説明

画像識別装置

【課題】、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の識別対象の部位や識別対象物を精度よく識別することができるようにする。
【解決手段】撮像装置12によって、第1光源14の点灯時の顔画像と、第2光源16の点灯時の顔画像とを撮像する。特徴量算出部27によって、髪領域及び肌領域の各々の差分に関する特徴量を算出し、補正量算出部28によって、予め求められた髪領域及び肌領域の各々の差分に関する特徴量の分布が得られるように、補正量を算出する。補正部30によって、第2光源16の点灯時の顔画像を補正し、特徴量算出部27によって、補正された顔画像を用いて、差分に関する特徴量を各画素について算出する。候補領域抽出部34によって、算出された各画素の特徴量に対して閾値処理して、候補領域を抽出し、部位識別部36によって、顔の黒目を表わす領域を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像識別装置に係り、特に、撮像した画像から、識別対象者の顔の部位や識別対象物を識別する画像識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第1の波長域の光及び第2の波長域の光の照射をオンオフして、対象物及び標準白色板を撮像し、第1の波長域の光で照明した状態で撮影した対象物の画像の画素値、第1の波長域の光で照明した状態で撮影した白色板の画像の画素値、第2の波長域の光で照明した状態で撮影した対象物の画像の画素値、及び第2の波長域の光で照明した状態で撮影した白色板の画像の画素値を演算し、演算結果を用いて外乱光の影響を除去し、対象物の各部位、例えばドライバの肌、髪、眼球を判別する部位判別装置が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−242909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、標準白色板と対象物とに同じように外乱光が照射するとは限らないため、外乱光の影響を精度よく除去することができない、という問題がある。また、設置した標準白色板が、対象物以外の物体によって隠れてしまった場合には、隠れていることを検知できずに、外乱光の影響を誤って除去してしまう、という問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の識別対象の部位や識別対象物を精度よく識別することができる画像識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る画像識別装置は、第1の波長及び前記第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有し、前記第1の波長を含みかつ、前記第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象者の顔に照射して撮像するか、または前記識別対象者の顔から反射された反射光から前記第1の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力すると共に、前記第2波長を含みかつ前記第1の波長を含まない第2の波長域の光を前記識別対象者の顔に照射して撮像するか、または前記反射光から前記第2の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力する撮像手段と、前記第1の画像データにおける前記識別対象者の顔の予め定められた第1部位を表わす領域の画像データと前記第2の画像データにおける前記第1部位を表わす領域の画像データとの差分に関する特徴量を算出すると共に、前記第1の画像データにおける前記顔の前記第1部位と異なる第2部位を表わす領域の画像データと前記第2の画像データにおける前記第2部位を表わす領域の画像データとの差分に関する特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、前記第1特徴量算出手段によって算出された前記第1部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量及び前記第2部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量に基づいて、予め求められた、前記第1部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量と前記第2部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量とが得られるように、画像データを補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、前記補正量算出手段によって算出された前記補正量に基づいて前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する第2特徴量算出手段と、前記第2特徴量算出手段によって算出された各画素の前記差分に関する特徴量と、顔の識別対象の部位を表わす領域の画像データについて予め求められた前記差分に関する特徴量とを比較して、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方から、前記識別対象の部位を検出する検出手段とを含んで構成されている。
【0006】
第1の発明に係る画像識別装置によれば、第1の波長及び第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有する撮像手段によって、第1の波長を含みかつ、第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象者の顔に照射して撮像するか、または識別対象者の顔から反射された反射光から第1の波長域の光を透過させて識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力する。また、撮像手段によって、第2波長を含みかつ第1の波長を含まない第2の波長域の光を識別対象者の顔に照射して撮像するか、または反射光から第2の波長域の光を透過させて識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力する。
【0007】
第1特徴量算出手段によって、第1の画像データにおける識別対象者の顔の予め定められた第1部位を表わす領域の画像データと第2の画像データにおける第1部位を表わす領域の画像データとの差分に関する特徴量を算出すると共に、第1の画像データにおける顔の第1部位と異なる第2部位を表わす領域の画像データと第2の画像データにおける第2部位を表わす領域の画像データとの差分に関する特徴量を算出する。
【0008】
そして、補正量算出手段によって、第1特徴量算出手段によって算出された第1部位を表わす領域の差分に関する特徴量及び第2部位を表わす領域の差分に関する特徴量に基づいて、予め求められた、第1部位を表わす領域の差分に関する特徴量と第2部位を表わす領域の差分に関する特徴量とが得られるように、画像データを補正するための補正量を算出する。
【0009】
そして、第2特徴量算出手段によって、補正量算出手段によって算出された補正量に基づいて第1の画像データ及び第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、第1の画像データと第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する。検出手段によって、第2特徴量算出手段によって算出された各画素の差分に関する特徴量と、顔の識別対象の部位を表わす領域の画像データについて予め求められた差分に関する特徴量とを比較して、第1の画像データ及び第2の画像データの少なくとも一方から、識別対象の部位を検出する。
【0010】
このように、顔の第1部位を表わす領域の差分に関する特徴量と第2部位を表わす領域の差分に関する特徴量とに基づいて、補正量を算出し、補正された画像データを用いて、顔の識別対象の部位を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の識別対象の部位を精度よく識別することができる。
【0011】
第2の発明に係る画像識別装置は、第1の波長及び前記第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有し、前記第1の波長を含みかつ、前記第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または前記識別対象者の顔から反射された反射光から前記第1の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力すると共に、前記第2波長を含みかつ前記第1の波長を含まない第2の波長域の光を前記識別対象物に照射して撮像するか、または前記反射光から前記第2の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力し、前記識別対象物に光を照射せずに撮像することにより、第3の画像データを出力する撮像手段と、前記第3の画像データに基づいて、画像データを補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、前記補正量算出手段によって算出された補正量に基づいて前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する特徴量算出手段と、前記特徴量算出手段によって算出された各画素の前記差分に関する特徴量と、前記識別対象物を表わす領域の画像データについて予め求められた前記差分に関する特徴量とを比較して、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方から、前記識別対象物を検出する検出手段とを含んで構成されている。
