発泡体ロール成形型および発泡体ロール成形方法
【課題】成形効率を向上させ得る発泡体ロール成形型および成形方法を提供する。
【解決手段】発泡体ロール成形型20の内部には、得るべき発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう形成されたロール成形空間32が上下に重ねて複数連設されたキャビティ部26が形成される。キャビティ部26の下方には、メカニカルフロス法により得られた発泡原料が注入される注入口30と、注入口30から最下段のロール成形空間32の軸方向全長に亘って発泡原料を案内する原料ランナ部28とが形成される。各ロール成形空間32の両端には、軸状部材Sを水平に支持する支持部42,42が設けられる。注入口30から注入された発泡原料は、原料ランナ部28を上昇して、最下段に位置するロール成形空間32の下方から上方のロール成形空間32へ順次充填される。
【解決手段】発泡体ロール成形型20の内部には、得るべき発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう形成されたロール成形空間32が上下に重ねて複数連設されたキャビティ部26が形成される。キャビティ部26の下方には、メカニカルフロス法により得られた発泡原料が注入される注入口30と、注入口30から最下段のロール成形空間32の軸方向全長に亘って発泡原料を案内する原料ランナ部28とが形成される。各ロール成形空間32の両端には、軸状部材Sを水平に支持する支持部42,42が設けられる。注入口30から注入された発泡原料は、原料ランナ部28を上昇して、最下段に位置するロール成形空間32の下方から上方のロール成形空間32へ順次充填される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体ロール成形型および発泡体ロール成形方法に関し、更に詳細には、メカニカルフロス(機械的攪拌)法により得られた発泡原料から発泡体ロールを成形する発泡体ロール成形型と、この発泡体ロール成形型を使用した発泡体ロールの成形方法に関するである。
【背景技術】
【0002】
図10は、コピー機、プリンター、ファクシミリその他事務機器等に使用される給紙ローラまたは搬送用ローラ等の非導電性ロールや、転写ローラまたは静電ローラ等の導電性ロールとなる円柱状の発泡体ロールURを示した斜視図である。この発泡体ロールURは、窒素に代表される不活性の造泡用気体を「メカニカルフロス(機械的攪拌)法」により原料に混合した造泡用気体混合済みの液状原料(以下「発泡原料」云う)を、図8に示す発泡体ロール成形型10に注入して加熱硬化させて成形したものである。なお、前述した転写ローラや静電ローラは、成形された発泡体ロールURの外周面を切削すると共に研磨することにより得られる。
【0003】
一般的に、メカニカルフロス法により得られた発泡原料から成形された発泡成形体は、(a)発泡成形体の内部に形成される気泡の大きさが均一である、(b)気泡が均一に分散するので発泡成形体の全体が均質となる、(c)各気泡の形状の異方性が小さい、等の有効な利点がある。このため、前述した発泡原料から成形された発泡体ロールURは、その外周面における押圧力が一定となるため、前述した給紙ローラ、搬送ローラ、転写ローラや静電ローラに好適に実施され得る。
【0004】
図8は、発泡体ロールURを成形する発泡体ロール成形型10の要部概略斜視図である。この発泡体ロール成形型10は、互いに型閉め可能な2つの成形型を備え、両成形型を型閉めすることにより、発泡体ロールURの外形に合わせて形成された複数のロール成形空間14からなるキャビティ部12が、垂直に立設した状態で横並び状に画成されている。前述したキャビティ部12は、隣接する2つのロール成形空間14,14が1つの対をなし、各々の対毎に下方で連通すると共に1つの注入口16が設けられている。従って、注入口16から注入された発泡原料UMは、2つの各ロール成形空間14,14内を上昇しながら充填されるようになる。そして、各ロール成形空間14,14内に充填された発泡原料UMは、発泡体ロール成形型10に装備された加熱手段(図示せず)によりキャビティ部12の壁面を所定温度に加熱することにより、硬化が進行して前述した発泡体ロールURが成形される。
【0005】
なお、前述した給紙ローラ、搬送ローラ、転写ローラまたは静電ローラはシャフトが挿通されるため、前述した各ロール成形空間14には、シャフトまたは該シャフトと同径のダミーシャフトである軸状部材Sが、その上・下端部を成形型10で支持されて垂直にセットされる。このような構成の発泡体ロール成形型は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許第3305914号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで前述した発泡原料UMは、所定温度に加熱したロール成形空間14内に注入されるため、注入時に硬化が進行しつつ該キャビティ部12に充填されるので、各ロール成形空間14への発泡原料UMの充填は可能な限り短時間で完了することが望ましい。しかし、各ロール成形空間14は柱状で水平断面積が小さいため、発泡原料UMの注入量を増量すると該ロール成形空間14内での該発泡原料UMの液面上昇速度が大きくなり、ロール成形空間14内に存在する空気が発泡原料UM内に取り込まれて、成形された発泡体ロールUR内にボイド(内部空洞)やピンホール等が形成され易くなる。しかも、ロール成形空間14の最下端から最上端まで軸状部材Sが延在し、キャビティ部12内での発泡原料UMの移動方向(上昇方向)と該軸状部材Sの延在方向とが一致しているので、図9に示すように、各ロール成形空間14内に充填される発泡原料UMには充填完了まで常に軸状部材Sを巻込む流れが生じ、該軸状部材Sの両側から巻込んだ発泡原料UMは反対側で衝突して乱流が発生するようになる。このような発泡原料UMの乱流が生じた部位では、成形された発泡体ロールURの外面に硬いミートラインが形成され、発泡体ロールURの外面部に硬度差が生じて成形不良が発生し易くなっていた。しかも、発泡原料UMの充填に伴う前述した問題は、該発泡原料UMの単位時間当たりの注入量(充填量)を少なくすれば解決できるが、発泡原料UMの注入時間が長くなることにより生産効率が低下する不都合が発生する。
【0007】
更に、図8に示した従来の発泡体ロール成形型10は、キャビティ部12の上端部および下端部で軸状部材Sを垂直に支持するよう構成されるが、ロール成形空間14の下方に注入口16が設けられているため、該注入口16の配設位置や開口形状が制限される構造となっている。また、注入口16とロール成形空間14の下端部との間に軸状部材Sが延在しているため、該注入口16からロール成形空間14への発泡原料UMのスムーズな流動が阻害されるおそれもある。更に、注入口16とロール成形空間14とが近いので、該注入口16から発泡原料UMを加圧注入した場合、注入された該発泡原料UMが安定化する前にロール成形空間14内へ充填されてしまい、成形された発泡体ロールURの下端側が均一に成形されないこともあり得る。
【0008】
そこで本発明は、前述した従来の技術に内在している課題に鑑み、発泡体ロールを成形するに際し、成形不良発生を抑制して成形効率を向上させ得る発泡体ロール成形型と、この発泡体ロール成形型を利用した発泡体ロールの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する発泡体ロール成形型であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう該発泡体ロールの外形に合わせて形成されたロール成形空間が上下に重ねて複数連設され、上下に隣接する各ロール成形空間が、該ロール成形空間の軸方向全長に亘って連通部で互いに連通するキャビティ部と、
前記各ロール成形空間に対応して前記キャビティ部に設けられ、ロール成形空間に前記軸状部材を水平に延在するよう支持する支持部と、
前記キャビティ部の下方に設けられ、メカニカルフロス法により得られた発泡原料が注入される注入口と、
前記注入口から最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って前記発泡原料を案内する原料ランナ部とを備えることを特徴とする。
【0010】
従って、請求項1に係る発明によれば、キャビティ部に設けた各ロール成形空間を水平に画成したので、該ロール成形空間の水平断面積が大きくなり、単位時間当りの注入量を増量しても、該キャビティ部内での発泡原料の液面上昇速度を抑えることができる。しかも、軸状部材がロール成形空間に水平に支持されているので、発泡原料に該軸状部材が浸漬される際の該発泡原料の巻込み方向と上昇方向が略同じくなって乱流の発生を抑制でき、発泡体ロールにボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。従って、発泡体ロールの外周面および内面が均質となり、成形不良発生を抑制して発泡体ロールの成形効率の向上を図り得る。また、前述したように、発泡原料の注入量を増加してもロール成形空間内における該発泡原料の液面上昇速度を抑えることができるので、注入量の増加による成形不良発生も抑制されると共に、原料注入時間の短縮による成形効率の向上を図り得る。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
