説明

発泡成形部材、その取付用クリップ、発泡成形部材の製造方法並びに発泡成形部材の取付構造

【課題】クリップ本体の外周面に十分に発泡成形体の発泡合成樹脂を結合させることが可能なクリップと、このクリップを備えた発泡成形部材と、この発泡成形部材の製造方法及び取付構造とを提供する。
【解決手段】クリップ10は、被取付部材20に設けられたクリップ係止用突起21が挿入される挿入穴12を有した筒状のクリップ本体11と、該挿入穴12の内周面に設けられた、該クリップ係止用突起21が係合する係合部15とを備えている。クリップ10は、少なくともクリップ本体11の筒軸心線方向の一端側が発泡成形体2に埋設されるようにして該発泡成形体2と一体化される。クリップ本体11のうち、少なくとも発泡成形体2に埋設される部分の外周面の一部が粗面となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体を被取付部材に取り付けるためのクリップに係り、特に、該被取付部材に設けられたクリップ係止用突起が挿入される挿入穴を有する筒状のクリップ本体と、該挿入穴の内周面に設けられた、該クリップ係止用突起が係合する係合部とを備えており、少なくとも該クリップ本体の筒軸心線方向の一端側が該発泡成形体中に埋設されることにより該発泡成形体と一体化されるクリップに関する。また、本発明は、このクリップが発泡成形体に埋設されるようにして該発泡成形体と一体化されてなる発泡成形部材と、この発泡成形部材の製造方法と、この発泡成形部材を該クリップを介して被取付部材に取り付けた取付構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアの裏側(車内側)には、車両の側面衝突時の衝撃エネルギー吸収(Energy Absorption:EA)のために、硬質ウレタンフォームよりなる衝撃エネルギー吸収材(以下、EA材と略すことがある。)が取り付けられている。このEA材をドアトリムに取り付ける方法として、特開2005−47225(特許文献1)には、EA材にクリップを設けておき、このクリップを、ドアトリムに設けられたクリップ係止用突起に係合させることにより、EA材をドアトリムに取り付けることが記載されている。特許文献1では、このクリップは、一部がEA材本体に埋設されるようにして該EA材本体と一体化されている。
【0003】
第7図は、特許文献1の図6に記載のクリップ及びEA材取付構造の説明図である。第7図(a)は、このEA材取付構造を示す断面図、第7図(b)は、このEA材取付構造のクリップ係止用突起の斜視図、第7図(c)は、このEA材取付構造に用いられたクリップの縦断面斜視図である。
【0004】
このEA材取付構造においては、EA材101がドアトリム102に対しクリップ104及びクリップ係止用突起108を介して取り付けられている。
【0005】
このクリップ係止用突起108は、ドアトリム102から突出する1対の突出部108b,108bを有している。各突出部108b,108bの先端側の側面に、それぞれ側方へ張り出す爪部108aが設けられている。この爪部108aは、各突出部108bの基端側ほど側方への張り出し高さが大きくなっている。
【0006】
各突出部108bは、弾性を有した合成樹脂により形成されており、これらの突出部108b,108b同士は、互いに接近方向に弾性的に変形可能となっている。
【0007】
クリップ104は、このクリップ係止用突起108が挿入される挿入穴112を有した円筒状のクリップ本体106と、該クリップ本体106の筒軸心線方向の一端側から外向き鍔状に張り出すアンカー部105と、該クリップ本体106の筒軸心線方向の他端側から外向き鍔状に張り出すフランジ部107とを備えている。挿入穴112は、クリップ本体106をその筒軸心線方向の一端面から他端面まで貫通している。挿入穴112の内周面には、周方向に凹段部113が凹設されている。特許文献1では、アンカー部105とフランジ部107とは、同等の外径を有する円盤状となっている。
【0008】
第7図(a)の通り、クリップ104は、アンカー部105、クリップ本体106及びフランジ部107の該アンカー部105側の面がEA材101中に埋設されている。このようにクリップ本体106に外向き鍔状のアンカー部105を設けてEA材101中に埋設することにより、クリップ104のEA材1からの抜け留め効果が向上する。
【0009】
このクリップ104を備えたEA材101をドアトリム102に取り付ける場合には、クリップ係止用突起108を挿入穴112に挿入しながらEA材101をドアトリム102に押し付ける。これにより、クリップ係止用突起108の各爪部108aが挿入穴112内の凹段部113に弾性的に係合してクリップ104が該クリップ係止用突起108に係止され、EA材101がドアトリム102に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−47225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記第7図のクリップ104を備えたEA材101を製造する場合、EA材成形用金型の内面にクリップ104を取り付けておき、該EA材成形用金型内でEA材101を発泡成形することにより、クリップ104とEA材101とを一体化させる。この際、クリップ104は、アンカー部105をEA材101の内部側に向けてEA材成形用金型に取り付けられ、該アンカー部105とクリップ本体106とがEA材101中に埋設される。
【0012】
しかしながら、このようにクリップ本体106のEA材内部側の端部から該クリップ本体106の全周にわたって放射状に比較的大径の円盤状のアンカー部105が張り出していると、例えばこのクリップ104が比較的小型のものであったり、EA材101を構成する発泡合成樹脂が比較的粘度の高いものであったりした場合には、アンカー部105の裏側(該アンカー部105とフランジ部107との間)に発泡合成樹脂が回り込みにくくなり、クリップ本体106の外周面に発泡合成樹脂が十分に結合しにくくなるおそれがある。クリップ104とEA材101とをしっかりと一体化させるためには、クリップ本体106の外周面に十分にEA材101の発泡合成樹脂を結合させることが望まれる。
【0013】
