説明

発泡成形体及び基板搬送容器

【課題】重量物の搬送時にも発泡成形体が割れたり変形し難い基板搬送容器の提供。
【解決手段】メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られる基板搬送容器であって、基板搬送容器を構成する発泡成形体は、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であることを特徴とする基板搬送容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の搬送においても割れたり変形せず、緩衝性と寸法安定性に優れた容器を製造することが可能な発泡成形体及び基板搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板を多数枚、緩衝保持して搬送するための基板搬送容器として、例えば特許文献1,2に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ガラス基板を水平に収容するための複数の収納部がトレイの上面に形成されたポリオレフィン系樹脂発泡体からなるガラス基板搬送用トレイであって、該トレイの収納部はガラス基板が収容される底面と底面を取り囲む側壁とを有し、前記底面における周縁に凹部を有し、前記側壁の中でも外側に位置する側壁の外周であって側壁よりも低い位置に形成されたフランジ部と、トレイの裏面に形成され、一方のガラス基板搬送用トレイを他方のガラス基板搬送用トレイに重ね合わせたときに下側のガラス基板搬送用トレイの側壁の中でも外側に位置する側壁と前記フランジ部とで形成されるL字状空間に入り込むように形成された突条部とを有すること、前記複数の収納部が複数行及び複数列の行列状に配列され、行方向又は列方向に配列された複数の収納部における隣接する収納部間に位置する側壁の上面に凹部を有すること、前記側壁の中でも最も外側に位置する側壁は、その内壁面に凹部を有すること、及び、前記トレイは、その下面に、トレイを重ねた時に、下に位置するトレイの上面における収納部の空間内に進入する突出部が形成されて成ること、を特徴とするガラス基板搬送用トレイが開示されている。
【0004】
特許文献2には、層構造を有する底板と、前記底板上に設けられた枠板と、を有することを特徴とする搬送体が開示されている。搬送体1は、底板3および底板3上に設けられた枠板5からなっており、底板3には底板3を貫通する孔7が複数個設けられている。底板3は、スチロール板9およびスチロール板9の上下に貼り付けられたFRP板11a、11bからなる。また、FRP板11a、11bには樹脂シート13a、13bが貼り付けられ、スチロール板9、FRP板11a、11bおよび樹脂シート13a、13bの側面には樹脂コート15が塗布されている。
【0005】
また、本発明のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に関する従来技術として、特許文献3には、分散剤を含む水性媒質中に、メタロセン化合物を触媒として重合され、無機核剤を含む無架橋で直鎖状の低密度ポリエチレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系モノマー50〜800質量部と、前記スチレン系モノマー100質量部当たり0.1〜0.9質量部の重合開始剤とを分散させる工程と、得られた分散液を前記スチレン系モノマーが実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系モノマーを前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させる工程と、前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の結晶化ピーク温度をT℃としたとき(T+10)℃〜(T+35)℃の温度で、前記スチレン系モノマーの重合を行ってスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を製造する工程とからなるスチレン改質直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3969965号公報
【特許文献2】特開2006−173363号公報
【特許文献3】WO2006/027944号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたガラス基板搬送用トレイは、ポリオレフィン系樹脂発泡体のみから形成され、この樹脂は柔軟な素材であるため、これを用いて大型のガラス基板等の搬送用容器を製造した場合、トレイのたわみが大きくなり、搬送時の衝撃等でガラスが破損する恐れがある。
【0007】
また特許文献2に開示された搬送体は、複合製品であるため、各種素材を組み合わせることによって剛性、粘りのある搬送容器を得ることができるが、各部を別々に製造して後加工により組み立てる必要があることから、量産性に欠け、高コストな搬送容器となってしまう問題がある。
【0008】
素板ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマ表示装置用ガラス基板、これらのガラス基板を用いて液晶セルや回路を形成した半製品、あるいは完成パネル等(以下、これらを基板と記す。)を搬送する容器として、熱可塑性樹脂発泡成形体からなり、基板を多段に緩衝保持し得る基板搬送容器が用いられている。この種の基板搬送容器としては、縦型のものが多いが、負荷集中によるガラスの擦れ、削れなどの発生が見られる。
そのため、横型(横置き)の容器を用いようとした場合、重量物を搬送する際には柔らかい発泡素材では変形が大きくなって十分な緩衝保持が困難となり、一方、硬すぎる発泡材料では発泡素材の割れが生じ易くなり、重量物の搬送には向かないという問題がある。
【0009】
従って、この種の基板搬送容器において、硬いが割れ難い発泡素材を使用できれば、重量物の搬送時にも割れたり変形し難い搬送容器を提供することができるが、現在までのところ、このような要求を満たし得る発泡素材は提供されていない。
【0010】
