説明

皮膚化粧料及び飲食品

【課題】天然抽出物を含有した抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、皮膚化粧料又は飲食品を提供する。
【解決手段】抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤に、扁担藤(Tetrastigma planicaule (Hook.) Gagnep.)からの抽出物を有効成分として含有せしめ、皮膚化粧料又は飲食品に、扁担藤(Tetrastigma planicaule (Hook.) Gagnep.)からの抽出物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤、皮膚化粧料及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に生体成分を酸化させる要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じるものであり、活性酸素としては、スーパーオキサイド(すなわち酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン:・O)、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)及び一重項酸素()等が挙げられる。これらの活性酸素は、食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウィルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしている。
【0003】
しかしながら、活性酸素の過剰な生成は、生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発する。通常、生体内で生産され、他の活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、細胞内に含まれているスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の触媒作用により逐次消去されているが、スーパーオキサイドの産生が過剰である場合、又はSODの作用が低下している場合には、スーパーオキサイドの消去が不十分となり、スーパーオキサイド濃度が高くなり、これが関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、シミ、ソバカス、しわ、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等を引き起こす。
【0004】
特に、皮膚は、紫外線等の環境因子の刺激を直接受けることから、スーパーオキサイドが生成しやすい器官であるため、スーパーオキサイド濃度の上昇により、例えば、コラーゲン等の生体組織を分解し、変性し又は架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素によって引き起こされる障害が、皮膚のしわ形成や皮膚の弾力低下等の老化の原因になるものと考えられている(非特許文献1参照)。したがって、活性酸素や生体内ラジカルの生成を阻害・抑制することにより、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、シミ、ソバカス、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防、治療又は改善できるものと考えられる。
【0005】
そこで、活性酸素消去物質、ラジカル消去物質を安全性の点で有利な天然物から得る試みがなされており、このような作用を有するものとして、アブラナ科ブラシカ属植物からの抽出物(特許文献1参照)、ベンケイソウ科リュウキュウベンケイ属植物からの抽出物(特許文献2参照)、タマコチョウからの抽出物(特許文献3参照)、スイオウからの抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
【0006】
皮膚においてメラニンは、紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般にメラニンは、色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、ついで5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成されるものとされている。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)、シミ、ソバカス等を予防、治療又は改善するためには、メラニンの産生に関与するチロシナーゼの活性を阻害すること、又はメラニンの産生を抑制することが考えられる。
【0007】
従来、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等の予防、治療又は改善には、ハイドロキノン等の化学合成品を有効成分とする美白剤を外用する処置が行われてきた。しかしながら、ハイドロキノン等の化学合成品は、皮膚刺激、アレルギー等の副作用のおそれがある。そこで、安全性の高い天然原料を有効成分とする美白剤の開発が望まれており、チロシナーゼ活性阻害作用を有するものとしては、例えば、藤茶抽出物(特許文献5参照)、ヤナギタデ抽出物(特許文献6参照)等が知られている。また、メラニン産生抑制作用を有するものとしては、例えば、トウゴマ根部からの抽出物(特許文献7参照)、サウスウレア(Saussurea)属に属する植物からの抽出物(特許文献8参照)等が知られている。
【0008】
従来の美白剤開発は、メラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼに注力して進められてきたが、近年、紫外線照射後に表皮ケラチノサイトから産生され、メラノサイトを活性化するサイトカインとして、α−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)、エンドセリン−1(ET−1)、一酸化窒素(NO)等が知られており、これらが関与する情報伝達系を遮断することによりメラニンの産生を抑制し、美白効果を導くことのできる各種作用剤の開発が盛んに行われている。
【0009】
これらのうちのα−MSHは、プロオピオメラノコルチン(POMC)を前駆体として産生されることが知られている。そのため、紫外線照射によるPOMCの産生を抑制すること、すなわち紫外線照射によるPOMCmRNAの発現上昇を抑制することで、結果的にメラニンの生成を抑制することができ、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等を予防又は改善することができると考えられる。
【0010】
従来、POMCの発現を抑制する作用を有するものとしては、例えば、パンテノール、塩酸ピリドキシン及びニコチン酸アミド等が知られている(特許文献9参照)。
【0011】
皮膚に紫外線が照射されると、皮膚の細胞は障害を受けたり、細胞死が引き起こされたりし、肌は張りや弾力を失い、肌荒れ、しわ等の老化症状を呈するようになる。したがって、紫外線の照射によるダメージ(例えば、細胞障害、細胞死等)を抑制・回復することによって、皮膚の老化の予防・改善が期待できる。紫外線照射によるダメージ回復作用を有するものとして、例えば、油溶性甘草抽出物(特許文献10参照)、フロリジン及びフロレチン(特許文献11参照)等が知られている。
【0012】
皮膚は、表皮、基底膜、真皮、皮下組織から構成されている。基底膜は、表皮と真皮との境界部に存在し、その機能は多岐にわたり、表皮の真皮への接着、表皮の極性の決定、表皮の分化・増殖の制御、さらには真皮細胞が産生する因子や血成分由来の栄養供給の制御に関与している。そのため、基底膜は、皮膚の構造、恒常性の維持にとってきわめて重要な役割を果たしている。したがって、基底膜の構造が変化すると、しわ、たるみ等の皮膚の老化症状を呈するようになる。特に、基底膜の主要成分であるIV型コラーゲンの産生量が減少すると、基底膜の構造が変化し、しわ、たるみ等の皮膚の老化症状を呈するようになるため、IV型コラーゲンの産生を促進することで、これらの皮膚の老化症状等を予防・改善することができると考えられる。このようなIV型コラーゲン産生促進作用を有するものとしては、例えば、加水分解カゼイン、ブナの芽、エリスリナ、可溶性卵殻膜、カッコン、西洋キヅタ等の抽出物(特許文献12参照)、フロリジン及びフロレチン(特許文献11参照)等が知られている。
