説明

皮膚外用剤用の保湿剤

【課題】 本発明は、皮膚外用剤に用いることができ、保湿効果に優れ、かつ人体に対する安全性及び皮膚外用剤として安定性の高い保湿剤を提供すること。
【解決手段】 コーンファイバー及び/又はコーンコブに由来し、分子中にウロン酸残基を有する酸性オリゴ糖を有効成分とする保湿剤。当該酸性オリゴ糖の平均重合度が3.0〜10.0であり、かつウロン酸以外の構成単糖のうち、キシロースの占める割合が70質量%〜95質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の保湿に有用であり、皮膚外用剤に適用することがで、人体に対して安全性の高い保湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、そのバリア機能により外界の刺激から生体を守る最大の臓器と言われている。また、アミノ酸類、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素、クエン酸塩などの自然保湿因子が皮膚表面の角質層で水分を結合し、皮膚の柔軟性を保っている。一般に、乾燥・紫外線等の外的要因や加齢による老化やストレス等の内的要因による皮膚の角質水分量の減少が、皮膚バリア能の低下をもたらし、更に、ドライスキン、肌荒れ、アトピー性皮膚炎等を引き起こすことが知られている。従って、化粧品分野や皮膚科領域においては、角質水分量を維持する保湿剤の開発が不可欠とされている。
【0003】
保湿剤の例としては、例えば、アミノ酸及び/又はその塩(特許文献1参照)、グリセリンなどの多価アルコール類(特許文献2参照)、ヒアルロン酸及び/又はその塩(特許文献3参照)、コンドロイチン硫酸及び/又はその塩、コラーゲン類などのモイスチャー因子(特許文献4参照)、ホホバ油(特許文献5参照)、オリーブ油(特許文献6参照)、スクワラン等の天然油脂に代表されるエモリエント因子(特許文献7参照)、コラーゲン類と単糖類又はコラーゲン類とオリゴ糖類の併用(特許文献8参照)等が知られているが、長時間使用した場合の皮膚への刺激が懸念されたり、効果の持続性、および安定性の面で十分であるとはいえない。従って、人体に対する安全性が高く、優れた効果をもつ保湿用組成物が望まれている。
【0004】
ウロン酸を含有した酸性キシロオリゴ糖には人体に対して安全性が高く優れた保湿効果があることが確認されているが(特許文献9)原料となる木材に含まれているヘミセルロース含有量が多いものでも30%程度と少なく(非特許文献1参照)、生産効率が悪いという欠点があった。またリグノセルロース材料より酸性キシロオリゴ糖を得る場合、オリゴ糖はリグニンとの複合体として得られるため酸加水分解処理によりリグニンを分離除去する必要があった。
【特許文献1】特許第3439199号公報
【特許文献2】特開平8−259433号公報
【特許文献3】特開2003−238385号公報
【特許文献4】特開2002−145753号公報
【特許文献5】特開2002−47132号公報
【特許文献6】特開2003−277261号公報
【特許文献7】特開平9−176057号公報
【特許文献8】特開2002−348248号公報
【特許文献9】特開2005−187370号公報
【非特許文献1】船岡正光 木質系有機資源の新展開(シーエムシー出版) 2005年、p184
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、皮膚外用剤に適用することができ、人体に対する安全性が高く、優れた効果をもつ保湿剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は「コーンファイバー及び/又はコーンコブに由来し、分子中にウロン酸残基を有する酸性オリゴ糖を有効成分とする皮膚外用剤用の保湿剤」である。
本発明の第2は、前記第1発明において、「前記酸性オリゴ糖の平均重合度が3.0〜10.0であり、かつウロン酸以外の構成単糖のうち、キシロースの占める割合が70質量%〜95質量%であることを特徴とする皮膚外用剤用の保湿剤」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、皮膚外用剤に適用することができ、人体に対する安全性が高く、優れた効果をもつ保湿剤が提供される。本発明の保湿剤は、比較的簡単な工程で、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の構成について詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。本発明の保湿用組成物は、酸性オリゴ糖を有効成分として含有する。本発明で使用する酸性オリゴ糖とは、オリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものを言う。また、構成糖の重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であっても良い。一般的には、天然物から製造するために、このような組成物として得られることが多く、以下、主として酸性オリゴ糖組成物について説明する。
【0009】
