説明

発光素子用封止材組成物、その硬化物および発光素子封止体

【課題】成形性に優れ、透明性、耐熱着色安定性に優れる硬化物となりうる発光素子用封止材組成物の提供。
【解決手段】1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリル基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシロキサン化合物と、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物と、ラジカル開始剤とを含有する発光素子用封止材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子用封止材組成物、その硬化物および発光素子封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子を封止するためにエポキシ樹脂を使用すること(例えば、特許文献1)が提案されている。
また、特許文献2においては、光ファイバー用被覆材として、1分子中に、(i)少なくとも2つのウレタン結合と、(ii)少なくとも1つの末端に非反応性の有機基と、(iii)少なくとも1つの末端に(メタ)アクリロイル基とを有する、ポリジメチルシロキサン化合物を含有することを特徴とする液状硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−228249号公報
【特許文献2】特開平9−278850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、白色LED素子を封止するために特許文献1のようにエポキシ樹脂を含有する場合、または特許文献2のようにウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、得られる硬化物の透明性が低く、硬化物が白色LED素子が発光する際の発熱に長期的にさらされることによって硬化物の色が黄変してしまうことを見出した。
また、本発明者は、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリル基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシロキサン化合物を硬化させると粘調なものとなり、当該シロキサン化合物単独では硬化物と成りにくく成形性に劣ることを見出した。
そこで、本発明は、成形性に優れ、透明性、耐熱着色安定性に優れる硬化物となりうる発光素子用封止材組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリル基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシロキサン化合物と、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物と、ラジカル開始剤とを含有する組成物が、成形性に優れ、透明性、耐熱着色安定性に優れる硬化物となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(12)を提供する。
(1) 1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリル基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシロキサン化合物と、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物と、ラジカル開始剤とを含有する発光素子用封止材組成物。
(2) 前記シロキサン化合物が、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリルオキシ基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシラン化合物、または片末端にトリアルキルシリル基を有し反対の末端にラジカル重合性官能基を有する鎖状シロキサン化合物である上記(1)に記載の発光素子用封止材組成物。
(3) 前記シラン化合物が、下記式(I)で表されるものである上記(2)に記載の発光素子用封止材組成物。
an−Si−(O−Si−Rb34-n (I)
(式中、Raはそれぞれ独立にラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基であり、Rbはそれぞれ独立にアルキル基であり、nは1〜3の整数である。)
(4) 前記式(I)で表されるシラン化合物が、下記式(II)で表されるものである上記(3)に記載の発光素子用封止材組成物。
【化4】


(式中、Raはラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基である。)
(5) 前記鎖状シロキサン化合物が、下記式(III)で表される上記(2)に記載の発光素子用封止材組成。
【化5】


(式中、Rcはラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基であり、Rdはそれぞれ独立にアルキル基であり、Reはそれぞれ独立にアルキル基、ラジカル重合性官能基およびラジカル重合性官能基を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、nは2〜100の整数である。)
(6) 前記鎖状シロキサン化合物の数平均分子量が、300〜50,000である上記(2)または(5)に記載の発光素子用封止材組成物。
(7) 前記ラジカル重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
(8) 前記ラジカル重合性化合物が、分子量200〜2,000の(メタ)アクリレートモノマーまたは両末端もしくは側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
(9) 前記ポリシロキサンが、下記式(1)、式(2)および式(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(8)に記載の発光素子用封止材組成物。
【化6】