本発明は、クリップ本体の外周面に十分に発泡成形体の発泡合成樹脂を結合させることが可能なクリップを提供することを目的とする。また、本発明は、このクリップが発泡成形体に埋設されるようにして該発泡成形体と一体化されてなる発泡成形部材と、この発泡成形部材の製造方法と、この発泡成形部材を被取付部材に取り付けた取付構造とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明(請求項1)のクリップは、発泡成形体を被取付部材に取り付けるためのクリップであって、該被取付部材に設けられたクリップ係止用突起が挿入される挿入穴を有した筒状のクリップ本体と、該挿入穴の内周面に設けられた、該クリップ係止用突起が係合する係合部とを備えており、該挿入穴は、該クリップ本体をその筒軸心線方向に貫通しており、少なくとも該クリップ本体の筒軸心線方向の一端側が該発泡成形体に埋設されるようにして該発泡成形体と一体化されるクリップにおいて、該クリップ本体のうち、少なくとも該発泡成形体に埋設される部分の外周面の一部が粗面となっていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2のクリップは、請求項1において、前記クリップ本体の外周面に、表面が粗面となっている粗面材料が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3のクリップは、請求項2において、前記粗面材料は不織布であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4のクリップは、請求項3において、前記不織布は、目付が60〜140g/mであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5のクリップは、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記係合部は、前記クリップ本体を外周側から前記挿入穴まで貫通した貫通孔よりなり、該クリップ本体の外周側に、該貫通孔を封鎖した封体が設けられており、該封体が前記粗面材料よりなることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6のクリップは、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記クリップ本体の外周面に複数個の凹凸が形成されることにより、該クリップ本体の外周面が前記粗面とされていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項7のクリップは、請求項6において、前記クリップ本体の外周面にシボ加工が施されることにより前記凹凸が形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明(請求項8)の発泡成形部材は、発泡成形体と、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のクリップとを有し、該クリップは、少なくとも前記クリップ本体の筒軸心線方向の一端側が該発泡成形体に埋設されることにより該発泡成形体と一体化されており、前記粗面が該発泡成形体中に配置されていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明(請求項9)の発泡成形部材の製造方法は、請求項8に記載の発泡成形部材を製造するための方法であって、発泡成形体成形用金型の内面に設けられたクリップ固定用突起を前記挿入穴に挿入して前記クリップを該発泡成形体成形用金型の内面に取り付けるクリップ取付工程と、該発泡成形体成形用金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程とを有しており、該発泡成形工程において、前記粗面を該発泡成形体中に埋没させることを特徴とするものである。
【0023】
請求項10の発泡成形部材の製造方法は、請求項9において、前記クリップ固定用突起は、前記挿入穴に挿入された状態において、その外周面が該挿入穴の内周面に密着するように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明(請求項11)の発泡成形部材の取付構造は、請求項8に記載の発泡成形部材を被取付部材に取り付けた構造であって、該被取付部材にクリップ係止用突起が設けられており、該クリップ係止用突起が前記クリップの前記挿入穴に挿入されて前記係合部に係合したことにより、該発泡成形部材が該被取付部材に取り付けられているものである。
【0025】
請求項12の発泡成形部材の取付構造は、請求項11において、前記クリップ係止用突起は、前記被取付部材から突出した突出部と、該突出部から側方へ張り出した爪部とを備え、該爪部が前記係合部に係合していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明(請求項1)のクリップにあっては、クリップ本体のうち、少なくとも発泡成形体に埋設される部分の外周面の一部が粗面となっている。そのため、クリップ本体を発泡成形体に埋設したときに、該クリップ本体の外周面に密着した発泡合成樹脂がこの粗面に食い付く(食い込む)ようになる。これにより、クリップ本体の外周面に発泡成形体の発泡合成樹脂がしっかりと結合するようになり、クリップの発泡成形体からの抜け出しが防止される。
【0027】
このように、本発明にあっては、クリップ本体の外周面の粗面に発泡合成樹脂が食い付くことによってアンカー効果が得られるので、クリップ本体の発泡成形体内部側の端部に、該クリップ本体の外周面から放射状に張り出すアンカー部を設けることを不要とすることができる。これにより、例えばこのクリップが比較的小型であったり、発泡合成樹脂が比較的粘度の高いものであったりしても、クリップ本体の周囲に発泡合成樹脂が回り込み易いものとなり、クリップ本体の外周面に十分に発泡合成樹脂を密着させることができるようになる。
【0028】
請求項2の態様では、表面に複数個の凹凸を有する粗面材料をクリップ本体の外周面に設けることにより、該クリップ本体の外周面に粗面を形成しているので、該クリップ本体の外周面自体を粗面とする加工が不要である。そのため、クリップ本体を比較的簡易な構造の金型を用いて射出成形等により成形することが可能である。
【0029】
請求項3の通り、この粗面材料としては、不織布が好適である。この不織布は、表面が粗面となっているだけでなく、表面に発泡合成樹脂が接触したときに、該発泡合成樹脂がこの不織布に含浸するようになる。これにより、クリップ本体と発泡成形体の発泡合成樹脂との結合強度がより高いものとなる。
【0030】
請求項4の通り、この不織布は、目付が60〜140g/mであることが好ましい。このような不織布を用いることにより、車両のEA材を成形するのに用いられるような比較的粘度の高い発泡合成樹脂で発泡成形体を成形する場合でも、この発泡合成樹脂が十分に不織布に含浸するようになる。
【0031】
請求項5の態様にあっては、被取付部材のクリップ係止用突起が係合する係合部は、クリップ本体を外周側から挿入穴まで貫通した貫通孔よりなる。即ち、この態様では、挿入穴の内周面に、前述の第7図のクリップ104における凹段部113のようなアンダーカット部は存在しない。従って、このクリップは、比較的簡易な構造の金型を用いて射出成形により製造することが可能である。
【0032】
また、このクリップにあっては、挿入穴の内周面に、該挿入穴の内方へ張り出す凸段部も存在しない。そのため、このクリップを備えた発泡成形部材を製造するに際し、発泡成形体成形用金型のクリップ固定用突起を挿入穴に挿入してクリップを該発泡成形体成形用金型の内面に取り付けたときに、このクリップ固定用突起を挿入穴の内周面に密着させることが可能である。これにより、クリップ本体の端面に封体を設けて挿入穴を塞がなくても、発泡成形体の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴とクリップ固定用突起との間に侵入することを防止することが可能である。
【0033】
このように、請求項5の態様にあっては、クリップを比較的簡易な構造の金型を用いて製造することが可能であり、且つクリップ本体の端面に挿入穴を塞ぐ封体を設けることを不要とすることが可能であるため、クリップを低コストにて構成することが可能である。
