説明

疾患および障害の診断および処置のためのナノセル

本発明は、新規のナノセル組成物、並びにイメージング、診断及び処置方法におけるそれらの使用に関する。一実施形態において、イメージング方法のためにテーラーメイドされるナノセルは、脂質マトリックスにより包囲されるナノコアを含み、放射性核種コア、又は発光スペクトルを有するナノコアを含有するように修飾される。ナノセルは、血管新生部位(例えば腫瘍)で選択的に浸出し、正常な脈管構造を通過しないか、又は腫瘍を有さない細胞に浸入しないように、例えば約60nm超等にサイズ制限されている。この方法で、血管新生部位は検出することも、処置することもできる。別の実施形態において、ナノセルは、脳癌、喘息、グレーブズ病、嚢胞性線維症及び肺線維症の処置を含めた種々の処置方法のためにテーラーメイドされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119(e)の下で、米国仮特許出願番号第60/661,627号(2005年3月14日出願)および米国仮特許出願番号第60/708,012号(2005年8月12日出願)の利益を主張する。これらの内容は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規診断薬、悪性細胞の特定等のイメージング、好ましくは固形腫瘍の検出におけるそれらの使用、及びそのような診断薬の調製及び使用のためのキットに関する。又、標的細胞のための新規のナノセルプラットフォーム、疾患又は障害の処置におけるそれらの使用、及びそれらの調製及び使用のためのキットも包含される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
インビボ画像を取得する能力は、種々の疾患及び障害の処置、診断及び予後診断に役立っている。既に放射性イメージング等の幅広いイメージング薬が開発されているが、費用、複雑さ、及び所望の組織をターゲティングする特異的なリガンドを同定する必要性に悩まされている。
【0004】
現在のイメージング法の限界は、イメージングを行いたい組織又は細胞の種類に特異的にイメージング薬を送達できないことが多い点である。必要なのは、標的組織に対して特異的であるが、周囲の非標的細胞には感知できるほどに結合しない薬剤である。癌イメージングの領域において、現在の腫瘍特異的なイメージング方法は、正常細胞にも蓄積するイメージング薬によって妨害されてしまう。癌は、幅広い種々の悪性腫瘍を指しており、依然として大きな健康上の心配が残っている。癌の多くの特徴についての理解が深まっているにもかかわらず、癌の検出に利用可能な方法は、未だに限られた成功しか収められていない。可能な限り早期に悪性腫瘍を検出し、その重症度を評価する能力は、効果的な治療法の設計に極めて有用であると思われる。従って、効果的な治療法の存在を検出する方法、悪性細胞の存在を検出し、それらの病状における変化を理解する方法が望まれており、患者の疾患に合わせて癌の処置をテーラーメイドする能力に寄与することになる。
【0005】
Tc、Ru、Co、Pt、Fe、Os、Ir、W、Re、Cr、Mo、Mn、Ni、Rh、Pd、Nb及びTaを含む、種々の放射性金属(放射性核種)が既に調製されている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び米国特許出願第2002187099号を参照されたい。しかし、このような放射性核種を効率的に送達するためには、リガンドとの配位錯体を調製する必要がある。特定の放射性核種の特異的な配位の必要条件は、使用可能なリガンドに制約を与え、ひいては実行可能な標的であるものに制限を与える。理想的には、放射性核種イメージング複合体が、正常な組織への実質的な結合がない特異的なターゲティング、及び所望の標的、例えば、種々のタイプの腫瘍及び種々の病期へのターゲティング能力を示さなければならない。従って、当該技術分野では、簡易且つ一般的な手段により、イメージング薬を開発する、及び腫瘍等の標的部位にイメージング薬を効率的に送達する方法が依然として必要とされている。
【0006】
種々の疾患及び障害のためのテーラーメイド療法も必要である。現在、癌、糖尿病、喘息、嚢胞性線維症、及びその他の疾患及び障害のための治療法が数多く存在するが、現状の成績は全体として満足できるものではない。1つの問題として、現在利用できる、送達の方法、投与量及びタイミングが挙げられる場合がある。例えば、抗炎症療法は、喘息の発作を軽減する上で極めて重要な処置法であるが、急性発作時における抗炎症剤の送達は、その標的部位へ到達することができないために効果的でないことがある。この場合は、即効性及び少量の気管支拡張剤をまず投与した後、より長期間にわたり持続する抗炎症剤を投与することが好ましい。しかし、現在の治療法では、大量のコルチコステロイドと気管支拡張剤を同時に投与するしかなく、不必要に大量の医薬組成物を摂取するために処置の効果が得られず、有害な副作用がもたらされる。そのため、単独投与の投与量、タイミング及び送達のより良好なテーラーメイドを可能にする組成物及び方法が必要とされている。又、より良好な患者の薬剤服用遵守を達成すると共に、医療費を削減して、より個別化された処置計画を患者に提供するため、薬剤の組み合わせの簡便な少量投与、好ましくは単独投与も必要とされている。
【特許文献1】米国特許第4,452,774号明細書
【特許文献2】米国特許第4,826,961号明細書
【特許文献3】米国特許第5,783,170号明細書
【特許文献4】米国特許第5,807,537号明細書
【特許文献5】米国特許第5,814,297号明細書
【特許文献6】米国特許第5,866,097号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
現在、本発明者等は、インビボにおいて所望の標的を検出し、血管新生性疾患及び障害(例えば腫瘍)等の所望の疾患及び/又は障害を診断及び処置する新規の組成物及び方法を発見している。
【0008】
一実施形態において、イメージング方法で使用するための新規のナノセル組成物が開示される(「イメージングナノセル」又は「放射核種ナノセル」)。このようなイメージングナノセルは、脂質マトリックスにより包囲されるナノコアを含み(2004年3月2日出願の米国特許出願60/549,280号を参照)、放射性核種コア、又は発光スペクトルを有するナノコアを含むように修飾されている。別の実施形態において、新規のイメージングナノセルを使用してインビボで所望の標的を検出する方法が開示される。好ましい一実施形態において、ナノセルは、血管新生部位(例えば腫瘍)で選択的に浸出し、正常な脈管構造を通過しないか、又は腫瘍を有さない細胞に浸入しないように、例えば約60nm超等にサイズ制限されている。他の条件のために他のサイズを計算してもよい。好ましくは、放射性イメージング試薬を含むナノセルは、固形腫瘍の検出において使用される。
【0009】
ナノセルを含有する放射性核種は、放射性核種の内側のナノコア、及び関連するPEGを有する脂質の外側のナノシェルを含む。ナノシェルは又、所定の波長を使用して励起させることができ、所定の波長で発光する、量子ドットナノコア、又はガドリニウム若しくは蛍光色素コンジュゲートナノ粒子を含む。一実施形態において、ナノセルは、器官、組織又は細胞等の特定の標的と結合するリガンドを含有してもよい。一実施形態において、リガンドは、細胞表面上の炭水化物、ペプチド若しくは脂質又はそれらの誘導体と結合することのできる、ペプチド、炭水化物、脂質又はそれらの誘導体であってもよい。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、核ナノコアは、全体直径が約60nm〜約120nmである。又、核ナノセルは、直径が約60nm〜約120nmであってもよい。
【0011】
インビボにおいて血管新生疾患又は障害、特に腫瘍を検出する方法は、本発明に包含される。この方法で、個体は、約60nm超にサイズ制限された本発明の放射性核種ナノセルを投与される。
【0012】
本発明のイメージング組成物を合成する方法も開示される。
【0013】
一実施形態において、イメージングナノセルは更に、ナノセルが励起された時にのみ放出されるケージド治療薬を含む。或いは、放射線物質の診断的ナノセルは、非ケージド治療薬を含む。
【0014】
別の実施形態において、特定の器官、組織又は細胞へのイメージング薬の送達を更に向上させ、ターゲティングするために、標的リガンドがナノセルの外側表面(即ち、PEG又は脂質ナノシェル上)に結合している。
【0015】
本明細書に開示される方法では、イメージング薬の種々の投与経路を使用してもよい。幾つかの実施形態において、放射性イメージングナノセルは、経口投与、静脈注射、腹腔内注射、吸入及び腫瘍内投与からなる群から選択される経路を介して投与される。
【0016】
本明細書に開示される方法及び組成物は、癌並びに血管新生疾患及び障害等の疾患及び/又は障害の検出、処置及び診断のために、本明細書に開示の通りに放射性イメージング薬を使用する。
【0017】
別の実施形態においては、適切な治療薬を適切な時間にわたり関連する生体部位に直接且つ効率的に送達するようにテーラーメイドされる新規のナノセル(テーラーメイドナノセル)が開示される。これらのテーラーメイドナノセルを使用して疾患及び/又は障害を有する個体を処置する方法も包含される。
【0018】
好ましい一実施形態において、テーラーメイドナノセルは、ナノセルを適切な生体部位に送達して、それ自体が細胞機能のエフェクター又はモジュレーターとして作用する場合がある標的部分で表面修飾されている。この標的部分は、器官、組織又は細胞等の特定の標的に結合する。一実施形態において、この標的部分は、細胞表面上の炭水化物、ペプチド若しくは脂質又はそれらの誘導体と結合することのできる、ペプチド、炭水化物、脂質又はそれらの誘導体である。
【0019】
一般的に、本発明のテーラーメイドナノセルは、少なくとも1つの第一の治療薬を含む内側のナノコア、及びこの第一の治療薬と異なる少なくとも1つの第二の治療薬を含む、脂質からなる外側のナノシェルを含む。このナノシェルは又、関連するポリエチレングリコール(PEG)及び前述のような標的部分である場合もある。或いは、ナノコアは、ナノシェル中に含有される少なくとも1つの治療薬と実質的に同じである少なくとも1つの治療薬を含有する場合もある。この実施形態において、第一の治療薬を封入するマトリックスの組成物は、少なくとも1つの第二の治療薬を封入するマトリックスの組成物と異なっており、これらの治療薬が異なる時間及び/又は速度で放出される。
【0020】
一実施形態においては、本発明のテーラーメイドナノセルを使用して腫瘍等の所望の疾患又は障害を処置する方法が開示される。この実施形態において、ナノセルは、長時間作用するように選択的に選ばれた第一の治療薬を含有するナノコア、及び即時に且つより短い時間作用するように選択的に選ばれた、外側のナノシェル内に封入された第二の治療薬を含む。好ましい一実施形態において、テーラーメイドナノセルは、血管新生(例えば腫瘍、黄斑変性症、リウマチ様大動脈炎、乾癬、アテローム性動脈硬化症等)の部位で選択的に浸出し、正常な脈管構造を通過せず、腫瘍を有さない細胞に浸入しないように、約60nm超にサイズ制限されている。本発明の好ましい実施形態において、テーラーメイドナノセルは、全体直径が約60nm〜約120nmである。
【0021】
例えば、黄斑変性症を患う個体は、例えば、Avastin(登録商標)等の抗血管新生化合物、又はコンブレタスタチン等の血管標的薬剤を、例えば、αアドレナリン作動性作動薬等の別の治療薬と組み合わせて目に送達してもよい。別の実施形態においては、神経膠腫、神経細胞腫瘍、異型性グリオーマ及び髄膜腫等の脳腫瘍の処置のための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、テーラーメイドナノセル組成物は、コルチコステロイドからなる第一の治療薬を有するナノコア、及び化学療法剤からなる第二の治療薬を有するナノシェルを含む。このコルチコステロイドは、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾン、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾロン等からなる群から選択される場合がある。同様に、化学療法剤は、ニトロソウレア系の化学療法剤、例えば、BCNU(カルムスチン)、CCNU(ロムスチン)、PCV(プロカルバジン、CCNU、ビンクリスチン)、又はテモゾロミド(Temodar)から選択される場合がある。好ましくは、第一の治療薬は、コルチコイドの持続性又は叙放性の動態をもたらすように、所定の比率でPLGA等の生分解性ポリマー中に封入される。この化学療法剤は又、化学療法剤のより即時的であるが持続的な放出をもたらすように、特定の比率で生分解性ポリマー中に封入される。このナノセルは又、抗血管新生剤又は血管標的剤を含有する場合もある。
【0022】
又、テーラーメイドナノセル組成物を使用して脳腫瘍を処置する方法も開示されている。この方法で、個体は、本発明のテーラーメイドナノセルを、全身に投与されるか、又は必要な部位に直接注射することによって投与される。好ましくは、腫瘍が切除され、その際切除部位にテーラーメイドナノセルが送達される。
【0023】
別の実施形態においては、喘息の処置のための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、テーラーメイドナノセル組成物は、コルチコステロイドからなる第一の治療薬を有するナノコア、及び気管支拡張剤からなる第二の治療薬を有するナノシェルを含む。特定の薬剤の送達を更に微調整するために、ナノセルの周囲に追加の層を加えることもできる。コルチコステロイドは、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾロン等からなる群から選択される場合がある。気管支拡張剤は、イプラトロピウム等の抗コリン作動薬、又はアルブテノール、メタプロテレノール、サルメテロール、ピルブテロール、又はレバルブテラール等のβ作動薬からなる群から選択される場合がある。喘息の処置のための組成物は、通常利用できるよりも少量のコルチコステロイドの個体への投与を可能にする。何故なら、ナノシェル内の気管支拡張剤が、コルチコステロイドの生物学的作用部位を利用できるように最初作用するためである。一実施形態において、ナノコアは、PLGA等の生分解性ポリマーを含み、ナノシェルは乳糖等の水溶性担体を含む場合がある。サイズは約102〜約104nmである場合がある。
【0024】
このテーラーメイドナノセル組成物を使用した喘息の処置方法も開示される。一方法で、個体は、本発明のテーラーメイドナノセルを吸入を介して投与される。
【0025】
別の実施形態においては、グレーブズ病の処置のための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、テーラーメイドナノセル組成物は、イオパノ酸/イポダートナトリウムからなる第一の治療薬を有するナノコア、及び例えばメチマゾール、カルビマゾール又はプロピルチオウラシル等の抗甲状腺薬からなる第二の治療薬を有するナノシェルを含む。或いは、第一の治療薬は、ヨウ素123等の放射性核種である場合もある。同様に、ナノシェル中の第二の治療薬も、β遮断薬(即ち、プロパノロール)である場合もある。別の実施形態において、グレーブズ病の処置のための組成物は、ナノコア中に1つ以上の治療薬を、ナノシェル中に1つ以上の治療薬を含む場合がある。
【0026】
テーラーメイドナノセル組成物を使用したグレーブズ病の処置方法も開示される。この方法で、個体には、本発明のテーラーメイドナノセルを腸管外吸収又は経腸経路を介して全身に投与される。
【0027】
別の実施形態においては、嚢胞性線維症の処置のための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、テーラーメイドナノセル組成物は、抗生物質からなる少なくとも1つの治療薬を有するナノコアを含む。抗生物質に加えて、個のコアは又、任意の気管支拡張剤又はステロイドを含む場合もある。この実施形態において、ナノシェルは、組換え型ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase)からなる少なくとも1つの第二の治療薬を含む。
【0028】
テーラーメイドナノセル組成物を使用した嚢胞性線維症の処置方法も開示される。この方法で、個体は、本発明のテーラーメイドナノセルを吸入を介して投与される。
【0029】
別の実施形態においては、特発性肺線維症の処置のための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、テーラーメイドナノセル組成物は、コルチン等の抗線維薬からなる少なくとも1つの第一の治療薬を有するナノコア、及び例えばコルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾロン等のコルチコステロイドからなる少なくとも1つの第二の治療薬を有するナノシェルを含む。
【0030】
テーラーメイドナノセル組成物を使用した特発性肺線維症の処置方法も開示される。この方法で、個体は、本発明のテーラーメイドナノセルを吸入を介して投与される。
【0031】
本発明のテーラーメイドナノセル組成物を合成する方法も開示される。
【0032】
新規のナノセルを構築し、本発明の方法を実施するのに必要な試薬を有するキットも提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明の詳細な説明
イメージング組成物、及び疾患又は障害の検出方法
現在、本発明者等は、イメージング薬及び放射性核種を所望の標的に容易に送達するための組成物及び方法を発見している。これらの組成物及び方法はナノセルを利用する。放射性核種は、後述するような種々の手段によってナノセルに結合してもよい。本発明の方法を使用して、このリガンドがイメージングする所望の組織を確実にターゲティングする必要なしに、量子ドット又はイメージング薬又は放射性核種をリガンドと共にナノセルに複合体化してもよい。例えば、放射性核種とナノセルの複合体は所望の組織をターゲティングし、リガンドと放射性核種の複合体をターゲティングしないため、このリガンドがどの標的と結合するかに関係なく、Tc−99m等の放射性核種と共に容易に複合体化するリガンドを使用して、ナノセルに結合してもよい。リガンドと放射性核種の複合体は、放射性核種をナノセルに結合するために使用される。
