説明

発泡用樹脂組成物、発泡同軸ケーブル及び発泡同軸ケーブルの製造方法

【課題】 本発明は、発泡時の成核剤として金属不活性剤を用いた発泡用樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に発泡時の成核剤として金属不活性剤、例えば、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール系のものや、2’,3−ビス[3−[3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジドなどのヒドラジド系のものを0.01〜1.0質量部添加してなる発泡用樹脂組成物にあり、これにより、発泡セルの微細化を図り、優れた特性の樹脂組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡時の成核剤として金属不活性剤を用いた発泡用樹脂組成物、発泡同軸ケーブル及び発泡同軸ケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波用の同軸ケーブルは、近年になりケーブルの使用周波数帯域がGHzオーダーに達している。GHz帯域においては、低周波数帯域よりも減衰量(tanδなどの誘電特性)の小さい同軸ケーブルが要求されるため、内部導体(中心導体)上に被覆される絶縁体を発泡形成することが行われている(特許文献1〜2)。
【特許文献1】特許3227091号
【特許文献2】特許2668198号
【0003】
このような発泡同軸ケーブルにおいて、発泡セル(気泡核)を微細化することで、発泡絶縁体の潰れ性などの機械的特性を向上させることができ、また、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)を優れたものとすることができ、さらに、ケーブル製造も安定し、長尺成形できることが知られている。
【0004】
一方、発泡同軸ケーブルでは、内部導体の直上にポリエチレンなどの発泡絶縁体が被覆された構造であるため、高温環境下での使用によっては、絶縁体が導体(通常銅)との接触により害を受け(銅害)、樹脂の分子切断などの劣化が誘発され、減衰量が悪化することが知られている。
【0005】
また、現在までのところ、ポリエチレンなどの発泡用のベース樹脂に対して、アゾジカルボンアミド(ADCA)や4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)などの化学発泡剤を少量添加することにより、微細な発泡セルが得られることが判明している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような化学発泡剤を、発泡セルの核となる成核剤として使用すると、発泡剤が熱分解されて、発泡ガスが生成される反応が起こると同時に、一般的には副反応も起こり、分解残渣などの副生成物が生成される。この副生成物の吸水性の影響により、添加量が少量であっても、減衰量に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0007】
また、ケーブルを高温環境下で使用しようとする場合、上記したように銅害が発生し易いため、その劣化防止剤として酸化防止剤や銅害防止剤の金属不活性剤などを添加することも行われているが、これらの添加剤にあっても、多量に添加することで、減衰量を悪化させる懸念があった。
【0008】
さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末や窒化ホウ素粉末などを添加することにより、微細な発泡セルが得られるとされているが、PTFE粉末や窒化ホウ素粉末は高価で実用上の問題がある他、両粉末の場合、微細化が不十分であるという問題もあった。勿論、これらの粉末を用いる場合でも、ケーブルを高温環境下で使用するときには、劣化防止剤として、上記した酸化防止剤や銅害防止剤を別途添加する必要があった。
【0009】
このような状況下にあって、本発明者等は、種々の試験を行ったところ、上記したADCAなどの化学発泡剤や、PTFE粉末、窒化ホウ素粉末などを使用することなくとも、銅害防止剤である、上記金属不活性剤を適宜添加することで、発泡セルの十分な微細化を図ることが可能であることを見い出した。より具体的には、用いる金属不活性剤としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール系のもの、又は、2’,3−ビス[3−[3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジドなどのヒドラジド系のものが、良好であることが分った。つまり、上記金属不活性剤が成核剤として機能し、発泡セルの微細化が可能となり、また、金属不活性剤自体は、銅害防止剤であるため、発泡絶縁体の劣化防止も可能であることが分った。さらに、このとき、酸化防止剤を併用すれば、より良好な結果が得られることも見い出した。
