説明

皮膚品質を改良するための経口投与可能な組成物

本発明は、ヒトまたは動物の皮膚品質を改良し且つ皮膚の年齢に関係した変化を予防または回復するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、または酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる、組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にヒトまたは動物の皮膚の老化の徴候を予防しまたは逆転させることによって皮膚品質を改良する方法に関する。本発明は、皮膚の細胞外マトリックス産生を刺激する物質および/または組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生き物の生涯には、老化の特徴である様々な徴候は皮膚に現れ、主要な臨床的徴候は細かい線と深い皺の出現であり、これは年齢と共に増加しまたは目立ってくる。更に、皮膚の色は一般に変化し、刺激を拡散し、場合によっては末梢血管拡張がある部分に存在するようになることがある。これらの老化の徴候は、例えば紫外線、汚染物質、フリーラジカルまたは化学物質のような外界からの影響に皮膚を暴露することによって促進される。
【0003】
皮膚の老化は、主要な構造変化や組成の変動によって表される。最も顕著には、老化した皮膚は、若い皮膚と比較してコラーゲンやグリコサミノグリカンが少ない(Fenske NA, Lober CW: J Am Acad Dermatol 15:571-85 1986)。
【0004】
分子レベルでは、結合組織は、大部分がコラーゲン、プロテオグリカンおよびヒアルロン酸から構成されている。コラーゲンは籠様三次元メッシュを形成しているが、プロテオグリカンはその中に埋設されている。プロテオグリカンは、反復非分岐二糖類である多数のグリコサミノグリカン側鎖が共有結合しているコアタンパク質から構成されている。二糖類単位の一成分は、アミノ糖であり、GAGと呼ばれている。プロテオグリカンにおける炭水化物の量は、その重量の95%にまでなることができる。付随するものは、プロテオグリカンの多量の水結合容量である。皮膚では、これらの分子は、間質液の水を真皮にコンパーティメンタライズ(compartimentalize)する。コラーゲン網目構造内でのそれらの膨潤特性によって内圧が生じ、皮膚表面を滑らかにし、皮膚トルゴールを生じる。
【0005】
老化過程を抑制しまたは起こった変化を元に戻すための幾つかの試みが行われてきた。薬理学的物質または化粧成分の局所投与が、今日までのところ最良の結果を生じてきた。これに関して、フランス国特許第2808682号明細書には、特に皮膚の保護のための新規な化粧生成物であって、活性薬剤としての新鮮なポリフェノールを含むブドウ細胞を局所投与に適するキャリヤーと共に含むものが提供されている。
【0006】
また、ドイツ国特許第10108097号明細書には、特に老化および/またはストレスが加えられた皮膚のための化粧処方物であって、水、および水でラメラ構造を形成する(複数の)物質を含み、式(IA)の(複数の)トリメチルアンモニウムメチル基を(複数の)化合物(I)、(I)の代謝物、および/または S-アデノシルメチオニンも含むものが提供されている。
【0007】
米国特許公告第2002/0041890号明細書には、化粧用皮膚保護の方法、および分岐アルコールのリン酸塩および/または硫酸塩、および/またはそのエトキシレートを含む組成物が開示されている。これらの組成物は皮脂細胞からの皮脂の分泌を制御し、油分の制御を改良し、皮膚の感触を改良し、照りや粘着性を防止し、一方、老化防止効果も提供し、皺や老化した皮膚の出現を減少させ、皮膚の色を改良し、光で老化した皮膚を治療し、皮膚の輝きおよび透明さおよび仕上がりを改良し、全般的な皮膚の健康で若々しい外観を提供する。
【0008】
皮膚の劣化または老化を防止するためのもう一つの手段は、フリーラジカルを除去する化合物を提供することである。これに関して、欧州特許第0 761 214号明細書には、アニリン誘導体とジフルフリルアミン誘導体を含んでなる一重項酸素失活剤が開示されており、これは皮膚に対する酸化ストレスを減少させることが報告されている。
【0009】
これに関して、幾つかの薬剤も開発されてきている。例えば、欧州特許第1230952号明細書では、皮膚老化の開始を遅らせ且つ治療に用いるためのエストロゲンとプロゲストゲンを含んでなる薬剤の調製方法が提供されている。
【0010】