【0034】
別の実施形態において、ナノセルは、脂質マトリックス又はナノシェル中で核となる発光量子ドット又は蛍光ナノコアを含む。脂質ナノシェルはペグ化され、特定の組織をターゲティングするリガンド又はペプチドは、脂質又はPEGと結合してもよい。
【0035】
これは幾つかの手段によって実施してもよい。例えば、イメージングナノセルを特定の標的に送達するために、指定のサイズ及び/又はサイズ範囲のナノセルを使用してもよい。殆どの腫瘍は、それらの脈管構造中に正常細胞よりも大きい孔(400〜600nm)を有する。従って、正常細胞上の孔よりも大きいサイズ範囲、例えば、好ましくは少なくとも55nm、更に好ましくは少なくとも60nmを有する、Tc−99mナノセル等の放射性核種ナノセルを使用することにより、悪性の器官、組織及び細胞をターゲティングしてもよい。好ましいサイズ範囲は60〜600nm、例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100であり、600nm以下である。
【0036】
別の実施形態において、放射性核種ナノセルは、特定の細胞をターゲティングするナノセル上のリガンドを使用することによって、特定の組織にターゲティングされる。好ましい実施形態において、リガンドは、脂質ナノシェル又はPEG上のナノセルと結合する。このような実施形態において、ナノセルのサイズ範囲は5〜50nm、好ましくは30〜45nmである。
【0037】
これらのイメージング組成物は、広範な用途で使用してもよい。例えば、診断及び予後診断のために行う、特定の組織における接種の変化のスクリーニングに使用してもよい。一実施形態においては、インビボにて腫瘍等の血管新生疾患及び障害を観察してもよい。これが使用されると思われる他の血管新生疾患には、関節炎、組織再生、糖尿病性網膜症等がある。
【0038】
より具体的には、ナノセル(2004年3月2日出願の米国特許出願第60/549,280号を参照)等のナノ粒子が、容易にイメージングすることができる放射性ナノコアを含むように修飾される。一実施形態において、放射性核種は、ポリマー、好ましくは生分解性ポリマーに化学的に結合又は吸着する。1つの好ましい放射性核種はTc−99mであるが、何れの放射性核種を使用してもよい。好ましい一実施形態において、放射性核種は、血管新生部位(例えば腫瘍)で選択的に浸出し、正常な脈管構造を通過しないか、又は腫瘍を有さない組織に侵入しないように、約60nm超にサイズ制限されている。ナノセルを含有する放射性核種は、放射性核種の内側のナノコア、関連するPEGを有する脂質の外側のナノシェルを含む。従って、一実施形態において、本発明は、新規の放射イメージング薬、及び固形腫瘍の検出又は処置におけるそれらの使用方法を記載する。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、核のナノセルは、全体直径が約60nm〜約120nmである。好ましくは、サイズは約60nm〜約120nmであり、更に好ましくは約60nm〜約80nmであるか、又は約60nm〜90nmである。或いは、修飾された放射性ナノセルは、全体直径が約60nm〜約600nmである。
【0040】
イメージングナノセルの組成物
本発明の放射性ナノセルは、1)イメージング薬、好ましくは放射性核種を含む内側のナノ粒子(ナノコアとしても知られる);2)脂質からなる外側のナノシェル;及び3)ポリエチレングリコール(PEG)を含む。例を図1に示す。
【0041】
ナノセルは更に、特定の器官、組織又は細胞にナノセルを特異的にターゲティングする標的部分又はリガンドを含む場合もある。このような標的リガンドは、ナノセルの送達を更に向上させターゲティングするために、ナノセルの外側表面(即ち、PEG又は脂質ナノシェル上)と結合している場合がある。
【0042】
別のタンパク質(例えば受容体)への特異的な結合、リガンド(例えば、cAMP、シグナル伝達分子)への結合、及び核酸(例えば、DNA及び/又はRNAへの配列特異的結合)への結合、糖への結合等の、所望の結合特性を有するタンパク質が使用される場合がある。ハプテン、酵素、抗体、抗体フラグメント、サイトカイン、受容体、ホルモン、並びにナノセルに特定の表面認識機能を与えるその他の低分子量タンパク質、ポリペプチド又は非タンパク性分子が使用される場合がある。表面分子を脂質に結合する技法は、当業界で既知である(例えば、米国特許第4,762,915号を参照)。
【0043】
例えば、ナノセルは、異なる組織において癌関連炭水化物をターゲティングするようにテーラーメイドしてもよい。悪性細胞の炭水化物パターンは、正常細胞のものとは異なる。従って、所望の細胞に選択的に結合するために、異なる炭水化物を対象とするリガンド又は抗体を使用してもよい。一実施形態において、ナノスケールの足場は、癌関連炭水化物とのコンジュゲートの選択性及び親和性を向上させるために、多価の様式で炭水化物結合分子を示すために使用される。これらの足場は、異なるイメージングプローブにコンジュゲートする場合がある。これは、悪性組織のコンジュゲートの選択性をイメージングするか、又は悪性細胞を処置するために使用してもよい。一実施形態において、合成ペプチドは、癌細胞の表面上の癌関連炭水化物を選択的にターゲティングするように、多価の様式でナノセル上に示される。例えば、多くの癌関連ムチンは、コアタイプ1、Tomsen−Fridenreich抗原(TF抗原)、並びに正常細胞ではシアル化されるが、癌細胞ではシアル化されないことが見出されている免疫優勢のGalβ1−3Gal−Nacα二糖類の上昇を示す。TF抗原結合ペプチドは、ナノセルの表面上(例えばナノシェル上)のポリエチレングリコール(PEG)スペーサーの末端において挿入されるマレイミドに選択的にコンジュゲートするためにN末端におけるチオール官能基を取り込むために利用され、修飾される。量子ドットとペプチドの間のPEGスペーサーは、ペプチドの柔軟性を向上させることで、細胞表面上の抗原との多価の相互作用を促進する。別の実施形態において、リガンドはナノコアに取り込まれる場合がある。
【0044】
一実施形態において、合成ペプチドは、所望の組織をターゲティングするために、ナノセル中に取り込まれる。ペプチド、例えば、配列番号1(I−V−W−H−R−W−Y−A−W−S−P−A−S−R−I)又はPrPUPは、当業者に既知の通りに、例えば、自動ACTペプチド合成装置を使用することによってPAL−PEG−PS樹脂上で合成される場合がある。ペプチドは、C末端アミド及びN末端アセチル誘導体として調製される場合がある。システインを除く全ての残基に、標準的な9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学及びHBTU/HOBT活性化が使用される場合がある。ラセミ化を防止するため、塩基の非存在下にて、予め活性化されたFmoc−L−Cys(Trt)−OPfpが使用される場合がある。
【0045】
特に、ナノセルは、細胞表面及び/又は細胞内の両方で細胞標的と直接的且つ効率的に相互作用する部分をナノセルの表面が含むように修飾される場合がある。一実施形態において、標的部分は、細胞標的と独立して相互作用する2つの異なる標的部分を含む場合がある。例えば、第一の標的部分は第一の細胞標的と相互作用し、第二の標的部分は細胞内標的等の第二の細胞標的と相互作用する。或いは、標的部分は、細胞標的と依存的に相互作用する2つの異なる標的部分を含む。例えば、第一及び第二の標的部分は、1つの細胞標的をターゲティングする。本発明の別の実施形態において、ナノセルは、ホモ又はヘテロ二量体化又は三量体化された細胞受容体と特異的に相互作用する標的部分を含む。この実施形態において、標的部分は、二量体化又は三量体化された細胞受容体に特異的であり、例えば、非二量体化又は非三量体化形態等の別の形態とは相互作用しない。
【0046】
又、特定の粒子上の標的部分の数を制御することもできる。例えば、一実施形態において、調整することもできる。例えば、一実施形態において、粒子は1〜50個の標的部分、及びそれらの間の任意の組み合わせを含有すると思われる。所望の多量体化複合体を形成する上で十分な量の標的部分、好ましくは6〜12個の標的部分を含有するように粒子をテーラーメイドしてもよい。
【0047】
好適な標的部分は、例えば、細胞受容体への選択的結合、及びこのような活性化及び阻害等の結合の結果を試験するために、当業者に既知の方法によって同定される場合がある。受容体結合は、例えば、同族の受容体を発現する細胞を使用した置換/競合結合アッセイにより評価される場合がある(Ilag, et al., J. Biol. Chem. 269:19941−19946及びその中の参考文献;Ruden, et al., Biol. Chem 217:5623−5627を参照)。
【0048】
前述の標的部分及び方法は、疾患及び/又は障害の検出に加えて、疾患及び/又は障害の処置にも使用されるナノセルをターゲティングするために使用される場合があると理解される。
【0049】
更なる実施形態において、ナノセルは、診断イメージングを提供するだけでなく、ナノセルが治療薬としても使用されるように、治療薬又はケージド治療薬を含有してもよい。例えば、本発明は、本発明の診断的ナノセルと共に、任意の従来の化学療法剤等の抗癌化学療法剤、又はレニウム等の治療的放射性核種を含めることによって実施してもよい。極めて多くの化学療法プロトコールが本発明の組成物に組み込むことができると、当業者の念頭に浮かぶことになる。アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン及び拮抗薬、放射性同位、並びに天然産物を含めた何れかの化学療法剤を使用してもよい。例えば、本発明のナノセルは、ドキソルビシン及びその他のアントラサイクリン類似体等の抗生物質、シクロホスファミド等のナイトロジェンマスタード、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ヒドロキシウレア、パクリタクセル(Taxol(登録商標))並びに天然及び合成の誘導体等のピリミジン類似体と共に投与してもよい。別の例として、腫瘍に性腺刺激ホルモン依存及び性腺刺激ホルモン非依存細胞が含まれる、胸部腺癌等の混合腫瘍の場合、化合物は、ロイプロリド又はゴセレリン(LH−RHの合成ペプチド類似体)と共に投与してもよい。更に、混合した本発明のイメージング治療ナノセル組成物は、以下に更に詳細に記載する通り、特定の放出動態のためにテーラーメイドされる場合がある。例えば、治療薬は、診断、検出及び処置する疾患又は障害に依存して徐放又は迅速放出のために製剤化される場合がある。
【0050】
治療薬を本発明の診断的ナノセルに組み込む方法は、当業界で周知であり、以下に詳細に記載されている。例えば、治療薬をナノセル又は脂質二重層に組み込む方法は、2004年3月2日出願の米国特許出願第60/549,280号、及び2005年2月3日出願の米国特許出願第20050025819号に記載されている。
【0051】
ナノ粒子の調製
好ましくはナノセルを使用するが、任意のナノ粒子を使用してもよい。これは、放射性核種とコンジュゲートする内側のナノコア又はナノ粒子を最初に調製することによって達成される。このナノ粒子は、量子ドット、又はその他の十分なサイズ及び組成のナノ粒子である場合がある。
【0052】
ナノコアは、好ましくはマトリックス中で結合される放射性核種複合体を含有する。マトリックスは、好ましくは生分解性及び生体適合性のポリマーマトリックスである。ナノコアを調製するのに有用なポリマーには、合成ポリマー及び天然ポリマーが含まれる。これらのナノコアは、脂質、タンパク質、炭水化物、単純な複合体及びポリマー(例えば、PLGA、ポリエステル、ポリアミド、ポリ炭水化物、ポリ(β−アミノエステル)、ポリカルバミド、多糖類、ポリアリール、ポリ尿素、ポリカルバメート、タンパク質等)等の物質の何れか、並びに当業界で既知の方法(例えば、複乳剤、噴霧乾燥、位相転移等)の何れかを使用して調製される。診断薬は、ナノコア中に取り込まれてもよければ、帯電を介して共有結合したり、イオン結合したり、又はリンカー結合を介して結合してもよい。
【0053】
本発明の放射性ナノセルに関連し、「ナノメートル粒子」又は「ナノ粒子」又は「ナノコア」は、直径ナノメートル(nm)範囲の、金属若しくは半導体粒子、又は生分解性ポリマーから合成されるナノ粒子を意味する。ナノコア中で有用なポリマーは、100g/モル〜100,000g/モル、好ましくは500g/モル〜80,000g/モルの範囲の平均分子量を有する。好ましい実施形態において、ポリマーは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε−カプロラクトン、ε−ヒドロキシヘキサン酸、γ−ブチロラクトン、γ−ヒドロキシ酪酸、δ−バレロラクトン、δ−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸及びリンゴ酸からなる群から選択される単量体から合成されるポリエステルである。更に好ましくは、生分解性ポリエステルは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε−カルロラクトン、及びε−ヒドロキシヘキサン酸からなる群から選択される単量体から合成される。最も好ましくは、生分解性ポリエステルは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、及びグリコール酸からなる群から選択される単量体から合成される。ナノコア中ではコポリマーも使用される場合がある。コポリマーには、ABAタイプのトリブロックコポリマー、BABタイプのトリブロックコポリマー、及びABタイプのジブロックコポリマーが含まれる。ブロックコポリマーは、疎水性のAブロック(例えばポリエステル)、及び親水性のBブロック(例えば、ポリエチレングリコール)を有する場合がある。
【0054】
ナノ粒子は、最小直径約5nm及び最大直径約600nmの脂質ナノシェル中に封入することができる任意のサイズである場合がある。
【0055】
この金属は、任煮の金属、金属酸化物又はそれらの混合物であってもよい。本発明に有用な金属の一部の例には、金、銀、白金及び銅が含まれる。金属酸化物の例には、酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化銅、酸化マンガン及び酸化ニッケルが含まれる。
【0056】
金属又は金属酸化物は磁性であってもよい。磁性金属の例には、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。金属の磁性混合物の例は、鉄及び白金の混合物である。磁性金属酸化物の例には、例えば、酸化鉄(例えば、マグネタイト、ヘマタイト)、及びフェライト(例えば、マンガンフェライト、ニッケルフェライト、又はマンガン−亜鉛フェライト)が含まれる。
【0057】
好ましくは、ナノ粒子には半導体が含まれる。半導体の幾つかの例には、II−VI族、III−V族、及びIV族半導体が含まれる。II−VI族半導体には、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、及びそれらの混合物が含まれる。III−V族半導体には、例えば、GaAs、GaN、GaP、GaSb、InGaAs、InP、InN、InSb、InAs、AlAs、AlP、AlSb、AlS、及びそれらの混合物が含まれる。IV族半導体には、例えば、ゲルマニウム、鉛及びケイ素が含まれる。
【0058】
この半導体には、前述の族の何れかを含めた1つ以上の族由来の半導体の混合物も含まれる場合がある。
【0059】
III−V族半導体を含むナノ粒子の形成は、米国特許第5,751,018号及び米国特許第5,505,928号に記載されている。米国特許第5,262,357号には、II−VI族及びIII−V族半導体ナノ粒子が記載されている。これらの特許は又、結晶成長停止剤を使用した形成時における半導体ナノ粒子のサイズの調節についても記載している。米国特許第5,751,018号、米国特許第5,505,928号及び米国特許第5,262,357号の明細書は、本明細書に参考として援用される。
【0060】
周期表のII−VI、III−V及びIV族由来の元素からなる多くの半導体は、量子サイズの粒子として調製されており、その物性において量子閉じこめ効果を示し、本発明の組成物において使用してもよい。量子ドットとして使用するのに好適な代表的な物質には、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、AlS、AlP、AlAs、AlSb、PbS、PbSe、Ge及びSi並びにそれらの三元及び四元混合物が含まれる。量子ドットには更に、より大きなバンドギャップを有する半導体の保護膜層が含まれる場合もある。半導体ナノ結晶は、その均一なナノメートルサイズによって特徴付けられる。このような粒子が市販されており、本発明の組成物及び方法で使用される場合がある。
【0061】
一実施形態において、ナノ粒子は、コア/シェル構造において使用される。第一の半導体ナノ粒子は、例えば約2nm〜約10nmの直径範囲のコアを形成する。別の半導体ナノ粒子物質のシェルは、コアナノ粒子の上に、例えば厚さ1〜10個の単分子層に成長する。例えば厚さ1〜10個の単分子層のCdSシェルがCdSeのコアの上にエピタキシャル成長すると、室温におけるフォトルミネセンス量子収量の劇的な上昇が見られる。
【0062】
