説明

発電システム

【課題】 発電システムを高効率化すると共に設備の簡素化を図る。
【解決手段】 本発明にかかる発電システムは、石炭の熱分解により得られた炭素に酸素を反応させて燃料ガスを生成するガス化部(10)と、ガス化部により生成された燃料ガスと酸化剤とを電気化学反応させて発電する燃料電池(200)と、燃料電池を収容する圧力容器(210)と、空気から酸素と窒素とを分離する分離部(30)と、分離部で分離された酸素をガス化部に供給する酸素供給部(30)と、分離部で分離された窒素を冷媒として圧力容器内に供給し、電気化学反応で発熱する燃料電池の温度を作動温度に維持する窒素供給部(30)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭のもつエネルギーを効率よく利用するための発電形態として、例えば、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC;Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle)が知られている。IGFCでは、石炭をガス化して水素や一酸化炭素等を含む燃料ガスを生成し、この燃料ガスを利用して燃料電池を作動させると共に、ガスタービン及び蒸気タービンを駆動させて複合的に発電を行う。
【0003】
IGFCを行う発電システムとしては、酸素を用いて石炭を部分燃焼させ燃料ガスを生成するガス化部と、空気から酸素を分離してガス化部に供給する分離部と、燃料ガスと酸化剤とを電気化学反応させて発電する燃料電池と、燃料ガスや燃料電池の排ガスによって発電するガスタービン及び蒸気タービンとを備えたものが知られている。
【0004】
上記の燃料電池としては、例えば、溶融状態の炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC;Molten Carbonate Fuel Cell)が用いられる。このMCFCの作動温度は約650度であるが、作動時の電気化学反応によって温度が上昇するため、作動温度を維持するために冷媒ガスが供給される。よって、この発電システムでは、冷媒ガスを燃料電池へ供給すべく、冷媒ガスを生成する冷媒ガス生成装置や別途に調達した冷媒ガスを貯蔵する貯蔵タンク等が更に備えられる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−277118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した発電システムでは、燃料電池に冷媒ガスを供給するために、冷媒ガスの生成装置又は貯蔵タンク等を備える分、設備が複雑化するという問題があった。
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電システムを高効率化すると共に設備の簡素化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の発電システムは、石炭の熱分解により得られた炭素に酸素を反応させて燃料ガスを生成するガス化部と、前記ガス化部により生成された燃料ガスと酸化剤とを電気化学反応させて発電する燃料電池と、前記燃料電池を収容する圧力容器と、空気から酸素と窒素とを分離する分離部と、前記分離部で分離された酸素を前記ガス化部に供給する酸素供給部と、前記分離部で分離された窒素を冷媒として前記圧力容器内に供給し、前記電気化学反応で発熱する前記燃料電池の温度を作動温度に維持する窒素供給部と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発電システムでは、分離部において副生される窒素が、燃料電池を冷却する冷媒ガスとして燃料電池を収容する圧力容器内に供給される。このため、分離部からの窒素を有効に活用することができ、発電システムの効率を向上させることができる。また、冷媒ガスを生成するための装置や、調達した冷媒ガスを貯蔵するための貯蔵タンク等を別途に備える必要がない分、発電システムの設備を簡素化することができる。さらに、不活性ガスである窒素が冷媒ガスとして圧力容器内に供給されるため、燃料電池から燃料ガスがリークした場合であっても、燃焼ガスが燃焼反応を起こすことを防止でき、安全性を高めることができる。
【0009】
かかる発電システムにおいて、前記ガス化部は、前記炭素に酸素を反応させることで、一酸化炭素及び水素を含む中間燃料ガスを生成するガス化炉と、前記中間燃料ガスの生成時における排熱によって水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、前記中間燃料ガスに含まれる一酸化炭素と、前記水蒸気発生部により発生させた水蒸気とを反応させることで、前記中間燃料ガスに含まれる一酸化炭素の量を減少させると共に水素の量を増加させて前記燃料ガスを生成するシフト反応器と、を有することが好ましい。
【0010】
