説明

皮膚外用剤

【課題】不全角化を起因とする皮膚の状態を予防または改善する皮膚外用剤の提供。
【解決手段】式(I):


〔式中、Xaa1およびXaa5はセリル基、スレオニル基、チロシニル基、Xaa2はイソロイシル基、バリル基、ロイシル基、Xaa3およびXaa4はアスパラギニル基、グルタミニル基、アスパラチル基、グルタミル基、Cysはシステイニル基、R1は式(II):


(式中、nは1〜10の整数を示す)または式(III):


(式中、nは1〜10の整数を示す)〕の環状ペプチド化合物を含有する皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、不全角化を起因とする皮膚の状態の予防または改善に有用な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの表皮は、下層から順に、基底層と有棘層と顆粒層と角質層とからなる。ヒトの正常な皮膚は、通常、28日間の周期でターンオーバーする。正常な皮膚のターンオーバーでは、ケラチノサイトが顆粒層から角質層へと押し上げられる。このとき、ケラチノサイトの分化により脱核が生じて有核細胞が消失し、成熟した角質層が形成される。
【0003】
しかしながら、炎症や皮脂中に含まれる不飽和脂肪酸などによって表皮における細胞の増殖速度が著しく大きくなり、角化の速度が異常に促進された場合、最終分化段階のケラチノサイトにおいて、脱核が起こらないことがある(以下、「不全角化」という)。
【0004】
不全角化を伴う皮膚は、前記角質層のバリア機能が著しく低下していることから、物理的刺激や化学的刺激を十分に防ぐことができない状態になっている。そのため、不全角化を伴う皮膚では、ニキビ、肌荒れなどの皮膚トラブルが生じやすい。
【0005】
前記バリア機能を補うために、不全角化を伴う皮膚に対して、保湿剤などを含む皮膚外用剤が適用されている。しかしながら、一般に、前記保湿剤による表皮における保湿効果は、一時的に発揮されるにすぎないことから、当該保湿剤などを含む皮膚外用剤には、本質的な皮膚の状態の改善を期待することができないという欠点がある。そこで、不全角化を抑制し、当該不全角化を起因とする皮膚の状態を予防または改善することができる有用な皮膚外用剤が求められている。
【0006】
一方、エピモルフィンは、上皮組織の形態形成の促進に関与している因子の1つであると考えられている。そこで、上皮組織の形態形成を制御するために、エピモルフィンによる上皮組織の形態形成促進作用を阻害するペプチドが開発されている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【0007】
しかしながら、現時点では、本発明者らは、エピモルフィンと炎症や皮脂中に含まれる不飽和脂肪酸などによる不全角化との関係を具体的に記載した文献を発見していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−7698号公報
【特許文献2】特許第3922345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、不全角化を起因とする皮膚の状態を予防または改善することができる皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、
(1) 式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、Xaa1およびXaa5はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基、Xaa2は置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基、Xaa3およびXaa4はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基、Cysはシステイニル基、R1は式(II):
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、nは1〜10の整数を示す)
で表される基または式(III):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、nは1〜10の整数を示す)
で表される基を示す〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を含有してなる皮膚外用剤、ならびに
(2) 式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、R1が式(III)で表される基であり、nが1である前記(1)に記載の皮膚外用剤
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の皮膚外用剤によれば、不全角化を起因とする皮膚の状態を予防または改善することができるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】参考例1において、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量とオレイン酸との関係を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図2】参考例2において、HaCaT−TE細胞の培養上清およびPT67−TE細胞の培養上清それぞれにおける分泌エピモルフィンの量とオレイン酸との関係を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図3】実施例1において、ペプチドのマススペクトルを示すチャートである。
【図4】実施例1において、酸化後のペプチドのマススペクトルを示すチャートである。
【図5】(A)は、試験例2において、実験番号:11の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は実験番号:10の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真である。
【図6】試験例2において、試料の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図7】(A)は、試験例3において、実験番号:15の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は、実験番号:14の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真である。
【図8】試験例3において、試料の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図9】試験例4において、試料の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図10】試験例5において、試料の種類または細胞の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図11】(A)は試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液を塗布せずに実験番号:32の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:33の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真、(C)は試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:34の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真、(D)は試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:35の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、前記したように、式(I):
【0020】
【化4】

【0021】
〔式中、Xaa1およびXaa5はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基、Xaa2は置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基、Xaa3およびXaa4はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基、Cysはシステイニル基、R1は式(II):
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、nは1〜10の整数を示す)
で表される基または式(III):
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、nは1〜10の整数を示す)
で表される基を示す〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を含有している。なお、前記式(I)は、配列番号:1に対応している。
【0026】
前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、分子内に、配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド鎖が当該ペプチド鎖中のシステイニル基とこのペプチド鎖に付加されたシステイニル基と式(II)で表される基または式(III)で表される基とによって環化された構造を有している。前記構造のうち、前記配列番号:2に示されるアミノ酸配列を一部に有する配列番号:3に示されるアミノ酸配列からなる直鎖状ペプチドは、エピモルフィンや、オレイン酸などの不飽和脂肪酸によって引き起こされるヒトの皮膚モデルにおける不全角化を抑制しないことが本発明者らによって見出されている。これに対して、前記環化された構造を有している前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、エピモルフィンの生理活性を抑制し、エピモルフィンや、オレイン酸などの不飽和脂肪酸によって引き起こされるヒトの皮膚モデルにおける不全角化を抑制することが本発明者らによって見出されている。したがって、本発明の皮膚外用剤は、式(I)で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を含有していることから、不全角化を抑制することができるので、不全角化を起因とする皮膚の状態を予防または改善することができるという優れた効果を奏する。
