発泡体コアの製造方法
【課題】発泡体コアの寸法精度を向上する。
【解決手段】複数のインサート部材を型にセットすると共に、位置合わせ基準となるインサート部材の間を仕切って仕切部材を発泡成形型のキャビティに設置したもとで、発泡成形型内で発泡体原料を発泡および硬化することで、発泡体コアの外形に合わせて成形された一次成形体を得る。一次成形体を仕切部材で分割することで、基準となるインサート部材を含むブロックを得る。基準となるインサート部材に基づいて各ブロックを位置合わせし、該ブロック同士を接合することで、発泡体コアを得る。
【解決手段】複数のインサート部材を型にセットすると共に、位置合わせ基準となるインサート部材の間を仕切って仕切部材を発泡成形型のキャビティに設置したもとで、発泡成形型内で発泡体原料を発泡および硬化することで、発泡体コアの外形に合わせて成形された一次成形体を得る。一次成形体を仕切部材で分割することで、基準となるインサート部材を含むブロックを得る。基準となるインサート部材に基づいて各ブロックを位置合わせし、該ブロック同士を接合することで、発泡体コアを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、FRP被覆構造体の芯材として用いられる発泡体コアの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタン等の発泡体を芯材とするFRP被覆構造体が、様々な物に用いられている。例えば自動車では、内装品、ルーフ、バンパー、リヤスポイラー、ダッシュパネルあるいはフレーム等の各種部品に、FRP被覆構造体を使用することが検討されている。FRP被覆構造体は、発泡体原料の発泡成形によりコアを作り、このコアの外面に繊維材を巻き付けて型にセットした後、型内にFRP用樹脂原料を注入して繊維層に樹脂原料を含浸し、この樹脂原料を硬化することで一般的に製造される。
【0003】
前記FRP被覆構造体は、該FRP被覆構造体に他の部品を組み付けたり、他の部材を通したり、あるいは該FRP被覆構造体を車体に取り付けるために、ナットやスリーブ等のインサート部材を複数備えている。インサート部材は、コアの発泡成形に際して発泡成形型にセットした状態で発泡体原料を発泡成形することで、コアの内部に一体的に埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−253946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したFRP被覆構造体用のコアは、該コアを構成する硬質ポリウレタン発泡体の幅の大きい部分が、幅の小さい部分と比較して大きく成形収縮すること等に起因して、得られた成形品の寸法精度が悪化する問題が指摘される。そこで、発泡成形型を、硬質ポリウレタン発泡体の成形収縮を予め見込んで製作することで、コアの寸法精度を担保することがなされている。しかしながら、コアには、金属や硬質ポリウレタン発泡体と異なる樹脂からなる複数のインサート部材が埋設されており、インサート部材と硬質ポリウレタン発泡体との間で成形収縮の度合いが異なることから、硬質ポリウレタン発泡体の成形収縮を予測することが困難になっている。また、インサート部材の埋設によって硬質ポリウレタン発泡体の肉厚が部位毎に異なるので、硬質ポリウレタン発泡体の成形収縮を予測することが更に困難になっている。
【0006】
例えば、コアを複数の小さなブロックに分けて夫々成形し、これらのブロックを接合してコアを製造する方法がある。すなわち、コアをブロックに細分化することで、各ブロックの成形収縮の予測がつき易いので、各ブロックを精度よく成形することができ、精度のよいブロック同士を接合することで、得られるコアの寸法精度を向上することができる。また別の方法としては、コアを構成する硬質ポリウレタン発泡体をインサート部材を埋設することなく成形し、得られた硬質ポリウレタン発泡体にインサート部材を後付けすることもなされている。この別の方法によれば、インサート部材と硬質ポリウレタン発泡体との成形収縮の差に由来する前記問題を切り分けることができ、得られるコアの寸法精度を向上することができる。
【0007】
しかし、ブロックを接合する前記方法は、各ブロックに対応した発泡成形型が必要となり、型コストが増大してしまう。また、各ブロックを別々に発泡成形するので、工数が増加し、生産性が低下する難点がある。そして、インサート部材を後付けする前記方法は、インサート部材と硬質ポリウレタン発泡体との接合部で剥離が起き易く、品質面での信頼性が低下する難点がある。また、インサート部材を後付けする前記方法では、インサート部材を取り付けるのに手間がかかるので、生産性が低下する難点があり、コアにおいてインサート部材を所望の位置精度で配置するのも難しい。
【0008】
すなわち本発明は、従来の技術に係る発泡体コアの製造方法に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、寸法精度を向上し得る発泡体コアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の発泡体コアの製造方法は、
複数のインサート部材を備え、FRP層で外郭が構成されるFRP被覆構造体の芯材となる発泡体コアの製造方法であって、
前記複数のインサート部材を発泡成形型の共通するキャビティにセットすると共に、位置合わせ基準となるインサート部材の間を仕切って仕切部材をキャビティに設置したもとで、キャビティで発泡体原料を発泡および硬化することで、前記発泡体コアの外形に合わせて成形された一次成形体を得て、
前記一次成形体を前記仕切部材で分割することで、前記基準となるインサート部材を含むブロックを得て、
前記基準となるインサート部材に基づいて各ブロックを位置合わせし、該ブロック同士を接合するようにしたことを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、一次成形体を一体成形した後に仕切部材でブロックに分割するので、発泡成形にかかるコストを抑えることができる。また、ブロック毎に成形収縮等の変形を管理すればよいので、全体として寸法精度を向上することができる。そして、インサート部材に基づいてブロックを位置合わせしてから互いに接合するので、インサート部材の位置精度を向上することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記一次成形体は、前記仕切部材を挟んで隣り合う前記ブロックの一部が互いに接続するように成形されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、一次成形体は、仕切部材を挟んで隣り合うブロックの一部が接続しているので、発泡成形型からの脱型を行い易い。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記発泡体コアを構成する発泡体として、ポリウレタン樹脂が用いられ、
