説明

発電装置

【課題】発電機を冷却できる発電効率の高い発電装置を提供する。
【解決手段】作動媒体を蒸発させる蒸発器1と、油で潤滑され、蒸発器1において蒸発した作動媒体の膨張力を回転力に変換し、膨張した作動媒体を排気流路11を介して排出する膨張機2と、膨張機2から排出された作動媒体から油を分離する油分離器3と、油分離器3で油を分離した作動媒体を凝縮させる凝縮器4と、凝縮器4で凝縮した作動媒体を加圧して蒸発器に環流させる循環ポンプ5と、膨張機2によって駆動される回転子17および固定子16を収容した発電機室15を備える発電機7と、油分離器3が分離した油を加圧して膨張機2に環流させる油ポンプ12とを有し、油ポンプ12が加圧した油の一部を、発電機室15に供給し、回転子17および固定子16を冷却し、排気流路11に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルを用いた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発器、膨張機、凝縮器および循環ポンプを介設した流路に封入した作動媒体を循環させることで、蒸発器で受け取った熱エネルギーを膨張機において回転力に変換するランキンサイクルを用いた発電装置が公知である。
【0003】
一般に、発電機において、巻線温度が過度に上昇すると、発電効率が低下する。そのため、ランキンサイクルを用いた発電装置でも、発電機の冷却を行うことが望ましい。発電機を冷却する方法としては、発電機のハウジングに水冷ジャケットを設けて、冷却水を挿通することによってハウジングを介して内部の巻線を冷却する方法が考えられる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、発電機の固定子と回転子との間にキャンを挿入した場合、水冷ジャケットによる冷却だけでは、回転子の温度上昇を十分に抑制することができない。
【0005】
特許文献2には、循環ポンプで加圧した作動媒体の一部を発電機のジャケットに挿通する発明が記載されている。この構成では、発電機を冷却した作動媒体を凝縮器に環流させる必要があるので配管が複雑になり、また、循環ポンプや凝縮器の負荷が大きくなるので発電効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−98902号公報
【特許文献2】特開2004−353571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点に鑑みて、本発明は、発電機を冷却できる発電効率の高い発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による発電装置は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、油で潤滑され、前記蒸発器において蒸発した前記作動媒体の膨張力を回転力に変換し、膨張した前記作動媒体を排気流路を介して排出する膨張機と、前記膨張機から排出された前記作動媒体から油を分離する油分離器と、前記油分離器で油を分離した前記作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮した前記作動媒体を加圧して前記蒸発器に環流させる循環ポンプと、前記膨張機によって駆動される回転子および固定子を収容した発電機室を備える発電機と、前記油分離器が分離した前記油を加圧して前記膨張機に環流させる油ポンプとを有し、前記油ポンプが加圧した油の一部を、前記発電機室に供給し、前記回転子および固定子を冷却し、前記排気流路に排出するものとする。
【0009】
この構成によれば、油によって発電機の回転子および固定子を直接冷却するので、冷却効率が高い。また、発電機の冷却に作動媒体を使用しないので、ランキンサイクルの熱効率を悪化させず、冷媒配管も複雑化しない。
【0010】
また、本発明の発電装置は、前記油ポンプが加圧した油の一部を前記発電機室に供給するための流路に設けた油制御弁と、前記固定子の温度を検出する温度センサとを備え、前記温度センサの検出値が所定温度より高い場合には、前記油制御弁を開放してもよい。
【0011】
この構成によれば、固定子の温度が高いときだけ、発電機室に油を供給して冷却するので、固定子の温度を所定温度以下に保持できる。
【0012】
また、本発明の発電装置において、前記発電機室の底部の前記回転子の回転軸方向の一端側に、前記排気流路に連通する油排出口が形成され、前記発電機室の前記回転子の回転軸方向の他端側に、前記油を供給するための油供給口が形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、圧力差によって、油が回転子と固定子との間を通過するので、冷却効率が高い。
【0014】
また、本発明の発電装置において、前記発電機は、冷却水が挿通されるジャケットを備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、ジャケットを使用した水冷も併用するので、冷却能力が高い。
【0016】
また、本発明の発電装置において、前記発電機室を画定する発電機ハウジングの外形が略直方体状であり、前記発電機ハウジングには、前記回転子の回転軸と略平行な4つの面に沿って延伸して両端に開口を形成する複数の貫通穴からなる冷却水路が設けられ、前記開口のいくつかを冷却水を給排水するための水入口および水出口とし、他の前記開口を封止してもよい。
【0017】
