発光素子
【課題】光取り出し効率を向上させた発光素子を提供する。
【解決手段】
本発明の発光素子は、一方主面2Aに向かって光を発する光半導体層2と、一方主面2Aとなす内角t1が90度未満の傾斜面4を有するとともに、光半導体層2の一方主面2A上に列をなして配置された複数の光透過性の突起3と、を含み、複数の突起3を平面視したとき、それぞれの傾斜面4が、複数の突起3が配置された列の一方方向に向けて配置され、複数の突起3を列方向Geと垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が一方主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状である。
【解決手段】
本発明の発光素子は、一方主面2Aに向かって光を発する光半導体層2と、一方主面2Aとなす内角t1が90度未満の傾斜面4を有するとともに、光半導体層2の一方主面2A上に列をなして配置された複数の光透過性の突起3と、を含み、複数の突起3を平面視したとき、それぞれの傾斜面4が、複数の突起3が配置された列の一方方向に向けて配置され、複数の突起3を列方向Geと垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が一方主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外光、青色光、緑色光等を発光する発光素子の開発が行われている。そのような発光素子として、例えば特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−277374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子の開発において、発光素子を発光させた際に内部で発光した光を外部へ取り出す光取り出し効率を改善することが求められている。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光取り出し効率を向上させた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる発光素子は、一方主面に向かって光を発する光半導体層と、前記一方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記光半導体層の一方主面上に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が一方主面の法線に対して非線対称形状である。
【0006】
また、本発明にかかる発光素子は、基板と、前記基板の一方主面上に設けられ、前記一方主面に向かって光を発する光半導体層と、前記他方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記基板の他方主面に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が前記他方主面の法線に対して非線対称形状をなしている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光取り出し効率を向上させた発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の平面図あり、図1を平面視したときの平面に相当する。
【図3】図1または2に示す発光素子の断面図であり、図1のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態にかかる発光素子の平面図である。
【図15】図14に示す発光素子の断面図であり、図14のB−B´線で切断したときの断面に相当する。
【図16】本発明の実施形態にかかる発光素子の変形例を示す発光素子の断面図である。
【図17】本発明の実施形態にかかる発光素子の変形例を示す発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明にかかる発光素子の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0011】
(第1の実施形態)
<発光素子の構造>
図1は本実施形態にかかる発光素子20の斜視図、図2は図1に示す発光素子20の平面図を示している。また、図3は断面図であり、図1および2のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【0012】
発光素子20は、図1乃至3に示すように、基板1と、基板1上に形成された光半導体層2と、光半導体層2の一方主面2A上に形成された突起3と、光半導体層2に電圧を印加する一対の電極5と、を有する。
【0013】
基板1は、光半導体層2を成長させることが可能な材料を用いることができる。光半導体層2を成長させることが可能な材料としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは酸化亜鉛などの結晶性材料を用いることができる。基板1は、かかる結晶性材料を単結晶化した後、単結晶を所望の形状に切断することにより準備される。また、このような基板1は、例えば長方形の平板や略円形状をなすウェハーなどの平面形状に設定される。
【0014】
基板1は、発光層2bで発光した光を発光層2bの第1半導体層2a側から取り出す場合は、基板1を除去することが可能な材料や透光性の材料を用いることができる。具体的に、基板1として基板1を除去することが可能な材料を用いた場合、基板1上に光半導体層2を形成した後、エッチングなどにより基板1を除去する工程を追加すればよい。また、基板1に透光性の材料を用いた場合、透光性の材料としては、発光層2bで発光する光に対して、上述の材料から発光波長を考慮して選択することができる。なお、基板1は、例えば10μm以上1000μm以下の厚みに設定されている。
【0015】
基板1上には、光半導体層2が設けられている。光半導体層2は、基板1の主面1Aに形成された第1半導体層2aと、第1半導体層2a上に形成された発光層2bと、発光層2b上に形成された第2半導体層2cと、から構成されている。なお、光半導体層2は、全体の厚みが例えば100nm以上5000nm以下に形成されている。
【0016】
光半導体層2は、III−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムなどを例示することができ、化学式で例示するとAlx1Ga(1−x1−y1)Iny1N(0≦x1≦1、0≦y1≦1、x1+y1≦1)と表すことができる。なお、III−V族半導体以外には、例えば酸化亜鉛を用いることができる。
【0017】
第1半導体層2aと第2半導体層2cとは、それぞれ逆の導電型を有するように形成されている。このような導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウムやシリコンを不純物として混ぜる方法を用いることができる。
【0018】
発光層2bは、第1半導体層2aと第2半導体層2cとの間に設けられている。発光層2bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回(例えば、2回以上10回以下)繰り返し、規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)としてもよい。なお、前述の障壁層としては、上述した化学式で例示するとIn0.01Ga0.99N層などを用いることができる。また、前述の井戸層としては、In0.11Ga0.89N層などを例示できる。この場合、障壁層の厚みは例えば5nm以上15nm以下、井戸層の厚みは例えば2nm以上10nm以下に設定でき、発光層2b全体の厚みは例えば25nm以上150nm以下である。また、このように構成された発光層2bでは、例えば350nm以上600nm以下の波長の光を発光する。なお、光半導体層2の各層の屈折率は、例えば、1.70以上2.70以下に設定される。
【0019】
突起3が形成された光半導体層2には、発光させるための電圧を印加する一対の電極5がさらに形成されている。このような一対の電極5は、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極5aと、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極5bと、によって対をなしている。かかる第1電極5aは第1半導体層2a上に形成され、第2電極5bは第2半導体層2c上に形成されている。このように形成された一対の電極5の第1電極5aおよび第2電極5bに電圧を印加することにより、発光層2bを発光させることが可能となる。
