説明

異常検知装置

【課題】動作信頼性が高く、使用者に対し早期に注意を喚起することのできる異常検知装置を提供すること。
【解決手段】温度センサ1と、火災監視手段3と、環境変化検出手段6と、変化有無検出手段7と、制御手段8とを備え、火災判定は環境変化検出手段6の状態と温度センサ1の状態とで判断するので、外乱による誤動作を防止でき、火災監視手段よりも低い温度範囲で温度変化を検出している環境変化検出手段で環境変化を早期に使用者に知らせることができ、温度センサの変化状態でセンサの状態を監視しているので、センサの検出機能の障害を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は居住空間に設置される火災を検知する異常検知装置に関し、火災発生時の動作信頼性を高めると同時に、居住空間の環境変化の異常を早期に知らせることができる異常検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、定温式、差動式などと呼ばれる一定温度で作動する検知器や、急激な温度の変化を検出して火災を検知する検知器が存在する。
【0003】
これらの検知装置は一点だけの所定の検知レベルを設けており、誤動作の可能性は否定できないものである。
【0004】
また、所定の検知レベルは、ほぼ火災確定のレベルであり、できるだけ早期に検出して使用者に注意を促すものではない。
【0005】
また、この種の検知装置は、建物により異なるが、定期的な点検、あるいは不定期に使用者が保守、点検をおこなったりして点検依存型で動作信頼性を確保しているのが実状である。
【0006】
しかしながら、点検をし忘れたり、点検したにもかかわらず異常検知装置が故障したりすることにより、火災発生時に本来の機能を発揮できずに災害を受けることもある。
【0007】
この種の異常検知装置は、例えば煙検知素子と温度検出素子を有し、煙検知素子の故障時には、温度検出素子に切り替えるものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図8は、特許文献1に記載された従来の複合型火災感知器及びそのシステムを示すものである。
【0009】
図8に示すように、投光素子50aと、受光素子50bと、煙検知素子故障判断部51と、切替判断部52とから構成されている。
【0010】
【特許文献1】特開平10―188155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の構成では、煙検知素子故障判断部51はLEDの駆動回路に電流が流れていないことで故障を検出するものでLEDに電流が流れていても煙に対する反応するかどうかの機能の監視にはなっていないという課題を有している。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、センサの検出機能の異常を検出して動作信頼性を高めるとともに、火災判定条件に事前の環境変化の有無を付加して誤動作の無い判定のもとに報知をおこない、また、使用者に対し環境の変化を早期に知らせ、注意を喚起することのできる異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の異常検知装置は、温度センサと、前記温度センサの温度が所定の検出温度TA以上で所定の時間経過したことを検出する比較手段Aを有した火災監視手段と、所定の検出温度TBと所定の検出温度TCの間の温度領域において前記温度センサの所定の時間における温度上昇と所定の温度上昇Aおよび所定の温度上昇Bとを比較し変化有りを検出する温度上昇検出手段と前記温度センサの温度が所定の検出温度TBを所定の時間経過したことを検出する比較手段Bを有した環境変化検出手段と、前記所定の検出温度TC以下の温度領域で前記温度センサの温度の変化の有無を検出する変化有無検出手段と、外部に異常を移報する移報出力手段と、異常を報知する報知手段と、前記火災監視手段、前記環境変化検出手段、前記変化有無検出手段の検出結果にもとづいて前記移報出力手段、前記報知手段を制御する制御手段とを備えたものである。
【0014】
これによって、火災監視手段の火災判定に至らない現象の環境異常状態においても環境変化検出手段の温度上昇Bおよび比較手段Bにより環境変化を早期に検出して、使用者に対し早期に注意を促す報知を行うことができる。