説明

異物除去方法及び多層体製造装置

【課題】本発明は、粘着ローラによる粘着物の付着を防止し、また、凹凸のある配線パターン表面の異物も除去可能な異物除去方法、及び前記方法を用いた多層体形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基材上の異物を除去する方法であって、基材と接した異物除去ブラシロールと、前記異物除去ブラシロールと接しながら連動する異物埋込ブラシロールを用い、異物を除去する工程を真空中で行うことによって、粘着ロールによる粘着物の付着を防止し、異物除去ブラシロールに付着した異物が基材に再付着するのを防止し、また、凹凸のある配線パターン表面の異物も除去可能な異物除去方法、及び前記方法を用いた多層体形成装置を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を積層する前に基材上の異物を除去するための方法、装置に関し、特に配線パターンのある基材の上に絶縁層などの積層体を貼り合わせ多層配線板を得る際に、異物を除去する方法、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線板の作製方法として、配線パターンのある基材の上に、積層した絶縁層ないしは導体層(以下、積層体)を貼り合わせる方法がある。積層体を貼り合わせる際に、配線パターンのある基材の表面に異物があると、得られる多層配線板(以下、多層体)表面に凹凸が現れ、高密度な配線層を得るのに有害となる。
【0003】
そこで、基材と積層体を平滑に貼り合わせるため、粘着ローラにより異物を除去したあとに積層体を張り合わせる装置を用いていた。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平06−170843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、粘着ローラでは配線パターンの凹凸に追従しにくいことから異物の除去が不十分であり、粘着ローラの粘着物が基材表面に転写することがあった。また、粘着ローラで採取した異物の除去工程がないので粘着ローラに付着した異物が基材表面に再付着することがあった。このとき、除去工程として粘着ローラに連動して回転し、粘着ローラ表面の異物を除去する除去ローラを備えるだけでは、除去ローラに付いた異物が粘着ローラに戻ってしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、粘着ローラによる粘着物の付着を防止し、また、凹凸のある配線パターン表面の異物も除去可能な異物除去方法、及び前記方法を用いた多層体形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、基材上の異物を除去する異物除去方法であって、基材上の異物を異物除去ブラシロールによって除去する工程と、前記異物除去ブラシロール表面の異物を前記異物除去ブラシロールに接しながら連動して回転する異物埋込ブラシロールによって異物除去ブラシロ−ルの内部に埋め込む工程とを繰り返し行うことを特徴とする異物除去方法。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の異物埋込ブラシロールのブラシの毛の長さは、異物除去ブラシロールと比較して、同じ若しくは短いことを特徴とする異物除去方法。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1記載の異物を除去する工程を真空中で行うことを特徴とする異物除去方法。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、少なくとも、ロール状の基材を搬送方向に送りだす基材巻き出し部と、前記基材に積層されるロール状の積層体を搬送方向に送り出す積層体巻き出し部と、前記基材に前記積層体をラミネートして多層体とするラミネータ部と、前記多層体を巻き取る多層体巻取り部とを備えた多層体形成装置であって、ラミネータ部の前に基材表面の異物を除去する異物除去部を更に備え、当該異物除去部は、基材表面の異物を除去する異物除去ブラシロールと、前記異物除去ブラシロールと接しながら連動し、異物除去ブラシロール表面の異物を内部に埋め込む異物埋込ブラシロールを備えていることを特徴とする多層体製造装置。
【発明の効果】
【0010】
上記請求項1に係る発明によれば、基材上の異物を除去する方法であって、基材と接した異物除去ブラシロールと、前記異物除去ブラシロールと接しながら連動して回転する異物埋込ブラシロールを用いることにより、凸凹のある配線パターン表面であっても、異物の除去を容易に行うこと可能となり、粘着ロールを用いないので、粘着ロールよる粘着物の付着を防止することができる。また、異物除去ブラシロールと接しながら連動して回転する異物埋込ブラシロールで異物除去ブラシロールの内部に異物を埋め込むことで、異物除去ブラシロールの表面上の異物を除去することができるため、基材に異物が再付着するのを防止することができる。
【0011】
上記請求項2に係る発明によれば、請求項1記載の異物埋込ブラシロールのブラシの毛の長さは、異物除去ブラシロールと比較して、同じ若しくは短いことを特徴とすることにより、異物埋込ブラシロールは異物除去ブラシロールに異物を埋め込み易くなるため、基材に異物が再付着するのを防止することができる。
