発光素子
【課題】消費電力を低減させた発光素子を提供する。
【解決手段】
本発明の発光素子は、第1半導体層2aと、第2半導体層2cと、第1半導体層2aと第2半導体層2bとの間に発光層2bと、を有する光半導体層2であって、第1半導体層2a内に、光半導体層2の厚み方向に転位9が延在する光半導体層2と第1半導体層2aと第2半導体層2cとの間に部分的に設けられ、平面透視して転位9と重なる領域に存在する絶縁層部7と、光半導体層2に電圧を印加し、平面透視して絶縁層部7と重ならない領域に位置する発光層2bを発光させる一対の電極3と、を有する。
【解決手段】
本発明の発光素子は、第1半導体層2aと、第2半導体層2cと、第1半導体層2aと第2半導体層2bとの間に発光層2bと、を有する光半導体層2であって、第1半導体層2a内に、光半導体層2の厚み方向に転位9が延在する光半導体層2と第1半導体層2aと第2半導体層2cとの間に部分的に設けられ、平面透視して転位9と重なる領域に存在する絶縁層部7と、光半導体層2に電圧を印加し、平面透視して絶縁層部7と重ならない領域に位置する発光層2bを発光させる一対の電極3と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外光、青色光、緑色光等を発光する発光層を有する発光素子の開発が行われている。かかる発光素子の製造方法として、結晶品質を高めるために横方向成長を用いることが例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−8998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、横方向成長を用いて発光素子を製造した場合であっても、発光層付近に延在する転位により非発光再結合しやすくなるため発光効率を低下させることがあった。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、非発光再結合を抑制することにより発光効率を向上させることが可能な発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる発光素子は、第1半導体層と、第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に発光層と、を有する光半導体層であって、前記第1半導体層内に、前記光半導体層の厚み方向に転位が延在する光半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に部分的に設けられ、平面透視して前記転位と重なる領域に存在する絶縁層部と、前記光半導体層に電圧を印加し、平面透視して前記絶縁層部と重ならない領域に位置する前記発光層を発光させる一対の電極と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発光効率を向上させた発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光素子の模式的な斜視図である。
【図2】図1に示す発光素子の模式的な断面図であり、図1のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【図3】本発明の一実施形態にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる発光素子の一部の屈折率変化を説明するグラフである。
【図5】本発明の変形例にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、本発明にかかる発光素子の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0010】
<発光素子の構造>
図1は本実施形態にかかる発光素子20の斜視図、図2は図1に示す発光素子20の断面図であり、図1のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【0011】
発光素子20は、図2に示すように、凸部1´を有する基板1と、基板1上に形成された光半導体層2と、発光層2bと第2半導体層2cとの間に形成された絶縁層部7と、光半導体層2に電圧を印加する一対の電極3と、を有する。
【0012】
基板1は、光半導体層2を成長させることが可能な材料を用いることができる。光半導体層2を成長させることが可能な材料としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは酸化亜鉛などの結晶性材料を用いることができる。基板1は、かかる結晶性材料を単結晶化した後、単結晶を所望の形状に切断することにより準備される。また、このような基板1は、例えば長方形の平板や略円形状をなすウェハーなどの平面形状に設定される。
【0013】
一方、基板1は、発光層2bで発光した光を発光層2bの第1半導体層2a側から取り出す場合は、基板1を除去することが可能な材料や透光性の材料を用いることができる。具体的に、基板1として基板1を除去することが可能な材料を用いた場合、基板1上に光半導体層2を形成した後、エッチングなどにより基板1を除去する工程を追加すればよい。また、基板1に透光性の材料を用いた場合、透光性の材料としては、発光層2bで発光する光に対して、上述の材料から発光波長を考慮して選択することができる。
【0014】
また、基板1は主面1A上に凸部1´を有している。このような凸部1´は、基板1を断面視して、台形、四角形などの形状を有しており、かかる凸部1´の高さは例えば0.2μm以上3.0μm以下に設定されている。この場合、凸部1´の底辺は、凸部1´と主面1Aとが重なる部分を指している。基板1の厚みすなわち主面1Aと主面1Bとの距離としては、例えば10μm以上1000μm以下に設定されている。
