画像表示装置
【課題】特殊用途の画像表示装置において、特定色の色分解能を向上し、色再現性を高める画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置において、入力値(階調レベル)と出力値(輝度相対値)との関係で表されるガンマ曲線の一部の領域に傾きの緩やかな領域を設け、それにより色度座標上での色度点を偏在させ、特定色の色分解能を向上する。これにより、遠隔医療用モニタや外科手術用モニタに代表される特定色範囲の画像を表示する特殊モニタでの色再現性を向上できる。
【解決手段】画像表示装置において、入力値(階調レベル)と出力値(輝度相対値)との関係で表されるガンマ曲線の一部の領域に傾きの緩やかな領域を設け、それにより色度座標上での色度点を偏在させ、特定色の色分解能を向上する。これにより、遠隔医療用モニタや外科手術用モニタに代表される特定色範囲の画像を表示する特殊モニタでの色再現性を向上できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、映像源に応じて、特定色の色分解能を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置は、テレビ、携帯電話、パソコン用モニタ、デジタルサイネージ、その他産業用モニタなど様々な分野で用いられている。近年では、さらにその用途も拡大され、例えば、TV会議システムにおける表示装置や、さらには医療現場でも画像表示装置が利用される機会が増えてきた。このような画像表示装置では、これまでのテレビやパソコン用モニタなど、一般的に利用されている画像表示装置とは要求される特性が大きく異なる。今後、画像表示装置が、さらに幅広い分野で適応し、浸透していくためには、その分野の使用目的に応じた表示特性を満足し、また、それに向けた技術開発を進めていく必要がある。
【0003】
医療用の画像表示装置は、代表的なものとして、電子カルテ表示モニタ、X線画像モニタ、外科手術用モニタ、遠隔医療用モニタなどがある。その具体例を、例えば遠隔医療用モニタで説明する。遠隔医療用モニタは、その名が示すように、医師が患者から距離を隔てたところで診察を行う、いわゆる遠隔医療で利用される画像表示装置である。特に医師不足が指摘されている現代においては、場所に関係なく受診できるシステムは必須である。このような遠隔医療では、医師はモニタに映し出された患者の映像を基に、様々な診断を行う。患者の状態を把握するためには、顔色や肌の状態、炎症部の状態を細かく把握する必要があり、それらの観察結果に基づいて症状などの診断を下す。このとき、モニタに映し出される映像そのものが、医師にとっての患者の状態を知るデータの一つとなる。従って、人の肌の色や、その凹凸感、質感など細部までモニタで表現する必要がある。このような特性の要求は、テレビなどの画像表示装置とは異なる、特殊なものである。
【0004】
また、近年、普及が進んでいるTV会議システムは、インターネットや電話回線を通して、場所の異なる会議室でお互いの画像を双方向で画像表示装置に表示するシステムであり、お互いが同じ会議室で議論している雰囲気を擬似的に作り出す。このような画像表示装置においては、相手の顔色や、肌の質感、存在感などを細部まで表現することが望まれる。
【0005】
なお、このような遠隔医療用モニタ、外科手術用モニタなどの医療用システムや、TV会議システムのような双方向ビジュアルシステムは、インターネットの一般的な普及に伴い、以前よりその導入が容易になってきている。今後ますますその利用が拡大される傾向にある。
【0006】
画像表示装置で表示した画像の色や明るさなどの画質は、ガンマ補正によって決まる。ガンマ補正とは、外部からの映像信号(入力値)と、画像表示装置で表示するときの信号(出力値)の相対関係を調整し、人がより違和感なく画像を見るための補正操作を意味する。一般に入力値は、映像信号の階調レベルxであり、出力値は最大階調レベルxmaxにおける輝度を1とした場合の輝度相対値Y(x)で表される。この入力値と出力値の関係を示した曲線をガンマ曲線と言う。
【0007】
現在、一般には映像信号としては、8ビットの信号が利用され、階調レベルxは0から255の整数で表される。例えば、nビットの信号の場合には、階調レベルxは0から2n−1の整数値をとる。そして、それに対応して輝度相対値が一対一対応で決められている。階調レベルxが一つ決まれば、それに対応する輝度相対値Y(x)も一つに決まる。上記ガンマ曲線は、これら階調レベルと輝度相対値の関係を示す曲線であるが、実は、座標上では連続した線ではなく、離散的な点の集合である。
【0008】
従来、これらのガンマ曲線は近似的にY=(x/(2n−1))2.2の曲線で表される。これは、経験的に、このような関係とすることで、TV映像視聴時などに人が高画質と感じるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように、遠隔医療用モニタ、外科手術用モニタなどの医療用システムや、TV会議システムのような双方向ビジュアルシステムにおける画像表示装置など特殊用途の画像表示装置においては、ある特定色の色分解能を向上し、色再現性を高めることが必要となる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、特殊用途の画像表示装置において、特定色の色分解能を向上し、色再現性を高める画像表示装置を提供することである。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
すなわち、代表的なものの概要は、外部からの映像信号を入力値とし、その入力値をガンマ曲線によって補正あるいは変換した出力値を用いて、映像を表示する画像表示装置であって、入力値(階調レベル)と出力値(輝度相対値)との関係で表されるガンマ曲線の一部の領域に傾きの緩やかな領域を設け、それにより色度座標上での色度点を偏在させ、特定色の色分解能を向上するものであり、以下に示す構成を有することを特徴とする。すなわち、入力値は、映像信号の階調レベルx(0≦x≦2n−1を満たす整数,ここでnはビット数)であり、出力値は、最大階調レベルxmax(=2n−1)で輝度が1となるように規格化した輝度相対値Y(x)であり、階調レベルxと輝度相対値Y(x)は、一対一に決まる関係を有し、(式1)と(式2)を用いて傾きR(xi−1,xi)とR(xi,xi+1)を定義した場合に、(式3)を満足する階調レベルxiが階調レベル0と最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あり、(式4)と(式5)を用いて傾きR(xj−1,xj)とR(xj,xj+1)を定義した場合に、(式6)を満足する階調レベルxjが階調レベルxiと最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あるように調整されているガンマ曲線を有することを特徴とする。
【0014】
【数1】
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、特に画像表示装置の映像信号からの入力値(階調レベル)と出力値(輝度相対値)との関係で表されるガンマ曲線において、その一部の階調領域で、傾きを緩やかにし、特定色の色分解能を向上することによって、色再現性を高めることが可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明におけるガンマ曲線(xi−xp−xjは単調増加の直線)を説明するための図である。
【図2】本発明におけるガンマ曲線((a):xi−xp−xjは単調増加の下に膨らんだなだらかな曲線、(b):xi−xp−xjは単調増加の上に膨らんだなだらかな曲線)を説明するための図である。
【図3】本発明におけるガンマ曲線(複数箇所で単調増加)を説明するための図である。
【図4】本発明におけるガンマ曲線((a):赤色と緑色は単調増加あり、(b):青色は単調増加なし)を説明するための図である。
【図5】本発明におけるガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法((a):基本的な方法、(b):面積比率を用いる方法)を説明するための図である。
【図6】本発明におけるガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法(階調頻度分布が複数の場合)を説明するための図である。
【図7】本発明における補色を導き出す方法((a):青色の輝度を下げる場合、(b):緑色の輝度を下げる場合)を説明するための図である。
【図8】本発明における画像表示装置のガンマ曲線決定のためのフローおよび構成を説明する図である。
【図9】本発明における画像表示装置の補色計算のためのフローおよび構成を説明する図である。
【図10】本発明におけるガンマ曲線を説明するための図((a):表示領域ごとに設定する場合、(b):領域Aのガンマ曲線、(c):領域Bのガンマ曲線)である。
【図11】本発明における実施の形態1で用いた画像表示装置のガンマ曲線を説明するための図((a):ガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、(b):補色を導き出す方法、(c):ガンマ曲線)である。
【図12】本発明における実施の形態2で用いた画像表示装置のガンマ曲線を説明するための図((a):ガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、(b):補色を導き出す方法、(c):ガンマ曲線)である。
【図13】本発明におけるガンマ曲線(nビットの場合)を説明するための図である。
【図14】一般的な画像表示装置におけるu’v’色度座標系と色再現範囲を説明するための図である。
【図15】一般的な画像表示装置における特殊映像での色度範囲を説明するための図((a):日本人の肌色と血管色の色度範囲、(b):日本人の肌色の色度評価結果)である。
【図16】一般的な画像表示装置におけるガンマ曲線を説明するための図である。
【図17】本発明の実施の形態1および2に適用される一般的な液晶ディスプレイ装置の構造の概略を示した図である。
【図18】本発明の実施の形態3に適用される一般的なプラズマディスプレイ装置の構造の概略を示した図((a):表示領域の一部分の拡大斜視図、(b):(a)のV面断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、本説明では、画像表示装置の具体例として、プラズマディスプレイ装置や液晶ディスプレイ装置に代表されるフラットパネルディスプレイ装置を用いて説明するが、本発明の考え方は、映像や画像を表示する他の画像表示装置においても同様に適用可能である。
【0019】
<画像表示装置の色表現>