(式中、R1〜R4はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイル基を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mはそれぞれ独立に0〜165の整数であり、式(1)中のnは2〜200の整数であり、式(2)または式(3)中のnはそれぞれ独立に1〜200の整数である。)
(10) 前記ラジカル重合性化合物の量が、前記シロキサン化合物100質量部に対して、1〜900質量部である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
(11) 上記(1)〜(10)のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物を硬化させることによって得られる硬化物。
(12) LEDチップが上記(11)に記載の硬化物で封止されている発光素子封止体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光素子用封止材組成物は、成形性に優れ、透明性、耐熱着色安定性に優れる硬化物となることができる。
本発明の発光素子封止体は、成形性、透明性、耐熱着色安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の発光素子用封止材組成物は、
1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリル基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシロキサン化合物と、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物と、ラジカル開始剤とを含有する組成物である。
本発明の発光素子用封止材組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。
また、本発明において、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基およびメタクリロイル基のうちの片方または両方であることを示す。
【0009】
シロキサン化合物について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるシロキサン化合物は、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリル基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するものである。
【0010】
シロキサン化合物が有するトリアルキルシリル基は、−Si−R3で表され、Rはそれぞれ独立にアルキル基である。
トリアルキルシリル基が有するアルキル基はその炭素原子数が1〜3の整数であるのが好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
また、アルキル基は反応性官能基を有することができる。反応性官能基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ポリエーテル結合、メルカプト基、水素基等が挙げられる。
【0011】
シロキサン化合物が有するラジカル重合性官能基は、ラジカル重合が可能な炭素炭素二重結合を有する官能基を有するものであれば特に制限されない。
ラジカル重合性官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基;これらを2個以上含む官能基(例えば、ジエンのようなポリエン)が挙げられる。
シロキサン化合物が有するラジカル重合性官能基は、シロキサン化合物にラジカル重合性官能基およびラジカル重合性官能基を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種として結合することができる。
なかでも、透明性、耐熱着色安定性により優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基を有する基が好ましい。
【0012】
(メタ)アクリロイル基を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基に有機基が結合しているものが挙げられる。
有機基は、特に制限されず、例えば、アルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。有機基は、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有することができる。
【0013】
なかでも、炭素原子数1〜12のアルキレン基が好ましい。
炭素原子数1〜12のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、−CH2CH(CH3)CH2−、ヘキサメチレン基、−(CH212−、−(CH22−O−(CH23−、−(CH22−O−(CH22−O−(CH23−が挙げられる。
【0014】
(メタ)アクリロイルオキシ基が結合しているアルキレン基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシトリメチレン基が挙げられる。
【0015】
なかでも、(メタ)アクリロイル基を有する基は、透明性、耐熱着色安定性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシトリメチレン基が好ましい。
【0016】
シロキサン化合物が有する(メタ)アクリロイル基は、透明性、耐熱着色安定性により優れるという観点から、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基に有機基が結合しているものが好ましい。
【0017】
ラジカル重合性官能基の数は、透明性、耐熱着色安定性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、シロキサン化合物1分子あたり、1〜4個であるのが好ましく、1〜2個であるのがより好ましい。
【0018】
シロキサン化合物としては、例えば、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリルオキシ基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシラン化合物、片末端にトリアルキルシリル基を有し反対の末端にラジカル重合性官能基を有する鎖状シロキサン化合物が挙げられる。
シロキサン化合物は、透明性、耐熱着色安定性により優れるという観点から、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリルオキシ基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシラン化合物、または片末端にトリアルキルシリル基を有し反対の末端にラジカル重合性官能基を有する鎖状シロキサン化合物であるのが好ましい。
【0019】
シラン化合物は、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリルオキシ基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するものであれば特に制限されない。
なお、本発明において、シラン化合物は、1個のケイ素原子に少なくとも1個のトリアルキルシリルオキシ基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とが結合しているモノマーをいう。
【0020】
シラン化合物としては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
an−Si−(O−Si−Rb34-n (I)
式中、Raはそれぞれ独立にラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基であり、Rbはそれぞれ独立にアルキル基であり、nは1〜3の整数である。
ラジカル重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基であるのが好ましい。
ラジカル重合性官能基を有する基は、上記と同義である。Raは(メタ)アクリロイルメチル基であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
アルキル基は、上記と同義である。Rbは全てメチル基であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
nは、1であるのが好ましい。
【0021】
式(I)で表されるシラン化合物としては、例えば、下記式(II)で表されるものが挙げられる。
【化7】


式中、Raはラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基である。
【0022】
式(II)におけるRaは、透明性、耐熱着色安定性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルメチレン基、(メタ)アクリロイルエチレン基、(メタ)アクリロイルプロピレン基であるのが好ましい。
【0023】
また、鎖状シロキサン化合物は、片末端にトリアルキルシリル基を有し反対の末端にラジカル重合性官能基を有するものであれば特に制限されず、例えば、下記式(III)で表されるものが挙げられる。
【化8】