一方、食餌組成物は、これまでに僅かしか報告されていない。米国特許第6365175号明細書には、ペトロセリン酸を含む食用組成物を用いて、アラキドン酸の代謝物産生を抑制しおよび/または細胞内接着分子の形成を減少させる抗炎症性組成物として、または皺が寄る、弛みができる、光で損傷した皮膚、乾燥肌、薄片状皮膚、および老化染みに対する積極的影響のある老化防止組成物として用いられる食品組成物または食品栄養補給物が調製されている。
【0011】
当該技術分野では、皮膚品質を改良し、老化過程による変化を防止しまたは元に戻すための効果的な栄養による方法を提供することが、未だ求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、皮膚品質を改良するための手段を提供することである。
【0013】
この問題は、細胞外マトリックス産生、特に間質液に結合し皮膚トルゴールを改良するグリコサミノグリカンのような成分の合成を刺激することができる経口投与可能な組成物を提供することによって解決された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
従って、第一の態様では、本発明は、ヒトまたは動物の皮膚品質を改良するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる、組成物を提供することを目的とする。
【0015】
このような組成物は、更にヒトまたは動物の皮膚の年齢に関連した変化を防止しまたは回復する。
【0016】
実際に、意外なことには、カルニチンのようなエネルギー代謝を刺激するある種の分子のような栄養分、および酸化防止剤、例えばイチョウ抽出物は、グリコサミノグリカンの皮膚での産生および沈着を刺激し、従って皮膚トルゴールを改良することができることを見出した。
【0017】
この組成物は、ヒトまたは動物にとって完全で栄養的にバランスのとれた食品であることができる。これはまた、食料栄養補給物、医薬または獣医薬組成物などであることもできる。
【0018】
本発明による組成物は、皮膚の老化の際に起こる変化を予防しまたは遅らせることができる。これはまた、皮膚のヒドラテーション(hydratation)、皮膚の弾力性、皮膚の外観を改良することにより多くの利点も有し、皮膚の乾燥、皺の形成、細孔度および皮膚の粗さを減少させまたは元に戻すこともできる。
【0019】
もう一つの態様では、本発明は、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子の有効量、酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物を用いて、ヒトまたは動物の皮膚品質を改良し、皮膚の年齢に関係した変化を予防しまたは回復することを目的とする組成物の調製に関する。
【0020】
もう一つの態様では、本発明は、ヒトまたは動物の皮膚品質を改良し、年齢に関連した皮膚の変化を予防しまたは回復する方法であって、個体に上記のような経口投与可能な組成物を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0021】
発明の詳細な説明
第一の態様は、皮膚品質を改良するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる組成物に関する。
【0022】
細胞のエネルギー代謝を刺激する分子は、L- カルニチン、クレアチン、脂肪酸(モノまたはポリ不飽和脂肪酸、特にω-3 脂肪酸)、カルジオリピン、ニコチンアミド、炭水化物、およびそれらの天然供給源などでよい。
【0023】
好ましくは、上記分子の量は、体重1kg当たり1日当たり少なくとも1mgであり、更に好ましくは、体重1kg当たり1日当たり1mg-1gである。
【0024】
酸化防止剤は、タンパク質の酸化を減少させる(例えば、タンパク質カルボニルの形成を防止する)化合物である。それらは、チオールの供給源(例えば、リポ酸、システイン、シスチン、メチオニン、S-アデノシル-メチオニン、タウリン、グルタチオン、およびそれらの天然供給源)であるか、または例えば、イン・ビボでのそれらの生合成をアップレギュレーションする化合物である。本発明による酸化防止剤は、ビタミンC、ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)、カロテノイド(カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチンなど)、ユビキノン(例えば、CoQ1O)、茶カテキン(例えば、エピガロカテキン ガレート)、ポリフェノールおよび/またはジテルペン(例えば、カウヘオール(kawheol)およびカフェストール)、イチョウ抽出物、プロアントシアニジンがリッチなブドウまたはブドウ種子抽出物、香辛料抽出物 (例えば、ローズマリー)、イソフラボンおよび関連フィトエストロゲンを含む大豆抽出物、および酸化防止剤活性を有するフラボノイドの他の供給源のような他の酸化防止剤、細胞の酸化防止剤防御をアップレギュレーションする化合物(例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼの増加に対するウルソデオキシコール酸、カタラーゼの増加に対するウルソール酸、スーパーオキシドジスムターゼの増加に対するチョウセンニンジンおよびジンゲノシド、およびそれらの天然供給源、すなわち草本薬)であってもよい。