コア/シェル構造のナノ粒子のコアは、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaTe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、GaAs、GaN、GaP、GaSb、InGaAs、InP、InN、InSb、InAs、AlAs、AlP、AlSb、AlS、PbS、PbSe、Ge、Si、又はそれらの混合物を含んでもよい。ナノ粒子のシェルに有用な半導体の例には、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaAs、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAS、AlN、AlP、AlSb、又はそれらの混合物が含まれる。好ましくは、コア/シェルは、CdSe/CdS、CdSe/ZnS、又はCdTe/ZnSを含む。このようなコア/シェルナノ粒子の形成については、主題が参考として本明細書に組み入れられている、Peng, et al., Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanoparticles with Photostability and Electronic Accessibility, Journal of the American Chemical Society, (1977) 119:7019−7029に更に詳細に記載されている。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、ナノコアは水溶性である。Bawendi, et al., (J. Am. Chem. Soc., 115:8709, 1993)に記載される量子ドットは、ヘキサン又はピリジン等の有機溶媒中においてのみ可溶性又は分散性である。
【0064】
ナノコアは、ナノ粒子を調製する当業界で既知の何れかの方法を使用して調製される場合がある。このような方法には、噴霧乾燥、エマルジョン溶媒蒸発、複乳剤、及び転相が含まれる。加えて、ナノスケールの粒子、マトリックス又はコアが、ナノセル中のナノコアとして使用される場合もある。ナノコアは、ナノシェル(米国特許第5,858,862号を参照)、ナノ結晶(米国特許第6,114,038号を参照)、量子ドット(米国特許第6,326,144号を参照)、及びナノチューブ(米国特許第6,528,020号を参照)である場合もあるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明の極めて重要な特徴は、核となるナノセルのサイズである。従って、放射核種のナノコアは、ナノセルの全体直径が60nm以上になるようにサイズ制限される。ナノ粒子をサイズ制限する方法は当業界で既知である。一般的に、(放射性核種を使用するか否かにかかわらず)調製したナノコアは、特定のサイズ範囲内のナノコアを回収するために、ろ過、ふるい分け、押出又は超遠心分離によって分留される場合がある。1つの効果的なサイジング法には、選択された均一の孔径を有する一連のポリカーボネート膜にナノコアの水性懸濁液を押し出すことを伴い;この膜の孔径は、その膜への押出によって生成されるナノコアの最大径とほぼ一致することになる。例えば、本明細書に参考として援用される、米国特許第4,737,323号を参照されたい。別の好ましい方法は、所定のサイズの画分を単離するために行われる所定の速度の超遠心分離である。
【0066】
ナノ粒子及び放射性核種
放射性核種は、量子ドット又はナノ粒子と組み合わせられ、ナノコアを形成する。好ましい実施形態においては、テクネチウム−99m(99mTc又は99m−Tc)が、その優れた物理的減衰特性及びその化学のために使用される。イメージングのためのその他の放射性核種が既知であり、使用される場合がある。代表的な診断的放射性核種には、(95)Tc、(111)In、(62)Cu、(64)Cu、(67)Ga、(48)F及び(68)Gaが含まれる。
【0067】
診断の目的には、Tc−99mが好ましい同位元素である。その6時間の半減期及び140keVのγ線発光エネルギーは、当業者のために十分確率されている機器及び方法を使用したγシンチグラフィーに理想的である。レニウム同位元素も、γシンチグラフィーに適合するγ線発光エネルギーを有するが、生存組織により有害な高エネルギーのβ粒子も発光する。しかし、これらのβ粒子発光は例えば癌放射線療法等の治療目的に使用してもよく、従って、診断及び治療を組み合わせた目的のために、本発明の組成物及び方法で使用される場合がある。
【0068】
テクネチウムをリガンドにコンジュゲートする代表的な方法は、例えば、それぞれ開示内容全体が参考として本明細書に組み入れられている、米国特許第4,826,961号;欧州特許出願第1293214号;Cerqueira, et al., Circulation, Vol.85, No.1, pp.298−304 (1992);Pak, et al., J. Nucl. Med., Vol.30, No.5, p.793, 36th Ann. Meet. Soc. Nucl. Med. (1989);Epps, et al., J. Nucl. Med, Vol.30, No.5, p.794, 36th Ann. Meet. Soc. Nucl. Med. (1989);Pak, et al., J. Nucl. Med., Vol.30, No.5, p.794, 36th Ann. Meet. Soc. Nucl. Med. (1989);及びDean, et al., J. Nucl. Med., Vol.30, No.5, p.794, 36th Ann. Meet. Soc. Nucl. Med. (1989)に開示されている。
【0069】
これらのテクネチウム放射性核種は、好ましくは、過テクネチウム又は過レニウム酸及び薬学的に許容されるカチオンの化学形態である。過テクネチウム酸塩形態は、好ましくは、市販のTc−99mジェネレーターから得られるような過テクネチウム酸ナトリウムである。本発明の放射性薬剤の調製に使用される過テクネチウム酸の量は、0.1mCi〜1Ci、更に好ましくは1〜200mCiの範囲であってもよい。
【0070】
放射性核種は、種々の方法で、予め形成されたナノコアのエマルジョンに供給されてもよい。例えば、(99)Tc−過テクネチウム酸は、過剰な塩化第一スズと混合され、予め形成されたナノセルのエマルジョン中に取り込まれる。塩化第一スズを第一スズオキシネートに置換してもよい。種々の放射性核種を本発明のナノセルに付着する手段は、当業界で理解されている。
【0071】
一般的に、放射性核種のナノコアは、放射性核種を合成の末期に導入する方法によって調製される。これは、最大の放射化学収量を可能にし、放射性物質の取扱時間を短縮する。半減期が短い同位元素を扱う際に主に考慮すべき事項は、合成法及び精製法を実施するために必要な時間である。放射線医薬品の合成のためのプロトコールは、それぞれ開示内容全体が参考として本明細書に組み入れられている、Tubis and Wolf, Eds., “Radiopharacy”, Wiley−Interscience, New York (1976);Wolf, Christman, Fowler, Lambrecht, “Synthesis of Radiopharaceuticals and Labeled Compounds Using Short−Lived Isotopes”, in Radiopharmaceuticals and Labeled Compounds, Vol 1, p.345−381 (1973)に記載されている。
【0072】
レニウム−186m及び特にテクネチウム−99等の放射性核種は通常、スルフヒドリル基との比較的安定した結合を介して、放射性核種複合体を形成するリガンド、特にペプチドリガンドにコンジュゲートする。しかし、スルフヒドリル基の結合を生じるためには、レニウム−186m及びテクネチウム−99mが+3、+4又は+5酸化状態でなければならない。テクネチウム−99mは、その過テクネチウム酸塩、即ち、+7の酸化状態を有するテクネチウムの形態として最も容易に入手できるため、殆どのテクネチウム−99m種が、スルフヒドリル基との反応前に還元されなければならない。
【0073】
過テクネチウム酸−99m塩の還元による生体分子のスルフヒドリル基の標識化は、テクネチウム−99mの還元試薬として第一スズ(Sn2+)イオンを使用して実施される。特に、酸性溶液から形成される第一スズイオンの水溶液(D.W. Wong, et al., Int. J. appl. Radiat. Isotopes, 29, 251 (1978);A. Schwarz, et al., Abstract No.695 from the “Proceedings of the 34th Annual Meeting,” J. Nucl. Med., Vol.28, No.4, April 1987;B.A. Rhodes, Nucl. Med. Biol., 18(7), 667 (1991);G.L. Griffiths, et al., Bioconjugate Chem., 3(2), 91 (1992);Immunomedics, Inc.の欧州特許出願第403225号;Rhodesの米国特許第4,305,992号及びChang等の米国特許第5,334,708号);酒石酸アニオンの存在下における第一スズイオン(B.A. Rhodes, et al., J. Nucl. Med., 27(5), 685 (1986);G.L. Griffiths, et al., Nucl. Med. Biol., 21(4), 649 (1994);Shocat等の米国特許第5,061,641号;Reno等の米国特許第4,877,868号;Rhodesの米国特許第5,346,687号、第5,277,893号、第5,102,990号及び第5,078,985号;Crockford等の米国特許第4,424,200号及び第4,323,546号;Burchiel等の米国特許第4,472,371号及び4,311,688号;Hansen等の米国特許第5,328,679号:及びImmunomedics, Inc.の欧州特許出願第419203号及び第336678号);グルカ酸の存在下における第一スズイオン(K.Y. Pak, et al., Abstract No.268 from the “Proceedings of the 36th Annual Meeting,” J. Nucl. Med., Vol.30, No.793 (1989);K.Y.Pak, et al., J. Nucl. Med, 33, 144 (1992);A.F. Verbruggen, Eur. J. Nucl. Med., 17, 346 (1990));安息香酸誘導体の存在下における第一スズイオン(S.J. Mather, et al., J. Nucl. Med., 31, 692 (1990);Schwarzの米国特許第4,666,698号;Institutt for EnergiteknikkのPCT出願第85/03231号;及びBremerの米国特許第5,164,175号);ジエチレントリアミンペンタ酢酸誘導体の存在下における第一スズイオン(Hnatowichの米国特許第4,668,503号及び第4,479,930号;Paik等の米国特許第4,652,440号;及びHaber等の米国特許第4,421,735号);サッカリン酸の存在下における第一スズイオン(Subramanianの米国特許第5,317,091号;Centocor Cardiovascular Imaging Partners. L.PのWO88/07382);グルコヘプタン酸の存在下における第一スズイオン(Fritzberg等の米国特許第4,670,545号);D−グルコン酸の存在下における第一スズイオン(Dean等の米国特許第5,225,180号)が、スルフヒドリル基含有ペプチドのテクネチウム−99m標識化を行うために使用されてきた。加えて、亜ジチオン酸塩も、過テクネチウム酸−99mの還元剤として使用されてきた(Leesの米国特許第4,647,445号)。
【0074】
99m TcNCl(4)を使用したスルフヒドリル基含有ペプチドの標識化についても記載されている(University of MelbourneのWO 87/04164号)。
【0075】
好ましくは、放射性核種は、米国特許第6,080,384号の方法に従い、酸及び塩基の非存在下において生体分子に結紮される。一般的に、この方法は、放射性核種を還元するために使用される第一スズ塩が水混和性の有機溶媒と予め混合される放射性核種でスルフヒドリル基含有生体分子を標識化する。放射性核種はレニウム−186m、好ましくは過レニウム酸−186m塩の形態であってもよければ、テクネチウム−99m、好ましくは過テクネチウムの形態であってもよい。本発明の好ましい実施形態において、放射性核種は、テクネチウム−99m、過テクネチウム酸−99mの形態である。
【0076】
或いは、放射性核種は、キレート剤を使用して間接的にコンジュゲートする場合もある。キレート剤として使用される候補化合物は、選択された金属放射性核種としっかりと結合し、標的分子とコンジュゲートするための反応性活性基を有する化合物である。診断イメージングにおける有用性のために、キレート剤は、望ましくはそのインビボでの使用に適切な特性、例えば血液及び腎クリアランス並びに血管外拡散性等の有する。
【0077】
診断イメージングの目的のために、キレート剤は、金属放射性核種と組み合わせて使用される。好適な放射性核種には、99m TcO(3−)、99m TcO(2+)、ReO(3+)及びReO(2+)等の種々の形態のテクネチウム及びレニウムが含まれる。
【0078】
選択された放射性核種のキレート化は、種々の方法で実施してもよい。通常、キレート剤溶液は、最初に、エタノール:水=1:1等の水性アルコールにキレート剤を溶解することによって形成する。この溶液を窒素で脱気して酸素を除去した後、水酸化ナトリウムを添加してチオール保護基を除去する。この溶液を更に窒素でパージし(例えば水浴中で)加熱して、チオール基を加水分解し、その後この溶液を酢酸(pH6.0〜6.5)等の有機酸を使用して中和する。標識化手順では、このキレート剤溶液に過テクネチウム酸ナトリウムを、テクネチウムを還元するのに十分な量の塩化第一スズと共に添加する。その溶液を混合し、反応物を室温に放置した後、(例えば水浴中で)加熱する。大体の方法では、pH8に調整したキレート剤溶液を使用するようにして、標識化を実施してもよい。過テクネチウム酸は、所望のキレート剤とリガンド交換反応するのに好適な、不安定なリガンドと複合体化するテクネチウムの溶液と置換される場合がある。適切なリガンドには、酒石酸、クエン酸又はヘプタグルコン酸が含まれる。キレート剤溶液が標識化手順のためにpH12〜13に調整される場合、塩化第一スズは、還元剤として亜ジチオン酸ナトリウムと置換される場合がある。標識化されたキレート剤は、汚損物質である99m TcO及びコロイド性99m TcOから、クロマトグラフィーにより、例えば、エタノールの後に希塩酸で活性化したC−18 Sep Pakカラムを使用して、分離される場合がある。希塩酸を使用した溶出によって99m TcOが分離され、EtOH:食塩水=1:1を使用した溶出によってキレート剤が溶出されるが、コロイド性99m TcOはカラム中に残留する。
【0079】
一般的に、イソニトリルリガンド、及びTc、Ru、Co、Pt、Fe、Os、Ir、W、Re、Cr、Mo、Mn、Ni、Rh、Pd、Nb及びTaの放射性同位元素からなるクラスから選択される放射性金属の放射性核種配位複合体は、前記リガンドと、Zn、Ga、Cd、In、Sn、Hg、Tl、Pb及びBiからなるクラスから選択される完全d電子核を有する置換可能な金属の塩とを混合して溶解性の金属−イソニトリル塩を形成し、前記金属−イソニトリル塩を好適な溶媒中で前記放射性金属と混合して置換可能な金属を放射性金属と置換することにより形成される。
【0080】
次に、放射化学収量が最大になるように、使用直前に、この放射性核種−リガンド複合体をナノ粒子又はQDに添加して、ナノコアを形成する。
【0081】
本発明の別の実施形態においては、放射性イメージング複合体を調製するために使用される反応物質を実質的に含まない、放射性イメージングナノ粒子複合体(即ちナノコア)を調製する方法が提供される。この方法は、容器内の好適な溶解中で、標的追跡リガンド又はその塩又は金属付加物、例えばテクネチウム−99m等の放射性核種標識、ナノ粒子又はQD、及び必要な場合は還元剤を混合して、放射イメージング複合体を形成し;容器の内壁を放射性イメージング複合体でコーティングし;複合体化されていないリガンド及び放射性核種、使用されていない出発反応物質及び存在する場合は酸化した還元剤を廃棄し;別の溶媒を使用して所望の放射性イメージング複合体を容器の壁から溶解し、出発反応物質、及び不要な反応副産物を実質的に含まない前記複合体を得ることからなる。この方法には、出発反応物質及び不要な反応副産物を更に除去して、このような出発反応物質及び副産物を実質的に含まない複合体を得る1つ以上の洗浄手順が含まれてもよい。
【0082】
組成物を含有する放射性核種を安定化させる方法は、例えば米国特許出願第2002187099号等により当業者に既知であり、本発明において使用される場合がある。
【0083】
ナノシェルの調製
一実施形態において、ナノコアは、脂質又はペプチドを含む外層(ナノシェルとしても知られる)中に含められる。脂質ベシクルを調製する種々の方法は、それぞれ参考として本明細書に組み入れられている、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号;米国特許出願第20040033345号;PCT出願WO96/14057号等に既に記載されている。当業界で既知の何れかの脂質含有界面活性剤及び乳化剤が、本発明のナノセルでの使用に好適である。脂質成分は又、種々の脂質分子の混合物である場合もある。好ましい実施形態において、脂質は市販されており、天然及び合成脂質を含む。脂質は化学的又は生物学的に改変される場合がある。本発明のナノセルを調製するのに有用な脂質には、リン脂質、ホスホグリセリド、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルコリン、コレステロール、コレステロールエステル、ジアシルグリセロール、コハク酸ジアシルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、ヘキサンデカノール、PEG等の脂肪アルコール、及び当業者に既知のその他の脂質が含まれるが、これらに限定されない。脂質は正に荷電している場合もあれば、負に荷電している場合もあり、中性である場合もある。特定の実施形態において、脂質は脂質の組み合わせである。