【0027】
なお、本明細書において、不全角化に起因するヒトの皮膚の状態とは、例えば、肌荒れ、ニキビ、吹き出物、タコ、イボ、乾癬、フケ症などをいう。
【0028】
また、本明細書において、不全角化を抑制する作用を「抑制作用」という。かかる抑制作用は、例えば、
(a)エピモルフィンを発現するケラチノサイトを支持体上で三次元に培養して得られる分化細胞構築物の表面に本発明の皮膚外用剤を塗布すること、
(b)ケラチノサイトを支持体上で三次元に培養して得られる分化細胞構築物の表面にオレイン酸を塗布した後、さらに本発明の皮膚外用剤を塗布すること、
(c)エピモルフィンを発現するケラチノサイトの細胞凝集物をコラーゲンゲル中に包埋させ、当該細胞凝集物を、本発明の皮膚外用剤を含む培地中で培養すること、
(d)ケラチノサイトの細胞凝集物をコラーゲンゲル中に包埋し、当該細胞凝集物を、オレイン酸と本発明の皮膚外用剤とを含む培地中で培養すること、
(e)本発明の皮膚外用剤を含む培地中でエピモルフィンを発現するケラチノサイトを培養した後、得られたケラチノサイトを、カルシウムイオン導入剤を含む培地中で培養すること、または
(f)本発明の皮膚外用剤とオレイン酸とを含む培地中でケラチノサイトを培養した後、得られたケラチノサイトを、カルシウムイオン導入剤を含む培地中で培養すること
により、不全角化が改善されることに基づいて評価することができる。
【0029】
Xaa1は、置換基を有してもよいセリル基または置換基を有してもよいスレオニル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、例えば、単糖または多糖から誘導されたチオグリコシル基、単糖または多糖から誘導されたO-グリコシル基、単糖または多糖から誘導されたN-グリコシル基、リン酸基などが挙げられる。前記Xaa1のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはセリル基である。
【0030】
Xaa2は、置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基などが挙げられる。前記Xaa2のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはイソロイシル基である。
【0031】
Xaa3は、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。Xaa3が置換基を有してもよいアスパラギニル基である場合、前記置換基としては、単糖または多糖から誘導されたチオグリコシル基、単糖または多糖から誘導されたO-グリコシル基、単糖または多糖から誘導されたN-グリコシル基などが挙げられる。Xaa3が置換基を有してもよいグルタミニル基である場合、前記置換基としては、アミノ基などが挙げられる。Xaa3が置換基を有してもよいアスパラチル基である場合、前記置換基としては、スクシンイミド基、リン酸基などが挙げられる。Xaa3が置換基を有してもよいグルタミル基である場合、前記置換基としては、カルボキシル基などが挙げられる。前記Xaa3のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはグルタミル基である。
【0032】
Xaa4は、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、前記Xaa3における置換基と同様のものが挙げられる。前記Xaa4のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはグルタミニル基である。
【0033】
Xaa5は、置換基を有してもよいセリル基または置換基を有してもよいスレオニル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、前記Xaa1における置換基と同様のものが挙げられる。前記Xaa5のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはセリル基である。
【0034】
式(I)において、nは、1〜10の整数である。前記nは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、10以下、好ましくは8以下であり、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは1である。
【0035】
なお、Xaa1〜Xaa5、R1およびCysは、それぞれ、L−体の官能基であってもよく、D−体の官能基であってもよい。ヒトへの適応性の観点から、Xaa1〜Xaa5、R1およびCysは、好ましくはL−体の官能基である。
【0036】
薬理的に許容される塩としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸塩、有機酸塩などが挙げられる。前記無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられる。また、有機酸塩としては、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩などが挙げられる。塩基付加塩としては、無機塩基塩、有機塩基塩などが挙げられる。無機塩基塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基塩としては、例えば、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩などが挙げられる。
【0037】
式(I)で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、R1が式(III)で表される基であり、nが1である化合物が好ましい。
【0038】
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、例えば、
(1)式(I)におけるCys、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5およびCysそれぞれに対応するアミノ酸と、式(IV):
【0039】
【化7】

【0040】
〔式中、nは式(I)におけるnと同じである〕
で表される化合物とを用い、式(V):
【0041】
【化8】

【0042】
〔式中、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、CysおよびR1は式(I)におけるXaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、CysおよびR1と同じである〕
で表される化合物(配列番号:4)を製造するステップ、および
(2)前記ステップ(1)で得られた式(V)で表される化合物を環化させるステップ
を含む方法により製造することができる。
【0043】
ステップ(1)においては、ペプチドの化学合成法などにより、式(V)で表される化合物を製造することができる。前記化学合成法としては、例えば、固相合成法、段階的伸長法、液相合成法などが挙げられる。前記化学合成法のなかでは、目的とする環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造が容易であり、しかも、その収率および純度が高いことから、固相合成法が好ましい。前記固相合成法としては、例えば、Fmoc合成法、Boc合成法などが挙げられる。かかる固相合成法は、市販のペプチド合成機を用いて行なうことができる。
【0044】
ステップ(1)において、固相合成法を行なう場合、固相として、例えば、ペプチド合成用樹脂などが用いられる。前記ペプチド合成用樹脂としては、例えば、PAM樹脂、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【0045】
固相合成法において、前記アミノ酸は、前記保護基によって分子内のアミノ基を予め保護して用いられる。前記保護基としては、例えば、9−フルオレニル−メトキシカルボニル(Fmoc)基、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基などが挙げられる。なお、前記アミノ酸は、必要に応じて、側鎖の官能基を当該官能基に応じた保護基により保護して用いることができる。なお、本明細書において、アミノ基や側鎖の官能基が保護されているアミノ酸を「保護アミノ酸」という。
【0046】
式(IV)において、nが1である場合、式(IV)で表される化合物として、グリシンを用いることができる。式(IV)において、nが2である場合、式(IV)で表される化合物として、β−アラニンを用いることができる。また、式(IV)において、nが3である場合、式(IV)で表される化合物として、4−アミノ酪酸を用いることができる。式(IV)において、nが4〜10の整数である場合、式(IV)で表される化合物は、ストレッカー反応を利用した化学合成によって得ることができる。固相合成法において、かかる式(IV)で表される化合物は、前記アミノ酸の場合と同様に、アミノ基および必要に応じて側鎖の官能基を当該官能基に応じた保護基により保護して用いる。なお、本明細書において、アミノ基、側鎖の官能基などが保護されている式(IV)で表される化合物を「保護化合物」という。
【0047】
ステップ(1)において、固相合成法を行なう場合、式(I)におけるCys、Xaa5、Xaa4、Xaa3、Xaa2、Xaa1、R1およびCysに対応する保護アミノ酸または保護化合物を、この順で、ペプチド合成用樹脂上で逐次的に縮合させ、つぎに、前記ペプチド合成用樹脂から式(V)で表される化合物に対応する生成物を切り出すと同時に保護基を除去する。
【0048】
前記縮合には、一般的なペプチド合成に用いられる活性化試薬などが用いられる。前記縮合の際の反応温度は、ペプチドの合成において一般的な温度であればよい。通常、前記反応温度は、約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。
【0049】
保護基の除去は、例えば、触媒の存在下での水素気流中での接触還元、酸処理、アルカリ処理などによって行なうことができる。
【0050】
ステップ(1)においては、必要に応じて、得られた生成物の精製を行なってもよい。前記精製は、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによって行なうことができる。
【0051】