前記仕切部材は、ポリオレフィン樹脂からなる板状に形成されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、発泡体であるポリウレタン樹脂に対して剥離可能なポリオレフィン樹脂からなる仕切部材を採用することで、仕切部材に離型剤を塗布する手間を省いても、一次成形体から仕切部材を取り外すことができる。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記仕切部材は、前記インサート部材によって発泡成形型内で支持されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、仕切部材をインサート部材によって支持しているので、発泡成形型に仕切部材を支持するための支持手段を設ける必要がなく、型構造を簡略化できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発泡体コアの製造方法によれば、発泡成形にかかるコストを抑えつつ、インサート部材の位置精度および外形の寸法精度に優れた発泡体コアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な実施例に係る発泡体コアを後側から示す斜視図である。
【図2】実施例の発泡体コアを前側から示す斜視図である。
【図3】実施例の発泡体コアを芯材として用いたFRP被覆構造体からなるダッシュパネルを示す正面図である。
【図4】車体に設置されたダッシュパネルを示す側断面図である。
【図5】実施例の第2インサート部材と仕切部材との関係を示す説明図であって、(a)は取り付け前の状態を示し、(b)は取り付け後の状態を示す。
【図6】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、インサート部材を発泡成形型にセットする前の状態を示す。
【図7】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、インサート部材を発泡成形型にセットした後の状態を示す。
【図8】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、発泡体原料が発泡した状態を示す。
【図9】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、一次成形体を脱型する様子を示す。
【図10】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、一次成形体をブロックに分割した様子を示す。
【図11】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、ブロックを位置合わせ治具に設置する前の状態を示す。
【図12】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、ブロックを位置合わせ治具に設置した後の状態を示す。
【図13】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、ブロックを接合した状態を示す。
【図14】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、位置合わせ治具から発泡体コアを取り外した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る発泡体コアの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、自動車の車体10においてエンジンルーム12と乗員室14との間を仕切るダッシュパネル16(図4参照)を構成するFRP被覆構造体20の芯材として用いられる発泡体コア24を例に挙げて説明する。
【実施例】
【0016】
図3に示すように、実施例に示すダッシュパネル16は、複数のFRP被覆構造体20,21を組み合わせて構成されている。また、ダッシュパネル16は、ブレーキペダルやステアリングシャフト18(図4参照)等を通すための挿通孔Saや、該ダッシュパネル16に取り付けられる部品を保持するナット等の取付具Nを備えている。FRP被覆構造体20,21は、芯材となる発泡体コア24と、この発泡体コア24の外面を被覆するFRP層22とから基本的に構成されている(図4参照)。FRP被覆構造体20,21には、挿通孔Saを画成するスリーブSや取付具N等が必要に応じて設けられている。
【0017】
実施例では、ダッシュパネル16を構成する複数のFRP被覆構造体20,21のなかで、ダッシュパネル16の左下部を構成するFRP被覆構造体21を例に挙げて説明する。FRP被覆構造体21は、途中が屈曲した板状の部材であって、車体10への取付姿勢を基準として説明すると、該FRP被覆構造体21は、その厚み方向を前後方向に沿わせた姿勢でダッシュパネル16を構成している(図4参照)。FRP被覆構造体21は、屈曲部位を挟んで延在する一方の板部21aが乗員室14の側方に位置すると共に、屈曲部位を挟んで延在する他方の板部21bが乗員室14の前方に位置し、他方の板部21bの端部がダッシュパネル16の中央部側に向かうにつれて先細りになる形状になっている。また、FRP被覆構造体21には、一方の板部21aと他方の板部21bとの夫々に、挿通孔Saを画成するスリーブSや取付具N等のインサート部材26,28,30が設けられている。
【0018】
図1または図2に示す発泡体コア24は、FRP被覆構造体21の外形に合わせて形成され、FRP層22をなす繊維材を配設する際の基盤となる部材である。また、発泡体コア24は、複数のインサート部材26,28,30が埋設されており、これらのインサート部材26,28,30を、FRP層22の形成前あるいはFRP層22の形成後に亘って所定位置で支持する支持基盤としても機能する。すなわち、発泡体コア24を構成する発泡体32は、軽量で、インサート部材26,28,30および繊維材を支持できるある程度の硬さを有し、FRP層形成工程で加わる熱に耐え得る材料が用いられる。発泡体32は、例えばポリエチレン発泡体やポリプロピレン発泡体等に代表されるポリオレフィン系発泡体、ポリウレタン発泡体あるいはゴム系発泡体等の各種発泡体が採用可能である。なお、発泡体32としては、実施例で採用される硬質ポリウレタン発泡体が、発泡体32に要求される前述した機能およびコストの観点から最も好適である。
【0019】
前記FRP層22は、繊維材とプラスチックとを複合した層であって、発泡体コア24の表面を被覆してFRP被覆構造体21の外面を構成すると共に、FRP被覆構造体21の剛性を担保している。繊維材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー繊維やダイマーニ繊維等の各種繊維を単体または複合して用いることができる。なお、母材としてのプラスチックは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。また、熱硬化性樹脂に変えて、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。実施例のFRP層22は、繊維材として炭素繊維が用いられ、母材としてエポキシ樹脂が用いられた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である。なお、FRP層22は、発泡体コア24を芯材として、RTM法、VARTM法や真空バッグオートクレーブ法等によって形成される。
【0020】
前記インサート部材26,28,30は、アルミ等の金属や合成樹脂のソリッド体からなるスリーブSや取付具N等そのものであっても、スリーブSや取付具N等を前記発泡体コア24と同じ発泡体に予め埋め込んで構成されるブロック状物であってもよい。また、インサート部材26,28,30には、前記FRP層22と同じFRPからなる補強層が予め設けられていてもよい。実施例のインサート部材26,28,30は、スリーブSや取付具Nを発泡体Uに埋め込み、その外面に補強層Vを設けて補強されたブロック形態で提供される(図6または図7参照)。