【0034】
この請求項5の態様では、クリップ本体の外周側に、前記貫通孔を閉鎖する封体が設けられているので、発泡成形体の成形時に、この貫通孔に発泡合成樹脂が侵入することが防止される。この封体は、粗面材料により構成されているので、この封体とは別に、クリップ本体の外周面に粗面を形成するための粗面材料を設けることを不要とすることができる。
【0035】
本発明では、請求項6の通り、クリップ本体の外周面自体に複数個の凹凸を形成することにより、該クリップ本体の外周面を粗面とするようにしてもよい。このようにすることにより、クリップ本体の外周面に粗面材料を設ける作業を省略することができる。
【0036】
この凹凸は、例えば請求項7の通り、クリップ本体の外周面にシボ加工を施すことにより形成してもよい。請求項7の通りシボ加工でクリップ本体の外周面に凹凸を形成するのが簡便であり、好ましい。
【0037】
本発明(請求項8)の発泡成形部材は、かかる本発明のクリップを備えており、クリップ本体の外周面の粗面が発泡成形体中に配置されているため、発泡成形体の発泡合成樹脂がこの粗面に食い付いて該発泡合成樹脂とクリップ本体の外周面とがしっかりと結合したものとなっている。
【0038】
本発明(請求項9)の発泡成形部材の製造方法にあっては、発泡成形体成形用金型の内面に本発明のクリップを取り付けた後、そのクリップ本体の外周面の粗面が発泡成形体中に埋没するように発泡成形体成形用金型内で発泡成形体を発泡成形するため、発泡成形体の発泡合成樹脂がこの粗面に食い付いて該発泡合成樹脂とクリップ本体の外周面とがしっかりと結合した発泡成形部材を製造することが可能である。
【0039】
請求項10の発泡成形部材の製造方法にあっては、発泡成形体成形用金型の内面に設けられたクリップ固定用突起をクリップの挿入穴に挿入して該クリップを発泡成形体成形用金型の内面に取り付けたときに、このクリップ固定用突起を該挿入穴の内周面に密着させるため、クリップ本体の端面に封体を設けて該挿入穴を塞がなくても、発泡成形体の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴とクリップ固定用突起との間に侵入することを防止することが可能である。
【0040】
本発明(請求項11)の発泡成形部材の取付構造にあっては、被取付部材のクリップ係止用突起をクリップの挿入穴に挿入して係合部に係合させることにより、簡単に発泡成形部材を被取付部材に取り付けることができる。
【0041】
請求項12の通り、このクリップ係止用突起に、側方へ張り出す爪部を設け、この爪部をクリップの係合部に係合させることにより、クリップをしっかりとクリップ係止用突起に係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1の実施の形態に係るクリップの説明図である。
【図2】図1のクリップの製造方法の説明図である。
【図3】図1のクリップの製造方法の説明図である。
【図4】図1のクリップを備えた発泡成形部材の製造方法の説明図である。
【図5】図4の発泡成形部材を被取付部材に取り付けた取付構造の説明図である。
【図6】第2の実施の形態に係るクリップの説明図である。
【図7】従来例に係るクリップ及びこのクリップを用いた発泡成形部材の取付構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、発泡成形部材はEA材であり、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造を例示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材及びその被取付部材への取付構造にも適用可能である。
【0044】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は、実施の形態に係るクリップのクリップ本体の筒軸心線に沿う断面図であり、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第1図(c)は第1図(b)のC−C線矢視図(クリップの側面図)である。第2図(a)は、このクリップを製造するためのクリップ成形用金型の縦断面図(第2図(b)のA−A線に沿う断面図)であり、第2図(b)は第2図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第2図(a),(b)は、このクリップ成形用金型の型閉め状態を示している。第3図(a),(b)は、それぞれ、このクリップ成形用金型の型開き状態を示す第2図(a),(b)と同様部分の断面図である。第4図(a)は、このクリップを備えた発泡成形部材としてのEA材を製造するためのEA材成形用金型の縦断面図であり、第4図(b)は、クリップが取り付けられる前のEA材成形用金型のクリップ固定用突起付近の拡大断面図であり、第4図(c)は第4図(b)のC−C線矢視図であり、第4図(d)は、該クリップ固定用突起にクリップが取り付けられた状態を示す第4図(b)と同様部分の断面図である。なお、第4図(a),(b),(d)は、それぞれ、該クリップ固定用突起の軸心線に沿う断面にて図示されている。第5図(a)は、このEA材を被取付部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造の水平断面図であり、第5図(b)は、EA材を取り付ける前のドアトリムの水平断面図であり、第5図(c)は第5図(b)のC−C線矢視図である。なお、第5図(a)は、クリップ本体の筒軸心線に沿う断面を示しており、第5図(b)は第5図(a)と同様部分の断面を示している。
【0045】
EA材1は、第4図(a)及び第5図(a)の通り、硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂成形体よりなるEA材本体2と、該EA材本体2をドアトリム20に取り付けるためのクリップ10とを備えている。クリップ10は、インサート成形によりEA材本体2と一体化されている。このクリップ10が、ドアトリム20に設けられたクリップ係止用突起21(第5図(a)〜(c))に係止されることにより、EA材1がドアトリム20に取り付けられる。EA材1(EA材本体2)のドアトリム20との対峙面には、クリップ10が複数個、所定位置に配設されており、ドアトリム20のEA材取付面には、これらのクリップ10とそれぞれ対応する位置関係にて、複数個のクリップ係止用突起21が設けられている。このクリップ係止用突起21の詳細については後述する。
【0046】
EA材本体2を構成する発泡合成樹脂は、コア部分の静的圧縮試験によって求められる硬さが2.5〜15kgf/cm以下であることが好ましい。この静的圧縮試験は、以下の手順で行われるものである。即ち、まずEA材本体2の構成材料として使用される発泡合成樹脂材料から厚み50mm×幅50mm×長さ50mmのサンプルを取得する。次いで、このサンプルを、全面圧縮で厚み方向に10〜50mm/秒のスピードにて元の厚みの20%の厚みとなるまで圧縮する。その際、このサンプルを元厚みの50%の厚みまで圧縮したときの荷重を測定し、この測定値をサンプルの圧縮方向と垂直な断面の断面積で割った計算値を、その発泡合成樹脂材料の硬さとする。
【0047】
