説明

皮膚外用剤

【課題】 分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油を含有する皮膚外用剤において、伸びを重くすること無く、皮膚に柔軟性を与える効果を有する皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】 分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油と、メドウフォーム油を併用することにより、肌に塗布したときの伸びが軽く、肌の柔軟効果に優れた皮膚外用剤が得られた。分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油としては、炭素鎖数5〜20の分岐鎖脂肪酸と炭素鎖数4〜20の分岐鎖アルコールのエステルから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に塗布したときの伸びが軽く、肌の柔軟効果に優れた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油を含有する皮膚外用剤は、伸びが軽く、ベタツキの無いさらっとした使用感を有することが知られていた。しかしながら、シリコーン油を含有する皮膚外用剤は使用後時間が経過すると皮膚が乾燥し、かさかさした感触を与える事があった。そのため肌に塗布したときの伸びを軽くするために、分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油が使用されてきた。(非特許文献1参照)
【0003】
【非特許文献1】蔵田淑子等編,化粧品ハンドブック,日光ケミカルズ,1996,48-49
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油は直鎖のものと比較して、肌の柔軟効果に乏しく、使用後に突っ張るような感触が残ることが問題となっていた。そこで本発明においては、分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油を含有する皮膚外用剤において、伸びを重くすること無く、皮膚に柔軟性を与える効果を有する皮膚外用剤を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するべく種々検討したところ、分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油と、メドウフォーム油を併用することにより、肌に塗布したときの伸びが軽く、肌の柔軟効果に優れた皮膚外用剤が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油と、メドウフォーム油を併用して配合した皮膚外用剤は、肌に塗布したときの伸びが軽く、肌の柔軟効果に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油としては、皮膚外用剤に用いられ得るものであれば特に限定されないが、例えば炭素鎖数5〜20の分岐鎖脂肪酸と炭素鎖数4〜20の分岐鎖アルコールのエステルを用いることができる。炭素数5〜20の分岐鎖脂肪酸としては、炭素鎖数5のイソペンタン酸(イソ吉草酸),炭素数6のイソヘキサン酸(イソカプロン酸),炭素数7のイソヘプタン酸(イソエナント酸),炭素数8のイソオクタン酸(イソカプリル酸),炭素数9のイソノナン酸(イソペラルゴン酸),炭素数10のイソデカン酸(イソカプリン酸),炭素数11のイソウンデカン酸,炭素数12のイソドデカン酸(イソラウリン酸),炭素数13のイソトリデカン酸(イソトリデシル酸),炭素数14のイソテトラデカン酸(イソミリスチン酸),炭素数15のイソペンタデカン酸(イソペンタデシル酸),炭素数16のイソヘキサデカン酸(イソパルミチン酸),炭素数17イソヘプタデカン酸(イソマルガリン酸),炭素数18のイソオクタデカン酸(イソステアリン酸),炭素数19のイソノナデカン酸(イソノナデシル酸),炭素数20のイソイコサン酸(イソアラキン酸)が例示される。炭素数4〜20の分岐鎖アルコールとしては、炭素数4のイソブタノール(イソブチルアルコール),炭素数5のイソペンタノール(イソアミルアルコール),炭素数6のイソヘキサノール(イソカプロイルアルコール),炭素数7のイソヘプタノール,炭素数8のイソオクタノール(イソカプリリルアルコール),炭素数9のイソノナノール,炭素数10のイソデカノール(イソカプリルアルコール),炭素数11のイソウンデカノール,炭素数12のイソドデカノール(イソラウリルアルコール),炭素数13のイソトリデカノール,炭素数14のイソテトラデカノール(イソミリスチルアルコール),炭素数15のイソペンタデカノール,炭素数16のイソヘキサデカノール(イソセチルアルコール),炭素数17のイソヘプタデカノール,炭素数18のイソオクタデカノール(イソステアリルアルコール),炭素数19のイソノナデカノール,炭素数20のイソイコサノール(イソアラキルアルコール)が例示される。かかるエステル油としては、イソステアリン酸イソセチル,イソペンタン酸イソステアリル,イソペンタン酸オクチルドデシル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,イソオクタン酸イソセチルから選択される1種又は2種以上を用いることが、皮膚外用剤に配合した際の伸びの軽さの点から好ましい。
【0008】
本発明において用いるメドウフォーム油は、メドウフォーム種子から抽出したトリグリセリドであり、吸着精製処理を行ったものを用いることが、臭い及び酸化安定性の点から好ましい。
【0009】
本発明に係る皮膚外用剤は、液剤,乳剤,ゲル剤,クリーム剤,軟膏剤等、種々の剤型で提供することができる。
【0010】
なお、本発明に係る皮膚外用剤には分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油と、メドウフォーム油のほかに、本発明の使用感を損なわない範囲で油性成分,界面活性剤,保湿剤,顔料,紫外線吸収剤,香料,防菌防黴剤等の一般的な医薬品及び化粧料用原料、抗炎症剤,美白剤,細胞賦活剤等の生理活性成分を含有させることができる。
【実施例】
【0011】
更に、実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。まず、表1に示す処方にて常法により乳剤を調製し、官能評価専門パネラーによる官能評価を行った。評価は使用時の伸びの軽さ,肌柔軟効果,2時間後の乾燥感のなさについて、「◎:非常に良好」,「○:良好」,「△:普通」,「×:よくない」の4段階で評価を行い、結果を表1に示した。
【0012】
【表1】

【0013】
表1に示した通り、本願発明の実施例は使用時の伸びがジメチルポリシロキサンを配合した比較例1と同程度であり、肌柔軟化効果は直鎖脂肪酸と分岐アルコールのエステルであるステアリン酸イソセチルを配合した比較例2と同程度でした。
【0014】
[実施例2] 油剤
(1)ネオペンタン酸イソステアリル 47.0(重量%)
(2)イソステアリン酸イソセチル 47.0
(3)メドウフォーム油 5.9
(4)ビタミンE 0.1
製法:全成分を混合,均一化する。
【0015】
[実施例3] 水中油型クリーム剤
(1)ミツロウ 5.00(重量%)
(2)セタノール 5.00
(3)還元ラノリン 7.00
(4)ネオペンタン酸イソステアリル 27.50
(5)メドウフォーム油 2.00
(5)グリセリル脂肪酸エステル 4.00
(6)親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.00
(7)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン
モノステアリン酸エステル 5.00
(8)グリチルレチン酸ステアリル 0.25
(9)レチノール 0.20
(10)プロピレングリコール 5.00
(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(12)精製水 36.95
製法:(1)〜(9)の油相成分を混合,溶解して75℃とする。一方、(10)〜(12)を混合,溶解し、75℃に加熱する。次いで、この水相成分に前記油相成分を添加して予備乳化した後ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却する。
【0016】
実施例2,3について、使用感評価を行った結果、伸びが軽く、肌柔軟化効果に優れた使用感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油と、メドウフォーム油を併用して含有して成る、皮膚外用剤。
【請求項2】
分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油が、炭素鎖数5〜20の分岐鎖脂肪酸と炭素鎖数4〜20の分岐鎖アルコールのエステルから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
分岐鎖脂肪酸と分岐鎖アルコールからなるエステル油が、イソステアリン酸イソセチル,イソペンタン酸イソステアリル,イソペンタン酸オクチルドデシル,イソノナン酸イソノニル,イソノナン酸イソトリデシル,イソオクタン酸イソセチルから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−83116(P2006−83116A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270691(P2004−270691)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】