説明

画像表示装置

【課題】開口率(各画素の発光面積の割合)を上げることが可能な画像表示装置を提供すること。
【解決手段】画像表示装置であって、電流が流れることで発光する発光素子と、電圧を印加することで、前記発光素子に流れる電流量を調整するドライバ素子と、前記ドライバ素子に対して印加する前記電圧に応じた電荷が蓄積されるとともに、複数の誘電体層を電極層を介して積層してなる容量素子とを備え、前記ドライバ素子及び前記容量素子は、平面視して離間するように設けられており、前記容量素子上に前記発光素子が重なるように形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ装置などの画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより発光する有機EL(Electro Luminescence)素子と、例えば、アモルファスシリコンや多結晶シリコン等で形成される薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)を含む画素回路とを備えた画像表示装置が提案されている。
【0003】
有機EL素子を用いた画像表示装置は、光透過性を有する基板上に形成された有機EL素子から当該基板を通して下方に光を放つボトムエミッション構造に関する技術が開示されている(下記特許文献1参照)。また、有機EL素子とは別に、液晶素子を用いた画像表示装置として、特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−081094号公報
【特許文献2】特開平9−101543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボトムエミッション構造の画像表示装置は、有機EL素子が発する光を画素回路が遮らないようにするために、平面視して有機EL素子と画素回路とが併設して形成されるため、開口率(各画素の発光面積の割合)が小さくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、開口率を上げることのできる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る画像表示装置は、電流が流れることで発光する発光素子と、電圧を印加することで、前記発光素子に流れる電流量を調整するドライバ素子と、前記ドライバ素子に対して印加する前記電圧に応じた電荷が蓄積されるとともに、複数の誘電体層を電極層を介して積層してなる容量素子とを備え、前記ドライバ素子及び前記容量素子は、平面視して離間するように設けられており、前記容量素子上に前記発光素子が重なるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る画像表示装置は、前記ドライバ素子が、ゲート層と当該ゲート層上に形成される第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成されるチャネル層と、前記第1絶縁層上から前記チャネル層上まで形成されるソース・ドレイン層とを備え、前記チャネル層上に、前記ゲート層と接続される接続配線が延在して形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第3の態様に係る画像表示装置は、前記接続配線の一部と前記容量素子の電極層の一部とが接続されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第4の態様に係る画像表示装置は、前記ソース・ドレイン層の一部と前記発光素子の一部とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第5の態様に係る画像表示装置は、前記ソース・ドレイン層と前記発光素子との間に、前記接続配線と同一材料のコンタクト部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第6の態様に係る画像表示装置は、前記ドライバ素子及び前記容量素子が、平面視して離間するように設けられており、前記容量素子上に前記発光素子が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第7の態様に係る画像表示装置は、前記容量素子が、前記発光素子に流れる電流量に応じた電荷が蓄積されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第8の態様に係る画像表示装置は、前記発光素子の発光期間に前記容量素子に蓄積された電荷に基づいて前記ドライバ素子がオン状態となり前記発光素子が発光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、開口率を上げることが可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る画像表示装置の平面図である。
【図2】表示部を構成する画素の拡大した平面図である。
【図3】図2のA−Aの長破線における一画素の拡大断面図である。
【図4】画素内の有機発光ダイオードの各層を説明する断面図である。
【図5】図5(A),図5(B),図5(C)は、本実施形態の画像表示装置の製造工程を示す画素の断面図である。
【図6】図6(A),図6(B)は、本実施形態の画像表示装置の製造工程を示す画素の断面図である。
【図7】図7(A),図7(B)は、本実施形態の画像表示装置の製造工程を示す画素の断面図である。
【図8】図8(A),図8(B)は、本実施形態の画像表示装置の製造工程を示す画素の断面図である。
【図9】図9(A),図9(B)は、本実施形態の画像表示装置の製造工程を示す画素の断面図である。
【図10】図10(A),図10(B)は、本実施形態の画像表示装置の製造工程を示す画素の断面図である。
【図11】図11(A),図11(B)は、本実施形態の画像表示装置の製造工程を示す画素の断面図である。
【図12】本実施形態に係る画像表示装置の画素回路である。
【図13】画素回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図14】期間T1での画素回路における電流の流れを示す図である。
【図15】期間T2での画素回路における電流の流れを示す図である。
【図16】期間T3での画素回路における電流の流れを示す図である。
【図17】期間T4での画素回路における電流の流れを示す図である。
【図18】期間T5での画素回路における電流の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる画像表示装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されないものとする。