【0020】
第2半導体層2cの主面2A上には、突起3が列をなして複数配置されている。これらの突起3は、主面2Aとなす内角t1が90度未満の傾斜面4を有している。図4は、図2に示した突起3および第2半導体層2cの一部とその周縁部を示す拡大断面図である。突起3は、複数の突起3の列方向Geと垂直な方向から断面視したときに、その断面外郭線が一方主面の法線Hbに対して非線対称形状となるようになっている。ここで傾斜辺4aは、傾斜面4を複数の突起3の列方向Geと垂直な方向から断面視した場合の辺を指し、非線対称形状とは、主面2Aの法線Hbに対して線対称とならない形状を指す。さらに、断面外郭線とは、断面視したときに突起3の外周の線であり、突起3の表面が波長以下で荒れている場合にはその包絡線を示す。
【0021】
このような突起3は、平面視形状が円や多角形で形成されており、底面の直径は例えば450nm以上1000nm以下に設定することができる。また、突起3の高さは例えば400nm以上1000nm以下に設定することができる。なお、突起3と第2半導体層2cとが異なる材料の場合には突起3の高さは底面から頂点までの高さを指し、突起3が第2半導体層2cと一体的に形成されている場合は、断面視して主面2Aと突起3とが重なる線分を底辺とすることができる。
【0022】
突起3は、発光層2bで発光した光を透過する透光性の材料により形成されている。このような突起3としては、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ナトリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも一種類を含む材料のうち透光性のものを用いることができる。
【0023】
また、このような透光性の材料の中でも、第2半導体層2cより高い屈折率を有する材料を突起3として用いることが好ましい。具体的には、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブなどを用いることができる。突起3を第2半導体層2cより高い屈折率を有する材料で形成することにより、第2半導体層2cと突起3との界面で全反射されて第2半導体層2cに戻りにくくすることができる。なお、突起3は第2半導体層2cと同じ材料で形成してもよく、その場合には突起3を第2半導体層2cと一体的に形成されていても構わない。
【0024】
さらに突起3は、傾斜面4を有することにより断面外郭線が非線対称形状となっている。突起3の断面外郭線が非線対称形状となっていることから、線対称形状となっている場合と比較して、突起3内の全反射する回数を減らすことができ光半導体層2に戻りにくくすることができる。その結果、発光素子20の光取り出し効率を向上させることができる。
【0025】
具体的には、突起3は主面2Aの法線Hbに対して線対称とならない形状のため、突起3のそれぞれの辺での臨界角が異なるようになり、突起3の底面から入射した光が突起3の端面で全反射した場合であっても、全反射を繰り返しにくくなる。その結果、一度突起3に入射した光は光半導体層2へ戻りにくくなり、発光素子20の光取り出し効率を向上させることができる。
【0026】
これに対して、突起が光半導体層の主面の法線に対して線対称となる線対称形状から形成されている場合、突起へ入射した光が全反射を繰り返して光半導体層へ戻りやすくなる。具体的には、突起へ入射した光は、突起の端面で一度全反射されると他の端面でも臨界角より大きくなりやすく全反射されやすくなるため、光半導体層へ戻りやすくなり、その結果、発光素子の光取り出し効率の低下を招きやすくなる。さらに、光半導体層へ戻る光が多くなることから、光半導体層に戻った光が非発光再結合されて熱に変換されるため、発光素子の発光効率の低下を招きやすくなる。
【0027】
本実施形態において、複数の突起3は、図2および3にも示すように、複数の突起3を平面視したときに、複数の突起3のそれぞれの傾斜面4が、列方向Geの一方方向に向けて配置されているため、さらに光取り出し効率を向上させることができる。これについて図4を用いて以下に説明する。
【0028】
図4に示す光線Liは、光半導体層2の発光層2bで発光した光の経路を例示したものである。具体的には、図4の光線Liに示すように、突起3に入った光の一部すなわち傾斜辺4aへの入射角が臨界角より大きくなるような光は、傾斜辺4aで全反射されて隣接する突起3の方へ進むようになる。その後、傾斜辺4aで反射された光は、隣接する突起3の傾斜辺4aでさらに上方へ全反射されやすくなる。その結果、発光素子20の上方での光取り出し効率を向上させることができる。また、複数の突起3の傾斜面4と主面2Aとのなす内角t1を調整することにより、上方へ全反射される光の量を調節しても構わない。このように内角t1を調整することにより光取り出し効率を調節することができる。なお、内角t1は0度以上90度未満に設定すればよい。そのなかでも、突起3の配置数や突起3の端面における全反射などの観点から約40度以上70度未満に設定することが好ましい。
【0029】
さらに、図5に示すように、傾斜面4に反射層6を設けてもよい。このように傾斜面4上に反射層6を設けることにより、隣接する突起3の傾斜辺4aで反射した光を上方へより全反射させやすくすることができる。その結果、発光素子20の上方での光取り出し効率をより向上させることができる。反射層6としては、例えば金属性材料などを用いることができる。
【0030】
<発光素子の製造方法>
次に、発光素子20の製造方法を説明する。図6から図16は、発光素子20の製造方法を説明するための断面図であり、図1および2に示す発光素子20のA―A´線における断面に相当する部分を示している。
【0031】
(光半導体層準備工程)
図6に示すように、基板1を準備する。かかる基板1としては、上述したとおり、例えば長方形の平板や略円形状をなすウェハーなどの平面形状のものを用いることができる。
【0032】
次に、図7に示すように、基板1の主面1A上に光半導体層2を形成する。光半導体層2すなわち第1半導体層2a、発光層2bおよび第2半導体層2cを成長させる方法として、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属エピタキシー(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法またはパルスレーザデポジション(PLD:Pulsed Laser Deposition)法などを用いることができる。このような光半導体層2の材料として、例えばIII−V族半導体を用いることができる。なお、基板1上に積層する光半導体層2は、全体の厚みを例えば100nm以上2000nm以下に設定することができる。
【0033】
(突起形成工程)
次に、このように形成された光半導体層2の第2半導体層2cの主面2Aには、傾斜面4を有する突起3が形成される。突起3の形成方向を具体的に図8〜11を用いて、以下に説明する。
【0034】
まず、図8に示すように、第2半導体層2cの主面2A上に積層膜10を形成する。この積層膜10の材料は、突起3となる材料を用いる。突起3の材料としては、例えばTi,Ta,Al,Mg,Si,Zr,Hf,Y,Th,Sc,Nd,Nb,Naからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも一種類を含む材料のうち透光性のものを用いることができる。また、積層膜10の厚みは突起3と同じ厚さで形成すればよく、例えば400nm以上1000nm以下に設定することができる。
【0035】
このような積層膜10は、例えばスピンコート法、スパッタ法または蒸着法などの物理的な積層方法により形成することができる。このように例示した積層方法の中でもスピンコート法を用いた場合には、均一な膜を短時間で成膜することができるため、積層膜10の形成時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0036】