【0012】
第2の発明に係る画像識別装置によれば、第1の波長及び第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有する撮像手段によって、第1の波長を含みかつ、第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または識別対象者の顔から反射された反射光から第1の波長域の光を透過させて識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力する。また、撮像手段によって、第2波長を含みかつ第1の波長を含まない第2の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または反射光から第2の波長域の光を透過させて識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力する。また、撮像手段によって、識別対象物に光を照射せずに撮像することにより、第3の画像データを出力する。
【0013】
そして、補正量算出手段によって、第3の画像データに基づいて、画像データを補正するための補正量を算出する。
【0014】
そして、特徴量算出手段によって、補正量算出手段によって算出された補正量に基づいて第1の画像データ及び第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、第1の画像データと第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する。検出手段によって、特徴量算出手段によって算出された各画素の前記差分に関する特徴量と、識別対象物を表わす領域の画像データについて予め求められた差分に関する特徴量とを比較して、第1の画像データ及び第2の画像データの少なくとも一方から、識別対象物を検出する。
【0015】
このように、光を照射せずに撮像された画像データに基づいて、補正量を算出し、補正された画像データを用いて、識別対象物を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、識別対象物を精度よく識別することができる。
【0016】
第3の発明に係る画像識別装置は、光の照度を計測する照度計と、第1の波長及び前記第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有し、前記第1の波長を含みかつ、前記第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または前記識別対象物から反射された反射光から前記第1の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力すると共に、前記第2波長を含みかつ前記第1の波長を含まない第2の波長域の光を前記識別対象物に照射して撮像するか、または前記反射光から前記第2の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力する撮像手段と、前記照度計によって計測された光の照度に基づいて、前記計測された光を前記撮像手段によって受光した量が除外されるように、画像データを補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、前記補正量算出手段によって算出された補正量に基づいて前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する特徴量算出手段と、前記特徴量算出手段によって算出された各画素の前記差分に関する特徴量と、前記識別対象物を表わす領域の画像データについて予め求められた前記差分に関する特徴量とを比較して、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方から、前記識別対象物を検出する検出手段とを含んで構成されている。
【0017】
第3の発明に係る画像識別装置によれば、照度計によって、光の照度を計測する。また、第1の波長及び第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有する撮像手段によって、第1の波長を含みかつ、第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または識別対象物から反射された反射光から第1の波長域の光を透過させて識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力する。また、撮像手段によって、第2波長を含みかつ第1の波長を含まない第2の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または反射光から第2の波長域の光を透過させて識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力する。
【0018】
そして、補正量算出手段によって、照度計によって計測された光の照度に基づいて、計測された光を撮像手段によって受光した量が除外されるように、画像データを補正するための補正量を算出する。
【0019】
そして、特徴量算出手段によって、補正量算出手段によって算出された補正量に基づいて第1の画像データ及び第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、第1の画像データと第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する。検出手段によって、特徴量算出手段によって算出された各画素の差分に関する特徴量と、識別対象物を表わす領域の画像データについて予め求められた差分に関する特徴量とを比較して、第1の画像データ及び第2の画像データの少なくとも一方から、識別対象物を検出する。
【0020】
このように、照度計によって計測された光の照度に基づいて、補正量を算出し、補正された画像データを用いて、識別対象物を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、識別対象物を精度よく識別することができる。
【0021】
第1の発明に係る画像識別装置は、検出手段によって検出された識別対象者の顔の部位を表わす領域の画像データの差分に関する特徴量に基づいて、予め定められた差分に関する特徴量を更新する更新手段を更に含むことができる。これによって、検出対象者の個人の特性や光源の特性に対応して、識別対象者の顔の部位を精度よく検出することができる。
【0022】
第1の発明に係る第1部位を、髪部分とし、第2部位を、肌部分とすることができる。
【0023】
第2の発明及び第3の発明に係る画像識別装置は、検出手段によって検出された識別対象物を表わす領域の画像データの差分に関する特徴量に基づいて、予め定められた差分に関する特徴量を更新する更新手段を更に含むことができる。これによって、検出対象者の個体の特性や光源の特性に合わせて、識別対象物を精度よく検出することができる。
【0024】
上記の第1の波長域及び第2の波長域の各々を、800〜1100nmの範囲内とすることができる。また、第1の波長域を、800〜950nmとし、第2の波長域を、950〜1100nmとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の画像識別装置によれば、画像データから外乱光の影響を精度よく除去して、顔の識別対象の部位又は識別対象物を精度よく識別することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、車両に搭載され、運転者の顔の黒目領域を識別する画像識別装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0027】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る画像識別装置10は、識別対象者としての運転者の顔を含む範囲を撮像するように設けられた撮像装置12と、第1波長域(例えば、870nmを含む800nm〜950nmの波長域)の近赤外光を運転者の顔を含む範囲に照射するように設けられた第1光源14と、第2波長域(例えば、970nmを含む950nm〜1100nmの波長域)の近赤外光を運転者の顔を含む範囲に照射するように設けられた第2光源16と、第1光源14及び第2光源16による照射のオンオフと撮像装置12による撮像とを制御すると共に、撮像した顔画像に対して画像処理を行って運転者の顔の黒目領域を識別するコンピュータ18とを備えている。
【0028】
撮像装置12は、識別対象者である運転者の顔を含む範囲を撮像し、画像の画像信号を生成する撮像部(図示省略)と、撮像部で生成された画像信号をA/D変換するA/D変換部(図示省略)と、A/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)とを備えている。また、撮像装置12の撮像部の撮像素子は、第1波長域及び第2波長域を含む波長域に感度を有している。
【0029】
第1光源14によって照射される光の第1波長域と第2光源16によって照射される光の第2波長域とは、主要な波長域が異なっており、第1波長域に、第2波長域の主要な波長970nmが含まれず、第2波長域に、第1波長域の主要な波長870nmが含まれなければ、波長域の一部が重複していてもよい。
【0030】
