説明

皮膚化粧料

【課題】抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくする皮膚化粧料を提供すること。
【解決手段】グレープフルーツ種子抽出エキス(a)、炭素数4〜8の2価アルコール(b)、グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)、およびキレート剤(d)を含有する皮膚化粧料であって、該化粧料中に、該グレープフルーツ種子抽出エキス(a)が、0.001〜1質量%、該炭素数4〜8の2価アルコール(b)が、2〜15質量%、該グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)が、2〜10質量%、および該キレート剤(d)が、0.1〜2質量%の割合で含有される、皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ファンデーションなどの皮膚化粧料に関する。より詳細には、抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくする皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
人の皮膚表面は、通常、皮脂膜に覆われており、水分の蒸散が適度に抑制されている。皮膚の水分を適切な範囲に保つことは、皮膚の健康の観点から非常に大切なことであり、水分が不足すると肌荒れなどが生じやすくなる。洗顔、入浴などにより一時的に皮脂膜が除去され、肌の水分が失われやすくなる。このような場合には、化粧水、乳液、クリーム、美容液などの保湿化粧料を使用して、皮膚に水分を補う必要がある。
【0003】
一般的に、このような化粧料には、保湿剤としてグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール、ピロリドンカルボン酸塩などが配合されている。しかし、これらの保湿剤は、高湿度下における水分保持力は良好であるが、低湿度下における水分保持力は乏しい。したがって、保湿効果の持続性に乏しい場合がある。
【0004】
そこで、近年、低湿度下での水分保持力が良好な保湿成分としてキチン(およびその誘導体)、キトサン(およびその誘導体)、蛋白加水分解物、ヒアルロン酸などの酸性ムコ多糖類、植物抽出物など様々な高保湿成分が提案されている。しかし、これらの高保湿成分を化粧料に配合すると、その高い保湿力のため不快なべたつきを感じたり、肌への伸びおよびなじみが悪くなったりすることがある。
【0005】
特許文献1には、ムコ多糖類とトレハロースとを組み合わせて、高い保湿効果を保持しながらべたつきを改善した皮膚外用剤が記載されている。しかし、この皮膚外用剤は、べたつきを十分に抑えることができない場合があり、さらに肌へのなじみ性、肌荒れ改善効果、肌にはりを与える効果などについても、十分な性能が得られていない。
【0006】
一方、微生物による1次汚染あるいは2次汚染による品質の劣化を防止することを目的として、化粧料に抗菌性、防腐性などを付与することが必要不可欠である。しかし、化粧料に強い抗菌性、防腐性などを付与した場合、製品の安全性に問題を生じることが多い。したがって、高い安全性とこれと相反する高い抗菌性、防腐性などの特性とを両立させ、十分に満足のいく化粧料を調製するのは困難である。さらに、近年、化粧料においては、特に合成防腐剤の使用を懸念する傾向にあり、天然成分による抗菌性の付与、滅菌処理して個別充填を行うなどの対応が必要になっている。
【0007】
抗菌性、防腐性などを有する天然成分としては、笹エキス(特許文献2)、茶エキス(特許文献3)、柑橘類の種子エキス(特許文献4〜6)などが知られている。しかし、これらの天然成分を化粧料に使用する場合には、安定した抗菌性、防腐性などを保持することは困難である。さらに、化粧料の安定性も保持することが困難であり、経時的に着色、オリ、沈殿などを生じやすくなる。
【0008】
また、滅菌処理して個別充填を行うには、特別な装置が必要であり、さらに、2次汚染に対しては、ケアできないという大きな問題がある。
【特許文献1】特開平6−122621号公報
【特許文献2】特開平5−308845号公報
【特許文献3】特開平8−38133号公報
【特許文献4】特開平8−295621号公報
【特許文献5】特開平2−247106号公報
【特許文献6】特開平3−90008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくする皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、グレープフルーツ種子抽出エキス(a)、炭素数が4〜8の2価アルコール(b)、グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)、およびキレート剤(d)を特定の割合で組み合わせることによって、上記目的を達成できる皮膚化粧料が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0011】
