200は、サブCPU210を起動し(ステップS57)、サブCPU210を介して第2の表示処理デバイス120の初期設定を行う(ステップS58)。更に、メインCPU200は、リセット信号Reset3を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset3を解除し(ステップS59)、第3の表示処理デバイス130の初期設定を行う(ステップS60)。その後、メインCPU200は、ステップS54に戻る。
ステップS55において再初期設定の繰り返し回数が3回のとき(ステップS55:N)、メインCPU200は、ステップS67に進み、異常処理を行う。
【0052】
ステップS54において初期設定状態が正常であると検出されたとき(ステップS54:Y)、メインCPU200は、第3の表示処理デバイス130の初期設定状態を検査する(ステップS61)。
ステップS61において初期設定状態が異常であると検出されたとき(ステップS61:N)、メインCPU200は、外部電源投入後における第3の表示処理デバイス130の再初期設定の繰り返し回数を判別する(ステップS62)。
第3の表示処理デバイス130の再初期設定の繰り返し回数が0回〜2回のとき(ステップS62:Y)、メインCPU200は、リセット信号Reset3を発行し、所定の期間経過後にリセット信号Reset3を解除する(ステップS63)。引き続き、メインCPU200は、第3の表示処理デバイス130の初期設定を行う(ステップS64)。その後、メインCPU200は、ステップS61に戻る。
ステップS62において再初期設定の繰り返し回数が3回のとき(ステップS62:N)、メインCPU200は、ステップS67に進み、異常処理を行う。
【0053】
ステップS61において初期設定状態が正常であると検出されたとき(ステップS61:Y)、メインCPU200は、第4の表示処理デバイス140の初期化を行う(ステップS65)。その後、プロジェクター100は、第1の表示処理デバイス110〜第4の表示処理デバイス140の少なくとも1つによる表示処理後の画像信号に基づいて、ランプ170からの光を光変調して画像を表示し(ステップS66)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0054】
なお、ステップS45、ステップS54、及びステップS61の少なくとも1つでは、検査対象の表示処理デバイスの初期設定状態の正常又は異常を、第1の実施形態と同様に検出することができる。
また、ステップS54では、ビジー信号を用いて、第2の表示処理デバイス120の初期設定状態の正常又は異常を、第1の実施形態と同様に検出することができる。
【0055】
ここで、例えばステップS48は、第1の再初期設定ステップに対応し、ステップS58は、第2の再初期設定ステップに対応させることができる。
以上のように第2の実施形態によれば、各表示処理デバイスの初期設定を行った後にランプ点灯を行い、少なくともランプ点灯直後に各表示処理デバイスの初期設定状態を検査する。ここで、初期設定状態が異常であると検出された表示処理デバイスのみ、再初期設定を行う。
こうすることで、ランプ点灯ノイズで初期設定状態が異常となり、表示処理デバイスが誤動作してしまう場合であっても、必要最小限の時間で表示処理の正常化を可能にすることができる。その結果、表示パネルのダメージをできるだけ小さくし、異常な駆動状態の期間を短縮することができる。
【0056】
また、第2の実施形態においては、表示処理デバイスの再初期設定が必要な場合に、当該表示処理デバイスの後段側に配置された表示処理デバイスの再初期設定を行うようにしている。例えば表示処理デバイス間でLVDS(Low Voltage Differential Signaling)技術により通信を行う場合、内蔵するPLL(Phase-Locked Loop:位相同期回路)により内蔵タイミング信号を生成する。このとき、前段側の表示処理デバイスが誤動作を起こすと正常な位相同期状態とならず、当該表示処理デバイスのレジスターセットには正常な設定値が設定されているにもかかわらず異常な動作状態に陥るおそれがある。そこで、表示処理デバイスの初期設定の順序を考慮して、前段側に配置される表示処理デバイスの再初期設定を行う場合には、後段側に配置される表示処理デバイスの再初期設定を続けて行うことで、表示処理の正常化を短期間で行うことができるようになる。
こうすることで、表示処理デバイスの初期設定の順序を考慮する必要がある場合でも、表示処理の正常化を短縮化することができるようになる。なお、第2の実施形態では、例えばステップS47〜ステップS51を第1の再初期設定ステップに対応させることができる。
【0057】
また、第2の実施形態において、第1の表示処理デバイス110を図1の第1の表示処理部20に対応させ、第4の表示処理デバイス140を図1の第2の表示処理部30に対応させることができる。即ち、ステップS35では、プロジェクター100は、第1の初期設定ステップとして、読み出し可能に構成される初期設定対象のレジスターセットを有する第1の表示処理デバイス110の初期設定を行う。ステップS38では、プロジェクター100は、第2の初期設定ステップとして、読み出し不可能に構成される初期設定対象のレジスターセットを有する第4の表示処理デバイス140(第2の表示処理部)の初期設定を行う。ステップS48では、プロジェクター100は、第1の再初期設定ステップとして、初期設定状態の検査後に異常が検出されたときにのみ行う。一方、ステップS65では、プロジェクター100は、第2の再初期設定ステップとして、第4の表示処理デバイス140の初期設定状態を検査することなく、再初期設定を行う。