【0015】
このような凸部1´を有する基板1上に、第1半導体層2aと、第2半導体層2cと、第1半導体層2aと第2半導体層2cとの間に発光層2bと、を有する光半導体層2が形成されている。また、かかる光半導体層2は、発光層2bと第2半導体層2cとの間に絶縁層部7を有している。以下の説明において、光半導体層2と絶縁層部7を一体とみなすことがある。
【0016】
光半導体層2は、全体の厚みが例えば100nm以上2000nm以下に形成されている。このような光半導体層2は、III−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムなどを例示することができ、化学式で例示するとAlx1Ga(1−x1−y1)Iny1N(0≦x1≦1、0≦y1≦1、x1+y1≦1)と表すことができる。さらに、III−V族半導体以外には、酸化亜鉛などを例示することができる。
【0017】
第1半導体層2aは、基板1の凸部1´が埋設されるように基板1上に形成されている。すなわち、図2に示すように、第1半導体層2aは、凸部1´の高さより大きい厚みを有するように形成される。このような第1半導体層2aの厚みは、例えば50nm以上1000nm以下で形成することができる。
【0018】
また、第1半導体層2aは、その内部において基板1の凸部1´の上面にファセット8を有する結晶体と、ファセット8から厚み方向に延在する転位9と、を有している。ファセットとは結晶面を指し、このようなファセットは例えば複数の転位の曲がった位置を調べることにより確認することができる。また、転位はある結晶の境界面でずれることにより起こるものであり、ずれ方によってらせん転位、刃状転位またはそれらが混ざった混合転位などがある。
【0019】
このようなファセット8は、後述するような方法により基板1の凸部1´に成長させることができ、例えば断面形状が三角形や台形となっている。また、ファセット8の高さは、例えば50nm以上3000nm以下に設定されている。このようにしてファセット8を基板1の凸部1´上に成長させる場合、第1半導体層2aは、平面透視してファセット8と重なる領域であって、厚み方向に延在する転位9を有するようになる。
【0020】
次に、第1半導体層2a上には発光層2bが設けられている。発光層2bが第1半導体層2a上に成長されるため、第1半導体層2aの主面2Aにまで延在する転位9が連続して発光層2bにも延伸するようになる。
【0021】
このような発光層2bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回(例えば、2回以上10回以下)繰り返し、規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)とすることができる。なお、前述の障壁層としては、上述した化学式で例示するとIn0.01Ga0.99N層などを用いることができる。また、前述の井戸層としては、In0.11Ga0.89N層などを例示できる。この場合、障壁層の厚みは例えば5nm以上15nm以下、井戸層の厚みは例えば2nm以上10nm以下に設定することができ、発光層2b全体の厚みは例えば25nm以上150nm以下に設定することができる。このようにして構成された発光層2bにおいて、かかる発光層2bから発光する光の光強度スペクトルのうち強度がピークとなる波長は例えば350nm以上600nm以下となる。
【0022】
このようにして設けられた発光層2b上には、部分的に絶縁層部7が設けられている。なお、以下の説明において発光層2b上の絶縁層部7が設けられていない領域を開口領域11と便宜上称することがある。絶縁層部7の平面形状は特に制限されないが、基板1の凸部1´に沿って設けることができ、例えば長方形や円形などにより設けられている。また絶縁層部7の厚みは薄いことが好ましく、例えば0.05μm以上3μm以下に設定することができる。このような絶縁層部7の材料としては、例えば酸化シリコンなどの絶縁材料を用いることができる。
【0023】
絶縁層部7は転位9と重なる領域を有するように発光層2b上に形成されている。その結果、絶縁層部7より上に成長される層では転位9が延伸されないため、第1半導体層2aおよび発光層2bにおいて厚み方向に延在する転位9を絶縁層部7で止めることができる。また、絶縁層部7が発光層2b上に部分的に設けられていることから、光半導体層2に電圧が印加された場合には絶縁層部7が設けられていない部分を電流が通るようになり、発光層2bに流れ込む電流密度を向上させることができる。
【0024】
さらに、第2半導体層2cが、絶縁層部7を発光層2bとの間に一部有するようにして発光層2b上に形成されている。換言すると、第2半導体層2cが、開口領域11すなわち絶縁層部7の設けられていない領域で発光層2bと接するように形成されている。また第2半導体層2cは第1半導体層2aと同種の材料から構成され、第1半導体層2aとは逆の導電型を呈するように設けられている。
【0025】
このようにして形成された光半導体層2には、発光させるための電圧を印加する一対の電極3が形成されている。このような一対の電極3は、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極3aと、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極3bと、によって一対となしている。かかる第1電極3aは第1半導体層2a上に形成され、第2電極3bは第2半導体層2c上に形成されている。このように形成された一対の電極3の第1電極3aおよび第2電極3bに電圧を印加することにより、発光層2bを発光させることが可能となる。
【0026】