コンピュータ18は、CPU、後述する識別処理ルーチンの識別プログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このコンピュータ18をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図1に示すように、撮像装置12によって2枚の顔画像を連続して撮像させると共に、撮像装置12の撮像タイミング(シャッタータイミング)に合わせて、第1光源14及び第2光源16の各々のオンオフを切り替える撮像光源制御部20と、撮像装置12から出力される第1光源14の点灯時の濃淡画像である顔画像及び第2光源16の点灯時の顔画像を入力する画像入力部22と、画像入力部22によって入力された2枚の顔画像の各画素の差分値に基づいて、顔画像から髪を表わす領域及び肌を表わす領域の各々を抽出する髪肌領域抽出部26と、2枚の顔画像における、抽出された髪を表わす領域及び肌を表わす領域の画像データに基づいて、髪を表わす領域及び肌を表わす領域の各々の差分に関する特徴量を算出すると共に、後述する補正部30によって補正された顔画像を用いて、2枚の顔画像から差分に関する特徴量を各画素について算出する特徴量算出部27と、抽出された髪を表わす領域及び肌を表わす領域の各々の特徴量に基づいて、顔画像を補正するための補正量を算出する補正量算出部28と、算出された補正量に従って、画像入力部22によって入力された顔画像を補正する補正部30とを備えている。
【0031】
撮像光源制御部20は、撮像装置12によって連続して2枚の顔画像を撮像するように制御すると共に、撮像装置12の撮像タイミングに合わせて、一方の顔画像の撮像時に、第2光源16を消灯させたまま、第1光源14を点灯させ、他方の顔画像の撮像時に、第1光源14を消灯させて第2光源16を点灯させるように、第1光源14及び第2光源16を制御する。これによって、撮像装置12から、第1光源14の点灯時に撮影された顔画像と第2光源16の点灯時に撮影された顔画像が順番に出力される。
【0032】
画像入力部22は、例えば、A/Dコンバータや1画面の画像データを記憶する画像メモリ等で構成される。
【0033】
肌と髪とでは、図2に示すような分光反射特性が得られる。図2では、横軸が光の波長を示し、縦軸が反射率を示している。近赤外の800nm〜1000nmの波長域では、髪の反射率は右肩上がり(波長が長いほど反射率が高い)の特性を持ち、肌の反射率は右肩下がり(波長が長いほど反射率が低い)の特性を持つ。また、近赤外領域の2つの波長、例えば870nmと970nmとの近赤外光の反射率で比較すると、肌は、870nmの近赤外光の方を強く反射し、髪や黒目は、970nmの近赤外光の方を強く反射する特性を持つ。したがって、870nmの近赤外光を照射して撮影した画像から、970nmの近赤外光を照射して撮影した画像を引く(対応する画素の差分を算出する)と、肌を表わす領域の画素の差分値は、正の値となり、髪や黒目を表わす領域の画素の差分値は、負の値となる。
【0034】
そこで、髪肌領域抽出部26は、以下の(1)式に示すように、2枚の顔画像の各画素の差分値、及び差分値に関する正の閾値と負の閾値に基づいて、対象画素が髪を表わしているかを識別すると共に、肌を表わしているかを識別し、髪を表わす領域及び肌を表わす領域を抽出する。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、f870(i,j)は、第1光源14から870nmの波長を含む第1波長域の光を照射したときに撮像された顔画像中の画素(i,j)の画素値を表わし、f970(i,j)は、第2光源16から970nmの波長を含む第2波長域の光を照射したときに撮像された顔画像中の画素(i,j)の画素値を表わしている。また、Thは、正の閾値であり、Thは、負の閾値である。上記のように、肌領域と髪領域とでは、画素値の差分値が大きく異なるため、外乱光の影響で、顔画像における、第1光源14及び第2光源16の2つの波長域の明度バランスが崩れた状態でも、比較的容易に両者を分離する閾値を探索することが可能である。従って、実験的又は統計的に、肌領域と髪領域とを分離する正の閾値と負の閾値とを調べておき、上記の閾値として予め設定しておけばよい。
【0037】
特徴量算出部27は、2枚の顔画像の髪を表わす領域の各画素の画素値、2枚の顔画像の肌を表わす領域の各画素の画素値、及び2枚の顔画像の各画素の画素値に基づいて、各画素に対して以下の(2)式の演算を行い、各画素(i,j)の差分に関する特徴量f(i,j)を算出する。
【0038】
【数2】

【0039】
光源から撮像対象までの距離によって、撮像画像中での対象物の明るさが変化してしまう。そのため、上記(2)式では、注目画素の画素値の差を、対象物に照射される光の波長域が異なる2枚の撮像画像における注目画素の画素値の和で正規化し、距離に依存した明るさ変化に影響されない特徴量を算出している。また、正規化しているため、上記(2)式で表される特徴量は、−1から1の範囲内の値となる。
【0040】
また、上記特許文献1に開示されているとおり、肌や髪、黒目(瞳孔、虹彩)は、近赤外領域においてそれぞれ異なる分光反射特性を持つため、図3に示すように、顔の各部位を表わす領域について、異なる特徴量の分布が得られる。なお、黒目領域の特徴量の分布は、肌領域や白目領域の特徴量の分布と異なり、髪領域の特徴量の分布に近い。
【0041】
また、2つの波長域の光(870nmを含む波長域と970nmを含む波長域)の強度バランスは、外乱光に含まれる2つの波長域の光の量によって影響を受ける。したがって、太陽光などの強い外乱光が存在する場合には、上記(2)式で算出される特徴量の値が変化し、図4(A)、図4(B)に示すように、肌や髪を表わす領域の特徴量の分布が偏ってしまうため、特徴量の分布に基づく肌や髪を表わす領域の分離が困難になる。また、上記図3に示したように瞳孔や虹彩を表わす領域の特徴量の分布は、肌を表わす領域の特徴量の分布と髪を表わす領域の特徴量の分布との中間に位置するため、特徴量の分布に基づく肌や髪を表わす領域の分離がさらに難しくなり、精度よく識別することができなくなる。
【0042】
そこで、補正量算出部28は、抽出された髪を表わす領域及び肌を表わす領域の各々の特徴量の分布が、予め定められた、図4(C)に示すような外乱光の影響がない場合における特徴量の軸で差が大きい特徴量の分布となるように、以下に説明するように、画像を補正するための補正量を算出する。
【0043】
まず、顔画像における870nmを含む第1波長域と970nmを含む第2波長域との強度バランスを補正するために第2光源16の点灯時の顔画像を補正する補正量をαとすると、補正量αで補正された場合の差分に関する特徴量は、以下の(3)式で表される。
【0044】
【数3】

【0045】
上記の補正量αを様々に変化させ、上記(3)式で算出される肌領域及び髪領域の各々の特徴量の分布が、予め記憶されている肌領域及び髪領域の各々の特徴量の分布に近くなるときの補正量αを求め、第2光源16の点灯時の顔画像を補正するための補正量を決定する。
【0046】
なお、予め定められた肌領域の特徴量の分布と髪領域の特徴量の分布との差が大きいという関係が得られるように、肌領域と髪領域から算出された特徴量の分布の差を大きくする補正量を決定するようにしてもよい。
【0047】
補正部30は、補正量算出部28によって算出された補正量に従って、第2光源16の点灯時の顔画像の各画素の画素値を補正する。これによって、第1光源16の点灯時の顔画像と第2光源16の点灯時の補正後の顔画像とから算出される差分に関する特徴量の分布は、上記図4(C)のようになるため、肌と髪との各々を表わす領域の特徴量の分布の中間に位置する、瞳孔や虹彩を表わす領域の特徴量の分布を分離しやすくなり、黒目領域の識別が可能となる。
【0048】
また、コンピュータ18は、図1に示すように、黒目領域の特徴量の分布に基づく特徴量の範囲を規定する閾値を記憶した閾値記憶部32と、補正された顔画像を用いて算出された差分に関する各画素の特徴量、及び閾値記憶部32に記憶された特徴量に関する閾値とに基づいて、顔画像から黒目領域の候補領域を抽出する候補領域抽出部34と、抽出された候補領域から、識別対象部位としての黒目を表わす領域を識別する部位識別部36と、識別された黒目領域の特徴量の分布に基づいて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新する更新部38とを備えている。
【0049】
閾値記憶部32に記憶された閾値は以下のように決定される。まず、外乱光の影響が除去された顔画像又は外乱光の影響がない顔画像から、黒目領域の特徴量の分布を求めておき、求められた黒目領域の特徴量の分布に基づいて、黒目領域の特徴量の範囲を定め、定められた特徴量の範囲を規定する閾値を決定して、閾値記憶部32に記憶しておく。
【0050】
候補領域抽出部34は、補正された顔画像を用いて算出された差分に関する各画素の特徴量に基づいて、抽出された肌領域の内側から、特徴量が、閾値で定められる範囲内となる領域を、黒目領域の候補領域として抽出する。このとき、黒目領域の特徴量の分布と髪領域の特徴量の分布とが近いため、眉を表わす領域も、黒目領域の候補領域として抽出される。
【0051】
部位識別部36は、顔画像における、抽出された黒目領域の候補領域の位置関係から、上側に存在する候補領域を、眉を表わす領域として除外して、黒目領域の候補領域から、黒目を表わす領域を検出して、黒目を表わす領域を識別する。
【0052】
黒目領域における近赤外光の反射特性は個人差を持ち、黒目内の部位(瞳孔や虹彩)によって反射率は異なるため、図5(A)、(B)に示すように、瞳孔の大きさ(周辺環境の明るさや光源の明るさにより変化)に応じて、差分に関する特徴量の値や分布が変化する。また、図6(A)、(B)に示すように、差分に関する特徴量は、光源(LEDなど)の照射強度や撮像条件(シャッター速度やゲイン制御)にも影響を受けるため、光源装置の個体差や周辺の明るさなどに応じて、特徴量の値や分布が変化する。