【0025】
好ましくは、酸化防止剤の量は、体重1kg当たり1日当たり少なくとも0.025mgであり、更に好ましくは、体重1kg当たり1日当たり0.025mg-250mgである。
【0026】
キャリヤーは、任意の食料または医薬生成物、または栄養補給物、または経口投与用の組成物でよい。食料または医薬キャリヤーの例は、乳、ヨーグルト、凝乳、チーズ、発酵乳、乳を基剤とした醗酵生成物、アイスクリーム、醗酵シリアルを基剤とした生成物、乳を基剤とした粉末、幼児処方または錠剤、液状懸濁液、乾燥した経口栄養補給物、湿りのある経口栄養補給物、ドライ-チューブ-フィーディング(dry-tube-feeding)、ペットフード製品である。経口投与用組成物は、カプセル、軟質カプセル、錠剤、ペーストまたはトローチ、ガム、または飲用溶液またはエマルションでよい。キャリヤーの調製方法は、通常の知識である。
【0027】
本発明による組成物は、通常の賦形剤、特に甘味料、香味料、または防腐剤を含んでなることもできる。これは、更にプレバイオティックおよび/またはプロバイオティック微生物を含んでなることもできる。
【0028】
本発明の組成物は、当該技術分野で周知の任意の手法によって処方することができる。
【0029】
一態様では、個体で所望な効果を達成するのに十分な量の活性成分の少なくとも1つを含む医薬組成物を調製することができる。この組成物は、錠剤、液体、乾燥した経口栄養補給物、湿った経口栄養補給物、ドライチューブ-フィーディング(dry tube-feeding)、ウェットチューブ-フィーディング(wet tube-feeding)でよい。医薬組成物は、更に様々な性質のそれぞれの活性分子をターゲット組織に送るのに適するキャリヤーおよび賦形剤も含む。キャリヤー/賦形剤の種類およびそれらの量は、物質の性質、および予想される薬剤送達および/または投与の様式によって変化する。熟練者であれば、彼自身の知識に基づいて、活性化合物を皮膚にターゲット設定するための適当な成分および生薬形態を選択することが理解されるであろう。
【0030】
もう一つの態様では、ヒトが消費するための食料組成物を調製する。この組成物は、栄養上完全な処方、酪農製品、冷蔵または貯蔵安定な飲料、スープ、食糧栄養補給物、代用食、および栄養バーまたは菓子でよい。
【0031】
栄養処方は、好ましくは腸内投与可能であり、例えば、粉末、液体濃縮物、または即席飲料の形態である。粉末状栄養処方を生成したいときには、均質化混合物を噴霧乾燥機または凍結乾燥機のような適当な乾燥装置に移して、粉末に転換する。
【0032】
もう一つの態様では、通常の食料製品を本発明による組合せで強化することができる。例えば、発酵乳、ヨーグルト、新鮮なチーズ、レンネット乳(renneted milk)、菓子バー、朝食用シリアルフレークまたはバー、飲物、粉末乳、大豆基剤製品、乳以外の醗酵製品、または臨床栄養用の栄養補給物である。次に、エネルギー代謝を刺激する分子の量は、好ましくは少なくとも50重量ppmであり、2000mg/日までとすることができ、酸化防止剤は、好ましくは少なくとも10重量ppmである。
【0033】
もう一つの態様では、ペットフード製品を調製することができる。ペットフード処方物は、好ましくは完全で栄養上バランスのとれたペットフードである。これは、ペットの食餌栄養補給物であるかまたは医薬組成物の形態であることもできる。本発明による栄養的に完全なペットフード処方物は、任意の適当な形態、例えば、粉末、乾燥粗挽き穀物、またはペレットまたは他の乾燥形態、押出形態、半湿式または湿式形態、例えば、厚切り(chunk)または塊(loaf)またはプディングでよい。これは冷蔵することができ、または貯蔵安定な製品として提供することができる。このペットフードは、通常の方法によって製造することができる。
【0034】