クリップ10は、該クリップ係止用突起21が挿入される挿入穴12を有した略角筒形状のクリップ本体11と、該クリップ本体11の筒軸心線方向の一端側(なお、説明の便宜上、この実施の形態における「一端側」は、請求項1における『一端側』とは逆側となっている。)から放射方向へ外向き鍔状に張り出したフランジ部14等を備えている。該挿入穴12は、クリップ本体11をその筒軸心線方向に貫通している。フランジ部14は、クリップ本体11の該一端側の端面と面一状に形成されている。以下、このフランジ部14の第1図(a)における下側の面を前面といい、上側の面を裏面ということがある。このクリップ10にあっては、クリップ本体11の筒軸心線方向の他端側には、外向き鍔状に張り出すアンカー部は設けられていない。
【0048】
この実施の形態では、挿入穴12は、第1図(a),(b)の通り、実質的に、第1の側面12a、第2の側面12b、第3の側面12c及び第4の側面12dを有した方形の断面形状(クリップ本体11の筒軸心線方向と直交方向の断面形状。以下、同様。)となっている。特にこの実施の形態では、該挿入穴12は、実質的に、側面12a〜12dの幅(クリップ本体11の筒軸心線と直交方向の幅。以下、同様。)が同一であり、且つ隣り合う側面12a,12b同士、12b,12c同士、12c,12d同士及び12d,12a同士が直角に交わっている正方形断面形状となっている。各側面12a〜12dの幅は、それぞれ、実質的にクリップ本体11の筒軸心線方向の一端側から他端側まで一定となっている。なお、挿入穴12の断面形状は正方形に限定されるものではなく、長方形や菱形、台形など、正方形以外の方形断面形状や、五角形、六角形等の方形以外の多角形断面形状、あるいは真円形、楕円形等の円形断面形状など種々の形状とすることができる。
【0049】
この実施の形態では、クリップ本体11の外周面も、挿入穴12と相似形で且つ各側面11a〜11d(第3図(b))が該挿入穴12の各側面12a〜12dと平行に延在した正方形断面形状となっているが、クリップ本体11の外周面の断面形状はこれに限定されない。例えば、クリップ本体11の外周面の断面形状と挿入穴12の断面形状とは、互いに異なる形状であってもよい。この実施の形態では、クリップ本体11の筒軸心線の延長方向から見たフランジ部14の平面視形状は円形となっているが、フランジ部14の形状もこれに限定されない。
【0050】
この実施の形態では、第1図(b)及び第3図(b)の通り、クリップ本体11には、挿入穴12の各側面12a〜12dをそれぞれ該クリップ本体11の外周側から該挿入穴12内まで貫通した貫通孔16が設けられている。この貫通孔16により、挿入穴12にクリップ係止用突起21が挿入されたときに、該クリップ係止用突起21から側方へ張り出した後述の爪部23が係合する係合部15が構成されている。即ち、挿入穴12にクリップ係止用突起21が挿入されると、爪部23がこの貫通孔16に入り込んでこの貫通孔16の縁部に係合するようになる。なお、係合部15の構成はこれに限定されない。例えば、挿入穴12の内周面に周方向に凹段部を凹設し、この凹段部に爪部23を係合させるように構成してもよく、あるいは、挿入穴12の内周面から該挿入穴12の内方へ張り出す凸段部を突設し、この凸段部に爪部23を係合させるように構成してもよい。
【0051】
この実施の形態では、第1図(a),(b)及び第3図(b)の通り、対向する側面12a,12c同士又は12b,12同士の間では、各々の貫通孔16,16同士もクリップ本体11の筒軸心線と直交方向に正対するように配置されている。各貫通孔16は、クリップ本体11の筒軸心線方向の中間部に配置されている(即ち、各貫通孔16は、クリップ本体11の筒軸心線方向の一端側の端面及び他端側の端面からそれぞれ等距離に位置している。)。この実施の形態では、第1図(c)の通り、クリップ10を側面視したときの各貫通孔16の開口形状は、直交する2辺がそれぞれクリップ本体11の筒軸心線と平行方向及びこれと直交方向に延在した略正方形状となっている。
【0052】
なお、貫通孔16の個数及び配置、開口形状はこれに限定されない。例えば、この実施の形態では、挿入穴12の全ての側面12a〜12dにそれぞれ貫通孔16が設けられているが、対向するいずれか1対の側面12a,12c同士又は12b,12d同士にのみ貫通孔16が設けられてもよい。貫通孔16の開口形状は、クリップ係止用突起21の爪部23の形状に応じて種々の形状とすることができる。あるいは、例えばクリップ10の取付誤差を吸収するために、この貫通孔16を、各側面12a〜12dの幅方向に長い長穴状としてもよい。隣り合う側面12a,12b同士、12b,12c同士、12c,12d同士又は12d,12a同士に跨って貫通孔16が形成されてもよい。
【0053】
第1図(a)〜(c)の通り、この実施の形態では、クリップ本体11の外周面に、各貫通孔16を封鎖する封体17が設けられている。この実施の形態では、該封体17は、帯状のものであり、クリップ本体11の外周を1周するように設けられている。これにより、1枚の封体17によって全ての貫通孔16が封鎖されたものとなっている。なお、封体17の形状や配置はこれに限定されない。例えば、小片状の封体17を貫通孔16と同数個用意し、この小片状の封体17で各貫通孔16を個別に封鎖するようにしてもよい。この封体17は、構成材料によっても異なるが、接着や粘着、溶着等の結合手段によりクリップ本体11の外周面に結合されている。
【0054】
この実施の形態では、該封体17は、表面が複数個の凹凸を有する粗面となっている粗面材料により構成されている。この粗面材料としては、不織布が好適である。不織布は、繊維を結合してなるものであり、表面が粗面となっている。この不織布としては、目付が60〜140g/m特に80〜140g/m程度のものが好適である。封体17の構成材料としてこのような不織布を用いることにより、EA材本体2の発泡成形時に、比較的粘度の高い状態の発泡合成樹脂でもこの不織布に十分に含浸するようになる。これにより、発泡合成樹脂がこの不織布に十分に食い付いて高いアンカー効果が発揮されるようになる。
【0055】
なお、本発明では、封体17は、不織布以外の材料により構成されてもよい。不織布以外の構成材料としては、例えば不織布以外の布材や、紙、ネット(シート状材料に多数の孔を形成したパンチングシートのようなものも含む)、ウレタンフォーム等が挙げられる。これらの材料からも、上記の不織布と同様に、表面に発泡合成樹脂が食い付き易い封体17を構成することができる。あるいは、表面にシボ加工等により複数個の凹凸を形成して粗面とした合成樹脂シート等を用いて封体17を構成してもよい。
【0056】
このクリップ10は、合成樹脂の射出成形品よりなる。このクリップ10を構成する材料としては、例えばABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)等が好適であるが、これに限定されない。
【0057】
以下に、このクリップ10の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、クリップ10の製造方法はこれに限定されない。
【0058】