なお、特許文献3に開示された従来技術では、製造に使用した直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートについては特に規定しておらず、その実施例において用いている直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂としては、日本ユニカー社製の商品名「FMRN−063」のメルトフローレートが1.3g/10分、住友化学社製の商品名「エボリュー F−201」が1.5g/10分、日本ユニカー社製の商品名「TUF−2032」のメルトフローレートが0.9g/10分である。そして、このようなメルトフローレートが1.5g/10分以下の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を用いた場合には、得られる発泡成形体の成形性が低下し、発泡成形体の寸法変化率が大きくなり、寸法精度が悪くなる恐れがある。また、得られた発泡成形体の強度が十分に得られず、たわみが大きくなる問題がある。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、重量物の搬送時にも発泡成形体が割れたり変形し難い基板搬送容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られる発泡成形体であって、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であることを特徴とする発泡成形体を提供する。
【0013】
また本発明は、メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られる基板搬送容器であって、基板搬送容器を構成する発泡成形体は、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であることを特徴とする基板搬送容器を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡成形体は、メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られ、その5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であるものなので、重量物の搬送時にも割れたり変形し難い発泡成形体を提供することができる。
【0015】
本発明の基板搬送容器は、メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られ、基板搬送容器を構成する発泡成形体は、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であるものなので、大型ガラス基板などの重量物の搬送時にも割れたり変形し難い基板搬送容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の発泡成形体及び基板搬送容器は、従来技術(特許文献2)に開示されているような後加工での複合ではなく、発泡成形体の素材内部での複合により、剛性と粘りを両立した。
従来技術(特許文献1)に開示されたようなポリオレフィン単体からなる発泡成形体では、柔軟な性質であるため、ガラス搬送時の重量負荷により大きなたわみを生じるが、本発明の発泡成形体及び基板搬送容器では、発泡成形体素材に硬さをプラスするため、ポリオレフィンとポリスチレン系樹脂との複合化を実施した。両者を単に混合するだけでは、十分な強度特性は得られないが、ポリオレフィン中にポリスチレンを小さな粒子状で微分散させて存在させることで、ポリオレフィンの柔軟性を持ちながら、ポリスチレンの硬さも併せ持たせることができた。
【0017】
特に、ポリオレフィンとして、メタロセン化合物を触媒として重合された直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を用いた場合、強度アップが顕著である。この場合、複合化するスチレン成分を多くしても強度が保持されるため、より硬さを持たせることが可能となる。さらに、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂として、メルトフローレートを1.8以上の樹脂を用いることで、発泡成形性が良好になり、発泡成形体の対金型寸法変化率を小さく抑えることが可能となった。結果として、基板搬送容器として最適な硬さを持ち、寸法精度に優れた発泡成形体を得ることができる。
【0018】
樹脂の複合化は、組み合わせるそれぞれの樹脂成分の短所を補い、長所を伸ばす目的で実施され、これまでに多数の複合樹脂が発明されている。樹脂の複合化に際し、それぞれの樹脂の長所を如何に出すかがポイントとなるが、本発明においては、粘りのあるポリエチレン系樹脂の特徴と、剛性のあるポリスチレン系樹脂の特長をどのように発揮させるかがポイントとなる。本発明者らが検討した結果、樹脂組成として、ポリエチレン系樹脂の海にポリスチレン系樹脂を小さく島状に分散させることによって、海であるポリエチレンの特長を低下させず、ポリスチレンの硬さも得られることが実証された。
【0019】
具体的には、メタロセン化合物を触媒として重合され、メルトフローレートが1.8以上である直鎖状低分子量ポリエチレン系樹脂100質量部あたり、ポリスチレン系樹脂350〜450質量部を含有し、かつ粒子表面及び内部においてポリスチレン系樹脂粒子が0.8μm以下の粒径を有する微少な粒子として分散させたスチレン改質直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子(以下、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子と記す。)を使用することが望ましい。
なお、使用する直鎖状低分子量ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートの上限は、特に限定してないが、一般にメルトフローレートが10を超える樹脂は、樹脂粒子を球状に保つことが困難となるため好ましくなく、実質的なメルトフローレートの上限は10以下であり、好ましくは5以下である。
【0020】
前記スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子は、例えば、以下の[第1のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法]、又は[第2のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法]によって製造することが好ましい。
【0021】
[第1のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法]
第1の製造方法は、分散剤を含む水性媒質中に、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系モノマー350〜450質量部と、前記スチレン系モノマー100質量部当たり0.1〜0.9質量部の重合開始剤とを分散させる工程(A)と、
次いで、得られた分散液を前記スチレン系モノマーが実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系モノマーを前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させる工程(B)と、