【0018】
<画像表示装置の概略構成>
図1は、第1実施形態に係る画像表示装置1を示す図である。画像表示装置1は、有機発光ダイオードOLEDの発光を利用している。
【0019】
画像表示装置1は、テレビ等の家電機器、携帯電話又はコンピュータ機器等の電子機器に用いるものであり、素子基板2と、素子基板2上に実装される実装回路3とを有している。
【0020】
素子基板2は、例えば、ガラス、プラスチック、金属又はセラミックからなり、素子基板2の中央に位置する表示部D1には、複数の画素4がマトリックス状に配列されている。また、素子基板2の端部に位置する実装部D2には、実装回路3が実装されている。なお、図1に示すように、矩形状の素子基板2の長手方向に沿った実装部D2に実装された実装回路3をXドライバ3aとする。また、素子基板2の短手方向に沿った実装部D2に実装された実装回路3をYドライバ3bとする。なお、素子基板2の厚みは、例えば、0.3mm以上1.5mm以下のものを用いることができる。
【0021】
また、画素4は、赤色、緑色又は青色のいずれかの色を発光することができる。このことは、後述するように有機発光ダイオードOLEDを構成する材料を適宜選択することによって、発光する色を決定することができる。なお、本実施形態においては、画素を赤色、緑色又は青色のいずれかの色を発光するものとしたが、例えば白色又は橙色等の色を発光するようにしてもよい。
【0022】
画素4は、図2に示すように、発光領域R1と該発光領域R1の周囲を取り囲む非発光領域R2とを含んで構成されており、発光領域R1に発光可能な有機発光ダイオードOLEDが設けられている。なお、図2は、図1の表示部D1の一部を拡大した平面図である。
【0023】
また、各画素4には、隔壁5が設けられている。隔壁5は、断面が上部よりも下部が幅狭の形状であって、後述する絶縁物6上に形成されている。隔壁5上には、後述するように、蒸着法を用いて有機発光ダイオードOLEDを構成する層を塗り分けるのに、蒸着マスクを載置することができる。隔壁5は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸化窒化ケイ素等の無機絶縁材料、あるいはフェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料から成る。なお、隔壁5の厚みは、例えば、1μm以上4μm以下に設定されている。
【0024】
また、隔壁5にて囲まれる領域に後述する第2電極層27が形成されている。第2電極層27は、後述するように蒸着法を用いて表示部D1全面に形成しようとしたとき、隔壁5によって第2電極層27が画素4ごとに形成される。隔壁5が上部よりも下部が幅狭になっていることにより、隔壁5の上面には、第2電極層27と同一材料の膜が被着するものの、隔壁5の側面全てに第2電極層27が被着しないため、隔壁5の側面で第2電極層27が不連続となる。
【0025】
また、素子基板2上には、素子基板2に対して対向するように配置された封止基板7が形成されている。封止基板7は光を透過する基板から成り、例えば、ガラス又はプラスチックを用いることができる。なお、本実施形態においては、素子基板2側から封止基板7側に向けて光が発せられるトップエミッション型の有機ELディスプレイであるため、封止基板7は光を透過する部材が用いられる。
【0026】
素子基板2の表示部D1には、画素4を被覆するように保護膜8が形成されている。保護膜8は、隔壁5をも被覆するように形成されることで、各画素4に酸素又は水分が浸入するのを低減し、各画素4の特性が変化するのを抑制することができる。保護膜8は、例えば、窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の無機絶縁材料から成る。さらに、保護膜8上にシール材9を介して封止基板7が貼り合わされている。なお、保護膜8は、各画素4の特性が変化するのを抑制するために、厚みが1μm以上に設定されている。
【0027】
シール材9は、接着材としての機能を有し、硬化することによって素子基板2と封止基板7とを固着することができる。かかるシール材9は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はシリコン樹脂等の光硬化性樹脂、あるいは熱硬化性の樹脂を用いることができる。なお、本実施形態においては、紫外線の照射により硬化する光硬化性のエポキシ樹脂を用いる。なお、シール材9は有機樹脂材料からなり、素子基板2と封止基板7とを強固に接着させるために、厚みが1μm以上に設定されている。
【0028】
次に、図3に示すように、素子基板2と封止基板7との間に形成される各種層について説明する。なお、図3は、図2の長破線におけるA−A断面図における一画素の断面図である。
【0029】
素子基板2上には、TFTや電気配線等から成る回路層10が形成されている。
【0030】
回路層10には、有機発光ダイオードOLEDに流れる電流量を調整する駆動トランジスタTが含まれている。駆動トランジスタTは、素子基板4上に形成されるゲート層11と、素子基板4及びゲート層11上に形成される第1絶縁膜12と、第1絶縁膜12上に形成されるチャネル層13と、チャネル層13上に形成されるソース・ドレイン層14と、ソース・ドレイン層14上に形成される第2絶縁膜15とを備えている。
【0031】
ゲート層11は、例えば、銅、モリブデン、アルミウム、ニッケル又はチタン等の導体材料、あるいはこれらの合金等を単層、あるいは複数層を積層させてなる。また、第1絶縁膜12は、チャネル層13とゲート層11との間を絶縁する材料から成り、例えば、窒化珪素又は酸化珪素等の絶縁材料からなる。また、チャネル層13は、半導体層であって、アモルファスシリコン(非晶質ケイ素)からなる。また、ソース・ドレイン層14は、例えば、銅、モリブデン、アルミウム、ニッケル又はチタン等の導体材料、あるいはこれらの合金等を単層、あるいは複数層を積層させてなる。また、ソース・ドレイン層14の下には、アモルファスシリコンとソース・ドレイン層のコンタクトを良好にするため、例えばリンをドープしたアモルファスシリコンを形成させてもよい。また、第2絶縁膜15は、ソース・ドレイン層14を被覆するように形成されており、例えば、窒化珪素又は酸化珪素等の絶縁材料からなる。
【0032】
また、回路層10には、容量素子Cが含まれている。容量素子Cは、素子基板4上に形成される電極層の一層としての第1容量電極層16と、第1容量電極層16上に形成される誘電体層の一層としての第1誘電体層17と、第1誘電体層17上に形成される電極層の一層としての第2容量電極層18と、第2容量電極層18上に形成される誘電体層の一層としての第2誘電体層19と、第2誘電体層19上に形成される電極層の一層としての第3容量電極層20とを備えている。