第2図(a),(b)及び第3図(a),(b)の通り、このクリップ10を製造するためのクリップ成形用金型30は、クリップ本体11の外周側の各側面11a,11b,11c,11dと、これらに連なるフランジ部14の裏面の略1/4周分とをそれぞれ成形する第1の型31、第2の型32、第3の型33及び第4の型34と、クリップ本体11のフランジ部14と反対側の端面を成形する第5の型35と、該フランジ部14の前面を成形する第6の型36とを有している。
【0059】
第1〜第4の型31〜34のうち、クリップ本体11の外周側の各側面11a,11b,11c,11dを成形するキャビティ面からは、それぞれ、貫通孔16を形成するための貫通孔形成用凸部37が突設されている。第5の型35のキャビティ面からは、挿入穴12を形成するための角柱状の挿入穴形成用凸部38が突設されている。第2図(a),(b)の通り、これらの型31〜36を合体させて型締めした状態にあっては、挿入穴形成用凸部38の先端が第6の型36のキャビティ面に当接し、各貫通孔形成用凸部37の先端がそれぞれこの挿入穴形成用凸部38の4側面に当接するようになっている。なお、挿入穴形成用凸部38は、第6の型36のキャビティ面から突設されていてもよい。あるいは、第5の型35のキャビティ面からこの挿入穴形成用凸部38の一半側が突設されると共に、第6の型36のキャビティ面からこの挿入穴形成用凸部38の他半側が突設され、型締めしたときにこれらの凸部38,38の先端同士が当接するように構成されてもよい。
【0060】
第3図(b)の通り、第1〜第4の型31〜34は、挿入穴形成用凸部38から四方(各々が成形するクリップ本体11の各側面11a〜11dと直交方向)に離反可能となっている。各貫通孔形成用凸部37は、軸心線を、各々が設けられた型31〜34の離反移動方向と平行方向として設けられている。また、第3図(a)の通り、第5の型35と第6の型36とは、第1〜第4の型31〜34から挿入穴12の軸心線の延長方向に離反可能となっている。
【0061】
第2図(a),(b)の通りこれらの型31〜36を合体させて型締めした後、クリップ10の成形材料を型内に注入する。この成形材料が硬化した後、第3図(a),(b)の通り型開きしてクリップ10の成形品を取り出す。この成形時に挿入穴形成用凸部38が存在していた部分が脱型後に挿入穴12となり、各貫通孔形成用凸部37が存在していた部分が、それぞれ、クリップ本体11の外周側からこの挿入穴12に連通した貫通孔16となる。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業をした後、クリップ本体11の外周面に、各貫通孔16を覆うように封体17を巻き付けることにより、クリップ10が完成する。
【0062】
次に、このクリップ10を備えたEA材1の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、EA材1の製造方法はこれに限定されない。
【0063】
第4図(a)のEA材成形用金型40は、上型41と、下型42とを備えている。なお、EA材成形用金型40の構成はこれに限定されない。この実施の形態では、該EA材成形用金型40内において、EA材本体2は、ドアトリム20との対峙面を上向きにして成形される。上型41のキャビティ面からは、クリップ10を該キャビティ面に固定するためのクリップ固定用突起43が突設されている。上型41のキャビティ面には、前述のクリップ10の配置と対応する位置関係にて複数個のクリップ固定用突起43が配設されている。
【0064】
この実施の形態では、第4図(b),(c)の通り、該クリップ固定用突起43は、実質的にクリップ10の挿入穴12の断面形状と相似形の正方形断面形状を有する角柱状の軸部43aを有している。この軸部43aは、クリップ10の挿入穴12に挿入されたときに、その外周側の各側面が該挿入穴12の各側面12a〜12dに実質的に密着する太さとなっている。具体的には、この軸部43aの各側面の幅(軸部43aの軸心線と直交方向の幅)は、挿入穴12の各側面12a〜12dの幅−0.05〜−0.2mm程度であることが好ましい。
【0065】
上型41のキャビティ面からの軸部43aの起立高さは、第4図(d)の通り、クリップ10のフランジ部14が該上型41のキャビティ面に当接するまでクリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入した状態において、該軸部43aの先端が各貫通孔16よりもクリップ本体11の前記一端側に位置し、且つクリップ本体11の該一端側の端面から突出しない大きさとなっている。具体的には、この軸部43aの起立高さは、クリップ本体11の該一端側の端面から他端側の端面までの距離(即ちクリップ本体11の筒軸心線方向の長さ)の85〜95%特に85〜90%程度であることが好ましい。
【0066】
この実施の形態では、第4図(c)の通り、軸部43aの側面に、僅かに側方へ張り出した張出部44が設けられている。この張出部44の該側面からの張り出し高さは、0.1〜0.5mm特に0.2〜0.3mm程度であることが好ましい。第4図(c)の通り、この張出部44の張り出し方向の先端側の端面は、この張出部44が設けられた軸部43aの側面と平行な平坦面となっている。この実施の形態では、軸部43aの対向する1対の側面にそれぞれ張出部44が設けられている。ただし、張出部44の個数や配置、形状はこれに限定されない。
【0067】
この張出部44の分だけクリップ固定用突起43の太さが挿入穴12よりも大きくなるので、クリップ固定用突起43が挿入穴12に圧入されるようになる。即ち、クリップ固定用突起43が挿入穴12に挿入された状態においては、各張出部44が挿入穴12の1対の側面12a,12c又は12b,12dに食い込み、その他の部分では軸部43aの外面が実質的に該挿入穴12の内面に密着するようになる。これにより、発泡成形中におけるクリップ固定用突起43の挿入穴12からの抜け出し、即ちクリップ10のクリップ固定用突起43からの脱落が防止される。また、クリップ固定用突起43の外面と挿入穴12の内面との間に発泡合成樹脂が侵入することが防止される。
【0068】
なお、各張出部44は、それぞれ、挿入穴12にクリップ固定用突起43が挿入されたときに各貫通孔16に係合するように設けられてもよい。
【0069】
EA材1を製造する場合には、まず、上型41と下型42とを型開きした状態において、上型41の各クリップ固定用突起43に、それぞれ、第4図(d)の通りフランジ部14が該上型41のキャビティ内面に対面するようにクリップ10を装着する。この際、挿入穴12の角とクリップ固定用突起43の角とを合わせるようにしてクリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入する。これにより、クリップ10は、挿入穴12の各側面12a〜12d即ち各貫通孔16が所定の方向を向いた姿勢で上型41のキャビティ面に取り付けられる。上記の通り、この実施の形態では、クリップ固定用突起43がクリップ10の挿入穴12に圧入されるため、発泡成形中にクリップ10がクリップ固定用突起43から脱落しないようにしっかりと固定される。その後、下型42内にEA材本体2の発泡合成樹脂原料を注入し、上型41と下型42とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。この発泡合成樹脂は、第4図(a)の通り、下型42のキャビティ底面から上型41のキャビティ天井面まで膨張して金型40内のキャビティ空間を充填する。これにより、EA材本体2が成形される。また、この際、各クリップ10のクリップ本体11とフランジ部14の裏面側が該発泡合成樹脂中に埋没することにより、各クリップ10がEA材本体2と一体化される。