【0021】
図1または図2に示すように、実施例の発泡体コア24には、FRP被覆構造体21の一方の板部21aに対応する第1板部24aにおける上下方向の中央部に、取付具Nを備えた第1インサート部材(基準となるインサート部材)26が左右方向に延在するように埋設されている。また、発泡体コア24には、FRP被覆構造体21の他方の板部21bに対応する第2板部24bに、取付具Nを備えた第2インサート部材(基準となるインサート部材)28が上下方向に延在するように埋設されている。更に、発泡体コア24には、第2インサート部材28における屈曲部位と反対側の隣に配置して、スリーブSを備えた第3インサート部材30が設けられている。各インサート部材26,28,30は、発泡体コア24の厚み寸法と同じ厚み寸法に設定されている。発泡体コア24において、第1インサート部材26は、第1板部24aにおける前後の面および側面に露出している。第2インサート部材28は、第2板部24bの上下の幅と同じ幅に設定され、第2板部24bにおける前後の面および上下の面に露出している。第3インサート部材30は、第2板部24bにおける前後の面に露出すると共に、スリーブSの挿通孔Saが前後に連通している。
【0022】
前記発泡体コア24は、取付対象等との関係で位置精度が厳しく要求されるインサート部材を有し、この位置合わせの基準となるインサート部材を特に区別する場合は「基準となるインサート部材」という。実施例は、取付具Nを備えた第1および第2インサート部材26,28が、スリーブSを備えた第3インサート部材30と比べて発泡体コア24における位置精度が求められ、これら第1および第2インサート部材26,28が基準となるインサート部材として精度が厳しく管理される。
【0023】
次に発泡体コア24の製造方法について、図6〜図14を参照して説明する。なお、以下の説明および図6〜図14では、第3インサート部材30について省略している。先ず、製造する発泡体コア24の外形に合わせたキャビティ52を有する発泡成形型50が用意される。図6に示すように、第1および第2インサート部材26,28の夫々を、発泡成形型50における共通するキャビティ52の所定位置にセットする。発泡成形型50には、インサート部材26,28をキャビティ52で位置決めする仮固定片53が設けられている。実施例の仮固定片53は、型面からキャビティ52の内側に向けて突出形成された板状片であり、インサート部材26,28の周囲に連続または間欠的に延在形成されている。前述の如く、第1および第2インサート部材26,28は、補強層Vが設けられた略矩形状のブロック状物であって(図5(a)参照)、第2インサート部材28がキャビティ52を仕切るようにセットされ、この第2インサート部材28によってキャビティ52が2つに区分される。
【0024】
位置合わせ基準となる第1インサート部材26と第2インサート部材28との間を仕切るように、仕切部材34をキャビティ52に設置する(図7参照)。実施例の仕切部材34は、第2インサート部材28における屈曲部位側(第1インサート部材26側)の面に沿わせてキャビティ52に設置され、第2インサート部材28の一面で支持されている。仕切部材34は、第2インサート部材28に対して発泡成形型50の外で取り付けても(図6参照)、発泡成形型50にセットした第2インサート部材28に取り付けても、どちらでもよい。ここで、仕切部材34は、両面テープ等の第2インサート部材28から剥離可能な固定手段で仮固定される。このように、仕切部材34を第2インサート部材28によってキャビティ52で支持することで、発泡成形型50に仕切部材34を支持するための支持手段を別途設ける必要がなく、発泡成形型50の構造を簡略化できる利点がある。
【0025】
前記仕切部材34は、発泡体コア24を構成する発泡体32から剥離可能で、該発泡体32の発泡成形時に加わる熱に耐え得る合成樹脂からなる板状物である。なお、「発泡体32から剥離可能」とは、仕切部材34を発泡体32となる発泡体原料に接した状態で該発泡体原料を発泡・硬化した際に、得られる一次成形体36(後述するブロック38,40)と接合し難く、一次成形体36から仕切部材34が剥離可能なことをいう。実施例のように発泡体32として、硬質ポリウレタンを採用するのであれば、仕切部材34としてはポリオレフィン系樹脂が好適であり、この中でもポリプロピレン樹脂(PP)やポリエチレンテレフタラート(PET)が望ましい。このように、発泡体32である硬質ポリウレタンに対して剥離可能なポリオレフィン樹脂からなる仕切部材34を採用することで、仕切部材34に離型剤を塗布する手間を省いても、一次成形体36から仕切部材34を取り外すことができる。
【0026】
前記仕切部材34は、第1インサート部材26と第2インサート部材28との間を横切るキャビティ52の断面(以下、仕切断面という)と同じまたは仕切断面より小さく設定され(図7参照)、発泡成形型50と干渉しない大きさで形成されている。実施例では、仕切部材34がキャビティ52を完全に仕切らない形状・大きさに設定され(図6参照)、発泡成形型50での発泡成形により得られる一次成形体36が、仕切部材34を挟んで一部が互いに接続するように成形される。実施例の一次成形体36は、隣り合うブロック38,40について仕切部材34を跨いで外周の一辺だけを接続する一方、他の部分を仕切部材34により直接接続しないように成形される。実施例の仕切部材34は、仕切断面の厚み方向の寸法より一回り小さく、仕切断面の上下方向の寸法と同じに設定された矩形状である。仕切部材34は、第2インサート部材28の取り付け面に対して上下方向を整合させると共に、該取り付け面における厚み方向の一方の縁辺および他方の縁辺から離して取り付けられる(図5(b)参照)。そして、仕切部材34は、発泡成形型50における上側の型面から離間すると共に、下側の型面に設けた仮固定片53に当たらないように逃がした状態でキャビティ52にセットされる。すなわち、一次成形体36は、上側の型面側の一辺が仕切部材34を跨いで接続される。なお、実施例では、キャビティ52における仕切断面の外周と仕切部材34の外周との間に0.5mmの隙間があくようになっており、接続部の厚みが0.5mm程度となっている。一次成形体36に仮固定片53によりできる凹部は、仕切部材34でブロック38,40に分割する際の破断起点とすることができる。
【0027】
前記仕切部材34の厚さは、発泡体コア24の形状や構造あるいは成形収縮量等を勘案して決定されるが、例えば0.5〜2.0mmの範囲に設定される。実施例の製造方法によれば、仕切部材34の厚さによって、ブロック38,40の反り等の変形量に対応して補正可能な範囲を適宜調節することでができる。例えば、ブロック38,40の反り量が比較的大きい場合に、仕切部材34の厚さを大きく設定することで、ブロック38,40間で互いに干渉することなく、位置合わせできる調節範囲が広くなる。
【0028】