本実施形態では、発光層2bと第2半導体層2cとの間に部分的に絶縁層部7を有することから、第2電極3bから流れる電流が絶縁層部7を通らずに、開口領域11の発光層2bに流れ込むようになる。その結果、開口領域11の発光層2bに流れ込む電流密度を高くすることができ、発光層2bで発光する光の輝度を向上させることができる。また、発光層2b上に絶縁層部7を有することから、平面透視して転位9と重なる発光層2bに電流が流れにくくなるため、発光層2bで効率よくキャリアを発光再結合させることができ、消費される電力を減らすことができる。これは、発光層2bまたは第2半導体層2cを平面透視して転位9と重なる領域は、結晶が育成時に変質しやすく非発光再結合しやすいためである。なお、非発光再結合とはキャリアが再結合しても発光せず例えば熱に変換されるようなことを指す。
【0027】
また、平面透視して絶縁層部7が転位9と重なる領域に設けられていることから、電流が絶縁層部7を迂回して転位9に流れにくくなる。その結果、転位9に電流が流れて光半導体層2が短絡されることを防ぐことができるため、光半導体層2が電気的に破壊されることを抑制して発光素子20の信頼性を向上させることができる。このように転位9を介することにより起こる短絡は、転位9の電気抵抗値が光半導体層2のバルク抵抗より小さくなるためである。
【0028】
一方、発光層上の一部に絶縁層部を設けない発光素子に同じ電力を印加すると、平面透視して転位と重なる領域の発光層においてはキャリアが非発光再結合されるため、発光層2bで消費される電力が大きくなってしまう。すなわち、絶縁層部を発光層2b上の一部に設けた場合と同じ輝度を得ようとした場合、絶縁層部を設けない場合はより大きい電力が必要となる。
【0029】
ここで、一対の電極3の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、ニオブ、タンタル、バナジウム、白金、鉛、ベリリウムなどの金属や、酸化錫、酸化インジウム等、インジウムと錫の酸化物などの酸化物や、金−シリコン合金、金−ゲルマニウム合金、金−亜鉛合金、金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。また、一対の電極3は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数層積層したものとしても構わない。
【0030】
さらに、例えば第1電極3に金を用いた場合には、第1電極3aと第1半導体層2aとの間にオーミックコンタクト層としてアルミニウムを間に介在させたチタンを設けることができる。さらに、第2電極3bに金を用いた場合には、第2電極3bと第2半導体層2cとの間にオーミックコンタクト層としてニッケルを設けることができる。なお、第1電極3aは、基板1が導電性を有する場合、基板1の光半導体層2と反対側に設けてもよい。
【0031】
本実施形態においては、第2電極3bが平面透視して絶縁層部7と重なる領域を有するように設けられている。なお、以下の説明において第2半導体層2c上の第2電極3bが設けられていない領域を電極開口領域21と便宜上称することがある。このように第2電極3bが電極開口領域21を有するように形成されていることから、発光層2bで発光した光を発光層2bの第2半導体層2c側から取り出す場合には、電極開口領域21から好適に取り出すことができる。これは、開口領域11と重なる領域の発光層2bから強く発光されるため、かかる開口領域11と重なる電極開口領域21において発光層2bで発光した光を取り出すことができるためである。その結果、第2電極3bで吸収される光を少なくすることができるため、光取出し効率を向上させることができる。
【0032】
また、発光層2bで発光した光を第1半導体層2a側から取り出す場合には、第2電極を第2半導体層2cの上面を覆うように形成してもよい。この場合、発光層2bで発光した光は、基板1の凹部10すなわち第1半導体層2aの凸部17を通りやすいため、光取出し効率を向上させることができる。これは発光層2bで発光した光を、第1半導体層の凸部が設けられていない場合と比較して、第1半導体層2aの凸部17の側面17´で全反射されにくくすることができるためである。なお、凹部10は隣接する2つの凸部1´によって構成されている。かかる光取出し効率の観点においては、基板1の凸部1´の断面形状を台形で形成することが好ましい。凸部1´の断面形状を台形で形成することにより、第1半導体層2aの凸部17の側面17´を傾斜させることができため、凸部17´においてさらに全反射されにくくすることができる。
【0033】
また本実施形態においては、絶縁層部7が発光層2b上に設けられた場合について説明したが、これに制限されるものではなく発光層2bの内部に設けられていてもよい。その場合でも、上述のような効果を奏するものである。
【0034】
<発光素子の製造方法>
次に、発光素子20の製造方法を説明する。図3から図11は、発光素子20の製造方法を説明するための断面図であり、図1に示す発光素子20のA―A´線における断面に相当する部分を示している。
【0035】
(基板準備工程)
図3に示すように、主面1Aに凸部1´が形成された基板1を準備する。かかる基板1の凸部1´は、平板の基板をエッチングなどによって凹部10を設けることにより、形成される。そのため、エッチングの深さを調整することにより凹部10の深さおよび凸部1´の高さを調節することができる。
【0036】
(光半導体層成長工程)
次に、基板1上に光半導体層2が成長させる。光半導体層2すなわち第1半導体層2a、発光層2bおよび第2半導体層2cを成長させる方法として、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属エピタキシー(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法またはパルスレーザデポジション(PLD:Pulsed Laser Deposition)法などを用いることができる。