【0033】
容量素子Cは、第1容量電極層16と第2容量電極層18との電極間に電荷が蓄積される。また、第2容量電極層18と第3容量電極層20との電極間に電荷が蓄積される。
【0034】
第1容量電極層16、第2容量電極層18は、例えば、銅、モリブデン、アルミウム、ニッケル又はチタン等の導体材料、あるいはこれらの合金等を単層、あるいは複数層を積層させてなる。また、第1誘電体層17及び第2誘電体層19は、第1容量電極層16と第2容量電極層18との間に介在され、例えば、窒化珪素又は酸化珪素等の絶縁材料からなる。なお、第1容量電極層16とゲート層11は、同一材料から構成されてもよい。第1誘電体層17と第1絶縁膜12は、同一材料から構成されてもよい。第2容量電極層18とソース・ドレイン層14は、同一材料から構成されてもよい。第2誘電体層19と第2絶縁膜15は、同一材料から構成されてもよい。
【0035】
また、第3容量電極層20は、例えば、銅、モリブデン、アルミニウム、ニッケル、チタン、インジウム錫酸化物(ITO)、金又はプラチナ等の導体材料、これらの合金等からなる。第3電極層20の一部は、第1誘電体層17及び第2誘電体層19を貫通して、第1容量電極層16と接続されている。
【0036】
また、回路層11には、ゲート層11とソース・ドレイン層14、あるいは第2容量電極層18とを電気的に接続する接続配線21が形成されている。接続配線21は、一部が第1絶縁膜12及び第2絶縁膜15を貫通してゲート層11と接続され、一部が第2絶縁膜15を貫通してソース・ドレイン層14、あるいは第2容量電極層18と接続されている。接続配線21は、例えば、銅、モリブデン、ニッケル、チタン、アルミニウム、インジウム錫酸化物(ITO)、金又はプラチナ等の導体材料、これらの合金等からなる。第一絶縁膜への貫通孔と第二絶縁膜への貫通孔は同時に形成することが可能であり、この構造をとることで、よりプロセスステップが少なく回路部を形成することが可能となる。
【0037】
接続配線21の一部は、平面視してチャネル層13と重なる領域にまで延在して形成させることもできる。このとき、接続配線21を、ゲート層11と接続すると、接続配線21とゲート層11とを同電位に維持することができる。そして、ゲート層11に後述するように、所定の電位を与えた場合、チャネル層13に対して、チャネル層13の下方に位置するゲート層11側からと、チャネル層13の上方に位置する接続配線21側からの両方から電圧を受け、駆動トランジスタTのオン特性を良好にすることができる。これにより、駆動トランジスタTをより低い電圧で所望の電流を流すことが出来る。これにより、例えば画像信号を発生するICの耐圧を下げて低コスト化することや、電源電圧を下げ、ディスプレイの消費電力を下げることが可能となり、パネル性能向上に寄与することが出来る。
【0038】
また、ソース・ドレイン層14上に形成される第2絶縁膜15を貫通するコンタクト部22が形成されている。コンタクト部22は、後述するコンタクト電極層23と接続され、コンタクト部はコンタクト電極層23によって覆われることとなる。これにより、後述される平坦化膜の貫通孔を形成する場所がコンタクト部22上となる。平坦化膜となる感光性樹脂の密着力は金属上の方が、第2絶縁膜15の材料となる酸化ケイ素又は窒化珪素等の樹脂上よりすぐれており、貫通孔を安定して形成することが出来る。
【0039】
また、回路層10上には、回路層10の表面の凹凸を低減するために平坦化膜24が形成されている。回路層10は、パターニングされた構造物であるため、その表面が凹凸に形成され、回路層10上を平坦にしないと、回路層10上に有機発光ダイオードOLEDを平らに設けることが困難となる。その結果、有機発光ダイオードOLEDを構成する各層の厚みを制御することが難しく、有機発光ダイオードOLEDが所望の色の光を発することができなくなる。これは、有機発光ダイオードOLEDが発する光の色が、有機発光ダイオードOLEDを構成する各層の厚みに依存するためである。そのため、回路層10上に、平坦化膜24を形成することで、回路層10上に形成する有機発光ダイオードOLEDの厚みを制御しやすくしている。かかる平坦化膜24は、例えばノボラック樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂等の絶縁性を有する有機材料を用いることができる。なお、平坦化膜24の厚みは、例えば2μm以上5μm以下に設定されている。
【0040】
平坦化膜24には、平坦化膜24を貫通する貫通孔としてのコンタクトホールSが形成されている。かかるコンタクトホールSは、上部よりも下部が幅狭に形成されている。コンタクトホールSは、各画素4に形成されており、コンタクトホールSの底部には、コンタクト部22の一部が露出している。なお、コンタクト部22は、例えば、銅、モリブデン、ニッケル、チタン、インジウム錫酸化物(ITO)、金又はプラチナ等の導体材料、これらの合金等からなる。
【0041】
コンタクトホールSの内壁面には、コンタクト電極層23が形成されている。コンタクト電極層23は、コンタクト部22と接続され、コンタクトホールSの底部から平坦化膜24の上面にかけて延在されている。そして、コンタクト電極層23は、後述する第1電極層25と間を空けて設けられている。なお、コンタクト電極層23は、例えば、銅又はアルミニウム等の導電材料からなる。
【0042】
そして、上述した絶縁物6が、非発光領域R2上に形成されている。具体的には、絶縁物6の一部は、コンタクト電極層23と第1電極層25との間に設けられている。また、絶縁物6の一部は、コンタクトホールSに起因した窪みに充填されている。かかる絶縁物6は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の有機絶縁材料、或いは窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の無機絶縁材料からなる。なお、絶縁物6の一部は、第1電極層25と第2電極層27との間に介在させ、両者が短絡するのを防止する機能を有している。仮に、第1電極層25と第2電極層27とが短絡すると発光層26に電流が流れにくくなり、発光層26が発光しなくなる。
【0043】
図4は、有機発光ダイオードOLEDの構成を説明するための断面図である。発光領域R1に位置する平坦化膜24上には、有機発光ダイオードOLEDが形成されている。図3及び図4に示すように、有機発光ダイオードOLEDは、第1電極層25と、第1電極層25上に形成された発光層26と、発光層26上に形成された第2電極層27と、を含んで構成されている。ここで、発光領域R1は、第1電極層25と第2電極層27が直接接するとともに、第1電極層25と第2電極層27との間に電流が流れることで発光する領域のことをいう。