【0013】
皮膚は角層、表皮、基底膜及び真皮から構成されている。基底膜は、表皮と真皮との境界部に存在し、表皮と真皮とを繋ぎ止めるだけでなく、皮膚機能の維持に重要な役割を果たしている(非特許文献2参照)。基底膜の主要骨格は、IV型コラーゲンからなる網目構造をしている。基底膜と表皮との境界に存在し、基底膜と表皮とを繋ぎとめているのがラミニン5を主成分とする各種糖蛋白質で、かかるラミニン5は、表皮に存在する表皮角化細胞より産生される。若い皮膚においては、基底膜の働きにより表皮、真皮の相互作用が恒常性を保つことで水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0014】
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、基底膜の主要構成成分であるラミニン5は分解・変質を起こし、基底膜構造が破壊される(非特許文献3参照)。その結果、皮膚は保湿機能や弾力性が低下し、角質は異常剥離を始めるから、肌は張りや艶を失い、荒れ、しわ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、即ち、しわ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、基底膜成分の減少、基底膜の構造変化が関与しており、ラミニン5の産生を促進することにより、皮膚の老化症状を予防・改善することができると考えられる。
【0015】
ラミニンは、α鎖、β鎖及びγ鎖の種々の組み合わせからなり、現在のところ15種類(ラミニン1〜ラミニン15)が知られている。これらのα鎖、β鎖及びγ鎖が長鎖(long arm)と呼ばれる部位でコイル状3本鎖構造を形成することで、巨大なラミニン分子が構成されている。その中でラミニン5(α3β3γ2)は、皮膚、消化器、腎臓、肺等の上皮組織の基底膜に多量に存在する。ラミニン5の各鎖をコードする遺伝子の先天的な異常に起因する遺伝子疾患(致死型先天性表皮水疱症,Herlitz junctional epidermolysis bullosa)においては、全身の表皮が剥離する致死性の症状を示すことが知られている。そして、ラミニン5は、他の細胞外マトリックス分子と比べ、強度に細胞を接着させ(細胞接着活性が高く)、細胞運動を強く促進する(細胞運動活性が高い)ことが知られている。
【0016】
このように、ラミニン5は、細胞運動活性が高いことから、損傷皮膚中の細胞移動を促進し、損傷治癒を促すことが知られている(特許文献13参照)。すなわち、ラミニン5の産生を促進することは、基底膜の構造が破壊されるような皮膚損傷の治癒を促す上で重要である。
【0017】
従来、ラミニン5を含有する皮膚外用剤(特許文献14参照)が知られており、また、ラミニン5産生促進作用を有するものとして、大豆抽出物(特許文献15参照)、フェニルプロパノイド類(特許文献16参照)、パントテン酸(特許文献17参照)、リゾホスファチジルコリン又はリゾホスファチジン酸(特許文献18参照)、コエンザイムQ10(特許文献19参照)等が知られている。
【0018】
近年、皮膚の老化に伴う変化を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs;Matrix metalloproteinases)の関与が指摘されている。このMMPsの中でも、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)は、皮膚の真皮細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンを分解する酵素として知られているが、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、コラーゲンの減少・変性の一因となり、皮膚のしわの形成、弾力性の低下等の大きな要因となると考えられている。したがって、MMP−1の活性を阻害することは、皮膚の老化症状を予防・改善する上で重要である。このようなMMP−1活性阻害作用を有するものとしては、例えば、マツ科マツ属二葉松類の樹皮の抽出物等が知られている(特許文献20参照)。
【0019】
体内の脂肪は、消費エネルギーに対し摂取エネルギーが過剰である場合に、その過剰分が白色脂肪細胞の中性脂肪として蓄積するものである。体脂肪の蓄積によって生じる肥満は、美容上好ましくないばかりでなく、動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病を引き起こす。
【0020】
昨今は飽食の時代であり、過食、運動不足、ストレス等による肥満が増加し、美容の観点からも男女を問わず大きな問題となっている。したがって、皮下脂肪等の蓄積は、健康上も好ましくなく、皮下脂肪等の減少・分解、又は蓄積の防止が重要な問題となっている。
【0021】
生体内の脂肪を分解するためには、サイクリックAMPの役割が重要となる。サイクリックAMPは、生体内に存在するトリグリセリドリパーゼを活性化し、活性化されたリパーゼによって脂肪が脂肪酸とグリセロールとに分解される。
【0022】
しかし、サイクリックAMPホスホジエステラーゼが活性化されると、サイクリックAMPの分解が誘発され、リパーゼの活性化が阻害される。そのため、サイクリックAMPホスホジエステラーゼの活性を阻害することにより細胞内におけるサイクリックAMPが増量し、脂肪の分解を促進することができるものと考えられる。
【0023】
このような考えに基づき、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するものとして、例えば、独脚金、小良姜及びサイコの抽出物(特許文献21参照)、ピーナッツ渋皮抽出物(特許文献22参照)、ショウガ科マンゴージンジャーの抽出物(特許文献23参照)等が知られている。
【特許文献1】特開2003−81848号公報
【特許文献2】特開2005−29483号公報
【特許文献3】特開2006−321730号公報
【特許文献4】特開2007−8902号公報
【特許文献5】特開2002−370962号公報
【特許文献6】特開2004−83488号公報
【特許文献7】特開2001−213757号公報
【特許文献8】特開2002−201122号公報
【特許文献9】特開2007−176810号公報
【特許文献10】特開2004−250368号公報
【特許文献11】特開2007−106712号公報
【特許文献12】特開2004−107660号公報
【特許文献13】特開2006−63033号公報
【特許文献14】特開平10−147515号公報
【特許文献15】特開2004−217618号公報
【特許文献16】特開2007−77169号公報
【特許文献17】特開2005−179243号公報
【特許文献18】特開2000−226308号公報
【特許文献19】特開2007−63160号公報
【特許文献20】特開2003−277223号公報
【特許文献21】特開2003−261457号公報
【特許文献22】特開2004−26719号公報
【特許文献23】特開2005−104886号公報
【非特許文献1】「フレグランスジャーナル臨時増刊」,1995年,No.14,p.156
【非特許文献2】「フレグランスジャーナル臨時増刊」,2000年,Vol.17,p.14-19
【非特許文献3】「Arch. Dermatol. Res.」,1996年,Vol.288,p.442-446
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は第1に、安全性の高い天然物の中からSOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)及び/又はラジカル消去作用を有するものを見出し、それを有効成分とする抗酸化剤を提供することを目的とする。
【0025】
本発明は第2に、安全性の高い天然物の中からチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用及びPOMCmRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するものを見出し、それを有効成分とする美白剤を提供することを目的とする。