もう一つの態様では、食料栄養補給物を、ペットフード品質を改良するように調製することができる。食餌添加物としては、それらをカプセル化してもよくまたは粉末形態で提供することができ、湿っていてもまたは乾燥していても主食と共にまたは別個に包装することができる。例えば、本発明による選択された物質を含む粉末は、粉末形態でサシェに、またはゲルまたは脂質または他の適当なキャリヤーに詰めることができる。これらの別個に包装した単位は、主食と一緒に、または使用者の指示に従って主食または御馳走と共に用いるマルチユニットパックで提供することができる。
【0035】
本発明による食料組成物は、皮膚のヒドラテーション(hydratation)、皮膚の弾力性、皮膚の外観を改良し、皮膚の乾燥、皺の形成、細孔度および皮膚の粗さを減少させまたは元に戻すことを目的とする。
【0036】
他の態様によれば、本発明は、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、または上記のようなそれらの組合せを用いて、ヒトまたは動物の皮膚品質を改良し、年齢に関連した変化を予防しまたは回復することを目的とする経口投与可能な組成物の調製に関する。
【0037】
最後の態様によれば、本発明は、ヒトまたは動物の皮膚品質を改良し、年齢に関連した変化を予防しまたは回復する方法であって、個体に上記の組成物を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0038】
上記組成物は、哺乳類に通常の食事の栄養補給物としてまたは栄養が完全な食物の一成分として投与することができる。上記のような栄養的に完全な食物を調製するのが好ましい。
【0039】
好ましくは、有益な効果を得るために個体によって消費される組成物の量は、その大きさ、その種類、およびその年齢によって変化する。しかしながら、体重1kg当たり1日当たり少なくとも1mgのカルニチンの量および体重1kg当たり1日当たり少なくとも0.025mgの酸化防止剤の量が、通常適当である。
【0040】
下記の実施例は単に例示のために示すものであり、本出願明細書の主題を制限するものと解釈すべきではない。総ての百分率は、特に断らない限り重量で示す。
【実施例1】
【0041】
本発明による食糧栄養補給物の効果のイン・ビボ試験
研究デザイン:
食餌介入は、12月齢マウスで3ヶ月間であった。総ての動物群は、自由に給餌を受けた。動物の体重を1週間に1回測定した。
【0042】
動物:
雄マウスC57/BL6は、9週齢のものをIFFA credo (フランス)から入手した。3週間の適応後、マウス(12週齢)を1尾ずつ収容して、栄養介入までコントロール食餌Aを与えた。12月齢で、マウスを無作為に10尾ずつ5群(A、B、C、DおよびE)に分けた。食餌介入は3ヶ月間であり、マウスに食物および水を自由に与え、12時間ずつの明暗サイクルを受けさせた。
【0043】
食餌:
18%タンパク質(大豆およびホエー)、11%脂肪(大豆油)、59%炭水化物(澱粉+スクロース)および10%セルロースから構成されるコントロール食餌(食餌A)に、イチョウ抽出物(食餌D)、またはビタミンC、ビタミンE、ブドウ種子抽出物およびシステインを含んでなる酸化防止剤のカクテル(食餌B)および/またはL-カルニチン(それぞれ、食餌CおよびE)を追加した。これらの食餌は、下記の通りである:
食餌A-コントロール: 18%タンパク質(大豆およびホエー)、11%脂肪、59%炭水化物、5%セルロース。
食餌B-酸化防止剤のカクテル: 食餌A + 0.19%ビタミンC、0.03% ビタミンE、0.075%ブドウ種子抽出物、0.4%システイン。
食餌C: 食餌A + 0.3% L-カルニチン +食餌Cの酸化防止剤のカクテル。
食餌D: 食餌A + 0.0375%イチョウ抽出物(Linnea)。
食餌E: 食餌A + 0.3% L-カルニチン。
【0044】
グリコサミノグリカン測定:
3ヶ月間の食餌介入の後、動物を屠殺して、標準化した生験材料を採取した。背側皮膚(正中線、下背部)皮膜毛を除いて集め、秤量し、0.5x0.5mmの正方形に切り刻んだ。これらをその重量の10倍容積の0.1%酢酸、1M NaCl中で4℃で一定攪拌を行いながら24時間抽出した。試料を、不溶分(残っている皮膜毛、表皮)を遠心分離によって除き、上部の脂質層、溶解した真皮を含む水性層、および不溶分を含むペレットを生じた。水性層を取っておき、タンパク質を測定した。この上清25μlに200μlのBCA試薬(製造業者の指示に従ってBCA試薬AをBCA試薬Bと予備混合, Pierce, Rockford, IL,米国)を追加し、一定攪拌を行いながら30秒間インキュベーションした。顕色を562nmで測定した。タンパク質濃度を、BSA標準曲線から計算した。
【0045】