発泡体原料をキャビティ52に入れ、該発泡体原料を発泡および硬化する(図8参照)。これにより、発泡体コア24の外形に合わせて成形された一次成形体36が得られる。一次成形体36を仕切部材34と共に発泡成形型50から取り出し(図9参照)、一次成形体36を仕切部材34で仕切った部分で分割し、第1インサート部材26を含む第1ブロック38と、第2インサート部材28を含む第2ブロック40とに分ける(図10参照)。ここで、一次成形体36は、仕切部材34がキャビティ52の仕切断面より小さく設定されているので、仕切部材34を挟んで隣り合うブロック38,40の一部(実施例では一辺)が互いに接続しており、発泡成形型50からの脱型に際して、1つの塊として取り扱うことができる(図9参照)。よって、発泡成形型50のキャビティ52を仕切部材34で完全に仕切る場合と比べて、一次成形体36の脱型作業が容易になり、手間を軽減することができる。そして、一次成形体36は、仕切部材34で隣り合うブロック38,40間の大部分が区切られているので、仕切部材34で仕切った部分において隣り合うブロック38,40の接続部分を簡単に分離することができる。また、仕切部材34は、発泡体32から剥離可能であるので、一次成形体36をブロック38,40に分割する際に、仕切部材34を境界にして簡単に分割することができる。そして、ブロック38,40から仕切部材34を取り外し、必要に応じて仕切部材34により仕切られていたブロック38,40の端面(接合面)からバリをとる等、の調整を行う。
【0029】
両ブロック38,40は、互いの接合面に接着剤を塗布して位置合わせ治具54にセットする(図11参照)。なお、接着剤の付与のタイミングは、両ブロック38,40を位置合わせした後であってもよい。位置合わせ治具54は、得るべき発泡体コア24に合わせて形成された支持面54aから立ち上がる位置決め壁56を有し(図11参照)、この位置決め壁56にブロック38,40の外周を当接させて該ブロック38,40の位置決めを行う。また、位置合わせ治具54は、得るべき発泡体コア24の第1および第2インサート部材26,28に合わせて設けられたネジ孔57,57を有している。各ブロック38,40を位置合わせ治具54の支持面54aにセットし、インサート部材26,28の取付具Nを挿通して位置決めピン58をネジ孔57に螺合することで、各ブロック38,40が更に厳密に位置合わせされる(図12参照)。なお、位置合わせピン58は、取付具Nの内径および形状に合わせて設定される。このように、位置合わせ治具54では、第1ブロック38が、第1インサート部材26の取付具Nを基準として位置決めされ、第2ブロック40が、第2インサート部材28の取付具Nを基準として位置決めされる。これにより、第1ブロック38と第2ブロック40とが、第1インサート部材26と第2インサート部材28との位置関係が精密に調整された状態で接合される(図13参照)。なお、接着剤としては、発泡体コアを構成する発泡体と同質のものが用いられ、実施例では硬質ポリウレタン発泡体に対応して、ウレタン系接着剤が採用されている。また、接着剤は、位置合わせにより生じる隙間を埋めることができるパテ状のものが好適である。
【0030】
位置決めピン58を取付具Nから抜いて、発泡体コア24を位置合わせ治具54から取り外す(図14参照)。発泡体コア24は、必要に応じて第1ブロック38と第2ブロック40との接合部を研磨する等の仕上げが行われる。また、発泡体コア24は、第1ブロック38と第2ブロック40との接合部に波釘等を打込むことで、補強を行ってもよい。
【0031】
以上に説明した製造方法によれば、発泡体32の成形収縮をブロック38,40単位で予測すればよいので、発泡体コア24全体の成形収縮等の変形を予測する場合と比べて考慮する要素を減らすことができる。すなわち、各ブロック38,40を成形収縮等の変形に対して高いレベルで対応した発泡成形型で成形することができ、得られるブロック38,40の寸法精度を向上することができる。2つのブロック38,40は、共通するキャビティ52で同一条件で成形されるので、品質が同じであり、これらのブロック38,40を接合して得られる発泡体コア24を全体として均質にできる。前記製造方法では、発泡体コア24を2つのブロック38,40に分けるが、発泡成形型50における1つのキャビティ52で成形した一次成形体36を分割する構成であるので、各ブロック38,40に対応して発泡成形型を用意する必要がなく、型コスト、成形手間および成形コストの増加を招かない。しかも、一次成形体36の発泡成形に際して、ブロック38,40を分割するラインに沿って仕切部材34をキャビティ52に入れておくだけで、一次成形体36を仕切部材34で分けて2つのブロック38,40に分割することができる。すなわち、一次成形体36をカッタ等の切断手段を用いることなく、ブロック38,40に簡単に分けることができ、ブロック化に手間がかからない。
【0032】
そして、第1ブロック38および第2ブロック40は、互いの基準となるインサート部材26,28を位置決めしたもとで接合されるので、得られる発泡体コア24では、第1インサート部材26と第2インサート部材28との位置関係が、成形収縮等の成形誤差に関わらず、より正確に整えられた状態となる。すなわち、発泡体コア24は、ブロック化することによる前述した寸法精度の向上だけでなく、埋め込まれたインサート部材26,28同士の位置精度も向上することができる。
【0033】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、ダッシュパネルを構成するFRP被覆構造体に用いられる発泡体コアを例に挙げたが、車体の側方を構成するサイドメンバ、内装品、ルーフ、バンパー、リヤスポイラー等に用いてもよい。
(2)実施例では、インサート部材で仕切部材を支持する例を挙げたが、仕切部材に合わせた溝を設ける等の支持手段を発泡成形型に設け、インサート部材と独立して支持してもよい。このように、発泡成形型の支持手段で仕切部材を支持することで、インサート部材の配置によらず、任意の位置で一次成形体をブロックに分割することができるメリットがある。
(3)実施例では、仕切部材をキャビティの仕切断面より一回り小さく設定することで、隣り合うブロックの一部を互いに接続したが、仕切部材に孔を設けたり、切り欠きを設ける等によって、隣り合うブロックの一部が接続した一次成形体を形成してもよい。
(4)実施例では、発泡体から剥離可能な合成樹脂からなる仕切部材を採用したが、これに限定されない。なお、仕切部材として、発泡体に接合し易い合成樹脂を採用する場合は、離型剤を塗布すればよい。
【符号の説明】
【0034】
21 FRP被覆構造体、22 FRP層、24 発泡体コア、
26 第1インサート部材(インサート部材)、
28 第2インサート部材(インサート部材)、
30 第3インサート部材(インサート部材)、
34 仕切部材、36 一次成形体、38 第1ブロック(ブロック)、
40 第2ブロック(ブロック)、50 発泡成形型、52 キャビティ
【技術分野】
【0001】
この発明は、FRP被覆構造体の芯材として用いられる発泡体コアの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタン等の発泡体を芯材とするFRP被覆構造体が、様々な物に用いられている。例えば自動車では、内装品、ルーフ、バンパー、リヤスポイラー、ダッシュパネルあるいはフレーム等の各種部品に、FRP被覆構造体を使用することが検討されている。FRP被覆構造体は、発泡体原料の発泡成形によりコアを作り、このコアの外面に繊維材を巻き付けて型にセットした後、型内にFRP用樹脂原料を注入して繊維層に樹脂原料を含浸し、この樹脂原料を硬化することで一般的に製造される。
【0003】