本発明の皮膚化粧料は、グレープフルーツ種子抽出エキス(a)、炭素数が4〜8の2価アルコール(b)、グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)、およびキレート剤(d)を含有する皮膚化粧料であって、該化粧料中に、該グレープフルーツ種子抽出エキス(a)は、0.001〜1質量%、該炭素数が4〜8の2価アルコール(b)は、2〜15質量%、該グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)は、2〜10質量%、および該キレート剤は、0.1〜2質量%の割合で含有される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくする皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の皮膚化粧料は、グレープフルーツ種子抽出エキス(a)(以下、a成分という場合がある)、炭素数が4〜8の2価アルコール(b)(以下、b成分という場合がある)、グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)(以下、c成分という場合がある)、およびキレート剤(d)(以下、d成分という場合がある)を含有する。以下、各成分および皮膚化粧料について説明する。
【0014】
(グレープフルーツ種子抽出エキス(a):a成分)
グレープフルーツ種子抽出エキス(a)は、ミカン科のグレープフルーツ(Citrus paradisi Macf)の種子から、各種溶媒を用いて抽出して得られる抽出物であり、溶媒(抽出溶媒、希釈溶媒など)以外の成分のことをいう。例えば、グレープフルーツ種子抽出エキスとして、Desfan−10(ティックファイン株式会社製)、「カルファ」(カルファケミカル株式会社製)などの市販の抽出物を用いることができる。このDesfan−10の場合、溶媒として水が90.5質量%およびグリセリンが6.25質量%含まれているので、グレープフルーツ種子抽出エキスは、3.25質量%含まれる。
【0015】
グレープフルーツは、18世紀前半に西インド諸島のバルバドスでブンタン(Citrus grandis)と多胚性品種との自然雑種として生じたといわれる果物であり、野生種は知られていない。19世紀初頭フロリダに渡り、無核または着色された優良品種が現れ、大産業に発展した。グレープフルーツの主要産地としては、アメリカ(柑橘類を生産している州)、メキシコ、アルゼンチン、イスラエル、南アフリカなどが挙げられる。本発明においては、これらの産地は問わず、いずれの産地のグレープフルーツでも用いることができる。
【0016】
本発明の皮膚化粧料に用いられるグレープフルーツ種子抽出エキス(a)は、上記のように、グレープフルーツの種子から各種溶媒を用いて抽出したエキスである。特に、抗菌性、保存安定性、使用感などの点で、未熟果の種子から抽出したエキスが好ましい。グレープフルーツ種子抽出エキス(a)は、例えば以下のように抽出される。
【0017】
まず、グレープフルーツの種子を、必要に応じて粉砕、乾燥などの処理を行う。次いで、炭化水素、エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、およびこれらの混合溶媒に浸漬して抽出するか、あるいは浸漬し加熱還流して抽出する。抽出溶媒としては、水またはアルコールが好ましく用いられる。アルコールとしては、一価アルコールおよび多価アルコールのいずれもが用いられる。より好ましくは、水、エタノール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、およびこれらの混合溶媒であり、さらに好ましくは水またはグリセリンである。
【0018】
(炭素数が4〜8の2価アルコール(b):b成分)
本発明の皮膚化粧料には、炭素数が4〜8の2価アルコール(b)が用いられる。2価アルコールは、1分子内に2個の水酸基を有する化合物であり、一般的にグリコール類と称される化合物である。
【0019】
炭素数が4〜8の2価アルコール(b)としては、具体的には、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、防腐性、使用感などの点で、好ましくは、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、オクチレングリコールであり、より好ましくは、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキシレングリコール、および1,2−オクチレングリコールである。
【0020】
(グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c):c成分)
本発明の皮膚化粧料には、グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)が用いられる。ポリグリセリンは、一般的にグリセリンを脱水縮合して重合させる方法、2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)を用いた付加反応によるグリシドール法などにより調製される。平均重合度2〜10のポリグリセリンとしては、例えば、ジグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンなどが挙げられる。使用感などの点で、好ましくは、グリセリンまたはジグリセリンである。