【0053】
そこで、更新部38では、閾値記憶部32に記憶された閾値が、運転者の瞳孔の大きさや第1光源14及び第2光源16から照射される光の強度を考慮した特徴量の分布から求められる閾値となるように、識別された黒目領域の特徴量の分布に応じて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新する。
【0054】
次に、第1の実施の形態に係る画像識別装置10の作用について説明する。以下では、撮像装置12の撮像範囲、第1光源14の照射範囲、及び第2光源16の照射範囲に、識別対象者である運転者の顔が位置している場合を例に説明する。
【0055】
コンピュータ18において、図7に示す識別処理ルーチンが実行される。まず、ステップ100において、第1光源14及び第2光源16がオンオフするように制御すると共に、第1光源14のみの点灯時及び第2光源16のみの点灯時に、撮像装置12によって、運転者の顔を含む領域を連続して撮像するように制御する。
【0056】
そして、ステップ102において、撮像装置12から、第1光源14の点灯時の顔画像と第2光源16の点灯時の顔画像とを取得し、次のステップ104で、上記ステップ102で取得した2枚の顔画像の画素値に基づいて、各画素の差分値を算出する。
【0057】
そして、ステップ106で、上記ステップ104で算出された各画素の差分値に基づいて、上記(1)式に従って、髪を表わす領域を抽出し、ステップ108で、上記ステップ104で算出された各画素の差分値に基づいて、上記(1)式に従って、肌を表わす領域を抽出する。
【0058】
次のステップ109では、上記ステップ106で抽出された髪を表わす領域について、上記ステップ102で取得した2枚の顔画像の画素値に基づいて、上記(2)式に従って、各画素の特徴量を算出し、上記ステップ108で抽出された肌を表わす領域について、同様に、各画素の特徴量を算出する。
【0059】
そして、ステップ110では、上記ステップ109で算出された髪を表わす領域の特徴量の分布、肌を表わす領域の特徴量の分布、及び予め定められた髪を表わす領域と肌を表わす領域の各々の特徴量の分布に基づいて、第2光源16の点灯時の顔画像を補正するための補正量を算出する。
【0060】
そして、ステップ112において、上記ステップ102で取得された第2光源16の点灯時の顔画像の各画素の画素値を、上記ステップ110で算出された補正量に従って補正する。
【0061】
次のステップ114では、上記ステップ102で取得された第1光源14の点灯時の顔画像の画素値と、上記ステップ112で補正された第2光源16の点灯時の顔画像の画素値とに基づいて、上記(2)式に従って、差分に関する特徴量を各画素について算出する。
【0062】
そして、ステップ116において、上記ステップ114で算出された特徴量に基づいて、上記ステップ108で抽出された肌領域の内側から、特徴量が、閾値記憶部32で記憶された閾値で規定される範囲内となる領域を、黒目領域の候補領域として抽出する。次のステップ118では、上記ステップ116で抽出された黒目領域の候補領域の中から、顔画像における黒目領域の候補領域の位置関係に基づいて、黒目を表わす領域を識別する。
【0063】
そして、ステップ120において、上記ステップ118で識別された黒目を表わす領域の特徴量の分布に基づいて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新して、識別処理ルーチンを終了する。
【0064】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る画像識別装置によれば、顔の髪を表わす領域について算出された差分に関する特徴量の分布と肌を表わす領域について算出された差分に関する特徴量の分布とが、所定の特徴量の分布となるように、顔画像を補正するための補正量を算出し、補正された顔画像を用いて、顔の黒目領域を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の黒目領域を精度よく識別することができる。
【0065】
また、運転者の黒目の反射特性の個人差や光源の照射強度の個体差に対応して、運転者の顔の黒目を表わす領域を精度よく検出することができる。
【0066】
また、顔領域に含まれる肌と髪とは反射特性が既知であるため、顔画像における肌と髪の領域の明るさから、正確な補正量を算出でき、運転者に照射されている太陽光などの外乱光の影響を除去するように補正することができる。
【0067】
なお、上記の実施の形態では、黒目領域の候補領域から、候補領域の位置関係に基づいて、黒目を表わす領域を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、黒目領域の候補領域における特徴量の分布を手掛かりに、パターン認識手法により、黒目を表わす領域を検出してもよい。図8(A)、(B)に示すような顔画像において、黒目を表わす領域では、図8(C)に示すような特徴量の分布が得られるため、この特徴量の分布を用いたパターン認識手法により、候補領域から黒目を表わす領域を検出するようにすればよい。
【0068】
また、補正量に従って第2光源の点灯時の顔画像のみを補正する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第1光源の点灯時の顔画像と第2光源の点灯時の顔画像との双方を補正するようにしてもよい。この場合には、抽出された髪を表わす領域及び肌を表わす領域の各々の特徴量の分布が、予め定められた各々の特徴量の分布に近くなるときの、第1光源の点灯時の顔画像を補正するための補正量及び第2光源の点灯時の顔画像を補正するための補正量を求めるようにすればよい。また、第1光源の点灯時の顔画像のみを補正するようにしてもよい。
【0069】
また、2枚の顔画像の差分値に基づいて、肌領域と髪領域とを抽出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、顔画像における肌領域及び髪領域の各々の位置を予め設定してもおいてもよい。また、顔画像に対して、エッジ情報などから人の頭部領域を探索し、探索結果を用いて、肌領域と髪領域とを抽出するようにしてもよい。
【0070】
また、補正量を算出するために、差分に関する特徴量を算出する場合と、補正された顔画像から差分に関する特徴量を算出する場合とにおいて、上記(2)式で表される同じ算出式を用いて、差分に関する特徴量を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、補正量を算出するために、差分に関する特徴量を算出する場合と、補正された顔画像から差分に関する特徴量を算出する場合とにおいて、異なる算出式を使い分けて、差分に関する特徴量を算出するようにしてもよい。
【0071】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
第2の実施の形態では、光源の消灯時の顔画像に基づいて、補正量を算出している点が第1の実施の形態と異なっている。
【0073】
図9に示すように、第2の実施の形態に係る画像識別装置210のコンピュータ218は、撮像装置12によって3枚の顔画像を連続して撮像させると共に、撮像装置12の撮像タイミング(シャッタータイミング)に合わせて、第1光源14及び第2光源16の各々のオンオフを切り替える撮像光源制御部220と、撮像装置12から出力される第1光源14の点灯時の顔画像、第2光源16の点灯時の顔画像、及び第1光源14と第2光源16との双方の消灯時の顔画像を入力する画像入力部222と、消灯時の顔画像に基づいて、顔画像の補正量を算出する補正量算出部228と、算出された補正量に従って、画像入力部222によって入力された第1光源14の点灯時の顔画像及び第2光源16の点灯時の顔画像の各々を補正する補正部230と、補正部230によって補正された顔画像を用いて、差分に関する特徴量を各画素について算出する特徴量算出部227と、閾値記憶部32と、候補領域抽出部34と、部位識別部36と、更新部38とを備えている。
【0074】
撮像光源制御部220は、撮像装置12によって連続して3枚の顔画像を撮像するように制御すると共に、撮像装置12の撮像タイミングに合わせて、1枚目の顔画像の撮像時に、第2光源16を消灯させたまま、第1光源14を点灯させ、2枚目の顔画像の撮像時に、第1光源14を消灯させて第2光源16を点灯させ、3枚目の顔画像の撮像時に、第1光源14と第2光源16とを消灯させるように、第1光源14及び第2光源16を制御する。これによって、撮像装置12から、第1光源14の点灯時に撮影された顔画像と、第2光源16の点灯時で撮影された顔画像と、光源消灯時に撮像された顔画像とが順番に出力される。
【0075】
光源消灯時の顔画像の各画素の値が、外乱光成分であると推定されるため、補正量算出部228は、消灯時に撮像された顔画像の各画素の画素値を、補正量として算出する。
【0076】
補正部230は、算出された各画素の補正量に従って、第1光源14の点灯時に撮影された顔画像、及び第2光源16の点灯時に撮影された顔画像の各画素の画素値から、対応する補正量だけ引くことにより補正を行う。
【0077】
特徴量算出部227は、補正された第1光源14の点灯時の顔画像及び補正された第2光源16の点灯時の顔画像の各画素値に基づいて、各画素(i,j)に対して、上記(2)式に従って、差分に関する特徴量f(i,j) を算出する。
【0078】
次に、第2の実施の形態に係る識別処理ルーチンの内容について図10を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