【0084】
ナノセルの脂質ベシクル部分は、多層である場合もあれば、単層である場合もある。
【0085】
一実施形態において、ナノシェル又は脂質コートは、ナノコアとは別個に調製され、放射性核種の収量が最大になるように、使用前に放射性核種のナノコアと混合される。脂質ナノセルの調製方法は、参考として本明細書に組み入れられている、2004年3月2日出願の米国特許出願第60/549,280号;2004年9月7日出願の米国特許出願第20050025819号;Dubertret, et al., Science Vol 298, 29 Nov. 2002、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、及びPCT出願WO96/14057号に記載されている。好ましい一実施形態において、ナノコアは、リン脂質ブロックコポリマー膜中に封入されている。本発明の一実施形態において、このブロックコポリマー膜は、2000−ポリ−(エチレングリコール)ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)、ホスファチジルコリン、及びコレステロールの混合物からなる、立体的に安定したリポソームである。
【0086】
当業界で既知の何れかの脂質含有界面活性剤及び乳化剤が、本発明のイメージングナノセルのナノシェル成分中での使用に好適である。例えば、脂質成分は、種々の脂質分子の混合物である場合もあれば、天然源から抽出及び精製される場合もあり、研究室で合成により調製される場合もある。
【0087】
好ましい実施形態において、ナノセルは又、脂質二重層の外側等の表面に優先的に露出しているポリエチレングリコール(PEG)も含有する。PEGは、細網内皮系(RES)又は正常組織によってナノセルが取り込まれるのを阻止する。
【0088】
本発明の一態様によれば、ポリエチレングリコール(PEG)は、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)(又は本発明のナノセルの調製に使用されるその他何れかの脂質)に共有結合でコンジュゲートする。PEG−DSPEは、PEGポリマーによって形成される親水性「シェル」で囲まれたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)の脂肪酸からなる疎水性コアを有するミセルを形成する。脂質コート上にPEGポリマーが存在することで、免疫系によるナノセルのインビボ検出、及び細網内皮系(RES)による取り込みが阻止される。
【0089】
本発明の脂質ナノシェルは、周知の脂質材料の組み合わせから生成され、当業界でミセルを調製するために通常使用され、水溶性ポリマーに共有結合する少なくとも1つの脂質成分を含む場合がある。脂質には、スフィンゴミエリン等の比較的硬い種類、又は不飽和アシル鎖を有するリン脂質等の液体が含まれる場合がある。脂質材料は、ミセルの循環時間がインビボ可視化速度と均衡するように、当業者によって選択される場合がある。
【0090】
ナノコアをコーティングするのに有用な脂質には、天然及び合成脂質が含まれる。脂質は化学的又は生物学的に改変される場合がある。本発明のナノセルを調製するのに有用な脂質には、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;コハク酸ジアシルグリセロール;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)等の脂肪アルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;パルミチン酸又はオレイン酸等の界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span 85)グリコール酸;サーファクチン;ポロキソマー;トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル−アミン;パルミチン酸アセチル;リシノール酸グリセロール:ステアリン酸ヘキサデシル;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000−ホスファチジルエタノールアミン;及びリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。脂質は正に荷電している場合もあれば、負に荷電している場合もあり、中性である場合もある。特定の実施形態において、脂質は脂質の組み合わせである。ナノセルの調製に有用なリン脂質には、負に荷電したホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、リン酸、ジホスファチジルグリセロール、ポリ(エチレングリコール)−ホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラルリロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアリロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルリン酸、ジパルミトイルリン酸、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ホスファチジルセリン、及びそれらの混合物が含まれる。有用な両性イオンリン脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、レシチン、リソレシチン、リソファチジルエタノールアミン、セレブロシド、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアリロイルホスファチジルコリン、ジエライドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウリロイルホスファチジルコリン、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−ホスファチジルコリン、1−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、ジステアロイルスフィンゴミエリン、及びそれらの混合物が含まれる。両性イオンリン脂質は、正味荷電が0であるイオン化基を有する何れかのリン脂質を構成している。特定の実施形態において、脂質はホスファチジルコリンである。
【0091】
又、脂質ベシクルの物性を変えるために、コレステロール及びその他のステロールが、本発明のナノセルの脂質外側部分に取り込まれる場合もある。ナノセルへの取り込みに好適なステロールには、コレステロール、コレステロール誘導体、コレステリルエステル、ビタミンD、フィトステロール、エルゴステロール、ステロイドホルモン及びそれらの混合物が含まれる。有用なコレステロール誘導体には、コレステロール−ホスホコリン、コレステロールポリエチレングリコール、及びコレステロール−SOが含まれ、フィトステロールはシトステロール、カンペステロール、及びスチグマステロールである場合がある。本明細書に参考として援用される米国特許第4,891,208号に記載されるような、ステロールの有機酸誘導体の塩形態も、本発明のナノセル中で使用される場合がある。
【0092】
ナノセルの脂質ベシクル部分は、多層である場合もあれば、単層である場合もある。特定の実施形態において、ナノコアは、脂質二重層等の多層脂質膜でコーティングされている。他の実施形態において、ナノコアは単層の脂質膜でコーティングされている。
【0093】
又、誘導体化された脂質がナノセル中で使用される場合もある。誘導体化された脂質を添加することで、ナノセルの薬物動態を変化させることができる。例えば、標的薬剤と共に誘導体化された脂質を添加すると、ナノセルが特定の細胞、腫瘍、組織、器官又は器官系をターゲティングできるようになる場合がある。特定の実施形態において、ナノセルの誘導体化された脂質成分には、ペプチダーゼ又はエステラーゼ酵素又は還元剤の存在下等の選択的な生理的条件下で開裂することができる、ペプチド、アミド、エーテル、エステル又はジスルフィド結合等の不安定な脂質ポリマー結合が含まれる。リン脂質にポリマーを結合するこのような結合を使用することで、投与後数時間にわたり高血中濃度を達成することができ、さもなくばRES系によって急速に取り込まれてしまう場合がある。例えば、本明細書に参考として援用される米国特許第5,356,633号を参照されたい。ナノセルの薬物動態及び/又はターゲティングは、脂質組成及び比率を変化させることによる表面荷電を変えることにより変更してもよい。熱特性又はpH放出特性は、脂質ベシクルの成分として熱感受性又はpH感受性脂質を取り込むことによって、ナノセル中に確立することができる(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン:ジステアリルホスファチジルコリン(DPPC:DSPC)系の混合物)。熱感受性又はpH感受性脂質を使用することで、ナノセルの脂質ベシクル膜成分の分解を制御することができる。
【0094】
従って、本発明のポリマーには、タンパク質の循環半減期を増加させるのに有用な立体的に安定したリポソーム(SSL)技術の分野で既知であり且つ通常使用されている何れかの成分が含まれ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸、ポリグリコール酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリグリセロール、ポリオキサズリン、又は重合体性頭部を有する合成脂質が含まれる場合がある。本発明の最も好ましいポリマーは、分子量が1000〜5000のPEGである。本発明に従いミセルを調製するのに好ましい脂質には、PEGのみに共有結合するか、又はホスファチジルコリン(PC)と更に組み合わせるジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)、及びコレステロール(Chol)及び/又はカルモジュリンと更に組み合わせるホスファチジルグリセロール(PG)が含まれる。
【0095】
立体的に安定したミセル産物又は立体的に安定した結晶産物を調製する本発明の方法は、種々の技法を使用して実施してもよい。一態様においては、ミセル成分が有機溶媒中に混合され、この溶媒を蒸発又は凍結乾燥の何れかを使用して除去される。有機溶媒を除去することで、脂質膜又はケーキが得られ、これを後に水溶液を使用して水和することによってミセルを形成する。
【0096】
更に単純化された調製技法においては、1つ以上の脂質が水溶液中で混合された後に、脂質から自然にミセルが形成される。この得られたミセルを両親媒性化合物と混合させると、この化合物がミセル産物と結合して、更に有意な生物学的活性構造を呈する。この方法によるミセル産物の調製は、特に大規模且つ安全な調製に適しており、先に記載した方法よりも所要時間が大幅に短い。この方法は、有機溶媒の使用がなくなるという点から本質的により安全である。
【0097】
イメージングナノセルの調製
ここまでで放射性核種と複合体化されているナノコアは、脂質−PEGと混合され、本発明の放射性核種ナノセルを形成する。ナノ粒子を脂質外側層と混合する方法は、当業者に既知であり、本明細書に参考として援用される、2004年3月2日出願の米国特許出願第60/549,280号に記載されている。
【0098】
一実施形態において、脂質は、好適な有機溶媒又は溶媒系中に溶解させ、減圧下又は不活性ガス中で乾燥させて薄い脂質膜を形成する。場合により、この記膜はtert−ブタノール等の適切な溶媒に再度溶解された後、凍結乾燥させて、更に容易に水和される粉末形態の、更に均質な脂質混合物を形成する。得られた膜又は粉末を、ナノコアの水性緩衝懸濁液で覆い、撹拌しながら15〜60分間水和させる。得られた多層ビシクルのサイズ分布は、更に激しい撹拌条件下で脂質を水和させるか、又はデオキシデオキシコール酸等の可溶化界面活性剤を添加することによって、より小さなサイズにシフトさせてもよい。
【0099】
別の実施形態において、ナノコアのコーティングは、親水性ポリマーを使用して誘導体化された脂質を予め形成されたベシクル中に拡散すること、例えば、ナノセル中で望ましいとされる、誘導体化された脂質の最終モル%に相当する脂質濃度にて、予め形成されたベシクルを脂質グラフトポリマーからなるナノコア/ミセルに露出すること等によって、調製される場合がある。親水性ポリマーを含有するナノコア周囲の基質は又、均質化、脂質領域の水和、又は押出技法によって形成されてもよい。
【0100】
別の好ましい実施形態において、ベシクル形成脂質は、好適な有機溶媒又は溶媒系中に取り込まれ、減圧下又は不活性ガス中で乾燥又は凍結乾燥させて脂質薄膜を形成する。ナノセルの外室中に取り込まれる活性物質又は標的部分は何れも、好ましくは膜を形成する脂質中に含まれる。乾燥脂質又は脂質/薬剤を水和するのに使用される水性媒体は、非経口的補液として使用されるような、生理的適合性の媒体、好ましくは発熱物質を含まない生理食塩水又は5%デキストロース水溶液である。(放射性核種を有する)ナノコアは、水和手順の前に、均質な様式及び所望の濃度にて水性媒体中に懸濁される。この溶液は又、水溶性の鉄キレート剤及び/又は可溶性の二級化合物等の何れかの追加の溶質成分と、所望の溶質濃度で混合してもよい。脂質は、急速条件下(撹拌を使用)又は緩速条件下(撹拌を不使用)で水和することができる。脂質が水和すると、多層のベシクルの懸濁液が形成される。一般的に、ベシクルのサイズ分布は、振とうさせながらより急速に脂質膜を水和することによって、より小さなサイズにシフトさせてもよい。得られた膜二重層の構造は、疎水性(非極性)のテールは二重層の中心に向かうが、親水性(極性)の頭部は水層に向かうような構造である。
【0101】
別の実施形態において、適切な比率で混合された、乾燥ベシクル形成脂質、放射性核種含有ナノコア、及び(ナノセルの外室に挿入される)任意の薬剤は、必要に応じて加温しながら、水混和性の有機溶媒又は溶媒混合物に溶解される。このような溶媒の例には、エタノール、又は種々の比率のエタノール及びジメチルスルホキシド(DMSO)がある。次に、ナノセルの自然形成を起こせるだけの量の水性受容体相に、この混合物を添加する。この水性受容体相は、全ての脂質を溶解した状態に維持するために、必要に応じて加温される場合がある。受容体相は、急速に撹拌される場合もあれば、緩速に攪拌される場合もある。数分から数時間インキュベーションした後、減圧、透析又はダイアフィルトレーションにより有機溶媒を除去し、ヒトの投与に好適なナノセル懸濁液とする。
【0102】
一実施形態において、放射性核種ナノセルは、予め形成したナノセルに有機溶媒中の放射性核種を添加することによって形成される。この実施形態において、放射性核種を含まないナノセルは、放射性核種を結合するリガンドにナノ粒子をコンジュゲートし、例えば脂質−PEGナノシェルと組み合わせることによって予め形成する。次に、個体への投与前に、有機溶媒中の放射性核種をこの予め形成したナノセルに添加する。
【0103】
別の実施形態において、脂質ナノシェルは、放射性核種を含まないナノコア(ナノ粒子及びリガンド)とは別個に予め調製する。この実施形態において、放射性核種は、ナノコアと混合させた後、この放射性核種−ナノコア複合体をナノシェルと混合して、放射性核種ナノセルを形成する。
【0104】
更に別の実施形態においては、放射性核種がナノコア(ナノ粒子及びリガンド)に添加され、これにより放射性核種のナノコア上にナノシェルが形成される。
【0105】
ナノセルのサイズ
本発明における重要な考慮事項は、ナノセルの全体直径である。イメージング薬として有用であるために、ナノ粒子は、イメージングのためのバックグラウンドが得られるように、腫瘍に特質的に局在化しなければならない。従って、腫瘍のイメージングを対象とする一実施形態において、本発明は、血管形成部位、即ち腫瘍部位でのみナノセルが浸出し、正常組織内に取り込まれないように、ナノセルを約60nmを超えるサイズに制限する。従って、ナノセルの全体直径は約60nm〜約600nmであり、好ましくは全体直径は約80nm〜約220nmである。
【0106】
従って、本発明のナノセルは、特定のサイズ範囲内のナノセルを回収するために、ろ過、ふるい分け、押出又は超遠心分離により分画される。このサイズの区別は、通常、放射性核種がナノコア中に取り込まれる前に実施される。1つの効果的なサイズ分画法は、選択された均質な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通してナノセルの水性懸濁液を押し出すことを伴い;この膜の孔径は、膜を通した押出により生成される最大サイズのナノセルにほぼ対応する。例えば、本明細書に参考として援用される米国特許第4,737,323号を参照されたい。別の好ましい方法には、所定のサイズの分画を単離する、所定の速度(例えば、8,000、10,000、12,000、15,000、20,000、22,000及び25,000rpm)の連続超遠心分離がある。
【0107】
放射性核種
上で考察した通り、放射性核種を使用した診断イメージングは周知である。代表的な診断的放射性核種には、(99m)Tc、(95)Tc、(111)In、(62)Cu、(64)Cu、(67)Ga、及び(68)Ga、ヨウ素−123、ヨウ素−131、ルテニウム−97、銅−67、コバルト−57、コバルト−58、クロム−51、鉄−59、セレン−75、タリウム−201、及びイッテルビウム−169が含まれる。
【0108】
放射性核種であるテクネチウム−99m、即ち99mTc(T1/26.9時間、140keVγ線光子放出)は、その優れた物理的減衰特性及びその化学的特性から、イメージングでの使用に好ましい放射性核種である。例えば、約6時間というその半減期は、減衰速度とイメージング試験に好都合な時間枠の間の絶妙な妥協をもたらす。しかし、例えば、(18)F又は(123)I等のその他の放射性核種も使用される場合がある。
【0109】
投与
本発明の放射性核種イメージングナノセルは、放射性核種イメージング薬を投与する当業者に既知の方法によって個体に投与される。使用される特定の投与量は、診断上有用な画像を得るのに十分な量、一般的に0.1〜20mCi/70kg体重の範囲であることのみ必要とする。