また、居住空間の温度外乱の多い温度領域で変化有無検出手段により温度センサの状態を監視するのでセンサの検出機能そのものの機能障害を検出することができ動作信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の異常検知装置は、センサの検出機能の異常を検出して動作信頼性を高めるとともに、火災判定条件に事前の環境変化の有無を付加して誤動作の無い判定のもとに報知をおこない、また、使用者に対し環境の変化を早期に知らせ、注意を喚起することのできる異常検知装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の発明は、温度センサと、前記温度センサの温度が所定の検出温度TA以上で所定の時間経過したことを検出する比較手段Aを有した火災監視手段と、所定の検出温度TBと所定の検出温度TCの間の温度領域において前記温度センサの所定の時間における温度上昇と所定の温度上昇Aおよび所定の温度上昇Bとを比較し変化有りを検出する温度上昇検出手段と前記温度センサの温度が所定の検出温度TBを所定の時間経過したことを検出する比較手段Bを有した環境変化検出手段と、前記所定の検出温度TC以下の温度領域で前記温度センサの温度の変化の有無を検出する変化有無検出手段と、外部に異常を移報する移報出力手段と、異常を報知する報知手段と、前記火災監視手段、前記環境変化検出手段、前記変化有無検出手段の検出結果にもとづいて前記移報出力手段、前記報知手段を制御する制御手段とを備えることにより、センサの検出機能の障害検出をおこない動作信頼性を高めることができ、環境変化を検出して使用者に対し早期に注意喚起をおこなうことができる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の前記所定の温度TAは火災確定判断の温度とし、前記所定の検出温度TBは通常の居住空間では存在しにくい温度領域の上限で、前記所定の検出温度TCは通常の居住空間で存在する温度領域の上限とし、前記所定の温度TA>前記所定の検出温度TB>前記所定の検出温度TCとすることにより、居住空間の温度外乱の多い温度領域で温度センサの検出機能そのものを監視するのでセンサの検出機能の障害を正確に検出することができる。
【0018】
また、通常の居住空間の温度外乱の少ない温度領域で環境変化の検出をおこなうので環境変化を正確に検出することができる。
【0019】
第3の発明は、特に、第1の発明の前記制御手段を、前記火災監視手段の前記比較手段Aが前記温度センサの温度が前記所定の検出温度TA以上で所定の時間経過したことを検出し、前記環境変化検出手段の前記温度上昇検出手段の変化有りを検出している時に火災と判断して前記移報出力手段および前記報知手段に出力することにより、外乱によりいきなり所定の温度Aを超えた状態になっても誤動作を防止することができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1の発明の前記制御手段を、前記環境変化検出手段の検出結果が、所定の時間における温度上昇>所定の温度上昇Bの時、および前記温度センサの温度が所定の検出温度TBを所定の時間経過した時に前記移報出力手段および前記報知手段に出力することにより、通常の居住空間ではおこりにくい温度領域で傾きを検知しているので正確に環境変化を検出でき、早期に使用者に知らせることができる。
また装置の使用可能な温度範囲も所定の検出温度TB以下であれば使用可能となり、広い使用範囲の装置が実現できる。
【0021】
第5の発明は、特に、第1の発明の制御手段を前記制御手段は前記変化有無検出手段の変化がない時は、センサ異常と判断して前記移報出力手段および前記報知手段に出力するようにしたので、センサの検出機能の障害を検出でき使用者に報知するので動作信頼性の維持管理ができる。
【0022】
第6の発明は、特に、第1または3〜5のいずれか1つの発明の移報出力手段および前記報知手段を、前記火災監視手段、前記環境変化検出手段、前記変化有無検出手段それぞれに対応した移報出力ならびに報知をおこなうようにしたので、使用者に対し、火災判定、早期報知、温度センサの障害を明確に区分して知らせることができる。
【0023】
第7の発明は、第1〜第6の発明の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0024】
そして、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを稼動させて本発明の異常検知装置の少なくとも一部を容易に実現することができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における異常検知装置のブロック図を示すものである。
【0027】
図1において、異常検知装置11は、火災監視手段3と、環境変化検出手段6と、変化有無検出手段7と、警報手段11で構成されている。
【0028】
温度センサ1は例えば温度により抵抗が変化する感温素子で構成されており異常検知装置11に内蔵されている。
【0029】
火災監視手段3は比較手段A2を有しこの比較手段A2により温度センサ1が所定の検出温度TA(火災確定判断の温度)以上で所定の時間経過したかどうかを検出し、検出結果を制御手段8に提供している。
【0030】