【0026】
本発明は第3に、安全性の高い天然物の中から紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用及びMMP−1活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するものを見出し、それを有効成分とする抗老化剤を提供することを目的とする。
【0027】
本発明は第4に、安全性の高い天然物の中からサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するものを見出し、それを有効成分とする抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を提供することを目的とする。
【0028】
本発明は第5に、安全性の高い天然物の中からSOD様作用、ラジカル消去作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用のうちの少なくともいずれか1種の作用を有するものを見出し、それを配合した皮膚化粧料又は飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するため、本発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、扁担藤からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とし、本発明の皮膚化粧料又は飲食品は、扁担藤からの抽出物を配合したことを特徴とする。
【0030】
本発明の抗酸化剤においては、上記抽出物が、SOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)及び/又はラジカル消去作用を有することが好ましく、本発明の美白剤においては、上記抽出物が、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用及びPOMCmRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することが好ましく、本発明の抗老化剤においては、上記抽出物が、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用及びMMP−1活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、天然物である扁担藤からの抽出物を有効成分として含有し、安全性に優れた抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、皮膚化粧料又は飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明について説明する。
〔抗酸化剤,美白剤,抗老化剤,痩身剤,サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤〕
本発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、扁担藤からの抽出物を有効成分として含有する。
【0033】
ここで本発明において「扁担藤からの抽出物」には、扁担藤を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0034】
本発明において使用する抽出原料は、扁担藤(学名:Tetrastigma planicaule (Hook.) Gagnep.)である。
【0035】
扁担藤(Tetrastigma planicaule (Hook.) Gagnep.)は、東南アジアから中国南部等に分布するブドウ科テトラスティグマ属(ミツバカズラ属)に属するつる性木本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る扁担藤の構成部位としては、例えば、葉部、茎部、種子部、果実部、花部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは茎部である。
【0036】
扁担藤からの抽出物に含有されるSOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)、ラジカル消去作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、扁担藤からこれらの作用を有する抽出物を得ることができる。
【0037】
例えば、上記植物を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより、SOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)、ラジカル消去作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、扁担藤の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0038】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0039】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0040】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0041】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90質量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40質量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して多価アルコール10〜90質量部を混合することが好ましい。
【0042】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0043】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでも抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0044】
扁担藤からの抽出物は特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0045】
以上のようにして得られる扁担藤からの抽出物は、抗酸化作用、美白作用、抗老化作用、痩身作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しているため、それぞれの作用を利用して抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の有効成分として用いることができる。
【0046】
ここで、扁担藤からの抽出物が有する抗酸化作用は、例えば、SOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)及び/又はラジカル消去作用に基づいて発揮される。ただし、扁担藤からの抽出物が有する抗酸化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗酸化作用に限定されるものではない。なお、扁担藤からの抽出物は、SOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)及びラジカル消去作用を有するため、それらの作用を利用して、SOD様作用剤(スーパーオキサイド消去剤)及びラジカル消去剤の有効成分として利用することもできる。
【0047】
扁担藤からの抽出物が有する美白作用は、例えば、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用及びPOMCmRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、扁担藤からの抽出物が有する美白作用は、上記作用に基づいて発揮される美白作用に限定されるものではない。なお、扁担藤からの抽出物は、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用及びPOMCmRNA発現上昇抑制作用を有するため、それらの作用を利用して、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン産生抑制剤及びPOMCmRNA発現上昇抑制剤の有効成分として利用することもできる。