【0044】
第1電極層25は、平坦化膜24上に形成される。第1電極層25は、例えば、アルミニウム、銀、銅、金、ロジウム又はネオジム等の光高反射金属、あるいはこれらの合金等の光反射率の大きい材料から成る。このように、第1電極層25を光反射率の大きい材料から構成することにより、トップエミッション型の有機発光ダイオードOLEDにおいては光取り出し効率を向上させることができる。なお、第1電極層25の厚みは、例えば、50nm以上500nm以下に設定されている。
【0045】
そして、発光領域R1に対応する第1電極層25上に発光層26が形成され、その上に第2電極層27が形成される。また、発光層26の一部は、発光領域R1に位置する第1電極層27上から非発光領域R2に位置する絶縁物6の傾斜する側面にかけて形成されている。発光層26は、複数の層から構成されている。本実施形態においては、発光層26は、正孔注入層28、正孔輸送層29、有機発光層30、電子輸送層31及び電子注入層32を順次積層した構成である。また、発光層26の各層を構成する材料は、発する光の色に応じて、適当な材料が選択される。発光層26が、例えば、赤色を発する場合について説明する。
【0046】
この場合、正孔注入層28は、例えば、酸化ニッケル、酸化チタン、フッ化炭素、銅フタロシアニン(CuPc)、或いは1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン又はこれにシアノ基などが結合した誘導体等の複素環化合物から成る。正孔注入層28の厚みは、例えば5nm以上40nm以下に設定されている。
【0047】
また、正孔輸送層29は、例えばN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、および4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等のスターバースト芳香族又は芳香族アミン化合物を用いることができる。正孔輸送層29の厚みは、例えば、10nm以上50nm以下に設定されている。
【0048】
また、有機発光層30は、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,4−フェニレンビス(トリフェニルシラン)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゼン、CBP、Alq又はSDPVBi等のホスト材料に、トリス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)イリジウム等の有機金属化合物、或いはDCJTB、クマリン、キナクリドン、フェナンスレン基を有するペリノン誘導体、或いはオリゴチオフェン誘導体又はペリレン誘導体等のドーパント材料を含有したものを用いることができる。有機発光層30の厚みは、例えば20nm以上40nm以下に設定されている。
【0049】
また、電子輸送層31は、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエンを用いることができる。電子輸送層31の厚みは、例えば20nm以上60nm以下に設定されている。
【0050】
また、電子注入層32は、例えば、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化炭素等を用いることができる。電子注入層32の厚みは、例えば、0.5nm以上2nm以下に設定されている。
【0051】
発光層26上には、第2電極層27が形成されている。第2電極層27は、発光層26の上面側から光を取り出すために、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、錫酸化物等の光透過性を有する導電材料を用いて形成される。また、第2電極層27が、例えば、マグネシウム、銀、アルミニウム又はカルシウム等の材料から成る場合、その厚みを100nm以下にすることによって、光透過性の電極とすることができる。このようにして、第2電極層27は、発光層26の発する光が透過する。そして、透過した光は、画像表示装置1の外部に放出される。
【0052】
発光層26は、第1電極層25と第2電極層27との間に電流が流れ、発光層26中に注入された正孔と電子とが結合することによって励起されて発光する。そして、発光層26が発する光が第1電極層25と第2電極層27との間で定在波となって共振し、発光する光を強めるために、発光層26の厚みが調整されている。
【0053】
<画像表示装置の製造方法>
次に、図3に示される構成を有する画像表示装置の製造方法について説明する。図5〜図11は、本実施の形態にかかる画像表示装置の工程断面図である。
【0054】
最初に、図5(A)に示すように、例えばガラスからなる素子基板2を準備する。そして、図5(B)に示すように、素子基板2上に、回路層11に含まれるゲート層11及び第1容量電極層16を形成する。なお、ゲート層11及び第1容量電極層16は、例えば銅等の導電材料から成る金属層をパターニングして得られる。つまり、ゲート層11及び第1容量電極層16は、従来周知の蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等の薄膜形成技術、フォトリソグラフィー法、エッチング法又はレーザー加工法等の薄膜加工技術を用いて、所定パターンに形成される。そのため、ゲート層11及び第1容量電極層16は、一層の金属層をパターニングして得られるため、同一材料から形成することができる。このように、ゲート層11及び第1容量電極層16を同時に形成することができ、それぞれを別々に形成するよりも製造工程を簡略化することができる。
【0055】
次に、図5(C)に示すように、ゲート層11及び第1容量電極層16を被覆するように、例えばCVDなどの薄膜形成技術を用いて、例えば窒化珪素から成る第1絶縁被加工膜12xを形成する。そして、図6(A)に示すように、第1絶縁被加工膜12x上であって、ゲート11と重なる箇所に、薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、例えばアモルファスシリコンから成るチャネル層13を形成する。チャネル層13上層には、ソース・ドレインとのコンタクトを良好にするため、例えばリンをドープしたアモルファスシリコンを形成してもよい。
【0056】