【0037】
まず、基板1上に第1半導体層2aを形成する工程について、図4および5を用いて説明する。第1半導体層2aは、図4に示すように凸部1´の上面にファセット8を形成した後、基板1上に横方向成長させる。基板1上にファセット8を形成して第1半導体層2aを横方向成長させることから、基板1の結晶性に起因して延びる転位の大部分を主面1Aと平行な方向に曲げることができる。その結果、成長させた第1半導体層2aの厚み方向に延びる転位9を少なくすることができる。
【0038】
一方、図5に示すように、ファセット8の中心付近に成長する転位9は曲がりにくく、第1半導体層2aの主面2Aにまで延在しやすい。そのため、第1半導体層2aの主面2Aにまで延びる転位9は、ファセット8が形成された凸部1´上に発生しやすくなる。
【0039】
具体的には、第1半導体層2aとしてIII−V族半導体を用いて基板1上にファセット8を作成する場合を例示すると、大気圧に近い圧力下でIII−V族半導体のIII族とV族の組成比が低くなるようにすればよい。その後、III族とV族の組成比を第1半導体層2aと同じにさせた状態で、ファセット成長時の温度より高くして成長させることにより第1半導体層2aを成長させる。
【0040】
次に、図5に示すように、第1半導体層2a上に、発光層2bを成長させる。このように第1半導体層2a上に発光層2bを成長させることにより、第1半導体層2aに延在していた転位9がさらに延びるため、転位9が発光層2bにも延在することになる。
【0041】
その後、発光層2bの上面に部分的に、平面透視して転位9と重なる領域に絶縁層部7が設けられる。これを図7〜9を用いて以下に説明する。図7に示すように、絶縁層15が発光層2bの上面に積層する。このような絶縁層15としては、例えば酸化シリコンなど絶縁材料を用いることができる。次に、図8に示すように絶縁層15上にレジストパターン16を形成する。その後、絶縁層15をパターニングすることにより図9に示すように平面透視して転位9と重なる領域に絶縁層部7が形成される。そのため、第1半導体層2aおよび発光層2bに延在していた転位9は、その後第2半導体層2cを成長させた場合でも絶縁層部7により第2半導体層2c内にまで延伸されにくくなる。その結果、第2半導体層2cの転位を少なくすることができる。
【0042】
さらに、発光層2bの開口領域11上および絶縁層部7上に、第2半導体層2cを成長させる。このような第2半導体層2cは、絶縁層部7の開口領域11において発光層2bと接するように成長されている。
【0043】
(電極形成工程)
このようにして形成された光半導体層2に電圧を印加し、平面透視して転位9と重ならない領域に位置する発光層2bを発光させる一対の電極が形成する。このような一対の電極3は、第1半導体層2aと接続する第1電極3aと第2半導体層2cと接続する第2電極3bにより構成されている。
【0044】
このような第1電極3aを設けるために、電極用溝が光半導体層2に形成されている。具体的には、図11に示すように、第2半導体層2c、発光層2bおよび第1半導体層2aの一部まで順に第2半導体層2cの上面からエッチングなどによって電極用溝を形成する。その後、電極用溝の底面すなわち第1半導体層2aの露出部に、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極3aが形成される。さらに、第2半導体層2cの主面に、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極3bが形成される。以上のようにして、一対の電極3が形成される。
【0045】
発光層2bで発光した光を、発光層2bの第2半導体層2c側から取り出す場合、第2電極3bは、平面透視して絶縁層部7と重なる部分と絶縁層部7と重ならない電極開口領域21とを有することが好ましい。第2電極3bに電極開口領域21を形成する方法として、従来のフォトリソグラフィ手法などを用いることができる。第2電極3bに電極開口領域21を設けることにより、発光層2bの開口領域11で発光した光を電極開口領域21から効率よく取り出すことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
1´ 凸部
2 光半導体層
2a 第1半導体層
2b 発光層
2c 第2半導体層
3 一対の電極
3a 第1電極
3b 第2電極
7 絶縁層部
8 ファセット
9 転位
10 凹部
11 開口領域
12 電極層
15 絶縁層
16 レジストパターン
17 第1半導体層の凸部
20 発光素子
21 電極開口領域
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外光、青色光、緑色光等を発光する発光層を有する発光素子の開発が行われている。かかる発光素子の製造方法として、結晶品質を高めるために横方向成長を用いることが例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−8998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、横方向成長を用いて発光素子を製造した場合であっても、発光層付近に延在する転位により非発光再結合しやすくなるため発光効率を低下させることがあった。