説明

発光装置及びこれを備える画像形成装置

【課題】発光素子の発光光量の変化を常に正確に認識して適正に補正することが可能な発光装置及びこれを備えて、印字品質を長期に亘って良好に維持することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】透明基板41上に夫々透明のゲート絶縁膜43を介してアレイ状に配列された複数の有機EL素子34を有した発光装置であって、個々の有機EL素子34に対し、基板41上にゲート絶縁膜43を介して有機EL素子34と離れて形成され、ゲート絶縁膜43を介して入射された光の量に応じた電気信号を発生する光センサトランジスタ35と、ゲート絶縁膜43に対し少なくとも有機EL素子34の発光部及び光センサトランジスタ35の受光部に対応する領域を除いてその周囲を包囲し、有機EL素子34から発光された光を光センサトランジスタ35に入射させる、金属膜による反射板42,55, 47を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びそれを備える画像形成装置に関し、特に発光素子を光源に使用した発光装置及びこれを備えて構成される露光装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式等の画像形成装置においては、感光体ドラムに画像データに応じた光を照射して露光するための発光装置を備えて構成される露光装置を有している。近年、このような露光装置の光源として、有機EL素子等の発光素子を利用する試みが各種なされている。このような発光素子を用いた場合には、発光素子の発光特性のばらつきに起因した発光光量のばらつきがあるため、例えば、予め発光素子補正用のデータをメモリに記憶させておき、その補正データを基に発光強度を補正するようにした技術が考えられている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平11−138890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記のような発光素子においては使用時間の経過とともに発光特性が変化することが知られており、発光光量が使用時間の経過とともに低下するが、前記従来技術では、工場出荷当初の発光素子補正用のデータが用いられるので、経時変化に伴う特性の変化を考慮していない。そのため、時間の経過により素子の発光輝度が変化すると、印字品質が低下してしまうことになる。
【0004】
本発明は前記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、発光素子の発光光量の変化を常に正確に認識して適正に補正することが可能な発光装置及びこれを備えて、印字品質を長期に亘って良好に維持することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、基板と、前記基板の一面上方側に設けられた、発光部を有する発光素子を含む少なくとも一つの画素と、前記基板の前記一面上と前記発光素子との間に設けられ、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上の、前記発光素子が形成された面と同じ面側に、前記発光素子と離間して形成された、受光部を有する少なくとも1つの受光素子と、前記基板の前記一面上と前記第1の絶縁膜との間の、少なくとも前記発光素子の前記発光部及び前記受光素子の前記受光部に対応する領域を除く領域に設けられ、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射して前記受光部に入射させる第1の反射部材と、を具備することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、前記発光素子はボトムエミッション型の有機EL素子であり、前記第1の反射部材は、前記発光素子の前記発光部に対応する位置に、該発光部の大きさと同じか、それより小さい大きさに形成された開口部を有することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、前記第1の反射部材の一部と前記第1の絶縁膜の前記発光素子側の端部に接して設けられ、前記発光素子の一電極と電気的に接続され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する反射部材による第1の接続部をさらに具備することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、前記第1の反射部材の一部と前記第1の絶縁膜の前記受光素子側の端部に接して設けられ、前記受光素子の電極の一つと電気的に接続され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する反射部材による第2の接続部をさらに具備することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、前記第1の絶縁膜上に、前記受光素子を覆うように形成された、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材による第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜及び前記発光素子を一体に覆うように形成され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する第2の反射部材と、を更に具備し、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部は、前記第1及び第2の反射部材の少なくとも一方で反射され、前記第1及び第2の絶縁膜内の少なくとも一方を伝搬して、前記受光素子で受光されることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、前記請求項5記載の発明において、前記第2の反射部材は、前記発光素子の一つの電極層を兼ねることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、前記請求項5記載の発明において、前記画素は前記基板の前記一面上に複数設けられ、第2の絶縁膜と前記第2の反射部材間に、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材により形成された、前記各画素間を分離する隔壁をさらに具備することを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の発明は、前記請求項5記載の発明において、前記第2の反射部材の前記受光素子に対向した内面側に光散乱処理を施したことを特徴とする。
【0013】
請求項9記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、前記発光素子はトップエミッション型の有機EL素子であり、前記第1の絶縁膜上に、前記受光素子を覆うように配設された第3の絶縁膜と、前記第3の絶縁膜及び前記発光素子を一体に覆い、前記発光素子の一つの電極層となる、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する透明導電膜と、をさらに具備したことを特徴とする。
