説明

異常診断装置及びこれを有する転がり軸受装置並びに異常診断方法

【課題】装置の分解や組立てに掛かる手間を軽減しながら、診断にかかる時間及びコストを低減できる異常診断装置を提供する。
【解決手段】回転部品又は前記静止部材に固定される、振動センサ、超音波センサ、AEセンサのうちの少なくとも一つのセンサと、検出された信号の波形から前記回転部品と前記静止部材と前記センサのいずれかの固有振動数に対応した特定周波数帯域を抽出するフィルタ処理部35と、フィルタ処理後の波形の絶対値を検波するエンベロープ処理部37と、前記エンベロープ処理部37から転送された波形の周波数を分析する周波数分析部38と、回転速度信号に基づき算出した前記回転部品の損傷に起因した周波数と実測データに基づく周波数とを比較する比較照合部39と、比較結果に基づき、異常の有無や異常の部位を特定する異常判定部42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両用の車軸やギアボックス或いは発電用風車等に用いられる回転部品の異常を診断する異常診断装置及びこれを有する転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両や発電用風車等の回転部品は、一定期間使用した後に、軸受装置やその他の部品について損傷や磨耗等の欠陥の有無が検査される。この検査は、装置全体を定期的に分解することにより行われ、回転部品にできた損傷や磨耗は、検査担当者が目視により発見するようにしている。そして、検査で発見される主な欠陥としては、軸受装置の場合、異物の噛み込み等によって生ずる圧痕、転がり疲れによる剥離、その他の磨耗等、歯車の場合には歯部の欠損や磨耗等、車輪の場合にはフラット等の磨耗があり、新品にはない凹凸や磨耗等があれば、新品に交換し再度装置に組みつけられる。
【0003】
また、従来の回転部品として、図14に示すセンサモジュールを有する軸受装置100は、転がり軸受101の外輪102の外周面にモジュール穴103が形成され、モジュール穴103に速度センサ、温度センサ、加速度センサを内装したモジュール104が挿入固定されている。そして、モジュール104内の各センサが発生した検出信号は、通信チャネルを通じて、転がり軸受101が設置される貨車や客車を牽引する機関車内の遠隔処理ユニットに送信される。
また、速度については、回転する車輪によって生じたパルスに基づくジャーナルの瞬間的な速度を検出することにより、その速度と、同様の条件で動作する他の軸受の速度との比較を行い、軸受組立体によって経験された全周期履歴の保存記録を行う。
また、温度については、単純なレベル検出により、同様の条件で動作する他の軸受の温度との比較を行う。
更に、振動については、所定の時間間隔に亘るエネルギーレベルの単純なRMS測定を行い、そのエネルギーレベルと、処理ユニットに記憶された過去のエネルギーレベルとを比較し、同様の条件で動作する他の軸受のエネルギーレベルの比較を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図15に示す転がり軸受装置の異常検出装置110は、複列円すいころ軸受111の外輪112の下端部に、センサ取付孔113が形成され、センサ取付孔113に、回転速度センサ114と、温度センサ115と、加速度センサ116と、を有するセンサユニット117が挿入されている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
更に、図16に示すセンサ付回転静止部材120は、複列円すいころ軸受121の外輪122の下端部にセンサ取付孔123が形成され、回転速度センサ124、温度センサ125と、を有するセンサユニット126がセンサ取付孔123に設けられた隔壁状ケース127に挿入されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
また、図17に示された従来の軸受の異常検知装置130は、軸受131の機械振動を電気的振動に変換して出力するピックアップ132と、ピックアップ132の出力を増幅する自動利得制御増幅器133と、増幅器133の出力から駆動系や他の機械系から生ずるノイズを除去する1〜15kHzのバンドパスフィルタ134と、バントパスフィルタ134の出力の実効値を演算し自動利得制御増幅器133の利得制御端子に供給する実効値演算器135と、バンドパスフィルタ134の出力を入力する包絡線回路136と、包絡線回路136の出力を入力する実効値演算器137と、実効値演算器137の出力を入力しその値が所定値を超えたときにランプや接点出力で警報を出す警報回路138と、を備えた構成を有する(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
また、図18に示された従来の軸受の異常診断装置140は、転がり軸受141の近傍に配されるマイクロホン142と、増幅器143と、電子機器144と、スピーカ145と、モニタ146と、を備えた構成を有する。電子機器144は、演算処理装置であり、変換機としてのトランスジューサ147と、記録部としてのHDD148と、演算処理部としての異常診断部149と、アナログ変換出力部150とを備える(例えば、特許文献5参照。)。