該酸性オリゴ糖は、平均重合度(オリゴ糖鎖長の平均値)で、3.0〜15.0が好ましく、3.0〜10.0がより好ましい。オリゴ糖鎖長の上限と下限との差は20以下が好ましく、10以下がより好ましい。ウロン酸は天然では、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸等の種々の生理活性を持つ多糖の構成成分として知られている。本発明におけるウロン酸としては特に限定されないが、グルクロン酸もしくは4−O−メチル-グルクロン酸が好ましい。また該組成物のウロン酸を除外した部分のキシロースの占める割合は70質量%〜95質量%であり、残りの構成糖はアラビノース、ガラクトース、グルコース、マンノースからなる。
【0010】
本発明はコーンファイバー及び/又はコーンコブを原料とする点に特徴があり、上記のような酸性オリゴ糖組成物を得ることが出来れば、その製法は特に限定されないが、コーンファイバー及び/又はコーンコブを物理化学的に分解処理する方法が好ましい。以下にその概要を示す。
【0011】
本発明において用いるコーンファイバー及び/又はコーンコブはコーンスターチ製造時の副産物であり、安価に入手できる上に酸性オリゴ糖含有量が高いため好適に用いられる。
コーンファイバーはとうもろこしの外皮を剥く際に出た外皮そのもので使用できるし、更に粉砕してから水に分散してスラリーにしても良い。コーンコブは通常、乾式でペレット状に粉砕したものをそのまま水に分散してスラリーとして使用するが、必要に応じて、更に微粉砕してから水に分散してスラリーにしても良い。
【0012】
酸性オリゴ糖の抽出効率を高める為に、加熱抽出前に糖質分解酵素やセルラーゼを用いてあらかじめコーンファイバーやコーンコブのセルロースやデンプン等を加水分解して前処理しておくと良い。糖質分解酵素としては、食品添加物として一般的に用いられているものなら特に限定はされない。例えば、液化酵素 T、リクィファーゼ L45、フクタミラーゼ 50、フクタミラーゼ10L、液化酵素 6T、オリエンターゼ AO10、オリエンターゼ AOG、プライマーゼ LC、プライマーゼ HT、ハイマルトシン G、ハイマルトシン GL、グルターゼ 6000、グルターゼ AN(以上、HBI社製)、スタラーゼ F(キッコーマン社製)、スペザイム AA、ピュラスター OxAm、オプチサイズ FLEX、オプチマルト BBA、オプチデックス L、オプチマックス 4060VHP、トランスグルコシダーゼL-500(以上、ジェネンコア共和社製)、ソフターゲン 3H、ソフターゲン3、ソフターゲン7(以上、タイショーテクノス社製)、グリンドアミルAG、グリンドアミルS、グリンドアミルXV、グリンドアミルEB77、グリンドアミルFD、グリンドアミルMAX-LIFE、グリンドアミルA(以上、ダニスコ カルタージャパン社製)、ビオテックス L#3000、ビオテックス TS、スピターゼ HS.、スピターゼ CP-40FG、スピターゼ XP-404、β-アミラーゼ #1500、β-アミラーゼ L、β-アミラーゼ #1500S、XL-4、グルコチーム #20000、長瀬酵素剤 T-50、ビオプラーゼ 3LAP、ビオプラーゼ APS、ビオプラーゼ AP(以上、ナガセケムテックス社製)、BAN、ファンガミル、ターマミル、バイオフィードアルファ、ノバミル、マルトゲナーゼ、ステインザイム、アクアザイム、サーモザイム、デュラミル、AMG、サンスーパー、プロモザイム、デキストロザイム、トルザイム、ファンガミルスーパー、セレミックス、デキストラナーゼ(以上、ノボザイムズ社製)、ユニアーゼ BM-8、ユニアーゼ L、ユニアーゼ K, 2K、ユニアーゼ 30、ユニアーゼ 60F、ユニアーゼ S(以上、ヤクルト薬品工業社製)、GODO-GBA、GODO-ANG(以上、合同酒精社製)コクラーゼ、コクラーゼ・G2、コクラーゼ・M、デキストラナーゼ2F(以上、三共ライフテック社製)、スミチーム L、スミチーム A-10、スミチーム AS、スミチーム、スミチーム SG、スミチームS、スミチームAS(以上、新日本化学工業社製)、クライスターゼ、クライスターゼT、コクゲン、コクゲンT、ネオマルツ、ネオマルツH、ビオクライスターゼ、ビオクライスターゼT、クライスターゼY、クライスターゼPLF(以上、大和化成社製)、ビオザイム F10SD、アミラーゼ S「アマノ」35G、ビオザイムA 、ビオザイム L 、グルクSG、グルクザイムAF6、グルクザイムNL4.2、酒造用グルコアミラーゼ「アマノ」SD、プルラナーゼ「アマノ」3、グルクSBG、AMT 1.2L、トランスグルコシダーゼ L「アマノ」、コンチザイム、アミラーゼAY「アマノ」2、デキストラナーゼ L「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、ベイクザイム P500、ベイクザイム AN301、ベイクザイム AG800、ベイクザイム H1000(以上、日本シイベルヘグナー社製)、VERON AX、VERON GX、VERON M4、VERON ESL(以上、樋口商会社製)、ラタターゼ SR、ラクトーゼRCS、SVA、マグナックスJW-121、マグナックスJW-201、マグナックスJW-101(以上、洛東化成工業社製)等が挙げられる。
【0013】