前記注入口は、前記最下段のロール成形空間の軸方向中央から下方に位置して設けられ、
前記原料ランナ部は、前記注入口と最下段のロール成形空間とを連通すると共に該注入口を挟んで対称な形状で形成されることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、注入口から注入された発泡原料が原料ランナによりキャビティ部に向けてスムーズに案内され、最下段のロール成形空間の軸方向全長に均等に供給されると共に液面上昇も均一となるので、成形不良発生を抑制して成形効率の向上を図り得る。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
前記支持部は、前記各ロール成形空間の軸方向両側に設けられることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、ロール成形空間内に水平に延在する軸状部材の両端部が支持されるので、発泡原料の充填時に該軸状部材が動いたり変形することを防止し得る。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する方法であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう形成されて、軸方向全長に亘って互いに連通するロール成形空間を上下に重ねて複数画成し、
前記各ロール成形空間内に、前記軸状部材を水平に支持させ、
メカニカルフロス法により得られた発泡原料を、最下段に位置するロール成形空間の下方に設けた注入口から注入して、該最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って広がるように該ロール成形空間に向けて案内し、
最下段に位置するロール成形空間の下方から上方のロール成形空間に向けて、各ロール成形空間の軸方向全長に亘って該発泡原料を順次充填させて硬化させることを要旨とする。
【0014】
従って、請求項4に係る発明によれば、水平に延在すると共に上下に重ねて連通するように画成した各ロール成形空間に、該ロール成形空間の軸方向全長に亘って下方から発泡原料を充填するようにしたので、発泡原料の注入量を増加させてもロール成形空間内での該発泡原料の液面上昇速度を抑えることができ、発泡原料の注入時間の短縮による成形効率の向上を図り得る。また、ロール成形空間内に支持した軸状部材を発泡原料が巻込む際の乱流の発生を抑制できるので、成形された発泡体ロールにボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る発泡体ロール成形型によれば、発泡体ロールを成形するに際し、キャビティ部への発泡原料の注入量を増加しても、ロール成形空間内での該発泡原料の液面上昇速度を抑え得るので、発泡体ロールの外周部にボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを抑制し得る。また、原料ランナによりキャビティ部に対して発泡原料を安定して供給できると共に、ロール成形空間内で軸状部材を適切に支持し得る。
また、別の発明に係る発泡体ロールの成形方法によれば、発泡原料の注入量を増量してもロール成形空間内での該発泡原料の液面上昇速度を抑え得るので、注入時間短縮による成形効率の向上を図り得ると共に、成形不良発生を抑制できるのでこれによる成形効率の向上も図り得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に発泡体ロール成形型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお実施例では、図1に示すように、発泡体ロール成形型20の縦方向(垂直方向)を上下方向と指称し、該成形型20の横方向を水平方向または軸方向と指称すると共に、横方向と水平に交差する方向を前後方向と指称する。
【実施例】
【0017】
図3は、実施例に係る発泡体ロール成形型20を、型開きした状態で示した概略斜視図である。実施例の発泡体ロール成形型20は、図示省略した型フレームまたは支持台等に設置されて、水平方向において互いに型閉め可能な矩形プレート状の第1成形型22および第2成形型24を備えている。そして、第1成形型22および第2成形型24を型閉めすると、図1および図2に示すように、複数の前述した発泡体ロールURを同時に成形可能なキャビティ部26と、第1成形型22に形成した注入口30とキャビティ部26の下部とを連通する原料ランナ部28とが、型内部に画成されるよう構成されている。すなわち、実施例の発泡体ロール成形型20は、後述するように、20個のロール成形空間32が上下に連設されたキャビティ部26を備え、1回の成形工程で20個の発泡体ロールURを連設した状態で成形可能となっている。
【0018】
第1成形型22と第2成形型24とは、図3に示すように、基本的に対称形状に形成されており、第1成形型22には、型外と原料ランナ部28とを連通する発泡原料UMの注入用の注入口30が形成されている。従って、第1成形型22と第2成形型24との同一部位は同一の符号で指示する。
【0019】
第1成形型22は、図2および図3に示すように、キャビティ部26における該第1成形型22側の形状を規定するキャビティ壁部34と、キャビティ壁部34の下方に連設されて原料ランナ部28における該第1成形型22側の形状を規定するランナ壁部36とが夫々凹設されている。また第2成形型24は、図2および図3に示すように、キャビティ部26における該第2成形型24側の形状を規定するキャビティ壁部34と、キャビティ壁部34の下方に連設されて原料ランナ部28における該第2成形型24側の形状を規定するランナ壁部36とが夫々凹設されている。各々のキャビティ壁部34には、上下方向へは凹円弧状に延在し、水平方向へは直線状に延在する凹状円樋面38が、上下方向へ縦並び状に複数(実施例では20個)設けられており、該キャビティ壁部34は所謂波板状に形成されている。すなわち各凹状円樋面38は、半円弧よりも短い円弧長の凹状を呈しており、上下に隣接する凹状円樋面38同士は、水平に延在する上下の稜縁部で相互に連設されている。
【0020】
従って、第1成形型22と第2成形型24とを型閉めすると、図1および図2に示すように、第1成形型22のキャビティ壁部34に設けた各凹状円樋面38と第2成形型24のキャビティ壁部34に設けた各凹状円樋面38とが夫々対向し、対向する各凹状円樋面38,38の間に、直径D、軸方向全長Lのロール成形空間32が水平に画成される(図1)。すなわちキャビティ部26には、得るべき発泡体ロールURの軸方向が水平に延在するよう該発泡体ロールURの外形に合わせて形成された20個のロール成形空間32が、上下に重ねて連設されている。
【0021】
なお前述したように、各凹状円樋面38が半円弧より短い円弧長に形成されているため、上下に隣接する各ロール成形空間32の境界部には、該ロール成形空間32の軸方向全長Lに亘って開口幅Wの連通部40が形成され、この連設部40により上下に隣接する各ロール成形空間32同士が互いに連通している。なお、図4(b)に示すように、連通部40の開口幅Wは、キャビティ部26に充填される発泡原料UMの液面上昇に支障を来たすことを回避するため、ロール成形空間32の直径D(前後方向における最大幅)の15%以上に設定することが望ましい。
【0022】
また、図3に示すように、第1成形型22および第2成形型24において、キャビティ部26の左右方向両端には、各ロール成形空間32内に前述した軸状部材Sを軸方向において水平に支持する支持部42,42が設けられている。各支持部42は、第1成形型22および第2成形型24に、水平に延在する半円の凹状円樋面に形成されており、第1成形型22および第2成形型24を型閉めすることで、軸状部材Sの端部を前後から挟持するよう構成されている。
【0023】
第1成形型22に形成された注入口30は、図2に示すように、キャビティ部26の下方において、ロール成形空間32の軸方向中央の垂直下方に位置して設けられ、該第1成形型22の型外面から原料ランナ部28の下部に向けて適宜上方傾斜する直線状に延在している。これにより、注入口30と原料ランナ部28とが鈍角状に連設され、原料注入ノズルNから注入口30内へ射出された発泡原料UMが、原料ランナ部28内へスムーズに注入され得るよう考慮されている。
【0024】
