説明

皮膚外用剤

【課題】本発明の皮膚外用剤は、優れた皮膚老化防止又は改善効果や発毛抑制効果等を有する。
【解決手段】次の一般式(1)


〔式中、R1は水素原子、アルキル基、アルカノイル基又は-CH(R6)COOR7(ここでR6は水素原子又は低級アルキル基を、R7は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基又はアラルキル基を示す)を示し;
2は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し;
3は低級アルキル基又はフェニル基を示し;
4は水素原子又は低級アルキル基を示すか、R5と一緒になって隣接する窒素原子とともに複素環を形成してもよい;
5は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示すか、R4と一緒になって前記の複素環を形成してもよい;
Xは-COOR8又は-SO3H(ここでR8は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基又はアラルキル基を示す)を示し;
nは0〜4の整数を示す〕
で表されるジペプチド化合物又はその塩を含有する皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚の老化防止又は改善効果や、発毛抑制効果等を有する皮膚外用剤
に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚老化に関する研究により、皮膚老化の原因として、加齢、乾燥、酸化、太陽光(紫外線)等による影響が主な因子に挙げられている。皮膚老化は、皮膚真皮におけるコラーゲンやエラスチンの減少、ヒアルロン酸をはじめとするムコ多糖類の減少、紫外線による細胞の損傷等により認知される。
【0003】
しかし、しわ発生防止等については、例えば、コラーゲン配合化粧料では充分な効果は得られていない。又、紫外線との関連性から紫外線照射により生じた皮膚の老化について種々研究されているが、未だに紫外線吸収剤、紫外線防御剤にかわる化粧料が開発されていない。
【0004】
美的外観から特に手足等における体毛は無い方が好ましいとする傾向が高まり、各種の体毛除去方法、例えば、シェーバー、抜毛器等を用いる機械的除去方法、脱毛剤を用いた体毛を毛根から抜去する方法、除毛剤を用いてその化学的作用により体毛を除去する方法等が利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの体毛除去方法は、皮膚に対して物理的又は化学的刺激を伴い、かつ、体毛除去の持続性には限界がある。そこで、体毛除去処理の軽減化が望まれている。
【0006】
本発明は、しわの発生等の皮膚の老化防止又は改善効果や、発毛抑制効果等を有する皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は特定の構造を有するジペプチド化合物又はその塩に優れたしわ形成抑制作用、皮膚弾力性低下防止作用、発毛抑制効果などを有し、皮膚老化防止や発毛抑制を目的とした皮膚外用剤として有用であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるジペプチド化合物又はその塩を含有する皮膚外用剤を提供するものである。
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、R1は水素原子、アルキル基、アルカノイル基又は-CH(R6)COOR7(ここでR6は水素原子又は低級アルキル基を、R7は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基又はアラルキル基を示す)を示し;
2は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し;
3は低級アルキル基又はフェニル基を示し;
4は水素原子又は低級アルキル基を示すか、R5と一緒になって隣接する窒素原子とともに複素環を形成してもよい;
5は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示すか、R4と一緒になって前記の複素環を形成してもよい;
Xは-COOR8又は-SO3H(ここでR8は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基又はアラルキル基を示す)を示し;
nは0〜4の整数を示す〕
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮膚外用剤は、優れた皮膚老化防止又は改善効果や発毛抑制効果等を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般式(1)中、R1で示されるアルキル基としてはC1−C6アルキル基が好ましく、当該アルキル基としては直鎖でも分岐鎖でもよく、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0013】
1で示されるアルカノイル基としてはC1−C6アルカノイル基が好ましく、当該アルカノイル基としては直鎖でも分岐鎖でもよく、特にアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が好ましい。
【0014】