【0110】
組成物の投与は、経口投与、非経口的投与、舌下投与、座薬若しくは経腸投与等の直腸投与、又は肺吸収を含めた、全身経路を介するものである場合がある。非経口投与は、静脈注射、皮下注射、筋肉内注射、動脈内注射、くも膜下腔内注射、腹膜内注射、又は直接注射、又は1つ以上の特定部位へのその他の投与によるものである場合がある。
【0111】
物質を血流に急速に導入することも可能である、胃腸管へのアクセスは、経口浣腸、又は投与の注入可能な形態を使用して到達することができる。組成物は、大量注射又は噴霧として投与される場合もあれば、例えば2、4、6又は8時間毎に、一定期間にわたり連続して(挿間的に)投与される場合もある。
【0112】
本発明は更に、放射性核種を個体に投与する方法であって、本発明の方法に従って放射性核種ナノセルを調製し、この放射性核種の有効量を個体に投与する手順からなる方法を提供する。本発明のナノセル産物は、静脈内、動脈内、エアゾール投与、噴霧、吸入若しくは吹送等の鼻腔内、気管内、関節内、経口、経皮、皮下に投与される場合がある。両親媒性化合物の投与方法は、水溶液中で不溶性の化合物の投与に等しく適している。
【0113】
一実施形態において、全体直径が約30〜約50nmであり、標的リガンドを有する放射性核種ナノセルは、診断の目的のため個体に投与される。この実施形態において、個体は、当業者に既知で且つ使用する特定の放射性核種に応じた時点で、例えば、バックグラウンド差の標的が存在するように、放射性核種ナノセルが全ての組織に入り、標的細胞に結合して、結合していないナノセルが十分に開裂した後で、イメージングされる。このプロセスは、信号比に最適なバックグラウンドを見込んでおり、テクネチウム−99mの場合は少なくとも2時間、好ましくは6時間であるが、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12時間又はそれ以上である場合もある。この時間は更に、使用する放射性核種によって変化する。
【0114】
別の実施形態において、約60〜約600nmのサイズを有する放射性核種ナノセルは、診断目的のために個体に投与される。この実施形態において、個体は、最適な放射性核種シグナルをもたらすように、当業者に既知で且つ使用する特定の放射性核種に応じた時点でイメージングされる。例えば、この実施形態においては、ナノセルが何れかの血管新生領域に浸入した後(例えば、血管の孔径が正常の血管の孔径よりも大きい場合)に、個体がイメージングされる。好ましくは、3時間後、更に好ましくは6時間又はそれ以上後にイメージングが可能となる放射性核種を使用する。しかし、2時間以降、好ましくは2〜24時間の間にイメージングしてもよい。当業者は、使用する放射性核種に基づきこのタイミングを決定してもよい。
【0115】
キット
本発明には、本発明のイメージング及びテーラーメイド治療用ナノセルを調製するためのキットも包含される。本発明のイメージングのためのキットは、1)核ナノコアの調製に必要な材料、及び2)調製された脂質二重層−PEGナノシェルを含む。本発明の一実施形態において、これらの2つの成分は、個別の無菌容器に含まれ、このナノコア容器に放射性核種が添加された後に混合される。
【0116】
一実施形態において、ナノコアの調製に必要な材料は、置換可能な金属の付加物(前述の列挙の通り)、及びイソニトリルリガンド、及び必要に応じて予め選択された放射性核種を還元するのに必要な量の還元剤を含む。好ましくは、このようなキットは、所定量の金属イソニトリル付加物、及び予め選択された放射性核種の所定量を還元することができる所定量の還元剤を含む。又、可能な場合は、保存性を高めるためにイソニトリルリガンド及び還元剤を凍結乾燥させることが好ましい。凍結乾燥が実行可能でない場合は、キットを凍結保存する。金属イソニトリル付加物及び還元剤は、好ましくは密封された無菌容器に含められる。
【0117】
本発明の一実施形態において、殆どの臨床試験施設で入手できる等張食塩水中の過テクネチウム酸等の99m Tcの支給品から、本発明の放射性核種複合体を調製するのに使用するキットは、所定量の過テクネチウム酸と反応する、金属イソニトリル付加物形態の選択されたイソニトリルの所望量、及び所定量の還元剤、例えば、所定量の過テクネチウム酸を還元して所望のテクネチウム−イソニトリル複合体を形成するためのグルコヘプタン酸スズ形態の第一スズイオンを含む。
【0118】
テーラーメイド治療用組成物、及び特定の疾患又は障害の処置方法
本発明の別の実施形態においては、種々の疾患及び障害を処置するための新規のナノセルプラットフォームが開示される。更に、これらの組成物を使用して特定の疾患及び障害を処置する方法が開示される。ナノセル(2005年3月2日出願の米国特許出願第11/070,731号を参照)は、該当する生体部位に適切な治療薬を適切な長さの時間にわたって直接且つ効果的に送達するように、テーラーメイドすることができる。
【0119】
一般的に、本発明のテーラーメイドナノセルは、少なくとも1つの第一の治療薬を含む内側のナノコア、及び第一の治療薬と異なる少なくとも1つの第二の治療薬を含む、脂質からなる外側のナノシェルを含む。或いは、ナノコアは、ナノシェル中に含有される少なくとも1つの治療薬と実質的に同じである少なくとも1つの第一の治療薬を含有する場合もある。この実施形態において、第一の治療薬を封入するマトリックスの組成物は、少なくとも1つの第二の治療薬を封入するマトリックスの組成物と異なっており、これらの治療薬が異なる時間及び/又は速度で放出される。又、特定の時間に同一又は異なる薬剤を放出するように設計された、第三、第四、第五又はそれ以上の層を加えてもよい。
【0120】
本発明の一実施形態においては、腫瘍等の所望の血管新生疾患又は障害を処置するための新規の組成物及び方法が開示される。この実施形態において、ナノセルは、長時間作用するように選択的に選ばれた第一の治療薬を含有するナノコア、及び即時に且つより短い時間作用するように選択的に選ばれた、外側のナノシェル内に封入された第二の治療薬を含む。好ましい一実施形態において、テーラーメイドナノセルは、血管新生(例えば腫瘍、黄斑変性症)の部位で選択的に浸出し、正常な脈管構造を通過せず、腫瘍を有さない細胞に浸入しないように、約60nm超にサイズ制限されている。本発明の好ましい実施形態において、テーラーメイドナノセルは、全体直径が約60nm〜約600nmである。テーラーメイドナノセルは又、イメージングと処置を組み合わせる前述のようなイメージング薬を含む場合もある。
【0121】
一実施形態において、ナノコア中に存在する第一の治療薬は抗新生物薬であり、ナノシェル中に存在する第二の治療薬は抗血管新生薬である。
【0122】
抗新生物薬には、Sutent(登録商標)/SU11248(リンゴ酸スニチニブ)、フロキシウリジン、ゲムシタビン、クラドリビン、ダカルバジン、メルファラン、メルカプトプリン、チオグアニン、シスプラチン及びシタラビン等の化合物;並びにフルダラビン、シドフォビル、テノフォビル及びペントスタチン等の抗ウイルス化合物が含まれるが、これらに限定されない。ナノコアとの会合に好適な化合物の更なる例には、アデノカード、アドリアマイシン、アロプリノール、アルプロスタジル、アミフォスチン、馬尿酸アミノ、アルガトロバン、ベンズトロピン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルシトリオール、カルボプラチン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、トポテカン、ドセタキセル、ドラセトロン、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、ファモチジン、フォスカルネット、フルマゼニル、フォスフェニトイン、フルベストラント、ヘミン、フマル酸イブチリド、イリノテカン、レボカルニチン、イダマイシン、スマトリプタン、グラニセトロン、メタラミノール、メタラミノール、メトヘキシタール、ミトキサントロン、モルフィン、ナルブフィン塩酸塩、ネサカイン、オキサリプラチン、パロノセトロン、パミドロネート、ペメトレキセド、フィトナジオン、ラニチジン、テストステロン、チロフィバン、トラドール、トリオスタット、バルプロエート、酒石酸ビノレルビン、ビスダイン、ゼンプラー、ゼムロン及びザインカードが含まれる。或いは、抗新生物薬は放射性核種である場合がある。
【0123】
抗血管新生化合物には、ヒト化及びキメラ抗体を含めた抗VEGF抗体、抗VEGF抗体アプタマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンギオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1、インターロイキン12、レチノイン酸、並びにコラーゲン分解酵素−1及び−2の組織阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
一実施形態において、血管新生疾患及び障害を処置するためのテーラーメイドナノセルは、肺癌に特異的である。この実施形態において、ナノコア中に存在する第一の治療薬は、シスプラチン、カルボプラチン、イレッサ又はゲフィニチブからなる群から選択され、第二の治療薬はコルチコステロイドである。この実施形態において、ナノセルは約60nmよりも大きい。
【0125】
別の実施形態において、血管新生疾患及び障害を処置するためのテーラーメイドナノセルは、胸部癌又は腎臓癌に特異的である。この実施形態において、第一の治療薬はドキソルビシンであり、第二の治療薬はコルチコステロイドである。この実施形態において、ナノセルは約60nmより大きい。
【0126】
別の実施形態において、血管新生疾患及び障害を処置するためのテーラーメイドナノセルは、皮膚癌及び/又は黒色腫に特異的である。この実施形態において、第一の治療薬はダカルバジン(DITC)であり、第二の治療薬はコルチコステロイドである。この実施形態において、ナノセルは約60nmより大きい。
【0127】
別の実施形態において、血管新生疾患及び障害を処置するためのテーラーメイドナノセルは、胃腸腫瘍に特異的である。この実施形態において、第一の治療薬は5−フルオロウラシル(5−FU)であり、第二の治療薬はコルチコステロイドである。この実施形態において、ナノセルは約60nmより大きい。
【0128】
本明細書で使用される「コルチコステロイド」という用語は、関節炎、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、狼瘡等の炎症性疾患の処置に有用である、副腎皮質から単離されるか、又は合成により生成される副腎皮質コルチコステロイドホルモンの何れか及びそれらの誘導体を指す。コルチコステロイドには、天然、合成又は半合成を起源とし、且つ例えばコレステロール、ジヒドロキシコレステロール、スチグマステロール及びラノステロール構造で見られるような、4つの縮合環のステロイド核の存在によって特徴付けられるものが含まれる。コルチコステロイド薬剤には、コルチゾン、コルチゾール、ヒドロコルチゾン(11β,17−ジヒドロキシ,21−(ホスホノオキシ)−プレグン−4−エン、3,20−ジオンジナトリウム)、ジヒドロキシコルチゾン、デキサメタゾン(21−(アセチルオキシ)−9−フルオロ−11β、17−ジヒドロキシ−16.α.−m−エチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン)、及びベコナーゼ(9−クロロ−11−β,17,21,トリヒドロキシ−16β−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン17,21−ジプロピオネートであるベクロメタゾンジプロピオネート)等の高度に誘導体化されたステロイド薬剤が含まれる。コルチコステロイドの他の例には、フルニソリド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、デフラザコート及びベタメタゾンが含まれる。
【0129】
脳腫瘍
一実施形態において、例えば、神経膠腫、神経細胞系腫瘍、異型性グリオーマ及び髄膜種等の脳腫瘍を処置するための組成物及び方法が開示される。本発明の方法及び組成物によって処置可能なその他の脳腫瘍には、星状細胞腫、脳幹グリオーマ、上衣腫、オリゴデンドグリオーマ、及び髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、松果体部素用、及び二次性脳腫瘍等の非グリア細胞由来脳腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
この実施形態において、ナノセル組成物は、コルチコステロイドからなる少なくとも1つの第一の治療薬を有するナノコア、及び化学療法剤からなる少なくとも1つの第二の治療薬を有するナノシェルを含む。本明細書で使用される通り、化学療法剤には、悪性細胞及び組織を選択的に破壊する化学物質又は薬剤等の何れかの癌治療剤が含まれる。コルチコステロイドは、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン等からなる群から選択される場合がある。その他のコルチゾンは当業者に既知であり、本発明に包含される。
【0131】
ナノシェル中に存在する化学療法剤は、例えば、BCNU(カルムスチン)、CCNU(ロムスチン)、PCV(プロカルバジン、CCNU、ビンクリスチン)、又はテモゾロミド(Temodar)等のニトロソウレア系の化学療法剤からなる群から選択される場合がある。その他の化学療法剤は当業者に既知であり、本発明の方法で使用される場合がある。これらの薬剤には、例えば、アルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、植物アルカロイド、代謝拮抗剤、ホルモン作動薬及び拮抗薬、及び種々雑多な薬剤が含まれる。Haskell, C.M., ed., (1995)及びDorr, R.T. and Von Hoff, D.D., eds. (1994)を参照されたい。古典的なアルキル化剤は、特定の有機化合物の水素原子をアルキル基に置換する能力を有する高反応性化合物である。古典的なアルキル化剤には、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イフォスファミド、チオテパ及びブスルファンが含まれる。幾つかの非古典的なアルキル化剤も又DNA及びタンパク質を破壊するが、古典的なアルキル化剤とは異なり、メチル化又はクロロへチル化等の種々複雑な機序を介している。非古典的なアルキル化剤には、ダカルバジン、カルムスチン、ロムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン及びアルトレタミンが含まれる。
【0132】
臨床的に有用な抗腫瘍剤には、土壌菌類ストレプトマイセスの種々の株の天然産物が含まれ、これらも本発明に包含される。このクラスの薬剤には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシンC、プリカマイシン及びストレプトゾシンが含まれる。植物系の化学療法剤も包含され、これらには、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、エピポドフィロトキシン(エトポシド及びテニポシド)及びパクリタクセル(タキソール)が含まれる。加えて、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロキシウリジン(FUDR)、シタルビン、6−メルカプトプリン(6−MP)、6−チオグアニン、デオキシコフォルマイシン、フルダラビン、2−クロロデオキシアデノシン、及びヒドロキシウレア等の代謝拮抗剤も本発明に包含される。
【0133】
好ましくは、第一の治療薬は、コルチコイドの持続性又は叙放性の動態をもたらすように、所定の比率でPLGA等の生分解性ポリマー中に封入される。この化学治療剤は又、特定の薬剤のより即時的であるが持続的な放出をもたらす比率で、PLGA等の生分解性ポリマー中に含封入される。ポリマーの比率は、全ての個体に同じ処置を行う現在の方法ではなく、各個体に合わせて処置を調整するように経験に基づいてテーラーメイドされる場合がある。例えば、特定の薬剤に対する個体の代謝を解析するRoche’s AmpliChip CYP450(登録商標)を、特定の個体に必要となる最適な濃度を評価するために使用される場合がある。この方法で、医師は、最適な投与を達成するために、(最適なPHA比を有する)適切なナノコアと最適なナノシェルとを組み合わせることができる。
【0134】
本発明には又、本発明のテーラーメイドナノセル組成物を使用して脳腫瘍を処置する方法も包含される。この方法で、個体は、本発明のテーラーメイドナノセルを、全身に投与されるか、又は必要な部位に直接注射することによって投与される。好ましくは、腫瘍が切除され、その際切除部位にテーラーメイドナノセルが送達される。
【0135】
従って、本発明の更なる態様において、本明細書に記載のナノセル組成物は、血管新生疾患及び障害及び悪性腫瘍の処置に使用される場合がある。このような方法で、本明細書に記載のナノセル組成物は、患者、通常は温血動物、好ましくはヒトに投与される。患者は癌に苦しんでいる場合もあれば、苦しんでいないない場合もある。従って、上記のナノセル組成物は、癌の発達の予防、又は癌に苦しんでいる患者の処置に使用される場合がある。テーラーメイドナノセル組成物は、原発腫瘍の外科的切除及び/又は放射線治療薬又は通常の化学療法剤等の投与等の処置の前又は後の何れかに投与される場合がある。ナノセル組成物の投与は、静脈注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、経鼻投与、皮内投与、肛門、膣、局所及び経口投与を含めた、任意の好適な方法による場合がある。
【0136】
喘息