この発電システムでは、シフト反応器において、ガス化炉で生成された中間燃料ガスに含まれる一酸化炭素と、水蒸気発生部で発生させた水蒸気とから、二酸化炭素及び水素を生成するシフト反応を生じさせることができる。つまり、シフト反応器によって、一酸化炭素が減少し水素が増加するように中間燃料ガスの組成を変化させて、燃料ガスを生成することができる。この燃料ガスを燃料電池に供給して電気化学反応させることで、燃料電池の発電効率を高めることができ、発電システムの効率を向上させることができる。
【0011】
かかる発電システムにおいて、前記分離部は、前記空気を前記酸素及び前記窒素が液化するまで冷却した後、前記酸素が液体の状態を維持し、前記窒素が気体となるまで温度を上昇させることで、前記空気から前記酸素と前記窒素とを分離することが好ましい。
【0012】
この発電システムでは、いわゆる深冷分離方式で空気から酸素と窒素とを分離するため、圧縮及び冷却された状態の酸素及び窒素を得ることができる。これによって、酸素及び窒素を夫々ガス化部及び圧力容器に効率よく搬送できると共に、燃料電池を効率よく冷却することができる。その結果、発電システムの効率を向上させることができる。
【0013】
かかる発電システムにおいて、前記燃料電池は、加圧下で前記燃料ガスと前記酸化剤との電気化学反応を行うものであり、前記圧力容器から排出される前記窒素の流量を調整することで、前記圧力容器内の圧力と前記電気化学反応の圧力との差を抑制する調整器をさらに有することが好ましい。
【0014】
この発電システムでは、燃料電池を加圧運転する際に、燃料電池の内部と外部との間に圧力差を生じさせないように、調整器によって圧力容器内の圧力を調整できる。よって、効率よく燃料電池を加圧運転することができ、発電システムの効率を向上させることができる。
【0015】
かかる発電システムにおいて、前記酸化剤としては、空気中の酸素及び二酸化炭素が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発電システムを高効率化できると共に設備の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る発電システムの構成例を示す模式図である。
【図2】燃料電池の電気化学反応を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
===発電システムについて===
以下、図1及び図2を参照しつつ、本発明の実施形態に係る発電システム1について説明する。図1は、本実施形態に係る発電システム1の構成例を示す模式図である。図2は、図1に示す発電システム1に備えられた溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)200の電気化学反応について説明するための図である。
【0019】
発電システム1は、ガス化部10と、MCFC200及び圧力容器210を有する第1発電部20と、深冷分離装置30(分離部、酸素供給部、窒素供給部)とを備える。更に、発電システム1は、後述するMCFC200のカソード201から排出されるカソード排ガスを利用して発電する第2発電部40と、水蒸気を利用して発電する第3発電部50と、二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部60とを備えている。
【0020】
この発電システム1では、MCFC200、第2発電部40、及び、第3発電部50による複合的な発電を行う。すなわち、ガス化部10において石炭をガス化して燃料ガスを生成し、この燃料ガスを利用して第1発電部20のMCFC200を作動させる。また、カソード排ガスを用いて第2発電部40を駆動させ、ガス化部10やMCFC200からの熱で水蒸気を発生させて第3発電部50を駆動させる。以下、発電システム1の各構成について夫々説明する。
【0021】
<<<深冷分離装置>>>
深冷分離装置30は、二酸化炭素及び水分を吸着除去した空気を酸素及び窒素が液化するまで冷却した後、酸素が液体の状態を維持し、窒素が気体となるまで温度を上昇させることで、空気から酸素と窒素とを分離する。よって、この深冷分離装置30では、圧縮及び冷却された状態の酸素及び窒素が得られる。そして、深冷分離装置30は、得られた酸素をガス化部10に供給すると共に、得られた窒素をMCFC200の冷媒として圧力容器210内に供給する。この際、酸素及び窒素は圧縮された状態であるため、深冷分離装置30は、酸素をガス化部10へ効率よく搬送できると共に、窒素を圧力容器210内に効率よく搬送できる。また、深冷分離装置30は、冷却された状態の窒素を冷媒ガスとして圧力容器210内に供給できるため、MCFC200を効率よく冷却して作動温度に維持できる。よって、発電システム1の効率を向上させることができる。
【0022】
<<<ガス化部>>>
ガス化部10は、石炭ガス化炉(ガス化炉)100と、蒸気発生部110と、シフト反応器140とを備え、更に脱塵装置120と、脱硫装置130とを備えている。
【0023】