【0070】
このクリップ10にあっては、クリップ本体11の前記一端側(即ちEA材本体2の内部側の端部)に、該クリップ本体11の外周面から放射状に外向き鍔状に張り出すアンカー部が設けられていないので、このクリップ10が比較的小型であったり、発泡合成樹脂が比較的粘度の高いものであったりしても、クリップ本体11の周囲に発泡合成樹脂が回り込み易く、クリップ本体10の外周面に十分に発泡合成樹脂が密着するようになる。この際、クリップ本体11の外周面に設けられた粗面材料よりなる封体17の表面(粗面)にも発泡合成樹脂が密着する。この実施の形態では、該封体17は不織布よりなるため、該発泡合成樹脂は、さらに、この不織布中に浸み込む。
【0071】
この発泡合成樹脂が硬化した後、上型41と下型42とを型開きしてEA材本体2及び各クリップ10を脱型する。各クリップ10は、各々のフランジ部14が該EA材本体2のドアトリム20との対峙面に露出したものとなっている。このフランジ部14の中央に挿入穴12が開口している。脱型後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、EA材1が完成する。
【0072】
次に、このEA材1のドアトリム20への取付構造について説明する。
【0073】
前述の通り、ドアトリム20のEA材取付面には、EA材1の各クリップ10とそれぞれ対応する位置関係にてクリップ係止用突起21が設けられている。この実施の形態では、該クリップ係止用突起21は、ドアトリム20のEA材取付面から立設された4個の突出部22を備えている。これらの突出部22は、それぞれ、挿入穴12に挿入されたときに該挿入穴の各側面12a〜12dに対峙する位置に配置されている。また、これらの突出部22は、相互間に所定の間隔をあけて配置されている。これらの突出部22は、弾性を有した合成樹脂により形成されており、向かい合う突出部22,22同士が互いに接近方向に弾性的に変形可能となっている。なお、この実施の形態では、該突出部22はドアトリム20と同一の材料により一体に形成されている。
【0074】
この実施の形態では、ドアトリム20のEA材取付面からの各突出部22の突出高さは、第5図(a)の通り、クリップ本体11の筒軸心線方向の長さと実質的に同一か、それよりも若干小さいものとなっている。具体的には、各突出部22の突出高さは、クリップ本体11の筒軸心線方向の長さの85〜95%特に85〜90%程度であることが好ましい。これにより、クリップ10のフランジ部14がドアトリム20のEA材取付面に当接するまで各突出部22を挿入穴12に挿入した状態において、各突出部22の先端がクリップ本体11のアンカー部13側の端面から突出しないようになっている。
【0075】
各突出部22の側面には、それぞれ、側方(突出部22のEA材取付面からの突出方向と直交方向)へ張り出す爪部23が設けられている。第5図(c)の通り、対向する突出部22,22同士の間では、爪部23,23同士は、互いに反対方向に張り出している。この実施の形態では、各爪部23は、第5図(a),(b)の通り、各突出部22の先端側ほど該突出部22の側面からの張り出し高さが小さくなるテーパ形状となっている。
【0076】
なお、クリップ係止用突起21の構成はこれに限定されるものではない。例えば、クリップ係止用突起21は、1対の突出部22と、これらの突出部22から互いに反対方向に張り出した爪部23とを有し、このクリップ係止用突起21が挿入穴12に挿入されたときには、これらの爪部23が、該挿入穴12の対向するいずれか1対の側面12a,12c又は12b,12dの各貫通孔16に係合するように構成されてもよい。
【0077】
EA材1をドアトリム20に取り付ける場合、ドアトリム20の各クリップ係止用突起21を対応するEA材1の各クリップ10の挿入穴12に挿入しつつ、EA材1をドアトリム20に押し付ける。この際、各クリップ係止用突起21においては、各爪部23が挿通穴12の各側面12a〜12dに押し付けられることにより、各突出部22同士が接近方向に撓みながら該挿入穴12に差し込まれる。そして、第5図(a)の通り、クリップ10のフランジ部14がドアトリム20のEA材取付面に当接するまで各突出部22が挿入穴12に差し込まれると、各爪部23が各貫通孔16に達する。これにより、突出部22同士を接近方向に撓ませていた力が解除されて各突出部22がそれぞれ元形状に復帰し、これにより各爪部23が各貫通孔16に入り込んで該貫通孔16の縁部(即ち係合部15)に係合する。これにより、各クリップ10が各クリップ係止用突起21に係止され、EA材1がドアトリム20に取り付けられる。
【0078】
前述の通り、このクリップ10にあっては、クリップ本体11の外周面に、係合部15を構成した貫通孔16を塞ぐ封体17が設けられており、この封体17が粗面材料によって構成されることにより、この封体17の表面が粗面となっている。これにより、クリップ本体11をEA材本体2中に埋設したときに、封体17の表面に密着した発泡合成樹脂がこの粗面に食い付くようになるため、クリップ本体11の外周面にEA材本体2の発泡合成樹脂がしっかりと結合するようになり、クリップ10の該EA材本体2からの抜け出しが防止される。
【0079】
このように、本発明にあっては、クリップ本体11の外周面の粗面に発泡合成樹脂が食い付くことによってアンカー効果が得られるので、クリップ本体11のEA材内部側の端部に、該クリップ本体11の外周面から放射状に張り出すアンカー部を設けることを不要とすることができる。これにより、前述の通り、例えばこのクリップ10が比較的小型であったり、発泡合成樹脂が比較的粘度の高いものであったりしても、クリップ本体11の周囲に発泡合成樹脂が回り込み易いものとなり、クリップ本体10の外周面に十分に発泡合成樹脂を密着させることができるようになる。
【0080】
この実施の形態では、上記の通り、粗面材料よりなる封体17をクリップ本体11の外周面に設けることにより、該クリップ本体11の外周面に粗面を形成しているので、該クリップ本体11の外周面自体を粗面とする加工が不要である。そのため、比較的容易に粗面付きのクリップ10を製造することが可能である。
【0081】
この実施の形態では、該封体17は不織布よりなる。そのため、EA材本体2の発泡成形中に、該封体17に発泡合成樹脂が接触したときに、この不織布に発泡合成樹脂が含浸するようになる。これにより、クリップ本体11とEA材本体2との結合強度がより高いものとなる。
【0082】
この封体17として、好ましくは目付が60〜140g/m特に好ましくは80〜140g/mの不織布を用いることにより、比較的粘度の高い発泡合成樹脂でEA材本体2を成形する場合でも、この発泡合成樹脂が十分に不織布に含浸するようになる。
【0083】
この実施の形態では、クリップ10の係合部15は、挿入穴12の各側面12a〜12dをクリップ本体11の外周側から挿入穴12内まで貫通した貫通孔16により形成されている。即ち、このクリップ10は、挿入穴12内にアンダーカット部を有していない。そのため、このクリップ10は、第2図(a),(b)及び第3図(a),(b)のような簡易な構造の金型30を用いた射出成形により容易に製造することができる。