環境変化検出手段6は温度上昇検出手段4と比較手段B5を有している。温度上昇検出手段4は温度センサの所定の時間における温度上昇と所定の温度上昇Aおよび所定の温度上昇Bとを比較して温度の変化の有無を判定すると同時に、温度センサの温度上昇が温度上昇Bを上回ったかどうかを検出し、検出結果を制御手段8に提供している。
【0031】
比較手段B5は所定の検出温度TBを有し、温度センサの温度が所定の検出温度TB以上で所定の時間経過したかどうかを検出し、検出結果を制御手段8に提供している。
【0032】
所定の検出温度TBは通常の居住空間では存在しにくい温度領域の上限に設定されている。
【0033】
変化有無検出手段7は、通常の居住空間で存在する温度領域の上限として設定された所定の検出温度TCを有している。温度センサ1の温度は居住空間の温度外乱の温度領域であるので、室温の変化に加え空調機器の影響による温度変化、などの温度を検出している。
この温度センサの温度変化が所定の時間検出されないときは変化無し(センサの機能障害)として、検出結果を制御手段8に提供している。
【0034】
移報出力手段9は、例えば火災中央監視盤(図示していない)のような集中監視装置に異常発生情報を提供するためのものである。
【0035】
報知手段10は異常検知装置11に内蔵され報知をおこなうものである。
制御手段8は、火災監視手段3、環境変化検出手段6、変化有無検出手段7の検出結果を受けて移報出力手段9および報知手段10に対して動作信号を出力する。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態1における異常検知装置の検出手段と所定の検出温度の関係を示す図である。
【0037】
所定の検出温度TAは火災監視手段3の比較手段Aの火災検出の温度である。所定の検出温度TBは環境変化検出手段6の監視領域温度の上限である。所定の検出温度TCは変化有無検出手段の上限温度で構成している。
【0038】
以上のように構成された異常検知装置について、以下、その動作、作用を図1および図3、図4、図5、図6で説明する。
【0039】
まず、温度センサ1が例えば通常の環境下にあるときは、変化有無検出手段7が通常の居住空間の室温を検出しており、室温の変化により変化有りの検出結果を制御手段8に提供する。(図3)
制御手段8は火災監視手段3、環境変化検出手段6、変化有無検出手段7からの検出結果は正常状態であるので、移報出力手段9および報知手段10への動作出力は送出しない。
【0040】
次に温度センサ1の温度が、環境変化検出手段6の領域で急激な温度上昇が発生した場合(図4)は、その温度上昇を温度上昇検出手段4が温度上昇Aおよび温度上昇Bと比較する。
次に、温度センサ1の温度上昇が所定の温度上昇Aを上回った時には、変化有りを制御手段8に提供する。
【0041】
温度センサの温度上昇が所定の温度上昇Bを上回ると環境変化検出手段6が制御手段8にその検出結果を提供し、制御手段8は移報出力手段9および報知手段10に動作出力をおこなう。
【0042】
次に、温度センサ1の温度が、環境変化検出手段6の所定の検出温度TBを上回った時には(図5)比較手段B5が所定の時間経過したことを検出すると、同様に制御手段8は移報出力手段9および報知手段10に動作出力をおこなう。
【0043】
次に、温度センサ1の温度が、火災監視手段3の所定の検出手段TAを上回った時には(図6)、比較手段A2が所定の時間経過したことを検出すると、制御手段8に検出結果を提供する。
制御手段8は、環境変化検出手段6の変化有りを経過しているので、移報出力手段9および報知手段10に動作出力をおこなう。
【0044】
図7は本発明の実施の形態1における異常検知装置の動作を示すフローチャートである。
火災監視手段の所定の検出温度TAを80℃、環境変化検出手段の所定の検出温度TBを60℃にした場合の例である。
【0045】
S1→S2→S3は、通常状態における流れになる。
火災発生時には必ずS1→S5を通過するので環境変化検出手段により変化有りの状態になり、この変化有りの状態を確認するので(S9)いきなり80℃の外乱があっても、誤動作を防止することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態においては、所定の検出温度TAを有した火災監視手段と、所定の検出温度TBを有した環境変化検出手段と、所定の検出温度TCを有した変化有無検出手段と、それらの検出結果で制御をおこなう制御手段を構成して、それぞれの検出手段の監視温度の領域を設け、それぞれ最適な検出手段で検出をおこなうことにより、センサの検出機能障害検出、環境変化の早期検出、誤動作のない火災判定をおこなうことができる。
【0047】