【0014】
請求項10記載の発明は、前記請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発明において、前記画素は前記基板の前記一面上に複数設けられてアレイ状に配列され、隣接する2個以上の前記画素からなる複数の画素群を有し、前記受光素子は、前記複数の画素群の各々に対応して、複数設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項11記載の発明は、感光ドラムと露光器とを有し、画像データに応じた印刷を行う画像形成装置であって、前記露光器は、前記感光ドラムに対し前記画像データに応じた光を照射して露光を行う発光装置を有し、前記発光装置は、基板と、前記基板の一面上に設けられた、発光部を有する発光素子を含む複数の画素と、前記基板の前記一面上と前記複数の発光素子との間に設けられ、前記各発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上の、前記各発光素子が形成された面と同じ面側に、前記各発光素子と離間して形成された、受光部を有する少なくとも1つの受光素子と、
前記基板の前記一面上と前記第1の絶縁膜との間の、少なくとも前記各発光素子の前記発光部及び前記受光素子の前記受光部に対応する領域を除く領域に設けられ、前記各発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射して前記受光部に入射させる第1の反射部材と、を具備することを特徴とする画像形成装置。
【0016】
請求項12記載の発明は、前記請求項11記載の発明において、前記発光装置は、更に、前記第1の絶縁膜上に、前記受光素子を覆うように形成された、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材による第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜及び前記発光素子を一体に覆うように形成され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する第2の反射部材と、を具備し、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部は、前記第1及び第2の反射部材の少なくとも一方で反射され、前記第1及び第2の絶縁膜内の少なくとも一方を伝搬して、前記受光素子で受光されることを特徴とする。
【0017】
請求項13記載の発明は、前記請求項12記載の発明において、前記発光装置は、更に、第2の絶縁膜と前記第2の反射部材間に、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材により形成された、前記各画素間を分離する隔壁を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、印字ヘッドを構成する複数の有機EL素子個々の明るさを常に正確に認識して補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る露光装置及び画像形成装置(印刷装置)を説明する。
図1は、本実施形態に係る露光装置を用いた画像形成装置の構成例を示す図である。同図で画像形成装置は、感光体ドラム1と、露光装置2と、帯電ローラ3と、イレーサ光源感光体4と、クリーニング部材5と、現像ローラ6aを含む現像器6と、転写ローラ8と、定着ローラ9と、搬送ベルト11とを具備している。なお、符号7が付されているのは印刷用紙である。
【0020】
前記露光装置2は、複数の発光素子をアレイ状に配列した露光ヘッド部と、例えばセルフォック(登録商標)レンズを前記複数の発光素子に対抗するようにアレイ状に配列し、入射された光を等倍正立像として感光体ドラム1に結像するロッドレンズアレイからなるレンズ部とを有する。
【0021】
前記感光体ドラム1は、負帯電型OPC(Organic Photo Conductor)感光体(有機感光体)であり、これに対応して帯電ローラ3が負帯電器とする。
【0022】
前記図1に示す画像形成装置では、大まかに以下のような工程により印刷が行なわれる。まず、前記帯電ローラ3が回転する感光体ドラム1の表面に接触することにより、感光体ドラム1の接触した表面が一様に負電位となるように帯電される。続いて、前記露光装置2によって前記感光体ドラム1に対して光照射がなされ、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。その後、前記現像器6によって、前記静電潜像にトナーが付着される。そして、前記転写ローラ8によって、前記静電潜像に付着しているトナーが前記印刷用紙7に転写される。以下、このような印刷工程を詳細に説明する。
【0023】
まず、感光体ドラム1には、図示しない帯電用電源から供給されるマイナス高電圧が前記帯電ローラ3によって印加される。これにより感光体ドラム1における周表面は一様に負帯電され、電位的に初期化された初期化帯電状態となる。
【0024】
そして、周表面が初期化帯電状態となった感光体ドラム1に対し、前記露光装置2によって印字情報に従った光書込み(露光)が行なわれる。これにより、初期化帯電によるマイナス高電位部と、露光による例えば−50[V]程度のマイナス低電位部とからなる静電潜像が、感光体ドラム1の周表面上に形成される。
【0025】
ここで、前記現像器6内に収容されている弱いマイナス電位に帯電したトナーが、前記現像ローラ6aによって、現像ローラ6aと感光体ドラム1との対向部に回転搬送される。このとき、現像ローラ6aは、図示しない電源から例えば−250[V]程度の現像バイアス電圧が印加される。
【0026】
したがって、−250[V]の現像バイアス電圧が印加された現像ローラ6aと、感光体ドラム1における静電潜像の−50[V]程度のマイナス低電位部との間に200[V]程度の電位差が形成される。
【0027】
これらの静電潜像における現像電圧との電位差により、現像ローラ6aに対して相対的にプラス極性の電位となった静電潜像におけるマイナス低電位部には、マイナス極性に帯電しているトナーが転移してトナー像が形成される。このトナー像は、感光体ドラム1の回転によって、感光体ドラム1と転写ローラ8とが対向している転写部へと搬送される。
【0028】
なお、上述したようにして形成されたトナー像におけるトナー付着量、すなわち現像された画像の濃度は、露光装置2の発光素子による感光体ドラム1への露光量に応じて生じる感光体ドラム1の周表面上における電位の減衰量によって決定される。
【0029】
次いで、上述したようにトナー像が転写部へ搬送されると、搬送ベルト11によって印刷用紙7が転写部へ搬送される。そして、転写部においては、トナー像が印刷用紙7上に、転写ローラ8によって転写される。このようにしてトナー像が転写された印刷用紙7が搬送ベルト11によりさらに下流に搬送され、トナー像が定着ローラ9によって熱定着された後、印刷用紙7は当該画像形成装置の外部へ排出される。
【0030】