【0084】
また、このクリップ10にあっては、挿入穴12内に、該挿入穴12の内方へ張り出す段部も形成されていない。そのため、第4図(a),(d)の通り、EA材本体2を発泡成形するに際し、EA材成形用金型40のクリップ固定用突起43を該挿入穴12に挿入してクリップ10を該EA材成形用金型40に取り付けたときに、このクリップ固定用突起43の軸部43aの外面を挿入穴12の内面に密着させることが可能である。これにより、クリップ本体12のアンカー部13側の端面に封体を設けて挿入穴12を塞がなくても、EA材本体2の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴12とクリップ固定用突起43との間に侵入することを防止することができる。
【0085】
以上のように、この実施の形態では、クリップ10を比較的簡易な構造の金型30を用いて製造することが可能であり、且つ挿入穴12を塞ぐ封体を設けることを不要とすることが可能であるため、クリップ10を低コストにて構成することが可能である。
【0086】
この実施の形態では、クリップ10の挿入穴12は、第1〜第4の側面12a〜12dによって囲まれた方形断面形状となっている。そのため、EA材成形用金型40に設けられた角柱状のクリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入するに際し、これらの角を合わせるようにすることにより、クリップ10を容易に且つ確実に所定の向きにしてEA材成形用金型40に取り付けることが可能である。
【0087】
この実施の形態では、挿入穴12は正方形断面形状となっており、且つ該挿入穴12の全ての側面12a〜12dにそれぞれ貫通孔16が設けられているので、クリップ固定用突起43を挿入穴12に挿入するに際し、該挿入穴12の各側面12a〜12dがクリップ固定用突起43のいずれの側面に重なるかに関わらず、単にこれらの角を合わせるようにするだけで、確実に、所定方向を向いた側面に貫通孔16(係合部15)が存在するようにクリップ10をEA材成形用金型40に取り付けることができる。
【0088】
この実施の形態では、クリップ本体11の外周側から各貫通孔16を閉鎖するように封体17が設けられているので、EA材本体2の発泡成形時に各貫通孔16内に発泡合成樹脂原料が侵入することが防止される。
【0089】
かかる本発明のクリップ10を備えたEA材1にあっては、クリップ本体11の外周面の粗面をEA材本体2中に埋没させるようにして製造されているため、EA材本体2の発泡合成樹脂がこの粗面に食い付いて該発泡合成樹脂とクリップ本体11の外周面とがしっかりと結合したものとなっている。
【0090】
この実施の形態では、EA材1を製造する際に、EA材成形用金型40のクリップ固定用突起43をクリップ10の挿入穴12に挿入して該クリップ10をEA材成形用金型40の内面に取り付けたときに、このクリップ固定用突起43の外面を挿入穴12の内面に密着させるため、挿入穴12の端面を封体で塞がなくても、EA材本体2の成形時に発泡合成樹脂がこの挿入穴12とクリップ固定用突起43との間に侵入することが防止される。
【0091】
本発明のEA材1の取付構造にあっては、ドアトリム20のクリップ係止用突起21をクリップ10の挿入穴12に挿入して係合部15に係合させることにより、簡単にEA材1をドアトリム20に取り付けることができる。
【0092】
この実施の形態では、このクリップ係止用突起21に、側方へ張り出す爪部23を設け、この爪部23をクリップ10の係合部15(貫通孔16)に係合させているので、クリップ10をしっかりとクリップ係止用突起21に係止することができる。
【0093】
[第2の実施の形態]
第6図(a)は、第2の実施の形態に係るクリップの概略的な縦断面図であり、第2図(b)は、第6図(b)におけるクリップ本体の表面付近の拡大断面図である。
【0094】
この実施の形態におけるクリップ10Aにあっては、第6図(a)の通り、クリップ本体11A自体の外周面に複数個の凹凸18,19を形成することにより、該クリップ本体11Aの外周面を粗面としている。
【0095】
この実施の形態では、第6図(a),(b)の通り、クリップ本体11の外周面は、複数個の凸形状部18を該クリップ本体11の筒軸心線方向に相互に隣接させて形成した形状となっている。この凸形状部18,18同士の間は凹形状部19となっている。この実施の形態では、各凸形状部18は、クリップ本体11Aの中心から離隔するほど該クリップ本体11の筒軸心線方向における幅が小さくなる三角形断面形状となっている。各凸形状部18の先端側は、尖っていてもよく、多少(例えばR0.2〜0.4mm程度の曲率半径にて)丸まった形状であってもよい。第6図(b)の通り、各凹形状部19の最深部からの各凸形状部18の突出高さPは2〜4mm特に3〜4mm程度が好適であり、隣り合う凹形状部19,19の最深部同士の間隔(即ちクリップ本体11の筒軸心線方向における1個の凸形状部18の幅)Qは4〜6mm特に5〜6mm程度が好適である。この実施の形態では、各凸形状部18及び凹形状部19は、それぞれ、クリップ本体11の全周にわたって延設されている。なお、凸形状部18及び凹形状部19の形状や個数、配置等はこれに限定されない。例えば、第6図(a),(b)では、凸形状部18が全て同一形状且つ規則的に形成されているが、ランダムな形状及び配置であってもよい。
【0096】
クリップ本体11Aの外周面にこの凹凸18,19を形成する方法としては、例えばクリップ本体11Aの外周面にシボ加工を施すことが好適である。クリップ本体11Aの外周面にシボ加工を施すことにより、簡便に凹凸18,19を形成することができる。なお、凹凸18,19の形成方法はこれに限定されない。
【0097】
第6図(a)では、クリップ本体11Aの外周面に、貫通孔16を塞ぐ封体17が設けられていないが、前述の第1の実施の形態と同様にこの封体17が設けられてもよい。この場合、封体17は、第1の実施の形態と同様に、表面に複数の凹凸を有する粗面材料により構成されてもよく、表面に凹凸を有しない材料により構成されてもよい。
【0098】
このクリップ10Aのその他の構成は第1の実施の形態と同様であり、第6図において第1〜5図と同一符号は同一部分を示している。
【0099】
このクリップ10Aにあっては、クリップ本体11Aの外周面に複数個の凹凸18,19を形成することにより、該クリップ本体11Aの外周面が粗面となっているので、第1の実施の形態におけるクリップ10と同様に、クリップ本体11AをEA材本体2中に埋設したときに、該EA材本体2の発泡合成樹脂がこの粗面に食い付くようになる。そのため、クリップ本体11Aの外周面にEA材本体2の発泡合成樹脂がしっかりと結合するようになり、クリップ10Aの該EA材本体2からの抜け出しが防止される。
【0100】
この実施の形態では、クリップ本体11Aの外周面自体を粗面としているので、該クリップ本体11Aの外周面に別途、粗面材料を設けることが不要であり、粗面付きのクリップ10Aを容易に製造することが可能である。
【0101】
この実施の形態のその他の作用効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0102】