グリコサミノグリカンを、Chandrasekhar et al., Anal. Biochem. 161:103-108 (1987)のプロトコールに従って抽出物で測定した。抽出物50μlをDMB 試薬200μl(19mgジメチレンブルー、2.0mlギ酸、2.0gギ酸ナトリウムを1000mlの2回蒸留水に溶解)と混合した。直ちに、プレートを550nmおよび610nmで読み取り、OD 550/610比を測定した。精製したコンドロイチン硫酸の希釈液を標準として用いた。
【0046】
結果
12月齢で開始した3ヶ月間の食餌介入の後、4種類の実験用食餌をコントロール食餌と比較した。皮膚を酸性の高塩緩衝液で抽出し、GAG並びに総タンパク質を抽出物測定した。抽出物のGAG含量を、表1に示す。表1は、皮膚のグリコサミノグリカン含量が、コントロール食餌Aと比較して食餌B、C、DおよびEで刺激されることを示している。
【0047】
【表1】

【0048】
これらのデーターから、湿った皮膚1g当たりのGAG値が誘導され、表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2は、GAG含量がコントロール食餌Aと比較して、食餌Dで50%を上回るだけ、食餌CおよびFで40%を上回るだけ増加した。
【0051】
総タンパク質抽出物を、また12月齢で開始した3ヶ月間の食餌介入の後に測定した。湿った皮膚1g当たりで計算した結果を、表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
抽出したタンパク質は、GAG含量と比較して食餌間では余り変動しなかった。食餌Cは、コントロール食餌Aと比較して、タンパク質含量はほぼ30%低かった。様々な食餌とコントロール食餌Aの変化は遙かに顕著ではなく、10%を超過しなかった。
【0054】
コントロール食餌A を投与された6月齢マウスおよび15月齢群でのコントロール食餌A群と比較したところ、GAGおよびタンパク質濃度の結果は表4に示されるように計算される。
【0055】
【表4】

【0056】
15月齢マウスでは、GAG並びに抽出物タンパク質濃度は月齢に依存して減少する。GAG濃度減少は、抽出タンパク質含量の減少より遙かに顕著である。
【0057】
結論
これらのデーターから、12月齢マウスでの様々な食餌B、C、DおよびEによる3ヶ月間の食餌介入により、GAG含量の月齢に依存する減少を逆転することができる。食餌介入は、GAG含量を若い皮膚で見られるパターンまで増加させるのに効率的であった。GAGは多量の間質液を結合するための有力な分子であるので、それらは間質水和を増加させ且つ皮膚老化の徴候を元に戻すことができる。
【実施例2】
【0058】
実施例2: 乾燥ペットフード
トウモロコシ約58重量%、トウモロコシグルテン約5.5重量%、チキンミール約22重量%、2.5%乾燥チコリー、1%カルニチン、0.1%ビタミンC、ビタミンE(150IU/kg)、0.05%ブドウ種子プロアントシアニジン抽出物、および酸化防止剤としての1%システインであって、残りが塩、ビタミンおよびミネラルであるものから、飼料混合物を作製する。
【0059】
飼料混合物をプレコンディショナーに入れて、加湿する。次に、加湿した飼料を押出機-調理器に入れ、ゼラチン化する。押出機から出てくるゼラチン化したマトリックスをダイに入れて、押し出す。押出成型物をイヌの飼料に適当な細片に切断し、約110℃で20分間乾燥し、冷却してペレットを生成する。
【0060】
この乾燥したドッグフードは、イヌの皮膚品質を改良することができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3 乾燥ペットフード
飼料混合物を、実施例2と同様に2%カルニチンおよび酸化防止剤として0.05%イチョウ抽出物を用いて調製する。次に、飼料混合物を実施例2と同様に加工する。乾燥ドッグフードは、特にイヌの年齢に関連した皮膚の変化を改良しまたは回復することを目的としている。
【実施例4】
【0062】
実施例4 栄養処方
粉末100gに対して、タンパク質加水分解生成物15%、脂肪25%、炭水化物(マルトデキストリン37%、澱粉6%、スクロース12%を含む) 55%、1日必要量に見合うだけの微量のビタミンおよびオリゴ成分(oligoelements)、2%ミネラル、および3%水分、および2%ピルベート、および酸化防止剤としての1%カルノシンまたはカルノシン前駆体を含む栄養組成物を調製する。
【0063】
この粉末13gを水100mlと混合する。得られる処方は、特にヒトの皮膚品質を改良し且つ皮膚の年齢に関係した変化を予防することを目的としている。
【実施例5】
【0064】