セルラーゼとしては、食品添加物として一般的に用いられているものなら特に限定はされない。セルラーゼでは、例えばセルロシン AC40、セルロシン AL、セルロシン T2(以上、HBI社製)、キタラーゼ(ケイアイ化成社製)、スペザイム CP、GC220、マルチフェクト CL、マルチフェクト BGL、β−グルカナーゼ 750L(以上、ジェネンコア協和社製)、ソフィターゲンC-1(タイショーテクノス社製)、セルラーゼ XL-531、セルチーム C(以上、ナガセケムテックス社製)、ウルトラフロ、ビスコザイム、フィニザイム、グルカネックス、バイオフォードプラス、エネルジェックス、セルクラスト(以上、ノボザイムズ社製)、セルラーゼ”オノズカ”3S、セルラーゼY-NC、パンセラーゼ BR(以上、ヤクルト薬品工業社製)、スミチームAC、スミチームC(以上、新日本化学工業社製)、ツニカーゼ(大和化成社製)、セルラーゼ A「アマノ」3、セルラーゼ T「アマノ」4、YL-NL「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、ベイクザイム XE(日本シイベルヘグナー社製)、エンチロンMCH、フェドラーゼ(以上、洛東化成工業社製)等が挙げられる。
【0014】
また、上記の前処理とは別に、熱水抽出の前または後にヘミセルラーゼによる酵素処理を行い、酸性オリゴ糖の収率を上げることが可能である。
ヘミセルラーゼとしては、例えばセルロシン HC100、セルロシン HC、セルロシン TP25、セルロシン B、ヘミセルラーゼM(以上、HBI社製)、マルチフェクト720(ジェネンコア協和社製)、グリンドアミルH(ダニスコ カルタージャパン社製)、ペントパン、ペントパンモノ、パルプザイム、シーアザイム(以上、ノボザイムズ社製)、スミチーム X(新日本化学工業社製)、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)、ベイクザイム HS2000、ベイクザイム l Conc(以上、日本シイベルヘグナー社製)、VERON 191、VERON 393、Xylanase Conc(以上、樋口商会社製)、エンチロンLQ(洛東化成工業社製)等が挙げられる。
【0015】
コーンファイバー及び/又はコーンコブの酵素処理方法、としては、酵素の至適pH付近に調整したコーンファイバー及び/又はコーンコブの水性スラリーに、酵素を添加することによって行う。pHの調整は、先に述べた酸もしくはアルカリを用いて行えばよい。酵素反応時のスラリー濃度としては、1〜30%が好ましく、5〜10%がより好ましい。
熱水抽出液をヘミセルラーゼ処理する場合も同様で、酵素の至適pH付近に調整した抽出液に、酵素を添加することによって行う。pHの調整は、先に述べた酸もしくはアルカリを用いて行えばよい。
【0016】
上記のように必要に応じて前処理を施したコーンファイバー及び/又はコーンコブから酸性オリゴ糖を熱水抽出する際の温度は、50℃以上であればよいが、好ましくは100℃の沸騰水中での抽出、より好ましくは加圧条件下で100℃以上に過熱することが好ましい。圧力としては0.1〜0.5MPaの範囲が好ましい。
抽出方法としては、過熱水又は過熱水蒸気を用いる方法が好ましく、回分式と連続式の何れの装置で行うこともできる。過熱水を用いる方法の具体的な例としては、コーンファイバー及び/又はコーンコブの水性スラリーを耐圧容器に入れて間接加熱によって過熱水とする方法、又はジェットクッカーのように連続的に過熱水処理できる装置を利用する方法などが挙げられる。一方、過熱水蒸気を用いる方法の具体的な例としては、コーンファイバー及び/又はコーンコブのスラリーを耐圧容器に入れて過熱水蒸気を導入する方法、又は連続式の蒸煮装置や蒸解装置を利用する方法などが挙げられる。尚、抽出に供するコーンファイバー及び/又はコーンコブのスラリー濃度は、1〜30%程度であればよいが、5〜20%の濃度が生産効率や、作業効率の点から好ましい。またスラリー濃度が30%以上であると、得られるオリゴ糖の平均重合度が高くなり、好ましくない。加熱時間は加熱温度によって最適な条件を適宜選択すればよい。100℃で抽出する場合は30分以上が好ましい。加圧条件下で抽出する場合は15分以上が好ましい。また、加熱処理中に攪拌機などを用いて攪拌しながら抽出を行うことで、抽出効率を高め、加熱時間を短縮することが出来る。
【0017】
熱水抽出時にpHを酸性側もしくはアルカリ側に調整することで抽出効率を高めることが出来る。酸性側では、pH0.5〜4.0が好ましく、pH1.0〜3.5がより好ましい。アルカリ側ではpH9.0〜13.0が好ましく、pH10.0〜11.0がより好ましい。pH調整に用いる酸としては、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、シュウ酸等、食品添加物として食品製造に一般的に用いられている酸であれば良い。pH調整に用いるアルカリとしては、重曹や苛性ソーダなど、食品添加物として食品製造に一般的に用いられているアルカリであれば良い。
前記した温度およびpHの組み合わせとして、温度110〜130℃、pH1.0〜3.5の範囲にすれば、得られるオリゴ糖の構成糖としてキシロースの割合が多くなる。酸性キシロオリゴ糖の整理活性作用が最近研究されており、この点で、上記範囲が好ましい。全糖中の構成糖を分析した時のキシロース含有量で言うと50質量%以上が好ましく、特に70〜95質量%が好ましい。
