説明

発光製品及びその製造方法

【課題】本発明は、遠心成形法により成形される発光性製品のカール現象を抑えるとともに、蓄光性能を向上させる白色層を発光性製品に設けることを目的とする。
【解決手段】第1の熱硬化樹脂に顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された隠蔽層と、前記隠蔽層上に、第2の熱硬化性樹脂に前記第2の熱硬化性樹脂よりも比重の大きい蓄光顔料を混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより得られる蓄光層と透明層とを有し、前記蓄光層が製品厚みの略中心に位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内標識板、安全標識板や安全誘導表示板等の発光製品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄光顔料を含む樹脂及びゴム製品の成形時、蓄光顔料の機能向上のため片面(発光面)に蓄光顔料濃度を高くする最も効率のよい方法として、熱硬化性樹脂に蓄光顔料を混合し遠心法により成形する方法が知られている(特許第3295229号公報)。
【0003】
しかしながら、この方法で成形された蓄光材含有品には、すべてカール現象が発生していた。
【0004】
これは、無機質である蓄光材を多く含む層は成形後の収縮が少ないが、蓄光材が少ない層は成形後の収縮が大きく、この収縮の違いにより蓄光材が少ない層の方向にカール現象が発生すると考えられる。
すなわち、第2図に示す様に、隠蔽層100とこの上に蓄光層200と透明層300を順次重ねた製品においては、隠蔽層100側にカールが発生していた。
【0005】
このため、上記のような遠心成形法により成形された成形品は平板状にならず、使用される用途が限定されていた(板状で使用される案内板、案内標識、道路標識等には使用できない)。
【特許文献1】特許第3295229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、遠心成形法により成形される発光性製品のカール現象を抑えるとともに、蓄光性能を向上させる白色層を発光性製品に設けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る発光性製品あっては、第1の熱硬化樹脂に顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された隠蔽層と、前記隠蔽層上に、第2の熱硬化性樹脂に前記第2の熱硬化性樹脂よりも比重の大きい蓄光顔料を混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより得られる蓄光層と透明層とを有し、前記蓄光層が製品厚みの略中心に位置することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る発光製品の製造方法にあっては、 第1の熱硬化性樹脂に顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより隠蔽層を形成する第1の工程と、ついで前記隠蔽層の上に第2の熱硬化性樹脂と前記第2の熱硬化性樹脂より比重の大きい蓄光顔料を混合した第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形して蓄光層と透明層とを形成する第2の工程とを含み、前記蓄光層が製品厚みの略中心に位置するように成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載される効果を奏する。
請求項1記載の発明の発光製品によれば、隠蔽層及び透明層と熱収縮率が異なる蓄光層を製品の厚み方向の中心に位置させた事により、遠心成形法により成形される発光性製品のカール現象を効果的に抑えることが出来る。
【0010】
請求項2記載の発明の発光製品によれば、蓄光性能を向上させる白色層を発光性製品に設けることが可能となる。
請求項3記載の発明の発光製品によれば、隠蔽層の熱収縮率と透明層の熱収縮率とを略同一に近付けることが出来る。
【0011】
請求項4記載の発明の発光製品によれば、成形が容易で、良好な製品性能が得られる。
請求項5記載の発明の発光製品によれば、蓄光層と透明層とが一つの層として形成できる。
【0012】
請求項6記載の発明の発光製品の製造方法によれば、発光性製品のカール現象を効果的に抑えた製品が、遠心成形法により容易に成形することが出来る。
請求項7記載の発明の発光製品の製造方法によれば、接着剤を用いることなく、隠蔽層と蓄光層とを強固に一体化出来る。
【0013】
請求項8記載の発明の発光製品の製造方法によれば、蓄光性能を向上させる白色層を発光性製品に設けることが可能となる。
請求項9記載の発明の発光製品の製造方法によれば、隠蔽層の熱収縮率と透明層の熱収縮率とを略同一に近付けることが出来る。