第2半導体層2cの主面2A上に積層膜10を形成した後、図9に示すように、積層膜10の主面10A上に、積層膜10の一部が露出する露出領域13を有するように複数の貫通孔を備えた第1マスクパターン11を形成する。第1マスクパターン11の露出領域13の平面視形状は、形成する突起3の形状に合わせて設定することができ、例えば多角形状や円形状を用いることができる。
【0037】
第1マスクパターン11を形成する方法としては、例えば従来のフォトリソグラフィ法などを用いることができる。このような第1マスクパターン11を形成することにより、平面透視して、第1マスクパターン11と積層膜10との重なる位置に線対称の予備突起14を形成することができる。
【0038】
このように第1マスクパターン11を光半導体層2の主面2A上に形成した後、積層膜10の露出領域13をウェットエッチングやドライエッチングなどのエッチング法で、積層膜10を主面10Aから深さ方向に積層膜10の一部を除去することにより、予備突起14を形成する。具体的には、例えばウェットエッチングを用いて台形状の予備突起14を形成する場合、サイドエッチなどを用いることができる。このようして形成される予備突起14は、第2半導体層2の主面2A上に主面2Aの法線に対して線対称形状となっている。また予備突起14は、断面視した時の断面外郭線が例えば台形や四角形などの多角形形状に設定することができる。
【0039】
その後、図11に示すように、予備突起14の一部を被覆する第2マスクパターン12を形成する。第2マスクパターン12は、第2半導体層2cの主面2Aに対して傾いた上方向から第2マスクパターン12の材料をスパッタ法や蒸着法などの物理的な積層方法を用いることにより、予備突起14の一部を被覆する第2マスクパターン12を形成することができる。このような積層方法のなかでも、第2マスクパターン12の材料の回り込みが少ない蒸着法を用いることが好ましい。具体的には、例えばX軸からZ軸方向へ約45度傾いた位置から蒸着法により第2マスクパターン12を形成することができる。ここで、X軸およびY軸は、XY平面を第2半導体層2cの主面2Aと平行となるように取り、Z軸はXY平面に対して垂直な方向とする。
【0040】
第1マスクパターン11および第2マスクパターン12のマスク材料としては、エッチングされる積層膜10とエッチングされにくいマスク材料の選択比によって選ぶことができ、例えば酸化シリコン、窒化シリコンなどの無機材料やクロム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
【0041】
さらに、このように第2マスクパターン12を形成した後、Z軸方向と垂直な上方向からエッチング法などを用いて、予備突起14の一部を除去する。これにより、図12に示すように、第2半導体層2cの主面2Aの法線に対して非線対称形状となる突起3を形成することができる。
【0042】
(電極形成工程)
次に、このようにして形成された光半導体層2に電圧を印加して発光層2bを発光させる一対の電極5を形成する。このような一対の電極5は、第1半導体層2aと接続する第1電極5aと第2半導体層2cと接続する第2電極5bにより構成されている。
【0043】
第1電極5aを設けるために、電極用溝15を光半導体層2に形成する。具体的には、図13に示すように、第2半導体層2c、発光層2bおよび第1半導体層2aの一部まで順に第2半導体層2cの上面からエッチング法などを用いて電極用溝15を形成する。
【0044】
その後、電極用溝15の底面すなわち第1半導体層2aの露出部に、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極5aが形成される。さらに、第2半導体層2cの主面2Aに、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極5bが形成される。以上のようにして、一対の電極5が形成される。
【0045】
一対の電極5の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、ニオブ、タンタル、バナジウム、白金、鉛またはベリリウムなどの金属や、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物や、金−シリコン合金、金−ゲルマニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。また、一対の電極5は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数層積層したものとしても構わない。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる発光素子21について説明する。第1の実施形態にかかる発光素子20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図14および15は、第2の実施形態にかかる発光素子21を示す図である。図14は、発光素子21の平面図、図15は図14のB−B´線で切断したときの断面に相当する。第2の実施形態かかる発光素子21は、第1の実施形態にかかる発光素子20と比較して突起8が基板1の主面1B上に設けられている点で異なっている。
【0048】
具体的に本実施形態にかかる発光素子21は、基板1と、基板1の主面1Aに設けられ、主面1Aに向かって光を発する光半導体層2と、主面1Bとなす内角t2が90度未満の傾斜面9を有するとともに、基板1の主面1Bに列をなして配置された複数の光透過性の突起8と、が形成されている。さらに、突起8は、複数の突起8を平面視したとき、それぞれの傾斜面9が、複数の突起8が配置された列の一方方向に向けて配置され、複数の突起8を列方向Geと垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が主面1Bの法線に対して非線対称形状をなしている。
【0049】
このように突起8が基板1の主面1B上に形成されていることから、発光層2bで発光した光を基板1側から取り出す場合に光取り出し効率を向上させることができる。
【0050】
(変形例1)
図16は上述した実施形態にかかる発光素子20の突起3の変形例を示す拡大断面図である。第1の実施形態にかかる発光素子20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図16の拡大断面図は図4の拡大断面図に相当するものである。図16(a)は、傾斜辺4bを有することにより五角形状の断面外郭線をなし、且つ第2半導体層2cの主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状をなしている。この場合、傾斜辺4bと主面2Aとのなす内角t3は、傾斜辺4bを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指す。このような五角形状の断面外郭線を有する突起3は、例えば予備突起14の上面の一部にマスクを形成した後に主面2Aに対して傾斜方向からエッチングすることにより断面外郭線を五角形となる突起3を形成することができる。そのため、かかる非線対称形状の突起3を少ないエッチングの回数で形成することができ、比較的容易に形成することができる。
【0052】
次に、図16(b)は、傾斜辺4cを突起3の先端に有することにより四角形状の断面外郭線をなし、且つ第2半導体層2cの主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状をなしている。この場合、主面2Aとなす内角t4は、傾斜辺4cを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指す。このように突起3を形成する場合には、主面2Aに対して傾斜方向からエッチングすることにより非線対称形状を形成することができる。そのため、かかる非線対称形状の突起3を少ないエッチングの回数で形成することができ、比較的容易に形成することができる。また突起3の上面が傾斜していることから、かかる上面で全反射されにくくなり、突起3の上方へ多く光を取り出すことができる。
【0053】