【0018】
熱水抽出処理後は、まず抽出液と固形分を分離する固液分離処理が必要である。
固液分離には、濾過、遠心分離、湿式分級などの一般的な方法を採用することができる。その後、必要に応じて加水、pH調製を行い、酸性キシロオリゴ糖を含む糖液を得る。
前記した、熱水抽出後のヘミセルラーゼ処理を行う場合は、熱水抽出後の抽出液にヘミセルラーゼを添加して酵素処理しても良いし、固液分離後の糖液中に対してヘミセルラーゼ処理を行っても良い。
【0019】
本発明の酸性オリゴ糖の製造方法は、酸性オリゴ糖を含む糖液をイオン交換処理することを特徴の一つとする。酸性オリゴ糖を含む糖液をイオン交換処理することにより、酸性オリゴ糖のみを得ることができる。
本発明において、酸性オリゴ糖は、次のようにして得ることができる。すなわち、酸性オリゴ糖を含む糖液を陰イオン交換樹脂が装填されたカラムに通液して、陰イオン交換樹脂に糖液中の酸性オリゴ糖を吸着させる。次いで、酸性オリゴ糖が吸着した陰イオン交換樹脂に塩溶液又はアルコールを通液して、陰イオン交換樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を塩溶液又はアルコールに溶出させる。このようにして得られた溶出液には、酸性オリゴ糖のみが含まれる。
【0020】
陰イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂のいずれも用いることができる。強塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトIRA410J CL、アンバーライトIRA411 CL若しくはアンバーライト910CT CL(以上、オルガノ(株)社製)又はダイヤイオンSA10A、ダイヤイオンNSA100、ダイヤイオンPA308、ダイヤイオンPA408若しくはダイヤイオンHPA25(以上、三菱化学(株)社製)を挙げることができる。弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトIRA67、アンバーライトIRA96SB、アンバーライトXT6050RF若しくはアンバーライトXE583(以上、オルガノ(株)社製)又はダイヤイオンWA10、ダイヤイオンWA20、ダイヤイオンWA21J若しくはダイヤイオンWA30(以上、三菱化学(株)社製)等を挙げることができる。
【0021】
陰イオン交換樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を回収する際に用いられる塩溶液及びアルコールとしては、塩化ナトリウム水溶液又はエタノールを挙げることができる。塩化ナトリウム水溶液の濃度としては、特に制限はないが、50〜100mMであるのが好ましい。
【0022】
陰イオン交換樹脂に酸性オリゴ糖を含む糖液を通液する際の通液速度としては、2.0〜5.0ml/min.であるのが好ましい。
【0023】
粉末状の酸性オリゴ糖を得たい場合には、陰イオン交換樹脂に塩溶液又はアルコールを通液して得られた溶出液をスプレードライ処理又は凍結乾燥処理等をすることができる。
【0024】
得られた酸性オリゴ糖を含む糖液は、必要に応じて脱色、脱塩、分画、精製、濃縮、乾燥などの操作を施す。
【0025】
コーンファイバー及び/又はコーンコブを原料とした酸性オリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済性とオリゴ糖の平均重合度の高い酸性オリゴ糖組成物が容易に得られる点にある。平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性オリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ、ヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性オリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0026】
上記方法により得られた酸性キシロオリゴ糖組成物は、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリン等の多価アルコール、エタノール等の低級アルコール類、又はそれらの混合溶媒に溶解したり、又は、スプレードライヤーで乾燥し紛体に加工後、保湿用組成物として用いることができる。また、外用用途に支障のない材質を用いてマイクロカプセル化したりリポソームに内含させたものを保湿用組成物として用いることができる。
【0027】
本発明の保湿剤を皮膚外用剤への適用する例としては、例えば、抗炎症剤やステロイド剤のような皮膚外用剤において、その薬効に保湿作用が好ましい作用を及ぼすような場合に保湿の目的で本発明の保湿剤を含有させたものを例示することができる。皮膚外用剤の形態としては、ローションまたはクリームまたはパウダーが挙げられる。