式中、Rcはラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基であり、Rdはそれぞれ独立にアルキル基であり、Reはそれぞれ独立にアルキル基、ラジカル重合性官能基およびラジカル重合性官能基を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、nは2〜100の整数である。
【0024】
ラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基は上記と同義である。Rcは(メタ)アクリロイル基であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
アルキル基は上記と同義である。Rdは全てメチル基であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
eはメチル基、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルメチル基が好ましい態様として挙げられる。
nは、2〜30の整数であるのが好ましい。
【0025】
鎖状シロキサン化合物は、成形性、透明性、耐熱着色安定性により優れるという観点から、n=2〜25が好ましい。
【0026】
鎖状シロキサン化合物は、成形性、透明性、耐熱着色安定性により優れるという観点から、その数平均分子量が、300〜50,000であるのが好ましく、300〜10,000であるのがより好ましい。
なお、鎖状シロキサン化合物の数平均分子量は、GPC測定法によって測定されたものである。
【0027】
シロキサン化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シロキサン化合物は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0028】
ラジカル重合性化合物について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるラジカル重合性化合物は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。
また、本発明において、ラジカル重合性化合物はモノマーおよびポリマーを含むものとする。
【0029】
ラジカル重合性化合物としてのモノマー(以下これを「(メタ)アクリレートモノマー」ということがある。)は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものであれば特に制限されない。例えば、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートのようなジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのような3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
なかでも、透明性、耐熱着色安定性により優れるという観点から、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートモノマーは、その分子量が200〜2,000であるのが好ましく、200〜1,000であるのがより好ましい。
(メタ)アクリレートモノマーは、シロキサン結合を有さなくてもよい。
【0031】
ラジカル重合性化合物としてのポリマーは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものであれば特に制限されない。例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するポリシロキサンが挙げられる。
【0032】
1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するポリシロキサンとしては、シロキサン結合を有する主鎖に(メタ)アクリロイル基が結合しているもの、シロキサン結合を有する主鎖に(メタ)アクリロイル基を有する基が結合しているものが挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリロイル基を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基に有機基が結合しているものが挙げられる。
有機基は、特に制限されず、例えば、アルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。有機基は、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有することができる。
【0034】
なかでも、炭素原子数1〜12のアルキレン基が好ましい。
炭素原子数1〜12のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、−CH2CH(CH3)CH2−、ヘキサメチレン基、−(CH212−、−(CH22−O−(CH23−、−(CH22−O−(CH22−O−(CH23−が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリロイルオキシ基が結合しているアルキレン基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシトリメチレン基が挙げられる。
【0036】
なかでも、(メタ)アクリロイル基を有する基は、透明性、耐熱着色安定性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシトリメチレン基が好ましい。
【0037】
ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基をラジカル重合性化合物の両末端または側鎖に有することができる。
ラジカル重合性化合物は、その両末端に、側鎖に、または両末端および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンが好ましい態様として挙げられる。
ラジカル重合性化合物は、分子量200〜2,000の(メタ)アクリレートモノマーまたは両末端もしくは側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンであるのが好ましい。
【0038】
ラジカル重合性化合物が有する(メタ)アクリロイル基の数は、透明性、耐熱着色安定性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、または、得られる硬化物が、(メタ)アクリロイル基が重合してできる、ポリ(メタ)アクリル鎖とポリ(メタ)アクリル鎖とを、ポリシロキサン骨格がつないでいる構造、または主鎖中にポリシロキサン骨格を有する構造となり、耐熱着色安定性により優れるという観点から、ラジカル重合性化合物1分子あたり、2〜4個であるのが好ましく、2〜3個であるのがより好ましい。
【0039】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、下記式(1)、式(2)、式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化9】


式中、R1〜R4はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイル基を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mはそれぞれ独立に0〜165の整数であり、式(1)中のnは2〜200の整数であり、式(2)または式(3)中のnはそれぞれ独立に1〜200の整数である。
【0041】
(メタ)アクリロイル基を有する基は上記と同義である。
式(1)中のmは1〜165が好ましく、nは2〜60が好ましい。
式(1)中の、繰り返し単位数mを有する繰り返し単位と繰り返し単位数nを有する繰り返し単位との配列は特に制限されない。例えば、式(1)で表される化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、またはこれらの複合体であることができる。式(3)で表される化合物も同様である。
【0042】
式(2)中のnは3〜40が好ましい。
式(3)中のmは0〜110が好ましく、nは3〜40が好ましい。
【0043】
ラジカル重合性化合物は、透明性、耐熱着色安定性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、式(1)、式(2)および式(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0044】
式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化10】

【0046】
式中、R5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R11はそれぞれ独立に単結合または炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、mは0〜165の整数であり、nは2〜60の整数である。
炭素原子数1〜12のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、−CH2CH(CH3)CH2−、ヘキサメチレン基、−(CH212−、−(CH22−O−(CH23−、−(CH22−O−(CH22−O−(CH23−が挙げられる。
【0047】
式(2)で表される化合物としては、例えば、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化11】

【0049】
式中、R6はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R11はそれぞれ独立に単結合または炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、nは3〜40である。
炭素原子数1〜12のアルキレン基は上記と同義である。
【0050】
式(3)で表される化合物としては、例えば、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【化12】

