説明

皮膚疾患の処置にて使用するための免疫抑制剤を含んでなる医薬組成物

特に、乾皮症またはアトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎などの皮膚疾患または粘膜疾患の処置に有用な、33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンなどのマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびジメチコン、グリセロールまたはイソステアリン酸イソステアリルなどのエモリエントの相乗的組合せ、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に、皮膚疾患の処置における使用のための医薬組成物に関する。本発明は、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびエモリエントを含む医薬組成物に関する。
【0002】
マクロライド系T細胞免疫調節剤および免疫抑制剤は、驚くべきことに、エモリエントと組合せてかまたは混合して使用したとき相乗的に作用し、結果として、有益な効果、とりわけ抗皮膚炎活性が、個別に投与される有効用量よりはるかに少ない投与量での共投与で見られるような、薬理学的活性の増強を生じることが明らかとなった。
【0003】
故に、本発明は、エモリエントと混合したかまたは組合せたマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を含む新規の医薬組成物に関し、それを以下に簡単に「本発明の組成物」と称する。
【0004】
マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は、本明細書中にて、ラクトンまたはラクタム部分を含む大環状化合物構造を有するT細胞免疫調節剤またはT細胞免疫抑制剤であると解される。それは、好ましくは、少なくともいくらかのT細胞免疫調節活性または免疫抑制活性を有し、抗炎症活性などのさらなる薬学的特性を付随的に、または優位に有していても良い。
【0005】
エモリエントとは、本明細書中にて、皮膚を軟化もしくは鎮静化するか、または炎症を起こした内側面を鎮静化する薬剤であると解される。
【0006】
本発明は、例えば、ヒトの皮膚などと前記組成物自体の適合性を改善するために、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を含む医薬組成物中、微量の賦形剤としてエモリエントを含むもののみを考慮するものではないことは認められるべきである。より包括的には、その権利内に活性成分としてエモリエントを含むことが考慮され、ここで「活性」とは、薬理学的活性のみならず、皮膚の外観または脆弱性などの美容的局面における活性にも関係すると解されるべきである。
【0007】
故に、本発明の組成物に用いられるかまたは含まれるエモリエントの量は、通常医薬組成物に用いられる量よりもかなり多いか、またはマクロライドとは個別に投与される。それは、例えば、組成物中マクロライドの量の約10%から約5000%w/w、好ましくは約20%から約1000%w/w、より好ましくは約100%から約500%w/wである。
【0008】
故に、本発明の組成物は、少なくとも1種の薬学的に活性な成分を含む、「ヘルスケア」または「パーソナルケア」製品、または、いわゆる「薬用化粧品」とも見なされ得る。
【0009】
本発明の組成物は、免疫調節成分または免疫抑制成分について、例えば経口もしくは静脈内などの全身的使用に、または両方の成分について局所的使用に適し得る;好ましくは、それらは局所的使用に適する。それらは、そこに包含された特定の活性物質の既知の適応症に有用である。それらは特に、皮膚疾患または粘膜疾患、例えば、乾皮症またはアトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎などの炎症要因を有するかもしくは炎症性合併症を伴う皮膚疾患または粘膜疾患における使用に用いられる。
【0010】
組合せの結果生じる組成物とは、例えば薬用エモリエントであって、例えば、湿布またはパップ(cataplasm)として適当に存在する。
【0011】
適当なマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤とは、例えばFKBP12結合カルシニューリン阻害剤またはマイトジェン活性化キナーゼ調節剤もしくは阻害剤であり、具体的にはアスコマイシンまたはラパマイシンである。好ましくは、アスコマイシンである。前記マクロライドは、好ましくは、少なくともいくらかのカルシニューリンまたはマイトジェン活性化キナーゼの調節活性または阻害活性を有しており、抗炎症活性などのさらなる薬学的特性を付随的にまたは優位に有していても良い。例えばアスコマイシンなどの、同じ構造クラスの他のメンバーと比較してより長期の作用活性を有する化合物、例えば、ゆっくりと不活性な産物に代謝分解される化合物が好ましい。
【0012】
アスコマイシンまたはラパマイシンとは、アスコマイシンまたはラパマイシン自体、またはその誘導体と解される。アスコマイシンまたはラパマイシン誘導体は、親化合物のアンタゴニスト、アゴニストまたは類似体であると解され、それらは基本構造を保持し、そして少なくとも1種の生物学的特性、例えば親化合物の免疫学的特性を調節する。
【0013】