【0012】
上記請求項3に係る発明によれば、請求項1記載の異物を除去する工程を真空中で行うことにより、空気中の異物の付着を防ぎ、また、基材と積層体を貼り合わせる際の気泡が発生せず質の良い多層体を提供することができる。
【0013】
上記請求項4に係る発明によれば、請求項4に記載の多層体形成装置を用いて加工することにより、異物が除去された高密度の多層体を提供することができる。
【0014】
本発明は、基材上の異物を除去する方法であって、基材と接した異物除去ブラシロールと、前記異物除去ブラシロールと接しながら連動して回転する異物埋込ブラシロールを用い、異物を除去する工程を真空中で行うことによって、粘着ロールによる粘着物の付着を防止し、異物除去ブラシロールに付着した異物が基材に再付着するのを防止し、また、凹凸のある配線パターン表面の異物も除去可能な異物除去方法、及び前記方法を用いた多層体製造装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、説明する。
【0016】
図1は本発明に係る多層体形成装置の一実施例の説明図である。基材巻き出し部1から、搬送方向に基材が流れ出し、ラミネータ部3にて、積層体巻き出し部2から流れ出た積層体と基材がラミネートされて多層体となり、多層体巻取り部4にて巻きとられるリールtoリールの多層体形成装置であって、ラミネータ部3の前段階に基材と接した異物除去ブラシロール5と、前記異物除去ブラシロール5と接しながら連動する異物埋込ブラシロール6が備わっている。
【0017】
本発明は基材と積層体をラミネータ部3にて張り合わせる前に、基材が異物除去ブラシロール5を通過するようになっており、基材と積層体を貼り合わせ後の異物の噛み込みによる多層体表面の凹凸を少なくする仕様になっている。
【0018】
異物除去ブラシロール5には接しながら連動して回転する異物埋込ブラシロール6が具備してあり、異物除去ブラシロール5の内部に異物を埋め込むことで、異物除去ブラシロール5の表面上の異物を除去することができるため、基材に異物が再付着しないようになっている。
【0019】
このとき、接するとは、異物除去ブラシロールの異物埋込ブラシロールの毛先同士が接する場合と、異物除去ブラシロールと異物埋込ブラシロールの毛が噛み合う場合を含む。
【0020】
また、図2に示すように、基材に対して下部方向に垂直に異物除去ブラシロール5と異物埋込ブラシロール6を配置してもよい。この場合、押し込みきれなかった異物を、異物が重力に引かれることにより、自動的に除去することができる。
【0021】
また、埋め込みの容易さを考慮すると、異物埋込ブラシロール6のブラシの長さは異物除去ブラシロール5と比較して、同じ若しくは短いことが、好ましい。また、異物埋込ブラシロール6のブラシの剛性は異物除去ブラシロール5と比較して、高いことが好ましい。
【0022】
異物除去ブラシロール5の材質としてはナイロン、ポリプロピレン等があり、より好ましくはナイロンである。また、異物除去ブラシロール5のブラシ径の太さはΦ0.25mmからΦ1.6mmまでの範囲が好ましく、Φ0.8mmがより好ましい。また、ブラシの毛の長さは5mmから30mmまでの範囲が好ましく、20mmがより好ましい。
【0023】
異物埋込ブラシロール6の材質としてはナイロン、ポリプロピレン等があり、より好ましくはナイロンである。また、異物埋込ブラシロール6のブラシ径の太さはΦ0.25mmからΦ1.6mmまでの範囲が好ましく、Φ1.2mmがより好ましい。また、ブラシの毛の長さは5mmから30mmまでの範囲が好ましく、15mmがより好ましい。
【0024】
異物除去ブラシロールの中心と異物埋込ブラシロールの中心との間の距離は、両ロール径の大きさの合計と、同じかもしくは短いことが好ましい。
【0025】
本発明において除去の対象となる異物としては、工程内の降下塵、人からの発生物、回路形成のレジスト片、等があり、そのサイズとしては0.1mm以下である。
【0026】
基材巻き出し部1は、ロール状の基材を搬送方向へ流す起点である。
【0027】
用いる基材は、銅貼絶縁シートを用いてもよい。
【0028】
積層体巻き出し部2は、ロール状の積層体をラミネータ部3へ流す起点である。
【0029】
積層体は絶縁層や導体層が積層されたものであって、接着剤フィルムや銅貼絶縁シート積層されたものを用いてもよい。
【0030】
ラミネータ部3は流れてきた基材と積層体を貼り合わせる部位である。
【0031】
また、図3のようにラミネータ部3を基材の両面に配置し、積層体を両面に張り合わせても良い。このとき、両面同時に貼り合わせることにより生産性が向上する。
【0032】
多層体巻取り部4は、ラミネータ部3にて基材と積層体が貼り合わされることによって形成された多層体を巻き取る部位である。
【0033】
また、真空中で一貫して処理を行うことで、空気中の異物の付着を防ぎ、基材と積層体を貼り合わせる際の気泡が発生しない。
【0034】
以下に本発明の多層体形成装置を用いた多層配線板の製造方法の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