まず、ステップ250において、第1光源14及び第2光源16がオンオフするように制御すると共に、第1光源14のみの点灯時、第2光源16のみの点灯時、及び第1光源14と第2光源16との双方の消灯時に、撮像装置12によって、運転者の顔を含む領域を連続して撮像するように制御する。次のステップ252において、撮像装置12から、第1光源14の点灯時の顔画像と第2光源16の点灯時の顔画像と光源消灯時の顔画像とを取得する。
【0080】
そして、ステップ254で、上記ステップ252で取得された光源消灯時の顔画像に基づいて、顔画像を補正するための補正量を各画素について算出し、ステップ256において、上記ステップ252で取得された第1光源14の点灯時の顔画像及び第2光源16の点灯時の顔画像の各々について、上記ステップ254で算出された補正量に従って各画素の画素値を補正する。
【0081】
次のステップ114では、上記ステップ256で補正された第1光源14の点灯時の顔画像の画素値と第2光源16の点灯時の顔画像の画素値とに基づいて、上記(2)式に従って、差分に関する特徴量を各画素について算出する。
【0082】
そして、ステップ116において、上記ステップ114で算出された特徴量に基づいて、黒目領域の候補領域を抽出し、次のステップ118では、上記ステップ116で抽出された黒目領域の候補領域の中から、黒目を表わす領域を識別する。
【0083】
そして、ステップ120において、上記ステップ118で識別された黒目を表わす領域の特徴量の分布に基づいて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新して、識別処理ルーチンを終了する。
【0084】
上記で説明したように、第2の実施の形態に係る画像識別装置によれば、光源消灯時に撮像された顔画像に基づいて、補正量を算出し、補正された顔画像を用いて、顔の黒目を表わす領域を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、黒目を表わす領域を精度よく識別することができる。
【0085】
また、光源消灯時の顔画像の明るさから、外乱光がどの程度含まれるかを推測することができるため、黒目識別のために適切な画像の補正量を算出することができ、運転者に照射されている外乱光の影響を除去するように補正することができる。
【0086】
なお、補正量に従って第1光源の点灯時の顔画像と第2光源の点灯時の顔画像との双方を補正する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第1光源の点灯時の顔画像のみ、または第2光源の点灯時の顔画像のみを補正するようにしてもよい。この場合には、消灯時の顔画像に基づいて、第1光源の点灯時の顔画像のみを補正するための補正量、または第2光源の点灯時の顔画像のみを補正するための補正量を求めるようにすればよい。
【0087】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
第3の実施の形態では、照度計によって計測された照度に基づいて、顔画像を補正するための補正量を算出している点が第1の実施の形態と異なっている。
【0089】
図11に示すように、第3の実施の形態に係る画像識別装置310は、撮像装置12と、第1光源14と、第2光源16と、撮像装置12の撮像素子に入射する光の照度を計測するように設けられた照度計312と、第1光源14及び第2光源16による照射のオンオフと撮像装置12による撮像とを制御すると共に、照度計312によって計測された照度を用いて、撮像した顔画像に対して画像処理を行って、運転者の顔の黒目を表わす領域を識別するコンピュータ318とを備えている。
【0090】
また、コンピュータ318は、撮像光源制御部20と、画像入力部22と、照度計312によって計測された照度に基づいて、顔画像の補正量を算出する補正量算出部328と、算出された補正量に従って、画像入力部222によって入力された2枚の顔画像の各々を補正する補正部330と、特徴量算出部227と、閾値記憶部32と、候補領域抽出部34と、部位識別部36と、更新部38とを備えている。
【0091】
ここで、本実施の形態の原理について説明する。太陽光や道路周辺照明などの外乱光のスペクトル強度については、前もって知ることができる。また、撮像装置の撮像素子の分光感度やレンズなどの分光透過率も、前もって知ることができる。したがって、上記のスペクトル強度や、分光感度、分光透過率を予め調べておき、撮像装置に入射する光の照度を計測すれば、撮像画像の画素値に含まれる外乱光の比率を推定することが可能である。
【0092】
そこで、本実施の形態では、補正量算出部328によって、予め求められた、外乱光のスペクトル強度、撮像装置12の撮像素子の分光感度、及びレンズの分光透過率と、照度計312によって計測された光の照度とに基づいて、計測された光を撮像装置12によって受光した量として、撮像画像の画素値に含まれる外乱光の比率を算出し、算出した比率を、顔画像を補正するための補正量とする。
【0093】
補正部330は、算出された補正量に従って、第1光源14の点灯時に撮影された顔画像及び第2光源16の点灯時で撮影された顔画像の各画素の画素値を補正する。
【0094】
次に、第3の実施の形態に係る識別処理ルーチンについて図12を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については同一符号を付して説明を省略する。
【0095】
まず、ステップ100において、第1光源14及び第2光源16がオンオフするように制御すると共に、第1光源14のみの点灯時及び第2光源16のみの点灯時に、撮像装置12によって、運転者の顔を含む領域を連続して撮像するように制御する。
【0096】
そして、ステップ102において、撮像装置12から、第1光源14の点灯時の顔画像と第2光源16の点灯時の顔画像とを取得し、次のステップ350で、照度計312より計測された光の照度を取得する。
【0097】
そして、ステップ352において、上記ステップ350で取得された光の照度と、予め求められた、外乱光のスペクトル強度、撮像装置12の撮像素子の分光感度、及びレンズの分光透過率とに基づいて、顔画像を補正するための補正量を算出し、ステップ354において、上記ステップ102で取得された第1光源14の点灯時の顔画像及び第2光源16の点灯時の顔画像の各々について、上記ステップ352で算出された補正量に従って各画素の画素値を補正する。
【0098】
次のステップ114では、上記ステップ354で補正された第1光源14の点灯時の顔画像の画素値と第2光源16の点灯時の顔画像の画素値とに基づいて、上記(2)式に従って、差分に関する特徴量を各画素について算出する。
【0099】
そして、ステップ116において、上記ステップ114で算出された特徴量に基づいて、黒目領域の候補領域を抽出し、次のステップ118では、上記ステップ116で抽出された黒目領域の候補領域の中から、黒目を表わす領域を識別する。
【0100】
そして、ステップ120において、上記ステップ118で識別された黒目を表わす領域の特徴量の分布に基づいて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新して、識別処理ルーチンを終了する。
【0101】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る画像識別装置によれば、照度計によって計測された光の照度に基づいて、顔画像を補正するための補正量を算出し、補正された顔画像を用いて、顔の黒目を表わす領域を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の黒目を表わす領域を精度よく識別することができる。
【0102】
また、外乱光のスペクトル分布を予め調べておき、照度計で光の照度を計測することにより、外乱光がどの程度含まれるかを推測することができるため、黒目識別のために適切な画像の補正量を算出することができ、運転者に照射されている外乱光の影響を除去するように補正することができる。
【0103】
なお、補正量に従って第1光源の点灯時の顔画像と第2光源の点灯時の顔画像との双方を補正する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第1光源の点灯時の顔画像のみ、または第2光源の点灯時の顔画像のみを補正するようにしてもよい。この場合には、予め求められた外乱光のスペクトル強度等と計測された光の照度とに基づいて、撮像画像の画素値に含まれる外乱光の比率を算出し、外乱光の比率に基づいて、第1光源の点灯時の顔画像のみを補正するための補正量、または第2光源の点灯時の顔画像のみを補正するための補正量を求めるようにすればよい。
【0104】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0105】
第4の実施の形態では、バンドパスフィルタを用いて、運転者の顔からの反射光から第1波長域及び第2波長域の各々の近赤外光を透過させて、顔画像を撮像している点が第1の実施の形態と異なっている。
【0106】
図13に示すように、第4の実施の形態に係る画像識別装置410は、撮像装置12と、運転者の顔から反射された光のうち、第1波長域(例えば、870nmを含む800nm〜950nmの波長域)の近赤外光、及び第2波長域(例えば、970nmを含む950nm〜1100nmの波長域)の近赤外光を切り替えて、撮像装置12に透過させるバンドパスフィルタ414と、バンドパスフィルタ414によって透過させる波長域の切り替えと撮像装置12による撮像とを制御すると共に、撮像した顔画像に対して画像処理を行って運転者の顔の黒目を表わす領域を識別するコンピュータ418とを備えている。
【0107】
バンドパスフィルタ414は、第1波長域の近赤外光を透過させるフィルタと、第2波長域の近赤外光を透過させるフィルタと、2つのフィルタを切り替える機構とを備え、コンピュータ418からの制御に応じて、運転者の顔から反射された光のうち、撮像装置12に透過させる光の波長域を、第1波長域及び第2波長域の何れかに切り替える。