石炭ガス化炉100は、石炭を炭素等に熱分解し、得られた炭素と深冷分離装置30から供給された酸素とを反応させて水素、一酸化炭素、二酸化炭素等を含む中間燃料ガスを生成する。
【0024】
水蒸気発生部110は、石炭ガス化炉100から排出された中間燃料ガスの排熱を利用して水蒸気を発生させるもので、ガス冷却器101と、復水器102とを備えている。ガス冷却器101は、復水器102から供給される水と、中間燃料ガスとを熱交換させることで、中間燃料ガスを冷却すると共に、水蒸気を発生させる。尚、ガス冷却器101で発生させた水蒸気は、一部がシフト反応器140へ供給され、残りが第3発電部50に供給される。復水器102は、第3発電部50で使用された水蒸気を回収して液体の水に変化させ、再度ガス冷却器101へ供給する。つまり、水蒸気発生部110では、ガス冷却器101と復水器102とを、水が液体及び気体に変化しながら循環している。
【0025】
脱塵装置120は、例えばポーラスフィルタを備え、ポーラスフィルタにガス冷却器101から排出された中間燃料ガスを通過させることによって、中間燃料ガスに含まれる固形の不純物を除去する。脱硫装置130は、例えば、脱塵装置120から排出された中間燃料ガスと、石灰水や炭酸カルシウム等の硫黄吸収剤とを接触させて、中間燃料ガスに含まれる硫黄成分を除去する。
【0026】
シフト反応器140は、次式に示すように、脱硫装置130から排出される中間燃料ガスに含まれる一酸化炭素と、ガス冷却器101から供給される水蒸気とをシフト反応させて、二酸化炭素及び水素を発生させる。
CO+HO→CO+H
【0027】
このシフト反応器140では、一酸化炭素が減少し水素が増加するように、中間燃料ガスの組成を変化させて燃料ガスを生成する。尚、シフト反応器140から排出される燃料ガスは、例えば、約650度のMCFC200の作動温度(以下単に作動温度と称する)と略同じ温度となる。そして、第1発電部20のMCFC200に供給される。
【0028】
<<<第1発電部>>>
第1発電部20は、MCFC200と、圧力容器210と、調整器220と、燃焼器230と、コンプレッサ240と、循環ブロワ250と、熱交換器260とを備えている。
【0029】
コンプレッサ240は、MCFC200に空気を搬送する。MCFC200は、例えばシフト反応器140から燃料ガスが供給されることによって作動温度となり、この作動温度において、燃料ガスと、コンプレッサ240から供給される空気とを電気化学反応させて発電する。
【0030】
このMCFC200では、燃料ガス及び空気を効率よく電気化学反応させて発電効率を高めるべく、加圧された燃料ガス及び空気が供給されて加圧運転を行う。
【0031】
例えば、MCFC200は、図2に示すように、多孔質の酸化ニッケル板からなるカソード201と、多孔質のニッケル板からなるアノード202と、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムの混合物の炭酸塩からなる電解質203とを有している。そして、カソード201とアノード202との間は、MCFC200で得られる電力を消費する負荷205を介して、外部回路204により接続されている。
【0032】
カソード201では、コンプレッサ240から供給される空気に含まれる酸素(O,酸化剤)及び二酸化炭素(CO,酸化剤)と、外部回路204から供給される電子(2e)とが反応して、炭酸イオン(CO2−)が発生する。また、カソード201からは、後述する燃焼排ガスに由来する水蒸気や、未反応の二酸化炭素及び酸素等を含む空気がカソード排ガスとして排出される。このカソード排ガスは、例えば作動温度となっている。カソード排ガスの一部は、燃焼器230に供給される。残りのカソード排ガスの一部は、循環ブロア250によって、カソード201に戻され、MCFC200の電気化学反応に再利用される。このように、カソード排ガスの一部をカソード201に戻すことで、カソード201に供給される空気の温度を作動温度付近まで上昇させることができ、発電システム1の効率を高めることができる。残りのカソード排ガスは、第2発電部40に供給される。
【0033】
電解質203は、作動温度において溶融状態となり、カソード201で発生させた炭酸イオンをアノード202に移動させる。
【0034】
アノード202では、シフト反応器140から供給された燃料ガス中の水素(H)と、電解質203を介してカソード201から移動してきた炭酸イオンとが反応することで、二酸化炭素(CO)及び水蒸気(HO)が発生し、同時に電子(2e)が放出される。放出された電子は、外部回路204を通ってカソード201に移動し、これが繰り返されることで電気が発生する。また、アノード202からは、二酸化炭素及び水蒸気と、未反応の燃料ガスとを主に含み、例えば作動温度となったアノード排ガスが排出される。アノード排ガスの一部は、燃焼器230に供給され、残りのアノード排ガスは、熱交換器260を介して第3発電部50に供給される。
【0035】