【0052】
式中、R7はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R11はそれぞれ独立に単結合または炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、mは1〜110の整数であり、nは3〜40の整数である。
炭素原子数1〜12のアルキレン基は上記と同義である。
【0053】
ラジカル重合性化合物がポリマーである場合は、透明性、耐熱着色安定性、成形性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、その数平均分子量が、300〜50,000であるのが好ましく、300〜10,000であるのがより好ましい。
なお、ラジカル重合性化合物の数平均分子量は、GPC測定法によって測定されたものである。
【0054】
ラジカル重合性化合物は、透明性、耐熱着色安定性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基の官能基当量が190〜1,200g/モルであるのが好ましく、520〜920g/モルであるのがより好ましい。
また、(メタ)アクリロイル基の官能基当量が1,200g/モル以下である場合、組成物が硬化しやすく、かつ表面硬化性が良好で、ラジカル開始剤を少量とすることができ、ラジカル開始剤によって硬化物が着色するのを抑制し、耐熱着色安定性により優れる。
また、(メタ)アクリロイル基の官能基当量が190g/モル以上である場合、得られる硬化物においてクラックが発生しにくい。
【0055】
また、ラジカル重合性化合物は、透明性、耐熱着色安定性により優れ、1液型とすることが可能で作業性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基の官能基当量が190〜1,200g/モルであり、数平均分子量が300〜50,000であるのが好ましい。
ラジカル重合性化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ラジカル重合性化合物は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0056】
本発明において、ラジカル重合性化合物の量は、成形性、透明性、耐熱着色安定性により優れるという観点から、シロキサン化合物100質量部に対して、1〜900質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましい。
【0057】
本発明の組成物において、ラジカル重合性化合物として、式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物が含有される場合、(メタ)アクリロイル基のラジカル反応によって得られるポリマーは、ポリシロキサン骨格がポリ(メタ)アクリル鎖を架橋する構造を有することができると考えられる。
【0058】
式(2)で表される化合物を含有する組成物を例に挙げて式(2)で表される化合物から得られるポリマーの構造について以下説明する。
下記反応式は、本発明の組成物に含有されるラジカル重合性化合物が式(2)で表される化合物(R2はアクリロイル基)である場合、この化合物をラジカル重合させると構造(I)を有するポリマーが得られることを示す。
【0059】
【化13】