また、トナー像が印刷用紙7上に転写された後、感光体ドラム1の周表面からクリーニング部材5により残留トナーが除去され、さらにイレーサ光源感光体4によって一様に0(ゼロ)[V]に除電されて、帯電ローラ3への帯電に備えられる。
【0031】
なお、前記露光装置2内には、発光素子アレイとして、図1に示す感光体ドラム1への露光走査の主走査方向である感光体ドラム1の軸方向に沿って、多数の発光素子である有機EL素子が一列に配設された有機ELアレイが設けられる。
【0032】
図2は、前記露光装置2内に設けられる露光ヘッド部の構成を示すものである。露光ヘッド部は有機ELパネル23を備える露光ヘッド基板を有する。
有機ELパネル23には、発光素子アレイとして、図1に示す感光体ドラム1への露光走査の主走査方向である感光体ドラム1の軸方向に沿って、発光素子である有機EL素子を有する複数の画素がライン状に配設された有機ELアレイが設けられる。
【0033】
各画素は所定の数の画素からなる複数の画素群に分割されている。図2では、説明を簡略化するために露光ヘッド基板が、各画素群当たり6画素×8画素群の計48画素で構成されるものとする。
【0034】
実際の露光ヘッド基板は、例えば印字解像度が1200[dpi]でA4の用紙(長辺297[mm])に対応した印刷機であれば、およそ14,000画素の構成となる。また、有機ELパネル23には、各画素群に対応して各発光素子の発光光量を測定して光量補正を行い、各発光素子の特性の経時変化による発光光量の変化を補償するための複数の受光素子を有する光センサ回路が設けられている、
また、露光ヘッド部は、ヘッドコントローラ20とデータドライバ21、セレクトセンサドライバ22を備える。
このような構成の露光ヘッド部による露光工程では、まずヘッドコントローラ20に、ここでは図示しないラスタイメージプロセッサからの画像データ、用紙サイズ及び搬送速度に合わせた水平制御信号/HSYNCと垂直制御信号/VSYNC、その他各種制御信号が入力される。
【0035】
ヘッドコントローラ20は、これらの入力信号によって有機ELパネル23の各画素のオン/オフ及び画素データに応じた階調信号に基づく駆動電圧Vdata1〜6を生成してデータドライバ21へ出力することで、データドライバ21と有機ELパネル23、及びセレクトセンサドライバ22を駆動制御する。
【0036】
セレクトセンサドライバ22は、有機ELパネル23を構成する8つの各画素群a1〜a6,b1〜b6,‥‥,h1〜h6に対応して、選択信号Vsel1〜8,リフレッシュ信号Rfsh1〜8を光センサ回路の各受光素子に送出し、その時点の当該画素群内の各発光素子発光輝度に応じた各受光素子の出力であるセンサ出力Sout1〜8を受取る。
【0037】
図3は、前記有機ELパネル23の一部を例示する等価回路である。
ここでは、有機ELパネル23のm番目の画素群中のn番目の画素を中心として隣接画素を含めて計3画素分の構成を示す。各画素はいずれも薄膜トランジスタ(TFT)で構成された、選択トランジスタ31、及び有機EL駆動用の駆動トランジスタ33の計2つのトランジスタと、画素の発光輝度に対応した信号電荷を保持する保持コンデンサ32を備える。
【0038】
また、これらの画素に対して、受光素子としての光センサトランジスタ35と、これを駆動するための充電トランジスタ36、読出トランジスタ38、暗電流保持コンデンサ37と、を有して構成される光センサ回路30が設けられている。
【0039】
すなわち、選択信号Vsel(m)が選択トランジスタ31のゲート電極に接続される。選択トランジスタ31のソース電極には駆動電圧Vdata(n)が与えられる。
【0040】
同選択トランジスタ31のドレイン電極が保持コンデンサ32の一端及び駆動トランジスタ33のゲート電極と接続される。駆動トランジスタ33のソース電極に電源線が接続され、同駆動トランジスタ33のドレイン電極と保持コンデンサ32の他端とが発光素子としての有機EL素子34のアノード電極に接続される。有機EL素子34のカソード電極は接地される。
【0041】
前記有機EL素子34を発光駆動するための選択トランジスタ31、保持コンデンサ32、及び駆動トランジスタ33の構成は、一般的な2つのTFTを用いたアクティブ駆動方式による回路構成の一例である。
【0042】
しかるに有機EL素子34を発光駆動するための構成を限定するものではなく、2TFT/3TFT、アクティブ方式/パッシブ方式、定電圧書込み/定電流書込み等を問わず、任意の回路構成で実現できる。
【0043】
本実施形態では加えて、前記選択信号Vsel(m)が光センサ回路30の充電トランジスタ36のゲート電極にも与えられる。この充電トランジスタ36のソース電極には電圧VDDが印加されており、同充電トランジスタ36のドレイン電極が光センサトランジスタ35のソース電極、暗電流保持コンデンサ37の一端、及び読出トランジスタ38のゲート電極と接続される。
【0044】
光センサトランジスタ35のゲート電極は、図中に符号Gで示す如く、前記有機EL素子34での発光Lが照射される部位に配置され、同光センサトランジスタ35のゲート電極には、上述したリフレッシュ信号Rfsh(m)が与えられ、同光センサトランジスタ35のドレイン電極が暗電流保持コンデンサ37の他端、及び読出トランジスタ38のソース電極に接続されると共に接地される。そして、読出トランジスタ38のドレイン電極がセンサ出力Sout(m)の端子として使用され、ドレイン電流Isの値が検知される。
【0045】
前記有機ELパネル23には、画素発光用の各TFT31,33、及びコンデンサ32と同様の半導体製造プロセスで光センサ回路を構成するTFT35,36,38及びコンデンサ37を一体に形成することができる。
【0046】
これら光センサ回路は、複数の有機EL素子に対して1回路、具体的には数1000画素に1回路という規模で作成する。前記図3では3画素のみしか表記していないが、光センサトランジスタ35のチャネル幅は、例えば、発光を捉えようとする1つの画素群が配列される主走査方向の幅程度で形成し、各画素に対して副走査方向に一定の距離をおいて並行する位置に配置する。
【0047】
光センサ回路を用いた光量補正は、初期光量との比較により行なうので、各画素の発光素子の相対的な発光光量の変化を検知することができればよい。このため、光センサ回路を画素毎に設ける必要はなく、本実施形態の如く1つの画素群の複数画素に対して1つの光センサトランジスタ35による1つの光センサ回路を設けるものとすることができる。
【0048】
図4は、光センサ回路30の基本動作を説明するためのタイミングチャートである。光センサ回路30では、充電トランジスタ36のゲート信号として選択信号Vsel(m)を利用する。まず、選択信号Vsel(m)を“H”レベルとし、選択信号Vsel(m)を“H”レベルとした当初に、リフレッシュ信号Rfsh(m)も同時に短時間“H”レベルとして、充電トランジスタ36、読出トランジスタ38をオンとし、暗電流保持コンデンサ37を放電する。
【0049】
その後、リフレッシュ信号Rfsh(m)を“L”レベルとすると光センサトランジスタ35はオフ状態となるが、その後も選択信号Vsel(m)を“H”レベルに一定期間保つことで、暗電流保持コンデンサ37をVDDに充電する。
【0050】