「抗炎症性アスコマイシン誘導体」とは、本明細書中にて、例えばアレルギー性接触性皮膚炎の動物モデルにおいて明確に抗炎症活性を示すが、全身性免疫応答の抑制においては低い能力のみを有し、すなわち、アレルギー性接触性皮膚炎のマウスモデルでの局所投与にて約0.04%(w/v)濃度以下の最小有効量(MED)を有するが、同種腎臓移植のラットモデルでの経口投与におけるその効果は、タクロリムス(MED 14mg/kg)よりも少なくとも10倍低いものである、アスコマイシン誘導体と定義される(Meingassner, J.G.ら、 Br. J. Dermatol. 137 [1997] 568−579; Stuetz, A. Seminars in Cutaneous Medicine and Surgery 20 [2001] 233−241)。かかる化合物は、好ましくは親油性である。
【0014】
適当なアスコマイシンは、例えばEP 184162、EP 315978、EP 323042、EP 423714、EP 427680、EP 465426、EP 474126、WO 91/13889、WO 91/19495、EP 484936、EP 523088、EP 532089、EP 569337、EP 626385、WO 93/5059およびWO 97/8182に記載されており;
特に以下のものである:
−アスコマイシン;
−タクロリムス(FK506;プログラフ(Prograf)(登録商標));
−イミダゾリルメトキシアスコマイシン(WO97/8182の実施例1および式Iの化合物);
−32−O−(1−ヒドロキシエチルインドール−5−イル)アスコマイシン(L−732531)(Transplantation 65 [1998] 10−18、18−26、11頁、図1);および
−(32−デスオキシ,32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281)(J.Invest.Dermatol. 12 [1999] 729−738、730頁、図1);
好ましくは:
−{1R,5Z,9S,12S−[1E−(1R,3R,4R)],13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−5,18−ジエン−2,3,10,16−テトラオン(EP626385の実施例8)(以下に「5,6−デヒドロアスコマイシン」として示す);
−{1E−(1R,3R,4R)]1R,4S,5R,6S,9R,10E,13S,15S,16R,17S,19S,20S}−9−エチル−6,16,20−トリヒドロキシ−4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−15,17−ジメトキシ−5,11,13,19−テトラメチル−3−オキサ−22−アザトリシクロ[18.6.1.0(1,22)]ヘプタコス−10−エン−2,8,21,27−テトラオン(EP569337の実施例6dおよび7l)(以下に「ASD 732」として示す);
【0015】
そして、とりわけ、
−ピメクロリムス(INN推薦)(ASM981;エリデル(Elidel)(商標))、すなわち
式I
【化1】

で示される、{[1E−(1R,3R,4S)]1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−12−[2−(4−クロロ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28,ジオキサ−4−アザトレシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(EP427680の実施例66a)(以下に「33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシン」として示す)
である。
【0016】
適当な抗炎症性アスコマイシン誘導体は、例えば:
(32−デスオキシ−32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281);5,6−デヒドロアスコマイシン;ASD 732;およびピメクロリムスである。
適当なラパマイシンは、例えば米国特許番号第3’929’992号、WO94/9010および米国特許番号第5’258’389号記載のもの、好ましくはシロリムス(ラパマイシン;ラパミュン(Rapamune)(登録商標))およびエベロリムス(RAD001;セルチカン(Certican)(登録商標))である。
【0017】
特に好ましいマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は、ピメクロリムスである;それは、別段の記載がない限り、遊離型である。
【0018】
適当なエモリエントとは、例えば、一相の鉱油(ペトロラタム)、または油中水もしくは水中油エマルジョン、またはローションのどちらかの二相系の鉱油である;それは、例えば、ジメチコンなどのシリコン;グリセリン;または、ワセリンである。前記系は、低粘性または高粘性であり得る。それは、例えば、ジメチコンなどのシリコン、またはパラフィンもしくはペトロラタム(ワセリン)と一緒に、皮膚上の疎水的保護膜を形成し得る。保湿剤として、必要に応じて、例えばグリセロールが添加され得るか;または、半密封性特性を有するエモリエント、例えば脂肪酸または脂肪酸エステル、例えばイソステアリン酸イソステアリルなどが用いられ得る。好ましい皮膚軟化剤は、ジメチコン、グリセロールおよびイソステアリン酸イソステアリルである。
【0019】