【0021】
(キレート剤(d):d成分)
キレート剤(d)は、水中の重金属イオン、アルカリ土類金属イオンなどをキャッチする金属イオン封鎖剤であり、有機系キレート剤および無機系キレート剤がある。
【0022】
有機系キレート剤として、代表的には、アミノカルボン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤としては、具体的には、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(EHDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸(DPTA−OH)、これらの塩類などが挙げられる。その他の有機系キレート剤としては、例えば、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、クエン酸、アスコルビン酸、これらの塩類などが挙げられる。
【0023】
無機系キレート剤としては、例えば、各種リン酸塩などが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、保存安定性、安全性、使用感などの点で、好ましくは、EDTA、PDTA、DPTA−OH、HEDP、クエン酸、アスコルビン酸、およびこれらの塩類であり、より好ましくは、EDTA、HEDP、クエン酸、アスコルビン酸、およびこれらの塩類である。
【0025】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、上記グレープフルーツ種子抽出エキス(a)、上記炭素数4〜8の2価アルコール(b)、上記グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)、および上記キレート剤(d)を含有する。
【0026】
本発明の皮膚化粧料には、グレープフルーツ種子抽出エキス(a)は、0.001〜1質量%、好ましくは0.002〜0.7質量%、より好ましくは0.003〜0.5質量%の割合で含有される。
【0027】
グレープフルーツ種子抽出エキス(a)が0.001質量%未満の場合、化粧料に十分な抗菌性を付与することが困難になり、さらに肌荒れ改善効果および肌にはりを与える効果が弱くなる。グレープフルーツ種子抽出エキス(a)が1質量%を超える場合、化粧料の保存安定性が悪くなるとともに、コスト面でも不利になる。
【0028】
グレープフルーツ種子抽出エキス(a)は、単独で用いてもよいし、種類の異なる抽出エキスを2種以上併用してもよい。
【0029】
本発明の皮膚化粧料には、炭素数4〜8の2価アルコール(b)が2〜15質量%、好ましくは2〜12質量%、より好ましくは2〜10質量%の割合で含有される。
【0030】
上記グレープフルーツ種子抽出エキス(a)として用いた抽出物中に、抽出溶媒として用いたブチレングリコールなどの炭素数4〜8の2価アルコールが含まれている場合、この溶媒の量を含めて上記の範囲内となるように調製すればよい。
【0031】
炭素数4〜8の2価アルコール(b)が2質量%未満の場合、化粧料に十分な抗菌性および保存安定性を付与することが困難になる。さらに、肌へのなじみ性が悪くなり、肌荒れ改善効果も弱くなる。炭素数4〜8の2価アルコール(b)が15質量%を超える場合、肌にはりを与える効果が弱くなる。
【0032】
炭素数4〜8の2価アルコール(b)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の皮膚化粧料には、グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)が2〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは2〜6質量%の割合で含有される。
【0034】
上記グレープフルーツ種子抽出エキス(a)として用いた抽出物中に、抽出溶媒として用いたグリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリンが含まれている場合、この溶媒の量を含めて上記の範囲内となるように調製すればよい。
【0035】
グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)が2質量%未満の場合、化粧料に十分な保存安定性を付与することが困難になり、肌荒れ改善効果も弱くなる。さらに、肌へのなじみ性が悪くなるおそれがある。グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)が10質量%を超える場合、肌へのなじみ性が悪くなり、べたつきを感じるようになる。
【0036】
グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の皮膚化粧料には、キレート剤(d)が0.1〜2質量%、好ましくは0.1〜1.8質量%、より好ましくは0.15〜1.5質量%の割合で含有される。
【0038】
キレート剤(d)が0.1質量%未満の場合、化粧料に十分な抗菌性および保存安定性を付与することが困難になる。さらに肌に透明感および明るさを与える効果が弱くなる。キレート剤(d)が2質量%を超える場合、肌へのなじみ性が悪くなる。
【0039】