【0060】
構造(I)において、ポリシロキサン骨格612がポリ(メタ)アクリル鎖614とポリ(メタ)アクリル鎖622、624、626とを架橋している。
このような構造(I)は、原料であるポリシロキサン602、604、606において、アクリロイル基608が連鎖的にラジカル反応してポリアクリル鎖614となり、一方、アクリロイル基616、618、620が別のポリシロキサン(図示せず。)とそれぞれラジカル反応してポリアクリル鎖622、624、626を形成することによって得ることができる。
【0061】
(メタ)アクリロイル基のラジカル反応によって、本発明の組成物に含有されるラジカル重合性化合物が式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物である場合、得られるポリマーは、ポリシロキサン骨格がポリ(メタ)アクリル鎖を架橋している構造を有することができると考えられる。
このように、ポリマー中にポリシロキサン骨格が数多く、規則的に含有されることが耐熱着色安定性に優れるという観点から好ましい。
なお、本発明の組成物はラジカル重合性化合物の他にシロキサン化合物を含有するので、得られるポリマーの構造は、シロキサン化合物とラジカル重合性化合物とのコポリマーとして得ることができる。
したがって、本発明の組成物から得られるポリマーは、ポリシロキサン骨格を数多く、規則的に含有し、これによって、耐熱着色安定性に優れると考えられる。
【0062】
ラジカル開始剤について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるラジカル開始剤は、光または熱によって(メタ)アクリロイル基およびラジカル重合性官能基をラジカル重合させるものであれば特に制限されない。
【0063】
光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物のようなカルボニル化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられる。
【0064】
具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4′−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロ等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。
【0065】
なかでも、光安定性、光開裂の高効率性、硬化性という観点から、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンが好ましい。
【0066】
熱ラジカル開始剤としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチレンヘキサノネート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドのような有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物が挙げられる。
なかでも、光安定性、光開裂の高効率性、硬化性という観点から、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチレンヘキサノネートが好ましい。
ラジカル開始剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
ラジカル開始剤の量は、耐熱着色安定性により優れるという観点から、シロキサン化合物100質量部に対して、0.5〜10質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるのがより好ましい。
【0068】
光ラジカル開始剤の量は、耐熱着色安定性により優れるという観点から、シロキサン化合物100質量部に対して、0.5〜3質量部であるのが好ましい。
【0069】
本発明の発光素子用封止材組成物は、さらに、(メタ)アクリロイル基とメトキシ基およびエトキシ基のうちの一方または両方とを有するシランカップリング剤を含有することができる。
LEDに対する接着性、密着性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基とメトキシ基およびエトキシ基のうちの一方または両方とを有するシランカップリング剤を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0070】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基とメトキシ基およびエトキシ基のうちの一方または両方とを有するものであれば特に制限されない。
例えば、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
R−Si−(O−R′)3 (7)
式中、Rは(メタ)アクリロイル基を示し、R′はメチル基、エチル基を示し、R′は同じでも異なってもよい。
【0071】
シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルトリエトキシシランが挙げられる。
なかでも、密着性に優れ、耐熱着色安定性により優れるという観点から、(メタ)アクリロイルトリメトキシシランが好ましい。
【0072】
シランカップリング剤の量は、密着性に優れ、耐熱着色安定性により優れるという観点から、シロキサン化合物100質量部に対して、1〜10質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるのがより好ましい。
シランカップリング剤の量がシロキサン化合物100質量部に対して10質量部以下である場合、耐熱着色安定性により優れる。
【0073】
本発明の組成物は、シロキサン化合物、ラジカル重合性化合物、ラジカル開始剤、および必要に応じて使用することができるシランカップリング剤以外に本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジル類、芳香族ジアゾニウム塩、アントラキノン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類のような増感剤;シロキサン化合物およびラジカル重合性化合物以外の(メタ)アクリロイル基を有するシロキサン化合物、顔料、充填剤、レベリング剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤が挙げられる。
【0074】
シロキサン化合物およびラジカル重合性化合物以外の(メタ)アクリロイル基を有するシロキサン化合物は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明の組成物は、耐熱着色安定性に影響しない物または耐熱着色安定性に影響しない量であれば、本発明の組成物に含有されるシロキサン化合物およびラジカル重合性化合物以外の(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物を含有してもよい。
【0075】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、シロキサン化合物とラジカル重合性化合物とラジカル開始剤と必要に応じて使用することができるシランカップリング剤、添加剤とを混合することによって製造することができる。
【0076】
本発明の組成物は、発光素子用封止材組成物として使用することができる。
本発明の組成物は、例えば、紫外線照射、電子線照射、加熱によって硬化することができる。
【0077】
本発明の組成物は、1液型とすることが可能で、作業性に優れるという観点から、ヒドロシリル基を有する化合物を含有しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、本発明の組成物は、耐熱性が高いため分解し難く、ガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れ、透明性、耐熱着色安定性により優れ、クラックや気泡がより発生しにくくなるという観点から、実質的にウレタン結合を有する化合物を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明の組成物に含有されるラジカル重合性化合物は(メタ)アクリロイル基がラジカル開始剤によってラジカル重合すると、(メタ)アクリロイル基によって十分に架橋されている架橋構造を有する硬化物となることから、ヒドロシリル基を有する化合物を含有する必要はない。
また、本発明の組成物が硬化することによって得られる硬化物は、ポリ(メタ)アクリル鎖とポリ(メタ)アクリル鎖との間をポリシロキサン骨格が架橋している構造、主鎖中にポリシロキサン骨格を有する構造となることができると考えられる。このような構造によって、本発明の組成物から得られる硬化物は、耐熱着色安定性に優れると考えられる。
本発明の組成物は、耐熱着色安定性に影響しない物または耐熱着色安定性に影響しない量であれば、エポキシ樹脂を含有してもよい。
【0078】
次に、本発明の硬化物について以下に説明する。
本発明の硬化物は、本発明の発光素子用封止材組成物を硬化させることによって得られるものである。
【0079】
本発明の硬化物に使用される組成物は、本発明の発光素子用封止材組成物であれば特に制限されない。
組成物の硬化について以下に説明する。
本発明において、組成物は、例えば、紫外線照射、電子線照射、加熱によって硬化させることができる。
紫外線照射は、250〜380nmの光を用いるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、紫外線の強度の閾値は、80mW/cm以上であるのが好ましく、80〜160mW/cmであるのがより好ましい。
【0080】
加熱によって硬化させる場合、硬化物のクラックをより抑制でき、物性に優れるという観点から、まず60〜120℃(好ましくは80℃)で30分〜2時間(好ましくは1時間)硬化させた後、120〜180℃(好ましくは150℃)で30分〜2時間(好ましくは1時間)硬化させるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0081】
得られる硬化物は、その数平均分子量(GPC測定法による)が190〜20,000であるのが好ましい。
【0082】
本発明の硬化物は、長期のLED(なかでも白色LED)による使用に対して、透明性を保持することができ、耐熱着色安定性に優れる。
本発明の硬化物について、組成物に光照射装置(商品名:GS UVSYSTEM TYPE S250―01、ジーエス・ユアサ ライティング社製。光源としてメタルハイドロランプを使用し、積算光量1,800mJ/cm2で照射した。)で光を光量120mW/cmで40秒間照射して初期硬化させ硬化物とし、硬化直後(硬化物の厚さ:2mm)の、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0083】
また、本発明の硬化物は、初期硬化の後耐熱試験(硬化物を150℃下に、10日間置く。)を行いその後の硬化物(厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視スペクトル測定装置を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0084】