両面銅箔付きポリイミドフィルム(エスパネックス(商品名)、新日鐵化学(株)製)を用いレーザアライメント用スルーホールをパンチングで穿孔した。パンチングで穿孔した両面銅箔付きポリイミドフィルムにレーザでビアを所定の位置にあけ、過マンガン酸等の処理液でレーザ加工残さを除去し、無電解めっきまたはダイレクトプレーティング法でレーザー加工した面から電解めっきを行なって表裏を導通させた。
【0036】
次に、表裏両面を洗浄した後にフォトレジストを両面の銅箔面に塗布し、マスクを通して、導体パターンに対応するパターンを露光した。現像後、塩化第2鉄溶液でエッチングし、銅箔から表裏それぞれに対応する配線パターンが形成された基板を得た。これを基材とし、多層体形成装置の基材巻き出し部に設置した。
【0037】
120℃、5kg/cmで接着剤フィルム(AS2700(商品名)、日立化成(株)製)と銅箔付きポリイミドフィルム(エスパネックス(商品名)、新日鐵化学(株)製)をラミネートにより積層させた。これを積層体とし、積層体巻き出し部に設置した。
【0038】
次に、異物除去ブラシロール(グットナイロン(商品名)東レ製 ブラシ径Φ0.8mm ブラシ長さ20mm)を用いて、基材の表裏両面の異物を取り除いた。
【0039】
このとき、異物とは、工程内の降下塵、人からの発生物、回路形成のレジスト片、等であった。
【0040】
前記異物除去ブラシロールには連動して回転する異物埋込ブラシロールが接しており、異物除去ブラシロール表面上の異物を内部に押し込むことにより、異物が基材に再付着するのを防止した。
【0041】
このとき、異物除去ブラシロールと異物埋込ブラシロールはお互いに2mm〜5mmブラシの毛が重なっており、異物除去ブラシロールの内部に異物埋込ブラシロールは、異物を埋め込むことができた。
【0042】
このとき、異物埋込ブラシロール(グットナイロン(商品名)東レ製 ブラシ径Φ1.2mm ブラシ長15mm)を用いた。
【0043】
次に、多層体形成装置のラミネータ部にて前記基材と前記積層体を120℃、5kg/cmで貼り合わせた。
【0044】
表面を洗浄した後にレジストを銅箔面に塗布し、導体パターンに対応するパターンを露光した。現像後、塩化第2鉄溶液でエッチングし、表裏それぞれに対応する銅箔パターンを形成した。
【0045】
剥離後、ソルダーレジスト(PSR4000(商品名)、太陽インキ製)を表裏銅箔面に塗布し、乾燥後、表裏に対応したパターンを露光・現像してソルダーレジストパターンを形成した。露出した銅箔には電解金めっきを約1.0μmおこない、目的とする多層配線板を得た。
【0046】
異物除去ブラシロールと接しながら連動して回転する異物埋込ブラシロールで異物除去ブラシロールの内部に異物を埋め込むことで、異物除去ブラシロールの表面上の異物を除去することができた。これにより、基材に異物が再付着するのを防止することができた。また、多層体形成装置のラミネータ部にて貼り合わせる際に表裏両面の異物が、異物除去ブラシロールを通ることにより取り除かれた。このため、異物の噛み込みによる凹凸は少なくなり、異物が除去された高密度の多層配線板を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る多層体製造装置の一実施例の説明図である。
【図2】本発明に係る多層体製造装置の一実施例の説明図である。
【図3】本発明に係る多層体製造装置の一実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基材巻き出し部
2 積層体巻き出し部
3 ラミネータ部
4 多層体巻き取り部
5 異物除去ブラシロール
6 異物埋込ブラシロール
7 支持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の異物を除去する異物除去方法であって、
基材上の異物を異物除去ブラシロールによって除去する工程と、
前記異物除去ブラシロール表面の異物を前記異物除去ブラシロールに接しながら連動して回転する異物埋込ブラシロールによって異物除去ブラシロ−ルの内部に埋め込む工程と
を繰り返すことを特徴とする異物除去方法。
【請求項2】
請求項1記載の異物埋込ブラシロールのブラシの毛の長さは、異物除去ブラシロールと比較して、同じ若しくは短いことを特徴とする異物除去方法。
【請求項3】
請求項1記載の基材上の異物を除去する工程を真空中で行うことを特徴とする異物除去方法。
【請求項4】
少なくとも、ロール状の基材を搬送方向に送りだす基材巻き出し部と、
前記基材に積層されるロール状の積層体を搬送方向に送り出す積層体巻き出し部と、
前記基材に前記積層体をラミネートして多層体とするラミネータ部と、
前記多層体を巻き取る多層体巻取り部を備えた多層体形成装置であって、
ラミネータ部の前に基材表面の異物を除去する異物除去部を更に備え、
当該異物除去部は、基材表面の異物を除去する異物除去ブラシロールと、
前記異物除去ブラシロールと接しながら連動し、異物除去ブラシロール表面の異物を内部に埋め込む異物埋込ブラシロールを備えていることを特徴とする多層体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−167700(P2007−167700A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364497(P2005−364497)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】