説明

発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物

【課題】熱衝撃に対して高い耐性を有し過酷な温度サイクル下でもクラックが生じにくいLED用付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも、
(A)下記平均組成式(1)で示される、25℃の粘度が0.1Pas以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(CSiO(4−n−m)/2 (1)
(B)下記平均組成式(2)で示される、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有し、ケイ素原子に結合した全RとHの合計の5モル%以上がフェニル基であり、かつ25℃での粘度が1000mPas以下である直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン ケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.3〜10個となる量、
SiO(4−a−b)/2 (2)
(C)1分子中に1個のアルケニル基と1個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜100質量部、
(D)付加反応触媒 触媒量、
を含有することを特徴とする発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(LED)用付加硬化型シリコーン樹脂組成物に関し、特に硬化物が透明で発光ダイオード素子の保護、波長の変更・調整あるいはレンズの構成材料として適し、更に高温/低温の温度サイクル条件下でもクラック耐性が良好な硬化物が得られる付加硬化型シリコーン樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDへの通電・点灯の際には急激な温度上昇が起こり、LED素子は熱衝撃を受けることが知られている。したがって、LED素子の点灯と消灯の繰り返しにより、LED素子は過酷な温度サイクルに供されることになる。
【0003】
LED素子の封止材料として、一般的にエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の弾性率は高いために、ボンディングワイヤーは温度サイクルによるストレスを受け断線したり、エポキシ樹脂にはクラックが発生することがある。またエポキシ樹脂がLEDチップに与えるストレスが原因で、半導体材料の結晶構造が崩れることによる発光効率の低下も懸念される。
その対策として、室温硬化型のシリコーンゴムをバッファー材として使用し、その外側をエポキシ樹脂で封止する方法が定法として定着している。しかしこの方法では、エポキシ樹脂がシリコーン樹脂に接着しないために、やはり温度サイクルによりエポキシ樹脂とシリコーンゴムとの界面で剥離が発生し、光取り出し効率が経時的に極端に低下することが知られている。
【0004】
エポキシ樹脂に替わる材料として、シリコーン樹脂を使用することが提案されている(例えば特許文献1、2及び3等参照)。シリコーン樹脂は耐熱性、耐候性、耐変色性がエポキシ樹脂に比較して優れており、また特に、透明性、光学特性等において、エポキシ樹脂等他の有機材料に比較して優れていることから、近年青色LED、白色LEDを中心に使用される例が増えてきている。
しかし、これらシリコーン樹脂はエポキシ樹脂に比較して弾性率は低いものの、曲げ強度などの機械特性も低いことから、LEDへの通電・点灯の際に生じる熱衝撃によりクラックが発生しやすいという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−1619号公報
【特許文献2】特開2002−265787号公報
【特許文献3】特開2004−186168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高透明性に優れ、熱衝撃に対して高い耐性を有し、過酷な温度サイクル下でもクラックが生じ難く、剥離も発生しないLED用付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、
(A)下記平均組成式(1)で示される、25℃の粘度が0.1Pas以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(CSiO(4−n−m)/2 (1)
(式中、Rはフェニル基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基で、全Rの0.1〜80モル%がアルケニル基であり、n、mは1≦n+m<2、0.2≦m/(n+m)≦0.95を満たす正数である)
(B)下記平均組成式(2)で示される、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有し、ケイ素原子に結合した全RとHの合計の5モル%以上がフェニル基であり、かつ25℃での粘度が1000mPas以下である直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン ケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.3〜10個となる量、
SiO(4−a−b)/2 (2)
(式中、Rは脂肪族不飽和炭化水素基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、a、bは0.7≦a≦2.1、0.01≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす正数である)
(C)1分子中に1個のアルケニル基と1個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜100質量部、
(D)付加反応触媒 触媒量、
を含有することを特徴とする発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供する。
【0008】
このような本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、耐変色性に優れているため高透明性を有しており、熱衝撃に対して高い耐性を有しているため過酷な温度サイクル下でもクラックや剥離が生じ難いものである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、硬化物の耐熱衝撃性が高いため、クラックや剥離が生じ難く、また、高透明性に優れる。よって、発光ダイオード素子用の材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物が好適に用いられる発光半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、従来用いられてきたLED素子用の封止材料は、特にLEDへの通電・点灯の際に生じる熱衝撃によりクラックが発生しやすいという問題を有しており、過酷な温度サイクル下でもクラックや剥離が生じ難い封止材料が求められていた。