前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の結晶化ピーク温度をT℃としたとき(T+10)℃〜(T+35)℃の温度で、前記スチレン系モノマーの重合を行ってスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を製造する工程(C)と、を有することを特徴としている。
【0022】
第1の製造方法において用いる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子は、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を押出機に投入し、押出機内で溶融して多数の小孔を有する吐出口から押出し、ストランドカット、水中カット、ホットカットなどにより造粒ペレット化したり、また粉砕機にて直接樹脂ペレットを粉砕して粒子化することにより得られる。また、その粒子形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。この直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の好ましい樹脂平均粒径は、0.5mm〜1.5mmの範囲であることが好ましい。
【0023】
第1の製造方法において用いるスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのスチレン系モノマーを重合させて得られる樹脂が挙げられる。さらに、スチレン系モノマーには、該スチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとを組み合わせて使用することもできる。他のモノマーとしては、ジビニルベンゼンのような多官能性モノマーや、(メタ)アクリル酸ブチルのような構造中にベンゼン環を含まない(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが例示される。これら他のモノマーは、実質的にポリスチレン系樹脂に対して5質量%を超えない範囲で使用してもよい。なお、本明細書では、スチレンおよびスチレンと共重合可能なモノマーもスチレン系モノマーと称している。
【0024】
前記(A)工程では、オートクレーブ装置などの撹拌・加熱が可能な耐圧容器内に、分散剤を含む水性媒質と、該水性媒質中に前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系モノマー350〜450質量部と、スチレン系モノマー100質量部当たり0.1〜0.9質量部の重合開始剤とを加え、これらを水性媒質中に分散させる。直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対し、スチレン系モノマー350〜450質量部の範囲加えることで、適度な硬さと柔軟性を有し、重量物の搬送時にも割れたり変形し難い発泡成形体を製造することができる。スチレン系モノマーの量が350質量部未満であると、発泡成形体に硬さが不足し、またスチレン系モノマーの量が450質量部を超えると、剛性が得られるが柔軟性が乏しく、割れを生じ易くなる。
【0025】
前記(A)工程で用いられる重合開始剤としては、スチレン系モノマーの重合に汎用されている従来周知の重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。重合開始剤の使用量は、スチレン系モノマー100質量部当たり0.1〜0.9質量部とする。重合開始剤の使用量が前記範囲未満であると、スチレン系モノマーの重合が不十分となったり、重合に時間がかかる。一方、重合開始剤を前記範囲を超えて添加しても、その効果が頭打ちとなり、却ってコスト上昇を招いてしまうために好ましくない。
【0026】
前記(A)工程で用いられる分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。無機系分散剤を用いる場合、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダなどが挙げられる。
【0027】
前記(A)工程において、スチレン系モノマーは、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させるために、水性媒体に、連続的にあるいは断続的に添加できる。スチレン系モノマーは、水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい。ここで用いる水性媒体としては、水、水と水溶性媒体(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0028】
前記(A)工程で架橋剤を添加する場合、その添加方法としては、例えば、架橋剤を直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤またはスチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法などが挙げられる。この内、スチレン系モノマーに架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
【0029】
次に、得られた分散液を前記スチレン系モノマーが実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系モノマーを前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させる工程(B)を行う。この(B)工程における含浸温度は、45℃〜70℃の範囲、好ましくは50℃〜65℃の範囲とする。
【0030】
この工程(B)における含浸温度が前記範囲未満であると、スチレン系モノマーの含浸が不十分となってポリスチレン系樹脂の重合粉末が生成されるので、好ましくない。一方、含浸温度が前記範囲を超えると、スチレン系モノマーが直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合してしまうので、好ましくない。
【0031】
次に、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の結晶化ピーク温度をT℃としたとき(T+10)℃〜(T+35)℃の温度で、スチレン系モノマーの重合を行ってスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を製造する、工程(C)を行う。この重合温度は重要な要因であり、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の融点をT℃としたとき、重合温度は(T+10)℃〜(T+35)℃の範囲とする。
【0032】
前記温度範囲で重合を行うことにより、ポリスチレン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性、柔軟性、寸法安定性に優れた発泡成形体を製造し得るスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【0033】