前記FRP被覆構造体は、該FRP被覆構造体に他の部品を組み付けたり、他の部材を通したり、あるいは該FRP被覆構造体を車体に取り付けるために、ナットやスリーブ等のインサート部材を複数備えている。インサート部材は、コアの発泡成形に際して発泡成形型にセットした状態で発泡体原料を発泡成形することで、コアの内部に一体的に埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−253946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したFRP被覆構造体用のコアは、該コアを構成する硬質ポリウレタン発泡体の幅の大きい部分が、幅の小さい部分と比較して大きく成形収縮すること等に起因して、得られた成形品の寸法精度が悪化する問題が指摘される。そこで、発泡成形型を、硬質ポリウレタン発泡体の成形収縮を予め見込んで製作することで、コアの寸法精度を担保することがなされている。しかしながら、コアには、金属や硬質ポリウレタン発泡体と異なる樹脂からなる複数のインサート部材が埋設されており、インサート部材と硬質ポリウレタン発泡体との間で成形収縮の度合いが異なることから、硬質ポリウレタン発泡体の成形収縮を予測することが困難になっている。また、インサート部材の埋設によって硬質ポリウレタン発泡体の肉厚が部位毎に異なるので、硬質ポリウレタン発泡体の成形収縮を予測することが更に困難になっている。
【0006】
例えば、コアを複数の小さなブロックに分けて夫々成形し、これらのブロックを接合してコアを製造する方法がある。すなわち、コアをブロックに細分化することで、各ブロックの成形収縮の予測がつき易いので、各ブロックを精度よく成形することができ、精度のよいブロック同士を接合することで、得られるコアの寸法精度を向上することができる。また別の方法としては、コアを構成する硬質ポリウレタン発泡体をインサート部材を埋設することなく成形し、得られた硬質ポリウレタン発泡体にインサート部材を後付けすることもなされている。この別の方法によれば、インサート部材と硬質ポリウレタン発泡体との成形収縮の差に由来する前記問題を切り分けることができ、得られるコアの寸法精度を向上することができる。
【0007】
しかし、ブロックを接合する前記方法は、各ブロックに対応した発泡成形型が必要となり、型コストが増大してしまう。また、各ブロックを別々に発泡成形するので、工数が増加し、生産性が低下する難点がある。そして、インサート部材を後付けする前記方法は、インサート部材と硬質ポリウレタン発泡体との接合部で剥離が起き易く、品質面での信頼性が低下する難点がある。また、インサート部材を後付けする前記方法では、インサート部材を取り付けるのに手間がかかるので、生産性が低下する難点があり、コアにおいてインサート部材を所望の位置精度で配置するのも難しい。
【0008】
すなわち本発明は、従来の技術に係る発泡体コアの製造方法に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、寸法精度を向上し得る発泡体コアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の発泡体コアの製造方法は、
複数のインサート部材を備え、FRP層で外郭が構成されるFRP被覆構造体の芯材となる発泡体コアの製造方法であって、
前記複数のインサート部材を発泡成形型の共通するキャビティにセットすると共に、位置合わせ基準となるインサート部材の間を仕切って仕切部材をキャビティに設置したもとで、キャビティで発泡体原料を発泡および硬化することで、前記発泡体コアの外形に合わせて成形された一次成形体を得て、
前記一次成形体を前記仕切部材で分割することで、前記基準となるインサート部材を含むブロックを得て、
前記基準となるインサート部材に基づいて各ブロックを位置合わせし、該ブロック同士を接合するようにしたことを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、一次成形体を一体成形した後に仕切部材でブロックに分割するので、発泡成形にかかるコストを抑えることができる。また、ブロック毎に成形収縮等の変形を管理すればよいので、全体として寸法精度を向上することができる。そして、インサート部材に基づいてブロックを位置合わせしてから互いに接合するので、インサート部材の位置精度を向上することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記一次成形体は、前記仕切部材を挟んで隣り合う前記ブロックの一部が互いに接続するように成形されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、一次成形体は、仕切部材を挟んで隣り合うブロックの一部が接続しているので、発泡成形型からの脱型を行い易い。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記発泡体コアを構成する発泡体として、ポリウレタン樹脂が用いられ、
前記仕切部材は、ポリオレフィン樹脂からなる板状に形成されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、発泡体であるポリウレタン樹脂に対して剥離可能なポリオレフィン樹脂からなる仕切部材を採用することで、仕切部材に離型剤を塗布する手間を省いても、一次成形体から仕切部材を取り外すことができる。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記仕切部材は、前記インサート部材によって発泡成形型内で支持されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、仕切部材をインサート部材によって支持しているので、発泡成形型に仕切部材を支持するための支持手段を設ける必要がなく、型構造を簡略化できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発泡体コアの製造方法によれば、発泡成形にかかるコストを抑えつつ、インサート部材の位置精度および外形の寸法精度に優れた発泡体コアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な実施例に係る発泡体コアを後側から示す斜視図である。
【図2】実施例の発泡体コアを前側から示す斜視図である。
【図3】実施例の発泡体コアを芯材として用いたFRP被覆構造体からなるダッシュパネルを示す正面図である。
【図4】車体に設置されたダッシュパネルを示す側断面図である。
【図5】実施例の第2インサート部材と仕切部材との関係を示す説明図であって、(a)は取り付け前の状態を示し、(b)は取り付け後の状態を示す。
【図6】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、インサート部材を発泡成形型にセットする前の状態を示す。
【図7】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、インサート部材を発泡成形型にセットした後の状態を示す。
【図8】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、発泡体原料が発泡した状態を示す。
【図9】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、一次成形体を脱型する様子を示す。
【図10】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、一次成形体をブロックに分割した様子を示す。