一般に利用される画像表示装置では、3原色を用いて様々な色を表現する。一般的にはR(赤)G(緑)B(青)の3色を用い、それぞれの光強度比率を変化させて、様々な色を表現する。所謂、加法混色として色を表現する。例えば、液晶ディスプレイ装置では、RGB3つの画素を一つの単位とし、RGB各画素の透過率をそれぞれ制御、すなわち輝度を制御することによって、RGBの光強度比を調整し、様々な色を表現している。
【0020】
これらの画像表示装置において再現できる色の数は、一般的には約1677万色である。通常、画像表示装置で表現される映像は8ビットでの表示となり、3原色の各色に256階調(0から255階調まで)が割り当てられるため、RGBの光強度の組み合わせは約1677万通り(256×256×256)、即ち、約1677万色の表現が可能ということになる。さらにnビットでの表示の場合には、各色に2n階調が割り当てられ、その色表現数は、23n色となる。
【0021】
これらの色は、一般に色度座標という座標上で数値化して表現することができる。色度座標にはxyを用いた座標系(CIE1931)やu’v’を用いた座標系(CIE1976)などがよく用いられる。図14にu’v’色度座標系(CIE1976)を示した。可視光として人間が知覚する色は、領域Aで示される範囲の内側もしくは線上にある。また、画像表示装置で表現できる色は、例えば、3原色を用いている画像表示装置においては、領域Bに示す三角形で現された範囲の内側もしくは線上の色に限られる。この領域Bの三角形の各頂点に位置する座標は、画像表示装置の特性によって決まるが、3原色の各色を単色で表示させた場合の色度座標となる。さらに、画像表示装置において、表現できる色は、この三角形の内部に位置する色を全て表現できるわけではない。先ほど述べたように、画像表示装置で表現できる色は8ビットの場合、1677万色であり、この三角形の内部に位置する1677万点(色度点)の色を表現することができる。テレビや一般のモニタにおいては、様々な映像を表示するため、この色度点が、一様に三角形内部で分布している状態である。例えば、森林の映像では緑色を基調とした表示になる場合もあれば、海や空の映像では、青色を基調とした表示になる場合もある。様々な色を有する映像を表現できるような色度座標の分布となっている。
【0022】
<特殊用途の画像表示装置における色表現>
一方、先に述べたような医療用システムの遠隔医療用モニタや外科手術用モニタ、TV会議システム用のモニタなど特殊用途モニタでは、映し出す映像はテレビやパソコン用モニタほど多種多様ではなく、ほぼ決まった映像である。即ち、映し出す色もほぼ特定の色である。例えば、遠隔医療用モニタでの映像は、患者の顔や、肌あるいは皮膚などである。このような場合には、人の肌の色がメインの色となる。例えば、日本人の肌の色を色度で表すと、ほぼ図15(a)の色範囲Aで示される領域である。実際に、一般照明光源(3波長蛍光灯)の下で日本人の肌の色度を評価した結果を図15(b)に示した。ほぼ、色範囲A内にある。また、外科手術用モニタでは、手術中に内臓や血管などの映像を映し出す場合が多く、主には赤色から青色にかけた色がメインの色となる。色度の分布する範囲は、ほぼ図15(a)に示す色範囲Bの領域である。このような画像表示装置においては、特定の色(色範囲)のみを表現し、それ以外の色はあまり必要とされない。その代わりに、その特定色での微妙な色違い(色差)を表現することが重要となってくる。即ち、表現する色範囲はテレビなどの従来の色度範囲に比べて狭くてもよいが、その特定色範囲における色分解能を向上する必要がある。
【0023】
例えば、先に述べたような遠隔医療用モニタでは、患者の微妙な顔色の違いなどで、病状を診断する。また、外科手術用モニタで血管を映し出す場合でも、動脈と静脈の色は異なり、この色の違いを十分に表現し、各血管の違いを表現する必要がある。特殊なモニタにおいては、特定の範囲の色しか表示しないが、同色系での、色の分解能を向上し、その差を十分に表現することが必要である。
【0024】
<色分解能向上の考え方>
ここでは、特定色の色分解能向上の考え方について述べる。色分解能を向上させるためには、色度座標上において、色度点が密になるように(密集するように)配置すればよい。密に配置すればするほど、細かな色の違いを表現できることになる。
【0025】
これを実現できる一つの手段として、映像表示のビット数を大きくすることが考えられる。通常の画像表示装置においては、先に述べたように8ビットの信号を利用しているため、各色256階調の表示があり、約1677万色を表現できる。nビットの画像表示装置を用いることにより、計算上では、23nの色度点を作り出すことができ、色度座標上で色度点を全ての領域で密に配置できるため、細かな色表現が可能となる。しかし、ビット数を大きくすることは、メモリーへの負荷の増大や、消費電力の増大、さらには画像表示装置の部材のコストアップなど様々な問題を生じる。そこで本発明者らは、ビット数を大きくすることなく、特定色の色度点の密度を向上させることを考えた。
【0026】
これは次のような方法で可能である。即ち、色度点を特定の領域のみに偏在させ、その他の色領域は疎にする。このようにすることで、ビット数を上げることなく特定色での色分解能を向上できる。例えば、8ビットでは、色度点が1677万点あり、これまでは満遍なく色度座標上に配置されていたが、画像表示装置が映し出す映像が必要とする特定の色に応じて、その特定の色範囲にのみこれらの点を偏在して配置させる。このような方法を採ることで、色度点の総数(例えば、8ビットで約1677万点)を変えることなく、特定の色範囲において、細かな色表現を実現できる。
【0027】
ここで述べた方法は、ある特定の色範囲を表現する特殊モニタに特に有効である。例えば、先に述べた遠隔医療用モニタでは、顔色など肌の色を表現する映像が多いため、肌色範囲(例えば、図15(b)の色範囲A)の色の違いを表現することが重要である。従って、色度点がこの肌色の範囲で密になるように配置する。このような映像においては、青色などの色範囲は、あまり表現されないため、色度点が青色領域で疎に配置されても大きな影響はないと考えられる。また、外科手術用モニタでは、血管色を表現する映像が多いため、赤色から青色にかけた色範囲(例えば、図15(a)の色範囲B)に色度点を偏在させることにより、血管の微妙な色の違いを表現する。このような映像では、例えば緑色範囲を表現する映像はほとんどないため、この色領域では、色度点を疎に配置しても大きな問題とはならないと考えられる。
【0028】
この色度点の偏在化を実現するためには、次で述べるように、ガンマ曲線を調整する必要がある。このガンマ曲線の設定が、本発明の最も重要な点である。なお、ここで述べるガンマ曲線とは、階調レベルと輝度相対値の関係曲線をいう。詳細は以下で述べる。
【0029】
<ガンマ曲線の設定>
<1>ガンマ曲線の傾き
ここでは、先に述べた色度点の偏在化を実現するためのガンマ曲線の設定について述べる。ガンマ曲線は、図16に示すように階調レベルと輝度相対値の関係曲線を意味する。図16では8ビットを考えているため、横軸の階調レベルは0から255であり、縦軸は、255階調での輝度(光強度)を1とした場合の輝度相対値で示している。nビットの場合には、階調レベルの最大値が、2n−1となる。本明細書の中では、主に8ビットでの表現となっているが、同様の考え方はビット数がnの場合でも可能である。
【0030】
一般的なガンマ曲線は、図16に曲線Aで示すような下に膨らんだ曲線形状である。いわゆるγ=2.2の曲線であり、一般的なテレビなどの映像がきれいに見える曲線と言われている。先に述べたように、TV映像などでは、様々な映像を表示するため、どのような色合いの映像においても美しく見える表現が必要とされ、それを満足するガンマ曲線がγ=2.2の曲線と言われている。後述するが、このガンマ曲線は近似的に(式7)のように表わすことができる。一方、図16に曲線Bで示した直線はγ=1.0の場合である。この図から分かるように、γの値が大きくなるほど、下に膨らんだ曲線形状となる。ここで示すガンマ曲線の式は近似式であり、実際には、階調レベルは、整数の値しか取らず、座標上では離散的な点の集まりとなる。本明細書では、この階調レベルと、それによって一意に決まる輝度相対値の関係をガンマ曲線と言うこととする。本アイデアでは、このガンマ曲線の形状を変えることで、先に述べた色度点の密度を、ある色範囲で高くする。即ち、その色範囲における色分解能を向上し、細かな色表現を可能とする。
【0031】
本発明での最大のポイントは、図1に示すように、ガンマ曲線の傾きをある階調範囲(例えば、図1中の階調範囲xiからxj)で他の前後の階調範囲に比べて、緩やかにすることである。あるいは、その階調範囲で、従来のガンマ曲線(γ=2.2)に比べて、傾きを緩やかにすることである。図1では、8ビットでの記載となっているが、本発明は図13に示すようにnビットにおいても同様の考え方である。このようにガンマ曲線の傾きを緩やかにすることによって、階調が変化した場合に、それに伴う輝度の変化は従来よりも微少量になるため、細かな色のRGBの組み合わせを作ることができる。このことは、細かな色変化を作ることに相当し、色度点を密に配置することを意味する。
【0032】
一方、傾きの緩やかな階調領域(xiからxj)の前後の階調範囲(例えば、図1中の階調0からxi、xjから255)では、従来のガンマ曲線に比べ傾きが急峻になる。このような領域では、階調の変化に対して、相対輝度が従来に比べ大きく変化する領域であるため、結果として、色度点が疎の状態となる。
【0033】
本発明での一番の主張点は、このようにガンマ曲線の一部の階調領域において、曲線の傾き(変化量)を小さくし、色度点の配置を密にすることにより、特定の色範囲において、色分解能を向上させるものである。なお、この考え方では、曲線に緩やかな傾きが必要であるが、その傾きがゼロになることはない。傾きがゼロということは、階調を変化させても輝度が変化しないことを意味し、この場合には、色が変化しないことになり、色分解能はなくなる。即ち、映像源のデータを失うことに等しく、ほとんど意味がない。階調レベルxiとxjの間は、従来のγ=2.2の曲線に比べ傾きが緩やかになればよく、その区間は図1に示すように直線関係でもよく、また、図2(a)や(b)に示すように、それぞれ下に膨らんだなだらかな曲線、上に膨らんだなだらかな曲線でもよい。唯一必要とする条件は、階調レベルxiからxjの範囲で相対輝度が単調に増加していることである。この範囲で輝度変化がゼロまたは負になることはない。
【0034】
また、詳細は後で述べるが、映像によっては、図3に示すようにガンマ曲線が複数の階調範囲で、緩やかな領域を有してもよい。図3では、階調レベルg1からg3及びg1’からg3’の範囲で従来よりも傾きが緩やかな領域である。
【0035】