本発明の硬化物は、その透過性保持率(耐熱試験後の透過率/初期硬化の際の透過率×100)が、70〜100%であるのが好ましく、80〜100%であるのがより好ましい。
本発明の硬化物は、LEDチップの封止材として使用することができる。
LEDチップは、その発光色について特に制限されない。例えば、青色、赤色、黄色、緑色、白色が挙げられる。
LEDチップは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
次に、本発明の発光素子封止体について以下に説明する。
本発明の発光素子封止体は、LEDチップが本発明の硬化物で封止されているものである。
【0086】
本発明の発光素子封止体に使用される硬化物は本発明の硬化物であれば特に制限されない。
また、本発明の発光素子封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。
白色LEDの場合、例えば、青色LEDチップをイットリウム・アルミニウム・ガーネットのような蛍光物質を含有する色変換部材でコーティングしたもの、赤色・緑色・青色のLEDチップを用いるものが挙げられる。
また、本発明の組成物にイットリウム・アルミニウム・ガーネットのような蛍光物質を含有させて、これで青色LEDチップを封止することができる。
また、赤色・緑色・青色のLEDチップを用いる場合、それぞれのLEDチップを封止してこれら3色のLEDチップの封止体を使用すること、または3色のLEDチップをまとめて封止し1個の光源とすることができる。
LEDチップの大きさ、形状は特に制限されない。
LEDチップの種類は、特に制限されず、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LED、白色LED、青色LEDが挙げられる。
【0087】
本発明の発光素子封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。
図6は本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す上面図であり、図7は図6に示す発光素子封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
図6において、600は本発明の発光素子封止体であり、発光素子封止体600は、LEDチップ601と、LEDチップ601を封止する硬化物603とを備える。
図7において、Tは、硬化物603の厚さを示す。すなわち、Tは、LEDチップ601の表面上の任意の点605から、点605が属する面607に対して鉛直の方向に硬化物603の厚さを測定したときの値である。
本発明の発光素子封止体は、透明性を確保し、密閉性に優れるという観点から、その厚さ(図7におけるT)が0.1mm以上であるのが好ましく、0.1〜2mmであるのがより好ましい。
【0088】
本発明の発光素子封止体の一例として白色LEDを使用する場合について添付の図面を用いて以下に説明する。
図2は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
図3は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
なお、本発明の発光素子封止体は添付の図面に限定されない。
【0089】
図2において、白色LED200は、基板210の上にセラミックのパッケージ204を有する。
パッケージ204には、内部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ203と色変換部材202とが配置されている。
青色LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。
色変換部材202は、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットと透光性ポリイミド樹脂とを含有することができる。
青色LEDチップ203の各電極(図示せず。)とパッケージ204に設けられた外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
パッケージ204のキャビティー(図示せず。)は、硬化物206によって封止されている。
【0090】
図3において、白色LED300は、ランプ機能を有する硬化物306の内部に基板310、青色LEDチップ303およびインナーリード305を有する。
基板310には、頭部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ303と色変換部材302とが配置されている。
青色LEDチップ303は、基板310上にマウント部材301で固定されている。
色変換部材302は、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットと透光性ポリイミド樹脂とを含有することができる。
青色LEDチップ303の各電極(図示せず。)と基板310およびインナーリード305とそれぞれ導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングさせている。
【0091】
なお、図2、図3においてLEDチップを青色LEDチップとして説明したが、キャビティー内に赤色・緑色・青色の3色のLEDチップを配置することができる。
この場合、色変換部材202、302は配置しなくともよい。
本発明の発光素子封止体は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0092】
本発明の発光素子封止体をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。
図4は、本発明の発光素子封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
図5は、図4に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
なお、本発明の発光素子封止体は使用されるLED表示器、LED表示装置は添付の図面に限定されない。
【0093】
図4において、LED表示器400は、白色LED401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、白色LED401を充填剤406で固定し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。
【0094】
図5において、LED表示装置500は、白色LED封止体を用いるLED表示器501を具備する。LED表示器501は、駆動回路である点灯回路などと電気的に接続される。駆動回路からの出力パルスによって種々の画像が表示可能なディスプレイ等とすることができる。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させるRAM(Random、Access、Memory)504と、RAM504に記憶されるデータから個々の白色LEDを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路(CPU)503と、階調制御回路(CPU)503の出力信号でスイッチングされて、白色LEDを点灯させるドライバー502とを備える。階調制御回路(CPU)503は、RAM504に記憶されるデータから白色LEDの点灯時間を演算してパルス信号を出力する。
なお、本発明の発光素子封止体はカラー表示できる、LED表示器やLED表示装置に使用することができる。
【0095】
本発明の発光素子封止体は、その製造時またはLED(特に白色LED)としての使用時の発熱や光によって硬化物の透過率が低下しにくく透明性に優れ、硬化物が変色しにくく耐熱着色安定性に優れ、高屈性率を有し、従来のシリコーン樹脂系封止材と比較して、低水蒸気透過性、密閉性、発光素子との密着性に優れる。
また、本発明の硬化物は、(メタ)アクリロイル基によって十分硬化がなされており、トリアルキルシリル基を有するため、透明性、耐熱着色安定性、成形性に優れ、クラック、気泡が発生しにくく、機械的強度、作業性に優れる。
また、本発明の組成物は、透明性、耐熱着色安定性、成形性に優れ、クラック、気泡が発生しにくく、機械的強度に優れる硬化物となり、作業性に優れ、1液型とすることができる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
以下に示すように透明性、耐熱着色安定性、クラックの発生および初期硬化後のタックについて評価した。結果を第1表に示す。
(1)透明性評価試験
透明性評価試験は、下記に示す、硬化直後(初期)の硬化物および耐熱試験後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)についてそれぞれ、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける透過率を測定した。
また、耐熱試験後の透明性の保持率を下記計算式によって求めた。
【0097】
保持率(%)=(耐熱試験後の透過率)/(初期の透過率)×100
【0098】
(2)耐熱着色安定性評価試験
耐熱試験後の硬化物について黄変したかどうかを目視で観察した。
(3)クラックの発生
耐熱試験後の硬化物についてクラックが発生したかどうかを目視で観察した。
(4)初期硬化後のタック
硬化直後(初期)の硬化物のタックの有無を指触で確認した。
【0099】
2.サンプルの作製
(1)サンプルの作製
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用する型を模式的に表す断面図である。
まず、シリコンモールドのスーペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)をガラス2、ガラス3(ガラス2、ガラス3の大きさはそれぞれ、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)と、PETフィルム4、PETフィルム5とで挟む。ガラス2とスーペーサー1の間にPETフィルム4を、ガラス3とスーペーサー1の間にPETフィルム5をそれぞれを配置する。
次に、スーペーサー1の内部に組成物6を流し込み、ガラス2、ガラス3をジグ(図示せず。)で固定する。得られた型を型8とする。型8を用いて次のとおりサンプルの硬化を行い、組成物6を硬化させ、硬化物を型から外し、硬化物6(厚さ2mm)を得た。
【0100】
(2)サンプルの硬化
熱ラジカル重合開始剤を含有する組成物が充填された型8を電気オーブンに入れて、80℃で1時間、さらにその後150℃で1時間加熱して組成物を硬化させ、厚さ2mmの硬化物を得た。
【0101】
光ラジカル重合開始剤を含有する組成物が充填された型8に光照射装置(商品名:GS UVSYSTEM TYPE S250―01、ジーエス・ユアサ ライティング社製。光源としてメタルハイドロランプを使用し、積算光量1,800mJ/cm2で照射した。)で波長250〜380nmの紫外線を光量120mW/cmで40秒間照射し、積算光量1800mJ/cm2として、組成物を硬化させ硬化物とし、硬化物を型から外し、厚さ2mmの硬化物を得た。
【0102】
(3)サンプルの耐熱試験
製造から1日経過後の硬化物を150℃に設定されたオーブンに10日間置いた後取り出し、これを耐熱試験後の硬化物とする。
【0103】
3.発光素子用封止材組成物の調製
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合し組成物を調製した。
【0104】
【表1】