第1成形型22に設けたランナ壁部36は、図2、図3および図4(a)に示すように、注入口30からキャビティ壁部34に向けて徐々に拡開するように形成され、キャビティ壁部34との連設部位においては、該キャビティ壁部34と略同一の幅となっている。また、第1成形型22における第2成形型24との当接面からのランナ壁部36の深さは、図2に示すように、注入口30側が最も浅く、該注入口30側からキャビティ壁部34側に向かうにつれて徐々に深くなり、該キャビティ壁部34側が最も深くなっている。一方、第2成形型24に設けたランナ壁部36は、第1成形型22に設けたランナ壁部36と、前後方向において対称形状に形成されている。従って、第1成形型22と第2成形型24とを型閉めして両ランナ壁部36,36により画成された原料ランナ部28は、図2および図4(a)に示すように、注入口30側が最も狭く、キャビティ部26側に近づくにつれて軸方向および前後方向の両方向において徐々に幅広となっており、原料ランナ部28の水平断面積は注入口30側からキャビティ部26側に向かうにつれて漸次拡大する。すなわち原料ランナ部28は、注入口30とキャビティ部26における最下段のロール成形空間32とを連通すると共に該注入口30を挟んで左右方向および前後方向の両方向において対称な形状に形成され、注入口30から最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘る長さに発泡原料UMを案内する。
【0025】
従って、注入口30を介して原料ランナ部28内へ、所定量の発泡原料UMを単位時間当り一定で連続注入する場合には、図5(a)および図5(b)に示すように、原料ランナ部28内に充填開始された時点での発泡原料UMの液面上昇速度が大きいが、充填量が増加して液面が上昇するにつれて液面上昇速度が漸次小さくなる。そして、原料ランナ部28がキャビティ部26に向けて徐々に拡開する形状となっているので、注入口30から注入された発泡原料UMが原料ランナ部28からキャビティ部26に向けてスムーズに案内され、最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘り平均的に供給されると共に液面上昇も均一となる。
【0026】
第1成形型22と第2成形型24との上部には、図2および図3に示すように、型閉めした際にキャビティ部26内と型外とを連通する連通孔44が複数形成されている。各連通孔44は、注入口30を介して注入される発泡原料UMがキャビティ部26内に充填される際に、該キャビティ部26内に存在する空気の排気口として機能すると共に、キャビティ部26内に発泡原料UMが完全に充填された際には、該発泡原料UMのオーバーフローを許容する機能も有している。すなわち、各連通孔44から発泡原料UMがオーバーフローすることで、キャビティ部26内に該発泡原料UMが完全に充填されたことを確認し得る。また、各連通孔44が形成された上面部には、第1成形型22と第2成形型24とを型閉めすると、該上面部の外周縁部より一段低い陥凹部46が形成されている。この陥凹部46は、各連通孔44からオーバーフローした発泡原料UMが型外へ零れるのを防止する所謂原料溜めとして機能する。
【0027】
前述のように構成された実施例の発泡体ロール成形型20では、次のようにして発泡体ロールURが成形される。先ず、図3に示すように、第1成形型22および第2成形型24を型開きして、例えば第2成形型24に設けた各支持部42,42間に軸状部材Sをセットし、全てのロール成形空間32に対応する軸状部材Sのセットが完了したら第1成形型22と第2成形型24とを互いに型閉めする。これにより、図1に示すように、得るべき発泡体ロールURの軸方向が水平に延在するよう形成されて、軸方向全長Lに亘って互いに連通するよう上下に重ねた複数画成された各ロール成形空間32内に、各軸状部材Sを水平に延在するよう支持させる。
【0028】
第1成形型22と第2成形型24との型閉めが完了して、図示省略した加熱手段によりキャビティ部26の壁面が所定温度に加熱されたら、図5(a)および図5(b)に示すように、メカニカルフロス法により得られた発泡原料UMを、注入口30に当接した原料注入ノズルNから該注入口30を介して原料ランナ部28内へ注入する作業を開始する。原料注入ノズルNから原料ランナ部28内へ発泡原料UMを加圧注入することで、該原料ランナ部28内に充填された発泡原料UMの液面が徐々に上昇する。なお、発泡原料UMの液面上昇速度は液面が上昇するにつれて徐々に小さくなり、かつ液面が上昇するにつれて液面付近では加圧注入による影響がなくなり安定化する。
【0029】
そして、図6(a)および図6(b)に示すように、発泡原料UMが原料ランナ部28内に完全に充填されると、キャビティ部26における最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lまで該発泡原料UMが広がる。これにより発泡原料UMは、水平に形成された最下段のロール成形空間32内に、該ロール成形空間32の軸方向全長Lに亘って平均的に充填されていく。そして発泡原料UMは、最下段のロール成形空間32内をゆっくりとした液面上昇速度で上昇し、図6(a)および図7(a)に示すように、ロール成形空間32に水平に支持された軸状部材Sの該ロール成形空間32内に露出した部分の全長に亘って同時に接触し、該軸状部材Sは上昇する発泡原料UMに対し全長に亘って徐々に浸漬される。
【0030】
更に、図7(b)に示すように、発泡原料UMの液面が上昇して、軸状部材Sが発泡原料UMに完全に浸漬される際には、軸状部材Sを挟んで前後両側から上昇した発泡原料UMが、軸状部材Sの上で合流して該軸状部材Sを巻込むようになる。この発泡原料UMの巻込みにおいて、軸状部材Sの外周面近傍では乱流が僅かに発生するが、発泡原料UMの巻込み方向および該発泡原料UMの液面の上昇方向とが略同一となるので(図7(b)に矢印表示)、発泡原料UMの巻込みによる乱流の発生は最小限に抑えられる。また、軸状部材Sの外周面近傍で乱流が発生したとしても、発泡原料UMの液面が更に上昇すると該乱流による影響がなくなり、該発泡原料UMの液面は再び安定化する。
【0031】
そして、発泡原料UMが最下段のロール成形空間32内に完全に充填されると、図7(c)に示すように、連通部40を介して上方のロール成形空間32に発泡原料UMが上昇するようになる。なお、発泡原料UMが連通部40を追加する際に乱流が殆ど発生せず、該発泡原料UMは安定した状態で上方のロール成形空間32へ移動する。
【0032】
以降、下方のロール成形空間32から上方のロール成形空間32へ順次発泡原料UMが充填され、最上段のロール成形空間32に発泡原料UMが完全に充填されたら、原料注入ノズルNによる発泡原料UMの注入を停止し、所要のキュアタイムに亘って成形型20を型閉め状態に保持する。そして、所要のキュアタイムが経過して、キャビティ部26内に充填された発泡原料UMが硬化したら、第1成形型22と第2成形型24とを型開きして、キャビティ部26内で連結した状態で成形された各発泡体ロールURを取出す。なお、各発泡体ロールURは後工程において切断して各々分離すると共に、軸状部材Sがダミーシャフトである場合には、各発泡体ロールURから該軸状部材Sを脱抜する。
【0033】
なお、実施例の発泡体ロール成形型20では、図7に示すように、ロール成形空間32の水平断面積は上下方向において増減変化するが、該ロール成形空間32の前後方向における最大幅となる上下中心部分には軸状部材Sが水平に配設されているため、水平断面積の増減変化が小さくなっている。従って、ロール成形空間32内における発泡原料UMの液面上昇速度の変化は小さく、よって発泡原料UMが安定してロール成形空間32内に充填され得る。
【0034】
(成形試験)
本願発明者は、実施例の発泡体ロール成形型20による発泡体ロールURの成形試験を行なった。なお、図8に示した従来の発泡体ロール成形型10(従来例)と、原料ランナ部28を有さない(実施例と同一形状のキャビティ部26のみ設けた)発泡体ロール成形型(図示せず)についても、同様の成形試験を行なった。
なお、成形条件は次のようである。
・ロール成形空間32の数:20個(実施例)
: 2個(従来例)
:20個(比較例)
・ロール成形空間32の直径D:φ22mm
・ロール成形空間32の軸方向全長L:270mm
・軸状部材Sの直径:7mm
・原料密度:0.32g/cm3
【0035】
【表1】
【0036】
表1に、前述した成形条件における各発泡体ロール成形型の成形試験結果を示した。なお、本成形試験における成形良否の判定基準は、成形された発泡体ロールURの外周部に、直径0.8mm以上のピンホールが確認された場合には成形不良とした。そして、良否判定の基準は、成形効率を考慮したうえで、成形不良発生率が、2%以内であれば「◎(優秀)」、2%を越え5%以内であれば「○(良好)」、5%を越えた場合には「×(不可)」と判定した。
【0037】
表1に示すように、実施例の発泡体ロール成形型20においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでは成形不良発生率が1.0%、注入量が950g/minでは成形不良発生率が1.5%、注入量が1,400g/minでは成形不良発生率が2.0%、注入量が2,100g/minでは成形不良発生率が4.0%であった。従って、実施例の発泡体ロール成形型20は、注入量を2,100g/minまで上げても、発泡原料UMの液面上昇速度が13.5mm/secに抑えれるため、成形不良発生率が4.0%に留まって成形効率の向上を好適に図り得る。
【0038】