【0008】
また、図19に示された従来の軸受の異常診断装置160では、センサ161が出力した電気的な信号波形が、アナログ・デジタル変換器162によってデジタルファイル化された後、波形処理部163に送られ、波形処理部163で、エンベロープ処理が行われてエンベロープスペクトルが得られる。また、波形処理部163では、抽出工程において、軸受構成部品の特定の周波数成分である、内輪傷成分、外輪傷成分、転動体傷成分が、所定の式を用いてエンベロープスペクトルにより抽出される。演算部164では、演算工程が行われ、判定部165では、比較工程が行われ、判定結果が出力回路166から出力され、スピーカ167やモニターに168より検査員に報知される(例えば特許文献6参照。)。
【0009】
また、図20に示されるように、転がり軸受の各部材で発生する異常振動周波数は、軸受回転速度と、軸受部品の形状寸法から幾何的に求められ、これを用いた信号処理方法が種々知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2001−500597号公報(第10−16頁、第1図)
【特許文献2】特開2002−295464号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献3】特開2002−242928号広報(第4−5頁、第1図)
【特許文献4】特開平2−205727号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献5】特開2000−146762号公報(第4−6頁、第1図)
【特許文献6】特開2001−021453号公報(第5−6頁、第1図)
【非特許文献1】転がり軸受の異常の検出および予知について “潤滑”、第23巻、第3号(1978)pp.183〜187
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記機械装置全体を分解して、担当者が目視で検査する方法では、装置全体の分解に多大な時間とコストがかかり、さらに組立て直しにも多くの時間を必要とすることがある。特に、発電用風車の場合、オフショアで使用される場合が多く、台数も多い場合がある。そのため、現在では、保全担当者が現地に出向き、個々の風車の回転部品検査を行っていることが多く、この場合、多大な時間とコストがかかり、メンテナンス性において効率が悪いことがある。
【0011】
また、限られた時間内で多数の部品を目視で検査するため、欠陥を見落とす可能性がある。また、欠陥の程度の判断にも個人差があり、実質的に欠陥がなくても部品交換が行われることもあるため、無駄なコストがかかることにも成り得る。さらに、組立て直しを行うときに、検査前には無かった打痕を回転部品につけてしまう等、検査自体が部品の欠陥の新たな原因を生むこともある。
【0012】
また、機械装置によっては、回転部品に異常が生じても部品の交換に手間を要するため、直ちに装置を停止させることができないことがある。この場合、損傷の程度がどの程度かを確認するために、振動計等を用いて正常時の振動値と比較したり、熟練者による聴感により、その程度を推定し、部品の交換時期を定めている。しかしながら、機械装置の振動は、回転部品以外からの振動源から発生する振動の方が大きいため、損傷の程度の識別までは困難である。このため、効率的な部品交換ができないことがあった。
【0013】
また、特許文献1〜6及び非特許文献1においては、温度センサや振動センサを用いて外部から回転部品の異常を診断する手法が知られているが、これらの文献では、例えば、振動センサからの検出信号を分析して異常診断する際の処理負担に対して対策が為されておらず、処理回路等のハードウェアが大きくなったり、ソフトウェアの負荷が大きくなることがあった。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、装置の分解や組立てに掛かる手間を軽減しながら、その装置の回転部品の異常の有無、部位の特定及び損傷の程度を診断可能であると共に、診断にかかる時間及びコストを低減できる異常診断装置及びこれを有する転がり軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 静止部材に対して相対的に回転する回転部品の異常を診断する異常診断装置であって、
前記回転部品又は前記静止部材に固定される、振動センサ、超音波センサ、AEセンサのうちの少なくとも一つのセンサと、
前記センサにより検出された信号の波形から前記回転部品と前記静止部材と前記センサのいずれかの固有振動数に対応した特定周波数帯域を抽出するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部から転送されたフィルタ処理後の波形の絶対値を検波するエンベロープ処理部と、
前記エンベロープ処理部から転送された波形の周波数を分析する周波数分析部と、
回転速度信号に基づき算出した前記回転部品の損傷に起因した周波数と実測データに基づく周波数とを比較する比較照合部と、