さらに、図16(c)は、角度の異なる傾斜辺4dおよび傾斜辺4eを有することにより五角形状の断面外郭線をなし、且つ第2半導体層2cの主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状をなしている。この場合、主面2Aとなす内角t5は傾斜辺4dを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指し、主面2Aとなす内角t6は傾斜辺4eを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指す。このように断面外郭線が2つの傾斜辺を有する突起3は、主面2Aに対して傾斜方向から角度を変えて2回エッチングすることにより設けることができる。このことから、突起3のうち光半導体層2の主面2Aに対して傾斜している辺が多くなり、突起3の中で全反射を繰り返しにくくすることができる。
【0054】
本変形例1においては第2半導体層2c上に形成される突起3の場合について説明したが、このような変形例1は基板1上に形成される突起8にも容易に適用することができるものであり、突起8に適用した場合にも同様の効果を得ることができる。
【0055】
(変形例2)
図17は上述した実施形態にかかる発光素子20の突起3の変形例を示す拡大断面図である。第1の実施形態にかかる発光素子20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図17(a)は本変形例にかかる発光素子20の斜視図、図17(b)は図17(a)に示す発光素子20の平面図を示している。本変形例にかかる発光素子20は、突起16が、平面視したときに、その外郭線が四角形である。さらに、かかる四角形の隣り合う2辺には、X軸に平行な列方向Ge−Xの一方方向に向けて配置された傾斜辺17と、Y軸に平行な列方向Ge−Yの一方方向に向けて配置された傾斜辺17と、が連続して形成されている。ここで、X軸およびY軸は第2半導体層2cの主面2Aと平行な面を構成する軸を指している。なお、かかる外郭線は四角形に限定されるものではなく、五角形や6角形などの多角形を用いることができる。
【0057】
このように突起16が形成されていることから、突起16が配置された列方向の2方向に対して断面外郭線が非線対称形状をなすようになり、結果として光取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0058】
(変形例3)
上述では基板1として平板のものを用いた場合について説明したが、基板1として主面1Aに凹凸を形成したものを用いてもよい。このような基板1は、例えば基板1の一部をエッチングすることにより基板1の主面1Aに凹凸を形成することにより準備することができる。このような基板1上に、第1半導体層2aを横方向成長させることにより、転位の少ない光半導体層2を形成することができる。
【0059】
第1半導体層2aを横方向成長させる方法としては、例えば第1半導体層2aの組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。これにより第1半導体層2aの成長速度を基板1の主面1Aに対する垂直方向と水平方向とで制御することができ、第1半導体層2aを横方向成長させることができる。
【0060】
このように第1半導体層2aを基板1上に横方向成長させることにより、発光層2bにまで延在する転位の数および位置を制御しつつ成長速度を早めることができ、光半導体層2の生産性を向上させることができる。このように基板1に凹凸を形成して横方向成長させた場合には、発光層2bにまで延在する転位が凸部上に存在しやすくなる。なお、このような凸部は高さが例えば50μm以上300μm以下に設定することができる。
【0061】
さらに、このようにして凹凸を有する基板1上に第1半導体層を横方向成長させる場合、発光層2bまで延在する転位の位置を制御することができる。そのため、第1マスクパターン11を平面透視して基板1の凹部と重なる位置に形成することが好ましい。基板1の凹部の位置に対応するような第1マスクパターン11を形成した場合、平面透視して突起3を基板1上と重なる位置に形成することができるため、発光層2bで発光した光を効率よく取り出すことができる。
【0062】
(変形例4)
上述では、突起3を形成する方法の1つとして、マスクパターンを用いて突起3を形成する方法について説明したが、突起3を形成する方法の1つとしてナノインプリント法を用いてもよい。
【0063】
ナノインプリント法を用いて突起3を形成する場合には、第2半導体層2c上に積層膜10を形成した後、積層膜10上に突起3と同じ形状のマスクを形成する。その後、このように形成したマスクをエッチングすることにより、積層膜10にマスクと同じ形状すなわち突起3の形状を転写することができる。ここで、このようなマスクは、積層膜10にレジスト膜を成膜した後、レジスト膜にナノインプリントモールドを押し付けることにより所望の形状に形成することができる。
【0064】
ここで、ナノインプリントモールドとは、レジスト膜に押し付ける面に突起3と同じ形状の凹部が形成されており、これをレジスト膜に押し付けることにより所望の形状に形成することができる。このようなナノインプリントモールドは、例えばシリコンやシリコンカーバイドなどの結晶性材料を用いることができ、シリコンを用いた場合であれば異方性エッチングなどにより凹部を形成することができる。
【実施例】
【0065】
本発明の発光素子の実施例を以下に説明する。
【0066】
本発明の発光素子の効果を確認するために、光線追跡法による光取り出し効率のシミュレーションを行った。シミュレーションモデルは、図15に示すような、突起8を基板1上に形成した発光素子である。
【0067】
本実施例における発光素子は、基板は厚み250μmのサファイア(屈折率1.79)、光半導体層は厚み3μmの窒化ガリウム(屈折率2.5)から構成されている。
【0068】
光半導体層の各層の屈折率はその組成によって変化するが、その差はわずか数パーセント程度であるため、今回のシミュレーションでは一定の屈折率とした。また、外部は空気(屈折率1)であるとし、発光層で発光する光の発光波長は400nmとした。さらに、突起は底辺の直径を1μm、高さを1μmとした。
【0069】
このシミュレーションの結果、突起の断面外郭線が主面1Bの法線に対して線対称形状の四角形を設けた突起と比較して、傾斜面9を設けて非線対称形状とした突起の方が1.3倍の光取り出し効率の向上することがわかった。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
2 光半導体層
2a 第1半導体層
2b 発光層
2c 第2半導体層
3 突起
4 傾斜面
4a 傾斜辺
5 一対の電極
5a 第1電極
5b 第2電極
6 反射層
10 積層膜
11 第1マスクパターン
12 第2マスクパターン
13 露出領域
14 予備突起
15 電極用溝
20 発光素子
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外光、青色光、緑色光等を発光する発光素子の開発が行われている。そのような発光素子として、例えば特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−277374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子の開発において、発光素子を発光させた際に内部で発光した光を外部へ取り出す光取り出し効率を改善することが求められている。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光取り出し効率を向上させた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる発光素子は、一方主面に向かって光を発する光半導体層と、前記一方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記光半導体層の一方主面上に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が一方主面の法線に対して非線対称形状である。
【0006】