これに対し、従来の発泡体ロール成形型10においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでも成形不良発生率が7.0%、注入量が950g/minでは成形不良発生率が10.0%となってしまい、成形不良の発生率が高くて成形効率が低いことが確認できた。すなわち、従来の発泡体ロール成形型10においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでも該発泡原料UMの液面上昇速度が45.0mm/secまで上がるため、乱流発生による空気の取り込みによりピンホールが形成され易い。従って、従来の発泡体ロール成形型10においては、発泡原料UMの注入量を700g/min以下に抑えればピンホールの形成による成形不良発生率を抑制することはできるとしても、原料注入量を少なくすると注入に要する時間が長くなって発泡原料UMの硬化が進行してしまい、これによる成形不良発生率が増加して成形効率の向上を図り得ない。
【0039】
また、比較例の発泡体ロール成形型においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでも成形不良発生率が6.0%となり、同一の原料注入量における実施例の発泡体ロール成形型20での成形不良発生率(1.0%)と比較すると、成形不良発生率がかなり高くなっている。従って、実施例の発泡体ロール成形型20に設けた拡開形状の原料ランナ部28が、成形不良の発生を抑えるのに効果的であることが確認できた。
【0040】
以上説明した如く、実施例の発泡体ロール成形型20においては、キャビティ部26に設けた各ロール成形空間32を水平に画成したので、該ロール成形空間32の水平断面積が大きくなり、単位時間当りの注入量を増量しても、該キャビティ部26内での発泡原料UMの液面上昇速度を抑えることができる。しかも、軸状部材Sがロール成形空間32内に水平に支持されているので、発泡原料UMに該軸状部材Sが浸漬される際の該発泡原料UMの巻込み方向と上昇方向が略同じくなって乱流の発生を抑制でき、発泡体ロールURにボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。しかも、乱流が発生する部位が、軸状部材Sの近傍、すなわち成形される発泡体ロールURの中心部に近い部位であり、該発泡体ロールURの外周部に対応する部位においては乱流が殆ど発生しないから、発泡体ロールURの外周部にボイドやピンホールまたはミートライン等が形成され難い。従って、発泡体ロールURの外周面が均質となり、成形不良発生を抑制して発泡体ロールURの成形効率の向上を図り得る。また、前述したように、発泡原料UMの注入量を増加してもロール成形空間32内における該発泡原料UMの液面上昇速度を抑えることができるので、注入量の増加による成形不良発生も抑制されると共に、原料注入時間の短縮による成形効率の向上も期待できる。
【0041】
また、原料ライナ部28が、注入口30からキャビティ部26に向けて拡開した形状に形成されているので、注入口30から注入された発泡原料UMが原料ランナ部28からキャビティ部26に向けてスムーズに案内され、発泡原料UMを注入口30から加圧注入しても、該発泡原料UMがキャビティ部26へ到達する間に液面の安定化が図られる。しかも発泡原料UMは、最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘って平均的に供給されると共に液面上昇も均一となるので、成形不良発生を抑制して成形効率の向上を図り得る。
【0042】
更に、各ロール成形空間32にセットされる軸状部材Sは、各ロール成形空間32の軸方向両側に設けた支持部42,42により両端部が支持されるので、第1成形型22と第2成形型24との型閉め時や発泡原料の充填時に、該軸状部材Sが動いたり変形することを防止し得る。
【0043】
また、実施例の発泡体ロール成形型20を使用して発泡体ロールURを成形する際には、発泡原料UMの注入量を増量してもロール成形空間32内での該発泡原料UMの液面上昇速度を抑えることができ、発泡原料UMの注入時間の短縮による成形効率の向上を図り得る。また、ロール成形空間32内に支持した軸状部材Sを発泡原料UMが巻込む際の乱流の発生を抑制できるので、成形された発泡体ロールURの外周部にボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。
【0044】
(変更例)
本願発明の発泡体ロール成形型は、実施例に例示の態様に限定されず、様々な態様に変更可能である。
1.キャビティ部26に設けたロール成形空間32の配設数は、20個に限定されず、20個以上であってもよいし、20個以下であってもよい。
2.ロール成形空間32は、円柱状に限定されるものではなく、多角柱状としてもよい。なお多角柱状とする場合は、なるべく円柱状に近いものがよく、六角柱以上が好ましい。
3.キャビティ部26の上下に連設される各ロール成形空間32は、前述した実施例のように垂直方向に画成してもよいし、適宜の傾斜角度で斜めに連設されるようにしてもよい。この場合、ロール成形空間32の形状により、水平断面積の増減変化を更に小さくすることも可能である。
4.原料ランナ部28は、注入口30側からキャビティ部26側に向けて直線状に連続的に拡開する形状を例示したが、この原料ランナ部28の形状はこれに限定されない。すなわち原料ランナ部28は、キャビティ部26側が最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘る長さに開口したもとで、注入口30と最下段のロール成形空間32との間の途中形状は、実施例の形状の他に、曲線状に連続的に拡開する形状や、段階的(階段状)に拡開する形状等としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例に係る発泡体ロール成形型を、一部破断して示した概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線で破断した断面図であり、軸状部材を省略した状態で示している。
【図3】実施例の発泡体ロール成形型を構成する第1成形型および第2成形型を、型開きした状態で示した斜視図である。
【図4】(a)は、原料ランナ部の形状を示した要部正面図であり、(b)は、ロール成形空間の直径と、連設部の開口幅とを示した部分断面図である。
【図5】(a)は、原料ランナ部に注入した発泡原料の液面上昇速度の変化を示した説明図であり、(b)は、図5(a)のV−V線断面図である。
【図6】(a)は、キャビティ部における最下段のロール成形空間内に発泡原料が充填される状態を示した説明図であり、(b)は、図6(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】(a)は、ロール成形空間に充填される発泡原料が軸状部材の外周面に接触した状態を示した断面図であり、(b)は、充填される発泡原料に軸状部材が浸漬され、該発泡原料が軸状部材を巻込む状態を示した断面図であり、(c)は、下方のロール成形空間に発泡原料が完全に充填され、該発泡原料が連通部を介して上方のロール成形空間内に充填され始めた状態を示した断面図である。
【図8】従来の発泡体ロール成形型の概略構成を示した説明図である。
【図9】図8の発泡体ロール成形型に内在する問題点を示した概略図である。
【図10】発泡体ロールを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
26 キャビティ部,28 原料ランナ部,30 注入口,32 ロール成形空間
40 連通部,42 支持部,L 軸方向全長(ロール成形空間32の)
S 軸状部材,UM 発泡原料,UR 発泡体ロール
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体ロール成形型および発泡体ロール成形方法に関し、更に詳細には、メカニカルフロス(機械的攪拌)法により得られた発泡原料から発泡体ロールを成形する発泡体ロール成形型と、この発泡体ロール成形型を使用した発泡体ロールの成形方法に関するである。
【背景技術】
【0002】
図10は、コピー機、プリンター、ファクシミリその他事務機器等に使用される給紙ローラまたは搬送用ローラ等の非導電性ロールや、転写ローラまたは静電ローラ等の導電性ロールとなる円柱状の発泡体ロールURを示した斜視図である。この発泡体ロールURは、窒素に代表される不活性の造泡用気体を「メカニカルフロス(機械的攪拌)法」により原料に混合した造泡用気体混合済みの液状原料(以下「発泡原料」云う)を、図8に示す発泡体ロール成形型10に注入して加熱硬化させて成形したものである。なお、前述した転写ローラや静電ローラは、成形された発泡体ロールURの外周面を切削すると共に研磨することにより得られる。
【0003】
一般的に、メカニカルフロス法により得られた発泡原料から成形された発泡成形体は、(a)発泡成形体の内部に形成される気泡の大きさが均一である、(b)気泡が均一に分散するので発泡成形体の全体が均質となる、(c)各気泡の形状の異方性が小さい、等の有効な利点がある。このため、前述した発泡原料から成形された発泡体ロールURは、その外周面における押圧力が一定となるため、前述した給紙ローラ、搬送ローラ、転写ローラや静電ローラに好適に実施され得る。