この状態においては、光センサトランジスタ35がオフ状態であり、暗電流保持コンデンサ37に充電された電荷に応じて読出トランジスタ38がオンしてドレイン電流Isが流れる。
【0051】
この状態で、光センサトランジスタ35の半導体層部分に有機EL素子34の発光による光が照射されると、その光量に応じて光センサトランジスタ35のドレイン−ソース間の半導体層中にキャリアが発生してチャネルが形成され、ドレイン−ソース間に電流が流れ、暗電流保持コンデンサ37が放電を開始する。
【0052】
これにより、読出トランジスタ38のドレイン電流Isが減少する。このドレイン電流Isの減少量(ΔIs)は、光センサトランジスタ35のゲート電極部分に照射された光の光量に応じた量となる。
【0053】
図4に示す符号Bの波形は、図示しない電流/電圧変換回路を介してドレイン電流Isの値を電圧値に変換した値であるが、前記電流Isの変化に相当する。
【0054】
すなわち、図4に示すように、次に選択信号Vsel(m)及びリフレッシュ信号Rfsh(m)が“H”レベルとなる直前のドレイン電流Isに対応する電圧信号をセンサ出力Sout(m)として出力することで、当該有機EL素子34の発光光量を取得することができる。
【0055】
ここで、各有機EL素子34の発光光量の取得は、例えば、有機ELパネル23の各画素の有機EL素子34を選択信号Vsel(m)の供給タイミングに応じて所定の発光期間で順次発光させ、発光する有機EL素子34が含まれる画素群に対応する光センサ回路30を選択信号Vsel(m)及びリフレッシュ信号Rfsh(m)によって前記発光期間に対応して駆動することによって行うことができる。
【0056】
ところで、測定対象となる有機ELパネル23では、1画素のサイズが、例えば1200[dpi]であれば約20[μm]程度の大きさとなり、有機EL素子の寸法は更に微細なものとなる。したがって、前記光センサトランジスタ35は、このように非常に微少な領域からの発光を捉えなければならないことになる。
【0057】
この光センサトランジスタ35による各発光素子の発光光量の測定は、各発光素子の特性の経時変化による発光光量の変化を補償するために行うものであるから、より正確に発光光量を補正して印字品質を高めるためには、発光光量の測定の精度をより高めることが必要となる。
【0058】
この場合、光センサトランジスタ35が発光素子からの光を受光する時間すなわち測定時間を長くするほど光センサ回路の電流値変化が大きくなり、測定の精度を高くすることができる。
【0059】
しかしながら、光センサ回路30による各発光素子の発光光量の測定は、画像形成装置の起動時や印刷を行っていないときに行われるため、発光光量の測定時間を長くすることは、本来の印刷ジョブを妨げ、画像形成装置としての印刷速度の低下や使い勝手の悪化をもたらすことになるため、好ましくない。
【0060】
そこで、測定時間を増加させずに測定精度を向上させるためには、光センサトランジスタ35の受光効率を高めることが有効な手段となる。
【0061】
本実施形態では、TFT形成プロセスにおけるゲート電極形成層、ドレイン電極形成層、ゲート電極とドレイン電極を接続するゲート/ドレインコンタクト形成プロセスにより形成される金属薄膜を最適に配置することで光センサトランジスタ35の受光効率を向上させるものとした。以下にその詳細を図5により説明する。
【0062】
図5(A)は、ボトムエミッション型の前記有機ELパネル23を上面から見た部分概略図であり、図5(B)は同図(A)中のV−V線から見た断面図である。
【0063】
なお、図5(A)は、後述するカソード電極47とオーバーコート絶縁膜56の層を除去して有機EL素子34と光センサトランジスタ35の各種電極等の配列構造を示すものである。
【0064】
有機EL素子34は、透明基板41の一面上に、アパーチャ(開口部)42aを形成した、クロム、クロム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等から選択された金属材料からなる反射板42が形成され、その上に透明なゲート絶縁膜43を介して透明電極44と、それに接続されたコンタクト部45A及びアノード電極45Bが形成され、それら透明電極44及びアノード電極45B上の開口部に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層でなる有機EL発光層46が設けられて、その上に金属薄膜による反射部材としても機能するカソード電極47が配線されて形成されている。
【0065】
そして、アノード電極45Bとカソード電極47との間に所定の電圧が掛けられることで、アノード電極45Bから正孔が、カソード電極47から電子が、有機EL発光層46に注入され、そこで正孔と電子とが再結合して発光する。この発光によって生じた光は、ゲート絶縁膜43、アパーチャ42aを通過して、図5(B)中に矢印Lで示す如く、透明基板41の他面側の方向に拡散放射する。
【0066】
このような有機EL素子34からの拡散光は、該有機EL素子34を構成した画素基板とレンズアレイとからなる前記露光装置2によって、小径の光スポットとして形成され、前記感光体ドラム1上で各ドットを解像する光ビームとして照射される。
【0067】
また、光センサトランジスタ35は、透明基板41上に有機EL素子34から一定距離Dを隔てて形成される。すなわち、透明基板41上にゲート電極51を介して前記ゲート絶縁膜43が延在され、その上に、半導体層40が設けられ、半導体層40の両端側に、クロム、クロム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等から選択された金属材料からなるソース・ドレイン電極層52、53が設けられ、半導体層40上のソース・ドレイン電極層52、53間にはブロック絶縁膜39が設けられている。
【0068】
ゲート絶縁膜43端部のコンタクト部54は、透明基板41上に形成された反射板55に接続される。そして、光センサトランジスタ35の上部、及び有機EL発光層46を挟んで前記コンタクト部45A及びアノード電極45Bの上部がそれぞれ透明樹脂によるオーバーコート絶縁膜56を介して前記カソード電極47で保護されている。
【0069】
ここで、ゲート電極51及び反射板55は、有機EL素子34の反射板42と同一材料で形成され、またコンタクト部45Aとアノード電極45B、ドレイン電極層52,53とコンタクト部54は同一材料で形成される。
【0070】
すなわち、光センサトランジスタ35と反射板55は、透明基板41上への有機EL素子34の製造プロセスと同時に製造することができる。
【0071】
前記構成にあって、反射板42は、当該有機EL素子34を駆動するための前記TFT31,33のゲート電極層による金属薄膜を延在して構成するものとする。そして、反射板42に形成するアパーチャ42aは、有機EL発光層46に対向する位置で、且つその大きさは、有機EL発光層46と同じか、あるいは多少小さいものとする。
【0072】
前記コンタクト部45Aは、反射板42とアノード電極45Bとの間でなるべく有機EL発光層46の近傍に配置する。
【0073】
加えて反射板42は、光センサトランジスタ35のゲート電極51のなるべく近傍まで延在するよう配置する。