ステップ(2)において、式(V)で表される化合物の環化は、かかる化合物の両末端のシステイニル基同士を共有結合させることによって行なうことができる、前記システイニル基同士の共有結合は、例えば、式(V)で表される化合物を、酢酸水溶液などの酸性水溶液中でヨウ素によって酸化させることによって形成させることができる。
【0052】
得られた生成物が式(I)で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩であることは、例えば、プロテインシークエンサー、質量分析装置などによって確認することができる。
【0053】
なお、式(I)で表される化合物が遊離体として得られた場合、式(I)で表される化合物の薬理的に許容できる塩は、ステップ(2)で得られた生成物を、必要に応じて、常法に従って薬理的に許容できる塩に変換することにより得ることができる。
【0054】
また、ステップ(2)で得られた生成物がその分子内に前記保護基を有する場合、常法に従って前記保護基を脱離させることができる。ステップ(2)では、必要に応じて、得られた生成物の単離または精製を行なってもよい。前記生成物の単離または精製は、ステップ(1)における精製の手法、常法などに従って、実施することができる。
【0055】
本発明の皮膚外用剤中における前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の含有量は、前記皮膚外用剤の用途などによって異なるので、一概には決定することができないため、前記皮膚外用剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、本発明の皮膚外用剤中における前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の含有量は、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは0.00000001質量%以上、より好ましくは0.0000001質量%以上、取り扱い時における容易性を確保するとともに、ヒトへの負荷を抑制する観点から、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。なお、液剤である皮膚外用剤の場合、本発明の皮膚外用剤中における前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の含有量は、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは1ng/mL以上、より好ましくは10ng/mL以上、取り扱い時における容易性を確保する観点から、好ましくは10mg/mL以下、より好ましくは100μg/mL以下である。
【0056】
本発明の皮膚外用剤には、本発明の目的が妨げられない範囲で、皮膚化粧料、医薬部外品または医薬品に配合されるその他の成分が配合されていてもよい。前記成分としては、例えば、油性成分、保湿剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤、粘度調整剤、キレート化剤、アルコール、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、アミノ酸、水などが挙げられる。本発明の皮膚外用剤中における前記成分の含有量は、当該成分の種類などによって異なるので、一概には決定することができないので、前記成分の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。
【0057】
本発明の皮膚外用剤としては、特に限定されないが、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などが挙げられる。
【0058】
前記皮膚化粧料としては、特に限定されないが、例えば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ファンデーションなどが挙げられる。洗顔料としては、特に限定されないが、例えば、石けん、クレンジングフォーム、クレンジングジェル、洗顔パウダー、シェービングフォーム、クレンジングミルク、クレンジングオイル、クレンジングマスクなどが挙げられる。化粧水としては、特に限定されないが、例えば、柔軟化粧水、収れん化粧水などが挙げられる。乳液としては、例えば、エモリエントローション、マッサージローション、クレンジングローション、メーキャップローション、ハンドローション、ボディーローションなどが挙げられる。クリームとしては、特に限定されないが、メーキャップクリーム、ベースクリーム、プレメーキャップクリーム、エモリエントクリーム、クレンジングクリーム、ファンデーションクリーム、マッサージクリーム、デオドラントクリームなどが挙げられる。ファンデーションとしては、パウダーファンデーション、ケーキタイプファンデーション、両用ファンデーションなどが挙げられる。
【0059】
医薬部外品としては、例えば、軟膏、クリーム、ローションなどが挙げられる。また、医薬品としては、例えば、軟膏、クリームなどが挙げられる。
【0060】
本発明の皮膚外用剤によれば、当該皮膚外用剤を、正常な皮膚と接触させることにより、エピモルフィンの生理活性を抑制し、当該エピモルフィンや不飽和脂肪酸により引き起こされる不全角化の発生を抑制することができる。したがって、本発明の皮膚外用剤によれば、不全角化を起因とする皮膚の状態を予防することができる。また、本発明の皮膚外用剤によれば、当該皮膚外用剤を、不全角化を伴う皮膚と接触させることにより、エピモルフィンの生理活性を抑制し、当該エピモルフィンや不飽和脂肪酸により引き起こされる不全角化の状態を改善することができる。したがって、本発明の皮膚外用剤によれば、不全角化を起因とする皮膚の状態を改善することができる。
【0061】
本発明の皮膚外用剤を皮膚と接触させる際の前記皮膚外用剤の使用量は、皮膚の種類や範囲などによって異なるので、一概には決定することができないため、皮膚の種類や範囲などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記皮膚外用剤の使用量は、皮膚の面積10cm2あたりの前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の量が、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは1ng以上、より好ましくは10ng以上となり、取り扱い時における容易性を確保する観点から、好ましくは1000μg以下、より好ましくは100μg以下、さらに好ましくは10μg以下となる程度に調整されることが望ましい。
【0062】
本発明の皮膚外用剤と皮膚との接触は、当該皮膚外用剤の剤形などに応じた方法によって行なうことができる。
【0063】
以上のように、本発明の皮膚外用剤によれば、不全角化を抑制することができることから、前記不全角化に起因するヒトの状態の異常を改善することができる。したがって、本発明の皮膚外用剤は、不全角化に起因するヒトの皮膚の状態を予防または改善する用途などに有用である。
【実施例】
【0064】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、Cysはシステイニル基、Serはセリル基、Glnはグルタミニル基、Gluはグルタミル基、Ileはイソロイシル基、Glyはグリシル基を示す。
【0065】
(製造例1)
DMEM/HamF12(シグマ−アルドリッチ社製)に、熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)を濃度が10質量%となるように添加し、熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地(以下、「DH10培地」という)を得た。
【0066】
正常ヒト表皮ケラチノサイト細胞株であるHaCaT細胞を、前記DH10培地中、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で培養した。
【0067】
マウスエピモルフィンをコードするcDNA(GeneBankアクセッション番号:E06629、配列番号:5)におけるエピモルフィンのN末端側に対応する部位に、T7−タグをコードするDNA(配列番号:6)を付加し、T7−タグエピモルフィンをコードするcDNAを調製した。つぎに、前記T7−タグエピモルフィンをコードするcDNAを、レトロウイルス発現ベクターpQCXIN(クローンテック社製)のEcoRI認識部位に挿入し、T7−タグエピモルフィン用発現プラスミドを調製した。
【0068】
得られたT7−タグエピモルフィン用発現プラスミドを、遺伝子導入用試薬(インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミンおよびインビトロジェン社製、商品名:プラス試薬)を用いてパッケージング細胞〔クローンテック社製、PT67細胞(マウス線維芽細胞由来細胞)〕に導入した。つぎに、得られた細胞のうち、500μg/mLのジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)に対して耐性能を示す細胞から培養上清を回収した。回収された培養上清中から、レトロウイルスを得た。得られたレトロウイルスを前記HaCaT細胞に感染させ、500μg/mLジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)の存在下に、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、T7−タグエピモルフィンを産生するケラチノサイト(HaCaT−TE細胞)を単離した。
【0069】
(製造例2)
PT67細胞を、DH10培地中、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で培養した。
【0070】
前記製造例1のT7−タグエピモルフィン用発現プラスミドを、遺伝子導入用試薬(インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミンおよびインビトロジェン社製、商品名:プラス試薬)を用いて、PT67細胞に導入した。つぎに、得られた細胞を、500μg/mLジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製)の存在下に、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、T7−タグエピモルフィンを産生する線維芽細胞(PT67−TE細胞)を単離した。
【0071】
(製造例3)