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、非発光再結合を抑制することにより発光効率を向上させることが可能な発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる発光素子は、第1半導体層と、第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に発光層と、を有する光半導体層であって、前記第1半導体層内に、前記光半導体層の厚み方向に転位が延在する光半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に部分的に設けられ、平面透視して前記転位と重なる領域に存在する絶縁層部と、前記光半導体層に電圧を印加し、平面透視して前記絶縁層部と重ならない領域に位置する前記発光層を発光させる一対の電極と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発光効率を向上させた発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光素子の模式的な斜視図である。
【図2】図1に示す発光素子の模式的な断面図であり、図1のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【図3】本発明の一実施形態にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる発光素子の一部の屈折率変化を説明するグラフである。
【図5】本発明の変形例にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、本発明にかかる発光素子の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0010】
<発光素子の構造>
図1は本実施形態にかかる発光素子20の斜視図、図2は図1に示す発光素子20の断面図であり、図1のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【0011】
発光素子20は、図2に示すように、凸部1´を有する基板1と、基板1上に形成された光半導体層2と、発光層2bと第2半導体層2cとの間に形成された絶縁層部7と、光半導体層2に電圧を印加する一対の電極3と、を有する。
【0012】
基板1は、光半導体層2を成長させることが可能な材料を用いることができる。光半導体層2を成長させることが可能な材料としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは酸化亜鉛などの結晶性材料を用いることができる。基板1は、かかる結晶性材料を単結晶化した後、単結晶を所望の形状に切断することにより準備される。また、このような基板1は、例えば長方形の平板や略円形状をなすウェハーなどの平面形状に設定される。
【0013】
一方、基板1は、発光層2bで発光した光を発光層2bの第1半導体層2a側から取り出す場合は、基板1を除去することが可能な材料や透光性の材料を用いることができる。具体的に、基板1として基板1を除去することが可能な材料を用いた場合、基板1上に光半導体層2を形成した後、エッチングなどにより基板1を除去する工程を追加すればよい。また、基板1に透光性の材料を用いた場合、透光性の材料としては、発光層2bで発光する光に対して、上述の材料から発光波長を考慮して選択することができる。
【0014】
また、基板1は主面1A上に凸部1´を有している。このような凸部1´は、基板1を断面視して、台形、四角形などの形状を有しており、かかる凸部1´の高さは例えば0.2μm以上3.0μm以下に設定されている。この場合、凸部1´の底辺は、凸部1´と主面1Aとが重なる部分を指している。基板1の厚みすなわち主面1Aと主面1Bとの距離としては、例えば10μm以上1000μm以下に設定されている。
【0015】
このような凸部1´を有する基板1上に、第1半導体層2aと、第2半導体層2cと、第1半導体層2aと第2半導体層2cとの間に発光層2bと、を有する光半導体層2が形成されている。また、かかる光半導体層2は、発光層2bと第2半導体層2cとの間に絶縁層部7を有している。以下の説明において、光半導体層2と絶縁層部7を一体とみなすことがある。
【0016】
光半導体層2は、全体の厚みが例えば100nm以上2000nm以下に形成されている。このような光半導体層2は、III−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムなどを例示することができ、化学式で例示するとAlx1Ga(1−x1−y1)Iny1N(0≦x1≦1、0≦y1≦1、x1+y1≦1)と表すことができる。さらに、III−V族半導体以外には、酸化亜鉛などを例示することができる。
【0017】
第1半導体層2aは、基板1の凸部1´が埋設されるように基板1上に形成されている。すなわち、図2に示すように、第1半導体層2aは、凸部1´の高さより大きい厚みを有するように形成される。このような第1半導体層2aの厚みは、例えば50nm以上1000nm以下で形成することができる。
【0018】
また、第1半導体層2aは、その内部において基板1の凸部1´の上面にファセット8を有する結晶体と、ファセット8から厚み方向に延在する転位9と、を有している。ファセットとは結晶面を指し、このようなファセットは例えば複数の転位の曲がった位置を調べることにより確認することができる。また、転位はある結晶の境界面でずれることにより起こるものであり、ずれ方によってらせん転位、刃状転位またはそれらが混ざった混合転位などがある。
【0019】
このようなファセット8は、後述するような方法により基板1の凸部1´に成長させることができ、例えば断面形状が三角形や台形となっている。また、ファセット8の高さは、例えば50nm以上3000nm以下に設定されている。このようにしてファセット8を基板1の凸部1´上に成長させる場合、第1半導体層2aは、平面透視してファセット8と重なる領域であって、厚み方向に延在する転位9を有するようになる。