【0074】
さらに、このゲート電極51に近設配置した前記反射板55上に、なるべく光センサトランジスタ35に近くなるようにコンタクト部54を形成するものとしている。
【0075】
そして、及び光センサトランジスタ35及び各種配線を形成した後のオーバーコート絶縁膜56を、前記コンタクト部54から間隙をあけて光センサトランジスタ35、さらに間隙をあけて透明電極44に至るように形成することによって、後に上部一体に形成されるカソード電極47で、光センサトランジスタ35の周囲が閉空間を形成するものとした。
【0076】
前記のような構成とすることにより、有機EL発光層46で発光した光は、その多くが反射板42のアパーチャ42aを介して、ここでは図示しない前記感光体ドラム1を照射するものとして使用される。
【0077】
一方、有機EL発光層46で発光した光のうちのアパーチャ42aより外部に射出しなかった残りの光は、図中にゲート絶縁膜43及びオーバーコート絶縁膜56内を実線及び波線の矢印で示すように各反射板やコンタクト部、金属薄膜でなる電極層等で反射しながら伝搬し、最終的にその大部分が光センサトランジスタ35の半導体層40に上下から入射することとなる。
【0078】
すなわち、前記図5で示した構成では、反射板42のアパーチャ42aを除いて、光センサトランジスタ35周囲の閉空間での光反射部材の面積をなるべく大きくして、有機EL発光層46から発光した光のうちのアパーチャ42aより外部に射出しなかった残りの光が外部に漏れ出る量を極力減らし、できるだけ多くの量の光が光センサトランジスタ35の半導体層40に入射するようにして、光センサトランジスタ35の受光効率を高めることができるように構成している。
【0079】
これにより、有機EL発光層46で発せられる感光体ドラム1への光以外の光を効率的に光センサトランジスタ35で受光して、有機EL発光層46での発光光量の測定精度を向上させて、印刷ジョブを妨げることを抑制しながら、発光光量の補正をより正確に行うことができる。
【0080】
より詳細には、図中に実線の矢印で示すように、有機EL発光層46からゲート絶縁膜43を介してその上部のオーバーコート絶縁膜56を反射しながら光センサトランジスタ35の上側へ、また図中に破線の矢印で示すように、有機EL発光層46からゲート絶縁膜43を介して半導体層40の下側へ、あるいは一旦光センサトランジスタ35の上側/半導体層40の下側を回り込んだ後に半導体層40の下側/光センサトランジスタ3の上側へ、というように、光センサトランジスタ35を含む閉空間内で散乱した有機EL発光層46からの光の多くを光センサトランジスタ35の半導体層40に照射させるように構成する。
【0081】
このような構成とすることで、有機EL発光層46から発光した光のうち、アパーチャ42aより外部に射出しなかった残りの光のうちの多くの部分の光を、効率よく光センサトランジスタ35で受光することができる。
【0082】
加えて、全体を覆う反射部材として有機EL発光層46のための一電極層であるカソード電極47を兼用するものとしたので、この構造を形成するための製造工程の増加を抑制することができる。
【0083】
なお前記実施形態では、反射板42に形成したアパーチャ42aの大きさを、有機EL発光層46の大きさと同等か、あるいは図5で示すように有機EL発光層46よりも小さいものとした。
【0084】
これにより、有機EL発光層46での発光量に対する感光体ドラム1への照射光量の割合が低くなってしまう反面、光センサトランジスタ35で受光する光の絶対量を向上させることができるだけでなく、ゲート絶縁膜43及びオーバーコート絶縁膜56内を反射しながら伝搬する過程でアパーチャ42aより外部に漏れ出てしまう光の割合を減じることができ、光センサトランジスタ35での受光をより効率的に実施できる。
【0085】
したがって、本来の印刷に必要な発光輝度を確保できる範囲内で、でき得る限り反射板42に形成するアパーチャ42aの大きさをより小さいものとすることで、有機EL発光層46での発光光量をより正確に測定することができ、測定に基づく発光光量の補正をより正確に行なって、結果として印字品質を高めることができる。
【0086】
加えて、有機EL発光層46とゲート絶縁膜43端部のコンタクト部45Aとの間隔、及び光センサトランジスタ35とゲート絶縁膜43端部のコンタクト部54との間隔をそれぞれ極力小さいものとし、図5(A),図5(B)に示す横方向の寸法をなるべくコンパクトになるように設定する。
【0087】
このことで、前記有機EL発光層46から発して光センサトランジスタ35に照射されないままゲート絶縁膜43またはオーバーコート絶縁膜56内で減水してしまう光の割合をより少なくし、効率的に光センサトランジスタ35で光の受光効率をより高めることができる。
【0088】
この場合、図5(B)ではコンタクト部54とドレイン電極層52との間に間隙を設け、ゲート絶縁膜43とオーバーコート絶縁膜56との間で光センサトランジスタ35を回り込んで上から下へ、あるいは下から上へ移動する光が光センサトランジスタ35に受光されるものとして前記で説明したが、この間隙を極力小さく設定することで、前記回り込む光の割合を減らし、コンタクト部54での反射によりゲート絶縁膜43内でのみ、あるいはオーバーコート絶縁膜56内でのみ伝搬するような光の割合を増やすものとしてもよい。
【0089】
また、前記実施形態では、アパーチャ42aを形成した反射板42とアノード電極45Bとをコンタクト部45Aで接続し、アノード電極と反射板42を構成するゲート電極層を同電位にするものとした。
【0090】
これにより、隣接する複数の有機EL発光層46間のピッチを含め、非常に微少な配線間隔で回路を隣接して構成するような本願発明において、配線間で余計な寄生容量が発生するのを極力削減できる。
【0091】
(第1の実施形態の変形例1)
なお、前記実施形態では示さなかったが、高分子有機ELの成膜方法の1つとして、ポリイミド等によるバンクを形成し、その間に有機ELをコーティングする方法がある。
【0092】
図6は、そのような方法を活かした本実施形態の他の構成例を示すもので、図6(A)が前記有機ELパネル23を上面から見た部分概略図であり、図6(B)は同図(A)中のVI−VI線から見た断面図である。この図6において、基本的な構造は前記図5に示した内容と同様であるので、同一部分には同一符号を用いてその説明は省略するものとする。
【0093】
なお、図6(A)は、前記図5(A)と同様にボトルエミッション型の有機EL素子34と光センサトランジスタ35の各種電極等の配列構造を示すもので、その上部に位置するカソード電極47とオーバーコート絶縁膜56、及びバンク61の記載を省略しているため、前記図5(A)と同様の構成となる。
【0094】
しかして、図6(B)に示すように、有機EL発光層46を有する有機EL素子34部分を除いて、オーバーコート絶縁膜56上のカソード電極47との間に、透明な部材、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)やPET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いたバンク61を形成する。
【0095】