前記比較照合部での比較結果に基づき、異常の有無や異常の部位を特定する異常判定部と、
を備えていることを特徴とする異常診断装置。
(2) 前記フィルタ処理部は、複数の前記固有振動数に対応した複数の前記周波数帯域を抽出し、前記異常判定部は、各周波数帯域での比較照合部での比較結果に基づいて損傷の程度を診断することを特徴とする(1)に記載の異常診断装置。
(3) 静止部材に対して相対的に回転する回転部品の異常を診断する異常診断装置であって、
前記回転部品又は前記軸受箱に固定される、振動センサ、超音波センサ、AEセンサのうちの少なくとも一つのセンサと、
前記センサにより検出された信号の波形から前記回転部品と前記軸受箱と前記センサのいずれかの複数の固有振動数に対応した複数の特定周波数帯域を抽出するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部から転送されたフィルタ処理後の波形の実効値又は波高率を算出する演算処理部と、
前記演算処理部で算出された各周波数帯域における演算結果を正常値と比較する比較部と、
前記比較部での比較結果に基づき、異常の有無あるいは損傷の程度を診断する異常判定部と、
を備えることを特徴とする異常診断装置。
(4) 前記異常判定部での判定結果を表示する結果出力部をさらに備えることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の異常診断装置。
(5) 前記回転部品の負荷圏に前記振動センサ、前記超音波センサ、前記AEセンサ、温度センサのうちの少なくとも一つの異常検出用センサを同一の筐体内に収納固定したことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の異常診断装置。
(6) 前記回転部品は転がり軸受で、前記静止部材は前記転がり軸受を支持する軸受箱であり、前記軸受箱の負荷圏側の外周面の一部に平坦部を設け、該平坦部に前記センサが固定されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の異常診断装置。
(7) 前記振動センサによって検出され、前記フィルタ処理部によりフィルタ処理された振動信号を、音として出力するヘッドホン又はスピーカをさらに備えることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の異常診断装置。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の異常診断装置を備えた鉄道車両用転がり軸受装置。
(9) (1)〜(7)のいずれかに記載の異常診断装置を備えた減速器用転がり軸受装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の異常診断装置によれば、回転部品が組み込まれている装置を分解することなく実稼動状態で複数の部品の欠陥と損傷の程度を同時に検査することができる。また、機械部品の固有振動数に対応した周波数帯域を抽出するため、高感度で高SN比の測定が可能となる。この結果、検査時間ならびにコストの低減が図れると共に、機械装置の回転部品あるいは装置の安全性と信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係る回転部品の異常診断装置について詳細に説明する。
図1は、異常診断装置が適用される鉄道車両用の転がり軸受装置10を示す。鉄道車両用の転がり軸受装置10は、回転部品である鉄道車両車軸用の複列円すいころ軸受11と、鉄道車両用台車の一部を構成する静止部材である軸受箱12とを備える。
【0018】
複列円すいころ軸受11は、外周面に円すい外面状に傾斜した内輪軌道面15,15を有する一対の内輪14,14と、内周面に円すい内面状に傾斜した一対の外輪軌道面17,17を有する単一の外輪16と、内輪14,14の内輪軌道面15,15と外輪16の外輪軌道面17,17との間に複列で複数配置された転動体である円すいころ18と、円すいころ18を転動自在に保持する環状の打ち抜き保持器19,19と、一対のシール部材20,20とを備える。
軸受箱12は、ハウジング21と、ハウジング21の先端部側に配置された前蓋22と、その後端部側に配置された後蓋23とを備える。
【0019】
内輪14,14の間には、内輪間座24が配置されている。内輪14,14、内輪間座24には回転軸である車軸25が圧入されており、外輪16はハウジング21と嵌合する。複列円すいころ軸受11には、種々部材の重量等によるラジアル荷重と任意のアキシアル荷重とが負荷されており、外輪16の上方部が負荷圏になっている。ここで、負荷圏とは、転動体に対して荷重が負荷される領域を指す。
【0020】
車軸25の先端部側に配置された一方のシール部材20は、外輪16の外側端部と前蓋22との間に組み付けられ、後端部側に配置された他方のシール部材20は、外輪16の外側端部と後蓋23との間に組み付けられている。
【0021】