3、R4、R6、R7及びR8で示される低級アルキル基としてはC1−C6アルキル基が好ましく、当該アルキル基としては直鎖でも分岐鎖でもよく、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0015】
7及びR8で示される低級アルケニル基としてはC2−C6アルケニル基が好ましく、特にビニル基、プロペニル基が好ましい。
7及びR8で示されるアラルキル基としては総炭素数7〜18のアラルキル基、例えばフェニル−C1−C6アルキル基、ビフェニル−C1−C6アルキル基、ナフチル−C1−C6アルキル基が挙げられるが、フェニル−C1−C6アルキル基がより好ましく、ベンジル基が特に好ましい。
【0016】
2で示される置換基を有していてもよいアルキル基としてはC1−C6アルキル基、カルボキシ−C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシカルボニル−C1−C6アルキル基が挙げられるが、このうちC1−C6アルキル基がより好ましい。さらにR2としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基が特に好ましい。
【0017】
5で示される置換基を有していてもよいアルキル基としてはC1−C6アルキル基、カルボキシ−C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシカルボニル−C1−C6アルキル基が挙げられ、このうち、C1−C6アルキル基、カルボキシ−C1−C6アルキル基が好ましい。さらにメチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基が特に好ましい。
4とR5が一緒になって形成する複素環としてはピロリジン、ピペリジンが挙げられる。
nは0〜2の整数が特に好ましい。
【0018】
一般式(1)中、R1としては水素原子、C1−C6アルキル基、C1−C6アルカノイル基又は-CH(R6)COOR7(ここでR6は水素原子又はC1−C6アルキル基を、R7は水素原子、C1−C6アルキル基、C2−C6アルケニル基又はフェニル−C1−C6アルキル基を示す)がより好ましい。R2としては、水素原子又はC1−C6アルキル基がより好ましい。R3としては、C1−C6アルキル基又はフェニル基がより好ましい。R4としては、水素原子又はC1−C6アルキル基がより好ましい。R5としては、水素原子、C1−C6アルキル基、フェニル−C1−C6アルキル基又はカルボキシC1−C6アルキル基がより好ましい。また、Xとしては、-COOR8又は-SO3H(ここでR8は水素原子、C1−C6アルキル基、C2−C6アルケニル基又フェニル−C1−C6アルキル基を示す)がより好ましい。さらにnとしては、0、1又は2が特に好ましい。
【0019】
ジペプチド化合物(1)の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アミノ酸塩、酸付加塩等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属塩又はアミノ酸塩である。なお、ジペプチド化合物(1)は光学活性を有していてもよく、立体配置はR、Sのいずれでも、ラセミ体でもよい。また、本化合物は水和物の形態であってもよい。
【0020】
ジペプチド化合物(1)のうち、特に好ましい化合物としては、次のようなものを例示できる。
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
Phe−Gly(化合物11)、Phe−β−Ala(化合物12)、Phe−Phe(化合物13)、Phe−Leu(化合物14)、Phe−Ala(化合物15)、Phe−Asp(化合物16)、Phe−Tau(化合物17)
上記のうち、化合物1及び化合物12が特に好ましい。
【0024】
一般式(1)中、R1が水素原子である化合物は、K. Ienalga, K. Higashihara and H. Kimura, Chem. Pharm. Bull. ,35, 1249-1254(1987)に記載の方法により合成できる。また一般式(1)中、R1が水素原子以外の基である化合物、例えば次の方法により合成することができる。
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、Yはハロゲン原子、p−トルエンスルホニル基又はメタンスルホニルオキシ基を示し、R1は水素原子以外の前記の基を示し、R2〜R5、n及びXは前記と同じ)
【0027】
すなわち、化合物(2)と化合物(3)を塩基の存在下又は非存在下に反応させ、必要に応じて水酸化ナトリウム等の塩基による加水分解反応や、パラジウムカーボン等による接触水素化反応を行うことにより本発明化合物(1)を得る。
この反応に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン等が挙げられるが、炭酸カリウム、トリエチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0028】
また反応溶媒としては水、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等が用いられるが、トルエン、ベンゼンがより好ましく、トルエンがさらに好ましい。反応温度は−30〜200℃、さらに10〜90℃、特に40〜70℃が好ましい。