【0020】
次に、第1半導体層2a上には発光層2bが設けられている。発光層2bが第1半導体層2a上に成長されるため、第1半導体層2aの主面2Aにまで延在する転位9が連続して発光層2bにも延伸するようになる。
【0021】
このような発光層2bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回(例えば、2回以上10回以下)繰り返し、規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)とすることができる。なお、前述の障壁層としては、上述した化学式で例示するとIn0.01Ga0.99N層などを用いることができる。また、前述の井戸層としては、In0.11Ga0.89N層などを例示できる。この場合、障壁層の厚みは例えば5nm以上15nm以下、井戸層の厚みは例えば2nm以上10nm以下に設定することができ、発光層2b全体の厚みは例えば25nm以上150nm以下に設定することができる。このようにして構成された発光層2bにおいて、かかる発光層2bから発光する光の光強度スペクトルのうち強度がピークとなる波長は例えば350nm以上600nm以下となる。
【0022】
このようにして設けられた発光層2b上には、部分的に絶縁層部7が設けられている。なお、以下の説明において発光層2b上の絶縁層部7が設けられていない領域を開口領域11と便宜上称することがある。絶縁層部7の平面形状は特に制限されないが、基板1の凸部1´に沿って設けることができ、例えば長方形や円形などにより設けられている。また絶縁層部7の厚みは薄いことが好ましく、例えば0.05μm以上3μm以下に設定することができる。このような絶縁層部7の材料としては、例えば酸化シリコンなどの絶縁材料を用いることができる。
【0023】
絶縁層部7は転位9と重なる領域を有するように発光層2b上に形成されている。その結果、絶縁層部7より上に成長される層では転位9が延伸されないため、第1半導体層2aおよび発光層2bにおいて厚み方向に延在する転位9を絶縁層部7で止めることができる。また、絶縁層部7が発光層2b上に部分的に設けられていることから、光半導体層2に電圧が印加された場合には絶縁層部7が設けられていない部分を電流が通るようになり、発光層2bに流れ込む電流密度を向上させることができる。
【0024】
さらに、第2半導体層2cが、絶縁層部7を発光層2bとの間に一部有するようにして発光層2b上に形成されている。換言すると、第2半導体層2cが、開口領域11すなわち絶縁層部7の設けられていない領域で発光層2bと接するように形成されている。また第2半導体層2cは第1半導体層2aと同種の材料から構成され、第1半導体層2aとは逆の導電型を呈するように設けられている。
【0025】
このようにして形成された光半導体層2には、発光させるための電圧を印加する一対の電極3が形成されている。このような一対の電極3は、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極3aと、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極3bと、によって一対となしている。かかる第1電極3aは第1半導体層2a上に形成され、第2電極3bは第2半導体層2c上に形成されている。このように形成された一対の電極3の第1電極3aおよび第2電極3bに電圧を印加することにより、発光層2bを発光させることが可能となる。
【0026】
本実施形態では、発光層2bと第2半導体層2cとの間に部分的に絶縁層部7を有することから、第2電極3bから流れる電流が絶縁層部7を通らずに、開口領域11の発光層2bに流れ込むようになる。その結果、開口領域11の発光層2bに流れ込む電流密度を高くすることができ、発光層2bで発光する光の輝度を向上させることができる。また、発光層2b上に絶縁層部7を有することから、平面透視して転位9と重なる発光層2bに電流が流れにくくなるため、発光層2bで効率よくキャリアを発光再結合させることができ、消費される電力を減らすことができる。これは、発光層2bまたは第2半導体層2cを平面透視して転位9と重なる領域は、結晶が育成時に変質しやすく非発光再結合しやすいためである。なお、非発光再結合とはキャリアが再結合しても発光せず例えば熱に変換されるようなことを指す。
【0027】
また、平面透視して絶縁層部7が転位9と重なる領域に設けられていることから、電流が絶縁層部7を迂回して転位9に流れにくくなる。その結果、転位9に電流が流れて光半導体層2が短絡されることを防ぐことができるため、光半導体層2が電気的に破壊されることを抑制して発光素子20の信頼性を向上させることができる。このように転位9を介することにより起こる短絡は、転位9の電気抵抗値が光半導体層2のバルク抵抗より小さくなるためである。
【0028】
一方、発光層上の一部に絶縁層部を設けない発光素子に同じ電力を印加すると、平面透視して転位と重なる領域の発光層においてはキャリアが非発光再結合されるため、発光層2bで消費される電力が大きくなってしまう。すなわち、絶縁層部を発光層2b上の一部に設けた場合と同じ輝度を得ようとした場合、絶縁層部を設けない場合はより大きい電力が必要となる。
【0029】
ここで、一対の電極3の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、ニオブ、タンタル、バナジウム、白金、鉛、ベリリウムなどの金属や、酸化錫、酸化インジウム等、インジウムと錫の酸化物などの酸化物や、金−シリコン合金、金−ゲルマニウム合金、金−亜鉛合金、金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。また、一対の電極3は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数層積層したものとしても構わない。