キレート剤(d)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
さらに、本発明の皮膚化粧料には、化粧料に一般的に使用される添加剤、溶媒などを本発明の効果を阻害しない範囲で配合することも可能である。添加剤、溶媒などとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトールなどの上記b成分(炭素数4〜8の2価アルコール)以外の多価アルコール;乳糖、果糖、ショ糖などの糖類;流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィンなどの炭化水素系油;牛脂、豚脂、魚油などの天然油脂類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸類;トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリルなどの合成トリグリセライド;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシルなどのエステル油;ミツロウ、カルナバロウなどのロウ類;高重合ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチンなどの油性基剤;石鹸、アシルメチルタウリン塩、アミドエーテル硫酸エステル塩などの陰イオン性界面活性剤;アミドアミノ酸塩、アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシドなどの半極性界面活性剤;ピロリドンカルボン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、食塩などの有機および無機塩類;pH調整剤としての酸およびアルカリ;殺菌剤;抗酸化剤;血行促進剤;紫外線吸収剤;紫外線散乱剤;動植物由来の天然エキス;ビタミン類;アミノ酸類;感光素;色素;顔料;香料などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
表1に示すように、a成分として1質量%のDesfan−10(ティックファイン株式会社製(Desfan−10には、3.25質量%の抽出エキスおよび6.25質量%のグリセリンが含まれる))、b成分として5質量%の1,3−ブチレングリコール、c成分として5質量%のグリセリン、およびd成分として0.1質量%のクエン酸(1水和物)および0.15質量%のクエン酸3ナトリウム(2水和物)を含有する皮膚化粧料(化粧水)を調製した。
【0043】
得られた化粧水について、(1)抗菌性、(2)肌へのなじみ性、(3)使用後のべたつき、(4)肌荒れ改善効果、(5)肌のはり、(6)肌の透明感および明るさ、および(7)保存安定性(経時安定性)について、以下の方法によって評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
(1)抗菌性
日本薬局方の方法に準じてチャレンジテストを行った。用いた細菌は、Escherichia coli IFO3972(大腸菌)、Staphylococcus aureus IFO13276(黄色ブドウ球菌)、およびPseudomonas aeruginosa IFO13275(緑膿菌)の3種であり、用いた真菌は、Candida albicans IFO1594(カンジタ菌)およびAspergillus niger IFO9455(黒コウジカビ)の2種である。
【0045】
(菌の接種)
上記細菌および真菌を、滅菌水に懸濁した。得られた懸濁液(菌液)300μLを、皮膚化粧料30mL(または30g)に接種してよく混合した。なお、Aspergillus niger(黒コウジカビ)は、胞子の「ラピゾール」(A−80、濃度100ppm水溶液)懸濁液を菌液として用いた。
【0046】
(生菌数の測定)
それぞれの菌の各試料への接種時、接種1日後、4日後、および7日後の生菌数を寒天平板混釈法で測定した。細菌については、SCDLP寒天培地を用い、真菌については、GPLP寒天培地を用いた。サンプルの希釈には、LP希釈液を用いた。細菌の培養は35℃で48〜72時間行い、真菌の培養は28℃で72〜120時間行った。
【0047】
(評価)
○:7日後までに、全ての菌種が死滅した場合。
△:7日後までに、細菌3種が死滅し、真菌2種が減少傾向にある場合。
×:7日後でも、細菌3種のうち1種以上が生存している場合。
【0048】
(2)肌へのなじみ性
20名の女性(23〜37歳)をパネラーとして、洗顔した後に皮膚化粧料を使用させた。使用時の感触について、以下の基準で判定した。
【0049】
2点:使用時に、肌へのなじみがよいと感じた場合。
1点:使用時に、やや肌へのなじみが悪いと感じた場合。
0点:使用時に、明らかに肌へのなじみが悪いと感じた場合。
【0050】
20名の平均点を求め、以下のように評価した。
○:平均点が1.5点以上(肌へのなじみ性がよい皮膚化粧料)。
×:平均点が1.5点未満(肌へのなじみ性が悪い皮膚化粧料)。
【0051】
(3)使用後のべたつき
20名の女性(23〜37歳)をパネラーとして、洗顔した後に皮膚化粧料を使用させた。使用から10分後の肌の感触について、以下の基準で判定した。
【0052】
2点:肌が、べたつかないと感じた場合。