さらに、これらのガンマ曲線は、RGBでそれぞれ異なり、傾きが色によって異なってもよい。例えば、図4に示すようにRとGは本発明で述べるように、ある階調範囲で傾きがなだらかなガンマ曲線(図4(a))であり、Bについては、従来と同じ曲線(図4(b))であってもよい。
【0036】
上記の内容を数式で考えると次のように表現できる。即ち、階調レベルxと、それによって決まる輝度相対値Y(x)があり、これらは連続的な値ではなく、階調レベルが0から2n−1(nビットデータの場合)の整数しかとらないため、離散的な値である。さらに、階調レベルxと輝度相対値Y(x)は一対一に決まる関係である。ここでまず、階調レベルがxiの点を考えると、その前後の座標は(xi−1,Y(xi−1))と(xi+1,Y(xi+1))である。ここで、(xi−1,Y(xi−1))と(xi,Y(xi))、(xi,Y(xi))と(xi+1,Y(xi+1))の点を結んだときの傾きを考える。それぞれの傾きをR(xi−1,xi)とR(xi,xi+1)とすると、これらは、(式1)(式2)で表すことができる。
【0037】
【数2】
【0038】
上で述べたようにxiの点でガンマ曲線の傾きが緩やかになることから、R(xi,xi+1)はR(xi−1,xi)に比べて小さくなる必要がある。また、上で述べたようにxiとxjの区間では、単調に増加することが必要であることから、これらの傾きは必ず正の値を有する。これらのことから(式3)を得ることができる。
【0039】
【数3】
【0040】
次に、階調レベルxjの点を考える。その前後の座標からガンマ曲線の傾きは(式4)(式5)で表わすことができる。ここでは、階調レベルxjの点において、ガンマ曲線の傾きが大きくなる必要があることから、(式6)を得ることができる。当然、傾きは0よりも大きい必要がある。
【0041】
【数4】
【0042】
さらに、映像の見栄えを両立するためには、このガンマ曲線は、なるべく従来のガンマ曲線、即ちγ=2.2の曲線(Yorg)に近い方がよい。そこで、本アイデアでは、新規に設定するガンマ曲線が、(式7)で表わされる基準ガンマ曲線関数Yorgと交点Cpをもつように設定する。その交点Cpの階調レベルをxpとすると、xpはxiとxjの間にあることが望ましい。このとき、交点Cpは(0,Yorg(0))及び(2n−1,Yorg(2n−1))の2点を除く。(式7)において、nはビット数である。
【0043】
【数5】
【0044】
一方、先に述べたように、傾きの緩やかな階調領域(xiからxj)の前後の階調範囲(例えば、図1中の階調レベル0からxi、xjから255)では、従来のガンマ曲線に比べ傾きが急峻になる。これは、以下の(式8)(式9)のように近似的に数式で表現できる。ただし、(式8)は階調レベル0から階調レベルxiの区間であり、(式9)は階調レベルxjから最大階調レベルxmaxの区間である。
【0045】
【数6】
【0046】
なお、このとき、階調レベルxj及びxjの点においては、従来のガンマ曲線と比較して、下記(式10)の条件を満たすことが望ましい。
【0047】
【数7】
【0048】
次に、このガンマ曲線の設定で重要なのは、上記で示した階調範囲の設定である。即ち、図1におけるxi、xj、xpをどのように決定するかである。上記では「ある階調範囲」と記載しているが、その範囲は次のように設定するのが望ましい。
【0049】
<2>階調範囲の決定
ガンマ曲線において、上記のように、ある階調範囲での傾きを従来のガンマ曲線(γ=2.2曲線)より緩やかに設定するが、その階調の範囲は次のように決定する。即ち、図1での階調レベルxi、xj、xpの決定方法である。
【0050】
まず、表示する映像データから、階調の頻度分布を求める。図5にその例を示した。横軸に階調、縦軸には頻度をとったグラフである。縦軸の頻度は、画素数でもよい。通常は、図5(a)(b)に示すように、ある階調(例えば、図5中の階調g2)で頻度が最大値を示すような分布になっている。図5のグラフでは、対称な分布となっているが、非対称な分布となることもある。このとき、図5(a)に示すような、分布において、最小階調g1をxi、最大階調g3をxjとし、頻度の最も高い階調g2をxpとする。これを用いて、上記ガンマ曲線の階調範囲を決定する。この階調範囲で従来のガンマ曲線よりも傾きを小さくすれば、少なくとも上記効果を得ることができる。なお、図1に示すように、階調xpでの相対輝度を従来の相対輝度に合わせ、その点を通るように、曲線を決定してもよい。このとき、階調レベル0からxiの間では、γが1より大きく2.2より小さい条件となり、また階調レベルxjから255の間では、γが2.2より大きい条件となる。これは例えば上記(式10)のように表わすことができる。
【0051】
階調範囲の決定方法として、もう一つの方法について図5(b)を用いて説明する。映像によっては、この階調頻度分布が非常にブロードに広がっている(半値幅が大きい)場合がある。このような場合には、上記階調範囲の決定では、階調範囲が広くなってしまい、ガンマ曲線の調整が困難となる。そこで、例えば、頻度分布の面積比率rが、全体面積の95%となるような、g1とg3の範囲を算出し、そこから求められた階調を用いて階調範囲とする方法である。即ち、頻度分布の関数を階調xに関してf(x)と表現すると、次の(式11)を満足するようなxi,xjを算出することによって、階調範囲を決定する。なお、xpの決定は先と同様であり、最大頻度の階調をxpとする。
【0052】
【数8】
【0053】
また、図6に示すように2群の分布を示した場合には、それぞれの分布から上記手順に従って、g1、g2、g3、g1’、g2’、g3’を求める。これを用いて、ガンマ曲線は、2つの階調領域で傾きが緩やかな領域を作る。即ち、図3に示すように、階調領域g1からg3と、g1’からg3’で傾きが緩やかな領域を設ける。さらに、3群以上の複数の分布を示した場合にも同様である。これにより先に述べた効果を得られる。
【0054】
なお、これらの階調範囲決定は、例えば図8に示すように、表示装置11と映像源(映像信号源)12との間に、回路あるいはシステムを導入することによって、実現することが可能である。即ち、映像源12からの映像信号を表示領域演算処理システム13により、同様の色度範囲の映像を切り出し、その後、閾値階調レベル決定回路14にて、上記で述べたような手法に基づき、階調の頻度分布から階調範囲を決定する。さらにこれらの階調範囲において、ガンマ曲線が従来の曲線に比べて、緩やかになるような曲線をガンマ曲線演算回路15にて算出する。そして、この算出されたガンマ曲線を、表示装置11のガンマ補正16として用いることにより、特定色における色分解能を向上する効果を得られる。
【0055】
<色範囲のレンジ拡大>
図15(b)の結果から分かるように、肌色の色範囲(日本人)といっても、実際には、ある方向にかなりの広がりを有する。この場合には、主にu’方向に広がっていることが分かる。上記で述べたようにガンマ曲線の一部の階調領域に傾きの緩やかな領域を設けることにより、色分解能は向上するが、一方で、相対輝度のダイナミックレンジが小さくなるために、色範囲のレンジが少し小さくなってしまうという副作用が生じる。すなわち、図15(b)でu’方向の広がりが、モニタ表示の場合に少し抑制されてしまうことになる。これを解決するために、画像表示装置を構成する3原色のうち表示に影響の少ない一つの原色の輝度を下げるという方法が必要である。具体的に図7を用いて述べる。なお、ここで言う「輝度」は絶対値であり、「輝度を下げる」というのは、ガンマ曲線の形状、即ち、階調レベルと輝度相対値の関係は維持したまま、輝度の絶対値を下げるという意味である。
【0056】
例えば、日本人の肌色の映像を表示する場合には、基本的に赤色(R)と緑色(G)で表現され、青色(B)の寄与は小さい。むしろ青色の輝度があることによって、色度が青色方向に引っ張られることになるため、先の色の表現範囲(u’方向の広がり)が狭められてしまう。従って、肌色表示の場合には3原色のうち表示色に影響の少ない青色の輝度を下げることによって、肌色のダイナミックレンジを確保する。実際には図7(a)に示すように、表示する特定色の平均色度を算出し、その補色に対応する色の輝度を下げる。補色は、例えば、先に算出した平均色度(u’av,v’av)とモニタの白色点(u’w,v’w)を結ぶベクトル(cの上に→を重ねて表記)の延長方向にある色であり、画像表示装置を構成する3原色のうち、そのベクトルに近いものを選択し、その光強度を下げる。肌色の補色に最も近い3原色は青色である。
【0057】
また、血管色を表示するような映像においては、図7(b)に示すように、補色に相当する緑色の輝度を下げることが望ましい。
【0058】
以上の考え方を合わせることにより、特定色の色分解能の向上と、色表現範囲の確保を両立することができ、現実的な色を画像表示装置上で表現することが可能となる。
【0059】
なお、このようなシステムを画像表示装置に組み込む場合には、例えば、図9に示すようなシステム及び回路を必要とする。映像源12のデータに基づき、表示領域演算処理システム21により特定色の画像領域を切り出し、その画像領域に関する色度解析を色度解析システム22で実行する。ここでは、画像領域の平均色度の算出や、それに対応する補色色度の算出を行う。これらに基づき、輝度を抑制すべき画像表示装置の構成原色を色度決定回路23で決定し、光強度補正回路24にて、その色の輝度(出力)を抑制する。
【0060】
<その他の追加技術>
従来の画像表示装置では、映像表示領域でガンマ曲線は基本的に同一であった。しかし、図10(a)に示すように、例えば、患者の顔を映し出している領域(例えば領域A)とその患者の背景を映し出している領域(例えば領域B)では、表示する色が大きく異なる可能性がある。そのような場合には、図10(b)(c)に示されるように、表示領域ごとにガンマ曲線を設定してもよい。例えば、領域Aでは患者の顔を表示することから、先に述べた技術により図10(b)に示すようなガンマ曲線を設定し、領域Bでは図10(c)に示すように従来のガンマ曲線を設定する。これにより、表示領域全体として違和感のない映像表示を可能とする。
【0061】
具体例は、以下の実施の形態の中で述べる。なお、本発明は、特にこれら実施の形態に限られるものではない。以下の実施の形態の中では、液晶ディスプレイ装置とプラズマディスプレイ装置について述べるが、画像表示装置としては、液晶ディスプレイ装置とプラズマディスプレイ装置に限られることはなく、画像を表示する装置であれば、CRT装置、有機ELディスプレイ装置、プロジェクタなどに同様の考え方を適用することが可能であり、上記で述べた特定色の色分解能向上、色表現範囲向上など同様の効果を得ることができる。
【0062】
(実施の形態1)