こうすることで、読み出しが不可能に構成されたレジスターを有する第4の表示処理デバイス140については、ランプ点灯直後に、第4の表示処理デバイス140の再初期設定を必ず行うことができる。これにより、読み出しが不可能に構成されたレジスターにより初期設定状態が正常であるか否かの検査ができない場合であっても、第4の表示処理デバイス140の初期設定を確実に行うことができる。その結果、初期設定対象として、読み出しが可能なレジスターと読み出しが不可能なレジスターとが混在するプロジェクターにおいて、短期間での表示処理の正常化を確実に行うことができる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
第2の実施形態では、ランプ点灯後に各表示処理デバイスの初期設定状態を検査するものとして説明したが、ランプ点灯前後の各々において各表示処理デバイスの初期設定状態を検査し、異常な表示処理デバイスのみ再初期設定を行うようにしてもよい。
【0059】
第3の実施形態におけるプロジェクターの具体的な構成は、図2と同様とすることができ、以下では第1の実施形態と同一符号を付して説明する。
図7及び図8に、第3の実施形態におけるプロジェクター100の起動シーケンスの一例を示す。ここでは、第1の表示処理デバイス110は図1の第1の表示処理部20に対応させ、第2の表示処理デバイス120は図1の第2の表示処理部30に対応させることができる。
【0060】
図7及び図8の起動シーケンスは、第1の実施形態における起動シーケンスと第2の実施形態における起動シーケンスの一部とを組み合わせたものである。そのため、図7及び図8の各ステップについて詳細な説明を省略する。
ステップS70〜ステップS90の各ステップは、ステップS1〜ステップS23の各ステップに対応する。ステップS112は、ステップS23に対応し、ステップS113は、ステップS9に対応する。
ステップS91〜ステップS111の各ステップは、ステップS45〜ステップS65の各ステップに対応する。ステップS112は、ステップS66に対応し、ステップS113は、ステップS67に対応する。
【0061】
なお、ランプ点灯後における各表示処理デバイスの初期設定状態の検査ステップは、ランプ点灯前の各表示処理デバイスの初期設定状態の検査ステップと異なることが望ましい。ここで、ランプ点灯前における各表示処理デバイスの初期設定状態の検査ステップは、ステップS76、ステップS81、又はステップS85である。ランプ点灯前における検査ステップでは、第1の実施形態と同様に、ライトデータ値とリードデータ値との不一致を検出したり、ビジー信号を用いた時間監視を行うことができる。
ランプ点灯後の各表示処理デバイスの初期設定状態の検査ステップは、ステップS91、ステップS100、又はステップS107である。ここでは、更に、ランプ点灯後において、検査対象の表示処理デバイスが有するレジスターのリードデータ値がデフォルト値と一致したとき、検査対象の表示処理デバイスの初期設定状態が異常であると検出されることが望ましい。こうすることで、これにより、リセット信号を伝搬する信号線にノイズが混入して誤ってリセットがかかったときの異常を検出することができるようになる。
【0062】
以上、本発明に係る画像表示装置の制御方法等を上記のいずれかの実施形態形に基づいて説明したが、本発明は上記のいずれかの実施形態に限定されるものではない。その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
(1)上記の実施形態では、表示処理デバイスの初期設定を、該表示処理デバイスが備えるレジスターセットに初期設定値を設定する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、表示処理デバイスの初期設定の方法に限定されるものではない。
【0064】
(2)上記の実施形態では、本発明に係る表示処理部が、1つの集積回路装置、又は該集積回路装置を制御するサブCPUにより構成される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る表示処理部が、複数の集積回路装置により構成されたり、複数の表示処理部の機能が1つの集積回路装置に実装されたりしてもよい。
【0065】
(3)上記の実施形態では、光変調素子として液晶パネルを用いて画像を投写するプロジェクターを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。光変調素子として、例えばDLP(Digital Light Processing)(登録商標)、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を採用するものであってもよい。
【0066】
(4)上記の実施形態では、画像表示装置としてプロジェクターを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る画像表示装置として、例えばプロジェクションTV、液晶TV、車載用液晶表示装置、ノートパソコン、液晶モニター等の画像を表示するものがある。
【0067】
(5)上記の実施形態では、4つの表示処理デバイスを備えるプロジェクターを例に具体例として説明したが、表示処理デバイスの数や表示処理デバイスで行われる表示処理の内容に本発明は限定されるものではない。本発明は、公知の表示処理を行う表示処理部を有する画像表示装置に適用することができる。
【0068】
(6)上記の実施形態において、本発明を、画像表示装置の制御方法等として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係る画像表示装置や、本発明に係る画像表示装置の制御方法の処理手順が記述されたプログラム、このプログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10,100…プロジェクター(画像表示装置)、 20…第1の表示処理部、
30…第2の表示処理部、 40…投射部、 50,170…ランプ、 60…制御部、
61…第1の初期設定部、 62…第1の検査部、 63…第1の再初期設定部、
64…第2の初期設定部、 65…第2の検査部、 66…第2の再初期設定部、