【0014】
請求項10記載の発明の発光製品の製造方法によれば、成形が容易で、良好な製品性能が得られる。
請求項11記載の発明の発光製品の製造方法によれば、隠蔽層と蓄光層との馴染み性が良好である。
【0015】
請求項12記載の発明の発光製品の製造方法によれば、白色顔料が均一に分散した隠蔽層の成形が容易である。
請求項13記載の発明の発光製品の製造方法によれば、蓄光層と透明層とを明確に分離可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
第1図に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る発光製品を示す概略断面図である。
【0018】
ウレタン材よりなる第1の熱硬化樹脂に白色顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された隠蔽層1と、この隠蔽層1上に、ウレタン材よりなる第2の熱硬化性樹脂に、この第2の熱硬化性樹脂よりも比重の大きい蓄光顔料を混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより、蓄光層2と透明層3とを形成する。
そして、この蓄光層2は発光製品厚みの略中心に位置する形に構成されている隠蔽層1と透明層3は略同一の肉厚となっている。
また、製品全体の厚みは1〜10mm程度である。
【0019】
ついで、本実施例に係る発光製品の製造方法について説明する。
【0020】
本実施例に係る発光製品の製造方法は、加熱かつ回転させる遠心成形法を用いるものであり、熱硬化性樹脂としてウレタン材を用いている。そして、ウレタン材よりも比重が大きい蓄光顔料をポリウレタンに混合し、遠心形成法により比重差を利用して蓄光顔料を含む蓄光層と、蓄光顔料殆ど含まない透明層とを成形する。
尚、この蓄光層及び透明層は、白色顔料を含むウレタン材との混合物の遮蔽層が硬化し始めた時点から完全に硬化するまでの間に、注入し、遠心成形を行うものである。
【0021】
ここで、完全に硬化するまでの間とは、未反応の反応基が存在しなくなるまでの間を意味するものである。本実施例のウレタン材は、注型ウレタン材であり、プレポリマーと言われる反応基(−NCO)を持つ主材と硬化剤(アミン系)とが反応してポリウレタンになるものである。
【0022】
第1の混合物を構成するウレタン材においては、主材と硬化剤とが混合され、注入された後、硬化することとなるが、未反応の反応基が存在している間に第2の混合物が注入されることにより、第1混合物(成形物)の未反応の反応基と第2混合物とが反応する。
これにより、第1混合物から成形された成形物と第2混合物とが一体化した成形物が成形されることとなる。
【0023】
以下、発光製品の製造方法について具体的に説明する。
【0024】
(工程1)
第1の熱硬化性樹脂としての無黄変ポリウレタンプレポリマー 30質量部(以下、単に部という)と、アミン系硬化剤 3部と、顔料としての無機系白色顔料(チタンホワイト、平均粒子径20μm) 2部とを混合し攪拌して得られた第1の混合物を遠心成形機に投入して、温度110℃、回転数150rpmの条件で遠心成形を行うことにより遮蔽層1が形成される。
【0025】
白色顔料は1重量%以下であることが、次の工程で形成される透明層3の熱収縮率に近付けるために好ましい。
また、遠心成形機の回転数は、50〜500rpm、好ましくは100〜200rpmである。
この様な低速遠心成形により、白色顔料が第1の混合物内に均一に分散される。
また、使用される白色顔料(チタンホワイト)の粒径は30μ以下のものが均一分散に好ましい。
【0026】
(工程2)
工程1に示す条件で10分間遠心成形を行った後、第2の熱硬化樹脂である無黄変ポリウレタンプレポリマー100部と、アミン系硬化剤 10部と、蓄光顔料(平均径30μm)20部とを混合し攪拌して得られた第2の混合物を遠心成形機に投入して、温度110℃、回転数1000rpmの条件で20分間遠心成形を行った後、遠心成形機から取り出す。
【0027】
ここで、蓄光顔料としては、例えば、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化希土類等を好適に適用することができる。
また、遠心成形機の回転数は、600〜1500rpm、好ましくは800〜1200rpmである。
【0028】
また、型温度は、60〜150℃の範囲が好ましい。
【0029】
(工程3)
工程2で遠心成形機から取り出した後、温度100℃で、12時間熱処理を行うことにより、シート状の発光製品を得る。
【0030】
以上のように、工程1に示す条件で遠心成形を行うことにより、白色顔料を含む遮蔽層1が形成される。
【0031】
また、工程2の条件で遠心成形を行うことにより、白色顔料を含む遮蔽層1上に、蓄光顔料を非常に多く含む蓄光層2と、蓄光材を殆ど含まない透明層3とが成形される。