本実施の形態で用いる画像表示装置は液晶ディスプレイ装置である。液晶ディスプレイ装置の構造の概略を図17に示した。図17に示すように、液晶ディスプレイ装置は、大きくはバックライトユニット101と液晶パネル102で構成され、バックライトユニット101側の筐体103と液晶パネル102側の筐体110との間に収納されている。バックライトユニット101は、複数の蛍光ランプ105が並べられた構成であり、これらの蛍光ランプ105はインバータ等を含む駆動回路109で駆動される。また、蛍光ランプ105の筐体103側には反射板104が配置されている。蛍光ランプ105の光は、蛍光ランプ105と液晶パネル102の間に配置された拡散板106、プリズムシート107、偏光反射板108などで均一な光にした後、液晶パネル102側へ導光する。一方、液晶パネル102は複数の画素から構成され、バックライトユニット101からの光を液晶パネル102内の画素で透過量を調整する。これにより、画像表示を行っている。
【0063】
また、近年では、バックライトユニット101の光源として蛍光ランプ105以外に、LED(Light Emitting Diode)も用いられるようになっている。LEDの場合においても、光源からの光を拡散板などで、混色、均一な光としてから液晶パネル側へ導光する。
【0064】
このような液晶ディスプレイ装置を、遠隔医療用モニタとして用い、患者の顔を主に画像として映し出す。このとき、まず、顔の部分の映像を切り出し、それを表示領域A、切り出した顔以外の背景の領域を表示領域Bとする。これは、例えば図10(a)に示したとおりである。
【0065】
表示領域Aにおいて、平均色度を算出し、また、先に述べたように階調頻度分布を解析することにより、図11(c)に示すガンマ曲線を決定する(図11(a)(b)はそれぞれ先に述べたガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、補色を導き出す方法を説明するための図である)。3原色のうち赤色(R)と緑色(G)は図中の太線で示すガンマ曲線とし、青色(B)については、細線で示した従来のガンマ曲線とした。一連のガンマ曲線の決定には、図8で説明したシステムを用いる。また、色度座標から肌色の補色となる青色の光強度を低くする。これは、例えば図9で説明したシステムを用いる。これらにより、肌色領域の色分解能を向上することができる。さらに、色表現範囲も広げることができる。
【0066】
(実施の形態2)
本実施の形態で用いる画像表示装置は液晶ディスプレイ装置であり、実施の形態1で用いた画像表示装置と同様である。ただし、表示する対象映像が実施の形態1と異なる。このような液晶ディスプレイ装置を、外科手術用モニタとして用い、外科手術時における血管などを主に画像として映し出す。このとき、表示領域全体に血管などの映像を表示する。
【0067】
表示領域において、平均色度を算出し、また、階調頻度分布を解析することにより、図12(c)に示すガンマ曲線を決定する(図12(a)(b)はそれぞれ先に述べたガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、補色を導き出す方法を説明するための図である)。3原色のうち赤色(R)と青色(B)は図中の太線で示すガンマ曲線とし、緑色(G)については、細線で示した従来のガンマ曲線とした。また、色度座標から血管色(赤から青にかけての色)の補色となる緑色の光強度を低くする。これらにより、血管色領域の色分解能を向上すると同時に色表現範囲も広げることができる。
【0068】
(実施の形態3)
本実施の形態で用いる画像表示装置はプラズマディスプレイ装置である。プラズマディスプレイ装置の構造の概略を図18に示した。図18(a)は、プラズマディスプレイ装置の表示領域の一部分を拡大した斜視図であり、そのV面での断面図が図18(b)である。プラズマディスプレイ装置は、前面ガラス基板201、背面ガラス基板205からなり、複数の画素を有する。各画素は、リブと呼ばれる隔壁206で仕切られた放電空間210と、放電空間210内に充填された放電ガスと、放電空間210を囲むように蛍光膜209が形成され、さらに、放電に必要な電力を供給する電極202とから構成される。前面ガラス基板201の電極202上には誘電体203が形成され、さらにその上には保護膜204が形成されている。背面ガラス基板205のアドレス電極208上には誘電体207が形成されている。
【0069】
このプラズマディスプレイ装置において、表示させる場合には、点灯させるセルをアドレス電極208により選択し、映像信号に応じた電圧を電極202に印加することにより、放電空間210内で放電を生じさせ、放電ガスから紫外線を発生させる。この紫外線が、蛍光膜209に入射し、可視光に変換される。この光が表示光となる。
【0070】
このようなプラズマディスプレイ装置において、実施の形態1と同様に、遠隔医療用モニタとして利用する。このとき、実施の形態1と同じように顔部分の肌色の分解能を向上させることができ、微妙な色の違いを表現することができる。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、プラズマディスプレイ装置や液晶ディスプレイ装置に代表される画像表示装置に利用可能である。特に、特定の色を表現しうる遠隔医療用モニタや外科手術用モニタなどの医療用システムでその効果が大きく期待できる。さらに、TV会議システムのような双方向ビジュアルシステムでも大きな効果が期待できる。
【符号の説明】
【0073】
11…表示装置、12…映像源、13…表示領域演算処理システム、14…閾値階調レベル決定回路、15…ガンマ曲線演算回路、16…ガンマ補正、
21…表示領域演算処理システム、22…色度解析システム、23…色度決定回路、24…光強度補正回路、
101…バックライトユニット、102…液晶パネル、103…筐体、104…反射板、105…蛍光ランプ、106…拡散板、107…プリズムシート、108…偏光反射板、109…駆動回路、110…筐体、
201…前面ガラス基板、202…電極、203…誘電体、204…保護膜、205…背面ガラス基板、206…隔壁、207…誘電体、208…アドレス電極、209…蛍光膜、210…放電空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、映像源に応じて、特定色の色分解能を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置は、テレビ、携帯電話、パソコン用モニタ、デジタルサイネージ、その他産業用モニタなど様々な分野で用いられている。近年では、さらにその用途も拡大され、例えば、TV会議システムにおける表示装置や、さらには医療現場でも画像表示装置が利用される機会が増えてきた。このような画像表示装置では、これまでのテレビやパソコン用モニタなど、一般的に利用されている画像表示装置とは要求される特性が大きく異なる。今後、画像表示装置が、さらに幅広い分野で適応し、浸透していくためには、その分野の使用目的に応じた表示特性を満足し、また、それに向けた技術開発を進めていく必要がある。
【0003】
医療用の画像表示装置は、代表的なものとして、電子カルテ表示モニタ、X線画像モニタ、外科手術用モニタ、遠隔医療用モニタなどがある。その具体例を、例えば遠隔医療用モニタで説明する。遠隔医療用モニタは、その名が示すように、医師が患者から距離を隔てたところで診察を行う、いわゆる遠隔医療で利用される画像表示装置である。特に医師不足が指摘されている現代においては、場所に関係なく受診できるシステムは必須である。このような遠隔医療では、医師はモニタに映し出された患者の映像を基に、様々な診断を行う。患者の状態を把握するためには、顔色や肌の状態、炎症部の状態を細かく把握する必要があり、それらの観察結果に基づいて症状などの診断を下す。このとき、モニタに映し出される映像そのものが、医師にとっての患者の状態を知るデータの一つとなる。従って、人の肌の色や、その凹凸感、質感など細部までモニタで表現する必要がある。このような特性の要求は、テレビなどの画像表示装置とは異なる、特殊なものである。
【0004】
また、近年、普及が進んでいるTV会議システムは、インターネットや電話回線を通して、場所の異なる会議室でお互いの画像を双方向で画像表示装置に表示するシステムであり、お互いが同じ会議室で議論している雰囲気を擬似的に作り出す。このような画像表示装置においては、相手の顔色や、肌の質感、存在感などを細部まで表現することが望まれる。
【0005】
なお、このような遠隔医療用モニタ、外科手術用モニタなどの医療用システムや、TV会議システムのような双方向ビジュアルシステムは、インターネットの一般的な普及に伴い、以前よりその導入が容易になってきている。今後ますますその利用が拡大される傾向にある。
【0006】
画像表示装置で表示した画像の色や明るさなどの画質は、ガンマ補正によって決まる。ガンマ補正とは、外部からの映像信号(入力値)と、画像表示装置で表示するときの信号(出力値)の相対関係を調整し、人がより違和感なく画像を見るための補正操作を意味する。一般に入力値は、映像信号の階調レベルxであり、出力値は最大階調レベルxmaxにおける輝度を1とした場合の輝度相対値Y(x)で表される。この入力値と出力値の関係を示した曲線をガンマ曲線と言う。
【0007】
現在、一般には映像信号としては、8ビットの信号が利用され、階調レベルxは0から255の整数で表される。例えば、nビットの信号の場合には、階調レベルxは0から2n−1の整数値をとる。そして、それに対応して輝度相対値が一対一対応で決められている。階調レベルxが一つ決まれば、それに対応する輝度相対値Y(x)も一つに決まる。上記ガンマ曲線は、これら階調レベルと輝度相対値の関係を示す曲線であるが、実は、座標上では連続した線ではなく、離散的な点の集合である。
【0008】
従来、これらのガンマ曲線は近似的にY=(x/(2n−1))2.2の曲線で表される。これは、経験的に、このような関係とすることで、TV映像視聴時などに人が高画質と感じるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように、遠隔医療用モニタ、外科手術用モニタなどの医療用システムや、TV会議システムのような双方向ビジュアルシステムにおける画像表示装置など特殊用途の画像表示装置においては、ある特定色の色分解能を向上し、色再現性を高めることが必要となる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、特殊用途の画像表示装置において、特定色の色分解能を向上し、色再現性を高める画像表示装置を提供することである。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