【図11】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、ブロックを位置合わせ治具に設置する前の状態を示す。
【図12】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、ブロックを位置合わせ治具に設置した後の状態を示す。
【図13】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、ブロックを接合した状態を示す。
【図14】実施例の発泡体コアの製造過程を示す説明図であって、位置合わせ治具から発泡体コアを取り外した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る発泡体コアの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、自動車の車体10においてエンジンルーム12と乗員室14との間を仕切るダッシュパネル16(図4参照)を構成するFRP被覆構造体20の芯材として用いられる発泡体コア24を例に挙げて説明する。
【実施例】
【0016】
図3に示すように、実施例に示すダッシュパネル16は、複数のFRP被覆構造体20,21を組み合わせて構成されている。また、ダッシュパネル16は、ブレーキペダルやステアリングシャフト18(図4参照)等を通すための挿通孔Saや、該ダッシュパネル16に取り付けられる部品を保持するナット等の取付具Nを備えている。FRP被覆構造体20,21は、芯材となる発泡体コア24と、この発泡体コア24の外面を被覆するFRP層22とから基本的に構成されている(図4参照)。FRP被覆構造体20,21には、挿通孔Saを画成するスリーブSや取付具N等が必要に応じて設けられている。
【0017】
実施例では、ダッシュパネル16を構成する複数のFRP被覆構造体20,21のなかで、ダッシュパネル16の左下部を構成するFRP被覆構造体21を例に挙げて説明する。FRP被覆構造体21は、途中が屈曲した板状の部材であって、車体10への取付姿勢を基準として説明すると、該FRP被覆構造体21は、その厚み方向を前後方向に沿わせた姿勢でダッシュパネル16を構成している(図4参照)。FRP被覆構造体21は、屈曲部位を挟んで延在する一方の板部21aが乗員室14の側方に位置すると共に、屈曲部位を挟んで延在する他方の板部21bが乗員室14の前方に位置し、他方の板部21bの端部がダッシュパネル16の中央部側に向かうにつれて先細りになる形状になっている。また、FRP被覆構造体21には、一方の板部21aと他方の板部21bとの夫々に、挿通孔Saを画成するスリーブSや取付具N等のインサート部材26,28,30が設けられている。
【0018】
図1または図2に示す発泡体コア24は、FRP被覆構造体21の外形に合わせて形成され、FRP層22をなす繊維材を配設する際の基盤となる部材である。また、発泡体コア24は、複数のインサート部材26,28,30が埋設されており、これらのインサート部材26,28,30を、FRP層22の形成前あるいはFRP層22の形成後に亘って所定位置で支持する支持基盤としても機能する。すなわち、発泡体コア24を構成する発泡体32は、軽量で、インサート部材26,28,30および繊維材を支持できるある程度の硬さを有し、FRP層形成工程で加わる熱に耐え得る材料が用いられる。発泡体32は、例えばポリエチレン発泡体やポリプロピレン発泡体等に代表されるポリオレフィン系発泡体、ポリウレタン発泡体あるいはゴム系発泡体等の各種発泡体が採用可能である。なお、発泡体32としては、実施例で採用される硬質ポリウレタン発泡体が、発泡体32に要求される前述した機能およびコストの観点から最も好適である。
【0019】
前記FRP層22は、繊維材とプラスチックとを複合した層であって、発泡体コア24の表面を被覆してFRP被覆構造体21の外面を構成すると共に、FRP被覆構造体21の剛性を担保している。繊維材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー繊維やダイマーニ繊維等の各種繊維を単体または複合して用いることができる。なお、母材としてのプラスチックは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。また、熱硬化性樹脂に変えて、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いてもよい。実施例のFRP層22は、繊維材として炭素繊維が用いられ、母材としてエポキシ樹脂が用いられた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である。なお、FRP層22は、発泡体コア24を芯材として、RTM法、VARTM法や真空バッグオートクレーブ法等によって形成される。
【0020】
前記インサート部材26,28,30は、アルミ等の金属や合成樹脂のソリッド体からなるスリーブSや取付具N等そのものであっても、スリーブSや取付具N等を前記発泡体コア24と同じ発泡体に予め埋め込んで構成されるブロック状物であってもよい。また、インサート部材26,28,30には、前記FRP層22と同じFRPからなる補強層が予め設けられていてもよい。実施例のインサート部材26,28,30は、スリーブSや取付具Nを発泡体Uに埋め込み、その外面に補強層Vを設けて補強されたブロック形態で提供される(図6または図7参照)。
【0021】
図1または図2に示すように、実施例の発泡体コア24には、FRP被覆構造体21の一方の板部21aに対応する第1板部24aにおける上下方向の中央部に、取付具Nを備えた第1インサート部材(基準となるインサート部材)26が左右方向に延在するように埋設されている。また、発泡体コア24には、FRP被覆構造体21の他方の板部21bに対応する第2板部24bに、取付具Nを備えた第2インサート部材(基準となるインサート部材)28が上下方向に延在するように埋設されている。更に、発泡体コア24には、第2インサート部材28における屈曲部位と反対側の隣に配置して、スリーブSを備えた第3インサート部材30が設けられている。各インサート部材26,28,30は、発泡体コア24の厚み寸法と同じ厚み寸法に設定されている。発泡体コア24において、第1インサート部材26は、第1板部24aにおける前後の面および側面に露出している。第2インサート部材28は、第2板部24bの上下の幅と同じ幅に設定され、第2板部24bにおける前後の面および上下の面に露出している。第3インサート部材30は、第2板部24bにおける前後の面に露出すると共に、スリーブSの挿通孔Saが前後に連通している。
【0022】
前記発泡体コア24は、取付対象等との関係で位置精度が厳しく要求されるインサート部材を有し、この位置合わせの基準となるインサート部材を特に区別する場合は「基準となるインサート部材」という。実施例は、取付具Nを備えた第1および第2インサート部材26,28が、スリーブSを備えた第3インサート部材30と比べて発泡体コア24における位置精度が求められ、これら第1および第2インサート部材26,28が基準となるインサート部材として精度が厳しく管理される。
【0023】