【0012】
そこで本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、1分子中に1個のアルケニル基と1個のケイ素原子結合水素原子を有する化合物を使用して、架橋間距離を大きくすることにより、上記課題を達成できることを見出し、LED素子用材料として好適な付加硬化型シリコーン樹脂組成物を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明の発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、少なくとも、
(A)下記平均組成式(1)で示される、25℃の粘度が0.1Pas以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(CSiO(4−n−m)/2 (1)
(式中、Rはフェニル基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基で、全Rの0.1〜80モル%がアルケニル基であり、n、mは1≦n+m<2、0.2≦m/(n+m)≦0.95を満たす正数である)
(B)下記平均組成式(2)で示される、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有し、ケイ素原子に結合した全RとHの合計の5モル%以上がフェニル基であり、かつ25℃での粘度が1000mPas以下である直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン ケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.3〜10個となる量、
SiO(4−a−b)/2 (2)
(式中、Rは脂肪族不飽和炭化水素基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、a、bは0.7≦a≦2.1、0.01≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす正数である)
(C)1分子中に1個のアルケニル基と1個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜100質量部、
(D)付加反応触媒 触媒量、
を含有することを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
<(A)成分>
本発明に使用される(A)成分は、下記平均組成式(1)で示される25℃の粘度が0.1Pas以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサンである。
(CSiO(4−n−m)/2 (1)
(式中、Rはフェニル基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基で、全Rの0.1〜80モル%がアルケニル基であり、n、mは1≦n+m<2、0.2≦m/(n+m)≦0.95を満たす正数である)
【0015】
このオルガノポリシロキサンは、平均組成式(1)において1≦n+m<2であることから理解されるように、分子中にRSiO3/2単位、(C)SiO3/2単位、SiO単位の1種又は2種以上を含有する分岐或いは三次元網状構造のものである。
ここで、式(1)において、Cはフェニル基であり、Rはフェニル基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基であり、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基であり、このような炭化水素基としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;トリル基、キシリル基、ナフチル基等の、フェニル基を除くアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基などの不飽和炭化水素基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基等の非置換のアルコキシ基の他、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基などが挙げられる。
【0016】
本発明では、これら全Rのうち0.1〜80モル%、好ましくは0.5〜50モル%がアルケニル基であることが必要である。アルケニル基の含有量が0.1モル%より少ないとシリコーン樹脂としての必要な硬度が得られず、80モル%より多いと架橋点が多過ぎるためシリコーン樹脂が脆くなってしまうからである。また、n、mは1≦n+m<2、好ましくは1.2≦n+m<1.9、0.2≦m/(n+m)≦0.95、好ましくは0.25≦m/(n+m)≦0.90を満たす正数であるが、n+mが1より小さくても、2以上でも必要な硬度・強度が得られなくなってしまう。またフェニル基の含有量がこれより少なくなってしまっても、シリコーン樹脂として必要な硬度・強度が得られなくなってしまう。アルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
また、(A)成分の25℃の粘度は、0.1Pas以上であることが必要であり、0.1Pas未満であると作業性が低下すると共に、硬化物の強度も不十分となる。
【0017】
<(B)成分>
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有し、ケイ素原子に結合した全RとHの合計の5モル%以上がフェニル基であり、かつ25℃での粘度が1000mPas以下、通常0.5〜1000mPas、好ましくは1〜500mPasである直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
SiO(4−a−b)/2 (2)
(式中、Rは脂肪族不飽和炭化水素基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、a、bは0.7≦a≦2.1、0.01≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす正数である)
【0018】
ここで、式(2)において、Rは好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜10程度の、脂肪族不飽和炭化水素基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基であり、このような炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、a、bは0.7≦a≦2.1、好ましくは1.0≦a≦1.8、0.01≦b≦1.0、好ましくは0.02≦b≦1.0、より好ましくは0.10≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6、好ましくは1.01≦a+b≦2.4、より好ましくは1.6≦a+b≦2.2を満たす正数であり、bが0.01未満ではシリコーン樹脂として充分な硬度が得られなくなってしまう。