70…ランプ点灯部、 110…第1の表示処理デバイス、
120…第2の表示処理デバイス、 130…第3の表示処理デバイス、
140…第4の表示処理デバイス、 150…表示パネル、 160…電源部、
200…メインCPU、 210…サブCPU、
RS1,RS2,RS3,RS4…レジスターセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示処理部及び第2の表示処理部を有する画像表示装置の制御方法であって、
前記第1の表示処理部の初期設定を行う第1の初期設定ステップと、
前記第1の初期設定ステップにおいて行われた前記第1の表示処理部の初期設定状態を検査する第1の検査ステップと、
前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部の再初期設定を行う第1の再初期設定ステップと、
前記第2の表示処理部の初期設定を行う第2の初期設定ステップと、
前記第2の初期設定ステップにおいて行われた前記第2の表示処理部の初期設定状態を検査する第2の検査ステップと、
前記第2の検査ステップにおいて前記第2の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第2の表示処理部の再初期設定を行う第2の再初期設定ステップとを含むことを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の初期設定ステップでは、
前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が正常であると検出されたとき、前記第2の表示処理部の初期設定を行うことを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項3】
第1の表示処理部、第2の表示処理部及びランプを有する画像表示装置の制御方法であって、
前記第1の表示処理部の初期設定を行う第1の初期設定ステップと、
前記第2の表示処理部の初期設定を行う第2の初期設定ステップと、
前記第1の表示処理部及び前記第2の表示処理部の初期設定後、前記ランプの点灯を行うランプ点灯ステップと、
前記ランプの点灯後、前記第1の表示処理部の初期設定状態を検査する第1の検査ステップと、
前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部の再初期設定を行う第1の再初期設定ステップと、
前記ランプの点灯後、前記第2の表示処理部の初期設定状態を検査する第2の検査ステップと、
前記第2の検査ステップにおいて前記第2の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第2の表示処理部の再初期設定を行う第2の再初期設定ステップとを含むことを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項4】
第1の表示処理部、第2の表示処理部及びランプを有する画像表示装置の制御方法であって、
読み出し可能に構成される初期設定対象のレジスターセットを有する前記第1の表示処理部の初期設定を行う第1の初期設定ステップと、
読み出し不可能に構成される初期設定対象のレジスターセットを有する前記第2の表示処理部の初期設定を行う第2の初期設定ステップと、
前記第1の表示処理部及び前記第2の表示処理部の初期設定後、前記ランプの点灯を行うランプ点灯ステップと、
前記ランプの点灯後、前記第1の表示処理部の初期設定状態を検査する第1の検査ステップと、
前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部の再初期設定を行う第1の再初期設定ステップと、
前記ランプの点灯後、前記第2の表示処理部の再初期設定を行う第2の再初期設定ステップとを含むことを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第1の再初期設定ステップでは、
前記第1の検査ステップにおいて前記第1の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出されたとき、前記第1の表示処理部及び前記第2の表示処理部の再初期設定を行うことを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1の検査ステップ及び前記第2の検査ステップのうち少なくとも一方では、検査対象の表示処理部が有するレジスターのライトデータ値がリードデータ値と不一致のとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出することを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1の検査ステップ及び前記第2の検査ステップのうち少なくとも一方では、検査対象の表示処理部が有するレジスターのリードデータ値がデフォルト値と一致したとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出することを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1の設定状態検査ステップ及び前記第2の設定状態検査ステップのうち少なくとも一方では、所定時間経過後にビジー信号が非アクティブに設定されないとき、検査対象の表示処理部の初期設定状態が異常であると検出することを特徴とする画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54217(P2013−54217A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192541(P2011−192541)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】