ハウジング21は、鉄道車両用台車の側枠を構成しており、外輪16の外周面を覆うように円環形状に形成されている。ハウジング21の外周部には、複列円すいころ軸受11の軸方向中央部に凹部26が形成されている。凹部26はその底部に平坦部27を設け、平坦部27に異常診断装置の一部を構成する異常検出用センサ31を固定する。
【0022】
異常検出用センサ31は、振動センサや温度センサまたはAE(acoustic emission)センサや超音波センサを一体に筐体内に収納固定した複合型センサである。なお、図1の異常検出用センサ31は、振動センサ32と温度センサ33を備える。振動センサ32は、圧電素子等の振動測定素子であり、複列円すいころ軸受11の内外輪軌道面15,15,17,17の剥離や、歯車の欠損、車輪のフラット磨耗等を検出するのに用いられる。振動センサ32は、加速度、速度或いは変位型等、振動を電気信号化できるものであればよく、ノイズが多いような機械装置に取付ける際には、絶縁型を使用する方がノイズの影響を受けることがないので好ましい。
【0023】
温度センサ33は、サーミスタ温度測定素子や白金測温抵抗体や熱電対等の非接触タイプの温度測定素子である。温度センサとしては、雰囲気温度が規定値を超えると、バイメタルの接点が離れたり、接点が溶断したりすることで導通しなくなる温度フューズを用いても良い。その場合、装置の温度が規定値を超えたとき、温度フューズの導通が遮断されることによって温度異常が検出される。
【0024】
また、異常検出用センサ31は、軸受の非回転側軌道輪に嵌合している軸受箱のラジアル荷重の負荷圏領域に取付けている。このため、例えば、軸受軌道面に損傷が発生した場合、その損傷部を転動体が通過する際に生じる衝突力は無負荷圏よりも負荷圏の方が大きく、軸受負荷圏の方が感度良く異常振動を検出することができる。
【0025】
図2は、異常検出用センサ31の振動センサ32を用いた異常診断装置の信号処理系統図を示す。振動センサ32が発生した振動信号は、信号伝送手段34を介して増幅後にフィルタ部35に転送される。フィルタ部35は、固有振動数記憶部36に記憶された、回転部品である複列円すいころ軸受11、静止部材である軸受箱12、異常検出用センサ31のいずれかの固有振動数に基づいて、振動信号からその固有振動数に対応する所定の周波数帯域のみを抽出する。
【0026】
この固有振動数は、回転部品である複列円すいころ軸受11や歯車や車輪、静止部材である軸受箱12、異常検出用センサ31のいずれかを被測定物として、打撃法により加振し、被測定物に取付けた振動検出器又は打撃により発生した音響を周波数分析することにより容易に求めることができる。なお、被測定物が複列円すいころ軸受の場合には、内輪、外輪、転動体、保持器等のいずれかに起因する固有振動数が与えられる。一般的に、機械部品の固有振動数は複数存在し、また固有振動数での振幅レベルは高くなるため測定の感度がよい。
【0027】
その後、エンベロープ処理部37では、フィルタ部35にて抽出された所定の周波数帯域に対して、波形の絶対値を検波する絶対値検波処理が行われる。さらに、周波数分析部38で波形の周波数の分析処理が行われ、実測値データが比較照合部39へ転送される。
【0028】
一方、理論周波数計算部41において、回転速度情報40に基づき算出された、軸受の剥離、歯車の欠損、車輪のフラット等、回転部品の損傷に起因した周波数成分の計算値データが比較照合部39に転送される。そして、比較照合部39で実測値データと計算値データとが比較照合され、異常判定部42にて振動異常の有無、異常部位の特定が行われ、結果出力部43で振動異常の有無、特定部位の出力が行われ、アラーム出力することもできる。結果出力部43への情報転送は、有線や無線で行われる。
【0029】
本実施形態は、振動信号から固有振動数に対応する所定の周波数帯域のみを抽出・分析することで、回転部品の異常診断ができることに着目したものである。
具体的に、本出願人は外径208mm、内径130mm、幅152mm、ころ数25の複列円すいころ軸受を用いて、内輪を200min−1で回転させながら、軸受箱を打撃法によって加振して図3に示されるような軸受箱の固有振動数の測定結果を得た。なお、複列円すいころ軸受には30kNのラジアル荷重が作用しており、振動検出器は軸受箱負荷圏位置に固定して測定した。この結果から、図3に示された波形データは、図4に示した正常な複列円すいころ軸受の振動周波数の結果とほぼ一致することが見られ、これにより、固有振動数に対応する所定の周波数帯域のみを抽出・分析することで異常の有無の診断ができることを見出した。
【0030】
なお、この方法では、例えば、電動機等から検出した回転速度情報と回転要素部品の設計諸元に基づけば、周波数成分の計算と比較照合を容易に行うことができる。また、固有振動数の記憶又は増幅後の振動信号の処理は、各種データ処理と演算を行うもので、例えば、コンピュータ或いは専用マイクロチップ等によっても構成が可能である。さらに、検出した信号をメモリ等の保存手段に格納後に、演算処理を行うようにしても良い。
【0031】
さらに、比較照合部39が行う振動信号を基にした異常診断の処理方法としては以下に示す方法を用いても良い。
【0032】
(1)エンベロープデータの実効値を基準値として用いる方法