【0004】
図8は、発泡体ロールURを成形する発泡体ロール成形型10の要部概略斜視図である。この発泡体ロール成形型10は、互いに型閉め可能な2つの成形型を備え、両成形型を型閉めすることにより、発泡体ロールURの外形に合わせて形成された複数のロール成形空間14からなるキャビティ部12が、垂直に立設した状態で横並び状に画成されている。前述したキャビティ部12は、隣接する2つのロール成形空間14,14が1つの対をなし、各々の対毎に下方で連通すると共に1つの注入口16が設けられている。従って、注入口16から注入された発泡原料UMは、2つの各ロール成形空間14,14内を上昇しながら充填されるようになる。そして、各ロール成形空間14,14内に充填された発泡原料UMは、発泡体ロール成形型10に装備された加熱手段(図示せず)によりキャビティ部12の壁面を所定温度に加熱することにより、硬化が進行して前述した発泡体ロールURが成形される。
【0005】
なお、前述した給紙ローラ、搬送ローラ、転写ローラまたは静電ローラはシャフトが挿通されるため、前述した各ロール成形空間14には、シャフトまたは該シャフトと同径のダミーシャフトである軸状部材Sが、その上・下端部を成形型10で支持されて垂直にセットされる。このような構成の発泡体ロール成形型は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許第3305914号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで前述した発泡原料UMは、所定温度に加熱したロール成形空間14内に注入されるため、注入時に硬化が進行しつつ該キャビティ部12に充填されるので、各ロール成形空間14への発泡原料UMの充填は可能な限り短時間で完了することが望ましい。しかし、各ロール成形空間14は柱状で水平断面積が小さいため、発泡原料UMの注入量を増量すると該ロール成形空間14内での該発泡原料UMの液面上昇速度が大きくなり、ロール成形空間14内に存在する空気が発泡原料UM内に取り込まれて、成形された発泡体ロールUR内にボイド(内部空洞)やピンホール等が形成され易くなる。しかも、ロール成形空間14の最下端から最上端まで軸状部材Sが延在し、キャビティ部12内での発泡原料UMの移動方向(上昇方向)と該軸状部材Sの延在方向とが一致しているので、図9に示すように、各ロール成形空間14内に充填される発泡原料UMには充填完了まで常に軸状部材Sを巻込む流れが生じ、該軸状部材Sの両側から巻込んだ発泡原料UMは反対側で衝突して乱流が発生するようになる。このような発泡原料UMの乱流が生じた部位では、成形された発泡体ロールURの外面に硬いミートラインが形成され、発泡体ロールURの外面部に硬度差が生じて成形不良が発生し易くなっていた。しかも、発泡原料UMの充填に伴う前述した問題は、該発泡原料UMの単位時間当たりの注入量(充填量)を少なくすれば解決できるが、発泡原料UMの注入時間が長くなることにより生産効率が低下する不都合が発生する。
【0007】
更に、図8に示した従来の発泡体ロール成形型10は、キャビティ部12の上端部および下端部で軸状部材Sを垂直に支持するよう構成されるが、ロール成形空間14の下方に注入口16が設けられているため、該注入口16の配設位置や開口形状が制限される構造となっている。また、注入口16とロール成形空間14の下端部との間に軸状部材Sが延在しているため、該注入口16からロール成形空間14への発泡原料UMのスムーズな流動が阻害されるおそれもある。更に、注入口16とロール成形空間14とが近いので、該注入口16から発泡原料UMを加圧注入した場合、注入された該発泡原料UMが安定化する前にロール成形空間14内へ充填されてしまい、成形された発泡体ロールURの下端側が均一に成形されないこともあり得る。
【0008】
そこで本発明は、前述した従来の技術に内在している課題に鑑み、発泡体ロールを成形するに際し、成形不良発生を抑制して成形効率を向上させ得る発泡体ロール成形型と、この発泡体ロール成形型を利用した発泡体ロールの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する発泡体ロール成形型であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう該発泡体ロールの外形に合わせて形成されたロール成形空間が上下に重ねて複数連設され、上下に隣接する各ロール成形空間が、該ロール成形空間の軸方向全長に亘って連通部で互いに連通するキャビティ部と、
前記各ロール成形空間に対応して前記キャビティ部に設けられ、ロール成形空間に前記軸状部材を水平に延在するよう支持する支持部と、
前記キャビティ部の下方に設けられ、メカニカルフロス法により得られた発泡原料が注入される注入口と、
前記注入口から最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って前記発泡原料を案内する原料ランナ部とを備えることを特徴とする。
【0010】
従って、請求項1に係る発明によれば、キャビティ部に設けた各ロール成形空間を水平に画成したので、該ロール成形空間の水平断面積が大きくなり、単位時間当りの注入量を増量しても、該キャビティ部内での発泡原料の液面上昇速度を抑えることができる。しかも、軸状部材がロール成形空間に水平に支持されているので、発泡原料に該軸状部材が浸漬される際の該発泡原料の巻込み方向と上昇方向が略同じくなって乱流の発生を抑制でき、発泡体ロールにボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。従って、発泡体ロールの外周面および内面が均質となり、成形不良発生を抑制して発泡体ロールの成形効率の向上を図り得る。また、前述したように、発泡原料の注入量を増加してもロール成形空間内における該発泡原料の液面上昇速度を抑えることができるので、注入量の増加による成形不良発生も抑制されると共に、原料注入時間の短縮による成形効率の向上を図り得る。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
前記注入口は、前記最下段のロール成形空間の軸方向中央から下方に位置して設けられ、
前記原料ランナ部は、前記注入口と最下段のロール成形空間とを連通すると共に該注入口を挟んで対称な形状で形成されることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、注入口から注入された発泡原料が原料ランナによりキャビティ部に向けてスムーズに案内され、最下段のロール成形空間の軸方向全長に均等に供給されると共に液面上昇も均一となるので、成形不良発生を抑制して成形効率の向上を図り得る。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
前記支持部は、前記各ロール成形空間の軸方向両側に設けられることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、ロール成形空間内に水平に延在する軸状部材の両端部が支持されるので、発泡原料の充填時に該軸状部材が動いたり変形することを防止し得る。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する方法であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう形成されて、軸方向全長に亘って互いに連通するロール成形空間を上下に重ねて複数画成し、
前記各ロール成形空間内に、前記軸状部材を水平に支持させ、
メカニカルフロス法により得られた発泡原料を、最下段に位置するロール成形空間の下方に設けた注入口から注入して、該最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って広がるように該ロール成形空間に向けて案内し、
最下段に位置するロール成形空間の下方から上方のロール成形空間に向けて、各ロール成形空間の軸方向全長に亘って該発泡原料を順次充填させて硬化させることを要旨とする。
【0014】
従って、請求項4に係る発明によれば、水平に延在すると共に上下に重ねて連通するように画成した各ロール成形空間に、該ロール成形空間の軸方向全長に亘って下方から発泡原料を充填するようにしたので、発泡原料の注入量を増加させてもロール成形空間内での該発泡原料の液面上昇速度を抑えることができ、発泡原料の注入時間の短縮による成形効率の向上を図り得る。また、ロール成形空間内に支持した軸状部材を発泡原料が巻込む際の乱流の発生を抑制できるので、成形された発泡体ロールにボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る発泡体ロール成形型によれば、発泡体ロールを成形するに際し、キャビティ部への発泡原料の注入量を増加しても、ロール成形空間内での該発泡原料の液面上昇速度を抑え得るので、発泡体ロールの外周部にボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを抑制し得る。また、原料ランナによりキャビティ部に対して発泡原料を安定して供給できると共に、ロール成形空間内で軸状部材を適切に支持し得る。