このような構成とすることで、有機EL発光層46の成膜方法で、画素間の隔壁となるバンクを採用した構造とした場合にも容易に対応し得る。
【0096】
(第1の実施形態の変形例2)
また、前記図5(B)で説明した構成に加えて、図7に示すように、オーバーコート絶縁膜56の成形後に、オーバーコート絶縁膜56の光センサトランジスタ35の半導体層40の上側に位置する表面を、ハーフエッチングまたはサンドブラスト等により光が散乱する粗い表面状態となるような、微細な凹凸を形成する加工を加えるものとしてもよい。
【0097】
その場合、その加工後にカソード電極47を蒸着等により形成すれば、光センサトランジスタ35の半導体層40の上部のカソード電極47である金属薄膜表面が粗い形状となる。
【0098】
したがって、有機EL発光層46から発せられ、ゲート絶縁膜43を介してオーバーコート絶縁膜56に入射した光のうち、前記散乱加工部分SPに到達した光は、ここで散乱光となって光センサトランジスタ35に到達する割合が増えるため、光センサトランジスタ35での受光効率をより高めることができる。
【0099】
(第1の実施形態の変形例3)
前記図6(B)で説明した構成に加えて、前記図7と同様に、バンク61の成形後に、バンク61の光センサトランジスタ35の半導体層40の上側に位置する表面を、ハーフエッチングまたはサンドブラスト等により光が散乱する粗い表面状態となるような、微細な凹凸を形成する加工を加えるものとしてもよい。
【0100】
その場合、その加工後にカソード電極47を蒸着等により形成すれば、光センサトランジスタ35の半導体層40の上部のカソード電極47である金属薄膜表面が粗く形状となる。
【0101】
したがって、有機EL発光層46から発せられ、ゲート絶縁膜43、オーバーコート絶縁膜56を介してバンク61に入射した光のうち、前記散乱加工部分SPに到達した光は、ここで散乱光となって光センサトランジスタ35に到達する割合が増えるため、光センサトランジスタ35での受光効率をより高めることができる。
【0102】
(第2の実施形態)
以下図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係る露光装置及び画像形成装置を説明する。
なお、本実施形態に係る露光装置を用いた画像形成装置の構成例については前記図1と、露光装置内に設けられる露光ヘッド部の構成については前記図2と、有機ELパネルの一部を例示する等価回路については前記図3と、そして光センサ回路における動作タイミングについては前記図4と、それぞれ基本的に同一であるものとし、同一部分には同一符号を用いて、その図示と説明を省略するものとする。
【0103】
本実施形態では、TFT形成プロセスにおけるゲート電極形成層、ドレイン電極形成層、ゲート電極とドレイン電極を接続するゲート/ドレインコンタクト形成プロセスにより形成される金属薄膜を最適に配置することで光センサトランジスタ35の受光効率を向上させるものとした。以下にその詳細を図9により説明する。
【0104】
図9(A)は、ボトムエミッション型の前記有機ELパネル23を上面から見た部分概略図であり、図9(B)は同図(A)中のIX−IX線から見た断面図である。
【0105】
なお、図9(A)は、後述するカソード電極77とオーバーコート絶縁膜84の層を除去して有機EL素子34と光センサトランジスタ35の各種電極等の配列構造を示すものである。
【0106】
有機EL素子34は、透明基板71上に、アパーチャ72aを形成した、クロム、クロム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等から選択された金属材料からなる反射板72が形成され、その上に透明なゲート絶縁膜73を介して透明電極74と、それに接続されたコンタクト部75A及びアノード電極75Bが形成され、それら透明電極74及びアノード電極75B上の開口部に、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層でなる有機EL発光層76が設けられて、その上にITO等の透明なカソード電極77が配線されて形成されている。
【0107】
そして、アノード電極75Bとカソード電極77との間に所定の電圧が掛けられることで、アノード電極75Bから正孔が、カソード電極77から電子が、有機EL発光層76に注入され、そこで正孔と電子とが再結合して発光する。この発光によって生じた光は、ゲート絶縁膜73、アパーチャ72aを通過して、図9(B)中に矢印Lで示す如く、透明基板71の方向に拡散放射する。
【0108】
このような有機EL素子34からの拡散光は、該有機EL素子34を構成した画素基板とレンズアレイとからなる前記露光装置2によって、小径の光スポットとして形成され、前記感光体ドラム1上で各ドットを解像する光ビームとして照射される。
【0109】
また、前記光センサトランジスタ35は、透明基板71上に有機EL素子34から一定距離Dを隔てて形成される。すなわち、透明基板71上にゲート電極81を介して前記ゲート絶縁膜73が延在され、その上に、半導体層40が設けられ、半導体層40の両端側に、クロム、クロム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等から選択された金属材料からなるソース・ドレイン電極層52、53が設けられ、半導体層40上のソース・ドレイン電極層52、53間にはブロック絶縁膜39が設けられ、その上部がオーバーコート絶縁膜84を介して前記カソード電極77で保護されている。
【0110】
ゲート絶縁膜73のコンタクト部82Aは、透明基板71上に形成された反射板85に接続される。また、光センサトランジスタ35と有機EL素子34との間に位置するゲート絶縁膜73の上面には、金属薄膜による反射板86が設けられる。
【0111】
ここで、ゲート電極81及び反射板85は有機EL素子34の反射板72と同一材料で形成され、またコンタクト部75Aとアノード電極75B、反射板86、コンタクト部82Aとドレイン電極層82Bは共に同一材料で形成される。
【0112】
すなわち、光センサトランジスタ35と各反射板85,86は、透明基板71上への有機EL素子34の製造プロセスと同時に製造することができる。
【0113】
前記構成にあって、反射板72は、当該有機EL素子34を駆動するための前記TFT31,33のゲート電極層による金属薄膜を延在して構成するものとする。そして、反射板72に形成するアパーチャ72aは、有機EL発光層76に対向する位置で、且つその大きさは、有機EL発光層76と同じか、あるいは多少小さいものとする。
【0114】
前記コンタクト部75Aは、反射板72とアノード電極75Bとの間でなるべく有機EL発光層76の近傍に配置する。
【0115】
加えて反射板72は、光センサトランジスタ35のゲート電極位置のなるべく近傍まで延在するよう配置する。
【0116】
さらに、透明基板71の上部で光センサトランジスタ35の対向位置を挟んで有機EL発光層76とは反対側にゲート幅と同程度の反射板85を配置すること、この反射板85とドレイン電極層82Bとの間に前記コンタクト部82Aを形成すること、及び有機EL発光層76と光センサトランジスタ35との間に前記ドレイン電極層による反射板86を形成し、この反射板86を透明電極74と接合してアノード電極75Bと同電位とすること、を併せて実現する。