[第2のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法]
第2の製造方法では、スチレン系モノマーを2回に分けて水性媒質に供給し、2回の重合工程を行うことを特徴としている。
すなわち、本実施形態では、分散剤を含む水性媒質中に、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系モノマー50〜200質量部と、該スチレン系モノマー100質量部当たり0.1〜0.9質量部の重合開始剤とを分散させる工程(A)と、
次いで、得られた分散液を前記スチレン系モノマーが実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系モノマーを前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させる工程(B)と、
次いで、前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の結晶化ピーク温度をT℃としたとき(T+10)℃〜(T+35)℃の温度で、前記スチレン系モノマーの重合を行ってスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を製造する第1の重合工程(C1)と、
第1の重合工程に引き続いて、前記水性媒質中にスチレン系モノマーと、該スチレン系モノマー100質量部当たり0.1〜0.9質量部の重合開始剤を加え、かつ前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子の結晶化ピーク温度をT℃としたとき(T+10)℃〜(T+35)℃の温度とすることで、前記スチレン系モノマーの含浸と重合を行ってスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を製造する(但し、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100質量部当たり、第1の重合と第2の重合とで使用するスチレン系モノマーの合計は350〜450質量部である)第2の重合工程(C2)と、を有することを特徴とする。
【0034】
第2の製造方法において、使用する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子、スチレン系モノマー、水性媒質及び重合開始剤は、前記[第1のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法]の場合と同じものを用いることができる。
【0035】
前記第1の重合工程(C1)、および第2の重合工程(C2)において、重合温度は重要な要因であり、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の融点をT℃としたとき、第1の重合工程(C1)では、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度範囲とし、第2の重合(C2)では、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度範囲とする。
前記温度範囲で重合を行うことにより、樹脂粒子中心部は、ポリスチレン系樹脂の存在量が多く(つまり、表層に直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の存在量が多い)、その結果として、ポリスチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性、耐薬品性、耐熱性に優れたスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【0036】
重合温度が前記温度範囲より低くなると、得られる樹脂粒子中心部にポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、重合温度が前記温度範囲より高くなると、スチレン系モノマーが直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要になる。
【0037】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させたスチレン系モノマーの重合する工程を、第1の重合工程(C1)と、第2の重合工程(C2)との二段階に分ける理由は、一度に多くのスチレン系モノマーを直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に含浸させようとすると、スチレン系モノマーが直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に十分に含浸されず、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の表面に残るからである。そこで、この第2の製造方法のように、スチレン系モノマーの重合を、第1の重合工程(C1)と第2の重合工程(C2)との二段階に分けることにより、第1の重合工程(C1)においてスチレン系モノマーが確実に直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の中心部に含浸され、第2の重合工程(C2)においてもスチレン系モノマーが樹脂の中心部に向かって含浸される。
【0038】
[発泡性樹脂粒子の製造]
前述した[第1のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法]、又は[第2のスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子の製造方法]によって製造されたスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子は、次に、発泡剤、特に易揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とする。
【0039】
スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に含浸させる易揮発性発泡剤としては、沸点が重合体の軟化温度以下であり易揮発性を有するもの、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、炭酸ガス、窒素が挙げられ、これらの発泡剤は、単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。易揮発性発泡剤の使用量は、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して5〜25質量部の範囲とすることが好ましい。