【0029】
ジペプチド化合物(1)又はその塩の、本発明の皮膚外用剤への配合量は、0.0001〜40重量%(以下、単に「%」で示す)、特に0.01〜20%が好ましい。
【0030】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚の老化で生じる、しわ、たるみ、はりの減少等の改善・防止、又は発毛抑制の目的で使用することが特に好ましい。
【0031】
また、本発明の皮膚外用剤に、角化改善剤を配合することにより、さらにしわの発生等の皮膚の老化防止又は発毛抑制効果等を向上させうる。この角化改善剤としては、スフィンゴシン誘導体等が挙げられる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤は、上記成分の他に、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種任意成分、例えば保湿剤、粉体、ゲル化剤、増粘剤、界面活性剤、乳化剤、抗炎症剤、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料や、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、コラーゲン等の既存の皮膚老化防止・改善剤、既存の発毛抑制剤等を適宜配合し、使用形態に応じて常法に従って製造することができる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤は、その使用形態において、薬用皮膚外用剤と化粧料とを包含する。薬用皮膚外用剤としては、例えば薬効成分を含有する各種軟膏剤を挙げることができる。軟膏剤としては、油性基剤をベースとするもの、水中油型又は油中水型の乳化系基剤をベースとするもののいずれでもよい。油性基剤に特に制限はなく、例えば植物油、動物油、合成油、脂肪酸、及び天然、合成のグリセライド等が挙げられる。薬効成分に特に制限はなく、例えば鎮痛消炎剤、鎮痒剤、収斂剤、ホルモン剤等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0034】
また、化粧料としては、ローション状、乳液状、クリーム状、軟膏状、テスィック状、有機溶媒や精製水等による溶液状、パック状、ゲル状、エアゾール状等の形態を挙げることができる。すなわち、化粧料としては、ローション、オイルエッセンス、O/W型又はW/O型のクリーム、パック、ファンデーション、皮膚洗浄剤、トニック、浴用剤、エアゾール等として使用することができる。
【実施例】
【0035】
参考例1
フェニルアラニル−β−アラニンベンジルエステル塩酸塩10.0g(0.028mol)及びブロモ酢酸ベンジル14.6g(0.062mol)をテトラヒドロフラン200mLに溶解した。これにテトラヒドロフランに懸濁させたトリエチルアミンを加え、42時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル100mLで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。次いで、溶媒を留去し、残留物をカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−n−ヘキサン混合溶媒で抽出した。溶媒を留去して、ジベンジルエステルを8.8g(66%)得た。これをメタノールに懸濁させ、10%のパラジウムカーボンで接触水素化した。次いで結晶をろ過し、水で再結晶を行ない、化合物1を1.34g(35%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:2.30(t,2H,J=7Hz), 2.75(dd,1H,J=8,14Hz), 2.87(dd,1H,J=6,14Hz), 3.10(dd,2H,J=17,25Hz), 3.22(dt,2H,J=7,7Hz), 3.33(t,1H,J=7Hz), 7.10-7.36(m,5H), 7.99(t,1H,J=6Hz)
【0036】
参考例2
フェニルアラニル−γ−アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩1.4g(0.0047mol)及びブロモ酢酸エチル0.8g(0.0056mol)をテトラヒドロフラン80mLに溶解した。これにテトラヒドロフランに懸濁させたトリエチルアミンを加え、24時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル20mLで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。次いで、溶媒を留去し、残留物をカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−n−ヘキサン混合溶媒で溶出した。溶媒を留去して、エチルエステルを0.5g(31%)得た。これをメタノールに溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(2.2当量)を加え、15時間攪拌した。次いで溶媒を留去し、塩酸で中和した後、溶媒を留去して化合物2を0.18g(41%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:1.52(tt,2H,J=7,7Hz), 2.09(t,2H,J=8Hz), 2.86(dd,2H,J=7,13Hz), 3.01(dd,2H,J=8,14Hz), 3.10(dt,2H,J=3,16Hz), 3.44(t,1H,J=7Hz), 7.04-7.49(m,5H), 8.15(t,1H,J=16Hz)