次に、図6(B)に示すように、第1絶縁被加工膜12x上からチャネル層13上にかけて、ソース・ドレイン層14を形成する。ソース・ドレイン層14は、ソースとしての機能とドレインとしての機能を奏するように、チャネル層13上で二つに分離されて形成される。また、第1絶縁被加工膜12x上であって、第1容量電極層16と重なる領域に第2容量電極層18が形成される。ソース・ドレイン層14及び第2容量電極層18は、例えば銅等の導電材料から成る金属層をパターニングして得られるため、同一材料から形成することができる。このように、ソース・ドレイン層14及び第2容量電極層18を同時に形成することができ、それぞれを別々に形成するよりも製造工程を簡略化することができる。前述、例えばリンをドープしたアモルファスシリコンを形成した場合は、ソース・ドレインをチャネル層13の上で分離したように、リンをドープしたアモルファスシリコンもチャネル層13の上で、例えばドライエッチングにより分離する。
【0057】
次に、図7(A)に示すように、ソース・ドレイン層14及び第2容量電極層18を被覆するように、薄膜形成技術を用いて、例えば窒化珪素から成る第2絶縁被加工膜15xを形成する。そして、第2絶縁被加工膜15xの一部に対して、薄膜加工技術を用いて、ビア孔を形成する。なお、図7(A)に示す破線箇所がビア孔を形成する箇所となる。具体的には、各画素において、ソース・ドレイン層14上に位置する第2絶縁被加工膜15xの一部であって、後述するようにコンタクト部22が形成される箇所Px1と、ゲート層11と重なる領域であって、第1絶縁被加工膜12x及び第2絶縁被加工膜15xが積層されている箇所Px2と、第2容量電極層18と重なる領域であって、第2絶縁被加工膜15xの一部である箇所Px3と、第1容量電極層16と重なる領域であって、第1絶縁被加工膜12x及び第2絶縁被加工膜15xが積層されている箇所Px4である。
【0058】
次に、図7(B)に示すように、第2絶縁被加工膜15xに対して、薄膜加工技術を用いて、第2絶縁加工膜15x、或いは第2絶縁被加工膜15x及び第1絶縁被加工膜12xを貫通するビア孔P1、P2、P3、P4を形成する。
【0059】
次に、図8(A)に示すように、薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、ビア孔P1に例えばインジウム錫酸化物(ITO)から成るコンタクト部22を形成する。また、同様にして、ビア孔P2及びビア孔P3に、接続配線21を形成する。また、ビア孔P4に、第3容量電極層20を形成する。コンタクト部22、接続配線21及び第3容量電極層20は、ビア孔を形成した基板上に例えばインジウム錫酸化物(ITO)等の導電材料から成る金属層を形成し、該金属層をパターニングして得られる。そのため、コンタクト部22、接続配線21及び第3容量電極層20は、一層の金属層をパターニングして得られるため、同一材料から形成することができる。このように、コンタクト部22、接続配線21及び第3容量電極層20を同時に形成することができ、それぞれを別々に形成するよりも製造工程を簡略化することができる。
【0060】
次に、図8(B)に示すように、コンタクト部22、接続配線21及び第3容量電極層20を被覆するように、薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、例えばノボラック樹脂から成り、コンタクトホールSを有する平坦化膜24を形成する。なお、コンタクトホールSの底部には、接続配線21が露出した状態となる。
【0061】
次に、図9(A)に示すように、薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、コンタクトホールSの内壁面から平坦化膜24の上面にかけて、例えばアルミ二ウムから成るコンタクト電極層23を形成する。かかるコンタクト電極層23は、コンタクトホールSの底面から露出するコンタクト部22と接続する。また、同様にして、平坦化膜24上であって、発光領域R1に対応する箇所に、例えばアルミ二ウムから成る第1電極層25を形成する。そのため、コンタクト電極層23及び第1電極層25は、一層の金属層をパターニングして得られるため、同一材料から形成することができる。このように、コンタクト電極層23及び第1電極層25を同時に形成することができ、それぞれを別々に形成するよりも製造工程を簡略化することができる。なお、各画素において、コンタクト電極層23と第1電極層25は、両者の間に距離を空けて配設されている。そのため、コンタクト電極層23と第1電極層25との間には、平坦化膜24の一部が露出している。
【0062】
次に、図9(B)に示すように、薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、コンタクト電極層23、露出する平坦化膜24及び第1電極層25上であって、非発光領域R2に対応する箇所に、例えば、窒化珪素から成る絶縁物6を形成する。絶縁物6は、コンタクト電極層24の一部、及び第1電極層25の一部を露出するようにパターニングして形成される。
【0063】
次に、図10(A)に示すように、薄膜形成技術及び薄膜加工技術を用いて、各画素を取り囲むように絶縁物6上に、例えばノボラック樹脂から成る隔壁5を形成する。隔壁5は、上部よりも下部が幅狭になるように形成される。そして、図10(B)に示すように、例えば蒸着法を用いて、第1電極層25上に、発光層26を形成する。具体的には、発光層26を形成する際は、蒸着マスクを隔壁5上に載置する。そして、各画素4を、赤色、緑色又は青色と発光する色に応じた有機材料を塗り分けることができる。
【0064】
次に、図11(A)に示すように、発光層26上から絶縁物6上にかけて、例えば、マグネシウムと銀との合金からなる第2電極層27を形成する。第2電極層27を形成する際は、蒸着マスクを用いずに、表示部D1全面に第2電極層27を構成する材料を被着させる。そして、発光層26上から絶縁物6上を介してコンタクト電極層23上にまで形成することができる。このようにして、各画素4に有機発光ダイオードOLEDを形成することができる。そして、第2電極層27とコンタクト電極層23とを直接接続することにより、第2電極層27とコンタクト電極層23とを電気的に接続することができる。
【0065】
さらに、図11(B)に示すように、例えば、スパッタリング法又はCVD法を用いて、表示部D1上に有機発光ダイオードOLEDが劣化しないように保護膜8を形成する。有機発光ダイオードOLEDを保護膜8で被覆することにより、外気から有機発光ダイオードOLEDが晒されるのを防止することができる。
【0066】
次に、ガラスからなる封止基板7を準備する。そして、封止基板7上に、例えば、ディスペンサ法又はスクリーン印刷法を用いて、未硬化のシール材を塗布する。このようにして、未硬化のシール材が塗布された状態の封止基板7を準備することができる。
【0067】