実施例5 経口栄養補給物
皮膚品質を改良するための、特に皮膚におけるグリコサミノグリカン産生と沈着を刺激する毎日経口投与可能な組成物は、イチョウ抽出物240mgとGlucidex IT 19(マルトデキストリン粉末) QSP 500mgを含む。
【0065】
この組成物は、皮膚の変化、特に老化過程による変化に対する保護および予防効果を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の皮膚品質を改良し且つ皮膚の年齢に関係した変化を予防しまたは回復するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、または酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる、組成物。
【請求項2】
上記分子がL-カルニチン、 クレアチン、脂肪酸(モノ不飽和およびポリ不飽和、特にω-3 脂肪酸)、カルジオリピン、ニコチンアミドまたは炭水化物、およびそれらの天然供給源である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酸化防止剤が、リポ酸、システイン、シスチン、メチオニン、 S-アデノシル-メチオニン、タウリン、グルタチオン、またはそれらの天然供給源のようなチオールの供給源、イン・ビボでのそれらの生合成をアップレギュレーションする化合物、またはビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、ユビキノン、茶カテキン、ポリフェノールおよび/またはジテルペンを含むコーヒー抽出物、プロアントシアニジンリッチなブドウまたはブドウ種子抽出物、香辛料抽出物、大豆抽出物、および酸化防止剤活性を有する他のフラボノイドの供給源、またはウルソデオキシコール酸、ウルソール酸、チョウセンニンジンおよびジンゲノシドのような化合物、およびそれらの天然供給源のような他の酸化防止剤である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
医薬組成物、栄養上完全なペットフード、または動物が消費するための食料栄養補給物である、請求項1-3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
医薬組成物、栄養上完全なヒトの食品、またはヒトが消費するための食料栄養補給物である、請求項1-3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
細胞外マトリックス産生、特に間質液に結合し皮膚トルゴールを改良するグリコサミノグリカンの合成を刺激する、請求項1-5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
カルニチン、またはイチョウ抽出物、または酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物を含んでなる、請求項1-6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ヒトまたは動物の皮膚品質、特に皮膚トルゴールの改良を目的とする経口投与可能な組成物を調製するための、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せの使用。
【請求項9】
ヒトまたは動物の皮膚年齢に関係した変化を予防しまたは回復することを目的とする経口投与可能な組成物を調製するための、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せの使用。
【請求項10】
請求項1-6のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、ヒトまたは動物の皮膚品質を改良する方法。
【請求項11】
請求項1-6のいずれか一項に記載の組成物を個体に投与することを含んでなる、ヒトまたは動物の皮膚年齢に関連した変化を予防しまたは回復する方法。

【公表番号】特表2006−502176(P2006−502176A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536974(P2004−536974)
【出願日】平成15年9月1日(2003.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009687
【国際公開番号】WO2004/026287
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】