本方法では、図20の式を基に、異常時に発生する周波数成分を求める。そして、エンベロープデータの実効値を算出し、この実効値から比較用の基準値を求める。そして、基準値以上の周波数成分を算出し、異常時に発生する周波数成分との比較を行う。以下、図5を参照しながら説明を行う。
【0033】
まず、異常検出用センサ31に収納された振動センサ32を介して軸受の振動を検出する(ステップS101)。検出された信号は、所定の増幅率で増幅され、A/D変換器によりデジタル信号に変換され(ステップS102)、所定の周波数帯域のみを抽出するフィルタ処理が行なわれる(ステップS103)。フィルタ処理後のデジタル信号にエンベロープ処理を施し(ステップS104)、エンベロープ処理後のデジタル信号の周波数スペクトルを求める(ステップS105)。
【0034】
次に、実測値データのデジタル信号の実効値を計算し(ステップS106)、さらに実効値を基にして、異常診断に用いられる基準値を算出する(ステップS107)。ここで、実効値は、エンベロープ処理後の周波数スペクトルの自乗平均の平方根として求められたものである。基準値は、実効値を基に、以下の式(1)または(2)に基づき算出される。
(基準値)=(実効値)+α ・・・(1)
(基準値)=(実効値)×β ・・・(2)
α,β:データの種類によって可変な所定の値
【0035】
一方、図20に示す表に基づき、軸受の異常時に起因して発生する(理論)周波数を求め(ステップS108)、求めた周波数に対応する各部材の異常周波数成分のレベル、即ち、内輪傷成分Si(Zfi),外輪傷成分So(Zfc)、転動体傷成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)を抽出し(ステップS109)、ステップS107で計算された基準値との比較を行う(ステップS110)。そして、全ての成分の値が、基準値より小さい場合には、軸受に異常は発生していないと判断し(ステップS112)、いずれかの成分が基準値以上である場合には、該当箇所に異常が発生していると判断する(ステップS111)。
【0036】
(2)スペクトルのピークを求め、ピーク周波数と異常周波数とを比較する方法
本方法では、図20の式を基に、異常時に発生する周波数成分を求める。そして、周波数分析部38が求めた周波数スペクトルの中で所定数または基準値以上のピークについて、異常が発生する周波数成分に該当するかどうかを照合する。
【0037】
(3)基本周波数と特定の高調波を用いる方法
本方法では、異常周波数成分の基本周波数である1次の値、基本周波数の倍の周波数を持つ2次の値、基本周波数の4倍の周波数を持つ4次の値について、ピークの周波数と異常時に発生する周波数とが一致しているかどうかを比較し、少なくとも2つの周波数において、異常有りと判断された場合には、最終的に異常有りと判断する。
【0038】
(4)異常診断と共に損傷の大きさを推定する方法
本方法では、エンベロープ処理後の周波数スペクトルを用い、大きなピークの周波数において外輪に損傷が発生していることを確認し、この周波数におけるピークの値と周波数スペクトル全体の平均値である基準レベルとを比較することにより、異常を起こしている外輪における損傷の大きさを推定する。
【0039】
(5)基本周波数の自然数倍の高調波成分とのレベル差を基準値とする方法
本方法では、異常周波数成分の基本周波数である1次のレベルに対して、基本周波数の2,3,4,・・・n倍の周波数を持つ2,3,4,・・・n次のレベルが基準値以上となっている個数をカウントし、所定個数以上基準値を超えている場合に、異常が発生していると判断する。具体的には、1次のレベルに対し、n次の値が{(1次のレベル)−(n−1)・a}(dB)以上である場合に、カウントを行う。ここでaは、任意の値である。
【0040】
(6)周波数帯域毎の実効値を用いる方法
本方法では、異常に起因する周波数のピークレベルそのものの値ではなく、異常に起因する周波数を含む周波数帯の実効値を用いて、異常診断を行う。具体的には、異常に起因する周波数を含む周波数帯の実効値とは、周波数帯のレベルの自乗平均またはパーシャルオーバオールである。ここで、自乗平均及びパーシャルオーバオールは、予め定められた式により得られる。オーバオールは、特定の指定区間の総和を意味する。
【0041】
第1実施形態の異常診断装置によれば、回転部品、静止部材、センサのいずれかの固有振動数が正常品の回転部品の振動周波数とほぼ一致することに着目し、フィルタ処理により固有振動数に対応する周波数帯域のみを振動信号から抽出して、エンベロープ処理、周波数分析を行い、異常診断を行っている。これにより、振動信号のうち診断する周波数帯域を特定できるため、ノイズによる影響を回避できると共に、異常検知のための信号処理回路等のハードウェアをコンパクトにでき、ソフトウェアの負荷も軽減することができる。また、振幅レベルの高い帯域での分析が可能となり、高感度で高SN比の測定が可能となる。
【0042】