故に、エモリエントとは、例えば、脂肪族アルコール、炭化水素、トリグリセリド、ワックス、エステル、シリコン油およびラノリン含有製品であり得る。脂肪族アルコールとは、例えばセチルアルコール、オクチルドデカノール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールである。炭化水素には、鉱油、ペトラタム、パラフィン、スクワレン、ポリブテン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、セリシン(cerisin)およびポリエチレンである。トリグリセリドとは、例えばヒマシ油、カプリル/カプリン・トリグリセリド、硬化植物油、甘扁桃油、小麦胚芽油、ゴマ油、硬化綿実油、ココナッツ油、小麦胚芽グリセリド、アボガド油、コーン油、トリラウリン、硬化ヒマシ油、シアバター、ココアバター、大豆油、ミンク油、ヒマワリ油、サフラワー油、マカダミアナッツ油、オリーブ油、杏仁油、ヘーゼルナッツ油およびブラージュ油である。ワックスには、例えば、カルナウバワックス、蜜ろう(beeswax)、カンデリラワックス・パラフィン、木ろう(Japan wax)、微結晶ワックス、ホホバ油、セチルエステルワックス、および合成ホホバ油が含まれる。エステルには、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、リノール酸イソプロピル、C12−15安息香酸アルコール、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、乳酸ミリスチル、酢酸セチル、ジカプリル酸/カプリル酸プロピレングリコール、オレイン酸デシル、ヘプタン酸ステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチルおよびイソステアリン酸イソプロピルが含まれる。シリコン油は、例えば、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)およびシクロメチコンである。ラノリン含有製品は、例えばラノリン、ラノリン油、ラノリン脂肪酸イソプロピル、アセチル化ラノリンアルコール、アセチル化ラノリン、水酸化ラノリン、水素化ラノリンおよびラノリンワックスである。
【0020】
パーソナルケア製品とは、例えば、シャンプー、ヘアコンディショナー、シャンプー/コンディショナーの組合せ、シャワージェル、石けん、ヘアスタイリング製品、染毛剤、デオドラント、制汗剤および保湿ローションである。本発明の組成物にはさらに、ヘアまたは皮膚に何らかの効果をもたらすさらなる活性成分、例えば保湿剤、制汗剤、抗菌剤、洗浄剤、ヘアコンディショニング剤、ヘアスタイリング剤、抗ふけ剤、育毛剤、毛髪染料および色素、石けんおよび香料が含まれ得る。
【0021】
本発明の組成物は、例えば、「軽質」または「濃厚」タイプのクリーム状か、またはグリース状か、または尿素を含むものであり得る。さらなる成分は、例えばアーモンド油、カカオバター、ヒマシ油、オレイン酸デシル、トリグリセリド、エチルヘキサン酸セトステアリル、ヘプタン酸ステアリルまたはカプリル酸、アジピン酸ジイソプロピル、トリ−イソノナノイン(isononanoin)、ポリエチレングリコール−40 ブチルオクタノールおよびトリデセス−9、ポリエチレングリコール−5−エチルへキサン酸から選択され得る。
【0022】
本発明の組成物の下位集団には、とりわけ(other than)以下のエモリエントを単一またはいくつかの集合で組合せたかまたは混合した、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤が含まれ、要すれば上記の抗炎症性アスコマイシン誘導体、とりわけピメクロリムス、が含まれる:
−グリセリン;および/または
−脂肪酸エステル;および/または
−シリコン;および/または
−ジメチコン;および/または
−脂肪酸;および/または
−ペトラタム。
【0023】
本発明の組成物の下位集団にて、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤とは、とりわけ(other than)タクロリムスである;さらなる下位集団にて、それは、とりわけ(other than)タクロリムスおよびシロリムスである。
【0024】
炎症が関わる状態の処置における使用に関しては、一方または両方の成分が、ある程度の固有の抗炎症活性を保有する本発明の組成物が好ましい。具体的には、エモリエントと組合せたかまたは混合した、アスコマイシン、好ましくは抗炎症性アスコマイシン誘導体、とりわけピメクロリムスを含む組成物が好ましい;特に、ジメチコン、グリセロールまたはイソステアリン酸イソステアリルと組合せたかまたは混合したピメクロリムスが好ましい。炎症状態は、乾皮症またはアトピー性もしくは接触性皮膚炎である。
【0025】
ピメクロリムスは、抗炎症性で、かつ優れた皮膚浸透性を有するが経皮透過特性を最小限しか有さない。それは、皮膚に局所的に適用されるとき、著しい全身性の副作用を有さず、そしてエモリエントの鎮静効果は、炎症を起こしている皮膚にてその抗炎症作用を補足する。
【0026】
本明細書に用いる「処置」とは、具体的には、現在の状態をなるべく緩和するための使用、すなわち治療的処置を示すが、本発明はまた、炎症の存在が高確率である状態における予防的使用も検討する。
【0027】
相乗効果を、例えば、Chouらの、Transpl. Proc. 26 (1994) 3043に記載のような、2個の薬剤間のメカニズムの差異を修正するための相互作用項(interaction term)を用いて、Berenbaum, Clin. Exp. Immunol. 28 (1977) 1に記載のように測定する。相乗効果指数を、以下のように測定する:
【数1】