【0037】
参考例3
参考例2において、フェニルアラニル−γ−アミノ酪酸メチルエステル塩酸塩の代りにフェニルアラニルロイシンメチルエステル塩酸塩1.0g(0.00304mol)及びブロモ酢酸エチルを0.6g(0.00365mol)とした以外は参考例2と同様にして、化合物3を0.34g(33%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:0.81(d,3H,J=6Hz), 0.86(d,3H,J=6Hz), 1.40-1.68(m,3H), 2.76(dd,1H,J=8,14Hz), 2.93(dd,1H,J=6,14Hz), 3.08(d,1H,J=17Hz), 3.23(d,1H,J=17Hz), 3.42(dd,1H,J=6,8Hz), 4.16-4.28(m,1H), 7.17-7.29(m,5H), 8.12(d,1H,J=8Hz)
【0038】
参考例4
フェニルアラニル−β−アラニンエチルエステル10g(0.038mol)及びトリエチルアミン10.3g(0.1mol)をトルエン45gに懸濁させ、60℃まで昇温した。これにトルエン5gに懸濁させたブロモ酢酸エチル9.3g(0.057mol)を0.5時間かけて滴下し、3時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル20gで抽出した。有機層を2.5%クエン酸水溶液で洗浄した。次いで、溶媒を留去し、N−(カルボエトキシメチル)フェニルアラニル−β−アラニンエチルエステルを10.7g(80.3%)得た。この化合物をメタノールに溶解し、48%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(0.08mol)を加え、3時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去して、残留物を水20mLに溶解させ、酢酸エチル10gで洗浄した。次いで、水層に塩酸を加え、pH3.5に調整した。溶液を冷却後、濾過し、粗結晶を得た。20%イソプロピルアルコール水溶液で再結晶を行い、化合物1を6.0g(67%)得た。
【0039】
参考例5
参考例4においてフェニルアラニル−β−アラニンエチルエステルの代わりにフェニルアラニルアラニンエチルエステル3.7g(0.014mol)及びブロモ酢酸エチルを3.5g(0.021mol)とした以外は参考例4と同様にして化合物4を1.4g(33%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:1.24(d,3H,J=7Hz), 2.78(dd,1H,J=8,14Hz), 2.96(dd,1H,J=5,14Hz), 3.08(d,1H,J=17Hz), 3.24(d,1H,J=17Hz), 2.46(dd,1H,J=7,7Hz), 4.29(dq,1H,J=7,7Hz), 7.13-7.35(m,5H), 8.22(d,1H,J=7Hz), 5.5-8.5(br.s,2H)
【0040】
参考例6
参考例4においてフェニルアラニル−β−アラニンエチルエステルの代わりにフェニルアラニルアスパラギン酸ジメチルエステル7.4g(0.024mol)及びブロモ酢酸エチルを6.0g(0.036mol)とした以外は参考例4と同様にして化合物5を1.0g(12%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:2.54-2.70(m,2H), 2.77(dd,1H,J=7,14Hz), 2.93(dd,1H,J=6,14Hz), 3.10(d,1H,J=17Hz), 3.28(d,1H,J=17Hz), 3.44(dd,1H,J=6,7Hz), 4.45-4.55(m,1H), 7.19-7.29(m,5H), 8.28(d,1H,J=8Hz)
【0041】
参考例7
フェニルアラニル−β−アラニン17.4g(0.074mol)をピリジン120gに懸濁し15℃に冷却した。無水酢酸30gを1時間かけて滴下し、滴下終了後、室温に戻し、13時間攪拌し、反応を終了した。反応混合物を5℃に冷却し、エタノール50mLを加えて30分攪拌した後、溶媒を留去した。残留物を酢酸エチル500mLで抽出し、5%塩酸、蒸留水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。次いで溶媒を留去し、残留物をカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム−メタノール混合溶媒で溶出した。溶媒を留去したところ化合物6を11.5g(56%)を得た。
NMR(DMSO-d6)δ:1.74(s,3H), 2.30(dd,2H,J=7,7Hz), 2.70(dd,1H,J=10,14Hz), 2.91(dd,1H,J=5,14Hz), 3.12-3.36(m,2H), 4.35-4.46(m,1H), 7.13-7.28(m,5H), 8.02(t,1H,J=6Hz), 8.67(d,1H,J=8Hz), 12.22(br.s,1H).
