説明

異形管の製造方法

【課題】形状精度に優れた高強度の異形管を製造する。
【課題を解決するための手段】金属管1を、加熱手段4に通過させて焼入れが可能な900℃以上の温度域に加熱し、次に金属管1の加熱部5を、ロール6又はダイス9からなる成形手段に通過させて異形管7を成形し、次に異形管7を、冷却手段8に通過させて冷却して焼入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高強度の異形管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異形管の製造方法として、例えば、特許文献1に開示されるように、円断面の金属管を、500〜700℃に加熱した後、成形ロール又はダイスに連続的に送り込み、温間で異形断面に成形する方法が知られている。
【0003】
そして、異形管の高強度化を図るために、冷間で異形管を成形した後に焼入れることが行われている。しかしながら、金属管を円断面から異形断面に成形したときに蓄積された残留応力が焼入れの際に開放されて、異形断面の形状精度が悪化する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献】特開平4−301033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑み、形状精度に優れた高強度の異形管を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、金属管を、加熱手段に通過させて焼入れが可能な900℃以上の温度域に加熱し、次に前記金属管の加熱部を、ロール又はダイスからなる成形手段に通過させて異形管を成形し、次に該異形管を、冷却手段に通過させて冷却して焼入れる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ダイスには、焼入れ温度調整手段が設けられている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記金属管の内部にマンドレルを挿入して前記異形管を成形する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、形状精度に優れた高強度の異形管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る異形管の製造方法を示す図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】図1におけるB−B線断面図であり、異形管の断面形状が(a)長円、(b)楕円、(c)矩形である例を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態に係る異形管の製造方法を示す図
【図5】本発明の第3の実施形態に係る異形管の製造方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を図1乃至5に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1乃至3に本発明の第1の実施形態に係る異形管の製造方法を示す。
【0013】
略真円断面のワークたる金属管1は、その外周面が複数の支持ロール2によって支持されている。そして、金属管1を、送出手段3により金属管1の上流側(図1の左側)から下流側(図1の右側)に送出して、支持ロール2の下流側に配置された高周波加熱コイル等の加熱手段4に通過させ、焼入れが可能な900℃以上の温度域に加熱する。次に高温状態にある加熱部5を、加熱手段4の下流側に配置された複数対の成形ロール6からなる成形手段に直ちに通過させて、例えば、図3(a),(b),(c)に示すように、長円断面、楕円断面、矩形断面の異形管7を成形する。次に高温状態にある異形管7を、成形ロール6の下流側に配置された冷却手段8に直ちに通過させて、冷却手段8から噴出された冷却水等により急速冷却することにより、焼入れされた異形管7を製造する。
【0014】
上記第1の実施形態において、例えば、以下の条件に設定して引張強さ1500MPa以上の異形管を製造した。直径31.8mm、肉厚1.0mm、引張強さ600MPa以下の金属管を使用した。また、高周波加熱コイルを周波数10KHz、出力200W、加熱温度900℃に設定し、冷却手段の冷却能力を50JRtに設定した。また、異形管を図3(a)に示す長円断面とする場合、金属管の断面周長と異形管の断面周長とが等しくなるように長円断面を1.4mm×15mmに設定し、それにしたがって、成形ロールの位置を設定した。
【0015】
本実施形態によれば、900℃以上の高温状態での焼入れ工程内(加熱工程から冷却工程の途中)で、金属管を真円断面から異形断面に成形することにより、異形断面成形による残留応力が金属管に蓄積することがなく、形状精度に優れた異形管を製造することができる。また、焼入れ工程における金属管の自重による撓みが、成形手段により補正されるため、軸精度に優れた異形管を製造することができる。
【実施例2】
【0016】
図4は本発明の第2の実施形態に係る異形管の製造方法を示す。なお、第1の実施形態と同一態様部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0017】
本実施形態は、成形手段として、ダイス9を使用した製造方法である。ダイス9は、金属管1の直径以上の入口部9aと異形断面の出口部9bを備え、入口部9aと出口部9bとがテーパ面9cを介して連通している。
【0018】
そして、加熱手段4を通過した金属管1の加熱部5を、ダイス9に通過させて異形管7に成形した後、冷却手段8に直ちに通過させて、冷却手段8から噴出された冷却水等により急速冷却することにより、焼入れされた異形管7を製造する。
【0019】
なお、ダイス9には、焼入れ温度調整手段10が設けられている。加熱手段4を通過した金属管1の加熱部5を、焼入れ温度調整手段10によってダイス9内において再加熱して、焼入れ温度を調整することができる。
【0020】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態と同様な効果を発揮できるとともに、焼入れ温度をダイス内で調整することができ、均一な焼入れが実現できる。
【実施例3】
【0021】
図5は本発明の第3の実施形態に係る異形管の製造方法を示す。なお、第1及び第2の実施形態と同一態様部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0022】
本実施形態は、金属管1の内部にマンドレル11を挿入して異形管部7を成形する方法である。マンドレル11は、ダイス9の内部に配置されており、ダイス9の内面よりも金属管1の肉厚分だけ小さい形状となっている。
【0023】
そして、加熱手段4を通過した金属管1の加熱部5を、ダイス9とマンドレル11の間に挿通させて異形管部7を成形した後、冷却手段8に直ちに通過させて、冷却手段8から噴出された冷却水等により急速冷却することにより、焼入れされた異形管7を製造する。
【0024】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態と同様な効果を発揮できるとともに、内周面の形状精度に優れた異形管を製造することができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に包含される。異形管の断面形状は、多角形や、曲率の異なる複数の円弧からなる複合円でも構わない。また、上記第1の実施形態において、マンドレルを使用しても構わない。
【符号の説明】
【0026】
1 金属管
2 支持ロール
3 送出手段
4 加熱手段
5 加熱部
6 成形ロール(成形手段)
7 異形管
8 冷却手段
9 ダイス(成形手段)
10 焼入れ温度調整手段
11 マンドレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管を、加熱手段に通過させて焼入れが可能な900℃以上の温度域に加熱し、次に前記金属管の加熱部を、ロール又はダイスからなる成形手段に通過させて異形管を成形し、次に該異形管を、冷却手段に通過させて冷却して焼入れることを特徴とする異形管の製造方法。
【請求項2】
前記ダイスには、焼入れ温度調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の異形管の製造方法。
【請求項3】
前記金属管の内部にマンドレルを挿入して前記異形管を成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の異形管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−121112(P2011−121112A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299370(P2009−299370)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(390010227)株式会社三五 (148)
【Fターム(参考)】