【0010】
本発明は、この観点に立ってなされたもので、基本的には、ポリエチレンなどのベース樹脂に対して、発泡時の成核剤として機能する金属不活性剤を添加した発泡用樹脂組成物、これを用いた発泡同軸ケーブル、及び発泡同軸ケーブルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の本発明は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に発泡時の成核剤として金属不活性剤0.01〜1.0質量部添加してなることを特徴とする発泡用樹脂組成物にある。
【0012】
請求項2記載の本発明は、前記ポリオレフィン系樹脂が高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の発泡用樹脂組成物にある。
【0013】
請求項3記載の本発明は、前記金属不活性剤がトリアゾール系、又は、ヒドラジド系の金属不活性剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡用樹脂組成物にある。
【0014】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜3から選ばれる樹脂組成物に酸化防止剤を添加することを特徴とする発泡用樹脂組成物にある。
【0015】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1〜4から選ばれる樹脂組成物を、内部導体上に発泡被覆されて発泡絶縁体としたことを特徴とする発泡同軸ケーブルにある。
【0016】
請求項6記載の本発明は、前記請求項1〜4から選ばれる樹脂組成物を、発泡剤の存在下で押出機により内部導体上に発泡被覆させて発泡絶縁体とすることを特徴とする発泡同軸ケーブルの製造方法にある。
【0017】
請求項7記載の本発明は、前記発泡剤がガス発泡剤、化学発泡剤、又はこれらの併用からなることを特徴とする請求項6記載の発泡同軸ケーブルの製造方法にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発泡用樹脂組成物によると、ベース樹脂に対して、成核剤兼銅害防止剤の金属不活性剤を添加したものであるため、通常の成核剤である、ADCAなどの化学発泡剤やPTFE粉末、窒化ホウ素粉末などを添加することなく、発泡時十分な発泡の微細化が得られる。従って、これを発泡同軸ケーブルに用いれば、化学発泡剤添加時のように分解残渣などの発生もなく、また、別途銅害防止剤を添加する必要もないことから、伝送特性の減衰量を小さくすることができる。また、発泡の微細化により、得られる発泡絶縁体の潰れ性などの機械的特性が向上し、また、優れたVSWRが得られ、さらに、ケーブル製造も安定し、長尺成形が可能となる。さらに、金属不活性剤と共に、酸化防止剤を添加すれば、より良好な効果が得られる。
【0019】
本発明の発泡同軸ケーブルによると、上記発泡用樹脂組成物を、内部導体上に発泡絶縁体として発泡被覆させてあるため、発泡の微細化されたケーブルが得られる。勿論、発泡の微細化により、上記したように、効果、即ち、減衰量が小さく、潰れ性などの機械的特性が向上し、優れたVSWRが得られる。製造も安定し、長尺成形が可能なケーブルが得られる。
【0020】
本発明の発泡同軸ケーブルの製造方法によると、通常の押出機により内部導体上に発泡絶縁体を発泡被覆させることができるため、特別な装置は必要とせず、良好な生産性が得られる。このとき、通常の発泡と同様、ガス発泡剤、化学発泡剤、又はこれらを併用して用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の発泡用樹脂組成物で用いるベース樹脂のポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、好ましい樹脂としてポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。特にポリエチレンの場合、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)の使用が好ましく、これらを単独で、又は混合として用いることもできる。さらに、ポリエチレンとポリプロピレンを混合物として用いることも可能である。
【0022】
また、本発明で用いる金属不活性剤としては、トリアゾール系、又は、ヒドラジド系のものを挙げることができる。具体的には、トリアゾール系としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、ヒドラジド系としては、2’,3−ビス[3−[3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジドの使用が好ましい。
【0023】