1点:肌が、ややべたつくと感じた場合。
0点:肌が、非常にべたつくと感じた場合。
【0053】
20名の平均点を求め、以下のように評価した。
○:平均点が1.5点以上(肌がべたつかない皮膚化粧料)。
×:平均点が1.5点未満(肌がべたくつ皮膚化粧料)。
【0054】
(4)肌荒れ改善効果
肌荒れを生じている10名の女性(25〜37歳)をパネラーとして、皮膚化粧料を1日2回、2週間使用させた。使用から2週間後の肌の状態について、以下の基準で判定した。
【0055】
2点:肌荒れが、明らかに治ってきたと感じた場合。
1点:肌荒れが、やや治ってきたと感じた場合。
0点:肌荒れ改善効果が、全くみられないと感じた場合。
【0056】
10名の平均点を求め、以下のように評価した。
○:平均点が1.5点以上(肌荒れ改善効果を発揮する皮膚化粧料)。
×:平均点が1.5点未満(肌荒れ改善効果を発揮しない皮膚化粧料)。
【0057】
(5)肌のはり
20名の女性(23〜37歳)をパネラーとして、皮膚化粧料を1日2回、2週間使用させた。使用から2週間後の肌の状態について、以下の基準で判定した。
【0058】
2点:肌に、明らかにはりが出たと感じた場合。
1点:肌に、ややはりが出たと感じた場合。
0点:肌に、はりがないと感じた場合。
【0059】
20名の平均点を求め、以下のように評価した
○:平均点が1.5点以上(肌にはりを与える皮膚化粧料)
×:平均点が1.5点未満(肌にはりを与えない皮膚化粧料)。
【0060】
(6)肌の透明感および明るさ
20名の女性(23〜37歳)をパネラーとして、皮膚化粧料を1日2回、2週間使用させた。使用から2週間後の肌の状態について、以下の基準で判定した。
【0061】
2点:肌に、明らかに透明感が出て、明るくなったと感じた場合。
1点:肌に、やや透明感が出て、明るくなったと感じた場合。
0点:肌の透明感および明るさに変化がないと感じた場合。
【0062】
20名の平均点を求め、以下のように評価した。
○:平均点が1.5点以上(肌に透明感を与え、肌を明るくする皮膚化粧料)。
×:平均点が1.5点未満(肌に透明感を与えず、肌を明るくしない皮膚化粧料)。
【0063】
(7)保存安定性(経時安定性)
皮膚化粧料を透明なガラス容器に入れて密封し、0℃、25℃、および40℃で3ヶ月間保存した。3ヵ月後、外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0064】
○:保存安定性良好(いずれの温度においても、外観が変化していない場合)。
△:保存安定性やや不良(いずれかの温度において、若干おりまたは沈殿が生じているか、あるいは若干着色している場合)。
×:保存安定性不良(いずれかの温度において、おりまたは沈殿が生じているか、または分離している場合、あるいは、著しく着色している場合)。
【0065】
(実施例2および3)
実施例1と同様にして、表1に示す各成分を表1に示す割合で含有する皮膚化粧料(化粧水)を調製した。得られた化粧水について、実施例1と同様にして、上記(1)〜(7)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1および2)
表1に示す各成分を表1に示す割合で含有する皮膚化粧料(化粧水)を調製した。比較例1で得られた化粧水はa成分を含有しておらず、そして比較例2で得られた化粧水はc成分を含有していない(a成分由来のごく微量のグリセリンしか含まれていない)。得られた化粧水について、実施例1と同様にして、上記(1)〜(7)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示すように、実施例1〜3で得られた化粧水は、いずれも抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくすることがわかる。
【0069】
一方、比較例1で得られた化粧水は、a成分が配合されていないため、十分な抗菌性を付与することができず、さらに肌荒れ改善効果および肌にはりを与える効果が弱いことがわかる。比較例2で得られた化粧水は、c成分が配合されていない(a成分由来のごく微量のグリセリンしか含まれていない)ため、保存安定性が不十分であり、さらに肌へのなじみが悪く、肌荒れ改善効果および肌にはりを与える効果が弱いことがわかる。
【0070】
(実施例4)
表2に示すように、a成分として、実施例1で使用したDesfan−10を1質量%、b成分として1質量%のジプロピレングリコールおよび2質量%の1,2−ペンチレングリコール、c成分として2質量%のグリセリン、およびd成分として0.05質量%のヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)および0.1質量%のエチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム(EDTA−2Na)を含有し、そして、その他の添加剤として、表2に記載する成分を表2に記載する割合で含有する皮膚化粧料(水中油型乳液)を調製した。
【0071】
得られた水中油型乳液について、実施例1と同様にして、上記(1)〜(7)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例5および6)