【0040】
さらに、発泡助剤を発泡剤と共に用いてもよい。このような発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、D−リモネンなどの溶剤、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油などの可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の添加量としては、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.1〜2.5質量部が好ましい。
【0041】
スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法は、発泡剤の種類に応じて適宜変更可能である。例えば、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子が分散している水性媒体中に発泡剤を圧入して、該樹脂中に発泡剤を含浸させる方法、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を回転混合機に供給し、この回転混合機内に発泡剤を圧入して該樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法などが挙げられる。なお、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる温度は、通常、50℃〜140℃とすることが好ましい。
【0042】
[予備発泡粒子の製造]
前述したように、スチレン改質直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて得られた発泡性樹脂粒子は、次に、予備発泡機に入れて蒸気で加熱し、所定の嵩密度を持った予備発泡粒子とする。
【0043】
この予備発泡粒子は、通常、嵩密度0.0166〜0.2g/cmを有する。好ましい嵩密度は0.02〜0.1g/cmである。より好ましくは、嵩密度は0.025〜0.05g/cmである。嵩密度が0.0166g/cmより小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下するため好ましくない。一方、嵩密度が0.2g/cmより大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。
また、この嵩密度を嵩発泡倍数で表すと、嵩発泡倍数(倍)=1/嵩密度(g/cm)であることから、この予備発泡粒子は5〜60(倍)の嵩発泡倍数を有し、好ましい嵩発泡倍数は10〜50(倍)であり、より好ましい嵩発泡倍数は20〜40(倍)である。
【0044】
予備発泡粒子の形態は、その後の型内発泡成形に影響を与えないものであれば、特に限定されない。例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。この内、金型のキャビティ内への充填が容易である真球状、楕円球状が好ましい。
【0045】
この予備発泡粒子は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、タルク、珪酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体などの発泡核剤、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素などの充填剤、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化合物などの難燃剤、ジイソブチルアジペート、流動パラフィン、グリセリンジアセトモノラウレート、やし油などの可塑剤、カーボンブラック、グラファイトなどの着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0046】
[発泡成形体の製造]
前述した予備発泡粒子を発泡成形体とするには、前述した予備発泡粒子を通常24時間程度保持して熟成させ、その後、予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、加熱して型内発泡成形させ、予備発泡粒子同士を融着一体化させることによって所望形状を有する発泡成形体又は基板搬送容器を得ることができる。この型内発泡成形は、例えば、蒸気圧0.5〜4.5kg/cmG程度(約0.05〜0.45MPa)の水蒸気を金型内に導入することによって行うことができる。
【0047】
本発明の発泡成形体は、通常、0.0166〜0.2g/cmの密度を有する。好ましくは、密度が0.02〜0.1g/cmであり、より好ましくは、密度が0.025〜0.05g/cmの範囲である。
該発泡成形体の密度が0.0166g/cmより小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下するため好ましくない。一方、発泡成形体の密度が0.2g/cmより大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。また、この密度を発泡倍数で示すと、発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm)であることから、この発泡成形体は5〜60(倍)の発泡倍数を有し、好ましい発泡倍数は10〜50(倍)であり、より好ましい発泡倍数は20〜40(倍)である。
【0048】
本発明の発泡成形体は、JIS A9511:1995「発泡プラスチック保温材」に記載の方法により測定される5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、且つ対金型寸法変化率が6/1000以下である特性を有しており、重量物の搬送時にも割れたり変形し難い、という特徴を有している。
なお、前記「対金型寸法変化率」は、金型の所定部分の寸法を測定し、及び該所定部分に対応する発泡成形体の寸法を測定し、次式(1)により算出される値である。
寸法変化率=(金型寸法−成形体寸法)÷金型寸法 …(1)
【0049】
5%圧縮強度が15.0N/cm未満であると、発泡成形体の剛性が低くなるため、重量物の搬送容器とした場合、搬送時に割れたり変形し易くなる。なお、5%圧縮強度は大きい程望ましいので、その上限値を特に設ける必要はない。
【0050】
また対金型寸法変化率が6/1000を超えると、発泡成形体の設計時の寸法(金型寸法)と使用する発泡成形体の寸法との間の誤差が大きくなり、ガラス基板等の基板搬送容器とした場合に、その誤差によって基板の安定性や緩衝性が悪化するおそれがある。なお、対金型寸法変化率は小さい程望ましいので、その下限値を特に設ける必要はない。例えば、下限値は0であることが望ましい。
【0051】