次に、上述した工程により得られた積層体を有する素子基板2と未硬化のシール材が塗布された封止基板7の両方を用意する。そして、両基板を位置合わせして、両基板を未硬化のシール材を介して貼り合わせる。なお、封止基板7を未硬化のシール材によって、素子基板2に貼り合わせる作業は、例えば窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス中や、高真空中で行うことによって、素子基板2と封止基板7との間に酸素や水分が含まれるのを抑制することができる。
【0068】
さらに、未硬化のシール材を硬化させて、素子基板2と封止基板7の両者を固着させることができる。ここで、未硬化のシール材が硬化することにより、シール材9となる。このようにして、有機ELディスプレイ装置を作製することができる。そして、素子基板2の非表示領域D2上に実装回路3を実装することで、画像表示装置1を作製することができる。
【0069】
<画素回路の動作>
次に、有機発光ダイオードOLEDの発光動作について説明する。なお、図5は、本実施形態に係る画像表示装置の一画素に対応する画素回路を示す図面である。画素回路は、回路層11内に位置する。なお、図5、図7〜図11では、有機発光ダイオードOLEDの容量をCOLEDとして表している。有機発光ダイオードOLEDは、電流が流れる向きと反対方向に電圧が加わると容量として機能する。画素4は、素子基板2上にマトリックス状に配列されており、各画素回路についても各画素4に対応して素子基板2上にマトリックス状に配列される。
【0070】
本画素回路は、n型TFTを用いたアノードコモンのトップエミッション構造に関する4TFT画素回路である。画素は、有機発光ダイオードOLED、4つのTFTを制御するための各種配線、及び容量素子を含んで構成されている。ここで、4つのTFTとは、ドライバ素子としての駆動トランジスタTと、駆動トランジスタTのドレイン・ソース間に電流が流れ始める駆動トランジスタTの閾値電圧Vthを検出するときに用いる閾値電圧検出トランジスタTthと、容量素子に蓄積された電荷を抜くための第1スイッチングトランジスタTS1と、画像データを供給する第2スイッチングトランジスタTS2である。
【0071】
ここで、各種配線とは、有機発光ダイオードOLEDの両端に電位差を生じさせる電源線VDDと、閾値電圧検出トランジスタTth及び第2スイッチングトランジスタTS2のオン・オフを制御するTth制御線Lthと、第1スイッチングトランジスタTS1のオン・オフを制御する走査線Lと、画像データを供給する画像信号線Lと、基準電位に接続される基準線Lである。なお、本実施形態に係る基準線Lは、アースに接続される。ここで、容量素子は、第1容量素子Cs1と、第2容量素子Cs2と、第3容量素子Cs3である。
【0072】
画像信号線Lは、Xドライバ3aと接続されている。Xドライバ3aからは、素子基板2の短手方向に沿って多数の画像信号線Lが延在されている。一つの画像信号線Lは、短手方向に沿った一ラインの複数の画素と接続されている。そして、Xドライバ3aから各画像信号線Lに画像に応じた画像データが供給される。
【0073】
走査線L及びTth制御線Lthは、Yドライバ3bと接続されている。Yドライバ3bからは、素子基板2の長手方向に沿って多数の走査線L及びTth制御線Lthが延在されている。一つの走査線L及び一つのTth制御線Lthは、長手方向に沿った一ラインの複数の画素と接続されている。そして、Yドライバ3bから各走査線LとTth制御線Lthに制御信号が供給される。なお、電源線VDDは、画像データが書き込まれる同時に書き込まれる画素回路において共通に接続されている。そして、電源線VDDは、例えば、フレキシブルプリント基板を介して外部から電源が供給される。
【0074】
図5に示すように、電源線VDDと基準線Lの間に、有機発光ダイオードOLEDと駆動トランジスタTが直列に接続されている。つまり、有機発光ダイオードOLEDのカソードと駆動トランジスタTのドレインが接続され、有機発光ダイオードOLEDのアノードと電源線VDDが接続される。駆動トランジスタTのソースは、基準線Lと接続される。
【0075】
閾値電圧検出トランジスタTthの一端は、有機発光ダイオードOLEDのカソードと駆動トランジスタTのドレインとの間に接続される。閾値電圧検出トランジスタTthの他端は、駆動トランジスタTのゲートと第1容量素子Cs1の一端の間に接続される。また、閾値電圧検出トランジスタTthのゲートは、Tth制御線Lthと接続される。そして、閾値電圧検出トランジスタTthは、Tth制御線Lthからの信号に応じて、オン状態又はオフ状態に切り替えられる。
【0076】
第1スイッチングトランジスタTS1の一端は、第1容量素子Cs1の他端と第2スイッチングトランジスタTS2の一端との間に接続される。第1スイッチングトランジスタTS1の他端は、基準線Lと接続される。第1スイッチングトランジスタTS1のゲートは、Tth制御線Lthと接続される。そして、第1スイッチングトランジスタTS1は、Tth制御線Lthからの信号に応じて、オン状態又はオフ状態に切り替えられる。
【0077】
第2スイッチングトランジスタTS2の一端は、第1容量素子Cs1の他端と接続される。第2スイッチングトランジスタTS2の他端は、画像信号線Lと接続される。また、第2スイッチングトランジスタTS2のゲートは、走査線Lと接続される。そして、第2スイッチングトランジスタTS2は、走査線Lからの信号に応じて、オン状態又はオフ状態に切り替えられる。スイッチングトランジスタTS2がオン状態のときに、画像信号線Lから画像データが供給されると、容量素子に画像データに応じた電荷が蓄積される。
【0078】
第2容量素子Cs2と第3容量素子Cs3の一端同士が接続され、第2容量素子Cs2と第3容量素子Cs3の他端同士が接続される。そして、第2容量素子Cs2の一端と第3容量素子Cs3の一端は、第2スイッチングトランジスタTS2の一端と第1容量素子Cs1の他端との間に接続される。また、第2容量素子Cs2の他端と第3容量素子Cs3の他端は、基準線Lに接続される。
【0079】
図6は、図5の画素回路の動作を示すタイミングチャートである。図6に示されるように、一の画像データを表示するための単位フレーム期間は、容量COLEDに電荷を蓄積する準備期間T1と、容量素子の電荷を抜く初期化期間T2と、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthを検出するための閾値検出期間T3と、画素回路に画像データを書き込むための書込み期間T4と、有機発光ダイオードOLEDが発光する発光期間T5とから構成されている。なお、書込み期間T4における画像信号線Lの電位は、各有機発光ダイオードOLEDの発光輝度によって決まる任意の値であるため、図6では、当該電位が存在し得る範囲にハッチングが便宜的に付されている。
【0080】