すなわち、代表的なものの概要は、外部からの映像信号を入力値とし、その入力値をガンマ曲線によって補正あるいは変換した出力値を用いて、映像を表示する画像表示装置であって、入力値(階調レベル)と出力値(輝度相対値)との関係で表されるガンマ曲線の一部の領域に傾きの緩やかな領域を設け、それにより色度座標上での色度点を偏在させ、特定色の色分解能を向上するものであり、以下に示す構成を有することを特徴とする。すなわち、入力値は、映像信号の階調レベルx(0≦x≦2n−1を満たす整数,ここでnはビット数)であり、出力値は、最大階調レベルxmax(=2n−1)で輝度が1となるように規格化した輝度相対値Y(x)であり、階調レベルxと輝度相対値Y(x)は、一対一に決まる関係を有し、(式1)と(式2)を用いて傾きR(xi−1,xi)とR(xi,xi+1)を定義した場合に、(式3)を満足する階調レベルxiが階調レベル0と最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あり、(式4)と(式5)を用いて傾きR(xj−1,xj)とR(xj,xj+1)を定義した場合に、(式6)を満足する階調レベルxjが階調レベルxiと最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あるように調整されているガンマ曲線を有することを特徴とする。
【0014】
【数1】
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、特に画像表示装置の映像信号からの入力値(階調レベル)と出力値(輝度相対値)との関係で表されるガンマ曲線において、その一部の階調領域で、傾きを緩やかにし、特定色の色分解能を向上することによって、色再現性を高めることが可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明におけるガンマ曲線(xi−xp−xjは単調増加の直線)を説明するための図である。
【図2】本発明におけるガンマ曲線((a):xi−xp−xjは単調増加の下に膨らんだなだらかな曲線、(b):xi−xp−xjは単調増加の上に膨らんだなだらかな曲線)を説明するための図である。
【図3】本発明におけるガンマ曲線(複数箇所で単調増加)を説明するための図である。
【図4】本発明におけるガンマ曲線((a):赤色と緑色は単調増加あり、(b):青色は単調増加なし)を説明するための図である。
【図5】本発明におけるガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法((a):基本的な方法、(b):面積比率を用いる方法)を説明するための図である。
【図6】本発明におけるガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法(階調頻度分布が複数の場合)を説明するための図である。
【図7】本発明における補色を導き出す方法((a):青色の輝度を下げる場合、(b):緑色の輝度を下げる場合)を説明するための図である。
【図8】本発明における画像表示装置のガンマ曲線決定のためのフローおよび構成を説明する図である。
【図9】本発明における画像表示装置の補色計算のためのフローおよび構成を説明する図である。
【図10】本発明におけるガンマ曲線を説明するための図((a):表示領域ごとに設定する場合、(b):領域Aのガンマ曲線、(c):領域Bのガンマ曲線)である。
【図11】本発明における実施の形態1で用いた画像表示装置のガンマ曲線を説明するための図((a):ガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、(b):補色を導き出す方法、(c):ガンマ曲線)である。
【図12】本発明における実施の形態2で用いた画像表示装置のガンマ曲線を説明するための図((a):ガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、(b):補色を導き出す方法、(c):ガンマ曲線)である。
【図13】本発明におけるガンマ曲線(nビットの場合)を説明するための図である。
【図14】一般的な画像表示装置におけるu’v’色度座標系と色再現範囲を説明するための図である。
【図15】一般的な画像表示装置における特殊映像での色度範囲を説明するための図((a):日本人の肌色と血管色の色度範囲、(b):日本人の肌色の色度評価結果)である。
【図16】一般的な画像表示装置におけるガンマ曲線を説明するための図である。
【図17】本発明の実施の形態1および2に適用される一般的な液晶ディスプレイ装置の構造の概略を示した図である。
【図18】本発明の実施の形態3に適用される一般的なプラズマディスプレイ装置の構造の概略を示した図((a):表示領域の一部分の拡大斜視図、(b):(a)のV面断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、本説明では、画像表示装置の具体例として、プラズマディスプレイ装置や液晶ディスプレイ装置に代表されるフラットパネルディスプレイ装置を用いて説明するが、本発明の考え方は、映像や画像を表示する他の画像表示装置においても同様に適用可能である。
【0019】
<画像表示装置の色表現>
一般に利用される画像表示装置では、3原色を用いて様々な色を表現する。一般的にはR(赤)G(緑)B(青)の3色を用い、それぞれの光強度比率を変化させて、様々な色を表現する。所謂、加法混色として色を表現する。例えば、液晶ディスプレイ装置では、RGB3つの画素を一つの単位とし、RGB各画素の透過率をそれぞれ制御、すなわち輝度を制御することによって、RGBの光強度比を調整し、様々な色を表現している。
【0020】
これらの画像表示装置において再現できる色の数は、一般的には約1677万色である。通常、画像表示装置で表現される映像は8ビットでの表示となり、3原色の各色に256階調(0から255階調まで)が割り当てられるため、RGBの光強度の組み合わせは約1677万通り(256×256×256)、即ち、約1677万色の表現が可能ということになる。さらにnビットでの表示の場合には、各色に2n階調が割り当てられ、その色表現数は、23n色となる。
【0021】
これらの色は、一般に色度座標という座標上で数値化して表現することができる。色度座標にはxyを用いた座標系(CIE1931)やu’v’を用いた座標系(CIE1976)などがよく用いられる。図14にu’v’色度座標系(CIE1976)を示した。可視光として人間が知覚する色は、領域Aで示される範囲の内側もしくは線上にある。また、画像表示装置で表現できる色は、例えば、3原色を用いている画像表示装置においては、領域Bに示す三角形で現された範囲の内側もしくは線上の色に限られる。この領域Bの三角形の各頂点に位置する座標は、画像表示装置の特性によって決まるが、3原色の各色を単色で表示させた場合の色度座標となる。さらに、画像表示装置において、表現できる色は、この三角形の内部に位置する色を全て表現できるわけではない。先ほど述べたように、画像表示装置で表現できる色は8ビットの場合、1677万色であり、この三角形の内部に位置する1677万点(色度点)の色を表現することができる。テレビや一般のモニタにおいては、様々な映像を表示するため、この色度点が、一様に三角形内部で分布している状態である。例えば、森林の映像では緑色を基調とした表示になる場合もあれば、海や空の映像では、青色を基調とした表示になる場合もある。様々な色を有する映像を表現できるような色度座標の分布となっている。
【0022】
<特殊用途の画像表示装置における色表現>
一方、先に述べたような医療用システムの遠隔医療用モニタや外科手術用モニタ、TV会議システム用のモニタなど特殊用途モニタでは、映し出す映像はテレビやパソコン用モニタほど多種多様ではなく、ほぼ決まった映像である。即ち、映し出す色もほぼ特定の色である。例えば、遠隔医療用モニタでの映像は、患者の顔や、肌あるいは皮膚などである。このような場合には、人の肌の色がメインの色となる。例えば、日本人の肌の色を色度で表すと、ほぼ図15(a)の色範囲Aで示される領域である。実際に、一般照明光源(3波長蛍光灯)の下で日本人の肌の色度を評価した結果を図15(b)に示した。ほぼ、色範囲A内にある。また、外科手術用モニタでは、手術中に内臓や血管などの映像を映し出す場合が多く、主には赤色から青色にかけた色がメインの色となる。色度の分布する範囲は、ほぼ図15(a)に示す色範囲Bの領域である。このような画像表示装置においては、特定の色(色範囲)のみを表現し、それ以外の色はあまり必要とされない。その代わりに、その特定色での微妙な色違い(色差)を表現することが重要となってくる。即ち、表現する色範囲はテレビなどの従来の色度範囲に比べて狭くてもよいが、その特定色範囲における色分解能を向上する必要がある。
【0023】
例えば、先に述べたような遠隔医療用モニタでは、患者の微妙な顔色の違いなどで、病状を診断する。また、外科手術用モニタで血管を映し出す場合でも、動脈と静脈の色は異なり、この色の違いを十分に表現し、各血管の違いを表現する必要がある。特殊なモニタにおいては、特定の範囲の色しか表示しないが、同色系での、色の分解能を向上し、その差を十分に表現することが必要である。
【0024】
<色分解能向上の考え方>
ここでは、特定色の色分解能向上の考え方について述べる。色分解能を向上させるためには、色度座標上において、色度点が密になるように(密集するように)配置すればよい。密に配置すればするほど、細かな色の違いを表現できることになる。
【0025】
これを実現できる一つの手段として、映像表示のビット数を大きくすることが考えられる。通常の画像表示装置においては、先に述べたように8ビットの信号を利用しているため、各色256階調の表示があり、約1677万色を表現できる。nビットの画像表示装置を用いることにより、計算上では、23nの色度点を作り出すことができ、色度座標上で色度点を全ての領域で密に配置できるため、細かな色表現が可能となる。しかし、ビット数を大きくすることは、メモリーへの負荷の増大や、消費電力の増大、さらには画像表示装置の部材のコストアップなど様々な問題を生じる。そこで本発明者らは、ビット数を大きくすることなく、特定色の色度点の密度を向上させることを考えた。
【0026】
これは次のような方法で可能である。即ち、色度点を特定の領域のみに偏在させ、その他の色領域は疎にする。このようにすることで、ビット数を上げることなく特定色での色分解能を向上できる。例えば、8ビットでは、色度点が1677万点あり、これまでは満遍なく色度座標上に配置されていたが、画像表示装置が映し出す映像が必要とする特定の色に応じて、その特定の色範囲にのみこれらの点を偏在して配置させる。このような方法を採ることで、色度点の総数(例えば、8ビットで約1677万点)を変えることなく、特定の色範囲において、細かな色表現を実現できる。
【0027】