また、別の発明に係る発泡体ロールの成形方法によれば、発泡原料の注入量を増量してもロール成形空間内での該発泡原料の液面上昇速度を抑え得るので、注入時間短縮による成形効率の向上を図り得ると共に、成形不良発生を抑制できるのでこれによる成形効率の向上も図り得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に発泡体ロール成形型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお実施例では、図1に示すように、発泡体ロール成形型20の縦方向(垂直方向)を上下方向と指称し、該成形型20の横方向を水平方向または軸方向と指称すると共に、横方向と水平に交差する方向を前後方向と指称する。
【実施例】
【0017】
図3は、実施例に係る発泡体ロール成形型20を、型開きした状態で示した概略斜視図である。実施例の発泡体ロール成形型20は、図示省略した型フレームまたは支持台等に設置されて、水平方向において互いに型閉め可能な矩形プレート状の第1成形型22および第2成形型24を備えている。そして、第1成形型22および第2成形型24を型閉めすると、図1および図2に示すように、複数の前述した発泡体ロールURを同時に成形可能なキャビティ部26と、第1成形型22に形成した注入口30とキャビティ部26の下部とを連通する原料ランナ部28とが、型内部に画成されるよう構成されている。すなわち、実施例の発泡体ロール成形型20は、後述するように、20個のロール成形空間32が上下に連設されたキャビティ部26を備え、1回の成形工程で20個の発泡体ロールURを連設した状態で成形可能となっている。
【0018】
第1成形型22と第2成形型24とは、図3に示すように、基本的に対称形状に形成されており、第1成形型22には、型外と原料ランナ部28とを連通する発泡原料UMの注入用の注入口30が形成されている。従って、第1成形型22と第2成形型24との同一部位は同一の符号で指示する。
【0019】
第1成形型22は、図2および図3に示すように、キャビティ部26における該第1成形型22側の形状を規定するキャビティ壁部34と、キャビティ壁部34の下方に連設されて原料ランナ部28における該第1成形型22側の形状を規定するランナ壁部36とが夫々凹設されている。また第2成形型24は、図2および図3に示すように、キャビティ部26における該第2成形型24側の形状を規定するキャビティ壁部34と、キャビティ壁部34の下方に連設されて原料ランナ部28における該第2成形型24側の形状を規定するランナ壁部36とが夫々凹設されている。各々のキャビティ壁部34には、上下方向へは凹円弧状に延在し、水平方向へは直線状に延在する凹状円樋面38が、上下方向へ縦並び状に複数(実施例では20個)設けられており、該キャビティ壁部34は所謂波板状に形成されている。すなわち各凹状円樋面38は、半円弧よりも短い円弧長の凹状を呈しており、上下に隣接する凹状円樋面38同士は、水平に延在する上下の稜縁部で相互に連設されている。
【0020】
従って、第1成形型22と第2成形型24とを型閉めすると、図1および図2に示すように、第1成形型22のキャビティ壁部34に設けた各凹状円樋面38と第2成形型24のキャビティ壁部34に設けた各凹状円樋面38とが夫々対向し、対向する各凹状円樋面38,38の間に、直径D、軸方向全長Lのロール成形空間32が水平に画成される(図1)。すなわちキャビティ部26には、得るべき発泡体ロールURの軸方向が水平に延在するよう該発泡体ロールURの外形に合わせて形成された20個のロール成形空間32が、上下に重ねて連設されている。
【0021】
なお前述したように、各凹状円樋面38が半円弧より短い円弧長に形成されているため、上下に隣接する各ロール成形空間32の境界部には、該ロール成形空間32の軸方向全長Lに亘って開口幅Wの連通部40が形成され、この連設部40により上下に隣接する各ロール成形空間32同士が互いに連通している。なお、図4(b)に示すように、連通部40の開口幅Wは、キャビティ部26に充填される発泡原料UMの液面上昇に支障を来たすことを回避するため、ロール成形空間32の直径D(前後方向における最大幅)の15%以上に設定することが望ましい。
【0022】
また、図3に示すように、第1成形型22および第2成形型24において、キャビティ部26の左右方向両端には、各ロール成形空間32内に前述した軸状部材Sを軸方向において水平に支持する支持部42,42が設けられている。各支持部42は、第1成形型22および第2成形型24に、水平に延在する半円の凹状円樋面に形成されており、第1成形型22および第2成形型24を型閉めすることで、軸状部材Sの端部を前後から挟持するよう構成されている。
【0023】
第1成形型22に形成された注入口30は、図2に示すように、キャビティ部26の下方において、ロール成形空間32の軸方向中央の垂直下方に位置して設けられ、該第1成形型22の型外面から原料ランナ部28の下部に向けて適宜上方傾斜する直線状に延在している。これにより、注入口30と原料ランナ部28とが鈍角状に連設され、原料注入ノズルNから注入口30内へ射出された発泡原料UMが、原料ランナ部28内へスムーズに注入され得るよう考慮されている。
【0024】
第1成形型22に設けたランナ壁部36は、図2、図3および図4(a)に示すように、注入口30からキャビティ壁部34に向けて徐々に拡開するように形成され、キャビティ壁部34との連設部位においては、該キャビティ壁部34と略同一の幅となっている。また、第1成形型22における第2成形型24との当接面からのランナ壁部36の深さは、図2に示すように、注入口30側が最も浅く、該注入口30側からキャビティ壁部34側に向かうにつれて徐々に深くなり、該キャビティ壁部34側が最も深くなっている。一方、第2成形型24に設けたランナ壁部36は、第1成形型22に設けたランナ壁部36と、前後方向において対称形状に形成されている。従って、第1成形型22と第2成形型24とを型閉めして両ランナ壁部36,36により画成された原料ランナ部28は、図2および図4(a)に示すように、注入口30側が最も狭く、キャビティ部26側に近づくにつれて軸方向および前後方向の両方向において徐々に幅広となっており、原料ランナ部28の水平断面積は注入口30側からキャビティ部26側に向かうにつれて漸次拡大する。すなわち原料ランナ部28は、注入口30とキャビティ部26における最下段のロール成形空間32とを連通すると共に該注入口30を挟んで左右方向および前後方向の両方向において対称な形状に形成され、注入口30から最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘る長さに発泡原料UMを案内する。
【0025】
従って、注入口30を介して原料ランナ部28内へ、所定量の発泡原料UMを単位時間当り一定で連続注入する場合には、図5(a)および図5(b)に示すように、原料ランナ部28内に充填開始された時点での発泡原料UMの液面上昇速度が大きいが、充填量が増加して液面が上昇するにつれて液面上昇速度が漸次小さくなる。そして、原料ランナ部28がキャビティ部26に向けて徐々に拡開する形状となっているので、注入口30から注入された発泡原料UMが原料ランナ部28からキャビティ部26に向けてスムーズに案内され、最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘り平均的に供給されると共に液面上昇も均一となる。
【0026】
第1成形型22と第2成形型24との上部には、図2および図3に示すように、型閉めした際にキャビティ部26内と型外とを連通する連通孔44が複数形成されている。各連通孔44は、注入口30を介して注入される発泡原料UMがキャビティ部26内に充填される際に、該キャビティ部26内に存在する空気の排気口として機能すると共に、キャビティ部26内に発泡原料UMが完全に充填された際には、該発泡原料UMのオーバーフローを許容する機能も有している。すなわち、各連通孔44から発泡原料UMがオーバーフローすることで、キャビティ部26内に該発泡原料UMが完全に充填されたことを確認し得る。また、各連通孔44が形成された上面部には、第1成形型22と第2成形型24とを型閉めすると、該上面部の外周縁部より一段低い陥凹部46が形成されている。この陥凹部46は、各連通孔44からオーバーフローした発泡原料UMが型外へ零れるのを防止する所謂原料溜めとして機能する。
【0027】
前述のように構成された実施例の発泡体ロール成形型20では、次のようにして発泡体ロールURが成形される。先ず、図3に示すように、第1成形型22および第2成形型24を型開きして、例えば第2成形型24に設けた各支持部42,42間に軸状部材Sをセットし、全てのロール成形空間32に対応する軸状部材Sのセットが完了したら第1成形型22と第2成形型24とを互いに型閉めする。これにより、図1に示すように、得るべき発泡体ロールURの軸方向が水平に延在するよう形成されて、軸方向全長Lに亘って互いに連通するよう上下に重ねた複数画成された各ロール成形空間32内に、各軸状部材Sを水平に延在するよう支持させる。