また、本実施の形態の温度センサを煙センサ、COセンサなどの他のセンサにおいても同様な効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる異常検知装置は、センサの障害検出をおこない動作信頼性が高く、環境変化の早期検出ができ、誤動作のない動作信頼性の高いシステムを必要とするところに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1における異常検知装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における異常検知装置の検出手段と所定の検出温度の関係を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における異常検知装置のセンサの温度と変化有無検出手段の検出状態を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における異常検知装置の温度上昇と環境変化検出手段の検出状態を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における異常検知装置の温度上昇と環境変化検出手段の検出状態を示す図
【図6】本発明の実施の形態1における異常検知装置の温度上昇と火災監視手段の検出状態を示す図
【図7】本発明の実施の形態1における異常検知装置の動作を示すフローチャート
【図8】従来の複合型火災感知器及びそのシステムのブロック図
【符号の説明】
【0050】
1 温度センサ
2 比較手段A
3 火災監視手段
4 温度上昇検出手段
5 比較手段B
6 環境変化検出手段
7 変化有無検出手段
8 制御手段
9 移報出力手段
10 報知手段
11 異常検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサと、前記温度センサの温度が所定の検出温度TA以上で所定の時間経過したことを検出する比較手段Aを有した火災監視手段と、所定の検出温度TBと所定の検出温度TCの間の温度領域において前記温度センサの所定の時間における温度上昇と所定の温度上昇Aおよび所定の温度上昇Bとを比較し変化有りを検出する温度上昇検出手段と前記温度センサの温度が所定の検出温度TBを所定の時間経過したことを検出する比較手段Bを有した環境変化検出手段と、前記所定の検出温度TC以下の温度領域で前記温度センサの温度の変化の有無を検出する変化有無検出手段と、外部に異常を移報する移報出力手段と、異常を報知する報知手段と、前記火災監視手段、前記環境変化検出手段、前記変化有無検出手段の検出結果にもとづいて前記移報出力手段、前記報知手段を制御する制御手段とを備えた異常検知装置。
【請求項2】
前記所定の温度TAは、火災確定判断の温度であり、前記所定の検出温度TBは通常の居住空間では存在しにくい温度領域の上限で、前記所定の検出温度TCは通常の居住空間で存在する温度領域の上限とし、前記所定の温度TA>前記所定の検出温度TB>前記所定の検出温度TCとした請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記火災監視手段の前記比較手段Aが前記温度センサの温度が前記所定の検出温度TA以上で所定の時間経過したことを検出し、前記環境変化検出手段の前記温度上昇検出手段の変化有りを検出している時に火災と判断して前記移報出力手段および前記報知手段に出力する請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記環境変化検出手段の検出結果が、所定の時間における温度上昇>所定の温度上昇Bの時、および前記温度センサの温度が所定の検出温度TBを所定の時間経過した時に前記移報出力手段および前記報知手段に出力する請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記変化有無検出手段の変化がない時は、センサ異常と判断して前記移報出力手段および前記報知手段に出力する前記1に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記移報出力手段および前記報知手段は、前記火災監視手段、前記環境変化検出手段、前記変化有無検出手段それぞれに対応した移報出力ならびに報知をおこなう請求項1または3〜5のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項7】
請求項1〜6記載の異常検知装置の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−217739(P2008−217739A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58208(P2007−58208)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503354491)和晃技研株式会社 (3)
【Fターム(参考)】