【0108】
コンピュータ418は、撮像装置12によって2枚の顔画像を連続して撮像させると共に、撮像装置12の撮像タイミング(シャッタータイミング)に合わせて、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域及び第2波長域の何れかに切り替える撮像フィルタ制御部420と、撮像装置12から出力される第1波長域の近赤外光透過時の顔画像及び第2波長域の近赤外光透過時の顔画像を入力する画像入力部422と、髪肌領域抽出部26と、特徴量算出部27と、補正量算出部28と、補正部30と、閾値記憶部32と、候補領域抽出部34と、部位識別部36と、更新部38とを備えている。
【0109】
第4の実施の形態に係る識別処理ルーチンでは、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域及び第2波長域の一方から他方に切り替えるように制御すると共に、第1波長域の近赤外光透過時及び第2波長域の近赤外光透過時に、撮像装置12によって、運転者の顔を含む領域を連続して撮像するように制御する。
【0110】
そして、撮像装置12から、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを取得し、取得した2枚の顔画像の画素値に基づいて、各画素の差分値を算出する。次に、算出された各画素の差分値に基づいて、第1の実施の形態と同様に、上記(1)式に従って、髪を表わす領域を抽出すると共に、肌を表わす領域を抽出する。
【0111】
そして、抽出された髪を表わす領域について、第1の実施の形態と同様に、上記(2)式に従って、差分に関する各画素の特徴量を算出すると共に、抽出された肌を表わす領域について、同様に、差分に関する各画素の特徴量を算出する。次に、算出された髪を表わす領域の特徴量の分布、肌を表わす領域の特徴量の分布、及び予め定められた髪を表わす領域と肌を表わす領域との各々の特徴量の分布に基づいて、第1の実施の形態と同様な方法により、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像を補正するための補正量を算出する。そして、取得された第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の各画素の画素値を、算出された補正量に従って補正する。
【0112】
次に、取得された第1波長域の近赤外光透過時の顔画像の画素値と、補正された第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の画素値とに基づいて、上記(2)式に従って、差分に関する特徴量を各画素について算出する。そして、算出された特徴量に基づいて、上記で抽出された肌領域の内側から、特徴量が、閾値記憶部32で記憶された閾値で規定される範囲内となる領域を、黒目領域の候補領域として抽出する。次に、抽出された黒目領域の候補領域の中から、顔画像における黒目領域の候補領域の位置関係に基づいて、黒目を表わす領域を識別する。
【0113】
そして、識別された黒目を表わす領域の特徴量の分布に基づいて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新して、識別処理ルーチンを終了する。
【0114】
このように、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを用いて、顔画像を補正するための補正量を算出し、補正された顔画像を用いて、顔の黒目領域を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の黒目領域を精度よく識別することができる。
【0115】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態〜第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0116】
第5の実施の形態では、バンドパスフィルタを用いて、運転者の顔からの反射光から第1波長域及び第2波長域の各々の近赤外光を透過させて、顔画像を撮像している点が第3の実施の形態と異なっている。
【0117】
図14に示すように、第5の実施の形態に係る画像識別装置510は、撮像装置12と、バンドパスフィルタ414と、照度計312と、バンドパスフィルタ414によって透過させる波長域の切り替えと撮像装置12による撮像とを制御すると共に、照度計312によって計測された照度を用いて、撮像した顔画像に対して画像処理を行って、運転者の顔の黒目を表わす領域を識別するコンピュータ518とを備えている。
【0118】
コンピュータ518は、撮像フィルタ制御部420と、画像入力部422と、補正量算出部328と、補正部330と、特徴量算出部227と、閾値記憶部32と、候補領域抽出部34と、部位識別部36と、更新部38とを備えている。
【0119】
補正量算出部328では、予め求められた、外乱光のスペクトル強度、撮像装置12の撮像素子の分光感度、レンズの分光透過率、及びバンドパスフィルタ414の各フィルタの分光透過率と、照度計312によって計測された光の照度とに基づいて、撮像画像の画素値に含まれる外乱光の比率を、顔画像を補正するための補正量として、第1波長域及び第2波長域の各々について、算出する。
【0120】
第5の実施の形態に係る識別処理ルーチンでは、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域及び第2波長域の一方から他方に切り替えるように制御すると共に、第1波長域の近赤外光透過時及び第2波長域の近赤外光透過時に、撮像装置12によって、運転者の顔を含む領域を連続して撮像するように制御する。
【0121】
そして、撮像装置12から、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを取得し、次に、照度計350より計測された光の照度を取得する。
【0122】
そして、取得された光の照度と、予め求められた、外乱光のスペクトル強度、撮像装置12の撮像素子の分光感度、レンズの分光透過率、及びバンドパスフィルタ414の各フィルタの分光透過率とに基づいて、顔画像を補正するための補正量を、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像及び第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の各々について算出し、取得された第1波長域の近赤外光透過時の顔画像及び第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の各々について、対応する補正量に従って各画素の画素値を補正する。
【0123】
次に、補正された第1波長域の近赤外光透過時の顔画像の画素値と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の画素値とに基づいて、上記(2)式に従って、差分に関する特徴量を各画素について算出する。そして、算出された特徴量に基づいて、黒目領域の候補領域を抽出し、抽出された黒目領域の候補領域の中から、黒目を表わす領域を識別する。
【0124】
そして、識別された黒目を表わす領域の特徴量の分布に基づいて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新して、識別処理ルーチンを終了する。
【0125】
このように、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを用いて、顔画像を補正するための補正量を算出し、補正された顔画像を用いて、顔の黒目領域を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の黒目領域を精度よく識別することができる。
【0126】
次に、第6の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態〜第4の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0127】
第6の実施の形態では、バンドパスフィルタを用いて、運転者の顔からの反射光から第1波長域及び第2波長域の各々の近赤外光を透過させて、顔画像を撮像している点が第2の実施の形態と異なっている。
【0128】
図15に示すように、第6の実施の形態に係る画像識別装置610は、撮像装置12と、バンドパスフィルタ414と、第1波長域及び第2波長域を含む広い波長域の光を運転者の顔に照射する光源614と、バンドパスフィルタ414によって透過させる波長域の切り替えと撮像装置12による撮像と光源614のオンオフとを制御すると共に、撮像した顔画像に対して画像処理を行って、運転者の顔の黒目を表わす領域を識別するコンピュータ618とを備えている。
【0129】