【0117】
前記のような構成とすることにより、有機EL発光層76で発光した光は、その多くが反射板72のアパーチャ72aを介して、ここでは図示しない前記感光体ドラム1を照射するものとして使用される。
【0118】
一方、アパーチャ72aより射出しなかった残りの光は、図中にゲート絶縁膜73内を実線及び波線の矢印で示すように各反射板やコンタクト部等で反射しながら伝搬し、最終的にその大部分が光センサトランジスタ35のゲート電極部分に照射されることとなる。
【0119】
すなわち、前記図9で示した構成では、反射板72のアパーチャ72aと光センサトランジスタ35の電極部分とを除いて、透明電極74を覆う光反射部材の面積がなるべく大きくなり、有機EL発光層76から発光した光のうちのアパーチャ72aより外部に射出しなかった残りの光が外部に漏れ出る量を極力減らし、できるだけ多くの量の光が光センサトランジスタ35のゲート電極部分に入射するようにして、光センサトランジスタ35の受光効率を高めることができるように構成している。
【0120】
これにより、有機EL発光層76で発せられる感光体ドラム1への光以外の光を効率的に光センサトランジスタ35で受光して、有機EL発光層76での発光光量の測定精度を向上させて、印刷ジョブを妨げることを抑制しながら、発光光量の補正をより正確に行うことができる。
【0121】
なお前記実施形態では、反射板72に形成したアパーチャ72aの大きさを、有機EL発光層76の大きさと同等か、あるいは図9で示すように有機EL発光層76よりも小さくなるものとした。
【0122】
これにより、有機EL発光層76での発光量に対する感光体ドラム1への照射光量の割合が低くなってしまう反面、光センサトランジスタ35で回収する光の絶対量を向上させることができるだけでなく、ゲート絶縁膜73内を反射しながら伝搬する過程でアパーチャ72aより外部に漏れ出てしまう光の割合を減じることができ、光センサトランジスタ35での受光をより効率的に実施できる。
【0123】
したがって、本来の印刷に必要な発光輝度を確保できる範囲内で、でき得る限り反射板72に形成するアパーチャ72aの大きさをより小さいものとすることで、有機EL発光層76での発光光量をより正確に測定することができ、結果として印字品質を高めることができる。
【0124】
また、前記実施形態では、光センサトランジスタ35のためのドレイン電極層82Bと反射板85とをコンタクト部82Aで接続して両者間を同電位にすることにより、非常に微少な配線間隔で回路を構成するような本願発明において、余計な寄生容量が発生するのを極力削減できる。
【0125】
(第2の実施形態の変形例1)
なお、前記図9はボトムエミッション型の有機EL素子34について説明したが、本実施形態ではトップエミッション型の有機EL素子34にも同様に適用可能である。
【0126】
図10は、トップエミッション型を採用した本実施形態の変形例1の構成を示すもので、図10(A)が前記有機ELパネル23を上面から見た部分概略図であり、図10(B)は同図(A)中のX−X線から見た断面図である。この図10において、基本的な構造は前記図9に示した内容と同様であるので、同一部分には同一符号を用いてその説明は省略するものとする。
【0127】
トップエミッション型の有機EL発光層76′を採用した場合、反射板72には前記図9のアパーチャ72aを設ける必要はなく、有機EL発光層76′から下面のゲート絶縁膜73側に出射した光は、前記アノード電極75Bとコンタクト部75A、反射板72,85とコンタクト部82A及びドレイン電極層82B、そして反射板86より覆われたゲート絶縁膜73中で反射を繰返しながら、その多くが光センサトランジスタ35で受光されることとなる。
【0128】
一方、前記有機EL発光層76の上面側は、前記カソード電極77に代えて透明カソード電極91が全面にわたって配設される。透明カソード電極91は、例えばITO透明電極やIZO(Indium Zinc Oxide)等で構成される。
この透明カソード電極91の上部に透明絶縁膜92が配設されて上面全面が平坦とされ、さらに透明保護層93が形成される。
【0129】
このような構成とすることで、トップエミッション型の有機EL構造においてもボトムエミッション型の場合と同様に対応することが可能となる。
【0130】
その他、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件により適宜の組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図。
【図2】同実施形態に係る露光装置内に設けられる露光ヘッド部の構成を示す図。
【図3】同実施形態に係る有機ELパネルの一部の等価回路を例示する図。
【図4】図3の光センサ回路の基本動作を説明するためのタイミングチャート。
【図5】同実施形態に係る有機ELパネルを上面から見た部分概略図(図5(A))とそのV−V線から見た断面図(図5(B))。
【図6】同実施形態に係る変形例1の有機ELパネルを上面から見た部分概略図(図6(A))とそのVI−VI線から見た断面図(図6(B))。
【図7】同実施形態に係る変形例2の断面構成を示す図。
【図8】同実施形態に係る変形例3の断面構成を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る有機ELパネルを上面から見た部分概略図(図9(A))とそのIX−IX線から見た断面図(図9(B))
【図10】同実施形態に係る変形例1の有機ELパネルを上面から見た部分概略図(図10(A))とそのX−X線から見た断面図(図10(B))。
【符号の説明】
【0132】
1…感光体ドラム、2…露光装置、3…帯電ローラ、4…イレーサ光源感光体、5…クリーニング部材、6…現像器、6a…現像ローラ、7…印刷用紙、8…転写ローラ、9…定着ローラ、11…搬送ベルト、20…ヘッドコントローラ、21…データドライバ、22…セレクトセンサドライバ、23…有機ELパネル、31…選択トランジスタ(TFT)、32…保持コンデンサ、33…駆動トランジスタ(TFT)、34…有機EL素子、35…光センサトランジスタ(TFT)、36…充電トランジスタ、37…暗電流保持コンデンサ、38…読出トランジスタ(TFT)、39…ブロック絶縁膜、40…半導体層、41…透明基板、42…反射板、42a…アパーチャ、43…ゲート絶縁膜、44…透明電極、45A…コンタクト部、45B…アノード電極、46…有機EL発光層、47…カソード電極、51…ゲート電極、52,53…ドレイン電極層、54…コンタクト部、55…反射板、56…オーバーコート絶縁膜、61…バンク、71…透明基板、72…反射板、73…ゲート絶縁膜、74…透明電極、75A…コンタクト部、75B…アノード電極、76,76′…有機EL発光層、77…カソード電極、81…ゲート電極、82A…コンタクト部、82B…ドレイン電極層、83…ドレイン電極層、84…オーバーコート絶縁膜、85…反射板、86…反射板、91…透明カソード電極、92…透明絶縁膜、93…透明保護層、SP…散乱加工部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一面上方側に設けられた、発光部を有する発光素子を含む少なくとも一つの画素と、