IL−2シグナルペプチドをコードする核酸(配列番号:7)を、エピモルフィンをコードするcDNA(配列番号:5)におけるエピモルフィンのN末端に対応する部位に付加し、IL−2シグナルペプチド結合エピモルフィンをコードする核酸を得た。得られた核酸をレトロウイルス発現ベクター(クローンテック社製、商品名:pQCXIN)のEcoRI認識部位に挿入して、細胞表面エピモルフィン用発現プラスミドを調製した。
【0072】
得られた細胞表面エピモルフィン用発現プラスミドを、商品名:リポフェクタミン(インビトロジェン社製)およびプラス試薬(インビトロジェン社製)を用いてPT67に導入した。前記製造例1と同様にして得られたレトロウイルスをHaCaT細胞に感染させた。つぎに、得られた細胞を、500μg/mLジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)の存在下に、5体積%二酸化炭素下、37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、細胞外エピモルフィンを産生する細胞(HaCaT−EPM細胞)を単離した。
【0073】
(参考例1)
HaCaT細胞をDH10培地(実験番号:1)、0.01体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:2)または0.025体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:3)中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【0074】
培養後の細胞を単離し、得られた細胞を可溶化試薬〔組成:2体積%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10体積%グリセロール、5体積%2−メルカプトエタノール、0.008体積%ブロモフェノールブルー、0.65Mトリス−塩酸緩衝液(pH約6.8)〕に溶解させることによって細胞抽出液を得た。
【0075】
得られた細胞抽出液と抗エピモルフィン抗体〔R&Dシステムズ社製〕とを用いてウエスタンブロッティングを行ない、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量とオレイン酸との関係を調べた。なお、抗エピモルフィン抗体の代わりに抗β−アクチン抗体を用いたことを除き、前記と同様にして、HaCaT細胞におけるβ―アクチンの発現量とオレイン酸との関係を調べた。
【0076】
参考例1において、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量とオレイン酸との関係を調べた結果を図1に示す。図1中、レーン1は実験番号:1の培地を用いたときの内因性エピモルフィンに対応するバンド、レーン2は実験番号:2の培地を用いたときの内因性エピモルフィンに対応するバンド、レーン3は、実験番号:3の培地を用いたときの内因性エピモルフィンに対応するバンドを示す。
【0077】
図1に示された結果から、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量は、実験番号:1〜3のいずれの培地を用いた場合であっても同程度であることがわかる。なお、HaCaT細胞におけるβ―アクチンの発現量も、実験番号:1〜3のいずれの培地を用いた場合であっても同程度であることがわかる。したがって、これらの結果から、オレイン酸は、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量にはほとんど影響を与えないことがわかる。
【0078】
(参考例2)
製造例1で得られたHaCaT−TE細胞または製造例2で得られたPT67−TE細胞をDH10培地(実験番号:4)、0.01体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:5)または0.025体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:6)中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。また、製造例1で得られたHaCaT−TE細胞または製造例2で得られたPT67−TE細胞に対して、照射量が10mJ/cm2となるように紫外線B(UVB)を照射し、その後、DH10培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した(実験番号7)。
【0079】
得られた培養物を遠心分離〔1000×g、30分間)に供し、培養上清を得た。
【0080】
得られた培養上清から、抗T7タグ抗体〔ノバジェン(Novagen)社製〕と、プロテインGセファロースビーズ〔GEヘルスケア製〕とを用いて、分泌エピモルフィンを回収した。回収された分泌エピモルフィンとHRP標識抗T7タグ抗体〔ノバジェン(Novagen)社製〕とを用いてウエスタンブロッティングを行ない、HaCaT−TE細胞の培養上清およびPT67−TE細胞の培養上清それぞれにおける分泌エピモルフィンの量とオレイン酸との関係を調べた。
【0081】
参考例2において、HaCaT−TE細胞の培養上清およびPT67−TE細胞の培養上清それぞれにおける分泌エピモルフィンの量とオレイン酸との関係を調べた結果を図2に示す。図2中、レーン1は実験番号:4の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンド、レーン2は実験番号:5の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンド、レーン3は、実験番号:6の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンド、レーン4は、実験番号:7の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンドを示す。
【0082】
図2に示された結果から、ケラチノサイトであるHaCaT−TE細胞の培養上清における分泌エピモルフィンの量は、オレイン酸の濃度が最も高い実験番号:6の培地を用いた場合、最も多く、UVBが照射されたHaCaT−TE細胞の培養上清における分泌エピモルフィンの量と同程度であることがわかる。一方、HaCaT−TE細胞の培養上清における分泌エピモルフィンの量は、オレイン酸を含まない実験番号:4の培地を用いた場合、最も低くなることがわかる。これに対して、線維芽細胞であるPT67−TE細胞の培養上清においては、オレイン酸の濃度とは関係なく、分泌エピモルフィンが検出されないことがわかる。これらの結果から、オレイン酸は、ケラチノサイトからのエピモルフィンの分泌を引き起こすことがわかる。したがって、オレイン酸により引き起こされる皮膚の不全角化とエピモルフィンにより引き起こされる皮膚の状態の異常とが関連していることが示唆される。
【0083】
(実施例1)
式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基を示し、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、n=1である化合物を以下のようにして、合成した。
【0084】
(1)ペプチドの合成
出発原料として、Fmoc−Cys(Trt)−Trt(2−Cl)樹脂〔2-クロロトリチルクロライド樹脂1gあたりFmoc−Cys(Trt)の量が0.70mmol〕0.25mmol相当量を、自動ペプチド合成装置〔アプライド・バイオシステム(Applied Biosystem)社製、商品名:430A〕に入れた。
【0085】
まず、自動ペプチド合成装置のプログラムの制御下に、Fmoc−アミノ酸誘導体であるFmoc−Ser(OBu)2mmolをカップリング剤〔組成:0.45M O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(以下、「HBTu」という)と0.45M1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、「HOBt」という)とを含むジメチルホルムアミド〕で活性化させ、前記反応槽に入れた。これにより、前記反応槽内において、樹脂上のアミノ酸残基とFmoc−アミノ酸誘導体とのカップリング反応を行ない、Fmoc基保護ペプチド鎖を生成した。
【0086】
つぎに、樹脂上のFmoc基保護ペプチド鎖中におけるFmoc基を20体積%ピペリジン含有N−メチルピロリドン溶液で除去し(脱保護)、洗浄した。その後、Fmoc−Gln(Trt)、Fmoc−Glu(OBu)、Fmoc−Ile、Fmoc−Ser(OBu)、Fmoc−GlyおよびFmoc−Cys(Trt)をこの順で用いて前記と同様の操作を行なうことにより、配列番号:4に示されるアミノ酸配列にしたがって、対応するFmoc−アミノ酸誘導体を樹脂上のFmoc基保護ペプチド鎖に逐次導入し、配列番号:4に示されるアミノ酸配列を有するFmoc基保護ペプチドを含む樹脂を得た。なお、カップリング反応の成否は、カイザーテストを行なうことにより適宜確認した。
【0087】
得られたFmoc基保護ペプチドを含む樹脂を、トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という)とトリイソプロピルシラン(以下、「TIS」という)と水とエタンジチオール(以下、「DT」という)の混合液〔TFA/TIS/水/DT(体積比)が92.5/2.5/2.5/2.5〕中、室温で2時間インキュベーションして脱保護および樹脂からのペプチド鎖の切り出しを行なった。インキュベーション後の混合液から2-クロロトリチルクロライド樹脂をろ別し、ろ液を得た。得られたろ液を減圧下に濃縮して当該ろ液からTFAを留去した。得られた残渣に、冷却ジエチルエーテルを添加して、ペプチドの粗生成物の沈殿物約700mgを回収した。
【0088】
得られた粗生成物約700mgを、逆相カラム〔ゾルバックス(Zorbax)社製、オクタデシルシリカカラム、カラムの内径:30mm、カラムの長さ250mm〕を備えた高速液体クロマトグラフィー分取装置〔(株)島津製作所製、商品名:モデルLC8A〕に供した。そして、0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1体積%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液とを用い、溶離液中のアセトニトリルの濃度勾配が1〜60体積%となるように溶離液中のアセトニトリルの濃度を調整しながら、流速:1.0mL/分で25分間クロマトグラフィーを行なった。目的のペプチドを含む画分を回収し、前記画分からアセトニトリルを留去した。つぎに、残渣を凍結乾燥させ、目的のペプチドのトリフルオロ酢酸塩110mgを得た。その後、目的のペプチドのトリフルオロ酢酸塩を脱塩し、目的のペプチド(直鎖状ペプチド)を得た。なお、カイザーテストの結果から、前記ペプチドは、配列番号:4に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが確認された。