ここで、正常及び外輪軌道面に傷がある前述した複列円すいころ軸受(外径208mm、内径130mm、幅152mm、ころ数25)を軸受箱に組み込み、内輪回転速度200min−1で回転させ、軸受箱のラジアル方向の振動をエンベロープ分析及び周波数分析することで異常の診断を行った。図6は、正常品及び外輪傷品の振動をフィルタ処理せずにエンベロープ分析及び周波数分析した結果を示し、図7は、正常品及び外輪傷品の振動を1〜3kHzの帯域でフィルタ処理後にエンベロープ分析及び周波数分析した結果を示す。
【0043】
本実施例では、正常と異常の判別をする基準として、図中にラインを引いた基準値(rms+3dB)を用いることにより、高精度な診断が可能であった。即ち、この基準値を越える周波数成分を抽出後、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体傷成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)と比較し、その一致度から異常の有無と部位の特定を行うものであり、図6においては、顕著なピークは出現していないが、図7においては、外輪傷品について、その傷に起因した周波数成分と一致した成分が顕著に出現している。
【0044】
これにより、図7(b)については、軸受の外輪に傷があると判定することができる。また、本試験で用いた外輪傷品の傷の大きさが小さいため1〜3kHzの周波数帯域のフィルタ処理後にエンベロープ分析及び周波数分析を行わないと傷成分が顕著に出現しないこともわかる。なお、前述した基準値(rms+3dB)は、運転状態やアプリケーションに応じて任意に設定・変更が可能であるが、診断精度を考慮すると、rms+2dB〜rms+6dBが好ましい。
また、ここでは、実効値を取り上げたが、移動平均などの平均値や波高率(=ピークレベル/平均値)を用いてもよい。
【0045】
次に、図8を参照して、第2実施形態に係る異常診断装置について説明する。なお、第2実施形態の異常診断装置では、振動センサから振動信号を基に、異常の有無、異常部位の特定に加えて、損傷の程度を診断するためのもので、信号処理部以外の構成及び作用は第1実施形態のものとほぼ同様である。このため、既に説明した部材と同様な構成及び作用を有する部材については、図中同一符号または相当符号を付すことにより、説明を簡略或いは省略する。
【0046】
上述のように、機械部品の固有振動数は複数存在しており、軸受箱に嵌め合った軸受軌道面に傷などの損傷が発生すると転動体が傷の上を通過することによる衝撃振動が生じ、軸受箱の固有振動数が励振される。この固有振動数は、傷の大きさや回転速度などで伝達の仕方が異なる。即ち、大きい傷の場合には、加振源が大きいため軸受箱などの構造に基づく複数の固有振動数が励振される。一方、小さい傷の場合には、加振源が小さいため、大きい傷の場合に比べると励振される固有振動数が少ない。
【0047】
このため、固有振動数記憶部36は、打撃法によって加振した、回転部品、静止部材、センサのいずれかの固有振動数の測定結果を記憶し、フィルタ部44は、固有振動数記憶部に記憶された測定結果の波形データの山と谷に基づき、振動センサに32よって得られた振動信号を2〜7の特定周波数帯域に分割して抽出している。
【0048】
エンベロープ処理部37では、フィルタ部44にて抽出された各周波数帯域に対して、波形の絶対値を検波する絶対値検波処理が行われる。さらに、周波数分析部38で波形の周波数の分析処理が行われ、実測値データが比較照合部39へ転送される。
そして、比較照合部39で実測値データと理論周波数計算部41にて算出された計算値データとが周波数帯域毎に比較照合される。異常判定部45は、複列円すいころ軸受11の異常の有無、異常部位の特定を行うと共に、各構成部品について各周波数帯域で損傷成分が発生しているかどうかを確認する。ここで、全周波数帯域において損傷成分が発生している場合には損傷が大きく、特定の周波数帯域のみに損傷成分が発生している場合には損傷が小さいと判断する。その後、結果出力部43は振動異常の有無、異常部位の特定ならびに損傷の程度の出力を行う。
【0049】
ここで、図3の固有振動数を得た複列円すいころ軸受において、軸受箱に外輪軌道面の傷が大きい軸受と小さい軸受を組込み回転させ、第2実施形態の損傷の程度の診断を行った。図9は、外輪軌道面の損傷が大きい軸受(以下、外輪大きず品とする。)の振動周波数分析の結果を示し、図10は、外輪軌道面の損傷が小さい軸受(以下、外輪小きず品とする。)の振動周波数分析結果を示す。損傷の大きさの寸法比は約8である。
【0050】
図3に示されるように10kHzの周波数の範囲では軸受箱の固有振動数が複数存在しており、これを図9及び図10における振動周波数分析結果と比較すると、軸受箱の固有振動数に対応する周波数帯域において振動レベルが高いことがわかる。また、図9と図10を比較すると、傷の大きさによって軸受箱の固有振動数のレベルが異なることも確認される。
【0051】
そこで、固有振動数記憶部36に記憶された図3に示す軸受箱の固有振動数の測定結果に基づき、図9及び図10の振動信号から0〜3kHz、3〜4.2kHz、4.2〜6kHz、6〜8kHz、8〜10kHzの周波数帯域毎にフィルタ部44で抽出し、各周波数帯域でエンベロープ処理、周波数分析を行った。図11及び図12は、それぞれ0〜3kHz及び4.2〜6kHzの帯域での各周波数分析の結果の例である。外輪大きず品では、両方の帯域で外輪損傷成分が発生している一方、外輪小きず品では、0〜3kHzの周波数帯域において外輪損傷成分が発生しており、4.2〜6kHzの周波数帯域では外輪損傷成分が見られない。