以下では、図7〜11を参照して、図6の期間T1〜T5について説明する。
【0081】
(準備期間)
図7では、有機発光ダイオードOLEDの容量COLEDに電荷を蓄積する準備期間T1での画素回路における電流の流れが示されている。
【0082】
図7に示すように、基準線Lから駆動トランジスタTを介して容量COLEDに電荷が蓄積される。
【0083】
ここで、準備期間T1における各TFTを制御するための各種配線の電位について説明する。まず、電源線VDDの電位を負電位(−Vp)とする、Tth制御線Lth、走査線L、及び画像信号線Lの電位を低電位(VgL)とする。そして、駆動トランジスタTをオン状態とする。また、閾値電圧検出トランジスタTth、第1スイッチングトランジスタTS1、及び第2スイッチングトランジスタTS2をオフ状態とする。
【0084】
準備期間T1において、各種配線の電位をこのように制御することによって、電源線VDDの電位を基準線Lよりも低い電位とし、駆動トランジスタTをオン状態とする。そして、有機発光ダイオードOLEDに逆バイアスを印加し、基準線Lから駆動トランジスタTを介して容量COLEDに電荷を蓄積する。
【0085】
(初期化期間)
図8では、第1容量素子Cs1、第2容量素子Cs2、及び第3容量素子Cs3の電荷が抜ける初期化期間T2での画素回路における電流の流れが示されている。
【0086】
図8に示すように、第1容量素子Cs1、第2容量素子Cs2、及び第3容量素子Cs3の電荷が基準線Lに抜ける。
【0087】
ここで、初期化期間T2における各TFTを制御するための各種配線の電位について説明する。電源線VDDの電位は、負電位(−Vp)に維持される。Tth制御線Lthの電位は、低電位(VgL)から高電位(VgH)に切り替えられる。走査線Lと画像信号線Lの電位は、負電位(VgL)に維持される。駆動トランジスタT、閾値電圧検出トランジスタTth、及び第1スイッチングトランジスタTS1をオン状態とする。また、第2スイッチングトランジスタTS2をオフ状態とする。
【0088】
初期化期間T2では、各種配線の電位をこのように制御することによって、第1容量素子Cs1に蓄積された電荷の一部は、閾値電圧検出トランジスタTth及び駆動トランジスタTを介して基準線Lに抜ける。また、第2容量素子Cs2及び第3容量素子Cs3に蓄積された電荷は、第1スイッチングトランジスタTS1を介して基準線Lに抜ける。
【0089】
(閾値電圧検出期間)
図9では、第1容量素子Cs1に駆動トランジスタTの閾値電圧に対応する電荷が蓄積される閾値電圧検出期間T3での画素回路における電流の流れが示されている。
【0090】
図9に示すように、容量COLED及び第1容量素子Cs1に残存する電荷が駆動トランジスタTdを介して抜け、駆動トランジスタTdがオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0091】
ここで、閾値電圧検出期間T3における各TFTを制御するための各種配線の電位について説明する。電源線VDDの電位は、負電位(−Vp)からゼロ電位(0V)に切り替えられる。Tth制御線Lthの電位は、高電位(VgH)に維持される。走査線L及び画像信号線Lの電位は、低電位(VgL)に維持される。閾値電圧検出期間T3の前半では、各種配線の電位をこのように制御することによって、駆動トランジスタT、閾値電圧検出トランジスタTth、及び第1スイッチングトランジスタTS1がオン状態とする。第2スイッチングトランジスタTS2をオフ状態とする。また、閾値電圧検出期間T3の後半では、駆動トランジスタTdがオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0092】
閾値電圧検出期間T3では、各種配線の電位をこのように制御することによって、第1容量素子Cs1に残存する電荷、及び容量COLEDに蓄積されている電荷が駆動トランジスタTを介して基準線Lに抜ける。具体的には、駆動トランジスタTのゲート・ソース間の電位が駆動トランジスタTの閾値電圧Vthとなるまで、第1容量素子Cs1及び容量COLEDの電荷が抜ける。そして、駆動トランジスタTdがオン状態からオフ状態に切り替わる。このとき、第1容量素子Cs1には、駆動トランジスタTの閾値電圧Vthに応じた電荷が蓄積される。
【0093】
その結果、期間T3では、駆動トランジスタTの閾値電圧に応じた電荷が第1容量素子Cs1に蓄積されて、画素ごとに異なる駆動トランジスタTの閾値電圧Vthのばらつきが補償される。
【0094】
(書込み期間)
図10では、第2容量素子Cs2及び第3容量素子Cs3に画像データに応じた電荷が蓄積される書込み期間T4での画素回路における電流の流れが示されている。
【0095】
図10に示すように、画像信号線Lから第2スイッチングトランジスタTS2を介して、第2容量素子Cs2及び第3容量素子Cs3に画像データに応じた電荷を蓄積する。
【0096】
ここで、書込み期間T4における各TFTを制御するための各種配線の電位について説明する。電源線VDDの電位は、ゼロ電位(0V)に維持される。Tth制御線Lthは、高電位(VgH)から低電位(VgL)に切り替えられる。走査線L及び画像信号線Lは、低電位から高電位に切り替えられる。駆動トランジスタT及び第2スイッチングトランジスタTS2をオン状態とする。閾値電圧検出トランジスタTth及び第1スイッチングトランジスタTS1をオフ状態とする。
【0097】
書込み期間T4では、各種配線の電位をこのように制御することによって、画像信号線Lから画像データを第2容量素子Cs2及び第3容量素子Cs3に供給し、画像データに応じた電荷を第2容量素子Cs2及び第3容量素子Cs3に蓄積する。また、第1容量素子Cs1に蓄積された駆動トランジスタTの閾値電圧Vthに応じたで電荷に基づいて、駆動トランジスタTをオン状態とし、容量COLEDに残存する電荷を駆動トランジスタTを介して基準線Lに放出する。
【0098】
(発光期間)
図11では、有機発光ダイオードOLEDが発光する発光期間T5での画素回路における電流の流れが示されている。
【0099】
図11に示すように、電源線VDDから有機発光ダイオードOLED及び駆動トランジスタTを介して基準線Lに電流が流れ、有機発光ダイオードOLEDが発光する。
【0100】
ここで、発光期間T5における各TFTを制御するための各種配線の電位について説明する。電源線VDDの電位をゼロ電位(0V)から正電位(VDD)に切り替える。Tth制御線Lth、走査線L、及び画像信号線Lを低電位(VgL)とする。駆動トランジスタTをオン状態とする。また、閾値電圧検出トランジスタTth、第1スイッチングトランジスタTS1、及び第2スイッチングトランジスタTS2をオフ状態とする。
【0101】