【0030】
さらに、例えば第1電極3に金を用いた場合には、第1電極3aと第1半導体層2aとの間にオーミックコンタクト層としてアルミニウムを間に介在させたチタンを設けることができる。さらに、第2電極3bに金を用いた場合には、第2電極3bと第2半導体層2cとの間にオーミックコンタクト層としてニッケルを設けることができる。なお、第1電極3aは、基板1が導電性を有する場合、基板1の光半導体層2と反対側に設けてもよい。
【0031】
本実施形態においては、第2電極3bが平面透視して絶縁層部7と重なる領域を有するように設けられている。なお、以下の説明において第2半導体層2c上の第2電極3bが設けられていない領域を電極開口領域21と便宜上称することがある。このように第2電極3bが電極開口領域21を有するように形成されていることから、発光層2bで発光した光を発光層2bの第2半導体層2c側から取り出す場合には、電極開口領域21から好適に取り出すことができる。これは、開口領域11と重なる領域の発光層2bから強く発光されるため、かかる開口領域11と重なる電極開口領域21において発光層2bで発光した光を取り出すことができるためである。その結果、第2電極3bで吸収される光を少なくすることができるため、光取出し効率を向上させることができる。
【0032】
また、発光層2bで発光した光を第1半導体層2a側から取り出す場合には、第2電極を第2半導体層2cの上面を覆うように形成してもよい。この場合、発光層2bで発光した光は、基板1の凹部10すなわち第1半導体層2aの凸部17を通りやすいため、光取出し効率を向上させることができる。これは発光層2bで発光した光を、第1半導体層の凸部が設けられていない場合と比較して、第1半導体層2aの凸部17の側面17´で全反射されにくくすることができるためである。なお、凹部10は隣接する2つの凸部1´によって構成されている。かかる光取出し効率の観点においては、基板1の凸部1´の断面形状を台形で形成することが好ましい。凸部1´の断面形状を台形で形成することにより、第1半導体層2aの凸部17の側面17´を傾斜させることができため、凸部17´においてさらに全反射されにくくすることができる。
【0033】
また本実施形態においては、絶縁層部7が発光層2b上に設けられた場合について説明したが、これに制限されるものではなく発光層2bの内部に設けられていてもよい。その場合でも、上述のような効果を奏するものである。
【0034】
<発光素子の製造方法>
次に、発光素子20の製造方法を説明する。図3から図11は、発光素子20の製造方法を説明するための断面図であり、図1に示す発光素子20のA―A´線における断面に相当する部分を示している。
【0035】
(基板準備工程)
図3に示すように、主面1Aに凸部1´が形成された基板1を準備する。かかる基板1の凸部1´は、平板の基板をエッチングなどによって凹部10を設けることにより、形成される。そのため、エッチングの深さを調整することにより凹部10の深さおよび凸部1´の高さを調節することができる。
【0036】
(光半導体層成長工程)
次に、基板1上に光半導体層2が成長させる。光半導体層2すなわち第1半導体層2a、発光層2bおよび第2半導体層2cを成長させる方法として、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属エピタキシー(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法またはパルスレーザデポジション(PLD:Pulsed Laser Deposition)法などを用いることができる。
【0037】
まず、基板1上に第1半導体層2aを形成する工程について、図4および5を用いて説明する。第1半導体層2aは、図4に示すように凸部1´の上面にファセット8を形成した後、基板1上に横方向成長させる。基板1上にファセット8を形成して第1半導体層2aを横方向成長させることから、基板1の結晶性に起因して延びる転位の大部分を主面1Aと平行な方向に曲げることができる。その結果、成長させた第1半導体層2aの厚み方向に延びる転位9を少なくすることができる。
【0038】
一方、図5に示すように、ファセット8の中心付近に成長する転位9は曲がりにくく、第1半導体層2aの主面2Aにまで延在しやすい。そのため、第1半導体層2aの主面2Aにまで延びる転位9は、ファセット8が形成された凸部1´上に発生しやすくなる。
【0039】
具体的には、第1半導体層2aとしてIII−V族半導体を用いて基板1上にファセット8を作成する場合を例示すると、大気圧に近い圧力下でIII−V族半導体のIII族とV族の組成比が低くなるようにすればよい。その後、III族とV族の組成比を第1半導体層2aと同じにさせた状態で、ファセット成長時の温度より高くして成長させることにより第1半導体層2aを成長させる。
【0040】
次に、図5に示すように、第1半導体層2a上に、発光層2bを成長させる。このように第1半導体層2a上に発光層2bを成長させることにより、第1半導体層2aに延在していた転位9がさらに延びるため、転位9が発光層2bにも延在することになる。
【0041】
その後、発光層2bの上面に部分的に、平面透視して転位9と重なる領域に絶縁層部7が設けられる。これを図7〜9を用いて以下に説明する。図7に示すように、絶縁層15が発光層2bの上面に積層する。このような絶縁層15としては、例えば酸化シリコンなど絶縁材料を用いることができる。次に、図8に示すように絶縁層15上にレジストパターン16を形成する。その後、絶縁層15をパターニングすることにより図9に示すように平面透視して転位9と重なる領域に絶縁層部7が形成される。そのため、第1半導体層2aおよび発光層2bに延在していた転位9は、その後第2半導体層2cを成長させた場合でも絶縁層部7により第2半導体層2c内にまで延伸されにくくなる。その結果、第2半導体層2cの転位を少なくすることができる。