この金属不活性剤の添加量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.01〜1.0質量部とする。その理由は、0.01質量部未満では十分な成核剤としての機能、効果が得られなからである。逆に、1.0質量部を上限としたのは、これを超える量を添加しても、発泡セルの粒子径は変わらず、添加量が多くなる分減衰量増加の悪影響が大きくなるからである。しかし、より望ましい添加量は、0.1〜0.7質量部である。
【0024】
この樹脂組成物において、好ましくは、金属不活性剤と共に酸化防止剤を添加するとよい。この酸化防止剤は、特に限定されないが、例えば以下のものを挙げることができる。 (1)モノフェノール系では2,6−ジ−第三−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−第三−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4,6−トリ−第三−ブチルフェノール、オルト−第三−ブチルフェノールなど、
(2)ビス、トリス、ポリフェノール系では2,2’メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2,2’メチレン−ビス−(4−エチル−6−第三−ブチルフェノール)、4,4’メチレン−ビス−(2,6−ジ−第三−ブチルフェノール)、4,4’ブチリデン−ビス−((4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなど、
(3)ヒンダート・フェノール系ではテトラキシ−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、n−オクタデシル−3(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−ブチル・フェニル)プロピオネート、ヒンダートフェノール、ヒンダービストフェノールなど、
(4)チオビスフェノール系では4,4’チオビス−(6−第三−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’チオビス−(6−第三−ブチル−o−クレゾール)、ビス(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、ジアルキル・フェノール・スルフィドなど、
(5)アミン系ではN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなど、
(6)リン系ではトリス(ノニルフェノール)ホスファイ、トリス(混合物−及びジ−ノニルフェノール)ホスファイなど、
(7)その他、ジラウリル・チオジブロピオネート、ジステアリル・チオジブロピオネート、ジステアリル−β,β−チオブチレート、ラウリル・ステアリル・チオジブロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジブロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジブロピオネート、含硫黄エステル化合物、アミル−チオグリコレート、1,1’−チオビス(2−ナフトール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、ヒドラジン誘導などであり、これらは、単独でもよく、併用することもできる。
【0025】
そして、その添加量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.01〜1.0質量部とする。その理由は、0.01質量部未満では十分な添加効果が得られず、逆に、1.0質量部を超えても、特に添加効果の向上が見られず、添加量が多くなる分減衰量増加の悪影響が大きくなるからである。
【0026】
また、本樹脂組成物に対しては、必要により、その他の添加物、例えば架橋助剤、分散剤、無機フィラー、さらには、他の成核剤として、上記ADCAやOBSHなどのように、分解残渣の弊害のないものとして、例えば、適量のタルク、BN、フッ素樹脂、アゾジカルボンアミド、クレイなどを併用することもできる。
【0027】
図1は、本発明に係る発泡同軸ケーブルの一例を示したものである。図中、1は撚線導体などの内部導体、2は上記本発明の発泡用樹脂組成物を、押出成形により、導体1上に被覆された発泡絶縁体、3は金属編組やコルゲート銅パイプなどからなる金属層(外部導体)、4はポリエチレンなどからなるシース、5a,5bは必要により施される内スキン層、外スキン層である。このケーブル外径は、特に限定されないが、約3〜50mm程度のものとして形成される。なお、必要に応じて絶縁体2と金属層3の間にアルミテープなどを入れることもできる。
【0028】
図2は、本発明に係る発泡同軸ケーブルの製造方法を実施するための押出装置系の一例を示したものである。10は第1押出機、11は第1押出機の樹脂供給口、20は第2押出機、21は第2押出機のクロスヘッド、30は冷却部、40は第1押出機へのガス発泡剤供給部、50は内スキン層用の第3押出機である。