【0019】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子構造が直鎖状であり、(A)成分との相溶性、硬化物の物性等の点から、ケイ素原子に結合したRとH(水素原子)のうち5モル%以上、好ましくは10〜50モル%がフェニル基であるものが好適に用いられる。尚、Rにおいてフェニル基以外の場合は、メチル基であることが好ましい。
また(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、そのケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.3〜10個になる割合で配合されていることが好ましい。0.3個未満では硬化が甘くなり、10個を越えると硬化物が脆くなりすぎるからである。好ましくは0.5〜5個である。
【0020】
<(C)成分>
(C)成分は1分子中に1個のアルケニル基と1個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物であり、かかるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。
本発明において使用されるこの(C)成分は、鎖長延長材として作用するものである。その結果、熱衝撃に対して高い耐性を有し過酷な温度サイクル下でもクラックの成長が回避されるのである。(C)成分中のアルケニル基とケイ素原子結合水素原子は分子末端、分子の途中のいずれの位置にあっても差し支えない。また、アルケニル基は、ケイ素原子に直接結合していても他の有機基を介して結合していてもよい。
【0021】
このような(C)成分は、1分子中に1個のみのアルケニル基と1個のみのケイ素原子結合水素原子を有することが重要であって、その構造は限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってよい。具体例としては、例えば以下のものを例示することができる(下記化合物中、y≧0、x≧0である)。
【化1】

【0022】
(C)成分の25℃における粘度は、特に制限されるものでないが、好ましくは10000mPas以下、より好ましくは1〜1000mPasである。
上記(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜100質量部であり、好ましくは5〜80質量部となる量であり、特に好ましくは5〜50質量部である。(C)成分の含有量が1質量部未満であると、耐クラック性に効果がなく、100質量部を越えると得られる硬化物の強度が弱くなる傾向があるからである。
【0023】
<(D)成分>
(D)成分の付加反応触媒は、(A)成分、(B)成分と(C)成分の付加反応による架橋の触媒となるもので、その例としては、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンの配位化合物、白金黒などの白金系触媒、更にパラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられ、触媒効率の高さの面から通常白金触媒が使用される。また特に本用途においては、エレクトロニクス分野である封止型LEDの作製に用いられることから、金属を腐食させる恐れのない低塩素触媒が好ましく、中でも塩素成分を含有しないジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルジフェニルジメチルジシロキサン等で変性されたものが好ましい。これらの付加反応触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0024】
尚、この付加反応触媒の配合量は、触媒として作用する有効量(触媒量)とすることができ、好ましくは(A)〜(C)成分の合計量に対して、1〜1000ppmである。1ppm以上であれば適度な速さで硬化が進み、1000ppm以下であれば作業可能な時間が短くなり過ぎることもなく、また硬化物が黄変し難いため経済的であるからである。特に好ましくは5〜100ppmである。
【0025】
<任意の成分>
本発明の組成物において、上記の(A)〜(D)成分以外の任意の成分として、例えば、付加反応触媒に対して硬化抑制効果を持つ化合物とされている従来公知の制御剤化合物はすべて使用することができる。このような化合物としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含む化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが例示される。制御剤化合物による硬化遅延効果の度合は、制御剤化合物の化学構造によって大きく異なるため、制御剤化合物の添加量は、使用する制御剤化合物の個々について最適な量に調整することが好ましく、室温での長期貯蔵安定性が得られ、かつ硬化が阻害されない範囲程度の量、通常、(A)成分100質量部に対して0.5質量部以下、好ましくは0.01〜0.3質量部の量で使用される。
【0026】
また、本組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有してもよい。この接着付与剤としては、シランカップリング剤やその加水分解縮合物等が例示される。シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等公知のものが例示され、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、好ましくは、0.3〜10質量部である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。
[実施例1]
平均単位式:(PhSiO3/20.55[(CH=CH)MeSiO2/20.2(MeSiO)0.25で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン[性状=固体(25℃)、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=14モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=38モル%、標準スチレン換算の重量平均分子量=3000]90質量部に、ケイ素原子に結合した水素原子、フェニル基及びメチル基の合計に対してフェニル基を10モル%有する水素ガス発生量が200ml/gである粘度が20mPasのオルガノハイドロジェンポリシロキサン18質量部、(C)成分である下記式(C−1)で表される粘度が20mPasの化合物10質量部、塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液0.06質量部、エチニルシクロヘキサノール0.05質量部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を均一混合して、シリコーン組成物(a)を調製した。このシリコーン組成物(a)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで64であった。