燃焼器230は、カソード排ガス中の酸素とアノード排ガス中の燃料ガスとを燃焼反応させ、二酸化炭素及び水蒸気を主に含む燃焼排ガスを排出する。燃焼排ガスは、循環ブロア250によって、カソード201に供給される。これによって、カソード201に供給される二酸化炭素の濃度を増加させてMCFC200の発電効率を高めることができる。
【0036】
循環ブロア250は、前述したようにカソード排ガスの一部及び燃焼排ガスを循環させてカソード201に供給する。
【0037】
圧力容器210は、MCFC200及び燃焼器230を収容している。また、圧力容器210の内部には、作動温度よりも低い温度の窒素が冷媒ガスとして深冷分離装置30から供給されている。この冷媒ガスによって、MCFC200では、電気化学反応の発熱に伴う温度上昇が抑制され、作動温度に維持される。よって、深冷分離装置30で空気から酸素を分離する際に副生される窒素を、MCFC200の冷媒ガスとして有効に利用でき、発電システム1の発電効率を向上させることができる。
【0038】
また、発電システム1は、深冷分離装置30からの窒素が圧力容器210内に供給されるため、冷媒ガスを生成するための装置や、調達した冷媒ガスを貯蔵するための貯蔵タンク等を備える必要がない。その結果、設備を簡素化できる。
【0039】
尚、圧力容器210内に供給された窒素は、MCFC200を冷却することで、例えば約300度〜400度となり、調整器220を介して、後述する二酸化炭素回収部60の熱交換器603に供給される。
【0040】
調整器220は、例えば流量調整弁からなり、圧力容器210から排出される窒素の流量を調整して、圧力容器210内の圧力を、MCFC200に供給される燃料ガス及び空気の圧力と同程度若しくはこの圧力よりも高い圧力に調整する。これによって、MCFC200の内部から外部へ燃料ガス等がリークすることを防止でき、MCFC200を効率よく加圧運転することができる。その結果、MCFC200の発電効率を高め、発電システム1の効率を向上させることができる。
【0041】
熱交換器260は、例えば作動温度のアノード排ガスと、後述する二酸化炭素回収部60の吸収塔601から排出されるCO分離ガスとを熱交換させ、アノード排ガスを冷却すると共に、CO分離ガスを加熱する。尚、熱交換器260から排出されたアノード排ガスは第3発電部50に供給され、CO分離ガスはアノード202に供給される。
【0042】
<<<第2発電部>>>
第2発電部40は、カソード排ガスを利用して発電するものであり、同一の回転軸に接続された、ガスタービン401及び発電機402を備えている。ガスタービン401は、カソード排ガスが供給されることによって回転軸を回転させる。発電機402は、ガスタービン401が回転軸を回転させることによって発電する。尚、コンプレッサ240も、ガスタービン401及び発電機402と同一の回転軸に接続されており、ガスタービン401の回転に連動して駆動される。
【0043】
<<<第3発電部>>>
前述したように第3発電部50は、水蒸気を利用して発電する。すなわち、第1発電部20の熱交換器260から排出されるアノード排ガス及び第2発電部40のガスタービン401から排出されるカソード排ガスを利用して発生させた水蒸気と、ガス化部10のガス冷却器101から排出される水蒸気とを用いて発電する。
【0044】
この第3発電部50は、排熱回収ボイラ501、502と、気水分離器503と、循環ポンプ504と、発電機505と、蒸気タービン506、507と、復水器508とを備えている。
【0045】
排熱回収ボイラ501は、熱交換器260から排出されたアノード排ガスと、循環ポンプ504によって供給される水とを熱交換させることで、アノード排ガスを例えば約40度(吸収温度)に冷却すると共に、水蒸気を発生させる。尚、排熱回収ボイラ501で発生させた水蒸気は、蒸気タービン507に供給される。また、排熱回収ボイラ501で例えば吸収温度とされたアノード排ガスは、二酸化炭素回収部60の吸収塔601に供給される。
【0046】
排熱回収ボイラ502は、ガスタービン401から排出されるカソード排ガスと、循環ポンプ504によって供給される水とを熱交換させることで、カソード排ガスを冷却すると共に、水蒸気を発生させる。そして、排熱回収ボイラ502で発生させた水蒸気は、排熱回収ボイラ501で発生させた水蒸気と共に、蒸気タービン507に供給される。また、排熱回収ボイラ502で冷却されたカソード排ガスは、気水分離器503に供給される。
【0047】
気水分離器503は、排熱回収ボイラ502で冷却されることで液化した水をカソード排ガスから分離する。尚、気水分離器503で水が分離されたカソード排ガスは排気される。また、気水分離器503で取り出された水は循環ポンプ504によって排熱回収ボイラ501、502に供給される。
【0048】
蒸気タービン507は、蒸気タービン506及び発電機505と同一の回転軸に接続され、排熱回収ボイラ501、502から供給される水蒸気によって回転軸を回転させる。尚、蒸気タービン507から排出された水蒸気は、復水器508に供給される。