次に発泡体コア24の製造方法について、図6〜図14を参照して説明する。なお、以下の説明および図6〜図14では、第3インサート部材30について省略している。先ず、製造する発泡体コア24の外形に合わせたキャビティ52を有する発泡成形型50が用意される。図6に示すように、第1および第2インサート部材26,28の夫々を、発泡成形型50における共通するキャビティ52の所定位置にセットする。発泡成形型50には、インサート部材26,28をキャビティ52で位置決めする仮固定片53が設けられている。実施例の仮固定片53は、型面からキャビティ52の内側に向けて突出形成された板状片であり、インサート部材26,28の周囲に連続または間欠的に延在形成されている。前述の如く、第1および第2インサート部材26,28は、補強層Vが設けられた略矩形状のブロック状物であって(図5(a)参照)、第2インサート部材28がキャビティ52を仕切るようにセットされ、この第2インサート部材28によってキャビティ52が2つに区分される。
【0024】
位置合わせ基準となる第1インサート部材26と第2インサート部材28との間を仕切るように、仕切部材34をキャビティ52に設置する(図7参照)。実施例の仕切部材34は、第2インサート部材28における屈曲部位側(第1インサート部材26側)の面に沿わせてキャビティ52に設置され、第2インサート部材28の一面で支持されている。仕切部材34は、第2インサート部材28に対して発泡成形型50の外で取り付けても(図6参照)、発泡成形型50にセットした第2インサート部材28に取り付けても、どちらでもよい。ここで、仕切部材34は、両面テープ等の第2インサート部材28から剥離可能な固定手段で仮固定される。このように、仕切部材34を第2インサート部材28によってキャビティ52で支持することで、発泡成形型50に仕切部材34を支持するための支持手段を別途設ける必要がなく、発泡成形型50の構造を簡略化できる利点がある。
【0025】
前記仕切部材34は、発泡体コア24を構成する発泡体32から剥離可能で、該発泡体32の発泡成形時に加わる熱に耐え得る合成樹脂からなる板状物である。なお、「発泡体32から剥離可能」とは、仕切部材34を発泡体32となる発泡体原料に接した状態で該発泡体原料を発泡・硬化した際に、得られる一次成形体36(後述するブロック38,40)と接合し難く、一次成形体36から仕切部材34が剥離可能なことをいう。実施例のように発泡体32として、硬質ポリウレタンを採用するのであれば、仕切部材34としてはポリオレフィン系樹脂が好適であり、この中でもポリプロピレン樹脂(PP)やポリエチレンテレフタラート(PET)が望ましい。このように、発泡体32である硬質ポリウレタンに対して剥離可能なポリオレフィン樹脂からなる仕切部材34を採用することで、仕切部材34に離型剤を塗布する手間を省いても、一次成形体36から仕切部材34を取り外すことができる。
【0026】
前記仕切部材34は、第1インサート部材26と第2インサート部材28との間を横切るキャビティ52の断面(以下、仕切断面という)と同じまたは仕切断面より小さく設定され(図7参照)、発泡成形型50と干渉しない大きさで形成されている。実施例では、仕切部材34がキャビティ52を完全に仕切らない形状・大きさに設定され(図6参照)、発泡成形型50での発泡成形により得られる一次成形体36が、仕切部材34を挟んで一部が互いに接続するように成形される。実施例の一次成形体36は、隣り合うブロック38,40について仕切部材34を跨いで外周の一辺だけを接続する一方、他の部分を仕切部材34により直接接続しないように成形される。実施例の仕切部材34は、仕切断面の厚み方向の寸法より一回り小さく、仕切断面の上下方向の寸法と同じに設定された矩形状である。仕切部材34は、第2インサート部材28の取り付け面に対して上下方向を整合させると共に、該取り付け面における厚み方向の一方の縁辺および他方の縁辺から離して取り付けられる(図5(b)参照)。そして、仕切部材34は、発泡成形型50における上側の型面から離間すると共に、下側の型面に設けた仮固定片53に当たらないように逃がした状態でキャビティ52にセットされる。すなわち、一次成形体36は、上側の型面側の一辺が仕切部材34を跨いで接続される。なお、実施例では、キャビティ52における仕切断面の外周と仕切部材34の外周との間に0.5mmの隙間があくようになっており、接続部の厚みが0.5mm程度となっている。一次成形体36に仮固定片53によりできる凹部は、仕切部材34でブロック38,40に分割する際の破断起点とすることができる。
【0027】
前記仕切部材34の厚さは、発泡体コア24の形状や構造あるいは成形収縮量等を勘案して決定されるが、例えば0.5〜2.0mmの範囲に設定される。実施例の製造方法によれば、仕切部材34の厚さによって、ブロック38,40の反り等の変形量に対応して補正可能な範囲を適宜調節することでができる。例えば、ブロック38,40の反り量が比較的大きい場合に、仕切部材34の厚さを大きく設定することで、ブロック38,40間で互いに干渉することなく、位置合わせできる調節範囲が広くなる。
【0028】
発泡体原料をキャビティ52に入れ、該発泡体原料を発泡および硬化する(図8参照)。これにより、発泡体コア24の外形に合わせて成形された一次成形体36が得られる。一次成形体36を仕切部材34と共に発泡成形型50から取り出し(図9参照)、一次成形体36を仕切部材34で仕切った部分で分割し、第1インサート部材26を含む第1ブロック38と、第2インサート部材28を含む第2ブロック40とに分ける(図10参照)。ここで、一次成形体36は、仕切部材34がキャビティ52の仕切断面より小さく設定されているので、仕切部材34を挟んで隣り合うブロック38,40の一部(実施例では一辺)が互いに接続しており、発泡成形型50からの脱型に際して、1つの塊として取り扱うことができる(図9参照)。よって、発泡成形型50のキャビティ52を仕切部材34で完全に仕切る場合と比べて、一次成形体36の脱型作業が容易になり、手間を軽減することができる。そして、一次成形体36は、仕切部材34で隣り合うブロック38,40間の大部分が区切られているので、仕切部材34で仕切った部分において隣り合うブロック38,40の接続部分を簡単に分離することができる。また、仕切部材34は、発泡体32から剥離可能であるので、一次成形体36をブロック38,40に分割する際に、仕切部材34を境界にして簡単に分割することができる。そして、ブロック38,40から仕切部材34を取り外し、必要に応じて仕切部材34により仕切られていたブロック38,40の端面(接合面)からバリをとる等、の調整を行う。
【0029】
両ブロック38,40は、互いの接合面に接着剤を塗布して位置合わせ治具54にセットする(図11参照)。なお、接着剤の付与のタイミングは、両ブロック38,40を位置合わせした後であってもよい。位置合わせ治具54は、得るべき発泡体コア24に合わせて形成された支持面54aから立ち上がる位置決め壁56を有し(図11参照)、この位置決め壁56にブロック38,40の外周を当接させて該ブロック38,40の位置決めを行う。また、位置合わせ治具54は、得るべき発泡体コア24の第1および第2インサート部材26,28に合わせて設けられたネジ孔57,57を有している。各ブロック38,40を位置合わせ治具54の支持面54aにセットし、インサート部材26,28の取付具Nを挿通して位置決めピン58をネジ孔57に螺合することで、各ブロック38,40が更に厳密に位置合わせされる(図12参照)。なお、位置合わせピン58は、取付具Nの内径および形状に合わせて設定される。このように、位置合わせ治具54では、第1ブロック38が、第1インサート部材26の取付具Nを基準として位置決めされ、第2ブロック40が、第2インサート部材28の取付具Nを基準として位置決めされる。これにより、第1ブロック38と第2ブロック40とが、第1インサート部材26と第2インサート部材28との位置関係が精密に調整された状態で接合される(図13参照)。なお、接着剤としては、発泡体コアを構成する発泡体と同質のものが用いられ、実施例では硬質ポリウレタン発泡体に対応して、ウレタン系接着剤が採用されている。また、接着剤は、位置合わせにより生じる隙間を埋めることができるパテ状のものが好適である。