【0089】
(2)ペプチドの環化
前記(1)で得られたペプチド110mg(0.135mmol)を50体積%酢酸水溶液130mLに添加した。つぎに、得られた混合物に、0.5Mヨウ素水溶液210μL(0.8当量)を添加し、撹拌しながら室温で3時間混合した。これにより、ペプチド中の2つのシステイニル基のチオール基を酸化して、ジスルフィド結合を形成させた。その後、得られた混合物にアスコルビン酸70mgを添加した。
【0090】
つぎに、得られた混合物を、逆相カラム〔ズルバックス(Zorbax)社製、オクタデシルシリカカラム、カラムの内径:30mm、カラムの長さ250mm〕を備えた逆相高速クロマトグラフィー分取装置〔(株)島津製作所製、商品名:モデルLC8A〕に供した。そして、0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1体積%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液とを用い、溶離液中のアセトニトリルの濃度勾配が1〜60体積%となるように溶離液中のアセトニトリルの濃度を調整しながら、流速:1.0mL/分で25分間クロマトグラフィーを行なった。これにより、生成物20mgを得た。
【0091】
(3)環状ペプチド化合物の確認
前記(1)で得られたペプチドおよび前記(2)で得られた生成物(酸化後のペプチド)それぞれを質量分析装置〔(株)島津製作所製、商品名:LC−MS−2010〕に供し、前記(1)で得られたペプチドおよび前記(2)で得られた酸化後のペプチドそれぞれのマススペクトルを調べた。実施例1において、ペプチドのマススペクトルを図3に、実施例1において、酸化後のペプチドのマススペクトルを図4に示す。
【0092】
図3に示された結果から、前記(1)で得られたペプチドのマススペクトルでは、配列番号:4に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの理論値付近の826.2m/zにピークが見られることがわかる。この結果から、前記(1)で得られたペプチドが配列番号:4に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが裏付けられた。
【0093】
また、図3および4に示された結果から、前記(1)で得られたペプチドのマススペクトルでは、826.2m/zにピークが見られるのに対して(図1参照)、前記(2)で得られた酸化後のペプチドのマススペクトルでは、水素原子2個分少ない824.2m/zにピークが見られることがわかる。これらの結果から、前記(2)で得られた酸化後のペプチドは、2つのシステイニル基間でジスルフィド結合が形成されることによって、前記(1)で得られたペプチドが環化されていることが裏付けられた。したがって、前記(2)で得られたペプチドは、環状ペプチド化合物であることがわかる。なお、前記環状ペプチド化合物の純度を高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という)で調べたところ、98.2%であることが確認された。
【0094】
(4)皮膚外用剤の調製
前記(2)で得られた環状ペプチド化合物をその濃度が1mg/mLとなるように精製水に添加し、皮膚外用剤を得た。
【0095】
(実施例2)
実施例1において、n=1である化合物の代わりにn=5である化合物を用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、皮膚外用剤を得た。
【0096】
(実施例3)
実施例1において、n=1である化合物の代わりにn=8である化合物を用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、皮膚外用剤を得た。
【0097】
(比較例1)
(1)直鎖状ペプチドの調製
実施例(1)において、Fmoc−Cys(Trt)−Trt(2−Cl)樹脂の代わりにFmoc−Asp(OBu)−Alko−樹脂〔樹脂1gあたりFmoc−Asp(OBu)の量が0.70mmol〕0.25mmol相当量を用いたことと、実施例、Fmoc−アミノ酸誘導体として、Fmoc−Ser(OBu)、Fmoc−Gln(Trt)、Fmoc−Glu(OBu)、Fmoc−Ile、Fmoc−Ser(OBu)、Fmoc−GlyおよびFmoc−Cys(Trt)をこの順に用いる代わりに、Fmoc−Gln(Trt)、Fmoc−Glu(OBu)、Fmoc−IleおよびFmoc−Ser(OBu)をこの順に用いたこととを除き、実施例1(1)と同様に操作を行ない、配列番号:3に示されるアミノ酸配列からなる直鎖状ペプチドを得た。
【0098】
(2)皮膚外用剤の調製
前記(1)で得られた直鎖状ペプチドをその濃度が1mg/mLとなるように精製水に添加し、皮膚外用剤を得た。
【0099】
(試験例1)
実施例1で得られた皮膚外用剤100μLを実施例1(2)で得られた環状ペプチド化合物の濃度が0.001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た。得られた試料中において、製造例3で得られたHaCaT−EPM細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃でインキュベーションし、経時的に細胞を採取した。採取された細胞に、細胞計数用キット〔(株)同仁化学研究所製、商品名:Cell Counting Kit〕に添付の試薬A〔(株)同仁化学研究所製、商品名:WST−1〕と溶液Bとの混合溶液〔試薬Aと溶液Bとの体積比(試薬A/溶液B)=10/1〕110μLを添加し、3時間インキュベーションした。得られた混合物について、分光光度計〔ワッラック(WALLAC)社製、商品名:ARVOtmSX 1420 MULTILABEL COUNTER〕を用いて450nmにおける吸光度を測定し、HaCaT−EPM細胞の生育への影響を調べた。
【0100】
実施例1で得られた皮膚外用剤の代わりに実施例2で得られた皮膚外用剤、実施例3で得られた皮膚外用剤または比較例1で得られた皮膚外用剤を用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、HaCaT−EPM細胞の生育への影響を調べた。実施例1で得られた皮膚外用剤を含む試料、実施例2で得られた皮膚外用剤を含む試料、実施例3で得られた皮膚外用剤を含む試料および比較例1で得られた皮膚外用剤を含む試料それぞれによるHaCaT−EPM細胞の生育への影響を調べた結果を表1に示す。なお、表1における評価基準は以下のとおりである。
【0101】
++:対照を用いたときと比べ、有意にHaCaT−EPM細胞の生育の回復が検出される(危険率0.01以下)。
+ :対照を用いたときと比べ、有意にHaCaT−EPM細胞の生育の回復が検出される(危険率0.05以下)。
− :HaCaT−EPM細胞の生育の回復が検出されない。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示された結果から、実施例1〜3で得られた皮膚外用剤を含む試料中でインキュベーションしたHaCaT−EPM細胞は、生育状態が良好であることがわかる。なかでも、実施例1で得られた皮膚外用剤を含む試料中でインキュベーションしたHaCaT−EPM細胞は、生育状態が最も良好であることがわかる。これに対し、比較例1で得られた皮膚外用剤を含む試料中でインキュベーションしたHaCaT−EPM細胞は、生育状態が不良であることがわかる。
【0104】
HaCaT細胞において、エピモルフィンを発現させたHaCaT−EPM細胞は、HaCaT細胞と比べて生育状態が不良になる。しかしながら、実施例1〜3で得られた皮膚外用剤を含む試料は、エピモルフィンの生理活性を抑制して細胞の生育状態を改善していることが示唆される。
【0105】
(試験例2)
(1)試料の調製
以下の実験において、DH10培地を実験番号:8の試料として用いた。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液を、オレイン酸の濃度が0.05体積%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:9)。さらに、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と比較例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.05体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:10)。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と実施例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.05体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:11)。
【0106】
(2)細胞クラスターの形成および内腔形成率の算出
HaCaT細胞を、DH10培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で培養した。
【0107】
つぎに、得られたHaCaT細胞を、1000U/mL DNアーゼI(シグマ−アルドリッチ社製)含有DH10培地350μLに懸濁した。得られた懸濁物を、24−ウェルディッシュ(コーニング社製、超低接着表面)中、100min-1で回転させながら、5体積%二酸化炭素雰囲気下、37℃で24時間旋回培養して、平滑で丸い細胞凝集物を形成させた。
【0108】
形成された細胞凝集物を、0.5質量%タイプIAコラーゲン溶液〔(株)高研製〕で調製された高密度のコラーゲンゲル中に包埋した。
【0109】
つぎに、包埋後の細胞凝集物を、実験番号8:の試料、実験番号:9の試料、実験番号:10の試料または実験番号:11の試料中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で4日間インキュベーションして、細胞クラスターを形成させた。得られた細胞クラスターの形態を位相差顕微鏡下で観察した。