本発明の保湿剤を配合した皮膚外用剤を作成する場合、保湿剤の配合量は、保湿効果を得るため、0.01〜30質量%であり、更に好ましくは0.05〜5質量%である。また、本発明の保湿用組成物に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。かかる任意成分としては、例えば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が好ましく例示できる。本発明の保湿用組成物と任意成分とを常法に従って処理することにより、本発明の保湿用組成物を含有する皮膚外用剤を製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。まず、各測定法の概要、本発明で有効成分として含有させた酸性オリゴ糖(CX3、CX5、CX10)の調製例1〜3を示す。
【0029】
<測定法の概要>
(1) 全糖量の定量:
全糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、フェノール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(2) 還元糖量の定量:
還元糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、ソモジ−ネルソン法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(3) ウロン酸量の定量:
ウロン酸は検量線をD−グルクロン酸(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、カルバゾール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(4) 平均重合度の決定法:
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
(5) 酸性オリゴ糖の分析方法:
オリゴ糖鎖の分布はイオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−10)を用いて分析した。分離溶媒には100mM NaOH溶液を用い、溶出溶媒には前述の分離溶媒に酢酸ナトリウムを500mMとなるように添加し、溶液比で、分離溶媒:溶出溶媒=10:0〜4:6となるような直線勾配を組み分離した。得られたクロマトグラムより、キシロース鎖長の上限と下限との差を求めた。また酸性オリゴ糖鎖中のウロン酸を除いた部分の構成単糖の比率は酸性オリゴ糖を硫酸で単糖にまで加水分解した後、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−1)を用いて分析した。分離溶媒には水を用い、内部標準法により構成糖の質量比を決定した。
(6) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
(7) 酵素力価の定義:
酵素として用いたキシラナーゼの活性測定にはカバキシラン(シグマ社製)を用いた。酵素力価の定義はキシラナーゼがキシランを分解することで得られる還元糖の還元力をDNS法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)を用いて測定し、1分間に1マイクロモルのキシロースに相当する還元力を生成させる酵素量を1ユニットとした。
【0030】
<調製例:酸性オリゴ糖の調製例>
<調製例1>
コーンファイバー200gに水1800mlを加え、溶液を希塩酸でpH2に調整した。オートクレーブ装置を用いて120℃、100分間加熱した。室温にまで冷却後、遠心分離によって上清を得た。
次に、得られた処理液を濃縮工程、精製工程の順に供した。
濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR−7410)を用いて濃縮液を調製した。
【0031】
精製工程では、限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に供した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外濾過膜(オスモニクス社製、分画分子量8000)を通過させた後、活性炭(和光純薬(株)製)600mgの添加及びセラミックフィルター濾過により脱色処理液を得た。吸着工程では、脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)、強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)各100gを充填したカラムに順次通過させた後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100gを充填したカラムに供した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムから50mM NaCl溶液によって溶出した溶液を凍結乾燥することによって、酸性オリゴ糖組成物の粉末を得た。以下、この酸性オリゴ糖組成物をCX10とする。前述の測定方法により、CX10は平均重合度10.2、オリゴ糖鎖長の上限と下限との差は8、酸性オリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。ウロン酸を除いた構成糖の比率はキシロースが84%、アラビノースが9%、ガラクトースが7%であった。