【0042】
さらに、発光層2bの開口領域11上および絶縁層部7上に、第2半導体層2cを成長させる。このような第2半導体層2cは、絶縁層部7の開口領域11において発光層2bと接するように成長されている。
【0043】
(電極形成工程)
このようにして形成された光半導体層2に電圧を印加し、平面透視して転位9と重ならない領域に位置する発光層2bを発光させる一対の電極が形成する。このような一対の電極3は、第1半導体層2aと接続する第1電極3aと第2半導体層2cと接続する第2電極3bにより構成されている。
【0044】
このような第1電極3aを設けるために、電極用溝が光半導体層2に形成されている。具体的には、図11に示すように、第2半導体層2c、発光層2bおよび第1半導体層2aの一部まで順に第2半導体層2cの上面からエッチングなどによって電極用溝を形成する。その後、電極用溝の底面すなわち第1半導体層2aの露出部に、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極3aが形成される。さらに、第2半導体層2cの主面に、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極3bが形成される。以上のようにして、一対の電極3が形成される。
【0045】
発光層2bで発光した光を、発光層2bの第2半導体層2c側から取り出す場合、第2電極3bは、平面透視して絶縁層部7と重なる部分と絶縁層部7と重ならない電極開口領域21とを有することが好ましい。第2電極3bに電極開口領域21を形成する方法として、従来のフォトリソグラフィ手法などを用いることができる。第2電極3bに電極開口領域21を設けることにより、発光層2bの開口領域11で発光した光を電極開口領域21から効率よく取り出すことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
1´ 凸部
2 光半導体層
2a 第1半導体層
2b 発光層
2c 第2半導体層
3 一対の電極
3a 第1電極
3b 第2電極
7 絶縁層部
8 ファセット
9 転位
10 凹部
11 開口領域
12 電極層
15 絶縁層
16 レジストパターン
17 第1半導体層の凸部
20 発光素子
21 電極開口領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層と、第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に発光層と、を有する光半導体層であって、
前記第1半導体層内に、前記光半導体層の厚み方向に転位が延在する光半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に部分的に設けられ、平面透視して前記転位と重なる領域に存在する絶縁層部と、
前記光半導体層に電圧を印加し、平面透視して前記絶縁層部と重ならない領域に位置する前記発光層を発光させる一対の電極と、を有する発光素子。
【請求項2】
前記絶縁層部は、前記発光層と前記第2半導体層との間に設けられている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記一対の電極は、前記第2半導体層と電気的に接続され、平面透視して前記転位と重ならない領域に一方の電極を有する請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1半導体層は前記光半導体層とは反対主面に凸部を有し、平面透視して前記凸部が前記絶縁層部と重ならない領域に位置する請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項1】
第1半導体層と、第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に発光層と、を有する光半導体層であって、
前記第1半導体層内に、前記光半導体層の厚み方向に転位が延在する光半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に部分的に設けられ、平面透視して前記転位と重なる領域に存在する絶縁層部と、
前記光半導体層に電圧を印加し、平面透視して前記絶縁層部と重ならない領域に位置する前記発光層を発光させる一対の電極と、を有する発光素子。
【請求項2】
前記絶縁層部は、前記発光層と前記第2半導体層との間に設けられている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記一対の電極は、前記第2半導体層と電気的に接続され、平面透視して前記転位と重ならない領域に一方の電極を有する請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1半導体層は前記光半導体層とは反対主面に凸部を有し、平面透視して前記凸部が前記絶縁層部と重ならない領域に位置する請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−138842(P2011−138842A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296526(P2009−296526)
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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