【0048】
扁担藤からの抽出物が有する抗老化作用は、例えば、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用及びMMP−1活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、扁担藤からの抽出物が有する抗老化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。なお、扁担藤からの抽出物は、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用及びMMP−1活性阻害作用を有するため、それらの作用を利用して、紫外線照射によるダメージ回復作用剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ラミニン5産生促進剤及びMMP−1活性阻害剤の有効成分として利用することができる。
【0049】
扁担藤からの抽出物が有する痩身作用は、例えば、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用に基づいて発揮される。ただし、扁担藤からの抽出物が有する痩身作用は、上記作用に基づいて発揮される痩身作用に限定されるものではない。
【0050】
本発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、扁担藤からの抽出物のみからなるものであってもよいし、扁担藤からの抽出物を製剤化したものであってもよい。
【0051】
扁担藤からの抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。扁担藤からの抽出物は、他の組成物(例えば、後述する皮膚化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0052】
なお、本発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、必要に応じて、抗酸化作用、SOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)、ラジカル消去作用、美白作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、抗老化作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用、痩身作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有する他の天然抽出物を配合して有効成分として用いることができる。
【0053】
本発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の投与方法としては、一般に経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
【0054】
また、本発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0055】
本発明の抗酸化剤は、扁担藤からの抽出物が有するSOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)及び/又はラジカル消去作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、シミ、ソバカス、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の抗酸化剤は、これらの用途以外にもSOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)及び/又はラジカル消去作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0056】
本発明の美白剤は、扁担藤からの抽出物が有するチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用及びPOMCmRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の美白剤は、これらの用途以外にもチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用及びPOMCmRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0057】
本発明の抗老化剤は、扁担藤からの抽出物が有する紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用及びMMP−1活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚の老化を予防又は改善することができる。ただし、本発明の抗老化剤は、これらの用途以外にも紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用及びMMP−1活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0058】
本発明の痩身剤は、扁担藤からの抽出物が有するサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の痩身剤は、こられの用途以外にもサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0059】
本発明のサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、扁担藤からの抽出物が有するサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を通じて、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明のサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、こられの用途以外にもサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0060】
〔皮膚化粧料〕
扁担藤からの抽出物は、SOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)、ラジカル消去作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しており、皮膚に適用した場合の使用感と安全性とに優れているため、皮膚化粧料に配合するのに好適である。
【0061】
この場合、皮膚化粧料には、扁担藤からの抽出物を配合してもよいし、扁担藤からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合してもよい。
【0062】
扁担藤からの抽出物、又はそれから製剤化された抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤若しくはサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を皮膚化粧料に配合することによって、皮膚化粧料にSOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)、ラジカル消去作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を付与することができる。
【0063】
扁担藤からの抽出物を配合し得る皮膚化粧料の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、ファンデーション、リップクリーム、口紅、入浴剤等が挙げられる。
【0064】
扁担藤からの抽出物を皮膚化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001〜1質量%である。