別の実施形態においては、喘息を処置するための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、ナノセル組成物は、コルチコステロイドからなる少なくとも1つの第一治療薬を有するナノコア、及び気管支拡張剤からなる少なくとも1つの第二の治療薬を有するナノシェルを含む。このコルチコステロイドは、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、フルチカゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、又はプレドニゾロン等からなる群から選択される場合がある。気管支拡張剤には、イプラトロピウム等の抗コリン作動薬、又はアルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルメテロール又はレバルブテラール等のβ作動薬が含まれる場合がある。喘息を処置するためのナノセル組成物は、(ナノシェル中に含まれる)気管支拡張剤を投与することで、これが最初にコルチコステロイドの生物学的作用部位を利用できるように作用するため、通常に達成できるよりも少量のコルチコステロイドを個体に投与することが可能となる。
【0137】
或いは、抗IgEは、ナノセルのナノコア中に単独で、又はコルチコステロイドに加えて取り込まれる場合がある。抗IgE療法は長期療法であるため、一定期間にわたり送達を持続するように本発明の組成物のナノコア中に製剤化されなければならない。市販の抗IgEには、中等度から重症の持続性喘息、や一年中アレルギーを患っている個体、及び日常的にステロイドを吸入している個体に承認されているXolair(登録商標)(オマリズマブ)が含まれる。
【0138】
別の実施形態において、テーラーメイド喘息ナノセルは、喘息症状、特に運動、寒さ及びアレルギーにより引き起こされる症状の予防に役立つIntal(登録商標)(クロモリン)、及び/又はTilade(登録商標)(ネドクロミル)を含む。クロモリン及びネドクロミルは、気道の膨張の予防に役立つ。クロモリン及びネドクロミルは予防薬であり、効果を示すには日常的に服用しなければならないため、喘息テーラーメイドナノセルのナノコア中に取り込むのに最適である。
【0139】
別の実施形態において、テーラーメイド喘息ナノセルは、例えば、Accolate(登録商標)(ザフィルルカスト)、Singulair(登録商標)(モンテルカスト)、及びZyflo(登録商標)(ジロイトン)等のロイコトリエン修飾物質を含有する。ロイコトリエン修飾物質はナノコア又はナノシェル中の何れかに取り込まれる場合があるが、長期間作用するナノコアに取り込まれるのが好ましい。ロイコトリエン修飾物質は、ナノセルに単独で、又はその他の治療薬に加えて取り込まれる場合がある。
【0140】
ナノセルを送達する何れの方法も使用することができるが、喘息テーラーメイドナノセルは吸入を介して送達されるのが好ましい。
【0141】
グレーブズ病
別の実施形態においては、グレーブズ病を処置するための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、ナノセル組成物は、イオパノ酸/イポダートナトリウムからなる少なくとも1つの第一の治療薬を有するナノコア、及び例えばメチマゾール、カルビマゾール又はプロピルチオウラシル等の抗甲状腺薬からなる少なくとも1つの第二の治療薬を有するナノシェルを含む。或いは、第一の治療薬は、ヨウ素123等の放射性核種である場合もある。一実施形態において、ナノコアは、放射性ヨウ素を単独で、又はイオパノ酸/イポダートナトリウムと組み合わせて含む。同様に、ナノシェル中に取り込まれる少なくとも1つの第二の治療薬は、β遮断薬(即ちプロパノロール)である場合がある。
【0142】
本発明に有用なその他のβ遮断薬には、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オキシプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、ソタロール、チモロール、アテノロールが含まれる。
【0143】
好ましくは、本発明のテーラーメイドナノセルは、非経口又は経腸経路を介して全身に送達される。
【0144】
嚢胞性繊維症
別の実施形態においては、嚢胞性繊維症を処置するための組成物及び方法が開示される。この実施形態において、ナノセル組成物は、抗生物質からなる少なくとも1つの第一の治療薬を有するナノコアを含む。抗生物質に加えて、このコアは、任意の気管支拡張剤又はステロイドを含有する場合もある。この実施形態において、ナノシェルは、組換え型ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase)からなる少なくとも1つの第二の治療薬を含有する。
【0145】
抗生物質は当業者に既知である。例えば、Curr Opin Pulm Med. 2004 Nov;10(6):515−23;Ann Pharmacother. 2005 Jan;39(1):86−94;Respir Med. 2005 Jan;99(1):1−10を参照されたい。好ましい抗生物質には、シプロフロキサシン、オフロキサシン、トブラマイシン(TOBIを含む)、ゲンタマイシン、アジスロマイシン、セフタジジム、Keflex(登録商標)(セファレキシン)、Ceclor(登録商標)(セファクロール)、ピペラシリン及びイミペネムが含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
別の実施形態において、テーラーメイド嚢胞性繊維症ナノセルは、CF患者への投与に好適な形態であって、気道の上皮表面との接触が最大になるように製剤化されるS−ニトロソチオールを含む。ニトロソグルタチオンは、幾つかの内在性S−ニトロソチオールの中でも最も豊富なものである。例えばS−ニトロシステインと比べると、特定のGSNO分解酵素が上方制御されない限り、これは等しく安定している。このような酵素には、γ−グルタミル−トランスペプチダーゼ、グルタチオン依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、及びチオレドキシン−チオレドキシンレダクターゼが含まれてもよい。このため、原核生物GSNO又は真核生物GSNOの異化作用の阻害剤の同時投与が、時に必要となる場合があり、本発明に包含される。この種類の阻害剤には、1μMのS−ニトロソグルタチオン(GSNO)の気道濃度を達成するために1mM溶液の0.05ml/kgとして投与されるアシビシンが含まれると思われるが、これに限定されない。好ましくは、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)は500ナノモル/kg(157mcg/kg)以上の濃度である。亜硝酸エチル等のその他のニトロシル化剤も使用される場合がある。従って、本発明の方法及び組成物は、嚢胞性繊維症患者に対して噴霧又はその他のエアゾール処置によって投与することが可能なGSNO及びその他のS−ニトロソチオール(SNOs)が含まれるがこれらに限定されない、薬学的に許容される担体中のニトロソニウム供与体を含む。これらの化合物は、本発明の嚢胞性繊維症ナノセルのナノコア又はナノシェルの何れかに取り込まれる場合がある。
【0147】
好ましくは、個体は、本発明のテーラーメイドナノセルを吸入を介して投与される。
【0148】
肺線維症
別の実施形態においては、肺線維症を処置するための組成物及び方法が開示される。肺線維症は、特発性肺線維症、間室性肺線維症、DIP(剥離性肺線維症)、UID(通常型間質性肺炎)とも呼ばれる場合があり、全て本発明に包含される。この実施形態において、ナノセル組成物は、コルチン(コルヒチンとしても知られる)等の抗線維薬からなる少なくとも1つの第一の治療薬を有するナノコア、及び例えばコルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾロン等のコルチコステロイドからなる少なくとも1つの第二の治療薬を有するナノシェルを含む。抗線維薬は又、ピルフェニドン(Deskar;MARNAC, Inc.[米国テキサス州ダラス])、コルヒチン、D−ペニシラミン及びインターフェロンからなる群から選択される場合もある。
【0149】
好ましくは、個体は、本発明のテーラーメイドナノセルを吸入を介して投与される。
【0150】
本発明に有用な幾つかのコルチコステロイドには、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン及びデキサメタゾンが含まれるが、これらに限定されない。しかし、炎症の処置に使用される、副腎皮質から単離されるか、又は合成により生成される副腎皮質コルチコステロイドホルモンの何れか及びその誘導体は、本発明に有用である。
【0151】
本発明のテーラーメイドナノセルは、複数の層を含む場合がある。一実施形態において、テーラーメイドナノセルは、層中に薬剤が貯蔵される複数のリザーバーを含む。場合により、種々の薬剤の放出を調整するために、薬剤−ポリマー層の間にポリマー膜が配置される場合もある。
【0152】
一般的に、本発明のテーラーメイドナノセルは、前述の通りに個体に投与される場合があるが、当業者に既知の方法で、個体の必要性に合わせて投与をテーラーメイドするように投与される場合もある。例えば、投与量は、所望の治療効果を達成するように適切に調整される場合がある。任意の特定の患者の特定の投与レベル及び投与頻度は変動する場合があり、使用される特定の治療活性剤の作用、その薬剤の代謝安定性及び作用長さ、被験体の種、年齢、体重、全身の健康状態、食餌状況、性別及び食餌、投与の様式及び時間、排泄速度、薬剤の併用、及び特定の病状の重症度を含めた、種々の因子により異なる。一般的に、治療活性剤の一日の投与量は、過度の実験を行うことなく、所望の結果を得るために、1日当たり1回又は複数回の投与で、当業者により決定することができる。
【0153】
特定の投与量で被験体の応答が不十分な場合は、患者の耐性で許容される範囲内で更に高濃度(又は異なるより局所的な送達経路によって投与されるより高い有効濃度)が使用される場合がある。治療化合物の適切な全身又は標的レベルを達成するために、1日当たりの投与量が複数考慮されている。
【0154】
乾癬
別の実施形態においては、乾癬を処置するための組成物及び方法が開示される。ナノセルは、ナノコアが免疫抑制剤を含有し、シェルが抗血管新生又は血管標的薬剤を含有するようにテーラーメイドされる場合がある。ナノコアは、好ましくは生分解性ポリマーからなると思われるが、シェルは脂質からなることが必要となる。
【0155】
アテローム性動脈硬化症
別の実施形態においては、アテローム性動脈硬化症を処置するための組成物及び方法が開示される。ナノセルは、ナノコアが化学療法剤を含有し、ナノシェルが抗血管新生又は血管標的薬剤を含有するようにテーラーメイドされる場合がある。ナノコアは、好ましくは生分解性ポリマーからなると思われるが、ナノシェルは脂質からなる。
【0156】
関節リウマチ
別の実施形態においては、関節リウマチを処置するための組成物及び方法が開示される。ナノセルは、ナノコアがコルチコステロイド又は抗体又はMMP阻害剤等の免疫抑制剤を含有し、シェルが抗血管新生又は血管標的薬剤を含有するようにテーラーメイドされる場合がある。ナノコアは、好ましくは生分解性ポリマーからなると思われるが、ナノシェルは脂質からなる。
【0157】
本発明の治療用テーラーメイドナノセルは、イメージングナノセルについて前述した方法と同様の方法で調製される。しかし、放射性核種が示される場合は、治療薬又は化合物が使用される。例えば、ナノコアは、好ましくはマトリックス中で結合された少なくとも1つの治療薬を含有する。マトリックスは、好ましくは、前述の通り生分解性及び生体適合性を備えるポリマーマトリックスである。治療用テーラーメイドナノセルは、上により詳細に記載した通り、何れのサイズである場合もある。
【0158】
ここまでで少なくとも1つの第一の治療薬と複合体化されているナノコアは、同様に少なくとも1つの第二の治療薬と複合体化されている脂質−PEGナノシェルと混合され、本発明のテーラーメイドナノセルを形成する。ナノ粒子を脂質外層と混合する方法は、当業者に既知であり、本明細書に参考として組み入れられ、上に記載している、2005年3月2日出願の米国特許出願第11/070,731号に記載されている。
【0159】
本発明のテーラーメイドナノセルを調製するためのキットも、本発明に包含される。本発明のキットは、1)少なくとも1つの第一の治療薬を有する、調製されたナノコア、及び2)少なくとも1つの第二の治療薬を有する、調製された脂質二重層−PEGナノセルを含む。本発明の一実施形態において、これらの2つの成分は、個別の無菌容器に含まれ、投与前に混合される。この方法で、ナノセルは、例えば異なるナノセルと異なるナノコアとを混合することにより、個体の特定の必要に合わせてテーラーメイドされる場合がある。
【0160】
一般的に、本発明のナノセルは、個体に治療化合物を投与するための当業者に既知の方法を介して個体に投与される。
【0161】
ナノセルの投与は、静脈注射(I.V.)、筋肉内注射(I.M.)、皮下注射(S.C.)、皮内注射(I.D.)、腹腔内注射(I.P.)、くも膜下腔内注射(I.T.)、胸膜内注射、子宮内注射、経直腸、経膣、局所、腫瘍内注射等を介して行われる場合がある。ナノセルは、注射又は一定期間にわたる段階的な輸液によって非経口投与してもよく、蠕動手段によって送達してもよい。
【0162】
投与は、経粘膜的又は経皮的手段による場合がある。経粘膜又は経皮投与の場合、浸透するバリアに適切な浸透剤が製剤中で使用される。このような浸透剤は、当業界で周知であり、これらには、例えば経粘膜投与の場合、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が含まれる。加えて、浸透を促進するために界面活性剤が使用される場合がある。経粘膜投与は、例えば経鼻スプレーを介して行われる場合もあれば、座薬を使用して行われる場合もある。経口投与の場合、本発明のナノセルは、カプセル、錠剤及び炭酸水等の従来の経口投与形態中に製剤化される。
【0163】
局所投与の場合、ナノセルは、当業界で周知の通り、軟膏、軟膏剤、ゲル又はクリーム中に製剤化される。テーラーメイドナノセルは又、吸入を介して投与される場合もある。
【0164】
ナノセルは、投与製剤と相溶性のある方法にて治療有効量投与される。投与する量及びタイミングは、処置する被験体、活性成分を利用する被験体の器官の状態、及び所望の治療効果の度合いにより異なる。投与を必要とする活性成分の正確な量は、医師の判断により異なり、各個体及び各疾患に特異的である。
【0165】
本発明の方法を実施するのに有用なナノセルは、当業者に周知の通り、所期の用途に好適な、活性成分を含有する何れかの製剤又は薬物送達系のものである。経口投与、直腸投与、局所投与又は非経口投与(吸入、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射及び静脈注射を含む)に好適な薬学的に許容される担体は、当業者に既知である。この担体は、製剤の他の成分との相溶性があり、受容者に有害でないという意味において薬学的に許容されなければならない。
【0166】
物質を血流に急速に投入することができる胃腸管へのアクセスは、経口かん腸、又は注射式投与形態を使用して達成してもよい。ナノセルは、大量注射又は噴霧として投与される場合もあれば、例えば2、4、6又は8時間毎に、一定期間にわたり連続して(挿間的に)投与される場合もある。
【0167】
定義
ナノセル:本発明によれば、「ナノセル」という用語は、ナノコアがマトリックス又はシェル内に包囲されているか封入されているナノ粒子、即ち、大きい粒子内に含まれる小さい粒子、又は気球内に含まれる気球を意味する。ナノセルは、脂質二重層により包囲されるナノコア中に、放射性核種等のイメージング薬、又は抗癌剤等の治療薬を有する。脂質二重層はPEGにより修飾される場合がある。他の実施形態において、ナノコアは、重合性マトリックス又はシェルにより包囲される。
【0168】
ナノコア:本明細書で使用される「ナノコア」という用語は、ナノセル中の任意の粒子を指す。ナノコアは、マイクロ粒子、ナノ粒子、量子ドット、ナノデバイス、ナノチューブ、又はナノセル中に含めるのに適切な大きさのその他何れかの組成物である場合がある。ナノコアは、例えば癌、特に固形腫瘍等の血管新生疾患又は障害の可視化、検出及び処置に使用される、放射性核種等のイメージング薬、又は抗癌剤等の治療薬を含む。
【0169】
本明細書で使用される「イメージングナノセル」という用語は、「放射性核種ナノセル」と称される場合もある。イメージング又は放射性核種ナノセルは、診断及び処置の何れの方法にも有用な場合がある。
【0170】
以上又は以下で引用する参考文献は全て、参考として本明細書に組み入れられている。
【0171】
本発明は、以下の実施例によって更に例証される。実施例は、本発明の理解を助ける目的で提供されるものであり、それらを限定するものとして解釈されない。
【実施例】
【0172】
実施例1
本発明は、体循環に注射した場合の不溶性及び凝集性及び全体分布を含め、正常組織と疾患組織の識別の妨げとなる、イメージングにナノ粒子を使用することの限界の幾つかを克服する。これまでも、ペグ化された置換基の結合、又は標的となる送達のための種々の官能基及びペプチドによるコーティングを含め、懸濁液中におけるナノ粒子の安定性を維持するための種々の手法が採られてきた。しかし、依然としてこのような手法では、サイズがナノスケールであるために、細網内皮系(RES)による取り込み、又は正常組織による取り込みの可能性を克服できずにいる。
【0173】
本発明は、核ナノコアが励起後に放射線を発する量子ドット又はナノ粒子である、修飾された核ナノセルについて説明する(図1)。脂質二重層中の核ナノコアの封入、及び二重層表面上におけるPEGの存在は、RESが異物として認識するのを阻止し、従って、ナノセルは、正常な非疾患組織中への内部移行を回避することができる。更に、ナノセルのサイズは、腫瘍の脈管構造中の孔径である60〜600nmの範囲であり、従って、ナノセルは腫瘍脈管構造から浸出することしかできず、その他何れかの組織中には浸出できない。このことは、修飾したナノセルのシグナルが脾臓(RESの一部)中で殆ど検出されておらず、ナノセルはRESによって取り込まれず、2つの高度な脈管組織である肝臓又は肺中の脈管成分内に制限されていることを示す、図2の結果によって更に裏付けられている。対照的に、修飾されたナノセルは固形腫瘍中に浸出し、異なる画像パターンを示す(図2、3)。これらの結果は、核ナノセルが腫瘍又はその他の血管新生に由来する疾患を同定する強力なイメージング技法であることを示す。