【0028】
第1成形型22と第2成形型24との型閉めが完了して、図示省略した加熱手段によりキャビティ部26の壁面が所定温度に加熱されたら、図5(a)および図5(b)に示すように、メカニカルフロス法により得られた発泡原料UMを、注入口30に当接した原料注入ノズルNから該注入口30を介して原料ランナ部28内へ注入する作業を開始する。原料注入ノズルNから原料ランナ部28内へ発泡原料UMを加圧注入することで、該原料ランナ部28内に充填された発泡原料UMの液面が徐々に上昇する。なお、発泡原料UMの液面上昇速度は液面が上昇するにつれて徐々に小さくなり、かつ液面が上昇するにつれて液面付近では加圧注入による影響がなくなり安定化する。
【0029】
そして、図6(a)および図6(b)に示すように、発泡原料UMが原料ランナ部28内に完全に充填されると、キャビティ部26における最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lまで該発泡原料UMが広がる。これにより発泡原料UMは、水平に形成された最下段のロール成形空間32内に、該ロール成形空間32の軸方向全長Lに亘って平均的に充填されていく。そして発泡原料UMは、最下段のロール成形空間32内をゆっくりとした液面上昇速度で上昇し、図6(a)および図7(a)に示すように、ロール成形空間32に水平に支持された軸状部材Sの該ロール成形空間32内に露出した部分の全長に亘って同時に接触し、該軸状部材Sは上昇する発泡原料UMに対し全長に亘って徐々に浸漬される。
【0030】
更に、図7(b)に示すように、発泡原料UMの液面が上昇して、軸状部材Sが発泡原料UMに完全に浸漬される際には、軸状部材Sを挟んで前後両側から上昇した発泡原料UMが、軸状部材Sの上で合流して該軸状部材Sを巻込むようになる。この発泡原料UMの巻込みにおいて、軸状部材Sの外周面近傍では乱流が僅かに発生するが、発泡原料UMの巻込み方向および該発泡原料UMの液面の上昇方向とが略同一となるので(図7(b)に矢印表示)、発泡原料UMの巻込みによる乱流の発生は最小限に抑えられる。また、軸状部材Sの外周面近傍で乱流が発生したとしても、発泡原料UMの液面が更に上昇すると該乱流による影響がなくなり、該発泡原料UMの液面は再び安定化する。
【0031】
そして、発泡原料UMが最下段のロール成形空間32内に完全に充填されると、図7(c)に示すように、連通部40を介して上方のロール成形空間32に発泡原料UMが上昇するようになる。なお、発泡原料UMが連通部40を追加する際に乱流が殆ど発生せず、該発泡原料UMは安定した状態で上方のロール成形空間32へ移動する。
【0032】
以降、下方のロール成形空間32から上方のロール成形空間32へ順次発泡原料UMが充填され、最上段のロール成形空間32に発泡原料UMが完全に充填されたら、原料注入ノズルNによる発泡原料UMの注入を停止し、所要のキュアタイムに亘って成形型20を型閉め状態に保持する。そして、所要のキュアタイムが経過して、キャビティ部26内に充填された発泡原料UMが硬化したら、第1成形型22と第2成形型24とを型開きして、キャビティ部26内で連結した状態で成形された各発泡体ロールURを取出す。なお、各発泡体ロールURは後工程において切断して各々分離すると共に、軸状部材Sがダミーシャフトである場合には、各発泡体ロールURから該軸状部材Sを脱抜する。
【0033】
なお、実施例の発泡体ロール成形型20では、図7に示すように、ロール成形空間32の水平断面積は上下方向において増減変化するが、該ロール成形空間32の前後方向における最大幅となる上下中心部分には軸状部材Sが水平に配設されているため、水平断面積の増減変化が小さくなっている。従って、ロール成形空間32内における発泡原料UMの液面上昇速度の変化は小さく、よって発泡原料UMが安定してロール成形空間32内に充填され得る。
【0034】
(成形試験)
本願発明者は、実施例の発泡体ロール成形型20による発泡体ロールURの成形試験を行なった。なお、図8に示した従来の発泡体ロール成形型10(従来例)と、原料ランナ部28を有さない(実施例と同一形状のキャビティ部26のみ設けた)発泡体ロール成形型(図示せず)についても、同様の成形試験を行なった。
なお、成形条件は次のようである。
・ロール成形空間32の数:20個(実施例)
: 2個(従来例)
:20個(比較例)
・ロール成形空間32の直径D:φ22mm
・ロール成形空間32の軸方向全長L:270mm
・軸状部材Sの直径:7mm
・原料密度:0.32g/cm3
【0035】
【表1】
【0036】
表1に、前述した成形条件における各発泡体ロール成形型の成形試験結果を示した。なお、本成形試験における成形良否の判定基準は、成形された発泡体ロールURの外周部に、直径0.8mm以上のピンホールが確認された場合には成形不良とした。そして、良否判定の基準は、成形効率を考慮したうえで、成形不良発生率が、2%以内であれば「◎(優秀)」、2%を越え5%以内であれば「○(良好)」、5%を越えた場合には「×(不可)」と判定した。
【0037】
表1に示すように、実施例の発泡体ロール成形型20においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでは成形不良発生率が1.0%、注入量が950g/minでは成形不良発生率が1.5%、注入量が1,400g/minでは成形不良発生率が2.0%、注入量が2,100g/minでは成形不良発生率が4.0%であった。従って、実施例の発泡体ロール成形型20は、注入量を2,100g/minまで上げても、発泡原料UMの液面上昇速度が13.5mm/secに抑えれるため、成形不良発生率が4.0%に留まって成形効率の向上を好適に図り得る。
【0038】
これに対し、従来の発泡体ロール成形型10においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでも成形不良発生率が7.0%、注入量が950g/minでは成形不良発生率が10.0%となってしまい、成形不良の発生率が高くて成形効率が低いことが確認できた。すなわち、従来の発泡体ロール成形型10においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでも該発泡原料UMの液面上昇速度が45.0mm/secまで上がるため、乱流発生による空気の取り込みによりピンホールが形成され易い。従って、従来の発泡体ロール成形型10においては、発泡原料UMの注入量を700g/min以下に抑えればピンホールの形成による成形不良発生率を抑制することはできるとしても、原料注入量を少なくすると注入に要する時間が長くなって発泡原料UMの硬化が進行してしまい、これによる成形不良発生率が増加して成形効率の向上を図り得ない。
【0039】
また、比較例の発泡体ロール成形型においては、発泡原料UMの注入量が700g/minでも成形不良発生率が6.0%となり、同一の原料注入量における実施例の発泡体ロール成形型20での成形不良発生率(1.0%)と比較すると、成形不良発生率がかなり高くなっている。従って、実施例の発泡体ロール成形型20に設けた拡開形状の原料ランナ部28が、成形不良の発生を抑えるのに効果的であることが確認できた。
【0040】
以上説明した如く、実施例の発泡体ロール成形型20においては、キャビティ部26に設けた各ロール成形空間32を水平に画成したので、該ロール成形空間32の水平断面積が大きくなり、単位時間当りの注入量を増量しても、該キャビティ部26内での発泡原料UMの液面上昇速度を抑えることができる。しかも、軸状部材Sがロール成形空間32内に水平に支持されているので、発泡原料UMに該軸状部材Sが浸漬される際の該発泡原料UMの巻込み方向と上昇方向が略同じくなって乱流の発生を抑制でき、発泡体ロールURにボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。しかも、乱流が発生する部位が、軸状部材Sの近傍、すなわち成形される発泡体ロールURの中心部に近い部位であり、該発泡体ロールURの外周部に対応する部位においては乱流が殆ど発生しないから、発泡体ロールURの外周部にボイドやピンホールまたはミートライン等が形成され難い。従って、発泡体ロールURの外周面が均質となり、成形不良発生を抑制して発泡体ロールURの成形効率の向上を図り得る。また、前述したように、発泡原料UMの注入量を増加してもロール成形空間32内における該発泡原料UMの液面上昇速度を抑えることができるので、注入量の増加による成形不良発生も抑制されると共に、原料注入時間の短縮による成形効率の向上も期待できる。
【0041】
また、原料ライナ部28が、注入口30からキャビティ部26に向けて拡開した形状に形成されているので、注入口30から注入された発泡原料UMが原料ランナ部28からキャビティ部26に向けてスムーズに案内され、発泡原料UMを注入口30から加圧注入しても、該発泡原料UMがキャビティ部26へ到達する間に液面の安定化が図られる。しかも発泡原料UMは、最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘って平均的に供給されると共に液面上昇も均一となるので、成形不良発生を抑制して成形効率の向上を図り得る。