【0110】
細胞クラスター内において、最外層の細胞は、コラーゲンと接しているために未分化状態を保持している。しかしながら、前記最外層に存在する未分化状態の細胞の内側に位置する細胞は、通常、速やかに分化を開始し、アノイキスに至る。そのため、前記細胞クラスターでは、正常状態では培養開始から3〜4日間経過時において、容易に判別できる内腔が形成される。そこで、ランダムに選択された100個の細胞クラスターを観察し、全100個の細胞クラスターにおける明らかな内腔形成が見られた細胞クラスターの割合を調べることにより、内腔形成率を算出した。
【0111】
試験例2において、実験番号:11の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図5(A)に、実験番号:10の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図5(B)に示す。図中、スケールバーは100μmの長さを示す。
【0112】
また、試験例2において、試料の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を図6に示す。図中、レーン1は実験番号:8の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン2は実験番号:9の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン3は実験番号:10の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン4は実験番号:11の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率を示す。
【0113】
図5(A)、図5(B)および図6に示された結果から、実験番号:11の試料を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が高いのに対して、実験番号:10の試料を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が低いことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:11の試料は、オレイン酸により引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制しているが、比較例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:10の試料は、オレイン酸により引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制していないことがわかる。前記細胞クラスターにおける内腔形成は、皮膚における分化や状態を反映していることから、オレイン酸により引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常は、オレイン酸により引き起こされる不全角化を再現していると考えられる。したがって、実施例1で得られた皮膚外用剤は、不全角化を抑制することができることが示唆される。
【0114】
(試験例3)
(1)試料の調製
以下の実験において、DH10培地を実験番号:12の試料として用いた。精製水1μLをDH10培地1mLに添加し、培地を得た(実験番号:13)。さらに、比較例1で得られた皮膚外用剤を直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:14)。また、実施例1で得られた皮膚外用剤を環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:15)。
【0115】
(2)細胞クラスターの形成および内腔形成率の算出
試験例2(1)において、HaCaT細胞の代わりに製造例3で得られたHaCaT−EPM細胞を用いたことを除き、試験例2と同様に操作を行ない、平滑で丸い細胞凝集物を形成させた。
【0116】
形成された細胞凝集物を、0.5質量%タイプIAコラーゲン溶液〔(株)高研製〕で調製された高密度のコラーゲンゲル中に包埋した。
【0117】
つぎに、包埋後の細胞凝集物を、実験番号12:の試料、実験番号:13の試料、実験番号:14の試料または実験番号:15の試料中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で4日間インキュベーションして、細胞クラスターを形成させた。また、試験例2と同様に操作を行ない、内腔形成率を算出した。
【0118】
試験例3において、実験番号:15の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図7(A)に、実験番号:14の試料を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図7(B)に示す。図中、スケールバーは100μmの長さを示す。
【0119】
また、試験例3において、試料の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を図8に示す。図中、レーン1は実験番号:12の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン2は実験番号:13の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン3は実験番号:14の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン4は実験番号:15の試料を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率を示す。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、*は、P<0.05である。
【0120】
図7(A)、図7(B)および図8に示された結果から、実験番号:15の試料を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が高いのに対して、実験番号:14の試料を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が低いことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:15の試料は、エピモルフィンにより引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制しているが、比較例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:14の試料は、エピモルフィンにより引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制していないことがわかる。前記細胞クラスターにおける内腔形成は、皮膚における分化や状態を反映していることから、エピモルフィンを発現する細胞からなる細胞クラスターにおける内腔形成の異常は、エピモルフィンにより引き起こされる不全角化を再現していると考えられる。したがって、実施例1で得られた皮膚外用剤は、不全角化を抑制することができることが示唆される。
【0121】
(試験例4)
(1)試料の調製
以下の実験において、DH10培地を実験番号:16の試料として用いた。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液をオレイン酸の濃度が0.02体積%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:17)。さらに、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と比較例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:18)。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と実施例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:19)。1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と比較例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:20)。1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と実施例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:21)。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と比較例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:22)。1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と実施例1で得られた皮膚外用剤とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:23)。
【0122】
(2)コーニファイドエンベロープ形成率の算出
HaCaT細胞を、実験番号:16〜23のいずれかの培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【0123】
つぎに、得られたHaCaT細胞を、リン酸緩衝生理的食塩水で洗浄し、ついで、トリプシン−EDTA溶液〔シグマ(SIGMA)社製〕500μL中において、37℃で3分間インキュベーションした。
【0124】
その後、得られたHaCaT細胞を1.0×10細胞/mLとなるように無血清DH培地(DMEM/HamF12、シグマ−アルドリッチ社製)に懸濁した。得られた懸濁液に、カルシウム流入を引き起こすカルシウムイオノフォアA23187(シグマ−アルドリッチ社製)を濃度が20ng/mLとなるように添加し、得られた混合物中に含まれるHaCaT細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で5時間培養した。
【0125】
得られた細胞をリン酸緩衝化生理的食塩水で洗浄した。洗浄後の細胞を可溶化液〔組成:2質量%SDS、20mMジチオスレイトール、残部精製水〕中で10分間インキュベーションした。その後、カルシウムイオノフォアA23187によるカルシウム流入後の不溶性コーニファイドエンベロープに起因する残存不溶化細胞の数を光学顕微鏡下で計数し、全細胞の数と残存不溶化細胞の数とを用い、コーニファイドエンベロープ形成率を算出した。