【0052】
また、表1に各周波数帯域での周波数分析結果において、外輪損傷成分の発生の有無をまとめた。この結果より、軸受箱の各固有振動数を含む周波数帯域において、外輪大きず品では、全ての周波数帯域で外輪損傷成分が発生しており、外輪小きず品では、0〜3kHzの周波数帯域でのみ外輪損傷成分が発生している。このため、全周波数帯域において外輪損傷成分が発生している場合には損傷が大きく、特定の周波数帯域のみに損傷成分が発生している場合には損傷が小さいことが確認される。
【0053】
【表1】

【0054】
従って、第2実施形態によれば、軸受箱の固有振動数に対応した特定の周波数帯域のみを抽出し、各周波数帯域での周波数分析を行い、周波数帯域毎に損傷に起因した周波数成分の有無やレベルを確認することにより、実稼動状態で各構成部品の欠陥と損傷の程度を診断することができる。これにより、最適な部品の交換時期がわかり、効率的なメンテナンスが可能となる。
【0055】
次に、本発明の第3実施形態に係る異常診断装置について説明する。なお、第3実施形態は、図1に示された鉄道車両用転がり軸受装置に対して、図13に示された異常診断装置の信号処理系統が適用されるものである。
図13は、異常検出用センサ31の振動センサ32、温度センサ33を用いた信号処理系統図である。振動センサ32が発生した振動信号及び温度センサ33が発生した温度信号は、信号搬送手段34を介して演算部50に送られる。演算部50は、回転部品、静止部材、センサのいずれかの複数の固有振動数に対応する特定周波数帯域毎に、振動信号を割振っており、図8に示されたフィルタ部44の機能を含む。周波数帯域毎に割振られた振動信号及び温度信号は、コンパレータ51に入力される。
【0056】
コンパレータ51では、演算部50にて与えられた温度データと閾値設定部52に保存されている予め設定された温度閾値とが比較される。同時に、演算部50にて算出された振動データと閾値設定部52に保存されている振動閾値とが周波数帯域毎に比較される。異常判定部53は、コンパレータ51の比較結果を受け取り、温度データ信号値が温度閾値を超えた場合には、温度異常判定信号を結果出力部54へ出力する。結果出力部54は、温度異常のアラームを出力する。アラームは有線や無線で転送されて作動する。
【0057】
また、振動信号値が振動閾値を超えた場合、異常判定部53は振動異常判定信号を結果出力部54へ出力する。結果出力部54は、振動異常のアラームを出力する。アラームは有線や無線で転送されて作動する。このとき、閾値設定部52に保存される温度閾値及び振動閾値、異常判定部53において出力される温度・振動異常判定信号は、任意の時間内における実効値やピーク値を用いてもよい。
【0058】
本実施形態では、演算部50は前述した軸受箱12の各固有振動数を含む周波数帯域毎の振動実効値又は波高率を算出する。コンパレータ51は、正常な軸受(以下、正常品と称す。)の振動実効値又は波高率の正常値を閾値として、算出された各周波数帯域における演算結果と比較する。異常判定部53は比較結果に基づき、異常の有無あるいは損傷の程度を判定する。具体的に、全周波数帯域において算出された実効値又は波高率の正常値に対する比が大きい場合には損傷が大きいと判断し、特定の周波数帯域のみで算出された実効値又は波高率が大きい場合には損傷が小さいと判断する。
【0059】
ここで、第1及び第2実施形態で用いた複列円すいころ軸受11及び測定条件を用いて、軸受箱12の固有振動数に対応する各周波数帯域における正常品の振動実効値(正常値)に対する外輪大きず品と外輪小きず品の振動実効値の比を表2に示した。
【0060】
【表2】

【0061】
この結果により、軸受箱の各固有振動数を含む周波数帯域での振動実効値において、正常品に対する外輪大きず品の実効値の比は、何れの周波数帯域においても約10倍以上に大きいが、外輪小きず品では、0〜3kHz帯域のみで約5倍大きく、それ以外の周波数帯域では正常品のレベルとほとんど変わらない。このため、全周波数帯域において振動実効値が正常品に対して大きい場合には、損傷がかなり進行しており、特定の周波数帯域のみ発生している場合には、損傷が初期段階であることがわかる。従って、回転部品の異常の有無に加え、損傷の程度も判別することができる。
【0062】
また、本実施形態では、回転部品の回転状態に伴う振動と温度が同時に検出されている。これにより、軸受焼付き異常が発生した時には温度で検知でき、軸受軌道面の剥離、歯車の欠損、車輪のフラット磨耗等の異常が発生した場合には、振動で検知することができる。従って、部品が組み込まれている装置を分解することなく実稼動状態で複数の部品の欠陥と損傷の程度を同時に検査することができる。
なお、図13に示された本実施形態の信号処理系統は、第1実施形態の(1)〜(6)の信号処理によって比較照合が行われてもよい。
【0063】