実施例4と同様にして、表2に示す各成分を表2に示す割合で含有する皮膚化粧料(水中油型乳液)を調製した。得られた水中油型乳液について、実施例1と同様にして、上記(1)〜(7)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0073】
(比較例3および4)
実施例4と同様にして、表2に示す各成分を表2に示す割合で含有する皮膚化粧料(水中油型乳液)を調製した。比較例3で得られた水中油型乳液はb成分を含有しておらず、そして比較例4で得られた水中油型乳液はd成分を含有していない。得られた水中油型乳液について、実施例1と同様にして、上記(1)〜(7)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表2に示すように、実施例4〜6で得られた水中油型乳液は、いずれも抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくすることがわかる。
【0076】
一方、比較例3で得られた水中油型乳液は、b成分が配合されていないため、化粧料に十分な抗菌性および保存安定性を付与することができず、さらに、肌へのなじみ性が悪くなり、肌荒れ改善効果も弱いことがわかる。比較例4で得られた水中油型乳液は、d成分が配合されていないため、十分な抗菌性および保存安定性を付与することができず、さらに肌に透明感および明るさを与える効果が弱いことがわかる。
【0077】
(実施例7)
表3に示すように、a成分として、実施例1で使用したDesfan−10を1質量%、b成分として3質量%のジプロピレングリコールおよび2質量%の1,2−ペンチレングリコール、c成分として2質量%のグリセリン、およびd成分として0.2質量%のヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)を含有し、そして共通成分1を22質量%含有する皮膚化粧料(水中油型クリーム)を調製した。なお、共通成分1の組成は表4に示す。
【0078】
得られた水中油型クリームについて、実施例1と同様にして、上記(1)〜(6)の評価および以下の(8)保存安定性(経時安定性)の評価を行った。結果を表3に示す。
【0079】
(8)保存安定性(経時安定性)
皮膚化粧料を透明なガラス容器に入れて密封し、−5℃、25℃、および40℃で1ヶ月間保存した。1ヵ月後、外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0080】
○:保存安定性良好(いずれの温度においても、外観の変化がなく、ブツなども生じていない場合)。
△:保存安定性やや不良(いずれかの温度において、わずかに沈殿が生じているか、あるいはわずかに分離している場合、あるいは、わずかにブツまたはダマを生じている場合)。
×:保存安定性不良(いずれかの温度において、明らかに沈殿を生じるか、あるいは分離している場合)。
【0081】
(実施例8〜10)
実施例7と同様にして、表3に示す各成分を表3に示す割合で含有する皮膚化粧料(水中油型クリーム)を調製した。なお、表3に記載の共通成分2は、表5に示す組成である。得られた水中油型クリームについて、実施例7と同様にして、上記(1)〜(6)および(8)の評価を行った。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
表3に示すように、実施例7〜10で得られた水中油型クリームは、いずれも抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくすることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、抗菌性および保存安定性に優れ、素早く肌になじみ、使用後もべたつかず、肌荒れ改善効果に優れ、肌にはりを与え、そして肌を明るくする皮膚化粧料が提供される。したがって、本発明の皮膚化粧料は、化粧水、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ファンデーションなどとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレープフルーツ種子抽出エキス(a)、炭素数が4〜8の2価アルコール(b)、グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)、およびキレート剤(d)を含有する皮膚化粧料であって、
該化粧料中に、該グレープフルーツ種子抽出エキス(a)が、0.001〜1質量%、該炭素数が4〜8の2価アルコール(b)が、2〜15質量%、該グリセリンまたは平均重合度2〜10のポリグリセリン(c)が、2〜10質量%、および該キレート剤が、0.1〜2質量%の割合で含有される、皮膚化粧料。

【公開番号】特開2008−214206(P2008−214206A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50629(P2007−50629)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【出願人】(597175684)ティックファイン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】