HMeSiO(PhSiO)CHCHSiMePhOSiMePhVi (C−1)

【0028】
[実施例2]
主鎖がジフェニルシロキサン単位のみからなり、粘度が0.4Pasの両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン共重合体80質量部、(PhSiO3/20.75[(CH=CH)MeSiO2/20.25で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン[性状=固体(25℃)、ケイ素原子結合ビニル基の含有率=20モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=50モル%、標準スチレン換算の重量平均分子量=1600]20質量部、ケイ素原子に結合した水素原子、フェニル基及びメチル基の合計に対してフェニル基を30モル%有する水素ガス発生量が140ml/gである粘度が20mPasのオルガノハイドロジェンポリシロキサン32質量部、実施例1で使用した式(C−1)の化合物20質量部、塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液0.5質量部、エチニルシクロヘキサノール0.05質量部、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を均一混合して、シリコーン組成物(b)を調製した。このシリコーン組成物(b)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで50であった。
【0029】
[比較例1]
式(C−1)を使用しなかった以外は実施例1にしたがって組成物(c)を調製した。このシリコーン組成物(c)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで69であった。
【0030】
[比較例2]
式(C−1)を使用しなかった以外は実施例2にしたがって組成物(d)を調製した。このシリコーン組成物(d)を150℃で4時間加熱し硬化させたところ、硬さはShore Dで60であった。
【0031】
上記実施例及び比較例で調製したシリコーン組成物(a)〜(d)における評価方法を、下記の要領にて行った。
[評価方法]
発光半導体パッケージ
発光素子として、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが470nmのLEDチップを搭載した、図1に示すような発光半導体装置を使用した。ここで、1が筐体、2が発光素子、3、4がリード電極、5がダイボンド材、6が金線、7が封止樹脂である。封止樹脂7の硬化条件は150℃、4時間である。
【0032】
耐湿及び赤外線リフローの試験方法
作製した発光半導体装置10個を、85℃、85%の恒温恒湿室に24時間入れた後、赤外線リフロー装置(260℃)を3回通し、外観の変化を観察した。結果を表1に示す。尚、樹脂のクラックやLEDパッケージからの剥離が確認されたものをNGとしてカウントした。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示されるように、実施例1〜2は、NG数がいずれも0であり、高温/低温の温度サイクル条件下でもクラック耐性が良好で、剥離も発生せず光取り出し効果が高いことがわかる。また、このようなシリコーン樹脂は、高透明性にも優れたものであった。
一方、比較例1〜2は、半数以上に樹脂のクラックやLEDパッケージから剥離が発生してしまった。これにより、封止材料として従来のものを用いた場合、LEDの生産性が悪くなってしまうことがわかる。
【0035】
以上のことから、本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物であれば、熱衝撃に対して高い耐性を有するため、クラックが生じ難いうえ光取り出し効率も高く、過酷な温度サイクル下に供されるLED用として有用なものであることが実証された。
【0036】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0037】
1…筐体、 2…発光素子、 3、4…リード電極、 5…ダイボンド材、
6…金線、 7…封止樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)下記平均組成式(1)で示される、25℃の粘度が0.1Pas以上の液状又は固体のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(CSiO(4−n−m)/2 (1)
(式中、Rはフェニル基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基で、全Rの0.1〜80モル%がアルケニル基であり、n、mは1≦n+m<2、0.2≦m/(n+m)≦0.95を満たす正数である)
(B)下記平均組成式(2)で示される、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有し、ケイ素原子に結合した全RとHの合計の5モル%以上がフェニル基であり、かつ25℃での粘度が1000mPas以下である直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン ケイ素原子に結合した水素原子数が、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数1個あたり0.3〜10個となる量、
SiO(4−a−b)/2 (2)
(式中、Rは脂肪族不飽和炭化水素基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、a、bは0.7≦a≦2.1、0.01≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす正数である)
(C)1分子中に1個のアルケニル基と1個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜100質量部、
(D)付加反応触媒 触媒量、
を含有することを特徴とする発光ダイオード用付加硬化型シリコーン樹脂組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−190372(P2011−190372A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58363(P2010−58363)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】