また、本発明にかかる発光素子は、基板と、前記基板の一方主面上に設けられ、前記一方主面に向かって光を発する光半導体層と、前記他方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記基板の他方主面に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が前記他方主面の法線に対して非線対称形状をなしている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光取り出し効率を向上させた発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の平面図あり、図1を平面視したときの平面に相当する。
【図3】図1または2に示す発光素子の断面図であり、図1のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の一部を拡大した断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す発光素子の断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態にかかる発光素子の平面図である。
【図15】図14に示す発光素子の断面図であり、図14のB−B´線で切断したときの断面に相当する。
【図16】本発明の実施形態にかかる発光素子の変形例を示す発光素子の断面図である。
【図17】本発明の実施形態にかかる発光素子の変形例を示す発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明にかかる発光素子の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0011】
(第1の実施形態)
<発光素子の構造>
図1は本実施形態にかかる発光素子20の斜視図、図2は図1に示す発光素子20の平面図を示している。また、図3は断面図であり、図1および2のA−A´線で切断したときの断面に相当する。
【0012】
発光素子20は、図1乃至3に示すように、基板1と、基板1上に形成された光半導体層2と、光半導体層2の一方主面2A上に形成された突起3と、光半導体層2に電圧を印加する一対の電極5と、を有する。
【0013】
基板1は、光半導体層2を成長させることが可能な材料を用いることができる。光半導体層2を成長させることが可能な材料としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは酸化亜鉛などの結晶性材料を用いることができる。基板1は、かかる結晶性材料を単結晶化した後、単結晶を所望の形状に切断することにより準備される。また、このような基板1は、例えば長方形の平板や略円形状をなすウェハーなどの平面形状に設定される。
【0014】
基板1は、発光層2bで発光した光を発光層2bの第1半導体層2a側から取り出す場合は、基板1を除去することが可能な材料や透光性の材料を用いることができる。具体的に、基板1として基板1を除去することが可能な材料を用いた場合、基板1上に光半導体層2を形成した後、エッチングなどにより基板1を除去する工程を追加すればよい。また、基板1に透光性の材料を用いた場合、透光性の材料としては、発光層2bで発光する光に対して、上述の材料から発光波長を考慮して選択することができる。なお、基板1は、例えば10μm以上1000μm以下の厚みに設定されている。
【0015】
基板1上には、光半導体層2が設けられている。光半導体層2は、基板1の主面1Aに形成された第1半導体層2aと、第1半導体層2a上に形成された発光層2bと、発光層2b上に形成された第2半導体層2cと、から構成されている。なお、光半導体層2は、全体の厚みが例えば100nm以上5000nm以下に形成されている。
【0016】
光半導体層2は、III−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムなどを例示することができ、化学式で例示するとAlx1Ga(1−x1−y1)Iny1N(0≦x1≦1、0≦y1≦1、x1+y1≦1)と表すことができる。なお、III−V族半導体以外には、例えば酸化亜鉛を用いることができる。
【0017】
第1半導体層2aと第2半導体層2cとは、それぞれ逆の導電型を有するように形成されている。このような導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウムやシリコンを不純物として混ぜる方法を用いることができる。
【0018】
発光層2bは、第1半導体層2aと第2半導体層2cとの間に設けられている。発光層2bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回(例えば、2回以上10回以下)繰り返し、規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)としてもよい。なお、前述の障壁層としては、上述した化学式で例示するとIn0.01Ga0.99N層などを用いることができる。また、前述の井戸層としては、In0.11Ga0.89N層などを例示できる。この場合、障壁層の厚みは例えば5nm以上15nm以下、井戸層の厚みは例えば2nm以上10nm以下に設定でき、発光層2b全体の厚みは例えば25nm以上150nm以下である。また、このように構成された発光層2bでは、例えば350nm以上600nm以下の波長の光を発光する。なお、光半導体層2の各層の屈折率は、例えば、1.70以上2.70以下に設定される。
【0019】
突起3が形成された光半導体層2には、発光させるための電圧を印加する一対の電極5がさらに形成されている。このような一対の電極5は、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極5aと、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極5bと、によって対をなしている。かかる第1電極5aは第1半導体層2a上に形成され、第2電極5bは第2半導体層2c上に形成されている。このように形成された一対の電極5の第1電極5aおよび第2電極5bに電圧を印加することにより、発光層2bを発光させることが可能となる。
【0020】
第2半導体層2cの主面2A上には、突起3が列をなして複数配置されている。これらの突起3は、主面2Aとなす内角t1が90度未満の傾斜面4を有している。図4は、図2に示した突起3および第2半導体層2cの一部とその周縁部を示す拡大断面図である。突起3は、複数の突起3の列方向Geと垂直な方向から断面視したときに、その断面外郭線が一方主面の法線Hbに対して非線対称形状となるようになっている。ここで傾斜辺4aは、傾斜面4を複数の突起3の列方向Geと垂直な方向から断面視した場合の辺を指し、非線対称形状とは、主面2Aの法線Hbに対して線対称とならない形状を指す。さらに、断面外郭線とは、断面視したときに突起3の外周の線であり、突起3の表面が波長以下で荒れている場合にはその包絡線を示す。
【0021】
このような突起3は、平面視形状が円や多角形で形成されており、底面の直径は例えば450nm以上1000nm以下に設定することができる。また、突起3の高さは例えば400nm以上1000nm以下に設定することができる。なお、突起3と第2半導体層2cとが異なる材料の場合には突起3の高さは底面から頂点までの高さを指し、突起3が第2半導体層2cと一体的に形成されている場合は、断面視して主面2Aと突起3とが重なる線分を底辺とすることができる。
【0022】
突起3は、発光層2bで発光した光を透過する透光性の材料により形成されている。このような突起3としては、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ナトリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも一種類を含む材料のうち透光性のものを用いることができる。
【0023】
また、このような透光性の材料の中でも、第2半導体層2cより高い屈折率を有する材料を突起3として用いることが好ましい。具体的には、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブなどを用いることができる。突起3を第2半導体層2cより高い屈折率を有する材料で形成することにより、第2半導体層2cと突起3との界面で全反射されて第2半導体層2cに戻りにくくすることができる。なお、突起3は第2半導体層2cと同じ材料で形成してもよく、その場合には突起3を第2半導体層2cと一体的に形成されていても構わない。