このように、工程2において、工程1の場合の回転数よりも大きい回転数で成形を行うことにより、蓄光顔料を含まない透明層3を成形することができる。
【0032】
ここで、蓄光顔料を多く含む層と、蓄光顔料が少ない層とを遠心成形法により成形した場合、成形後の熱収縮率は、蓄光顔料を多く含む層と、蓄光顔料を殆ど含まない層とでは異なるものとなる。
【0033】
蓄光顔料として用いられる、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化希土類等は、熱処理温度が100℃前後では収縮することはほとんどない。したがって、このような蓄光顔料を多く含む蓄光層が収縮するようなことはほとんどない。これに対して、蓄光顔料が殆ど存在しない透明層3では、収縮が生じてしまう。
同様に、白色顔料の少ない遮蔽層1でも透明層3と同様に収縮が生じるが、蓄光層2が製品の厚み方向の略中心に位置するため、製品全体としてカール現象が発生することはない。
この意味で、遮蔽層1と透明層3は略同一の肉厚となっているが、白色顔料が1%以下含まれる関係で、遮蔽層1の肉厚を透明層3の肉厚に比べ若干肉厚としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は本発明の実施例に係る発光性製品を示す概略断面図である。
【図2】図2は従来品に係る発光性製品を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1…隠蔽層
2…蓄光層
3…透明層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱硬化樹脂に顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより形成された隠蔽層(1)と、前記隠蔽層(1)上に、第2の熱硬化性樹脂に前記第2の熱硬化性樹脂よりも比重の大きい蓄光顔料を混合させた第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形することにより得られる蓄光層(2)と透明層(3)とを有し、前記蓄光層(2)が製品厚みの略中心に位置することを特徴とする発光製品。
【請求項2】
前記第1の熱硬化樹脂に混合される顔料が白色顔料であることを特徴とする請求項1記載の発光製品。
【請求項3】
前記第1の熱硬化樹脂に混合される白色顔料の割合が1重量%以下であることを特徴とする請求項2記載の発光製品。
【請求項4】
前記第1の熱硬化樹脂がポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の発光製品。
【請求項5】
前記第2の熱硬化性樹脂が透明ポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項記載の発光製品。
【請求項6】
第1の熱硬化性樹脂に顔料を混合した第1の混合物を加熱しながら遠心成形することにより隠蔽層(1)を形成する第1の工程と、ついで前記隠蔽層(1)の上に第2の熱硬化性樹脂と前記第2の熱硬化性樹脂より比重の大きい蓄光顔料を混合した第2の混合物を注入し、加熱しながら遠心成形して蓄光層(2)と透明層(3)とを形成する第2の工程とを含み、前記蓄光層(2)が製品厚みの略中心に位置するように成形したことを特徴とする発光製品の製造方法。
【請求項7】
前記第2工程は前記第1工程で成形された前記隠蔽層(1)に未反応の官能基が残存する未硬化の状態で開始することを特徴とする請求項6記載の発光製品の製造方法。
【請求項8】
前記第1の熱硬化樹脂に混合される顔料が白色顔料であることを特徴とする請求項6または7記載の発光製品の製造方法。
【請求項9】
前記第1の熱硬化樹脂に混合される白色顔料の割合が1重量%以下であることを特徴とする請求項8記載の発光製品の製造方法。
【請求項10】
前記第1の熱硬化樹脂がポリウレタンであることを特徴とする請求項6〜9いずれか一項記載の発光製品の製造方法。
【請求項11】
前記第2の熱硬化性樹脂が透明ポリウレタンであることを特徴とする請求項6〜10いずれか一項記載の発光製品の製造方法。
【請求項12】
前記第1工程における遠心成形の回転数が50〜500rpmであることを特徴とする請求項6〜11いずれか一項記載の発光製品の製造方法。
【請求項13】
前記第2工程における遠心成形の回転数が600〜1500rpmであることを特徴とする請求項12記載の発光製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−44121(P2008−44121A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219216(P2006−219216)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】