【0029】
この押出装置系による製造方法では、先ず、第1押出機10の樹脂供給口11から、ベース樹脂のペレットと、成核剤の金属不活性剤、酸化防止剤、必要な添加剤などからなるマスターバッチとをドライブレンドして供給し、第2押出機20に導き、そのクロスヘッド21により、内部導体1上に発泡絶縁体を被覆させる。この前に、好ましくは、内スキン層用の第3押出機50により、内部導体1上に低密度ポリエチレンなどの内スキン層5aを被覆する。第1押出機10の押出温度は140〜230℃程度に設定し、第2押出機20の押出温度は140〜230℃程度に設定する。第3押出機の押出温度は140〜200℃程度に設定する。第1押出機10へは、ガス発泡剤供給部40から、発泡剤として窒素ガスなどを供給する。これにより、上述したように、金属不活性剤が成核剤として機能し発泡セルは微細化される。
【0030】
第2押出機20のクロスヘッド21により被覆された発泡絶縁体を冷却部30で冷却する。このとき、好ましくは、第4押出機(図示省略)の押出部を、例えばクロスヘッド21内に組み込み、低密度ポリエチレンなどの外スキン層5bを発泡絶縁体の外周に被覆させる。この第4押出機の押出温度は140〜200℃程度に設定する。この後、必要な外部導体、シースを施すことにより、上記した発泡同軸ケーブルが得られる。
【0031】
これらの押出成形は、通常の押出機により対応することができ、良好な生産性を持って行うことができる。なお、押出方式としては、各被覆層毎にタンデム(順次)に行ってもよく、また、同時押出としてもよい。発泡剤としてのガスは、窒素ガスの他に、例えば、アルゴンガス、フロンガス、炭酸ガスなどの不活性ガスを用いることができる。また、化学発泡剤については、上述したように、分解残渣発生の問題があるが、超微量であれば添加することも可能であり、上記ガス発泡と併用することもできる。このような化学発泡剤しては、アゾジカルボンアミド、4,4’オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどを挙げることができる。
【0032】
〈実施例、比較例〉
先ず、表1〜表2に示す配合からなる発泡用樹脂組成物(実施例1〜18、比較例1〜14)を用いて、図1と同構造をなす各サンプルの発泡同軸ケーブルを製造した。各サンプルケーブルの製造にあたっては、図2に示す押出装置系により、上述した温度設定などのもとで行った。ここで、内部導体の外径は9mm、発泡絶縁体の外径は22mm、ケーブル全体の外径は28mmである。より具体的には、内部導体の外周に低密度ポリエチレンの内スキン層を設け、窒素ガスによるガス発泡で発泡絶縁体を被覆し、発泡絶縁体の外周には低密度ポリエチレンの外スキン層を施した後、コルゲート構造の外部導体とポリエチレンシースを施した。なお、上記各内外スキン層の低密度ポリエチレンはUBE−C460(宇部興産社製)である。
【0033】
また、用いたベース樹脂のHDPEは2070(宇部丸善ポリエチレン社製、密度0.963、MI=8の高密度ポリエチレン)、LDPEはB028(宇部丸善ポリエチレン社製、密度0.928、MI=0.4の低密度ポリエチレン)、PPはJ703W(三井化学社製、密度0.91のブロックコポリマー)である。酸化防止剤はイルガノックス1010(ヒンダートフェノール系の酸化防止剤、チバスペシャルティケミカルズ社製)、金属不活性剤&成核剤(兼成核剤)はCDA−1(旭電化社製、トリアゾール系もの=3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール)、CDA−1M(上記CDA−1に加工時揮発性、分散性の改善を施したもの)、イルガノックスMD1024(ヒドラジド系のもの=2’,3−ビス[3−[3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジド、チバスペシャルティケミカルズ社製)、成核剤はビニホールAC♯3(永和化成工業社製、ADCA=アゾジカルボンアミド)、HP−1(水島合金鉄社製、窒化ホウ素)、KTL−500F(喜多村社製、PTFE=ポリテトラフルオロエチレン)である。なお、表1〜表2の配合数値は質量部を示す。
【0034】
各サンプルケーブルについて、表3〜表4に示すような、特性試験を行い、その特性(熱老化性、耐潰れ性、平均発泡セル径、VSWR、発泡度、減衰量)を求めた。
【0035】
〈熱老化性試験〉
サンプルケーブルを80℃の恒温槽に所定時間投入し、脆化やゲル化などが生じている否かを目視にて判断した。そして、2年以上なにも生じない場合を「◎」で表示し、1〜2年未満なにも生じない場合を「○」で表示し、1年未満で脆化やゲル化などが生じた場合を「×」で表示した。
【0036】
〈耐潰れ性試験〉
サンプルケーブルに荷重3Kgを掛けたときの導体付き絶縁体外径の変形率で評価した。変形率は23℃下で、変形率(%)=100−〔(試験後の絶縁体外径−内部導体径/試験前の絶縁体外径−内部導体径)×100〕として求めた。そして、変形率6%未満の場合を「◎」で表示し、変形率6%〜8%未満の場合を「○」で表示し、変形率8%以上の場合を「×」で表示した。