この構成によれば、冷却水路の加工が非常に容易である。また、発電機ハウジングの外部に位置する、冷却水の管路等の設計上の自由度が高い。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、発電機の回転子および固定子を油によって直設冷却するので、冷却効率が高く、装置の構成も複雑にならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の発電装置の構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態の発電装置の構成図である。
【図3】図2の発電機ハウジングの水入口における軸直角断面図である。
【図4】図2の発電機ハウジングの水出口における軸直角断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る発電装置は、蒸発器1とスクリュ膨張機2と、油分離器3と、凝縮器4と、循環ポンプ5とを介設してなり、作動媒体(例えばR245fa)が封入された循環流路6を有する。スクリュ膨張機2は、発電機7を駆動するようになっている。
【0021】
スクリュ膨張機2は、膨張機ハウジング8の中に雌雄一対のスクリュロータ9を収容し、給気流路10から蒸発器1で熱源と熱交換して蒸発させられた作動媒体が供給され、作動媒体の膨張力をスクリュロータ9の回転力に変換し、膨張して圧力が低下した作動媒体を排気流路11から排出する。
【0022】
また、スクリュ膨張機2は、潤滑油によって潤滑およびシールを行う油潤滑式スクリュ膨張機であり、給気流路10やスクリュロータ9の軸受等に潤滑油が供給されるようになっている。よって、排気流路11から排出される作動媒体には潤滑油が含まれており、油分離器3は、作動媒体から潤滑油を分離するために設けられている。そして、油分離器3で分離した潤滑油は、油ポンプ12によって加圧されて油供給流路13を介して、スクリュ膨張機2に再供給されるようになっている。
【0023】
油分離器3で潤滑油が分離除去された作動媒体は、凝縮器4において冷却源によって冷却されることにより凝縮する。凝縮した作動媒体は、循環ポンプ5によって加圧されて蒸発器1に再供給される。
【0024】
発電機7は、スクリュ膨張機2の膨張機ハウジング8に一体に接続された発電機ハウジング14を有し、発電機ハウジング14によって画定され、膨張機ハウジング8によって一端が封止された発電機室15の中に、固定子16および回転子17を収容している。回転子17の軸は、スクリュロータ9の一方の軸と一体である。また、発電機ハウジング14の外側には、冷却水が挿通される冷却ジャケット18が設けられている。
【0025】
発電機室15を回転子17の回転軸方向の一端側で封止する膨張機ハウジング8には、発電機室15の底部と排気流路11とを連通させる油排出口19が設けられている。また、発電機ハウジング14には、回転子17の回転軸方向の他端側の上部において発電機室15に開口する油供給口20が設けられている。
【0026】
油供給口20には、油供給流路13から分岐し、油制御弁21が介設された冷却油流路22を介して、潤滑油が供給されるようになっている。油制御弁21は、固定子16の温度を検出するように配設された温度センサ23の検出値が設定温度に達すると開放される。
【0027】
つまり、発電機7の固定子16および回転子17は、先ずは冷却ジャケットを挿通する冷却水によって発電機ハウジング14を介して間接的に冷却される。そして、固定子16の温度が高くなると、油供給口20から潤滑油が供給されるので、固定子16および回転子17は、潤滑油に直接接触してさらに冷却される。このため、固定子16のさらなる温度上昇が防止されるので、温度センサ23の検出値は、略その設定値以下に維持される。
【0028】
発電機室15に供給された潤滑油は、固定子16と回転子17との間を通って、発電機室15内を横断し、油排出口19から排気流路11に流出する。そして、発電機室15から流出した潤滑油は、作動媒体によって、スクリュ膨張機2に供給された潤滑油とともに、油分離器3に運ばれて作動媒体から分離される。したがって、本発明では、潤滑油を発電機室15から油ポンプ12に環流させるために専用の流路を設ける必要がない。
【0029】
本発明では、発電機7の冷却のために作動媒体を使用しないので、作動媒体のランキンサイクルの熱効率に影響を与えない。また、凝縮器4や循環ポンプ5等の構成要素に、ランキンサイクルの負荷以上に大きな容量を要求されることもなく、装置がコスト高にならない。
【0030】
本実施形態では、発電機7の冷却のために、冷却ジャケット18に挿通する水冷も併用するが、冷却ジャケット18を省略して、潤滑油のみで発電機7を冷却してもよい。また、固定子16と回転子17との間にキャンを挿入する場合には、油排出口19および油供給口20をキャンの内側の空間に開口するように設け、固定子16を主に冷却ジャケットによって冷却し、回転子17を主に潤滑油によって冷却するようにしてもよい。
【0031】
続いて、図2乃至4に、本発明の第2実施形態の発電装置を示す。尚、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。図3および4は、図2の発電装置の発電機ハウジング14の軸直角方向の断面図である。
【0032】
上記第1実施形態においては、発電機ハウジング14の外側に冷却水が挿通される冷却ジャケット18が設けられていたが、本実施形態においては、発電機ハウジング14の外形が略直方体状に形成され、その発電機ハウジング14に、冷却ジャケット18を設ける替わりに、冷却水が挿通される複数の円柱状の穴からなる冷却水路24が形成されている。冷却水路24は、水入口25および水出口26を有しており、図3および図4は、水入口および水出口における断面を示す。
【0033】