ここで述べた方法は、ある特定の色範囲を表現する特殊モニタに特に有効である。例えば、先に述べた遠隔医療用モニタでは、顔色など肌の色を表現する映像が多いため、肌色範囲(例えば、図15(b)の色範囲A)の色の違いを表現することが重要である。従って、色度点がこの肌色の範囲で密になるように配置する。このような映像においては、青色などの色範囲は、あまり表現されないため、色度点が青色領域で疎に配置されても大きな影響はないと考えられる。また、外科手術用モニタでは、血管色を表現する映像が多いため、赤色から青色にかけた色範囲(例えば、図15(a)の色範囲B)に色度点を偏在させることにより、血管の微妙な色の違いを表現する。このような映像では、例えば緑色範囲を表現する映像はほとんどないため、この色領域では、色度点を疎に配置しても大きな問題とはならないと考えられる。
【0028】
この色度点の偏在化を実現するためには、次で述べるように、ガンマ曲線を調整する必要がある。このガンマ曲線の設定が、本発明の最も重要な点である。なお、ここで述べるガンマ曲線とは、階調レベルと輝度相対値の関係曲線をいう。詳細は以下で述べる。
【0029】
<ガンマ曲線の設定>
<1>ガンマ曲線の傾き
ここでは、先に述べた色度点の偏在化を実現するためのガンマ曲線の設定について述べる。ガンマ曲線は、図16に示すように階調レベルと輝度相対値の関係曲線を意味する。図16では8ビットを考えているため、横軸の階調レベルは0から255であり、縦軸は、255階調での輝度(光強度)を1とした場合の輝度相対値で示している。nビットの場合には、階調レベルの最大値が、2n−1となる。本明細書の中では、主に8ビットでの表現となっているが、同様の考え方はビット数がnの場合でも可能である。
【0030】
一般的なガンマ曲線は、図16に曲線Aで示すような下に膨らんだ曲線形状である。いわゆるγ=2.2の曲線であり、一般的なテレビなどの映像がきれいに見える曲線と言われている。先に述べたように、TV映像などでは、様々な映像を表示するため、どのような色合いの映像においても美しく見える表現が必要とされ、それを満足するガンマ曲線がγ=2.2の曲線と言われている。後述するが、このガンマ曲線は近似的に(式7)のように表わすことができる。一方、図16に曲線Bで示した直線はγ=1.0の場合である。この図から分かるように、γの値が大きくなるほど、下に膨らんだ曲線形状となる。ここで示すガンマ曲線の式は近似式であり、実際には、階調レベルは、整数の値しか取らず、座標上では離散的な点の集まりとなる。本明細書では、この階調レベルと、それによって一意に決まる輝度相対値の関係をガンマ曲線と言うこととする。本アイデアでは、このガンマ曲線の形状を変えることで、先に述べた色度点の密度を、ある色範囲で高くする。即ち、その色範囲における色分解能を向上し、細かな色表現を可能とする。
【0031】
本発明での最大のポイントは、図1に示すように、ガンマ曲線の傾きをある階調範囲(例えば、図1中の階調範囲xiからxj)で他の前後の階調範囲に比べて、緩やかにすることである。あるいは、その階調範囲で、従来のガンマ曲線(γ=2.2)に比べて、傾きを緩やかにすることである。図1では、8ビットでの記載となっているが、本発明は図13に示すようにnビットにおいても同様の考え方である。このようにガンマ曲線の傾きを緩やかにすることによって、階調が変化した場合に、それに伴う輝度の変化は従来よりも微少量になるため、細かな色のRGBの組み合わせを作ることができる。このことは、細かな色変化を作ることに相当し、色度点を密に配置することを意味する。
【0032】
一方、傾きの緩やかな階調領域(xiからxj)の前後の階調範囲(例えば、図1中の階調0からxi、xjから255)では、従来のガンマ曲線に比べ傾きが急峻になる。このような領域では、階調の変化に対して、相対輝度が従来に比べ大きく変化する領域であるため、結果として、色度点が疎の状態となる。
【0033】
本発明での一番の主張点は、このようにガンマ曲線の一部の階調領域において、曲線の傾き(変化量)を小さくし、色度点の配置を密にすることにより、特定の色範囲において、色分解能を向上させるものである。なお、この考え方では、曲線に緩やかな傾きが必要であるが、その傾きがゼロになることはない。傾きがゼロということは、階調を変化させても輝度が変化しないことを意味し、この場合には、色が変化しないことになり、色分解能はなくなる。即ち、映像源のデータを失うことに等しく、ほとんど意味がない。階調レベルxiとxjの間は、従来のγ=2.2の曲線に比べ傾きが緩やかになればよく、その区間は図1に示すように直線関係でもよく、また、図2(a)や(b)に示すように、それぞれ下に膨らんだなだらかな曲線、上に膨らんだなだらかな曲線でもよい。唯一必要とする条件は、階調レベルxiからxjの範囲で相対輝度が単調に増加していることである。この範囲で輝度変化がゼロまたは負になることはない。
【0034】
また、詳細は後で述べるが、映像によっては、図3に示すようにガンマ曲線が複数の階調範囲で、緩やかな領域を有してもよい。図3では、階調レベルg1からg3及びg1’からg3’の範囲で従来よりも傾きが緩やかな領域である。
【0035】
さらに、これらのガンマ曲線は、RGBでそれぞれ異なり、傾きが色によって異なってもよい。例えば、図4に示すようにRとGは本発明で述べるように、ある階調範囲で傾きがなだらかなガンマ曲線(図4(a))であり、Bについては、従来と同じ曲線(図4(b))であってもよい。
【0036】
上記の内容を数式で考えると次のように表現できる。即ち、階調レベルxと、それによって決まる輝度相対値Y(x)があり、これらは連続的な値ではなく、階調レベルが0から2n−1(nビットデータの場合)の整数しかとらないため、離散的な値である。さらに、階調レベルxと輝度相対値Y(x)は一対一に決まる関係である。ここでまず、階調レベルがxiの点を考えると、その前後の座標は(xi−1,Y(xi−1))と(xi+1,Y(xi+1))である。ここで、(xi−1,Y(xi−1))と(xi,Y(xi))、(xi,Y(xi))と(xi+1,Y(xi+1))の点を結んだときの傾きを考える。それぞれの傾きをR(xi−1,xi)とR(xi,xi+1)とすると、これらは、(式1)(式2)で表すことができる。
【0037】
【数2】
【0038】
上で述べたようにxiの点でガンマ曲線の傾きが緩やかになることから、R(xi,xi+1)はR(xi−1,xi)に比べて小さくなる必要がある。また、上で述べたようにxiとxjの区間では、単調に増加することが必要であることから、これらの傾きは必ず正の値を有する。これらのことから(式3)を得ることができる。
【0039】
【数3】
【0040】
次に、階調レベルxjの点を考える。その前後の座標からガンマ曲線の傾きは(式4)(式5)で表わすことができる。ここでは、階調レベルxjの点において、ガンマ曲線の傾きが大きくなる必要があることから、(式6)を得ることができる。当然、傾きは0よりも大きい必要がある。
【0041】
【数4】
【0042】
さらに、映像の見栄えを両立するためには、このガンマ曲線は、なるべく従来のガンマ曲線、即ちγ=2.2の曲線(Yorg)に近い方がよい。そこで、本アイデアでは、新規に設定するガンマ曲線が、(式7)で表わされる基準ガンマ曲線関数Yorgと交点Cpをもつように設定する。その交点Cpの階調レベルをxpとすると、xpはxiとxjの間にあることが望ましい。このとき、交点Cpは(0,Yorg(0))及び(2n−1,Yorg(2n−1))の2点を除く。(式7)において、nはビット数である。
【0043】
【数5】
【0044】
一方、先に述べたように、傾きの緩やかな階調領域(xiからxj)の前後の階調範囲(例えば、図1中の階調レベル0からxi、xjから255)では、従来のガンマ曲線に比べ傾きが急峻になる。これは、以下の(式8)(式9)のように近似的に数式で表現できる。ただし、(式8)は階調レベル0から階調レベルxiの区間であり、(式9)は階調レベルxjから最大階調レベルxmaxの区間である。
【0045】
【数6】
【0046】
なお、このとき、階調レベルxj及びxjの点においては、従来のガンマ曲線と比較して、下記(式10)の条件を満たすことが望ましい。
【0047】
【数7】
【0048】
次に、このガンマ曲線の設定で重要なのは、上記で示した階調範囲の設定である。即ち、図1におけるxi、xj、xpをどのように決定するかである。上記では「ある階調範囲」と記載しているが、その範囲は次のように設定するのが望ましい。
【0049】
<2>階調範囲の決定
ガンマ曲線において、上記のように、ある階調範囲での傾きを従来のガンマ曲線(γ=2.2曲線)より緩やかに設定するが、その階調の範囲は次のように決定する。即ち、図1での階調レベルxi、xj、xpの決定方法である。
【0050】
まず、表示する映像データから、階調の頻度分布を求める。図5にその例を示した。横軸に階調、縦軸には頻度をとったグラフである。縦軸の頻度は、画素数でもよい。通常は、図5(a)(b)に示すように、ある階調(例えば、図5中の階調g2)で頻度が最大値を示すような分布になっている。図5のグラフでは、対称な分布となっているが、非対称な分布となることもある。このとき、図5(a)に示すような、分布において、最小階調g1をxi、最大階調g3をxjとし、頻度の最も高い階調g2をxpとする。これを用いて、上記ガンマ曲線の階調範囲を決定する。この階調範囲で従来のガンマ曲線よりも傾きを小さくすれば、少なくとも上記効果を得ることができる。なお、図1に示すように、階調xpでの相対輝度を従来の相対輝度に合わせ、その点を通るように、曲線を決定してもよい。このとき、階調レベル0からxiの間では、γが1より大きく2.2より小さい条件となり、また階調レベルxjから255の間では、γが2.2より大きい条件となる。これは例えば上記(式10)のように表わすことができる。
【0051】
階調範囲の決定方法として、もう一つの方法について図5(b)を用いて説明する。映像によっては、この階調頻度分布が非常にブロードに広がっている(半値幅が大きい)場合がある。このような場合には、上記階調範囲の決定では、階調範囲が広くなってしまい、ガンマ曲線の調整が困難となる。そこで、例えば、頻度分布の面積比率rが、全体面積の95%となるような、g1とg3の範囲を算出し、そこから求められた階調を用いて階調範囲とする方法である。即ち、頻度分布の関数を階調xに関してf(x)と表現すると、次の(式11)を満足するようなxi,xjを算出することによって、階調範囲を決定する。なお、xpの決定は先と同様であり、最大頻度の階調をxpとする。
【0052】
【数8】
【0053】
また、図6に示すように2群の分布を示した場合には、それぞれの分布から上記手順に従って、g1、g2、g3、g1’、g2’、g3’を求める。これを用いて、ガンマ曲線は、2つの階調領域で傾きが緩やかな領域を作る。即ち、図3に示すように、階調領域g1からg3と、g1’からg3’で傾きが緩やかな領域を設ける。さらに、3群以上の複数の分布を示した場合にも同様である。これにより先に述べた効果を得られる。