【0105】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・シロキサン化合物1:(Me3SiO)3−Si−R−O−C(=O)−C(−CH3)=CH2(商品名:X−22−2404、信越化学工業社製)
・シロキサン化合物2:下記式(8)で表される化合物(商品名:X−22−8201、信越化学工業社製)
【化14】


・ラジカル重合性化合物1:ポリシロキサン(X−22−164、両末端メタクリル変性シリコーン、信越化学工業社製)
・ラジカル重合性化合物2:ポリシロキサン(X−22−2458、側鎖両末端変性シリコーン、信越化学工業社製)
・ラジカル重合性化合物3:ネオペンチルジメタクリレート(共栄社化学社製)
・エポキシ変性シリコーン:エポキシ変性ポリシロキサン(商品名:KF101、信越化学工業社製)
・熱ラジカル重合開始剤:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート(パーオクタO、日本油脂社製)
・光ラジカル重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・カチオン重合触媒:BF3・Et2O(BF3エチルエテラート錯体、東京化成工業社製)
【0106】
第1表に示す結果から明らかなように、比較例1は初期硬化後の状態が高粘調であった。比較例2はクラックが発生した。比較例3は耐熱着色安定性に劣った。
これに対して、実施例1〜8は、初期硬化後の硬化物の表面にタックがなく成形性に優れ、得られる硬化物は透明性、耐熱着色安定性に優れた。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用する型を模式的に表す断面図である。
【図2】図2は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の発光素子封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
【図5】図5は、図4に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の発光素子封止体の一例を模式的に示す上面図である。
【図7】図7は、図6に示す発光素子封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1 スーペーサー
2、3 ガラス
4、5 PETフィルム
6 組成物(硬化後硬化物6となる)
8 内部に組成物6が充填された型
200、300 白色LED
201、301 マウント部材
202、302 色変換部材
203、303 青色LEDチップ
204 パッケージ
206、306 硬化物
207、307 導電性ワイヤー
209 外部電極
210、310 基板
305 インナーリード
400、501 LED表示器
401 白色LED
404 筐体
405 遮光部材
406 充填剤
500 LED表示装置
502 ドライバー
501 LED表示器
503 階調制御手段(CPU)
504 画像データ記憶手段(RAM)
600 本発明の発光素子封止体
601 LEDチップ
603 硬化物
605 点
607 点605が属する面
T 硬化物603の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリル基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシロキサン化合物と、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物と、ラジカル開始剤とを含有する発光素子用封止材組成物。
【請求項2】
前記シロキサン化合物が、1分子中に少なくとも1個のトリアルキルシリルオキシ基と少なくとも1個のラジカル重合性官能基とを有するシラン化合物、または片末端にトリアルキルシリル基を有し反対の末端にラジカル重合性官能基を有する鎖状シロキサン化合物である請求項1に記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項3】
前記シラン化合物が、下記式(I)で表されるものである請求項2に記載の発光素子用封止材組成物。
an−Si−(O−Si−Rb34-n (I)
(式中、Raはそれぞれ独立にラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基であり、Rbはそれぞれ独立にアルキル基であり、nは1〜3の整数である。)
【請求項4】
前記式(I)で表されるシラン化合物が、下記式(II)で表されるものである請求項3に記載の発光素子用封止材組成物。
【化1】