【0042】
参考例8
フェニルアラニル−β−アラニン1g(0.0042mol)を水2gに懸濁させた。これにパラジウムカーボン(10%)1g及び36%ホルムアルデヒド水溶液7.1g(0.042mol)を加え、H2雰囲気下、10気圧で24時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物7を12.8mg(8.1%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:1.92-2.32(m,2H), 2.81(s,6H), 2.89-3.32(m,2H), 3.11(dd,2H,J=6,13Hz), 3.94(dd,1H,J=4,10Hz), 7.00-7.41(m,5H), 8.44(t,1H,J=6Hz), 11.82-12.52(br.s,1H)
【0043】
参考例9
フェニルアラニン−β−アラニン0.5g(0.0021mol)を水5gに懸濁させた。これにパラジウムカーボン(10%)0.5g及びメタノール5gに溶解させたプロピオンアルデヒド0.15g(0.027mol)を加え、H2雰囲気下で24時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去した。残留物をメタノールで再結晶を行ない、化合物8を0.13g(22.2%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:0.75(t,3H,J=7Hz), 1.30(ddt,2H,J=7.7,14Hz), 2.12-2.44(m,2H), 2.28(dd,2H,J=7.7Hz), 2.65(dd,1H,J=8,14Hz), 2.81(dd,1H,J=6,13Hz), 3.16(dd,1H,J=6,8Hz), 3.13-3.33(m,2H), 7.05-7.35(m,5H), 7.89(t,1H,J=6Hz)
【0044】
参考例10
参考例4においてフェニルアラニル−β−アラニンエチルエステルの代わりにロイシル−β−アラニンエチルエステル2.0g(0.009mol)及びブロモ酢酸エチルを2.2g(0.013mol)とした以外は参考例4と同様にして化合物9を1.6g(45%)得た。
NMR(DMSO-d6)δ:0.83(d,3H,J=7Hz), 0.85(d,3H,J=7Hz), 1.37(dd,2H,J=7,6Hz), 1.48-1.68(m,1H), 2.37(t,2H,J=7Hz), 3.02(d,1H,J=17Hz), 3.15(d,1H,J=17Hz), 3.21-3.27(m,4H), 8.26(t,1H,J=6Hz)
【0045】
参考例11
フェニルアラニルタウリン2.5g(9.18mmol)及び水酸化ナトリウム0.58g(0.0144mol)を蒸留水25gに溶解し、50℃まで昇温した。これに、蒸留水3gを溶解させたブロモ酢酸1.5g(0.011mol)を系内のpHが10.5〜11.5となるように水酸化ナトリウム水溶液を同時に滴下しながら0.5時間かけて滴下し、3時間攪拌した。反応終了後、塩酸を加えて系内のpHを3とし、溶媒を留去して、N−(カルボエトキシメチル)フェニルアラニルタウリン・無機塩混合物7.15gを得た。このうち1gをODS−ゲルカラムクロマトグラフィーに付し、N−(カルボエトキシメチル)フェニルアラニルタウリン0.15gを得た。更に、これを分取HPLCで処理して、化合物10を48mg得た。
NMR(DMSO-d6)δ:2.29-2.43(m,2H), 2.97-3.26(m,4H), 3.74(d,2H,J=3.3Hz), 4.01(t,1H,J=6.7Hz), 7.19-7.32(m,5H), 8.29(t,1H,J=5.5Hz), 9.41(bs,1H)
【0046】
試験例1 ヘアレスマウスによるしわ形成抑制試験
ヘアレスマウス(HR/ICR ,実験開始時6週齢、1群5匹)の背部に、健康線用ランプ(東芝製、SE20)で、1回の照射量を1MED以下に調節してUV−B照射し、直後に、被験化合物を0.1%含有する80%エタノール溶液(被験体)を100μL塗布した。この作業を20週間にわたって行なった。照射エネルギー量はUV−Radiometer(TOKYOOPTICAL社製、UVR-305/365D)を用いて測定した。また、コントロールとして80%エタノールのみを塗布したものを同様に試験した。試験終了後、形成されたしわの度数を肉眼により下記の基準(しわスコア)で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
<しわスコア>
0:しわが無形成
1:しわがかすかに形成
2:しわが微量形成
3:しわが若干形成
4:しわが強固に形成
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果から、ジペプチド化合物(1)は、顕著なしわ形成抑制作用を有し、優れた皮膚老化防止・改善効果を示した。
【0050】
試験例2 ラットによる皮膚弾力性維持試験
3週齢のSD系雄性ラットの両足底を4群に分け(1群5匹)、被験化合物含有80%エタノール溶液塗布群、溶媒(80%エタノール)塗布群、無処理群とした。UV−B(1MED以下)照射後、被験物質又は溶媒を1足当たり10μLを塗布した。この作業を、隔日、週3回、6週間にわたって行なった。
皮膚の弾力性測定はキュートメーターSES575(クレージュ・カザカ社製)を用い、500hPa で3秒間吸引後、解放し、その後3秒間の計6秒間の変位を測定した。測定は1足当たり5回行ない、Ue値及びUf値を求めた。