【0126】
試験例4において、試料の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を図9に示す。図中、1は実験番号:16の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、2は実験番号:17の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、3は実験番号:18の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、4は実験番号:19の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、5は実験番号:20の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、6は実験番号:21の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、7は実験番号:22の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、8は実験番号:23の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率を示す。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、**はP<0.01、***はP<0.001である。
【0127】
図9に示された結果から、実施例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:19の試料(図中、4)、実験番号:21の試料(図中、6)および実験番号:23の試料(図中、8)それぞれを用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率は、比較例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:18の試料(図中、3)、実験番号:20の試料(図中、5)および実験番号:22の試料(図中、7)それぞれを用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率と比べて高くなっていることがわかる。コーニファイドエンベロープの形成は、皮膚における分化や状態を反映していることから、オレイン酸存在下におけるコーニファイドエンベロープの形成率は、皮膚の不全角化の場合のコーニファイドエンベロープの形成率と相関していると考えられる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られた皮膚外用剤は、不全角化を抑制することができることが示唆される。
【0128】
(試験例5)
(1)試料の調製
以下の実験において、DH10培地を実験番号:24または25の試料として用いた。比較例1で得られた皮膚外用剤を、直鎖状ペプチドの濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:26)。また、実施例1で得られた皮膚外用剤を、環状ペプチド化合物の濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:27)。比較例1で得られた皮膚外用剤を、直鎖状ペプチドの濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:28)。実施例1で得られた皮膚外用剤を、環状ペプチド化合物の濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:29)。また、比較例1で得られた皮膚外用剤を、直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:30)。実施例1で得られた皮膚外用剤を、環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、試料を得た(実験番号:31)。
【0129】
(2)コーニファイドエンベロープ形成率の算出
HaCaT細胞を用いた場合、HaCaT細胞を実験番号:24の培地中で5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【0130】
一方、HaCaT-EPM細胞を用いた場合、HaCaT-EPM細胞を実験番号:25〜31のいずれかの培地中で5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【0131】
つぎに、得られたHaCaT細胞またはHaCaT−EPM細胞を、リン酸緩衝生理的食塩水で洗浄し、ついで、トリプシン−EDTA溶液500μL中において、37℃で3分間インキュベーションした。
【0132】
その後、得られたHaCaT細胞またはHaCaT−EPM細胞を1.0×10細胞/mLとなるように無血清DH培地に懸濁した。得られた懸濁液に、カルシウム流入を引き起こすカルシウムイオノフォアA23187を濃度が20ng/mLとなるように添加し、得られた混合物中に含まれるHaCaT細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で5時間培養した。
【0133】
試験例4と同様の操作を行なって、コーニファイドエンベロープ形成率を算出した。
【0134】
試験例5において、試料の種類または細胞の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を図10に示す。図中、1は実験番号:24の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、2は実験番号:25の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、3は実験番号:26の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、4は実験番号:27の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、5は実験番号:28の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、6は実験番号:29の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、7は実験番号:30の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率、8は実験番号:31の試料を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率を示す。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、*はP<0.05、**はP<0.01である。
【0135】
図10に示された結果から、実施例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:27の試料(図中、4)、実験番号:29の試料(図中、6)および実験番号:31の試料(図中、8)それぞれを用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率は、比較例1で得られた皮膚外用剤を含む実験番号:26の試料(図中、3)、実験番号:28の試料、図中、5)および実験番号:30の試料(図中、7)それぞれを用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率と比べて高くなっていることがわかる。コーニファイドエンベロープの形成は、皮膚における分化や状態を反映していることから、エピモルフィンを発現させたときにおけるコーニファイドエンベロープの形成率は、皮膚の不全角化の場合のコーニファイドエンベロープの形成率と相関していると考えられる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られた皮膚外用剤は、不全角化を抑制することができることが示唆される。
【0136】
(試験例6)
以下の実験において、DH10培地を実験番号:32の試料として用いた。精製水1μLをDH10培地1mLに添加し、試料を得た(実験番号:33)。また、実施例1(1)で得られた環状ペプチド化合物をその濃度が0.001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:34)。さらに、比較例1(1)で得られた直鎖状ペプチドをその濃度が0.001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:35)。
【0137】
ヒト胎児肺線維芽細胞のMRC−5細胞を、10質量%熱不活性化FCSを含有するα−MEM(ギブコ・ラボラトリー社製)10mL中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で72時間培養した。
【0138】
24ウェル培養プレートのウェル内に支持体〔BDバイオサイエンス社製、商品名:セルカルチャーインサート〕を設置した。前記支持体中において、前記MRC−5細胞とコラーゲンゲル混合溶液(コラーゲンI型、新田ゼラチン株式会社製)とを混合した。得られた混合物をゲル化させて、細胞包埋ゲル(1.7×105/mL)を得た。得られた細胞包埋ゲルの上表面に、1mg/mLフィブロネクチン水溶液(BDバイオサイエンス社製)0.05mlを添加し、前記細胞包埋ゲルを室温で1時間放置した。つぎに、前記細胞包埋ゲル中のMRC−5細胞を、DH10培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で一晩インキュベーションした。
【0139】
その後、0.4μg/mLヒドロコルチゾン(シグマ−アルドリッチ社製)と100μg/mLゲンタマイシン(ギブコ・ラボラトリー社製)とインスリン(5μg/ml)と50μg/mLアスコルビン酸(シグマ−アルドリッチ社製)とを含有するDH10培地0.2mLに懸濁したHaCaT細胞(7.0×10細胞)を前記細胞包埋ゲル上に播種した。
【0140】