発光期間T5では、各種配線の電位をこのように制御することによって、第1容量素子Csに蓄積された駆動トランジスタTの閾値電圧に応じた電荷、および第2容量素子Cs2及び第3容量素子Cs3に蓄積された画像データに応じた電荷に起因して、駆動トランジスタTがオン状態となる。かかる駆動トランジスタTは、有機発光ダイオードOLEDが画像データに応じた輝度で発光するように導通制御されている。そして、電源線VDDの電位を高電位にすると、有機発光ダイオードOLEDに画像データに応じた電流が流れ、有機発光ダイオードOLEDが発光する。
【0102】
上述したように、画像信号線Lから供給される画像データに応じた電荷を第2容量素子Cs2と第3容量素子Cs3に蓄積することができる。第2容量素子Cs2と第3容量素子Cs3を、第2スイッチングトランジスタTS2の一端と基準線Lとの間において電気的に並列に接続することにより、容量素子に蓄積される電荷量を大きくすることができる。
【0103】
本実施形態に係る画像表示装置によれば、容量素子Cは、第1容量電極層16と第2容量電極層18との電極間に電荷が蓄積される。また、第2容量電極層18と第3容量電極層20との電極間に電荷が蓄積される。つまり、第2容量素子Cs2と第3容量素子Cs3を上下方向に積層することにより、画素内に設けられる容量が形成される領域を小さくすることができ、画素内の回路層の配置構成の自由度を向上させることができる。また、第2容量素子Cs2と第3容量素子Cs3を積層することにより、画像データの供給する電位をこれまでよりも低く設定することができ、ひいてはXドライバ3aを小さなものを用いることが出来る。その結果、画像表示装置全体を小型化することができる。
【0104】
また、本実施形態に係る画像表示装置によれば、画像データに応じた電荷をこれまでよりも効率良く容量素子に蓄積することができるため、各画素の発光輝度を向上させることができる。また、各画素に流す電流量を小さくしても、所望する発光輝度が得られるため、各画素に流す電流量を小さくし、発光層を構成する有機発光材料の劣化を抑制し、画像表示装置の製品寿命を長くすることもできる。
【0105】
さらに、本実施形態に係る画像表示装置によれば、ボトムエミッション構造の画像表示装置と比較して、回路層と有機発光ダイオードの位置関係を、上下方向重ねて配置するとともに、更に容量素子を積層構造としたことにより、効果的に開口率を上げることができる。
【0106】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上述した実施形態においては、第1電極層が共通電極であるアノードコモンの画像表示装置について説明したが、本発明の作用効果を奏するのであれば、隔壁を有さないトップエミッション構造であって、且つ第2電極層が全画素で共通電極となるカソードコモンの画像表示装置であってもよい。なお、上述した実施形態においては、有機ELディスプレイ装置を例に挙げて説明したが、本発明の作用効果を奏するのであれば、液晶素子を用いた画像表示装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 画像表示装置
2 素子基板
3 実装回路
4 画素
5 隔壁
6 絶縁物
7 封止基板
8 保護膜
9 シール材
10 回路層
11 ゲート層
12 第1絶縁膜
13 チャネル層
14 ソース・ドレイン層
15 第2絶縁膜
16 第1容量電極層
17 第1誘電体層
18 第2容量電極層
19 第2誘電体層
20 第3容量電極層
21 接続配線
22 コンタクト部
23 コンタクト電極層
24 平坦化膜
25 第1電極層
26 発光層
27 第2電極層
28 正孔注入層
29 正孔輸送層
30 有機発光層
31 電子輸送層
32 電子注入層
D1 表示部
D2 実装部
R1 発光領域
R2 非発光領域
D1 表示部
S コンタクトホール
OLED 有機発光ダイオード
駆動トランジスタ
th 閾値電圧検出トランジスタ
S1 第1スイッチングトランジスタ
S2 第2スイッチングトランジスタ
容量素子
DD 電源線
thth制御線
画像信号線
走査線
基準線
Cs1 第1容量
Cs2 第2容量
Cs3 第3容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れることで発光する発光素子と、
電圧を印加することで、前記発光素子に流れる電流量を調整するドライバ素子と、
前記ドライバ素子に対して印加する前記電圧に応じた電荷が蓄積されるとともに、複数の誘電体層を電極層を介して積層してなる容量素子とを備え、
前記ドライバ素子及び前記容量素子は、平面視して離間するように設けられており、
前記容量素子上に前記発光素子が重なるように形成されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ドライバ素子は、ゲート層と当該ゲート層上に形成される第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成されるチャネル層と、前記第1絶縁層上から前記チャネル層上まで形成されるソース・ドレイン層とを備え、
前記チャネル層上に、前記ゲート層と接続される接続配線が延在して形成されることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記接続配線の一部と前記容量素子の電極層の一部とが接続されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記ソース・ドレイン層の一部と前記発光素子の一部とが電気的に接続されることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像表示装置において、
前記ソース・ドレイン層と前記発光素子との間に、前記接続配線と同一材料のコンタクト部が形成されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記容量素子は、前記発光素子に流れる電流量に応じた電荷が蓄積されることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記発光素子の発光期間に前記容量素子に蓄積された電荷に基づいて前記ドライバ素子がオン状態となり前記発光素子が発光することを特徴とする画像表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−256538(P2010−256538A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105164(P2009−105164)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】