本発明の発泡成形体は、メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られ、その5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であるものなので、重量物の搬送時にも割れたり変形し難い発泡成形体を提供することができる。
【0052】
本発明の発泡成形体は、その形状や寸法、また用途について、特に限定されず、従来のポリスチレン系樹脂発泡成形体やポリオレフィン系発泡成形体と同様の用途、例えば、保温箱、緩衝性の搬送容器、梱包用の緩衝材、建材などの用途に応じ、適宜な形状な寸法に成形して用いることができる。特に、本発明の発泡成形体は、重量物の搬送時にも割れたり変形し難い、という特性を有していることから、次に述べる基板搬送容器として利用することが好ましい。
【0053】
[基板搬送容器]
本発明の基板搬送容器は、前述した発泡成形体を製造する際に、容器製造用の金型を用い、その金型を用いて前記予備発泡粒子を型内発泡成形することによって製造される。従って、本発明の基板搬送容器は、前記発泡成形体と同じく、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、且つ対金型寸法変化率が6/1000以下である特性を有しており、重量物の搬送時にも割れたり変形し難い、という特徴を有している。
【0054】
図1及び図2は、本発明に係る基板搬送容器の一例を示す図であり、図1は基板搬送容器本体の平面図、図2は基板搬送容器の一部断面視した正面図である。これらの図中、符号1は基板搬送容器本体、2は蓋、3は基板搬送容器、4は基板収納部、5は側壁、6は底部、7は基板、8は合紙である。
【0055】
本例の基板搬送容器3は、多数枚のガラス基板などの基板7を、合紙8を介して基板搬送容器本体1の基板収納部4に多段に収納し、蓋2を被せて搬送に用いるための容器を例示するものであり、本発明の基板搬送容器は本例示にのみ限定されるものではない。
【0056】
この基板搬送容器3を構成する基板搬送容器本体1と蓋2は、前述した本発明に係る発泡成形体によって作られている。
本例示において、基板搬送容器本体1は、略長方形状をなす底部6と、その周縁からほぼ垂直に立ち上がって形成された側壁5とからなる角形の箱状をなしている。
【0057】
本発明の基板搬送容器は、メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られ、基板搬送容器を構成する発泡成形体は、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であるものなので、大型ガラス基板などの重量物の搬送時にも割れたり変形し難い基板搬送容器を提供することができる。
【実施例】
【0058】
実施例と比較例に記載した条件でそれぞれ発泡成形体を製造し、得られた発泡成形体の5%圧縮強度及び対金型寸法変化率を測定し比較した。メルトフローレート、予備発泡粒子の嵩密度、5%圧縮強度、及び対金型寸法変化率のそれぞれの測定方法は、次の通りとした。
【0059】
<メルトフローレートの測定方法>
メルトフローレートはJIS K7210に準拠し、230℃、10kgf荷重で測定した。
【0060】
<嵩密度の測定方法>
予備発泡粒子の嵩密度は、JIS A9511:1995「発泡プラスチック保温板」記載の方法に準拠して測定した。
【0061】
<5%圧縮強度の測定方法>
発泡成形体の5%圧縮強度は、JIS A9511:1995「発泡プラスチック保温材」記載の方法に準拠して測定した。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用い、試験体サイズは50mm×50mm×50mmとし、圧縮速度を10mm/minとして5%圧縮時の圧縮強度を測定した。
【0062】
<対金型寸法変化率>
金型の所定部分の寸法を測定し、及び該所定部分に対応する発泡成形体の寸法を測定し、次式(1)により寸法変化率を求めた。
寸法変化率=(金型寸法−成形体寸法)÷金型寸法 …(1)
【0063】
[実施例]
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂として、メタロセン触媒を使用して合成された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名「NF−464A」、メルトフローレート=2.0g/10分、密度:0.915g/cm)を用い、この樹脂を押出機に投入して溶融混練し、水中カット方式により造粒することで略球状のポリエチレン系樹脂粒子を得た。得られたポリエチレン系樹脂粒子の平均質量は、約0.6mgであった。
【0064】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)0.8質量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)0.02質量部を、水100質量部に分散させて、分散用媒体を調製し、この分散用媒体を撹拌機付のオートクレーブの容器に投入した。
【0065】
次に、この分散用媒体に、前記ポリエチレン系樹脂粒子100質量部を分散させて、懸濁液を得た。
【0066】
更に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.2質量部を、予めスチレンモノマー100質量部に溶解し、第1モノマー溶液を調製した。
【0067】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、前記第1モノマー溶液を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で約1時間撹拌し、ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
【0068】
次に、分散液の温度を130℃に昇温し、2時間保持してスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させた。
【0069】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部を、スチレンモノマー300質量部に溶解させて第2モノマー溶液を調製し、前記分散液に1時間当たり約60質量部の割合で、約5時間かけて連続的に第2モノマー溶液を滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させながら重合させ、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を得た。得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子は、媒体と分離し、水洗及び乾燥させた。
【0070】