なお、本発明に係る異常診断装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。本実施形態では、鉄道車両用の転がり軸受装置に異常診断装置が適用されたが、減速機用の転がり軸受装置に異常診断装置が適用されてもよい。 また、本実施形態では、固有振動数は予め固有振動数記憶部に記憶させておいたが、打撃法によって得られた測定結果を直接フィルタ部に取り込むようにしてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、振動センサによって検出され、フィルタ処理部にてフィルタ処理された振動信号を、ヘッドホンまたはスピーカに入力することにより異常の有無を音で確認する聴感判定を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態の転がり軸受装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る異常診断装置の信号処理系統図である。
【図3】軸受箱の固有振動数の測定結果を示す図である。
【図4】正常な転がり軸受の振動周波数の分析結果を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態における異常診断の処理フローを示すフローチャートである。
【図6】フィルタ処理なしのエンベロープ分析結果を示す図であり、(a)は正常品の分析結果であり、(b)は外輪傷品の分析結果である。
【図7】1〜3kHzのフィルタ処理後のエンベロープ分析結果を示す図であり、(a)は正常品の分析結果で、(b)は外輪傷品の分析結果である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る異常診断装置の信号処理系統図である。
【図9】外輪の損傷が大きい軸受の振動周波数の分析結果を示す図である。
【図10】外輪の損傷が小さい軸受の振動周波数の分析結果を示す図である。
【図11】0〜3kHzの周波数帯域のエンベロープ分析結果を示す図であり、(a)は外輪の損傷が大きい軸受の分析結果で、(b)は外輪の損傷が小さい軸受の分析結果である。
【図12】4.2〜6kHzの周波数帯域のエンベロープ分析結果を示す図であり、(a)は外輪の損傷が大きい軸受の分析結果で、(b)は外輪の損傷が小さい軸受の分析結果である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る異常診断装置の信号処理系統図である。
【図14】従来の軸受装置の断面図である。
【図15】従来の他の軸受装置の断面図である。
【図16】従来の更に他の軸受装置の断面図である。
【図17】従来の異常検知装置のブロック図である。
【図18】従来の他の異常診断装置のブロック図である。
【図19】従来の更に他の異常診断装置のブロック図である。
【図20】軸受の各部材の欠陥と各部材で発生する異常振動周波数の関係を示す関係式である。
【符号の説明】
【0066】
10 転がり軸受装置
11 複列円すいころ軸受(回転部品)
12 軸受箱(静止部材)
14 内輪
16 外輪
18 円すいころ(転動体)
25 車軸(回転軸)
27 平坦部
31 異常検出用センサ(センサ)
32 振動センサ
33 温度センサ
35,44 フィルタ部(フィルタ処理部)
36 固有振動数記憶部
37 エンベロープ処理部
38 周波数分析部
39 比較照合部
41 理論周波数計算部
42,45,53 異常判定部
43,54 結果出力部
50 演算部
51 コンパレータ(比較部)
52 閾値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部材に対して相対的に回転する回転部品の異常を診断する異常診断装置であって、
前記回転部品又は前記軸受箱に固定される、振動センサ、超音波センサ、AEセンサのうちの少なくとも一つのセンサと、
前記センサにより検出された信号の波形から前記回転部品と前記軸受箱と前記センサのいずれかの複数の固有振動数に対応した複数の特定周波数帯域を抽出するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部から転送されたフィルタ処理後の波形の実効値又は波高率を算出する演算処理部と、
前記演算処理部で算出された各周波数帯域における演算結果を正常値と比較する比較部と、
前記比較部での比較結果に基づき、異常の有無あるいは損傷の程度を診断する異常判定部と、
を備えることを特徴とする異常診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−192828(P2007−192828A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33797(P2007−33797)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【分割の表示】特願2004−74158(P2004−74158)の分割
【原出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】