【0024】
さらに突起3は、傾斜面4を有することにより断面外郭線が非線対称形状となっている。突起3の断面外郭線が非線対称形状となっていることから、線対称形状となっている場合と比較して、突起3内の全反射する回数を減らすことができ光半導体層2に戻りにくくすることができる。その結果、発光素子20の光取り出し効率を向上させることができる。
【0025】
具体的には、突起3は主面2Aの法線Hbに対して線対称とならない形状のため、突起3のそれぞれの辺での臨界角が異なるようになり、突起3の底面から入射した光が突起3の端面で全反射した場合であっても、全反射を繰り返しにくくなる。その結果、一度突起3に入射した光は光半導体層2へ戻りにくくなり、発光素子20の光取り出し効率を向上させることができる。
【0026】
これに対して、突起が光半導体層の主面の法線に対して線対称となる線対称形状から形成されている場合、突起へ入射した光が全反射を繰り返して光半導体層へ戻りやすくなる。具体的には、突起へ入射した光は、突起の端面で一度全反射されると他の端面でも臨界角より大きくなりやすく全反射されやすくなるため、光半導体層へ戻りやすくなり、その結果、発光素子の光取り出し効率の低下を招きやすくなる。さらに、光半導体層へ戻る光が多くなることから、光半導体層に戻った光が非発光再結合されて熱に変換されるため、発光素子の発光効率の低下を招きやすくなる。
【0027】
本実施形態において、複数の突起3は、図2および3にも示すように、複数の突起3を平面視したときに、複数の突起3のそれぞれの傾斜面4が、列方向Geの一方方向に向けて配置されているため、さらに光取り出し効率を向上させることができる。これについて図4を用いて以下に説明する。
【0028】
図4に示す光線Liは、光半導体層2の発光層2bで発光した光の経路を例示したものである。具体的には、図4の光線Liに示すように、突起3に入った光の一部すなわち傾斜辺4aへの入射角が臨界角より大きくなるような光は、傾斜辺4aで全反射されて隣接する突起3の方へ進むようになる。その後、傾斜辺4aで反射された光は、隣接する突起3の傾斜辺4aでさらに上方へ全反射されやすくなる。その結果、発光素子20の上方での光取り出し効率を向上させることができる。また、複数の突起3の傾斜面4と主面2Aとのなす内角t1を調整することにより、上方へ全反射される光の量を調節しても構わない。このように内角t1を調整することにより光取り出し効率を調節することができる。なお、内角t1は0度以上90度未満に設定すればよい。そのなかでも、突起3の配置数や突起3の端面における全反射などの観点から約40度以上70度未満に設定することが好ましい。
【0029】
さらに、図5に示すように、傾斜面4に反射層6を設けてもよい。このように傾斜面4上に反射層6を設けることにより、隣接する突起3の傾斜辺4aで反射した光を上方へより全反射させやすくすることができる。その結果、発光素子20の上方での光取り出し効率をより向上させることができる。反射層6としては、例えば金属性材料などを用いることができる。
【0030】
<発光素子の製造方法>
次に、発光素子20の製造方法を説明する。図6から図16は、発光素子20の製造方法を説明するための断面図であり、図1および2に示す発光素子20のA―A´線における断面に相当する部分を示している。
【0031】
(光半導体層準備工程)
図6に示すように、基板1を準備する。かかる基板1としては、上述したとおり、例えば長方形の平板や略円形状をなすウェハーなどの平面形状のものを用いることができる。
【0032】
次に、図7に示すように、基板1の主面1A上に光半導体層2を形成する。光半導体層2すなわち第1半導体層2a、発光層2bおよび第2半導体層2cを成長させる方法として、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属エピタキシー(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法またはパルスレーザデポジション(PLD:Pulsed Laser Deposition)法などを用いることができる。このような光半導体層2の材料として、例えばIII−V族半導体を用いることができる。なお、基板1上に積層する光半導体層2は、全体の厚みを例えば100nm以上2000nm以下に設定することができる。
【0033】
(突起形成工程)
次に、このように形成された光半導体層2の第2半導体層2cの主面2Aには、傾斜面4を有する突起3が形成される。突起3の形成方向を具体的に図8〜11を用いて、以下に説明する。
【0034】
まず、図8に示すように、第2半導体層2cの主面2A上に積層膜10を形成する。この積層膜10の材料は、突起3となる材料を用いる。突起3の材料としては、例えばTi,Ta,Al,Mg,Si,Zr,Hf,Y,Th,Sc,Nd,Nb,Naからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも一種類を含む材料のうち透光性のものを用いることができる。また、積層膜10の厚みは突起3と同じ厚さで形成すればよく、例えば400nm以上1000nm以下に設定することができる。
【0035】
このような積層膜10は、例えばスピンコート法、スパッタ法または蒸着法などの物理的な積層方法により形成することができる。このように例示した積層方法の中でもスピンコート法を用いた場合には、均一な膜を短時間で成膜することができるため、積層膜10の形成時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0036】
第2半導体層2cの主面2A上に積層膜10を形成した後、図9に示すように、積層膜10の主面10A上に、積層膜10の一部が露出する露出領域13を有するように複数の貫通孔を備えた第1マスクパターン11を形成する。第1マスクパターン11の露出領域13の平面視形状は、形成する突起3の形状に合わせて設定することができ、例えば多角形状や円形状を用いることができる。
【0037】
第1マスクパターン11を形成する方法としては、例えば従来のフォトリソグラフィ法などを用いることができる。このような第1マスクパターン11を形成することにより、平面透視して、第1マスクパターン11と積層膜10との重なる位置に線対称の予備突起14を形成することができる。
【0038】
このように第1マスクパターン11を光半導体層2の主面2A上に形成した後、積層膜10の露出領域13をウェットエッチングやドライエッチングなどのエッチング法で、積層膜10を主面10Aから深さ方向に積層膜10の一部を除去することにより、予備突起14を形成する。具体的には、例えばウェットエッチングを用いて台形状の予備突起14を形成する場合、サイドエッチなどを用いることができる。このようして形成される予備突起14は、第2半導体層2の主面2A上に主面2Aの法線に対して線対称形状となっている。また予備突起14は、断面視した時の断面外郭線が例えば台形や四角形などの多角形形状に設定することができる。
【0039】
その後、図11に示すように、予備突起14の一部を被覆する第2マスクパターン12を形成する。第2マスクパターン12は、第2半導体層2cの主面2Aに対して傾いた上方向から第2マスクパターン12の材料をスパッタ法や蒸着法などの物理的な積層方法を用いることにより、予備突起14の一部を被覆する第2マスクパターン12を形成することができる。このような積層方法のなかでも、第2マスクパターン12の材料の回り込みが少ない蒸着法を用いることが好ましい。具体的には、例えばX軸からZ軸方向へ約45度傾いた位置から蒸着法により第2マスクパターン12を形成することができる。ここで、X軸およびY軸は、XY平面を第2半導体層2cの主面2Aと平行となるように取り、Z軸はXY平面に対して垂直な方向とする。
【0040】
第1マスクパターン11および第2マスクパターン12のマスク材料としては、エッチングされる積層膜10とエッチングされにくいマスク材料の選択比によって選ぶことができ、例えば酸化シリコン、窒化シリコンなどの無機材料やクロム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
【0041】
さらに、このように第2マスクパターン12を形成した後、Z軸方向と垂直な上方向からエッチング法などを用いて、予備突起14の一部を除去する。これにより、図12に示すように、第2半導体層2cの主面2Aの法線に対して非線対称形状となる突起3を形成することができる。