【0054】
なお、これらの階調範囲決定は、例えば図8に示すように、表示装置11と映像源(映像信号源)12との間に、回路あるいはシステムを導入することによって、実現することが可能である。即ち、映像源12からの映像信号を表示領域演算処理システム13により、同様の色度範囲の映像を切り出し、その後、閾値階調レベル決定回路14にて、上記で述べたような手法に基づき、階調の頻度分布から階調範囲を決定する。さらにこれらの階調範囲において、ガンマ曲線が従来の曲線に比べて、緩やかになるような曲線をガンマ曲線演算回路15にて算出する。そして、この算出されたガンマ曲線を、表示装置11のガンマ補正16として用いることにより、特定色における色分解能を向上する効果を得られる。
【0055】
<色範囲のレンジ拡大>
図15(b)の結果から分かるように、肌色の色範囲(日本人)といっても、実際には、ある方向にかなりの広がりを有する。この場合には、主にu’方向に広がっていることが分かる。上記で述べたようにガンマ曲線の一部の階調領域に傾きの緩やかな領域を設けることにより、色分解能は向上するが、一方で、相対輝度のダイナミックレンジが小さくなるために、色範囲のレンジが少し小さくなってしまうという副作用が生じる。すなわち、図15(b)でu’方向の広がりが、モニタ表示の場合に少し抑制されてしまうことになる。これを解決するために、画像表示装置を構成する3原色のうち表示に影響の少ない一つの原色の輝度を下げるという方法が必要である。具体的に図7を用いて述べる。なお、ここで言う「輝度」は絶対値であり、「輝度を下げる」というのは、ガンマ曲線の形状、即ち、階調レベルと輝度相対値の関係は維持したまま、輝度の絶対値を下げるという意味である。
【0056】
例えば、日本人の肌色の映像を表示する場合には、基本的に赤色(R)と緑色(G)で表現され、青色(B)の寄与は小さい。むしろ青色の輝度があることによって、色度が青色方向に引っ張られることになるため、先の色の表現範囲(u’方向の広がり)が狭められてしまう。従って、肌色表示の場合には3原色のうち表示色に影響の少ない青色の輝度を下げることによって、肌色のダイナミックレンジを確保する。実際には図7(a)に示すように、表示する特定色の平均色度を算出し、その補色に対応する色の輝度を下げる。補色は、例えば、先に算出した平均色度(u’av,v’av)とモニタの白色点(u’w,v’w)を結ぶベクトル(cの上に→を重ねて表記)の延長方向にある色であり、画像表示装置を構成する3原色のうち、そのベクトルに近いものを選択し、その光強度を下げる。肌色の補色に最も近い3原色は青色である。
【0057】
また、血管色を表示するような映像においては、図7(b)に示すように、補色に相当する緑色の輝度を下げることが望ましい。
【0058】
以上の考え方を合わせることにより、特定色の色分解能の向上と、色表現範囲の確保を両立することができ、現実的な色を画像表示装置上で表現することが可能となる。
【0059】
なお、このようなシステムを画像表示装置に組み込む場合には、例えば、図9に示すようなシステム及び回路を必要とする。映像源12のデータに基づき、表示領域演算処理システム21により特定色の画像領域を切り出し、その画像領域に関する色度解析を色度解析システム22で実行する。ここでは、画像領域の平均色度の算出や、それに対応する補色色度の算出を行う。これらに基づき、輝度を抑制すべき画像表示装置の構成原色を色度決定回路23で決定し、光強度補正回路24にて、その色の輝度(出力)を抑制する。
【0060】
<その他の追加技術>
従来の画像表示装置では、映像表示領域でガンマ曲線は基本的に同一であった。しかし、図10(a)に示すように、例えば、患者の顔を映し出している領域(例えば領域A)とその患者の背景を映し出している領域(例えば領域B)では、表示する色が大きく異なる可能性がある。そのような場合には、図10(b)(c)に示されるように、表示領域ごとにガンマ曲線を設定してもよい。例えば、領域Aでは患者の顔を表示することから、先に述べた技術により図10(b)に示すようなガンマ曲線を設定し、領域Bでは図10(c)に示すように従来のガンマ曲線を設定する。これにより、表示領域全体として違和感のない映像表示を可能とする。
【0061】
具体例は、以下の実施の形態の中で述べる。なお、本発明は、特にこれら実施の形態に限られるものではない。以下の実施の形態の中では、液晶ディスプレイ装置とプラズマディスプレイ装置について述べるが、画像表示装置としては、液晶ディスプレイ装置とプラズマディスプレイ装置に限られることはなく、画像を表示する装置であれば、CRT装置、有機ELディスプレイ装置、プロジェクタなどに同様の考え方を適用することが可能であり、上記で述べた特定色の色分解能向上、色表現範囲向上など同様の効果を得ることができる。
【0062】
(実施の形態1)
本実施の形態で用いる画像表示装置は液晶ディスプレイ装置である。液晶ディスプレイ装置の構造の概略を図17に示した。図17に示すように、液晶ディスプレイ装置は、大きくはバックライトユニット101と液晶パネル102で構成され、バックライトユニット101側の筐体103と液晶パネル102側の筐体110との間に収納されている。バックライトユニット101は、複数の蛍光ランプ105が並べられた構成であり、これらの蛍光ランプ105はインバータ等を含む駆動回路109で駆動される。また、蛍光ランプ105の筐体103側には反射板104が配置されている。蛍光ランプ105の光は、蛍光ランプ105と液晶パネル102の間に配置された拡散板106、プリズムシート107、偏光反射板108などで均一な光にした後、液晶パネル102側へ導光する。一方、液晶パネル102は複数の画素から構成され、バックライトユニット101からの光を液晶パネル102内の画素で透過量を調整する。これにより、画像表示を行っている。
【0063】
また、近年では、バックライトユニット101の光源として蛍光ランプ105以外に、LED(Light Emitting Diode)も用いられるようになっている。LEDの場合においても、光源からの光を拡散板などで、混色、均一な光としてから液晶パネル側へ導光する。
【0064】
このような液晶ディスプレイ装置を、遠隔医療用モニタとして用い、患者の顔を主に画像として映し出す。このとき、まず、顔の部分の映像を切り出し、それを表示領域A、切り出した顔以外の背景の領域を表示領域Bとする。これは、例えば図10(a)に示したとおりである。
【0065】
表示領域Aにおいて、平均色度を算出し、また、先に述べたように階調頻度分布を解析することにより、図11(c)に示すガンマ曲線を決定する(図11(a)(b)はそれぞれ先に述べたガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、補色を導き出す方法を説明するための図である)。3原色のうち赤色(R)と緑色(G)は図中の太線で示すガンマ曲線とし、青色(B)については、細線で示した従来のガンマ曲線とした。一連のガンマ曲線の決定には、図8で説明したシステムを用いる。また、色度座標から肌色の補色となる青色の光強度を低くする。これは、例えば図9で説明したシステムを用いる。これらにより、肌色領域の色分解能を向上することができる。さらに、色表現範囲も広げることができる。
【0066】
(実施の形態2)
本実施の形態で用いる画像表示装置は液晶ディスプレイ装置であり、実施の形態1で用いた画像表示装置と同様である。ただし、表示する対象映像が実施の形態1と異なる。このような液晶ディスプレイ装置を、外科手術用モニタとして用い、外科手術時における血管などを主に画像として映し出す。このとき、表示領域全体に血管などの映像を表示する。
【0067】
表示領域において、平均色度を算出し、また、階調頻度分布を解析することにより、図12(c)に示すガンマ曲線を決定する(図12(a)(b)はそれぞれ先に述べたガンマ曲線変更の階調範囲を決定する方法、補色を導き出す方法を説明するための図である)。3原色のうち赤色(R)と青色(B)は図中の太線で示すガンマ曲線とし、緑色(G)については、細線で示した従来のガンマ曲線とした。また、色度座標から血管色(赤から青にかけての色)の補色となる緑色の光強度を低くする。これらにより、血管色領域の色分解能を向上すると同時に色表現範囲も広げることができる。
【0068】
(実施の形態3)
本実施の形態で用いる画像表示装置はプラズマディスプレイ装置である。プラズマディスプレイ装置の構造の概略を図18に示した。図18(a)は、プラズマディスプレイ装置の表示領域の一部分を拡大した斜視図であり、そのV面での断面図が図18(b)である。プラズマディスプレイ装置は、前面ガラス基板201、背面ガラス基板205からなり、複数の画素を有する。各画素は、リブと呼ばれる隔壁206で仕切られた放電空間210と、放電空間210内に充填された放電ガスと、放電空間210を囲むように蛍光膜209が形成され、さらに、放電に必要な電力を供給する電極202とから構成される。前面ガラス基板201の電極202上には誘電体203が形成され、さらにその上には保護膜204が形成されている。背面ガラス基板205のアドレス電極208上には誘電体207が形成されている。
【0069】
このプラズマディスプレイ装置において、表示させる場合には、点灯させるセルをアドレス電極208により選択し、映像信号に応じた電圧を電極202に印加することにより、放電空間210内で放電を生じさせ、放電ガスから紫外線を発生させる。この紫外線が、蛍光膜209に入射し、可視光に変換される。この光が表示光となる。
【0070】
このようなプラズマディスプレイ装置において、実施の形態1と同様に、遠隔医療用モニタとして利用する。このとき、実施の形態1と同じように顔部分の肌色の分解能を向上させることができ、微妙な色の違いを表現することができる。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、プラズマディスプレイ装置や液晶ディスプレイ装置に代表される画像表示装置に利用可能である。特に、特定の色を表現しうる遠隔医療用モニタや外科手術用モニタなどの医療用システムでその効果が大きく期待できる。さらに、TV会議システムのような双方向ビジュアルシステムでも大きな効果が期待できる。
【符号の説明】
【0073】
11…表示装置、12…映像源、13…表示領域演算処理システム、14…閾値階調レベル決定回路、15…ガンマ曲線演算回路、16…ガンマ補正、
21…表示領域演算処理システム、22…色度解析システム、23…色度決定回路、24…光強度補正回路、
101…バックライトユニット、102…液晶パネル、103…筐体、104…反射板、105…蛍光ランプ、106…拡散板、107…プリズムシート、108…偏光反射板、109…駆動回路、110…筐体、