コンピュータ618は、撮像装置12によって4枚の顔画像を連続して撮像させると共に、撮像装置12の撮像タイミング(シャッタータイミング)に合わせて、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域及び第2波長域の何れかに切り替え、光源614のオンオフを切り替える撮像光源フィルタ制御部620と、撮像装置12から出力される、光源614の点灯時であって、かつ、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像、光源614の点灯時であって、かつ、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像、光源614の消灯時であって、かつ、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像、及び光源614の消灯時であって、かつ、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像を入力する画像入力部622と、光源消灯時かつ第1波長域の近赤外光透過時の顔画像、及び光源消灯時かつ第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の各々に基づいて、顔画像の補正量を算出する補正量算出部628と、算出された補正量に従って、画像入力部622によって入力された、光源点灯時かつ第1波長域の近赤外光透過時の顔画像、及び光源点灯時かつ第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の各々を補正する補正部630と、特徴量算出部227と、閾値記憶部32と、候補領域抽出部34と、部位識別部36と、更新部38とを備えている。
【0130】
撮像光源フィルタ制御部620は、撮像装置12によって連続して4枚の顔画像を撮像するように制御する。また、撮像光源フィルタ制御部620は、撮像装置12の撮像タイミングに合わせて、1枚目の顔画像の撮像時に、光源614を点灯させると共に、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域に切り替え、2枚目の顔画像の撮像時に、光源614を点灯させたまま、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第2波長域に切り替える。また、撮像光源フィルタ制御部620は、3枚目の顔画像の撮像時に、光源614を消灯させると共に、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域に切り替え、4枚目の顔画像の撮像時に、光源614を消灯させたまま、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第2波長域に切り替える。
【0131】
補正量算出部628は、光源614の消灯時であって、かつ第1波長域の近赤外光透過時に撮像された顔画像の各画素の画素値を、第1波長域に対する補正量として算出し、また、光源614の消灯時であって、かつ第2波長域の近赤外光透過時に撮像された顔画像の各画素の画素値を、第2波長域に対する補正量として算出する。
【0132】
補正部630は、算出された第1波長域に対する各画素の補正量に従って、光源614の点灯時であって、かつ第1波長域の近赤外光透過時に撮影された顔画像の各画素の画素値から、対応する補正量だけ引くことにより補正を行う。また、補正部630は、算出された第2波長域に対する各画素の補正量に従って、光源614の点灯時であって、かつ第2波長域の近赤外光透過時に撮影された顔画像の各画素の画素値から、対応する補正量だけ引くことにより補正を行う。
【0133】
第6の実施の形態に係る識別処理ルーチンでは、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域及び第2波長域の一方から他方に切り替えるように制御すると共に、光源614を点灯させて、第1波長域の近赤外光透過時及び第2波長域の近赤外光透過時に、撮像装置12によって、運転者の顔を含む領域を連続して撮像するように制御する。また、バンドパスフィルタ414によって透過させる光の波長域を、第1波長域及び第2波長域の一方から他方に切り替えるように制御すると共に、光源614を消灯させて、第1波長域の近赤外光透過時及び第2波長域の近赤外光透過時に、撮像装置12によって、運転者の顔を含む領域を連続して撮像するように制御する。
【0134】
そして、撮像装置12から、光源点灯時であって、かつ、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と、光源点灯時であって、かつ、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像と、光源消灯時であって、かつ、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と、光源消灯時であって、かつ、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを取得する。
【0135】
そして、取得された光源消灯時の2枚の顔画像に基づいて、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像を補正するための補正量を各画素について算出すると共に、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像を補正するための補正量を各画素について算出する。
【0136】
そして、取得された光源点灯時であって、かつ、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像、及び光源点灯時であって、かつ、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の各々について、算出された対応する補正量に従って、各画素の画素値を補正する。次に、補正された光源点灯時であって、かつ、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像の画素値と、光源点灯時であって、かつ、第2波長域の近赤外光透過時の顔画像の画素値とに基づいて、差分に関する特徴量を各画素について算出する。
【0137】
そして、算出された特徴量に基づいて、黒目領域の候補領域を抽出し、抽出された黒目領域の候補領域の中から、黒目を表わす領域を識別する。次に、識別された黒目を表わす領域の特徴量の分布に基づいて、閾値記憶部32に記憶された閾値を更新して、識別処理ルーチンを終了する。
【0138】
このように、光源消灯時であって、かつ第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と、光源消灯時であって、かつ第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを用いて、顔画像を補正するための補正量を算出し、補正された顔画像を用いて、顔の黒目領域を検出することにより、外乱光の影響を精度よく除去して、顔の黒目領域を精度よく識別することができる。
【0139】
なお、上記の第4の実施の形態〜第6の実施の形態では、バンドパスフィルタを用いて、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを撮像する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第1波長域の光及び第2波長域の光をそれぞれ分離することができるプリズムを用いて、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを撮像するようにしてもよい。また、運転者の顔からの反射光をプリズムで分光した後に、バンドパスフィルタによって第1波長域の近赤外光を透過させて、顔画像を撮像すると共に、同様に反射光をプリズムで分光した後に、バンドパスフィルタによって第2波長域の近赤外光を透過させて、顔画像を撮像するようにしてもよい。
【0140】
また、画素や画素列単位で、異なる波長域を透過させるバンドパスフィルタを設置するようにしてもよい。この場合には、画素や画素列単位で、第1波長域の近赤外光を透過させるためのバンドパスフィルタと第2波長域の近赤外光を透過させるためのバンドパスフィルタとを設置し、撮像した画像データから、第1波長域の近赤外光透過時の顔画像と第2波長域の近赤外光透過時の顔画像とを取得するようにすればよい。
【0141】
また、第1波長域及び第2波長域を含む広い波長域の光を運転者の顔に照射する光源を更に設けて、顔画像の撮像時に光源を点灯させるようにしてもよい。
【0142】
また、上記の第1の実施の形態〜第6の実施の形態では、第1波長域及び第2波長域が、近赤外光の波長域内に含まれている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第1波長域及び第2波長域が、可視光波長域を含んでいてもよい。
【0143】
また、算出した補正量に基づいて補正された2枚の顔画像から、差分に関する特徴量を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、顔画像を補正せずに、補正前の2枚の顔画像と算出した補正量とに基づいて、補正量に基づいて2枚の顔画像を補正した場合に得られる、差分に関する特徴量を算出するようにしてもよい。
【0144】
また、撮像装置から濃淡画像が出力される場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、撮像装置からカラー画像が出力されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像識別装置を示すブロック図である。
【図2】髪及び肌についての光の波長域と反射率との関係を示すグラフ図である。
【図3】顔の各部位の特徴量の分布を示すイメージ図である。
【図4】(A)外乱光の影響により偏っている特徴量の分布を示すグラフ、(B)外乱光の影響により偏っている特徴量の分布を示すグラフ、及び(C)外乱光の影響がない場合の特徴量の分布を示すグラフである。
【図5】(A)瞳孔の大きさが小さい場合の特徴量の分布を示すイメージ図、及び(B)瞳孔の大きさが大きい場合の特徴量の分布を示すイメージ図である。