【0042】
(電極形成工程)
次に、このようにして形成された光半導体層2に電圧を印加して発光層2bを発光させる一対の電極5を形成する。このような一対の電極5は、第1半導体層2aと接続する第1電極5aと第2半導体層2cと接続する第2電極5bにより構成されている。
【0043】
第1電極5aを設けるために、電極用溝15を光半導体層2に形成する。具体的には、図13に示すように、第2半導体層2c、発光層2bおよび第1半導体層2aの一部まで順に第2半導体層2cの上面からエッチング法などを用いて電極用溝15を形成する。
【0044】
その後、電極用溝15の底面すなわち第1半導体層2aの露出部に、第1半導体層2aと電気的に接続される第1電極5aが形成される。さらに、第2半導体層2cの主面2Aに、第2半導体層2cと電気的に接続される第2電極5bが形成される。以上のようにして、一対の電極5が形成される。
【0045】
一対の電極5の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、ニオブ、タンタル、バナジウム、白金、鉛またはベリリウムなどの金属や、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物や、金−シリコン合金、金−ゲルマニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。また、一対の電極5は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数層積層したものとしても構わない。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる発光素子21について説明する。第1の実施形態にかかる発光素子20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図14および15は、第2の実施形態にかかる発光素子21を示す図である。図14は、発光素子21の平面図、図15は図14のB−B´線で切断したときの断面に相当する。第2の実施形態かかる発光素子21は、第1の実施形態にかかる発光素子20と比較して突起8が基板1の主面1B上に設けられている点で異なっている。
【0048】
具体的に本実施形態にかかる発光素子21は、基板1と、基板1の主面1Aに設けられ、主面1Aに向かって光を発する光半導体層2と、主面1Bとなす内角t2が90度未満の傾斜面9を有するとともに、基板1の主面1Bに列をなして配置された複数の光透過性の突起8と、が形成されている。さらに、突起8は、複数の突起8を平面視したとき、それぞれの傾斜面9が、複数の突起8が配置された列の一方方向に向けて配置され、複数の突起8を列方向Geと垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が主面1Bの法線に対して非線対称形状をなしている。
【0049】
このように突起8が基板1の主面1B上に形成されていることから、発光層2bで発光した光を基板1側から取り出す場合に光取り出し効率を向上させることができる。
【0050】
(変形例1)
図16は上述した実施形態にかかる発光素子20の突起3の変形例を示す拡大断面図である。第1の実施形態にかかる発光素子20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図16の拡大断面図は図4の拡大断面図に相当するものである。図16(a)は、傾斜辺4bを有することにより五角形状の断面外郭線をなし、且つ第2半導体層2cの主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状をなしている。この場合、傾斜辺4bと主面2Aとのなす内角t3は、傾斜辺4bを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指す。このような五角形状の断面外郭線を有する突起3は、例えば予備突起14の上面の一部にマスクを形成した後に主面2Aに対して傾斜方向からエッチングすることにより断面外郭線を五角形となる突起3を形成することができる。そのため、かかる非線対称形状の突起3を少ないエッチングの回数で形成することができ、比較的容易に形成することができる。
【0052】
次に、図16(b)は、傾斜辺4cを突起3の先端に有することにより四角形状の断面外郭線をなし、且つ第2半導体層2cの主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状をなしている。この場合、主面2Aとなす内角t4は、傾斜辺4cを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指す。このように突起3を形成する場合には、主面2Aに対して傾斜方向からエッチングすることにより非線対称形状を形成することができる。そのため、かかる非線対称形状の突起3を少ないエッチングの回数で形成することができ、比較的容易に形成することができる。また突起3の上面が傾斜していることから、かかる上面で全反射されにくくなり、突起3の上方へ多く光を取り出すことができる。
【0053】
さらに、図16(c)は、角度の異なる傾斜辺4dおよび傾斜辺4eを有することにより五角形状の断面外郭線をなし、且つ第2半導体層2cの主面2Aの法線Hbに対して非線対称形状をなしている。この場合、主面2Aとなす内角t5は傾斜辺4dを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指し、主面2Aとなす内角t6は傾斜辺4eを延長した仮想直線と主面2Aとがなす内角を指す。このように断面外郭線が2つの傾斜辺を有する突起3は、主面2Aに対して傾斜方向から角度を変えて2回エッチングすることにより設けることができる。このことから、突起3のうち光半導体層2の主面2Aに対して傾斜している辺が多くなり、突起3の中で全反射を繰り返しにくくすることができる。
【0054】
本変形例1においては第2半導体層2c上に形成される突起3の場合について説明したが、このような変形例1は基板1上に形成される突起8にも容易に適用することができるものであり、突起8に適用した場合にも同様の効果を得ることができる。
【0055】
(変形例2)
図17は上述した実施形態にかかる発光素子20の突起3の変形例を示す拡大断面図である。第1の実施形態にかかる発光素子20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図17(a)は本変形例にかかる発光素子20の斜視図、図17(b)は図17(a)に示す発光素子20の平面図を示している。本変形例にかかる発光素子20は、突起16が、平面視したときに、その外郭線が四角形である。さらに、かかる四角形の隣り合う2辺には、X軸に平行な列方向Ge−Xの一方方向に向けて配置された傾斜辺17と、Y軸に平行な列方向Ge−Yの一方方向に向けて配置された傾斜辺17と、が連続して形成されている。ここで、X軸およびY軸は第2半導体層2cの主面2Aと平行な面を構成する軸を指している。なお、かかる外郭線は四角形に限定されるものではなく、五角形や6角形などの多角形を用いることができる。
【0057】
このように突起16が形成されていることから、突起16が配置された列方向の2方向に対して断面外郭線が非線対称形状をなすようになり、結果として光取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0058】
(変形例3)
上述では基板1として平板のものを用いた場合について説明したが、基板1として主面1Aに凹凸を形成したものを用いてもよい。このような基板1は、例えば基板1の一部をエッチングすることにより基板1の主面1Aに凹凸を形成することにより準備することができる。このような基板1上に、第1半導体層2aを横方向成長させることにより、転位の少ない光半導体層2を形成することができる。
【0059】
第1半導体層2aを横方向成長させる方法としては、例えば第1半導体層2aの組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。これにより第1半導体層2aの成長速度を基板1の主面1Aに対する垂直方向と水平方向とで制御することができ、第1半導体層2aを横方向成長させることができる。