201…前面ガラス基板、202…電極、203…誘電体、204…保護膜、205…背面ガラス基板、206…隔壁、207…誘電体、208…アドレス電極、209…蛍光膜、210…放電空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの映像信号を入力値とし、該入力値をガンマ曲線によって補正あるいは変換した出力値を用いて、映像を表示する画像表示装置であって、
前記入力値は、前記映像信号の階調レベルx(0≦x≦2n−1を満たす整数,ここでnはビット数)であり、前記出力値は、最大階調レベルxmax(=2n−1)で輝度が1となるように規格化した輝度相対値Y(x)であり、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)は、一対一に決まる関係を有し、
(式1)と(式2)を用いて傾きR(xi−1,xi)とR(xi,xi+1)を定義した場合に、(式3)を満足する階調レベルxiが階調レベル0と前記最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あり、
(式4)と(式5)を用いて傾きR(xj−1,xj)とR(xj,xj+1)を定義した場合に、(式6)を満足する階調レベルxjが前記階調レベルxiと前記最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あるように調整されているガンマ曲線を有することを特徴とする画像表示装置。
【数9】
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)で示される点座標を、0≦x≦2n−1の範囲で結ぶことによって得られるガンマ曲線が、近似的に(式7)で表される基準ガンマ曲線Yorgと、(0,Yorg(0))及び(2n−1,Yorg(2n−1))の2点を除く、少なくとも1点以上で交差することを特徴とする画像表示装置。
【数10】
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記交差する点を交差点Cpとし、該交差点の座標の階調レベルxpは、前記階調レベルxiと前記階調レベルxjの間にあることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ガンマ曲線は、前記階調レベル0から前記階調レベルxiの区間で、近似的に(式8)に示す関数で表されることを特徴とする画像表示装置。
【数11】
【請求項5】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ガンマ曲線は、前記階調レベルxjから前記最大階調レベルxmaxの区間で、近似的に(式9)に示す関数で表されることを特徴とする画像表示装置。
【数12】
【請求項6】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ガンマ曲線は、前記階調レベルxi及び前記階調レベルxjで(式10)を満足することを特徴とする画像表示装置。
【数13】
【請求項7】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)の関係を表すガンマ曲線は、画像表示の色を構成する構成原色毎に設定され、そのうち少なくとも1原色のガンマ曲線が調整されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)の関係を表すガンマ曲線は、画像を表示する表示領域毎に設定され、そのうち少なくとも1表示領域のガンマ曲線が調整されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記外部からの映像信号を用いて、特定の色範囲を表示する表示領域を切り出し、
該表示領域における平均色度を算出し、該平均色度と補色の関係にある補色色度に最も近い画像表示装置の構成原色の光強度を、他の構成原色の光強度に対して小さくすることを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像表示装置において、
該画像表示装置は、
前記外部からの映像信号を用いて、特定の色範囲を表示する表示領域を切り出すための表示領域演算処理システムと、
前記切り出された表示領域における階調レベルの頻度解析を行い、該頻度解析から算出される閾値階調レベルを決定し、該閾値階調レベルをそれぞれ前記階調レベルxi及び前記階調レベルxjに設定する閾値階調レベル決定回路と、
前記算出された閾値階調レベルの区間でガンマ曲線の傾きを変調し、全階調レベルにおけるガンマ曲線を決定するガンマ曲線演算回路とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像表示装置において、
該画像表示装置は、
前記外部からの映像信号を用いて、特定の色範囲を表示する表示領域を切り出すための表示領域演算処理システムと、
前記切り出された表示領域における色度解析を行い、該表示領域の平均色度とそれに対応する補色色度を算出する色度解析システムと、
前記算出された補色色度に最も近い画像表示装置の構成原色を決定する色度決定回路と、
前記決定された構成原色の光強度を変調し、該光強度を小さくする光強度補正回路とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
外部からの映像信号を入力値とし、該入力値をガンマ曲線によって補正あるいは変換した出力値を用いて、映像を表示する画像表示装置であって、
前記入力値は、前記映像信号の階調レベルx(0≦x≦2n−1を満たす整数,ここでnはビット数)であり、前記出力値は、最大階調レベルxmax(=2n−1)で輝度が1となるように規格化した輝度相対値Y(x)であり、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)は、一対一に決まる関係を有し、
(式1)と(式2)を用いて傾きR(xi−1,xi)とR(xi,xi+1)を定義した場合に、(式3)を満足する階調レベルxiが階調レベル0と前記最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あり、
(式4)と(式5)を用いて傾きR(xj−1,xj)とR(xj,xj+1)を定義した場合に、(式6)を満足する階調レベルxjが前記階調レベルxiと前記最大階調レベルxmaxの間の範囲に少なくとも1つ以上あるように調整されているガンマ曲線を有することを特徴とする画像表示装置。
【数9】
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)で示される点座標を、0≦x≦2n−1の範囲で結ぶことによって得られるガンマ曲線が、近似的に(式7)で表される基準ガンマ曲線Yorgと、(0,Yorg(0))及び(2n−1,Yorg(2n−1))の2点を除く、少なくとも1点以上で交差することを特徴とする画像表示装置。
【数10】
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記交差する点を交差点Cpとし、該交差点の座標の階調レベルxpは、前記階調レベルxiと前記階調レベルxjの間にあることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ガンマ曲線は、前記階調レベル0から前記階調レベルxiの区間で、近似的に(式8)に示す関数で表されることを特徴とする画像表示装置。
【数11】
【請求項5】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ガンマ曲線は、前記階調レベルxjから前記最大階調レベルxmaxの区間で、近似的に(式9)に示す関数で表されることを特徴とする画像表示装置。
【数12】
【請求項6】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ガンマ曲線は、前記階調レベルxi及び前記階調レベルxjで(式10)を満足することを特徴とする画像表示装置。
【数13】
【請求項7】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)の関係を表すガンマ曲線は、画像表示の色を構成する構成原色毎に設定され、そのうち少なくとも1原色のガンマ曲線が調整されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記階調レベルxと前記輝度相対値Y(x)の関係を表すガンマ曲線は、画像を表示する表示領域毎に設定され、そのうち少なくとも1表示領域のガンマ曲線が調整されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記外部からの映像信号を用いて、特定の色範囲を表示する表示領域を切り出し、
該表示領域における平均色度を算出し、該平均色度と補色の関係にある補色色度に最も近い画像表示装置の構成原色の光強度を、他の構成原色の光強度に対して小さくすることを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像表示装置において、
該画像表示装置は、
前記外部からの映像信号を用いて、特定の色範囲を表示する表示領域を切り出すための表示領域演算処理システムと、
前記切り出された表示領域における階調レベルの頻度解析を行い、該頻度解析から算出される閾値階調レベルを決定し、該閾値階調レベルをそれぞれ前記階調レベルxi及び前記階調レベルxjに設定する閾値階調レベル決定回路と、
前記算出された閾値階調レベルの区間でガンマ曲線の傾きを変調し、全階調レベルにおけるガンマ曲線を決定するガンマ曲線演算回路とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像表示装置において、
該画像表示装置は、
前記外部からの映像信号を用いて、特定の色範囲を表示する表示領域を切り出すための表示領域演算処理システムと、
前記切り出された表示領域における色度解析を行い、該表示領域の平均色度とそれに対応する補色色度を算出する色度解析システムと、
前記算出された補色色度に最も近い画像表示装置の構成原色を決定する色度決定回路と、
前記決定された構成原色の光強度を変調し、該光強度を小さくする光強度補正回路とを有することを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−123175(P2011−123175A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279458(P2009−279458)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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