弾性繊維の直線性の解析は、SEM写真の画像解析を用いたImokawa らの方法(J. Invest. Dermatol., 105, 254-258(1995))によった。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)用試料は、試験終了後、ラット足底をメルコックス(大日本インキ(株))にて還流固定後、ギ酸消化を行ないSEMに供した。各試料ごとに採取1000倍のSEM写真からそれぞれ代表的な10枚を抽出し、拡大コピーをした後、均等に16分割した。各領域で任意の弾性繊維を一本抽出し、透明フィルム上に一定太さの線(8ピクセル幅)でトーレスした。この弾性繊維をトーレスした線の占める面積をA、トーレスが囲まれる最小面積の長方形の縦長をB、横長をCとして弾性繊維の直線性はA/(B×C)で表わされる。例えば、弾性繊維のトーレスが直線であれば直線性は1となる。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果から、ジペプチド化合物(1)は、UV−Bによる皮膚の弾力性低下及びその原因となる弾性繊維の3次元構造の変性を強く予防する効果を示し、皮膚のはりを保持できることが明らかとなった。
【0053】
試験例3 マウスによる発毛抑制試験
生後6週齢のC3Hマウス1群5匹の背部毛を、電気バリカン及び電気シェーバーを用い、皮膚を傷つけないように2×4cm2にわたり剃毛した。剃毛部位に試料を1日2回100μLずつ4週間にわたり塗布した。試料は、被験物質を溶媒(80%エタノール)に溶解して表3に示す濃度に調整した。対照群には溶媒のみを塗布した。3週間後、再生毛を観察するために、剃毛部分を一定倍率で撮影し、画像解析装置を用いて再生毛面積比(再生毛面積/剃毛面積)を対照群と比較した。発毛抑制率は、対象群の再生毛面積比を100としたときの相対値(%)で示した。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
表3の結果から、ジペプチド化合物(1)は、優れた発毛抑制効果を有していた。
【0056】
配合例1
下記に示す配合で皮膚老化改善用クリームを常法に従い製造した。該クリームは優れた皮膚老化改善効果を示した。
(%)
化合物1又は化合物12 0.2
ステアリン酸 2.0
セタノール 4.0
スクワレン 8.0
ワセリン 5.0
硬化パーム油 4.0
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート
(20E.O.) 1.4
親油性モノステアリン酸グリセリン 2.4
ブチルパラベン 0.1
グリセリン 3.0
10.0%水酸化カリウム 0.2
香料 0.1
精製水 バランス
合計 100.0
【0057】
配合例2
下記に示す配合で皮膚老化防止・改善用パックを常法に従い製造した。該パックは優れた皮膚老化防止・改善効果を示した。
(%)
化合物3 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 0.1
色素 0.1
精製水 バランス
合計 100.0
【0058】
配合例3
下記に示す配合で発毛抑制ローションを製造した。すなわちAに属する成分を溶解し、これとは別にBに属する成分を溶解した。AにBを添加して均一に攪拌混合し、発毛抑制ローションを得た。該ローションは、優れた発毛抑制効果を示した。
(%)
A.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.8
エタノール 30.0
B.化合物1又は化合物12 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 12.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス
合計 100.0
【0059】
配合例4
下記に示す配合で発毛抑制エアゾールを製造した。すなわちAに属する成分を均一に混合して容器に入れ、常法によりBを容器に充填して発毛抑制エアゾールを製造した。該エアゾールは、優れた発毛抑制効果を示した。
(%)
A.化合物1 1.0
セタノール 1.2
プロピレングリコール 4.0
エタノール 8.0
精製水 バランス
B.液化石油ガス(噴射剤) 4.0
合計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】

〔式中、R1は水素原子、C1−C6アルキル基、C1−C6アルカノイル基又は-CH(R6)COOR7(ここでR6は水素原子又はC1−C6アルキル基を、R7は水素原子、C1−C6アルキル基、C2−C6アルケニル基又はフェニル−C1−C6アルキル基を示す)を示し;
2は水素原子又はC1−C6アルキル基を示し;
3はC1−C6アルキル基又はフェニル基を示し;
4は水素原子又はC1−C6アルキル基を示し;
5は水素原子、C1−C6アルキル基、フェニル−C1−C6アルキル基又はカルボキシC1−C6アルキル基を示し;
Xは-COOR8又は-SO3H(ここでR8は水素原子、C1−C6アルキル基、C2−C6アルケニル基又フェニル−C1−C6アルキル基を示す)を示し;
nは0、1又は2の整数を示す〕
で表されるジペプチド化合物又はその塩を含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
皮膚老化防止又は改善剤である請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
発毛抑制剤である請求項1記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−31039(P2010−31039A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254913(P2009−254913)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【分割の表示】特願2000−272980(P2000−272980)の分割
【原出願日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】