【0060】
このように第1半導体層2aを基板1上に横方向成長させることにより、発光層2bにまで延在する転位の数および位置を制御しつつ成長速度を早めることができ、光半導体層2の生産性を向上させることができる。このように基板1に凹凸を形成して横方向成長させた場合には、発光層2bにまで延在する転位が凸部上に存在しやすくなる。なお、このような凸部は高さが例えば50μm以上300μm以下に設定することができる。
【0061】
さらに、このようにして凹凸を有する基板1上に第1半導体層を横方向成長させる場合、発光層2bまで延在する転位の位置を制御することができる。そのため、第1マスクパターン11を平面透視して基板1の凹部と重なる位置に形成することが好ましい。基板1の凹部の位置に対応するような第1マスクパターン11を形成した場合、平面透視して突起3を基板1上と重なる位置に形成することができるため、発光層2bで発光した光を効率よく取り出すことができる。
【0062】
(変形例4)
上述では、突起3を形成する方法の1つとして、マスクパターンを用いて突起3を形成する方法について説明したが、突起3を形成する方法の1つとしてナノインプリント法を用いてもよい。
【0063】
ナノインプリント法を用いて突起3を形成する場合には、第2半導体層2c上に積層膜10を形成した後、積層膜10上に突起3と同じ形状のマスクを形成する。その後、このように形成したマスクをエッチングすることにより、積層膜10にマスクと同じ形状すなわち突起3の形状を転写することができる。ここで、このようなマスクは、積層膜10にレジスト膜を成膜した後、レジスト膜にナノインプリントモールドを押し付けることにより所望の形状に形成することができる。
【0064】
ここで、ナノインプリントモールドとは、レジスト膜に押し付ける面に突起3と同じ形状の凹部が形成されており、これをレジスト膜に押し付けることにより所望の形状に形成することができる。このようなナノインプリントモールドは、例えばシリコンやシリコンカーバイドなどの結晶性材料を用いることができ、シリコンを用いた場合であれば異方性エッチングなどにより凹部を形成することができる。
【実施例】
【0065】
本発明の発光素子の実施例を以下に説明する。
【0066】
本発明の発光素子の効果を確認するために、光線追跡法による光取り出し効率のシミュレーションを行った。シミュレーションモデルは、図15に示すような、突起8を基板1上に形成した発光素子である。
【0067】
本実施例における発光素子は、基板は厚み250μmのサファイア(屈折率1.79)、光半導体層は厚み3μmの窒化ガリウム(屈折率2.5)から構成されている。
【0068】
光半導体層の各層の屈折率はその組成によって変化するが、その差はわずか数パーセント程度であるため、今回のシミュレーションでは一定の屈折率とした。また、外部は空気(屈折率1)であるとし、発光層で発光する光の発光波長は400nmとした。さらに、突起は底辺の直径を1μm、高さを1μmとした。
【0069】
このシミュレーションの結果、突起の断面外郭線が主面1Bの法線に対して線対称形状の四角形を設けた突起と比較して、傾斜面9を設けて非線対称形状とした突起の方が1.3倍の光取り出し効率の向上することがわかった。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
2 光半導体層
2a 第1半導体層
2b 発光層
2c 第2半導体層
3 突起
4 傾斜面
4a 傾斜辺
5 一対の電極
5a 第1電極
5b 第2電極
6 反射層
10 積層膜
11 第1マスクパターン
12 第2マスクパターン
13 露出領域
14 予備突起
15 電極用溝
20 発光素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方主面に向かって光を発する光半導体層と、
前記一方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記光半導体層の一方主面上に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、
前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、
前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が一方主面の法線に対して非線対称形状である、発光素子。
【請求項2】
前記複数の突起が、前記光半導体層と異なる材料からなる、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記複数の突起を平面視したとき、その外郭線が多角形であり、前記傾斜面が前記多角形の隣り合う2辺に連続して形成されている、請求項1または2に記載された発光素子。
【請求項4】
前記傾斜面の表面に、前記光半導体層で発光した光を反射する反射層をさらに有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
基板と、
前記基板の一方主面上に設けられ、前記一方主面に向かって光を発する光半導体層と、
前記他方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記基板の他方主面に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、
前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、
前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が前記他方主面の法線に対して非線対称形状をなす、発光素子。
【請求項6】
前記複数の突起が、前記基板と同じ材料からなる、請求項5に記載の発光素子。
【請求項1】
一方主面に向かって光を発する光半導体層と、
前記一方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記光半導体層の一方主面上に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、
前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、
前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が一方主面の法線に対して非線対称形状である、発光素子。
【請求項2】
前記複数の突起が、前記光半導体層と異なる材料からなる、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記複数の突起を平面視したとき、その外郭線が多角形であり、前記傾斜面が前記多角形の隣り合う2辺に連続して形成されている、請求項1または2に記載された発光素子。
【請求項4】
前記傾斜面の表面に、前記光半導体層で発光した光を反射する反射層をさらに有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
基板と、
前記基板の一方主面上に設けられ、前記一方主面に向かって光を発する光半導体層と、
前記他方主面となす内角が90度未満の傾斜面を有するとともに、前記基板の他方主面に列をなして配置された複数の光透過性の突起と、を含み、
前記複数の突起を平面視したとき、それぞれの前記傾斜面が、前記複数の突起が配置された列の一方方向に向けて配置され、
前記複数の突起を前記列方向と垂直な方向から断面視したとき、その断面外郭線が前記他方主面の法線に対して非線対称形状をなす、発光素子。
【請求項6】
前記複数の突起が、前記基板と同じ材料からなる、請求項5に記載の発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−159650(P2011−159650A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17647(P2010−17647)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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