【0042】
更に、各ロール成形空間32にセットされる軸状部材Sは、各ロール成形空間32の軸方向両側に設けた支持部42,42により両端部が支持されるので、第1成形型22と第2成形型24との型閉め時や発泡原料の充填時に、該軸状部材Sが動いたり変形することを防止し得る。
【0043】
また、実施例の発泡体ロール成形型20を使用して発泡体ロールURを成形する際には、発泡原料UMの注入量を増量してもロール成形空間32内での該発泡原料UMの液面上昇速度を抑えることができ、発泡原料UMの注入時間の短縮による成形効率の向上を図り得る。また、ロール成形空間32内に支持した軸状部材Sを発泡原料UMが巻込む際の乱流の発生を抑制できるので、成形された発泡体ロールURの外周部にボイドやピンホールまたはミートライン等が形成されることを防止し得る。
【0044】
(変更例)
本願発明の発泡体ロール成形型は、実施例に例示の態様に限定されず、様々な態様に変更可能である。
1.キャビティ部26に設けたロール成形空間32の配設数は、20個に限定されず、20個以上であってもよいし、20個以下であってもよい。
2.ロール成形空間32は、円柱状に限定されるものではなく、多角柱状としてもよい。なお多角柱状とする場合は、なるべく円柱状に近いものがよく、六角柱以上が好ましい。
3.キャビティ部26の上下に連設される各ロール成形空間32は、前述した実施例のように垂直方向に画成してもよいし、適宜の傾斜角度で斜めに連設されるようにしてもよい。この場合、ロール成形空間32の形状により、水平断面積の増減変化を更に小さくすることも可能である。
4.原料ランナ部28は、注入口30側からキャビティ部26側に向けて直線状に連続的に拡開する形状を例示したが、この原料ランナ部28の形状はこれに限定されない。すなわち原料ランナ部28は、キャビティ部26側が最下段のロール成形空間32の軸方向全長Lに亘る長さに開口したもとで、注入口30と最下段のロール成形空間32との間の途中形状は、実施例の形状の他に、曲線状に連続的に拡開する形状や、段階的(階段状)に拡開する形状等としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例に係る発泡体ロール成形型を、一部破断して示した概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線で破断した断面図であり、軸状部材を省略した状態で示している。
【図3】実施例の発泡体ロール成形型を構成する第1成形型および第2成形型を、型開きした状態で示した斜視図である。
【図4】(a)は、原料ランナ部の形状を示した要部正面図であり、(b)は、ロール成形空間の直径と、連設部の開口幅とを示した部分断面図である。
【図5】(a)は、原料ランナ部に注入した発泡原料の液面上昇速度の変化を示した説明図であり、(b)は、図5(a)のV−V線断面図である。
【図6】(a)は、キャビティ部における最下段のロール成形空間内に発泡原料が充填される状態を示した説明図であり、(b)は、図6(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】(a)は、ロール成形空間に充填される発泡原料が軸状部材の外周面に接触した状態を示した断面図であり、(b)は、充填される発泡原料に軸状部材が浸漬され、該発泡原料が軸状部材を巻込む状態を示した断面図であり、(c)は、下方のロール成形空間に発泡原料が完全に充填され、該発泡原料が連通部を介して上方のロール成形空間内に充填され始めた状態を示した断面図である。
【図8】従来の発泡体ロール成形型の概略構成を示した説明図である。
【図9】図8の発泡体ロール成形型に内在する問題点を示した概略図である。
【図10】発泡体ロールを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
26 キャビティ部,28 原料ランナ部,30 注入口,32 ロール成形空間
40 連通部,42 支持部,L 軸方向全長(ロール成形空間32の)
S 軸状部材,UM 発泡原料,UR 発泡体ロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する発泡体ロール成形型であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう該発泡体ロールの外形に合わせて形成されたロール成形空間が上下に重ねて複数連設され、上下に隣接する各ロール成形空間が、該ロール成形空間の軸方向全長に亘って連通部で互いに連通するキャビティ部と、
前記各ロール成形空間に対応して前記キャビティ部に設けられ、ロール成形空間に前記軸状部材を水平に延在するよう支持する支持部と、
前記キャビティ部の下方に設けられ、メカニカルフロス法により得られた発泡原料が注入される注入口と、
前記注入口から最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って前記発泡原料を案内する原料ランナ部とを備える
ことを特徴とする発泡体ロール成形型。
【請求項2】
前記注入口は、前記最下段のロール成形空間の軸方向中央から下方に位置して設けられ、
前記原料ランナ部は、前記注入口と最下段のロール成形空間とを連通すると共に該注入口を挟んで対称な形状で形成される請求項1記載の発泡体ロール成形型。
【請求項3】
前記支持部は、前記各ロール成形空間の軸方向両側に設けられる請求項1または2記載の発泡体ロール成形型。
【請求項4】
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する方法であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう形成されて、軸方向全長に亘って互いに連通するロール成形空間を上下に重ねて複数画成し、
前記各ロール成形空間内に、前記軸状部材を水平に支持させ、
メカニカルフロス法により得られた発泡原料を、最下段に位置するロール成形空間の下方に設けた注入口から注入して、該最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って広がるように該ロール成形空間に向けて案内し、
最下段に位置するロール成形空間の下方から上方のロール成形空間に向けて、各ロール成形空間の軸方向全長に亘って該発泡原料を順次充填させて硬化させる
ことを特徴とする発泡体ロールの成形方法。
【請求項1】
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する発泡体ロール成形型であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう該発泡体ロールの外形に合わせて形成されたロール成形空間が上下に重ねて複数連設され、上下に隣接する各ロール成形空間が、該ロール成形空間の軸方向全長に亘って連通部で互いに連通するキャビティ部と、
前記各ロール成形空間に対応して前記キャビティ部に設けられ、ロール成形空間に前記軸状部材を水平に延在するよう支持する支持部と、
前記キャビティ部の下方に設けられ、メカニカルフロス法により得られた発泡原料が注入される注入口と、
前記注入口から最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って前記発泡原料を案内する原料ランナ部とを備える
ことを特徴とする発泡体ロール成形型。
【請求項2】
前記注入口は、前記最下段のロール成形空間の軸方向中央から下方に位置して設けられ、
前記原料ランナ部は、前記注入口と最下段のロール成形空間とを連通すると共に該注入口を挟んで対称な形状で形成される請求項1記載の発泡体ロール成形型。
【請求項3】
前記支持部は、前記各ロール成形空間の軸方向両側に設けられる請求項1または2記載の発泡体ロール成形型。
【請求項4】
軸心に軸状部材を挿通した状態で発泡体ロールを成形する方法であって、
得るべき前記発泡体ロールの軸方向が水平に延在するよう形成されて、軸方向全長に亘って互いに連通するロール成形空間を上下に重ねて複数画成し、
前記各ロール成形空間内に、前記軸状部材を水平に支持させ、
メカニカルフロス法により得られた発泡原料を、最下段に位置するロール成形空間の下方に設けた注入口から注入して、該最下段のロール成形空間の軸方向全長に亘って広がるように該ロール成形空間に向けて案内し、
最下段に位置するロール成形空間の下方から上方のロール成形空間に向けて、各ロール成形空間の軸方向全長に亘って該発泡原料を順次充填させて硬化させる
ことを特徴とする発泡体ロールの成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−36565(P2010−36565A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205802(P2008−205802)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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