【0065】
本発明の皮膚化粧料は、扁担藤からの抽出物が有するSOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)、ラジカル消去作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を妨げない限り、通常の皮膚化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された上記成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0066】
〔飲食品〕
扁担藤からの抽出物は、SOD様作用(スーパーオキサイド消去作用)、ラジカル消去作用、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、POMCmRNA発現上昇抑制作用、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、MMP−1活性阻害作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しており、消化管で消化されるようなものではないことが確認されており、安全性にも優れているため、飲食品に配合するのに好適である。
【0067】
この場合に、飲食品には、扁担藤からの抽出物をそのまま配合してもよいし、扁担藤からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合してもよい。
【0068】
上記扁担藤からの抽出物、又はそれから製剤化した抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤若しくはサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1〜1000mgになるようにするのが好ましい。
【0069】
本発明の飲食品は、扁担藤からの抽出物をその活性を妨げないような任意の飲食品に配合したものであってもよいし、扁担藤からの抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0070】
本発明の飲食品を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の飲食品にすることができる。
【0071】
扁担藤からの抽出物を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などが挙げられ、これらの飲食品に上記扁担藤からの抽出物を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0072】
なお、本発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、痩身剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、皮膚化粧料又は飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0073】
以下、製造例、試験例及び配合例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0074】
〔製造例1〕扁担藤抽出物の製造
扁担藤の茎部の粗粉砕物100gに抽出溶媒としての80容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:4)1000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、凍結乾燥機で乾燥して扁担藤抽出物2506.7mgを得た(試料1)。
【0075】
〔試験例1〕スーパーオキサイド消去作用試験(NBT法)
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてスーパーオキサイド消去作用を試験した。
【0076】
試験管に、0.05MのNaCO緩衝液(pH10.2)を2.4mL、並びに3mMのキサンチン、3mMのEDTA、ウシ血清アルブミン溶液及び0.75mMのNBT(nitroblue tetrazolium)を0.1mLずつ加え、これに試料溶液(試料1)0.1mLを添加し、25℃で10分間放置した。放置後、酵素溶液としてのキサンチンオキシダーゼ溶液を加えて素早く攪拌し、25℃で20分間静置した。その後、6mMの塩化銅0.1mLを加えて反応を停止させて、波長560nmにおける吸光度を測定した。
【0077】
酵素溶液を添加しない場合についても、同様の操作と吸光度の測定を行い、さらに、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式によりスーパーオキサイド消去率(%)を算出した。
【0078】
スーパーオキサイド消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「酵素溶液添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Bは「酵素溶液無添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「酵素溶液添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表し、Dは「酵素溶液無添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表す。
【0079】
試料溶液の濃度を段階的に減少させて上記スーパーオキサイド消去率の測定を行い、スーパーオキサイド消去率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を内挿法により求めた。
【0080】
上記試験の結果、扁担藤抽出物の上記IC50は、88.7μg/mLであった。このことから、扁担藤抽出物は、優れたスーパーオキサイド消去作用を有することが確認された。また、スーパーオキサイド消去作用の程度は、扁担藤抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0081】
〔試験例2〕ラジカル消去作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてラジカル消去作用を試験した。
【0082】
1.5×10−4MのDPPH(diphenyl-p-picrylhydrazyl)エタノール溶液3mLに試料溶液(試料1,試料濃度:200μg/mL)3mLを加え密栓した後、振り混ぜて30分間放置した。放置後、波長520nmにおける吸光度を測定した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料を溶解した溶媒のみを用いて同様の操作をして、波長520nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長520nmの吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりラジカル消去率(%)を算出した。
【0083】
ラジカル消去率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中、Aは「コントロールの吸光度」を表し、Bは「試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「ブランクの吸光度」を表す。
【0084】
上記試験の結果、扁担藤抽出物のラジカル消去率は、49.9%であった。このように、扁担藤抽出物は、優れたラジカル消去作用を有することが確認された。
【0085】
〔試験例3〕チロシナーゼ活性阻害作用
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてチロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
【0086】
48wellプレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mLのチロシン溶液0.06mL、試料(試料1,試料濃度:400μg/mL)の25%DMSO溶液0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、800units/mLのチロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応させた。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。試料を添加せずに上記と同様にして空試験を行い補正し、得られた測定結果から、下記式によりチロシナーゼ活性阻害率(%)を算出した。
【0087】
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「酵素溶液添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Bは「酵素溶液無添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「酵素溶液添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表し、Dは「酵素溶液無添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表す。
【0088】
上記試験の結果、扁担藤抽出物のチロシナーゼ活性阻害率は、8.5%であった。このことから、扁担藤抽出物は、チロシナーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
【0089】
〔試験例4〕メラニン産生抑制作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてメラニン産生抑制作用を試験した。
【0090】
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで24.0×10cells/mLの細胞密度に希釈した後、48wellプレートに1wellあたり300μLずつ播種し、6時間培養した。
【0091】
培養終了後、10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで溶解した試料溶液(試料1,試料濃度:400μg/mL)を各wellに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各wellから培地を取り除き、1mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定し、メラニン産生量とした。
【0092】
また、単位細胞あたりのメラニン産生抑制作用を評価するために、上記と同様にして培養した後、培養液を除去し、終濃度0.05mg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したニュートラルレッドを各wellに200μL添加し、2.5時間培養した。培養後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各wellに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。
【0093】
さらに、空試験として、試料を添加せずに上記と同様にして培養した細胞について、波長475nmにおける吸光度及び540nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式により単位細胞あたりのメラニン産生抑制率(%)を算出した。
【0094】
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
式中、Aは「試料無添加時の475nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料添加時の475nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料無添加時の540nmにおける吸光度」を表し、Dは「試料添加時の540nmにおける吸光度」を表す。
【0095】
上記試験の結果、扁担藤抽出物のメラニン産生抑制率は、39.1%であった。このことから、扁担藤抽出物は、優れたメラニン産生抑制作用を有することが確認された。
【0096】
〔試験例5〕POMCmRNA発現上昇抑制作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてPOMCmRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0097】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)を80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
【0098】
EpiLife-KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えてUV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後EpiLife-KG2で必要濃度に溶解した試験試料(試料1,試料濃度:1μg/mL)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat.no.311-02501)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0099】
この総RNAを鋳型とし、POMC及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT-PCR反応により行った。POMCのmRNAの発現量は、紫外線未照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、さらに紫外線未照射・試料無添加の補正値を100とした時の紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりPOMCmRNA発現上昇抑制率(%)を算出した。
【0100】
mRNA発現上昇抑制率(%)={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
式中、Aは「紫外線未照射・試料無添加時の補正値」を表し、Bは「紫外線照射・試料無添加時の補正値」を表し、Cは「紫外線照射・試料添加時の補正値」を表す。
【0101】
上記試験の結果、扁担藤抽出物のPOMCmRNA発現上昇抑制率は、77.6%であった。このことから、扁担藤抽出物は、優れたPOMCmRNA発現上昇抑制作用を有することが確認された。
【0102】
〔試験例6〕紫外線照射によるダメージ回復作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにして紫外線照射によるダメージ回復作用を試験した。
【0103】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの細胞密度になるようにα−MEM培地を用いて希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種した。24時間培養後、培地を100μLのPBS(−)へ交換し、1.0J/cmのUV−Bを照射した。照射後、直ちに、PBS(−)を抜き、10%FBS含有D−MEMに溶解した試料溶液(試料1,試料濃度:100μg/mL)を各ウェルに400μLずつ添加し、24時間培養した。
【0104】
紫外線(UV−B)照射によるダメージ回復作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各ウェルに200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出し、抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様に細胞を播種した後、UV−Bを照射しない細胞及びUV−Bを照射し試料溶液を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非照射群及び照射群とした。得られた結果から、下記式により紫外線(UV−B)照射によるダメージ回復率(%)を算出した。
【0105】
ダメージ回復率(%)={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