【0049】
蒸気タービン506は、ガス化部10のガス冷却器101から供給される水蒸気によって回転軸を回転させる。尚、蒸気タービン506から排出された水蒸気は、ガス化部10の復水器102に供給される。発電機505は、蒸気タービン506、507が回転軸を回転させることで発電する。
【0050】
復水器508は、蒸気タービン507から供給された水蒸気を液体の水に変化させる。復水器508から排出される水は、循環ポンプ504によって、気水分離器503から排出される水と共に、排熱回収ボイラ501、502に供給される。
【0051】
<<<二酸化炭素回収部>>>
二酸化炭素回収部60は、アルカノールアミン水溶液等の吸収液を利用して、第3発電部50の排熱回収ボイラ501から排出されるアノード排ガスから二酸化炭素を回収する。吸収液は、約40度の吸収温度ではアミノ基に二酸化炭素が結合するため、二酸化炭素を吸収する。また、吸収液は、約120度の再生温度においてアミノ基に結合していた二酸化炭素が脱離するため、二酸化炭素を放出する。
【0052】
二酸化炭素回収部60は、吸収塔601と、再生塔602と、熱交換器603、604と、分離器605とを備えている。二酸化炭素回収部60において吸収液は、吸収塔601で二酸化炭素を吸収した後、熱交換器603、604で再生温度以上に加熱され、再生塔602で二酸化炭素を放出する。そして、再度、熱交換器604で冷却されて、吸収塔601に戻される。
【0053】
吸収塔601では、吸収液と、排熱回収ボイラ501によって例えば吸収温度まで冷却されたアノード排ガスとを接触させ、次式に示すように、アノード排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる。尚、式中に示すRはアルキル基である。
R−NH+HO+CO→R−NHHCO
【0054】
吸収塔601によってアノード排ガスから二酸化炭素が分離された結果、主に水素を含むCO分離ガスが生成される。このCO分離ガスは、第1発電部20の熱交換器260によって加熱された後、MCFC200のアノード202に供給されて、電気化学反応に再利用される。これによって、発電システム1の効率を向上させることができる。
【0055】
熱交換器604は、吸収塔601から排出される吸収温度の吸収液と、再生塔602から排出される再生温度の吸収液とを熱交換させる。そして、熱交換器604は、吸収塔601から排出された吸収液を加熱して再生塔602に供給し、再生塔602から排出された吸収液を冷却して吸収塔601に供給する。
【0056】
再生塔602では、熱交換器604によって吸収温度以上に加熱され、更に熱交換器603によって再生温度以上に維持される吸収液を貯留する。そして、再生塔602では、次式に示すように、吸収液から二酸化炭素を放出させる。尚、式中に示すRはアルキル基である。
R−NHHCO→R−NH+HO+CO
【0057】
再生塔602において、吸収液から放出された二酸化炭素は、水蒸気等の気体成分と共に分離器605に供給される。
【0058】
熱交換器603は、再生塔602に貯留される吸収液と、第1発電部20の調整器220から供給される約300度〜400度の冷媒ガスとを熱交換させ、再生塔602に貯留される吸収液を再生温度以上に維持する。熱交換器603によって、冷却された冷媒ガスは排気される。
【0059】
分離器605は、再生塔602から供給された二酸化炭素及び水蒸気等を冷却して、水蒸気等を液体とし、気液分離によって、二酸化炭素と水等とを分離する。分離器605によって分離された二酸化炭素は、例えば不図示のタンクなどに回収される。また、分離器605によって分離された水等は、再生塔602に戻される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る発電システム1では、深冷分離装置30によって、石炭ガス化炉100に供給する酸素を空気から分離する際に副生される窒素が、MCFC200を冷却する冷媒ガスとして圧力容器210内に供給される。このため、深冷分離装置30で副生される窒素を有効に活用することができ、発電システム1の効率を向上させることができる。
【0061】
また、深冷分離装置30によって、圧縮及び冷却された状態の酸素及び窒素を得ることができるため、酸素を石炭ガス化炉100に効率よく搬送できると共に、窒素を圧力容器210に効率よく搬送することができる。また、圧力容器210に供給された窒素によってMCFC200を効率よく冷却することができる。
【0062】
更に、深冷分離装置30から窒素を圧力容器210内に冷媒ガスとして供給することができるため、冷媒ガスを生成するための装置や、別途に調達した冷媒ガスを貯蔵するための貯蔵タンク等を備える必要がない分、発電システム1の設備を簡素化することができる。
【0063】
また、不活性ガスである窒素が冷媒ガスとして圧力容器210内に供給されるため、燃料ガスがMCFC200からリークした場合であっても、燃料ガスと冷媒ガスとが燃焼反応を起こすことを防止でき、安全性を高めることができる。