[その他の構成]
上記の第1の実施の形態では、係合部15が貫通孔16により構成され、この貫通孔16をクリップ本体11の外周側から塞ぐように封体17が設けられており、この封体17が粗面材料により構成されているが、粗面材料の設置方法はこれに限定されない。
【0103】
例えば、前述のように、貫通孔16の代わりに挿入穴12の内周面に凹段部や凸段部を設けて係合部15を構成した場合には、封体17としてではなく、純粋にクリップ本体11の外周面に粗面を形成する目的で、粗面材料をクリップ本体11の外周面に設けてもよい。
【0104】
係合部15を貫通孔16により構成した場合でも、封体17を省略してもよい。この場合、クリップ本体11の外周面に粗面を形成する目的で、貫通孔16以外のクリップ本体11の外周面に粗面材料を設けてもよい。貫通孔16を塞ぐように封体17を設け、それ以外のクリップ本体11の外周面にさらに粗面材料を設けてもよい。この場合、封体17を粗面材料により構成してもよく、粗面材料以外の材料により構成してもよい。
【0105】
上記の各実施の形態では、挿入穴12を方形断面形状とし、この挿入穴12の全ての側面12a〜12dにそれぞれ貫通孔16(係合部15)を設けているが、これらのうちいずれか1個、2個又は3個の側面にのみ貫通孔16を設けてもよい。また、上記の実施の形態では、ドアトリム20のクリップ係止用突起21は、4個の爪部23を有しており、これらの爪部23が挿入穴12の全ての側面12a〜12dの貫通孔16にそれぞれ係合するように構成しているが、クリップ係止用突起21が爪部23を1個、2個又は3個のみ有し、挿入穴12のいずれかの側面の貫通孔16にのみ爪部23が係合するように構成してもよい。
【0106】
前述の通り、挿入穴12は円形断面形状などであってもよい。
【0107】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
【0108】
上記の実施の形態は、EA材及びその取付用クリップ、並びにそのドアトリムへの取付構造への本発明の適用例を示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形部材及びその取付用クリップ、並びにその取付構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 EA材(発泡成形部材)
2 EA材本体(発泡成形体)
10,10A クリップ
11 クリップ本体
12 挿入穴
12a〜12d 挿入穴の側面
14 フランジ部
15 係合部
16 貫通孔
17 封体
20 ドアトリム(被取付部材)
21 クリップ係止用突起
22 突出部
23 爪部
30 クリップ成形用金型
37 貫通孔形成用凸部
38 挿入穴形成用凸部
40 EA材成形用金型
43 クリップ固定用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形体を被取付部材に取り付けるためのクリップであって、
該被取付部材に設けられたクリップ係止用突起が挿入される挿入穴を有した筒状のクリップ本体と、
該挿入穴の内周面に設けられた、該クリップ係止用突起が係合する係合部と
を備えており、
該挿入穴は、該クリップ本体をその筒軸心線方向に貫通しており、
少なくとも該クリップ本体の筒軸心線方向の一端側が該発泡成形体に埋設されるようにして該発泡成形体と一体化されるクリップにおいて、
該クリップ本体のうち、少なくとも該発泡成形体に埋設される部分の外周面の一部が粗面となっていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1において、前記クリップ本体の外周面に、表面が粗面となっている粗面材料が設けられていることを特徴とするクリップ。
【請求項3】
請求項2において、前記粗面材料は不織布であることを特徴とするクリップ。
【請求項4】
請求項3において、前記不織布は、目付が60〜140g/mであることを特徴とするクリップ。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記係合部は、前記クリップ本体を外周側から前記挿入穴まで貫通した貫通孔よりなり、
該クリップ本体の外周側に、該貫通孔を封鎖した封体が設けられており、
該封体が前記粗面材料よりなることを特徴とするクリップ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記クリップ本体の外周面に複数個の凹凸が形成されることにより、該クリップ本体の外周面が前記粗面とされていることを特徴とするクリップ。
【請求項7】
請求項6において、前記クリップ本体の外周面にシボ加工が施されることにより前記凹凸が形成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項8】
発泡成形体と、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のクリップと
を有し、
該クリップは、少なくとも前記クリップ本体の筒軸心線方向の一端側が該発泡成形体に埋設されることにより該発泡成形体と一体化されており、
前記粗面が該発泡成形体中に配置されていることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項9】
請求項8に記載の発泡成形部材を製造するための方法であって、
発泡成形体成形用金型の内面に設けられたクリップ固定用突起を前記挿入穴に挿入して前記クリップを該発泡成形体成形用金型の内面に取り付けるクリップ取付工程と、
該発泡成形体成形用金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程と
を有しており、
該発泡成形工程において、前記粗面を該発泡成形体中に埋没させることを特徴とする発泡成形部材の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、前記クリップ固定用突起は、前記挿入穴に挿入された状態において、その外周面が該挿入穴の内周面に密着するように構成されていることを特徴とする発泡成形部材の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の発泡成形部材を被取付部材に取り付けた構造であって、
該被取付部材にクリップ係止用突起が設けられており、
該クリップ係止用突起が前記クリップの前記挿入穴に挿入されて前記係合部に係合したことにより、該発泡成形部材が該被取付部材に取り付けられている発泡成形部材の取付構造。
【請求項12】
請求項11において、前記クリップ係止用突起は、前記被取付部材から突出した突出部と、該突出部から側方へ張り出した爪部とを備え、該爪部が前記係合部に係合していることを特徴とする発泡成形部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−35546(P2012−35546A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178875(P2010−178875)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】