式中、Ntは「UV−Bを照射していない細胞での吸光度」を表し、Cは「UV−Bを照射し試料溶液を添加していない細胞での吸光度」を表し、Saは「UV−Bを照射し試料溶液を添加した細胞での吸光度」を表す。
【0106】
上記試験の結果、扁担藤抽出物の紫外線照射によるダメージ回復率は、27.2%であった。このことから、扁担藤抽出物は、優れた紫外線照射によるダメージ回復作用を有することが確認された。
【0107】
〔試験例7〕IV型コラーゲン産生促進作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてIV型コラーゲン産生促進作用を試験した。
【0108】
ヒト正常線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるようにダルベッコMEM培地を用いて希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0109】
培養終了後、培地を抜き、0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地に溶解した試料溶液(試料1,試料濃度:25μg/mL)を各ウェルに150μLずつ添加し、3日間培養した。培養後、各ウェルの培地中のIV型コラーゲン量をELISA法により測定した。得られた結果から、下記式によりIV型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
【0110】
IV型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時のIV型コラーゲン量」を、Bは「試料無添加時のIV型コラーゲン量」を表す。
【0111】
上記試験の結果、扁担藤抽出物のIV型コラーゲン産生促進率は、115.2%であった。このことから、扁担藤抽出物は、優れたIV型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
【0112】
〔試験例8〕ラミニン5産生促進作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてラミニン5産生促進作用を試験した。
【0113】
正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)を80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞培地(KGM)を用いて37℃、5%CO−95%airの条件下にて培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10個/mLの細胞密度となるようにKGMからBPEを除いた培地(KGM−BPE)で希釈した後、24ウェルプレートに1ウェルあたり500μLずつ播種し、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。
【0114】
培養終了後、培地を抜き、KGM−BPEで溶解した試料溶液(試料1,試料濃度:12.5μg/mL)を各ウェルに500μLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で48時間培養した。培養終了後、上清100μLをELISAプレートに移し換え、37℃で2時間プレートに吸着させた後、溶液を捨て、0.05%のTween20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて洗浄を行った。
【0115】
その後、1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸生理緩衝液で、ブロッキング操作を行った。溶液を捨て、0.05%Tween20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて洗浄を行い、抗ヒトラミニン5抗体(マウスIgG,ケミコン社製)を反応させた。溶液を捨て、0.05%Tween−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて洗浄を行い、アビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体と反応させた後、同様の洗浄操作を行い、発色反応を行った。得られた測定結果から、下記式によりラミニン5産生促進率(%)を算出した。
【0116】
ラミニン5産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時の波長405nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加時の波長405nmにおける吸光度」を表す。
【0117】
上記試験の結果、扁担藤からの抽出物のラミニン5産生促進率は、137.2%であった。このことから、扁担藤抽出物は、優れたラミニン5産生促進作用を有することが確認された。
【0118】
〔試験例9〕MMP−1活性阻害作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてMMP−1活性阻害作用を試験した。
【0119】
蓋付試験管にて20mmol/Lの塩化カルシウムを含有する0.1mol/LのTris−HCL緩衝液(pH7.1)に溶解した試料溶液(試料1,試料濃度:400μg/mL)50μL、MMP−1溶液(COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum,Sigma社製)50μL及びPz-peptide溶液(Pz-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Arg-OH,BACHEM Feinchemikalien AG社製)400μLを混合し、37℃にて30分反応させた後、25mmol/Lのクエン酸溶液1mLを加え反応を停止した。
【0120】
その後、酢酸エチル5mLを加え、激しく振とうした。これを遠心(1600×g,10分)し、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。また、同様にして空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式によりMMP−1活性阻害率(%)を算出した。
【0121】
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「試料無添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Dは、「試料添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度」を表す。
【0122】
上記試験の結果、扁担藤抽出物のMMP−1活性阻害率は、21.3%であった。このことから、扁担藤抽出物は、優れたMMP−1活性阻害作用を有することが確認された。
【0123】
〔試験例10〕サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用試験
製造例1により得られた扁担藤抽出物(試料1)について、以下のようにしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を試験した。
【0124】
5mMの塩化マグネシウムを含有する50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mLのウシ血清アルブミン溶液0.1mL、0.1mg/mLのサイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.1mL及び50%DMSOに溶解した試料溶液(試料1)0.05mLを加え、37℃の温度条件下で5分間インキュベーションした。
【0125】
この反応溶液に、0.5mg/mLのサイクリックAMP溶液0.05mLを加え、37℃の温度条件下で60分間インキュベーションした。3分間沸騰水浴上で煮沸することにより反応を停止させ、これを遠心(2260×g,10分間,4℃)し、上清中の反応基質であるサイクリックAMPを、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。また、試料溶液を添加せずに同様の方法で空試験を行った。