【0032】
<調製例2>
調製例1と同様にして得られた希酸処理液1160mlに、スミチームX(新日本化学工業(株)製のキシラナーゼ)28mgを添加し、40℃で20時間反応させた。加熱処理(70℃、1時間)により酵素を失活させた後、スミチームX処理液を調製例1と同様の精製工程を経て、酸性オリゴ糖粉末(全糖量21.3g、回収率22.2%)を得た。以下、この酸性オリゴ糖をCX5とする。前述の測定方法により、CX5は平均重合度4.8、オリゴ糖鎖長の上限と下限との差は6、酸性オリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。ウロン酸を除いた構成糖の比率はキシロースが89%、アラビノースが7%、ガラクトースが4%であった。
【0033】
<調製例3>
調製例1より得られたCX10の10%水溶液100mlに、スミチームX(新日本化学工業(株)製のキシラナーゼ)50mgを添加し、60℃、20時間反応後、弱アニオン交換樹脂(WA30)10gを充填したカラムに供した。カラムを水洗した後、50mM NaCl溶液によって溶出した溶液を凍結乾燥することによって、酸性オリゴ糖粉末(全糖量2.1g、回収率21%)を得た。以下、この酸性オリゴ糖をCX3とする。前述の測定方法により、CX3は平均重合度3.4、キシロース鎖長の上限と下限との差は4、酸性オリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。ウロン酸を除いた構成糖の比率はキシロースが93%、アラビノースが3%、ガラクトースが4%であった。
【0034】
次に、こうして得られた各種の酸性オリゴ糖について、本発明の効果を確認するため、以下の試験を行なった。
【0035】
<実施例1〜3及び比較例1>
本発明の酸性オリゴ糖を使ってクリームを作製し、当該クリームを塗付する前後における皮膚コンダクタンスの変化を測定した。
<クリームの作製>
表1に示す成分分量に従って調製した。詳細には、まず(1)〜(4)、および(12)を混合後加熱して75℃とし、水相とする。これとは別に(5)〜(11)を混合し、加熱溶解して75℃とした油相を、先の水相に加え、ホモミキサーで均一に乳化し、油中水型の実施例1〜3のクリームを得た。また、同様にして、(1)〜(3)の入っていないクリームを作成し、比較例1とした。尚、本実施例及び比較例における配合量の値はすべて質量%である。配合を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
<皮膚コンダクタンスの測定>
上記で得られた実施例1、2、3及び比較例1のクリームを用いて、皮膚コンダクタンスを測定し、それぞれ実施例4、5、6及び比較例2を得た。すなわち、健常人10名を被験者とし、右上腕屈側部に、実施例のクリームと比較例のクリームをそれぞれ塗布し、塗布直後から30分後、60分後、120分後における角質層の水分含有量を皮膚コンダクタンスメーター(IBS社製)にて測定した。結果を表2に示す(各測定値:3回の測定値の平均値)。
実施例1〜3のクリームを用いた場合、比較例1のクリームを用いた場合に比べ、塗布後から30分、60分、120分の皮膚コンダクタンスが有意に高かった。これより、酸性オリゴ糖は良好な水分保持能を有することが分かる。
【0038】
【表2】

【0039】
<実施例4>
<安定性試験>
60質量%の酸性オリゴ糖(CX3、CX5、CX10)水溶液を調製後、室温で保存した。調製直後、及び、1ヶ月保存後の酸性オリゴ糖水溶液をイオンクロマトグラムで分析した。1ケ月保存後のサンプルのクロマトグラムのパターンは、調製直後のサンプルと比較して変化はなかった。又、クロマトグラムの各ピークの面積の差は、1ヶ月保存後のサンプルと調製直後のサンプルの間で5%未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により人体に対する安全性が高く、優れた効果をもつ保湿用組成物及び該組成物を含有する皮膚外用剤が提供される。またコーンファイバー及び/又はコーンコブより酸性オリゴ糖を製造することにより従来より安価な保湿剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンファイバー及び/又はコーンコブに由来し、分子中にウロン酸残基を有する酸性オリゴ糖を有効成分とする皮膚外用剤用の保湿剤。
【請求項2】
前記酸性オリゴ糖の平均重合度が3.0〜10.0であり、かつウロン酸以外の構成単糖のうち、キシロースの占める割合が70質量%〜95質量%であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤用の保湿剤。

【公開番号】特開2009−13087(P2009−13087A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174786(P2007−174786)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】