【0030】
位置決めピン58を取付具Nから抜いて、発泡体コア24を位置合わせ治具54から取り外す(図14参照)。発泡体コア24は、必要に応じて第1ブロック38と第2ブロック40との接合部を研磨する等の仕上げが行われる。また、発泡体コア24は、第1ブロック38と第2ブロック40との接合部に波釘等を打込むことで、補強を行ってもよい。
【0031】
以上に説明した製造方法によれば、発泡体32の成形収縮をブロック38,40単位で予測すればよいので、発泡体コア24全体の成形収縮等の変形を予測する場合と比べて考慮する要素を減らすことができる。すなわち、各ブロック38,40を成形収縮等の変形に対して高いレベルで対応した発泡成形型で成形することができ、得られるブロック38,40の寸法精度を向上することができる。2つのブロック38,40は、共通するキャビティ52で同一条件で成形されるので、品質が同じであり、これらのブロック38,40を接合して得られる発泡体コア24を全体として均質にできる。前記製造方法では、発泡体コア24を2つのブロック38,40に分けるが、発泡成形型50における1つのキャビティ52で成形した一次成形体36を分割する構成であるので、各ブロック38,40に対応して発泡成形型を用意する必要がなく、型コスト、成形手間および成形コストの増加を招かない。しかも、一次成形体36の発泡成形に際して、ブロック38,40を分割するラインに沿って仕切部材34をキャビティ52に入れておくだけで、一次成形体36を仕切部材34で分けて2つのブロック38,40に分割することができる。すなわち、一次成形体36をカッタ等の切断手段を用いることなく、ブロック38,40に簡単に分けることができ、ブロック化に手間がかからない。
【0032】
そして、第1ブロック38および第2ブロック40は、互いの基準となるインサート部材26,28を位置決めしたもとで接合されるので、得られる発泡体コア24では、第1インサート部材26と第2インサート部材28との位置関係が、成形収縮等の成形誤差に関わらず、より正確に整えられた状態となる。すなわち、発泡体コア24は、ブロック化することによる前述した寸法精度の向上だけでなく、埋め込まれたインサート部材26,28同士の位置精度も向上することができる。
【0033】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、ダッシュパネルを構成するFRP被覆構造体に用いられる発泡体コアを例に挙げたが、車体の側方を構成するサイドメンバ、内装品、ルーフ、バンパー、リヤスポイラー等に用いてもよい。
(2)実施例では、インサート部材で仕切部材を支持する例を挙げたが、仕切部材に合わせた溝を設ける等の支持手段を発泡成形型に設け、インサート部材と独立して支持してもよい。このように、発泡成形型の支持手段で仕切部材を支持することで、インサート部材の配置によらず、任意の位置で一次成形体をブロックに分割することができるメリットがある。
(3)実施例では、仕切部材をキャビティの仕切断面より一回り小さく設定することで、隣り合うブロックの一部を互いに接続したが、仕切部材に孔を設けたり、切り欠きを設ける等によって、隣り合うブロックの一部が接続した一次成形体を形成してもよい。
(4)実施例では、発泡体から剥離可能な合成樹脂からなる仕切部材を採用したが、これに限定されない。なお、仕切部材として、発泡体に接合し易い合成樹脂を採用する場合は、離型剤を塗布すればよい。
【符号の説明】
【0034】
21 FRP被覆構造体、22 FRP層、24 発泡体コア、
26 第1インサート部材(インサート部材)、
28 第2インサート部材(インサート部材)、
30 第3インサート部材(インサート部材)、
34 仕切部材、36 一次成形体、38 第1ブロック(ブロック)、
40 第2ブロック(ブロック)、50 発泡成形型、52 キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインサート部材を備え、FRP層で外郭が構成されるFRP被覆構造体の芯材となる発泡体コアの製造方法であって、
前記複数のインサート部材を発泡成形型の共通するキャビティにセットすると共に、位置合わせ基準となるインサート部材の間を仕切って仕切部材をキャビティに設置したもとで、キャビティで発泡体原料を発泡および硬化することで、前記発泡体コアの外形に合わせて成形された一次成形体を得て、
前記一次成形体を前記仕切部材で分割することで、前記基準となるインサート部材を含むブロックを得て、
前記基準となるインサート部材に基づいて各ブロックを位置合わせし、該ブロック同士を接合するようにした
ことを特徴とする発泡体コアの製造方法。
【請求項2】
前記一次成形体は、前記仕切部材を挟んで隣り合う前記ブロックの一部が互いに接続するように成形される請求項1記載の発泡体コアの製造方法。
【請求項3】
前記発泡体コアを構成する発泡体として、ポリウレタン樹脂が用いられ、
前記仕切部材は、ポリオレフィン樹脂からなる板状に形成される請求項1または2記載の発泡体コアの製造方法。
【請求項4】
前記仕切部材は、前記インサート部材によって前記キャビティで支持される請求項1〜3の何れか一項に記載の発泡体コアの製造方法。
【請求項1】
複数のインサート部材を備え、FRP層で外郭が構成されるFRP被覆構造体の芯材となる発泡体コアの製造方法であって、
前記複数のインサート部材を発泡成形型の共通するキャビティにセットすると共に、位置合わせ基準となるインサート部材の間を仕切って仕切部材をキャビティに設置したもとで、キャビティで発泡体原料を発泡および硬化することで、前記発泡体コアの外形に合わせて成形された一次成形体を得て、
前記一次成形体を前記仕切部材で分割することで、前記基準となるインサート部材を含むブロックを得て、
前記基準となるインサート部材に基づいて各ブロックを位置合わせし、該ブロック同士を接合するようにした
ことを特徴とする発泡体コアの製造方法。
【請求項2】
前記一次成形体は、前記仕切部材を挟んで隣り合う前記ブロックの一部が互いに接続するように成形される請求項1記載の発泡体コアの製造方法。
【請求項3】
前記発泡体コアを構成する発泡体として、ポリウレタン樹脂が用いられ、
前記仕切部材は、ポリオレフィン樹脂からなる板状に形成される請求項1または2記載の発泡体コアの製造方法。
【請求項4】
前記仕切部材は、前記インサート部材によって前記キャビティで支持される請求項1〜3の何れか一項に記載の発泡体コアの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−66462(P2012−66462A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212597(P2010−212597)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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