続いて、内容積が1mの耐圧V型回転混合機に、前記スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部、及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給し、回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n-ブタン:i-ブタン=7:3)15質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後、25℃に冷却して発泡性樹脂粒子を得た。
【0071】
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度が0.33g/cmの予備発泡粒子を得た。
【0072】
次に、得られた予備発泡粒子を発泡成形機機(積水工機社製、Wiz−40LL)に組み付けた、長さ1487mm×幅883mm×高さ100mmの金型内に導入し、水蒸気を導入して発泡成形させ、発泡成形体として図1に示す箱型形状の基板搬送容器を製造した。
【0073】
得られた発泡成形体の5%圧縮強度を測定したところ、20.7N/cmと高く、硬さに優れたものであった。
この発泡成形体の対金型寸法変化率を測定したところ、製造から30日経過後の時点で5/1000と小さいものであった。
【0074】
[比較例]
ポリエチレン系樹脂として、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂:日本ユニカー社製NUC―3450、メルトフローレート=0.5g/10分)を用いたこと以外は、実施例1と同様に造粒することで略球状のポリエチレン系樹脂粒子を得た。
【0075】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)0.8質量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)0.02質量部を、水100質量部に分散させて、分散用媒体を調製し、この分散用媒体を撹拌機付のオートクレーブの容器に投入した。
【0076】
次に、この分散用媒体に、前記ポリエチレン系樹脂粒子60質量部を分散させて、懸濁液を得た。
【0077】
更に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.2質量部を、予めスチレンモノマー60質量部に溶解し、第1モノマー溶液を調製した。
【0078】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、前記第1モノマー溶液を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で約1時間撹拌し、ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
【0079】
次に、分散液の温度を130℃に昇温し、2時間保持してスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させた。
【0080】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部を、スチレンモノマー190質量部に溶解させて第2モノマー溶液を調製し、前記分散液の温度を90℃に低下させた後、前記分散液に1時間当たり約60質量部の割合で、約3時間かけて連続的に反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させながら重合させ、スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子を得た。得られたスチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子は、媒体と分離し、水洗及び乾燥させた。
【0081】
続いて、内容積が1mの耐圧V型回転混合機に、前記スチレン改質ポリエチレン系樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部、及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給し、回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n-ブタン:i-ブタン=7:3)15質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後、25℃に冷却して発泡性樹脂粒子を得た。
【0082】
得られた発泡性樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度が0.33g/cmの予備発泡粒子を得た。
【0083】
次に、得られた予備発泡粒子を発泡成形機機(積水工機社製、Wiz−40LL)に組み付けた、長さ1487mm×幅883mm×高さ100mmの金型内に導入し、水蒸気を導入して発泡成形させ、発泡成形体として図1に示す箱型形状の基板搬送容器を製造した。
【0084】
得られた発泡成形体の5%圧縮強度を測定したところ、13.5N/cmであり、ガラス基板搬送容器として十分な硬さを持つものではなかった。
この発泡成形体の対金型寸法変化率を測定したところ、製造から30日経過後の時点で8/1000であり、前記実施例の値よりも大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の基板搬送容器の一例を示す基板搬送容器本体の平面図である。
【図2】本発明の基板搬送容器の一例を示す一部断面視した正面図である。
【符号の説明】
【0086】
1…基板搬送容器本体、2…蓋、3…基板搬送容器、4…基板収納部、5…側壁、6…底部、7…基板、8…合紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られる発泡成形体であって、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
メタロセン化合物を触媒として重合された、メルトフローレートが1.8以上の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、350〜450質量部のポリスチレン系樹脂を複合して得られる樹脂粒子を型内発泡成形して得られる基板搬送容器であって、基板搬送容器を構成する発泡成形体は、5%圧縮強度が15.0N/cm以上であり、対金型寸法変化率が6/1000以下であることを特徴とする基板搬送容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−242692(P2009−242692A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93259(P2008−93259)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】