【0126】
<高速液体クロマトグラフィー条件>
製品名:Chromatocorder 12(SYSTEM INSTRUMENTS社製)
固定相:Wakosil 5C18(和光純薬工業社製)
カラム径:4.6mm
カラム長:250mm
移動相:1mM TBAP in 25mM KH2PO4:CH3CN=90:10
移動相流速:1.0mL/min
検出:UV,260nm
【0127】
次に、サイクリックAMP標準品のピーク面積(A)、試料無添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B1)及び試料添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B2)を求めた。得られた結果から、下記式により試料無添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(C)及び試料添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(D)を算出した。
【0128】
試料無添加時の標準品分解率(C,%)=(1−B1/A)×100
試料添加時の標準品の分解率(D,%)=(1−B2/A)×100
【0129】
その後、上記式により算出した各分解率(C,D)に基づいて、下記式によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)を算出した。
サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)=(1−D/C)×100
【0130】
試料溶液の濃度を段階的に減少させて、上記サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率を算出し、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を内挿法により求めた。
【0131】
上記試験の結果、扁担藤抽出物の上記IC50は、96.2μg/mLであった。このことから、扁担藤抽出物は、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認された。また、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用の程度は、扁担藤抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0132】
〔配合例1〕
下記組成の乳液を常法により製造した。
扁担藤80%エタノール抽出物(製造例1) 0.01g
ホホバオイル 4.0g
プラセンタエキス 0.1g
カミツレエキス 0.1g
オリーブオイル 2.0g
スクワラン 2.0g
セタノール 2.0g
モノステアリン酸グリセリル 2.0g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.5g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
ヒノキチオール 0.15g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0133】
〔配合例2〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
扁担藤80%エタノール抽出物(製造例1) 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
ワレモコウエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
セタノール 3.0g
スクワラン 10.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0134】
〔配合例3〕
下記組成のパックを常法により製造した。
扁担藤80%エタノール抽出物(製造例1) 0.05g
アロエエキス 0.1g
ポリビニルアルコール 15.0g
ポリエチレングリコール 3.0g
プロピレングリコール 7.0g
エタノール 10.0g
パラオキシ安息香酸メチル 0.05g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0135】
〔配合例4〕
下記組成の化粧水を常法により製造した。
扁担藤80%エタノール抽出物(製造例1) 0.05g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
油溶性甘草エキス 0.1g
グリセリン 5.0g
プロピレングリコール 5.0g
ポリエチレングリコール 2.0g
ポリオキシエチレングリコール 2.0g
エタノール 7.0g
水酸化カリウム 0.01g
香料 0.01g
パラオキシ安息香酸ブチル 0.05g
水溶性色素 0.2g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0136】
〔配合例5〕
下記の混合物を打錠して、錠剤状の栄養補助食品を製造した。
扁担藤80%エタノール抽出物(製造例1) 50質量部
粉糖(ショ糖) 188質量部
グリセリン脂肪酸エステル 12質量部
【0137】
〔配合例6〕
下記の混合物を顆粒状にして、栄養補助食品を製造した。
扁担藤80%エタノール抽出物(製造例1) 50質量部
ビートオリゴ糖 1000質量部
ビタミンC 167質量部
ステビア抽出物 10質量部
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の抗酸化剤は、活性酸素が関与する各種障害の予防、治療又は改善に、本発明の美白剤は、皮膚色素沈着症、シミ等の予防、治療又は改善に、本発明の抗老化剤は、皮膚の老化の予防又は改善に、本発明の痩身剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、肥満や、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病等の予防、治療又は改善に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁担藤からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
前記抽出物が、SOD様作用及び/又はラジカル消去作用を有することを特徴とする請求項1に記載の抗酸化剤。
【請求項3】
扁担藤からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
【請求項4】
前記抽出物が、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項3に記載の美白剤。
【請求項5】
扁担藤からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項6】
前記抽出物が、紫外線照射によるダメージ回復作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用及びマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項5に記載の抗老化剤。
【請求項7】
扁担藤からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする痩身剤。
【請求項8】
扁担藤からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤。
【請求項9】
扁担藤からの抽出物を配合したことを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項10】
扁担藤からの抽出物を配合したことを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2010−105949(P2010−105949A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278750(P2008−278750)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】