【0064】
また、この発電システム1では、シフト反応器140によって、一酸化炭素が減少し水素が増加するように、中間燃料ガスの組成を変化させて燃料ガスを生成する。そして、この燃料ガスをMCFC200に供給して電気化学反応させるため、MCFC200の発電効率を高めることができる。よって、発電システム1の効率を向上させることができる。
【0065】
また、発電システム1では、MCFC200の内部と外部との間に圧力差を生じさせないように、調整器220によって圧力容器210内の圧力を調整して、MCFC200を加圧運転することができる。よって、MCFC200から燃料ガス等がリークすることを抑制でき、効率よくMCFC200を加圧運転することができる。その結果、発電効率を向上させることができ、発電システム1の効率を向上させることができる。
【0066】
===その他の実施形態===
前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0067】
例えば、前述した発電システム1では、深冷分離装置30によって空気から酸素と窒素とを分離することとした。しかし、特にこれに限定されるものではなく、例えば、高分子膜中のガス成分毎の透過速度の違いを利用する膜分離方式等によって、空気を酸素と窒素とに分離してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…発電システム 10…ガス化部 20…第1発電部 30…深冷分離装置
40…第2発電部 50…第3発電部 60…二酸化炭素回収部
100…石炭ガス化炉 101…ガス冷却器 102、508…復水器
110…水蒸気発生部 120…脱塵装置 130…脱硫装置
140…シフト反応器 200…MCFC 201…カソード
202…アノード 203…電解質 204…外部回路 205…負荷
210…圧力容器 220…調整器 230…燃焼器 240…コンプレッサ
250…循環ブロア 260、603、604…熱交換器
401…ガスタービン 402、505…発電機
501、502…排熱回収ボイラ 503…気水分離器
504…循環ポンプ 506、507…蒸気タービン 601…吸収塔
602…再生塔 605…分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭の熱分解により得られた炭素に酸素を反応させて燃料ガスを生成するガス化部と、
前記ガス化部により生成された燃料ガスと酸化剤とを電気化学反応させて発電する燃料電池と、
前記燃料電池を収容する圧力容器と、
空気から酸素と窒素とを分離する分離部と、
前記分離部で分離された酸素を前記ガス化部に供給する酸素供給部と、
前記分離部で分離された窒素を冷媒として前記圧力容器内に供給し、前記電気化学反応で発熱する前記燃料電池の温度を作動温度に維持する窒素供給部と、
を有することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記ガス化部は、
前記炭素に酸素を反応させることで、一酸化炭素及び水素を含む中間燃料ガスを生成するガス化炉と、
前記中間燃料ガスの生成時における排熱によって水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、
前記中間燃料ガスに含まれる一酸化炭素と、前記水蒸気発生部により発生させた水蒸気とを反応させることで、前記中間燃料ガスに含まれる一酸化炭素の量を減少させると共に水素の量を増加させて前記燃料ガスを生成するシフト反応器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記分離部は、前記空気を前記酸素及び前記窒素が液化するまで冷却した後、前記酸素が液体の状態を維持し、前記窒素が気体となるまで温度を上昇させることで、前記空気から前記酸素と前記窒素とを分離する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記燃料電池は、加圧下で前記燃料ガスと前記酸化剤との電気化学反応を行うものであり、
前記圧力容器から排出される前記窒素の流量を調整することで、前記圧力容器内の圧力と前記電気化学反応の圧力との差を抑制する調整器をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の発電システム。
【請求項5】
前記酸化剤は、空気中の酸素及び二酸化炭素であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−103212(P2011−103212A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257396(P2009−257396)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】