(式中、Raはラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基である。)
【請求項5】
前記鎖状シロキサン化合物が、下記式(III)で表される請求項2に記載の発光素子用封止材組成。
【化2】


(式中、Rcはラジカル重合性官能基またはラジカル重合性官能基を有する基であり、Rdはそれぞれ独立にアルキル基であり、Reはそれぞれ独立にアルキル基、ラジカル重合性官能基およびラジカル重合性官能基を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、nは2〜100の整数である。)
【請求項6】
前記鎖状シロキサン化合物の数平均分子量が、300〜50,000である請求項2または5に記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項7】
前記ラジカル重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基である請求項1〜6のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項8】
前記ラジカル重合性化合物が、分子量200〜2,000の(メタ)アクリレートモノマーまたは両末端もしくは側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンである請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項9】
前記ポリシロキサンが、下記式(1)、式(2)および式(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の発光素子用封止材組成物。
【化3】


(式中、R1〜R4はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイル基を有する基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、mはそれぞれ独立に0〜165の整数であり、式(1)中のnは2〜200の整数であり、式(2)または式(3)中のnはそれぞれ独立に1〜200の整数である。)
【請求項10】
前記ラジカル重合性化合物の量が、前記シロキサン化合物100質量部に対して、1〜900質量部である請求項1〜9のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の発光素子用封止材組成物を硬化させることによって得られる硬化物。
【請求項12】
LEDチップが請求項11に記載の硬化物で封止されている発光素子封止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−210845(P2008−210845A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43762(P2007−43762)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】