前記基板の前記一面上と前記発光素子との間に設けられ、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の、前記発光素子が形成された面と同じ面側に、前記発光素子と離間して形成された、受光部を有する少なくとも1つの受光素子と、
前記基板の前記一面上と前記第1の絶縁膜との間の、少なくとも前記発光素子の前記発光部及び前記受光素子の前記受光部に対応する領域を除く領域に設けられ、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射して前記受光部に入射させる第1の反射部材と、
を具備することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子はボトムエミッション型の有機EL素子であり、
前記第1の反射部材は、前記発光素子の前記発光部に対応する位置に、該発光部の大きさと同じか、それより小さい大きさに形成された開口部を有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の反射部材の一部と前記第1の絶縁膜の前記発光素子側の端部に接して設けられ、前記発光素子の一電極と電気的に接続され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する反射部材による第1の接続部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1の反射部材の一部と前記第1の絶縁膜の前記受光素子側の端部に接して設けられ、前記受光素子の電極の一つと電気的に接続され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する反射部材による第2の接続部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の絶縁膜上に、前記受光素子を覆うように形成された、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材による第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜及び前記発光素子を一体に覆うように形成され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する第2の反射部材と、を更に具備し、
前記発光素子から発光された光の少なくとも一部は、前記第1及び第2の反射部材の少なくとも一方で反射され、前記第1及び第2の絶縁膜内の少なくとも一方を伝搬して、前記受光素子で受光されることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2の反射部材は、前記発光素子の一つの電極層を兼ねることを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
前記画素は前記基板の前記一面上に複数設けられ、第2の絶縁膜と前記第2の反射部材間に、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材により形成された、前記各画素間を分離する隔壁をさらに具備することを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2の反射部材の前記受光素子に対向した内面側に光散乱処理を施したことを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項9】
前記発光素子はトップエミッション型の有機EL素子であり、
前記第1の絶縁膜上に、前記受光素子を覆うように配設された第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜及び前記発光素子を一体に覆い、前記発光素子の一つの電極層となる、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する透明導電膜と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項10】
前記画素は前記基板の前記一面上に複数設けられてアレイ状に配列され、隣接する2個以上の前記画素からなる複数の画素群を有し、
前記受光素子は、前記複数の画素群の各々に対応して、複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
感光ドラムと露光器とを有し、画像データに応じた印刷を行う画像形成装置であって、
前記露光器は、前記感光ドラムに対し前記画像データに応じた光を照射して露光を行う発光装置を有し、
前記発光装置は、
基板と、前記基板の一面上に設けられた、発光部を有する発光素子を含む複数の画素と、
前記基板の前記一面上と前記複数の発光素子との間に設けられ、前記各発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の、前記各発光素子が形成された面と同じ面側に、前記各発光素子と離間して形成された、受光部を有する少なくとも1つの受光素子と、
前記基板の前記一面上と前記第1の絶縁膜との間の、少なくとも前記各発光素子の前記発光部及び前記受光素子の前記受光部に対応する領域を除く領域に設けられ、前記各発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射して前記受光部に入射させる第1の反射部材と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記発光装置は、更に、前記第1の絶縁膜上に、前記受光素子を覆うように形成された、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材による第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜及び前記発光素子を一体に覆うように形成され、前記発光素子から発光された光の少なくとも一部を反射する第2の反射部材と、
を具備し、
前記発光素子から発光された光の少なくとも一部は、前記第1及び第2の反射部材の少なくとも一方で反射され、前記第1及び第2の絶縁膜内の少なくとも一方を伝搬して、前記受光素子で受光される
ことを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記発光装置は、更に、第2の絶縁膜と前記第2の反射部材間に、前記発光素子の発光波長の少なくとも一部を透過する部材により形成された、前記各画素間を分離する隔壁を具備することを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−70977(P2009−70977A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236863(P2007−236863)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】