【0174】
結果
インビボにおけるナノセルの局在化
量子ドットで製造したナノセルを、腫瘍を有するマウスに注射した。処置の10及び24時間後に回収した細胞片(30μm)をvWF免疫染色して、血管の輪郭を描いた。画像は、LSM510共焦点顕微鏡を使用して、488nmの励起並びにFITC(vWF)及びローダミン(Qdots)の発光により取り込んだ。
【0175】
図2は、投与24時間後における脾臓、肝臓、肺切片のvWF、ナノセル及びマージ画像を示しており、ナノセルが血管の区画に限定されていることを示している。腫瘍断面は、ナノセルが10時間後には依然として脈管構造内にあり、24時間までには浸出することを示している。
【0176】
図3は、組織切片の3D再構築におけるvWF及びナノセルの強度の深度コードを示しており、生理的脈管構造に比べてナノセルが24時間までに腫瘍から浸出することを明らかに示している。
【0177】
腫瘍細胞をマウスに移植し、成長させて固形腫瘍にした。量子ドットコアを有するナノセルを動物に注射し、投与10時間及び24時間後に屠殺して、組織を回収、固定及び血管染色した。図2に示す通り、脾臓への取り込みは制限されており、修飾されたナノセルは肺及び肝臓の脈管構造に限定され、修飾されたナノセルは腫瘍外に浸出する。分布パターンの差により、診断イメージング薬としての修飾ナノセルの有用性が示されている。
【0178】
同様に、図3は、腫瘍細胞をマウスに移植し、成長させて固形腫瘍とした、同様の実験の共焦点画像を示す。量子ドットコアを有するナノセルをマウスに注射し、投与10時間及び24時間後に屠殺して、組織を回収、固定及び血管染色した。図3に示す画像は、Z軸上に画像をマージすることにより3次元のナノセルの分布を示す深度コードである。これらの共焦点画像に示す通り、脾臓中への取り込みは制限されており、修飾されたナノセルは肺及び肝臓の脈管構造に限定され、修飾されたナノセルは腫瘍外に浸出する。分布パターンの差により、診断イメージング薬としての修飾ナノセルの有用性が示されている。
【0179】
材料及び方法
ナノセルの合成
ナノセルの脂質外被を調製するため、コレステロール(CHOL)、卵ホスファチジルコリン(PC)、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミンのポリエチレングリコール(分子量2000)(DSPE−PEG)を、Avanti Polar Lipids(米国アラバマ州バーミングハム)から得た。そしてコンブレタスタチンA4をTocris Cookson(米国ミズーリ州エリスビル)から得た。その他全ての試薬及び溶媒は分析用であった。PC:CHOL:DSPE−PED=2:1:0.2モルの脂質膜を、丸底フラスコ中の2mLのクロロホルムに27.5mgの脂質を溶解することによって調製し、コンブレタスタチンA4(12.5mg)を、薬剤:脂質=0.9:1のモル比で、クロロホルム混合物中に共に溶解した。クロロホルムをロータリーエバポレーターを使用して蒸発させ、単層の脂質/薬剤膜を形成した。65℃で1時間振とうさせた後、この膜を1mLのHOに再懸濁して、脂質二重層中にコンブレタスタチンA4を優先的に封入した。ナノセルを合成するに当たり、250μgのドキソルビシンを含有するナノ粒子を水性脂質懸濁緩衝液に添加した。得られた懸濁液を、携帯型の押出機(Avestin[カナダオンタリオ州オタワ])を使用して、200nmの膜に65℃で押し出した。そして動的光散乱法(Brookhaven Instruments Corp.[米国ニューヨーク州ホルツビル])により、平均ベシクルサイズを測定した。
【0180】
組織分布試験
ナノセルをコア中の量子ドットを使用して製造し、腫瘍を有するマウスに静脈注射した。これらの動物を種々の時点で屠殺し、剖検時に高度に血管に富む器官を抽出した。抗フォンウィルブランド因子に対する抗体を使用して、組織切片(厚さ30μm)を免疫染色し、血管の輪郭を描いた。そして488nmレーザー線による励起及びFITC/ローダミン波長の発光により、512×512ピクセルの解像度の共焦点画像を得た。深度コーディングは、LSM510ソフトウェアを使用して実施した。
【0181】
インビボ腫瘍モデル
オスのC57/BL6マウス(20g)の脇腹に、3×10のGFP−BL6/F10又は2.5×10のLewis肺癌細胞を静脈注射した。そして腫瘍の増殖を定期的に監視し、腫瘍の容積が50mmに達した段階で、マウスを種々の処置群に無作為化した。100μlの投与がコンブレタスタチン50mg/kg及びドキソルビシン500μg/kgに相当するように、各製剤、ナノセル又は単純なリポソームを調製、定量化及び希釈した。
【0182】
腫瘍脈管構造の免疫組織化学
腫瘍試料をTissue Tek中に包埋し、ドライアイスで急速凍結した。Reichart低温維持装置を使用して薄い低温切開片(10μm)を調製し、メタノール中で固定した。次に、これらの切片をTriton X及びTweenを含むTris緩衝食塩水中で透過化処理し、1%ヤギ血清でブロッキングした。これらの切片を、内皮細胞のマーカーであるフォンウィルブランド因子(Dako、2000倍希釈)に対するウサギ一次抗体で一晩プロービングした後、切片を洗浄して、テキサスレッドと結合させたヤギ二次抗体で再プロービングした。それらの切片を、スローフェード(モレキュラープローブ)でコーティングし、Leica LSM510共焦点顕微鏡を使用して画像化した。
【0183】
画像は1切片につき3箇所から無作為に得た。蛍光色素を488nm及び543nmのレーザー線で励起し、505−530BP及び565−615BPフィルターを使用して、512×512ピクセルの解像度の画像を得た。そして、224交点の正方形の網状組織を使用した面積測定のポイントカウント法により、立体解析法を使用して血管密度を定量化した。
【0184】
実施例2
喘息処置用ナノセルの調製
エマルジョン−溶媒蒸発法により、PVAを安定剤として使用して、PLGAからデキサメタゾンを有するナノ粒子を合成した。次に、噴霧乾燥法を使用して、これらのナノ粒子を乳糖のシェルでコーティングした。噴霧乾燥の前に、気管支拡張剤であるサルブタモールを乳糖溶液に溶解した。続いて、インビボにおける投与の前に、形成されたナノセルを一晩凍結乾燥させた。そしてSEM検査を行うため、脱水したナノ粒子を炭素グリッド上で金めっきを施し、JeolのEM(倍率3700倍)を使用してこれらを解析した。
【0185】
図5に示す通り、電子顕微鏡写真は、形成されたナノ粒子が球状であり、5×10〜20×10mmの各種サイズ範囲であることを示す。次に、これらのナノ粒子を、10〜10nmの範囲の粒子サイズとする乳糖層でコーティングした。
【0186】
放出動態の特徴付け
薬剤を投入したナノセルを、1mLのPBS緩衝液又は低酸素細胞溶解物に懸濁して、透析袋中に密封した(分子量カットオフ:10,000)。透析袋を軽く振とうさせながら、37℃のPBS緩衝液20mL中でインキュベートした。そして、所定の時間間隔でインキュベーション培地から一定量を抽出し、アセトニトリル及び水溶出液の直線勾配法にて、C18カラムを使用した逆相HPLCにより、放出された薬剤を定量化した。
【0187】
図5に示す通り、サルブタモールは、1分以内に乳糖ナノシェルから急速に放出され、数時間以内にピーク濃度に達する。これに対し、ナノコアはデキサメタゾンを緩徐に放出し、濃度は数時間にわたり維持される。これはナノセルとして重要な点であり、これによって狭窄した気道の急速な弛緩が可能となり、遅らせた慢性的な炎症段階が開始する時には肺の中で正しく利用できるように、デキサメタゾンの放出を遅らせることができる。
【0188】
喘息のインビボモデル
ラットのOVA感作
PBS中のOVA又はオブアルブミン(Sigma、1mg/mL)を、等量の脱イオン水中の10%(w/v)ミョウバン(alum、Sigma)と混合し、10N NaOHを使用してpHを6.5に調整した後、室温で60分間インキュベートした。次に、200rpmで10分間遠心分離し、OVA/alumペレットを脱イオン水(1mg/mL)中で元の用量まで再懸濁した。1日目に、32匹のラットに1mLのOVA/alum懸濁液を腹腔内注射した。
【0189】
OVA/alum懸濁液(10mg/mL)を同様の技法を使用して調製し、OVAの気管内(i.t.)投与を行った。即ち、5mLのケタミンHCl(100mg/mL)を0.5mLのキシラジンHCl(100mg/mL)と混合して、ケタミン−キシラジンのカクテル原液を調製した。0.07mL/体重100g(静脈注射、63mg/kgケタミン及び6mg/kgキシラジンに相当)にてラットを麻酔し、板の上に仰臥位で寝かせた。OVA/alum懸濁液(7日目に250μL、14、18及び21日目に125μL)を舌背に入れ、1時間後にラットを麻酔から覚醒させた。
【0190】
続いて、トルイジンブルー色素によりOVAの沈着パターンを調べた。OVA/alum(10mg/mL)懸濁液をトルイジンブルーと混合した後、250μLを気管内(i.t.)経路を介して投与した。そして1時間後にラットを安楽死させ、気道及び胃腸管を解剖したところ、トルイジンブルー染色は気管気管支樹で確認できたが、食道及び胃では検出されなかった。
【0191】
OVAの投与及び処置
ラットは以下の8群に分けた。
第1群:対照、OVA投与なし、治療なし
第2群:対照、OVA投与、治療なし
第3群:薬剤なし、100μgサルブタモール/mg乳糖
第4群:薬剤なし、100μgデキサメタゾン/mg乳糖
第5群:薬剤なし、100μgサルブタモール+100μgデキサメタゾン/mg乳糖
第6群:薬剤なし、50μgサルブタモール+100μgデキサメタゾン/mg乳糖
第7群:ナノセル製剤、100μgサルブタモール+100μgデキサメタゾン/mg乳糖
第8群:ナノセル製剤、50μgサルブタモール+100μgデキサメタゾン/mg乳糖。
【0192】
22日目に、ケタミン−キシラジンカクテルの腹腔投与によりマウスを麻酔し、呼吸速度及びパターンを監視した。OVA 3mg/ラットの吸入投与を行い、OVA投与後の呼吸速度及び呼吸困難を監視した。次に、第3〜8群のラットは、肺吸入経路を介して薬剤なし又はリポソーム封入ナノ粒子(サルブタモール及び/又はデキサメタゾン)による処置を受けた。肺吸入は、小動物のエアゾール吸入専用の吸入器(Penn Century[米国ペンシルバニア州フィラデルフィア])を使用して行い、その後ラットの呼吸速度及び治療応答を観察した。
【0193】
試料の収集
治療薬の投与から6時間後に、麻酔したラットを心穿刺によって安楽死させた。血液細胞計数を行うために血液試料を収集し、動物の気道を解剖した。そして、主流気管支の左肺を結び止めた後、細胞病理と喘息マーカーのために、右肺から気管支肺胞洗浄液(BAL、1.5mLの生理食塩水で3回)を収集した。又、気管並びに左肺の上葉及び下葉を収集し、組織病理のために10%ホルマリン中に保存した。
【0194】
図6に示す通り、ナノセルによる処置によって、卵子投与マウスの肺中の浸潤細胞のレベルは、未投与の正常マウスで観察されるレベルと同程度に維持される。対照的に、デキサメタゾン及びサルブタモールを単に添加しただけでは、炎症を基底レベルまで減少させることができなかった。これは、ナノコアからのコルチコステロイドの徐放によって、より少量の薬剤が血液循環中に吸収され続け、その殆どが炎症段階の開始する6時間後に肺で作用することが保証されることを示している。対照的に、薬剤の殆どは薬剤なしで投与された時点で吸収され、炎症を阻害するために肺中でより少量の薬剤が有効となる。
【0195】
実施例3
抗癌剤及びイメージング薬の開発は大きな進歩が見られるにもかかわらず、大きな欠点として、悪性組織の選択性が欠如している点がある。現在、最も一般的な薬剤送達系及びイメージング薬は、癌細胞の表面で過剰に発現するタンパク質をターゲティングする。グリコシル化機構の正常な機能の変化は、癌化及び腫瘍形成の一貫した徴候として、益々認識されてきている。多くの場合、これらの変化は、特に悪性組織上における特定の癌関連炭水化物の過剰発現をもたらす。炭水化物との分子間相互作用の複雑さにより、イメージング及び薬物送達のために特異的に炭水化物をターゲティングするシステムは殆ど設計されていない。種々の組織中において炭水化物を検出するためにレクチンを使用するにもかかわらず、その低親和性、高分子量、活性構造の安定性、及び選択的化学修飾の複雑さによって、医療用途での使用が限られている。従って、病変組織へのイメージング薬及び治療薬の選択的送達を向上させる新しいシステムが必要とされている。この実施例において、本発明者等は、合成コンジュゲートがこの急務となっている試みのための信頼できるシステムとなることを示している。これらの分子送達系は、治療薬又はイメージング系の新規製剤として、バイオテクノロジー/薬学/診断業界に大きな価値をもたらす。
【0196】
この実施例は、種々の組織中で癌関連炭水化物をターゲティングする、設計及び合成された分子足場を示している。特に、本発明者等は、癌関連炭水化物とのコンジュゲートの選択性及び親和性を向上させるために、多価の炭水化物結合分子を示すためのナノスケールの足場を使用する。これらの足場は、悪性組織に対するコンジュゲートの選択性を可視化するために、種々のイメージングプローブとコンジュゲートされる。結合及び選択性の一次スクリーニング方法として、本発明者等は、適合する対照に加えて、多種多様の異なる癌組織を含む組織アレイを使用した。本発明者等の結果では、合成コンジュゲートが非悪性組織よりも特定の癌組織に対する良好な選択性及び感受性を示すことが証明されている。本発明者等は又、これらのコンジュゲートを動物モデルで試験し、腫瘍内における局在化が向上していることを証明した。これらの合成コンジュゲートは又、病変組織に治療薬を選択的に送達するために、種々の薬剤を使用して誘導体化することもできる。
【0197】
結果
ほ乳類細胞表面炭水化物の構造変換により、細胞接着及び運動機能における病理学的変化がもたらされ、ひいては癌細胞の凝集及び転移をもたらす可能性がある。これらの変化の例は、大腸の上皮表面の保護粘液の主要な糖タンパク質成分である、大腸癌ムチンで観察されている。これらの炭水化物を豊富に含む上皮糖タンパク質は、コアタイプ、バックボーンタイプ及び周辺構造に関して説明されており、これらの構造の差については、診断及び予後診断マーカーのために現在研究中である。一般的に、癌に関連するムチンの多くは、正常細胞上ではシアル酸化されるが、癌細胞中ではシアル酸化されないことが知られている、コアタイプ1のトムセン−フリーデンライヒ抗原(TF抗原)である、免疫優勢Galβ1−3GalNAcα二糖の上昇を示す。
【0198】
種々の組織試料でTF抗原を検出するためにピーナッツ凝集素(PNA)レクチン(及び他のレクチン)を使用するにもかかわらず、その低親和性、高分子量、活性構造の安定性、及び選択的化学修飾の複雑さによって、医療用途での使用が限られている。最近、TF抗原に対する良好な親和性及び選択性を有するペプチドが、ファージ提示法ライブラリーから選択された(図7)1,2。安定性及び数多くの可能な入手しやすい化学修飾は、このTF抗原標的物質を種々の臨床用途に活用する新たな道を切り拓いた。しかし、現在では、それらの抗原に対する炭水化物結合パートナーの選択性及び親和性は、結合価に大きく左右されることが知られている。実際、このペプチドは、モノマーとして示されると、0.6μMの親和性でTF抗原と結合する。本発明者等の大きな目標の1つは癌組織の選択的ターゲティングであることから、ターゲティング剤の親和性及び選択性の向上は必要不可欠である。ナノスケールの足場は、ターゲティング剤との誘導体化のために複数部位を許容する大きな表面積をもたらす。本明細書において、本発明者等は、癌組織に対するターゲティング剤の選択性及び親和性を最適にする方法として、多価の炭水化物結合パートナーを示すナノスケール足場によってもたらされる表面を活用する。ナノセルとの関連において、このターゲティング剤は、好ましくはナノシェルの外面に取り込まれるが、ナノセルの内側のコアの表面に取り込まれてもよい。
【0199】
一例として、本明細書において本発明者等は、癌細胞表面上の癌関連炭水化物を選択的にターゲティングするために、多価の合成ペプチドを示す半導体ナノ結晶(量子ドット)を使用している。この実施例において、前述のTF抗原ペプチドは、ナノ結晶表面のポリエチレングリコール(PEG)スペーサーの末端に挿入されるマレイミドに選択的にコンジュゲートするためにN末端のチオール基を取り込むように修飾されている。量子ドットとペプチドの間のPEGスペーサーは、ペプチドの柔軟性を向上させ、それによって細胞表面の抗原との多価の相互作用を促進する(図8)。蛍光エネルギー移動(FRET)実験によりTF抗原結合の特異性及び親和性について試験を行ったところ、ナノ結晶コンジュゲートは、向上した親和性(約3nM)による特異的結合を示した。図9は、(TF抗原を含有する)蛍光標識アシアロフェツインによる、FRET機序を介した565nmでの量子ドット発光のクエンチングを示す。図に示す通り、TF抗原を添加することによるナノ結晶−アシアロフェツイン複合体の解離は、相互作用の特異性を示している。
【0200】
本発明者等は、組織アレイ系を使用して、種々のヒト組織に対するこれらのナノスケール足場の選択性を効率的にスキャニングした。対照として、本発明者等は又、ナノ結晶を6個のアミノ酸(ヘキサマー)の無作為なペプチド配列で誘導体化した。図10は、ヘキサマーコンジュゲートと比較した、癌組織に対するTF抗原結合コンジュゲートの選択性の対照を示している。TF抗原結合コンジュゲートは、特に肺癌、黒色腫、及び非ホジキンリンパ種に対する特異的な結合を示した(図11)。
【0201】
インビボにおけるコンジュゲートの選択性を評価するため、本発明者等は、黒色腫マウスモデルでこれらのコンジュゲートを試験した。これらのコンジュゲートを腫瘍を有するマウスに注入し、投与24時間後に採取した組織片(30μm)をLSM510共焦点顕微鏡を使用して解析した。図12に示す通り、腫瘍における量子ドットの蓄積は、TF抗原結合コンジュゲートで観察されたが、ヘキサマーコンジュゲートでは観察されなかった。これは、癌組織に対する炭水化物ターゲティング剤の選択性を証明している。
【0202】
方法
ペプチドの合成