【図6】(A)光源の照射強度が小さい場合の特徴量の分布を示すイメージ図、及び(B)光源の照射強度が大きい場合の特徴量の分布を示すイメージ図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る画像識別装置における識別処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】(A)顔画像を示すイメージ図、(B)顔画像の拡大画像を示すイメージ図、及び(B)黒目を表わす領域の特徴量の分布を示すイメージ図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る画像識別装置を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る画像識別装置における識別処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る画像識別装置を示すブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る画像識別装置における識別処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る画像識別装置を示すブロック図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係る画像識別装置を示すブロック図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態に係る画像識別装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0146】
10、210、310、410、510、610 画像識別装置
12 撮像装置
14 第1光源
16 第2光源
18、218、318、418、518、618 コンピュータ
20、220 撮像光源制御部
26 髪肌領域抽出部
27、227 特徴量算出部
28、228、328、628 補正量算出部
30、230、330、630 補正部
32 閾値記憶部
34 候補領域抽出部
36 部位識別部
38 更新部
312 照度計
414 バンドパスフィルタ
420 撮像フィルタ制御部
620 撮像光源フィルタ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長及び前記第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有し、前記第1の波長を含みかつ、前記第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象者の顔に照射して撮像するか、または前記識別対象者の顔から反射された反射光から前記第1の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力すると共に、前記第2波長を含みかつ前記第1の波長を含まない第2の波長域の光を前記識別対象者の顔に照射して撮像するか、または前記反射光から前記第2の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力する撮像手段と、
前記第1の画像データにおける前記識別対象者の顔の予め定められた第1部位を表わす領域の画像データと前記第2の画像データにおける前記第1部位を表わす領域の画像データとの差分に関する特徴量を算出すると共に、前記第1の画像データにおける前記顔の前記第1部位と異なる第2部位を表わす領域の画像データと前記第2の画像データにおける前記第2部位を表わす領域の画像データとの差分に関する特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、
前記第1特徴量算出手段によって算出された前記第1部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量及び前記第2部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量に基づいて、予め求められた、前記第1部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量と前記第2部位を表わす領域の前記差分に関する特徴量とが得られるように、画像データを補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、
前記補正量算出手段によって算出された前記補正量に基づいて前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する第2特徴量算出手段と、
前記第2特徴量算出手段によって算出された各画素の前記差分に関する特徴量と、顔の識別対象の部位を表わす領域の画像データについて予め求められた前記差分に関する特徴量とを比較して、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方から、前記識別対象の部位を検出する検出手段と、
を含む画像識別装置。
【請求項2】
第1の波長及び前記第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有し、前記第1の波長を含みかつ、前記第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または前記識別対象者の顔から反射された反射光から前記第1の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力すると共に、前記第2波長を含みかつ前記第1の波長を含まない第2の波長域の光を前記識別対象物に照射して撮像するか、または前記反射光から前記第2の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力し、前記識別対象物に光を照射せずに撮像することにより、第3の画像データを出力する撮像手段と、
前記第3の画像データに基づいて、画像データを補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、
前記補正量算出手段によって算出された補正量に基づいて前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する特徴量算出手段と、
前記特徴量算出手段によって算出された各画素の前記差分に関する特徴量と、前記識別対象物を表わす領域の画像データについて予め求められた前記差分に関する特徴量とを比較して、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方から、前記識別対象物を検出する検出手段と、
を含む画像識別装置。
【請求項3】
光の照度を計測する照度計と、
第1の波長及び前記第1の波長と異なる第2の波長を含む波長域に感度を有し、前記第1の波長を含みかつ、前記第2の波長を含まない第1の波長域の光を識別対象物に照射して撮像するか、または前記識別対象物から反射された反射光から前記第1の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第1の画像データを出力すると共に、前記第2波長を含みかつ前記第1の波長を含まない第2の波長域の光を前記識別対象物に照射して撮像するか、または前記反射光から前記第2の波長域の光を透過させて前記識別対象者の顔を撮像することにより、第2の画像データを出力する撮像手段と、
前記照度計によって計測された光の照度に基づいて、前記計測された光を前記撮像手段によって受光した量が除外されるように、画像データを補正するための補正量を算出する補正量算出手段と、
前記補正量算出手段によって算出された補正量に基づいて前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方の画像データを補正したときの、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に関する特徴量を各画素について算出する特徴量算出手段と、
前記特徴量算出手段によって算出された各画素の前記差分に関する特徴量と、前記識別対象物を表わす領域の画像データについて予め求められた前記差分に関する特徴量とを比較して、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも一方から、前記識別対象物を検出する検出手段と、
を含む画像識別装置。
【請求項4】
前記検出手段によって検出された前記識別対象者の顔の部位を表わす領域の画像データの前記差分に関する特徴量に基づいて、前記予め定められた前記差分に関する特徴量を更新する更新手段を更に含む請求項1記載の画像識別装置。
【請求項5】
前記第1部位を、髪部分とし、
前記第2部位を、肌部分とした請求項1又は4記載の画像識別装置。
【請求項6】
前記検出手段によって検出された前記識別対象物を表わす領域の画像データの前記差分に関する特徴量に基づいて、前記予め定められた前記差分に関する特徴量を更新する更新手段を更に含む請求項2又は3記載の画像識別装置。
【請求項7】
前記第1の波長域及び第2の波長域の各々を、800〜1100nmの範囲内とした請求項1〜請求項6の何れか1項記載の画像識別装置。
【請求項8】
前記第1の波長域を、800〜950nmとし、
前記第2の波長域を、950〜1100nmとした請求項1〜請求項7の何れか1項記載の画像識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−294854(P2009−294854A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147055(P2008−147055)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】