つぎに、前記HaCaT細胞が播種された細胞包埋ゲルを、24ウェル培養プレートのウェル中のDH10培地に浸漬させた。その後、細胞包埋ゲル中に含まれる細胞を、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で5日間インキュベーションし、細胞構築物を得た。つぎに、得られた細胞構築物中のHaCaT細胞の表面を、空気とDH10培地との接触面まで持ち上げて配置し、前記細胞構築物を、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で15日間培養し、HaCaT細胞を含む分化細胞構築物を得た。
【0141】
その後、分化細胞構築物の表面に、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液5μLと、実験番号:32〜35のいずれかの試料5μLとを塗布し、分化細胞構築物を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃でさらに1日間培養した。
【0142】
得られた細胞構造体から凍結切片を作製した。かかる凍結切片をヘマトキシリン−エオシン染色により、細胞核を青紫色に染色するとともに、細胞質細胞質物質の大部分を赤色に染色した。染色後の凍結切片を用い、細胞構造体の組織形態を位相差顕微鏡下で観察した。
【0143】
試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液を塗布せずに実験番号:32の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図11(A)に、試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:33の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図11(B)に、試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:34の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図11(C)に、試験例6において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:35の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図11(D)に示す。図中、スケールバーは、50μmの長さを示す。
【0144】
図11(A)および(C)に示された結果から、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および環状ペプチド化合物を含む実験番号:34の試料を塗布したときの細胞構造体では、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液を塗布せずに実験番号:32の試料を塗布したときの細胞構造体と同様に、細胞核が見られないことがわかる。したがって、環状ペプチド化合物は、オレイン酸によって引き起こされる不全角化を抑制することができることがわかる。
【0145】
一方、図11(B)および(D)に示された結果から、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:33の試料を塗布したときの細胞構造体ならびに0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および直鎖状ペプチドを含む実験番号:35の試料を塗布したときの細胞構造体においては、細胞核が見られることがわかる。したがって、直鎖状ペプチドは、オレイン酸によって引き起こされる不全角化を抑制することができないことがわかる。
【0146】
(試験例7)
試験例6において、実施例1(1)で得られた環状ペプチド化合物の代わりに、式(I)で表される環状ペプチド化合物のうち、実施例1(1)で得られた環状ペプチド化合物以外の化合物を用いたことを除き、試験例6と同様の操作を行ない、細胞構造体の組織形態を位相差顕微鏡下で観察する。
【0147】
その結果、実施例1(1)で得られた環状ペプチド化合物を用いたときと同様の結果が得られる。
【0148】
以上の結果から、式(I)で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を含有する皮膚外用剤によれば、エピモルフィンまたはオレイン酸によってヒトの皮膚に引き起こされる不全角化を抑制することができることがわかる。したがって、前記皮膚外用剤は、不全角化に起因するヒトの皮膚の状態の異常を改善する用途などに有用であることが示唆される。
【0149】
(処方例)
以下、本発明に係る皮膚外用剤の処方例を示す。
(処方例1 エモリエントローション)
実施例1(1)で得られた環状ペプチド化合物 0.0001質量%
エタノール 5.0質量%
ポリイキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 1.0質量%
グリセリン 15.0質量%
1,3−ブチレングリコール 1.5質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
メチルパラベン 0.3質量%
香料 適量
紫外線吸収剤 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0150】
(処方例2 エモリエント乳液)
実施例1(1)で得られた環状ペプチド化合物 0.0003質量%
流動パラフィン 15.0質量%
ミツロウ 2.0質量%
ラノリン 1.5質量%
セスキオレイン酸ソルビタン 2.5質量%
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0質量%
1,2−オクタンジオール 0.05質量%
グリセリン 10.0質量%
1,3−ブチレングリコール 3.0質量%
キサンタンガム 0.5質量%
香料 適量
紫外線吸収剤 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0151】
(処方例3 エモリエントクリーム)
実施例1(1)で得られた環状ペプチド化合物 0.0005質量%
ステアリルアルコール 5.0質量%
ステアリン酸 2.0質量%
ワセリン 5.0質量%
スクワラン 5.0質量%
トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0質量%
ホホバ油 1.0質量%
オリーブ油 1.0質量%
1,3−ブチレングリコール 3.0質量%
グリセリン 10.0質量%
プロピレングリコールモノステアリン酸エステル 2.5質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0質量%
トリエタノールアミン 1.0質量%
メチルパラベン 0.15質量%
プロピルパラベン 0.1質量%
香料 適量
酸化防止剤 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【配列表フリーテキスト】
【0152】
配列番号:1は、環状ペプチド化合物の配列である。1番目のシステイニル基と8番目のシステイニル基との間には、ジスルフィド結合が形成されている。2番目のXaaは、−CO−(CH2n−NH−(式中、nは1〜10の整数である)である。3番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。4番目のXaaは、置換基を有してもよいIle、置換基を有してもよいValまたは置換基を有してもよいLeuである。5番目のXaaは置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。6番目のXaaは、置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。7番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。
【0153】
配列番号:2は、直鎖状ペプチドまたは環状ペプチド化合物の部分配列である。
配列番号:3は、直鎖状ペプチドの配列である。
【0154】
配列番号:4は、環状ペプチド化合物の部分配列である。2番目のXaaは、−CO−(CH2n−NH−(式中、nは1〜10の整数である)である。3番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。4番目のXaaは、置換基を有してもよいIle、置換基を有してもよいValまたは置換基を有してもよいLeuである。5番目のXaaは置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。6番目のXaaは、置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。7番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。
【0155】
配列番号:6は、T7タグ配列である。
配列番号:7は、IL−2シグナルペプチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


〔式中、Xaa1およびXaa5はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基、Xaa2は置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基、Xaa3およびXaa4はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基、Cysはシステイニル基、R1は式(II):
【化2】


(式中、nは1〜10の整数を示す)で表される基または式(III):
【化3】


(式中、nは1〜10の整数を示す)で表される基を示す〕で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を含有してなる皮膚外用剤。
【請求項2】
式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、R1が式(III)で表される基であり、nが1である請求項1に記載の皮膚外用剤。

【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−17290(P2012−17290A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155588(P2010−155588)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】