自動ACTペプチド合成装置を使用することにより、PAL−PEG−PG樹脂上でペプチド(PrPUP)を合成した。ペプチドは、C末端アミド及びN末端アセチル誘導体として調製した。システイン以外の全ての残基には、標準の9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学及びHBTU/HOBTの活性化を使用した。この場合、予め活性化したFmoc−L−Cys(Trt)−OPfpを塩基の非存在下で使用して、ラセミ化を防止した。
【0203】
ペプチドの精製及び特徴付け
ペプチドを85:10:5の比率の冷たいHO/CHCN/DMSO(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)含有)に溶解して、0.45μmのフィルターでろ過し、Waters Prep LC 4000システムにて5〜60%勾配を使用して、逆相HPLCにより、アセトニトリル/0.1%TFA中で30分間精製を行った。ペプチドは、エレクトロスプレー質量分析法(ESMS)により収集及び特徴付けを行った。TF抗原結合ペプチド:[[M+3H]/3691.4(測定値);691.8(計算値)]及びヘキサマーペプチド:[[M+H]/774.5(測定値);774.9(計算値)]
炭水化物結合ペプチドを使用した量子ドットの誘導体化
Quantum Dot Corporation/Invitorgen(米国カリフォルニア州ヘイワード)から量子ドット(565nm)を得た。この量子ドットは、ナノ粒子の表面に共有結合で結合した2,000の分子量を持つPEGスペーサーを含み、PEGスペーサーの反対側に1級アミンを含む。このペプチドは、量子ドットの供給業者が支給する抗体の標準プロトコールを使用して結合した。即ち、量子ドット表面のアミンを、最初にヘテロ二官能性架橋剤である4−(マレイミドメチル)−1−シクロヘキサンカルボン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC)を使用して修飾した後、ペプチド上でマレイミドを末端システインチオールと反応させる。
【0204】
組織結合試験
種々の癌組織及び正常細胞を含むAmicon TMA 1010組織アレイにて、組織結合試験を行った。試料を組織と4時間インキュベートし、結合していない分子を洗浄した後、LSM510共焦点顕微鏡を使用して組織を解析した。
【0205】
参考文献
【0206】
【表1】

本明細書に記載される参考文献は全て、全体が参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】図1は、本発明の核ナノセルのモデルを示す。放射性核種含有ナノコアは、PEGで修飾された脂質ナノシェルにより包囲されている。
【図2】図2は、インビボにおけるナノセルの局在化を示す。腫瘍細胞をマウスに移植し、成長させて固形腫瘍にした。これらの動物に修飾ナノセルを注射し、投与10時間及び24時間後に屠殺して、組織を固定及び血管染色した。これらの結果は、脾臓、肝臓及び肺における血管、修飾ナノセル及び両者のマージを示している。これらの共焦点画像に示す通り、脾臓への取り込みは制限されており、ナノセルは血管及び腫瘍にのみ存在する。
【図3】図3では、腫瘍細胞をマウスに移植し、成長させて固形腫瘍にした。これらの動物に量子ドットコアを有するナノセルを注射し、投与後10時間及び24時間後に屠殺して、組織を回収、固定及び血管染色した。掲載の画像は、Z軸上に画像をマージすることにより3次元のナノセルの分布を示す深度コードである。これらの共焦点画像に示す通り、脾臓中への取り込みは制限されており、肺及び肝臓の脈管構造に限定され、腫瘍外に浸出する。
【図4】図4は、特定疾患の処置のためにテーラーメイドされていない、一般的なナノセルのモデルを示す。
【図5A】図5A〜5D:図5A及び図5Bは、喘息の処置のためにテーラーメイドされたナノセルの電子顕微鏡写真を示す。図5Cは、気管支拡張剤であるサルブタモールが急速に放出されることを示し、図5Dはコルチコステロイドであるデキサメタゾンが数時間にわたり放出されることを示す。
【図5B】図5A〜5D:図5A及び図5Bは、喘息の処置のためにテーラーメイドされたナノセルの電子顕微鏡写真を示す。図5Cは、気管支拡張剤であるサルブタモールが急速に放出されることを示し、図5Dはコルチコステロイドであるデキサメタゾンが数時間にわたり放出されることを示す。
【図5C】図5A〜5D:図5A及び図5Bは、喘息の処置のためにテーラーメイドされたナノセルの電子顕微鏡写真を示す。図5Cは、気管支拡張剤であるサルブタモールが急速に放出されることを示し、図5Dはコルチコステロイドであるデキサメタゾンが数時間にわたり放出されることを示す。
【図5D】図5A〜5D:図5A及び図5Bは、喘息の処置のためにテーラーメイドされたナノセルの電子顕微鏡写真を示す。図5Cは、気管支拡張剤であるサルブタモールが急速に放出されることを示し、図5Dはコルチコステロイドであるデキサメタゾンが数時間にわたり放出されることを示す。
【図6】図6は、喘息に関連する炎症に対するナノセル処置の効果を示す。(サルブタノール及びデキサメタゾンからなる)ナノセルの投与後、炎症は、肺中の浸潤細胞を測定することにより定量化した通り、通常の併用の等量に比べて優位に低くなる。これは、本発明のナノセルが有効性の向上をもたらすことを示す。
【図7】図7は、TF抗原結合ペプチドの配列(配列番号1)を示す。
【図8】図8は、Tf抗原選択的量子ドットコンジュゲートを生成するための合成図式を示す。
【図9】図9は、量子ドット565及び蛍光標識アシアロフェツインの間のFRETを示す。量子ドットは450nmで励起し、565nmで発光する。FRET受容体(蛍光標識アシアロフェツイン)の存在下で、ナノ結晶の565nm発光帯は、アシアロフェツイン上のAlexa Fluor 610によるFRETを介してクエンチングされる。過剰なアシアロフェツイン(37nM)により飽和した後、薬剤を含まないTF抗原を添加したところ(3.9及び7.8μM)、565nmの蛍光の回復がもたらされ(グラフ中の矢印)、これはナノ結晶とTF抗原の解離を示している。
【図10】図10は、量子ドットコンジュゲートを使用した悪性組織の選択的ターゲティングを示す。
【図11】図11A〜図11I:図11は、種々の悪性組織:(11A)脳腫瘍、(11B)肺癌、(11C)胸部癌、(11D)黒色腫、(11E)頭頸部癌、(11F)大腸癌、(11G)卵巣癌、(11H)非ホジキンリンパ腫、(11I)前立腺癌に対するコンジュゲートの選択性を示す。
【図12】図12は、B16/F10黒色腫細胞を注入したC57/BL6マウスを示す。無作為なヘキサマー配列及びTF抗原結合ペプチドで標識化された量子ドットは緑色でイメージングされており、脈管構造は赤色でイメージングされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種と結合するリガンドと結合した内側のナノコア、及び脂質及びポリアセチレングリコールを含む外層を有するナノセルを含む放射性核種ナノセル組成物であって、放射性核種が該ナノコアと結合した該リガンドと複合体を形成し、該ナノセルが900nm未満である、組成物。
【請求項2】
前記放射性核種が、(99m)Tc、(95)Tc、(111)In、(62)Cu、(64)Cu、(67)Ga及び(68)Ga、ヨウ素−123、ヨウ素−131、ルテニウム−97、銅−67、コバルト−57、コバルト−58、クロム−51、鉄−59、セレン−75、タリウム−201、Tc、Ru、Co、Pt、Fe、Os、Ir、W、Re、Cr、Mo、Mn、Ni、Rh、Pd、Nb、Ta及びイッテルビウム−169からなる群から選択される、請求項1に記載の放射性核種ナノセル組成物。
【請求項3】
標的リガンドを更に含む、請求項1に記載の放射性核種ナノセル組成物。
【請求項4】
治療部分を更に含む、請求項1に記載の放射性核種ナノセル組成物。
【請求項5】
前記ポリアセチレングリコールがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載の放射性核種ナノセル組成物。
【請求項6】
インビボにおいて血管新生又は悪性組織を検出する方法であって、
a)前記ナノセルの全体直径が約60nm〜約600nmである、請求項1に記載の放射性核種ナノセル組成物を個体に投与すること;及び
b)一定の期間の後該個体をイメージングすることであって、該期間は、該放射性核種ナノセルが血管新生又は悪性組織部位に入ったときの時間であり、組織中に放射性核種が存在することが、該組織が血管新生又は悪性であることを示すこと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記血管新生組織が、癌、固形腫瘍又は固形腫瘍の転移、網膜症、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、血管腫、潰瘍性大腸炎、クローン病、変形性関節症、関節リウマチ、角膜移植後拒絶反応、血管新生緑内障及び後水晶体繊維増殖症からなる群から選択される、血管新生性疾患もしくは障害、又は悪性腫瘍の結果である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
脂質及びポリアセチレングリコールを含む外層内に封入された、所定の波長を励起し放射する内側のナノコアを有するナノセルを含むナノセル組成物であって、該ナノセルが900nm未満である、組成物。
【請求項9】
前記ナノセルが量子ドット、ナノワイヤ、ナノチューブ又は蛍光色素結合ナノ粒子から選択される、請求項8に記載のナノセル。
【請求項10】
標的リガンドを更に含む、請求項8に記載のナノセル。
【請求項11】
治療部分を更に含む、請求項8に記載のナノセル。
【請求項12】
前記ポリアセチレングリコールがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項8に記載のナノセル。
【請求項13】
少なくとも1つの第一の治療薬と関連する内側のナノコア、及び少なくとも1つの第二の治療薬と関連する外側のナノシェルを有するナノセルを含むテーラーメイドナノセル組成物であって、該ナノシェル及びナノコアが、第一の治療薬及び第二の治療薬を種々の速度で放出するように製剤化されており、該ナノセルが900nm未満である、組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの標的リガンドを更に含む、請求項13に記載のナノセル。
【請求項15】
前記第一の治療薬が該第二の治療薬と異なる、請求項13に記載のナノセル。
【請求項16】
前記第一の治療薬が該第二の治療薬と同じである、請求項13に記載のナノセル。
【請求項17】
前記ナノセルのサイズが約60nmより大きい、請求項13に記載のナノセル。
【請求項18】
少なくとも1つの第一の治療薬と関連する内側のナノコア、及び少なくとも1つの第二の治療薬と関連する外側のナノシェルを有するナノセルを含む、脳腫瘍の処置のためのテーラーメイドナノセル組成物であって、該第一の治療薬がコルチコステロイドであり、該ナノコアが徐放のために製剤化されており、前記第二の治療薬が化学療法剤であり、該ナノシェルが即時放出のために製剤化されている、組成物。
【請求項19】
前記コルチコステロイドが、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、フルチカゾン及びプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項18に記載のナノセル。
【請求項20】
前記化学療法剤が、BCNU(カルムスチン)、CCNU(ロムスチン)、PCV(プロカルバジン、CCNU、ビンクリスチン)、及びテモゾロミド(Temodar)からなる群から選択される、請求項18に記載のナノセル。
【請求項21】
少なくとも1つの第一の治療薬と関連する内側のナノコア、及び少なくとも1つの第二の治療薬と関連する外側のナノシェルを有するナノセルを含む、喘息の処置のためのテーラーメイドナノセル組成物であって、該第一の治療薬がコルチコステロイドであり、該ナノコアが徐放のために製剤化されており、前記第二の治療薬が気管支拡張剤であり、該ナノシェルが即時放出のために製剤化されている、組成物。
【請求項22】
前記コルチコステロイドが、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、フルチカゾン及びプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項21に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項23】
前記気管支拡張剤が、抗コリン作動薬、イプラトロピウム、β作動薬、アルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルブタモール、サルメテロール及びレバルブテラールからなる群から選択される、請求項21に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項24】
少なくとも1つの第一の治療薬と関連する内側のナノコア、及び少なくとも1つの第二の治療薬と関連する外側のナノシェルを有するナノセルを含む、グレーブズ病の処置のためのテーラーメイドナノセル組成物であって、該第一の治療薬がイオパノ酸であり、該ナノコアが徐放のために製剤化されており、前記第二の治療薬が抗甲状腺薬であり、該ナノシェルが即時放出のために製剤化されている、組成物。
【請求項25】
前記抗甲状腺薬が、メチマゾール、カルビマゾール及びプロピルチオウラシルからなる群から選択される、請求項24に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項26】
前記第一の治療薬が放射性ヨウ素である、請求項24に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項27】
前記第二の治療薬がβ遮断薬である、請求項24に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項28】
少なくとも1つの第一の治療薬と関連する内側のナノコア、及び少なくとも1つの第二の治療薬と関連する外側のナノシェルを有するナノセルを含む、嚢胞性線維症の処置のためのテーラーメイドナノセル組成物であって、該第一の治療薬が抗生物質であり、該ナノコアが徐放のために製剤化されており、前記第二の治療薬が組換え型ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase)であり、該ナノシェルが即時放出のために製剤化されている、組成物。
【請求項29】
前記抗生物質が、シプロフロキサシン、オフロキサシン、トブラマイシン(TOBIを含む)、ゲンタマイシン、アジスロマイシン、セフタジジム、Keflex(登録商標)(セファレキシン)、Ceclor(登録商標)(セファクロル)、ピペラシリン及びイミペネムからなる群から選択される、請求項28に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項30】
少なくとも1つの第一の治療薬と関連する内側のナノコア、及び少なくとも1つの第二の治療薬と関連する外側のナノシェルを有するナノセルを含む、肺線維症の処置のためのテーラーメイドナノセル組成物であって、該第一の治療薬が、徐放薬として製剤化されている抗線維薬であり、前記第二の治療薬が、即時放出のために製剤化されているコルチコステロイドである、組成物。
【請求項31】
前記抗線維薬が、コルチン、ピルフェニドン、コルヒチン、D−ペニシラミン及びインターフェロンからなる群から選択される、請求項30に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項32】
前記コルチコステロイドが、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、フルチカゾン及びプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項30に記載のテーラーメイドナノセル。
【請求項33】
請求項18に記載のテーラーメイドナノセルを被験体に投与することを含む、脳腫瘍の処置のための方法。
【請求項34】
請求項21に記載のテーラーメイドナノセルを被験体に投与することを含む、喘息の処置のための方法。
【請求項35】
請求項24に記載のテーラーメイドナノセルを被験体に投与することを含む、グレーブズ病の処置のための方法。
【請求項36】
請求項28に記載のテーラーメイドナノセルを被験体に投与することを含む、嚢胞性線維症の処置のための方法。
【請求項37】
請求項30に記載のテーラーメイドナノセルを被験体に投与することを含む、肺線維症の処置のための方法。
【請求項38】
請求項13に記載のテーラーメイドナノセルを個体に投与することを含む、インビボにおける血管新生疾患、障害又は悪性腫瘍の処置方法であって、該ナノセルの全体直径が約60nm〜約600nmであり、該第一の治療薬が抗新生物薬であり、該第二の治療薬が抗血管新生薬である、方法。
【請求項39】
前記血管新生疾患、障害又は悪性腫瘍が、癌、固形腫瘍又は固形腫瘍の転移、網膜症、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、血管腫、潰瘍性大腸炎、クローン病、変形性関節症、関節リウマチ、角膜移植後拒絶反応、血管新生緑内障及び後水晶体繊維増殖症からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図11I】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−533157(P2008−533157A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501982(P2008−501982)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/009213
【国際公開番号】WO2006/099445
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】