【0037】
〈平均発泡セル径試験〉
サンプルケーブルの発泡絶縁体断面を観察し、無作為に選択した100個のセルの「(長い方のセル径+短い方のセル径)/2」の平均を平均発泡セル径(mm)とした。
【0038】
〈VSWR試験〉
サンプルケーブルをネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製、8722ES)を用いて測定した。ここで、1.2未満が合格レベルで、1.0に近いほど良好である。
【0039】
〈発泡度試験〉
サンプルケーブルの発泡絶縁体を取り出し、発泡度は、発泡度=(1−発泡後の比重/発泡前の比重)×100の式により求めた。
【0040】
〈減衰量試験〉
サンプルケーブルをネットワークアナライザーを用いて、2GHz下での減衰量を求めた。ここで、62dB/Km未満が合格レベルである。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
上記の表1〜表4から明らかなように、本発明の発泡同軸ケーブルの場合(実施例1〜18)、全ての特性において良好であることが分かる。
【0046】
これに対して、本発明の条件を欠く発泡同軸ケーブルの場合(比較例1〜14)、いずれの点において問題があることが分る。
つまり、比較例1〜7では、金属不活性剤兼成核剤が未添加で、従来型の成核剤が添加してあるため、熱老化性が不十分であることが分る。比較例8、10、12では、金属不活性剤兼成核剤が添加されているものの、その量が少な過ぎるため、十分な発泡セルの微細化が行われず、特性上問題があることが分かる。比較例9、11、13では、金属不活性剤兼成核剤の添加量が多過ぎるため、この添加量により減衰量が増加していることが分る。比較例14では、金属不活性剤兼成核剤も、従来型の成核剤も添加されていないため、発泡が制御できず、巨大空泡が生じて、ケーブル製造自体が不可能であることが分る。
【0047】
なお、上記説明では、本発明の発泡用樹脂組成物を発泡同軸ケーブルに使用する場合を中心にして、発泡同軸ケーブル及びその製造方法について説明したが、本発明の発泡用樹脂組成物は、これに限定されず、通常のケーブル用の樹脂被覆層材料として使用することができる。さらに、本発明と同様の課題を有する電子、電気機器部品などの発泡樹脂成形体として使用することもできる。また、その際の通常ケーブルの製造方法、又は電子、電気機器部品などの製造方法にも、勿論本発明の製造方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る発泡同軸ケーブルの一例を示した縦断端面図である。
【図2】本発明に係る発泡同軸ケーブルの製造方法を実施するための押出装置系の一例を示した概略説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・内部導体、2・・・発泡絶縁体、3・・・金属層(外部導体)、4・・・シース、10・・・第1押出機、20・・・第2押出機、21・・・第2押出機のクロスヘッド、30・・・冷却部、40・・・ガス発泡剤供給部、50・・・第3押出機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100質量部に発泡時の成核剤として金属不活性剤0.01〜1.0質量部添加してなることを特徴とする発泡用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂が高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属不活性剤がトリアゾール系、又は、ヒドラジド系の金属不活性剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項4】
前記請求項1〜3から選ばれる樹脂組成物に酸化防止剤を添加することを特徴とする発泡用樹脂組成物。
【請求項5】
前記請求項1〜4から選ばれる樹脂組成物を、内部導体上に発泡被覆されて発泡絶縁体としたことを特徴とする発泡同軸ケーブル。
【請求項6】
前記請求項1〜4から選ばれる樹脂組成物を、発泡剤の存在下で押出機により内部導体上に発泡被覆させて発泡絶縁体とすることを特徴とする発泡同軸ケーブルの製造方法。
【請求項7】
前記発泡剤がガス発泡剤、化学発泡剤、又はこれらの併用からなることを特徴とする請求項6記載の発泡同軸ケーブルの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−51190(P2007−51190A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236290(P2005−236290)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】