図3および4に示すように、冷却水路24は、略直方体状に形成された発電機ハウジング14の面のうち、発電機7の回転子17の回転軸と略平行な径方向に位置する4つの面が互いに交差する角に沿って延伸する4本の接続流路24aと、各面に沿って回転軸と直角な方向に延伸し、互いに交差するとともに接続流路24aと交差する周回流路24bとからなる。周回流路24bは、発電機ハウジング14を貫通して、両端が開口を形成するように形成されている。周回流路24bの両端の開口は、水入口25および水出口26となるものを残して、プラグ27によって封止されている。水入口25と水出口26とは、対角線上に位置するように選択することが好ましい。
【0034】
図3および4に矢印で示すとおり、冷却水は、水入口25から発電機ハウジング14に導入される。次いで、冷却水は、接続流路24aを介して10本の周回流路24bに分配され、発電機ハウジング14の径方向の4つの面を通過して、別の接続流路24aに合流する。冷却水は、水出口26から発電機ハウジング14の外部に導出される。
【0035】
本発明の第1実施形態においては、発電機ハウジング14の外側に冷却ジャケット18が設けられていた。この冷却ジャケット18によって高い冷却の効果を望めるが、冷却ジャケット18の加工には難がある。これに対し、上述のとおり、本実施形態においては、発電機ハウジング14が略直方体に形成され、その発電機ハウジング14に、冷却ジャケット18に替えて、冷却水が挿通される冷却水路24が形成されている。本実施形態のようなキリ穴形状の冷却水路24は、加工が非常に容易である。また、プラグ27の設け方次第で、水入口25および水出口26の位置を自由に変更でき、また水入口25を複数設けたり、水出口26を複数設けたりすることもできるので、発電機ハウジング14の外部に位置する、冷却水の管路等の設計上の自由度が高い。
【0036】
尚、本実施形態では発電機ハウジング14が略直方体に形成されている。そのため、本発明の第1実施形態であって、且つ、発電機ハウジング14が略円筒形に形成されているものに比して、本実施形態のものは、発電機ハウジング14の厚みを一部大きくせざるを得ない。これにより、冷却の効果の低減や、発電機ハウジング14の重量の増加が見込まれるが、それらを抑制・解消するため、発電機ハウジング14を、アルミニウム等の軽量で熱伝導率の高い素材で形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
1…蒸発器
2…スクリュ膨張機
3…油分離器
4…凝縮器
5…循環ポンプ
6…循環流路
7…発電機
8…膨張機ハウジング
9…スクリュロータ
10…給気流路
11…排気流路
12…油ポンプ
13…油供給流路
14…発電機ハウジング
15…発電機室
16…固定子
17…回転子
18…冷却ジャケット
19…油排出口
20…油供給口
21…油制御弁
22…冷却油流路
23…温度センサ
24…冷却水路
24a…接続流路
24b…周回流路
25…水入口
26…水出口
27…プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
油で潤滑され、前記蒸発器において蒸発した前記作動媒体の膨張力を回転力に変換し、膨張した前記作動媒体を排気流路を介して排出する膨張機と、
前記膨張機から排出された前記作動媒体から油を分離する油分離器と、
前記油分離器で油を分離した前記作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮した前記作動媒体を加圧して前記蒸発器に環流させる循環ポンプと、
前記膨張機によって駆動される回転子および固定子を収容した発電機室を備える発電機と、
前記油分離器が分離した前記油を加圧して前記膨張機に環流させる油ポンプとを有し、
前記油ポンプが加圧した油の一部を、前記発電機室に供給し、前記回転子および固定子を冷却し、前記排気流路に排出することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記油ポンプが加圧した油の一部を前記発電機室に供給するための流路に設けた油制御弁と、
前記固定子の温度を検出する温度センサとを備え、
前記温度センサの検出値が所定温度より高い場合には、前記油制御弁を開放することを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記発電機室の底部の前記回転子の回転軸方向の一端側に、前記排気流路に連通する油排出口が形成され、前記発電機室の前記回転子の回転軸方向の他端側に、前記油を供給するための油供給口が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記発電機は、冷却水が挿通されるジャケットを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
前記発電機室を画定する発電機ハウジングの外形が略直方体状であり、
前記発電機ハウジングには、前記回転子の回転軸と略平行な4つの面に沿って延伸して両端に開口を形成する複数の貫通穴からなる冷却水路が設けられ、
前記開口のいくつかを冷却水を給排水するための水入口および水出口とし、他の前記開口を封止したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83169(P2013−83169A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222032(P2011−222032)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】