ここで、化合物AおよびBの用量とは、特定の組合せに用いたものを示し、AおよびBは、AおよびBそれぞれが同様の効果を与える個別の用量である。結果が1未満であるとき、相乗効果がある;結果が1であるとき、相加効果がある;結果が1より大きいとき、AとBは、アンタゴニストである。A/Aの用量対B/Bの用量のアイソボログラムのプロッティングにより、最大相乗効果の組合せを決定することができる。その後、アイソボログラムに沿った相乗効果用量、とりわけ最大相乗効果の点またはその近辺での2個の組成物の重量の比率として表される相乗効果比率を用いて、最適な相乗効果比率の2個の化合物を含む製剤を決定することができる。
【0028】
活性を、例えば前記組成物の個々の化合物の活性を試験するための既知の分析モデルにて決定することができる。
【0029】
本発明はまた、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤、例えば33−エピクロロ−3−デスオキシ−アスコマイシンまたは5,6−デヒドロアスコマイシンなどと、エモリエント、例えばジメチコンなどを、相乗的有効投与量で共投与するための製品および方法を提供する。例えば:
−乾皮症またはアトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎などの皮膚疾患または粘膜疾患の、かかる状態に罹患しているまたは危険のある被験者における処置または予防方法であって、相乗的有効用量の本発明の組成物を共投与することを含む、方法;
−相乗的有効用量でエモリエントと共投与するための医薬品の製造における、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−相乗的有効用量でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と共投与するための医薬品の製造におけるエモリエントの使用;
【0030】
−別々の単位用量剤形(好ましくは、前記単位用量剤形が、相乗的有効用量における成分化合物の投与に適する)でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびエモリエントを含む、使用のための説明書と共に、要すれば成分化合物の投与でコンプライアンスを上昇させるためのさらなる手段、例えばラベルまたは図面を含んでいて良い、キット;
−エモリエントとの共投与を容易にするために使用される医薬品キットの製造におけるマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤との共投与を容易にするために使用される医薬品キットの製造におけるエモリエントの使用;
【0031】
−例えば乾皮症またはアトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎などの皮膚疾患または粘膜疾患の処置または予防のための、好ましくは相乗的有効投与量での同時使用、個別使用または連続使用のための医薬品の組合せとしてのマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびエモリエント;
−例えば乾皮症またはアトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎などの皮膚疾患または粘膜疾患の処置または予防における使用のための、例えば相乗的有効投与量で、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に、エモリエントと組合せたかまたは混合したマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を含む医薬組成物;および、
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合したエモリエントを混合することを含む、本発明の組成物を製造する方法。
【0032】
「相乗的有効用量」とは、関連する適応症についてのそれぞれの有効投与量よりも個々では少ないが、例えば上記に計算したような相乗効果比率での共投与にて薬学的に活性である、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量およびエモリエントの量を意味する。さらに、「相乗的有効用量」とは、関連する適応症のためのそれぞれの有効投与量と個々に等しく、相加効果を上回る結果を生じる、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量およびエモリエントの量を意味してもよい。
【0033】
存在するマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤のモル量は、エモリエントの量と同じくらいからかなり少なく、好ましくは半分くらいかまたは半分以下である。故に、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤とエモリエントの相乗効果比率は重量で、約10:1から約1:50が適当であり、好ましくは約5:1から約1:20、より好ましくは約1:1から約1:15、例えば約1:12である。
【0034】
本発明の組成物は、自由な組合せで投与され得るか、または患者に対して利便性を大いに高める固定された組合せの製剤で投与され得る。
【0035】
前記化合物の絶対的な用量は、多数の因子、例えば個人、投与経路、所望の持続時間、活性物質の放出速度ならびに処置する状態の性質および重症度に依存して変化するであろう。例えば、必要な活性物質の量およびその放出速度は、血漿中の特定の活性物質の濃度が、治療効果に対して許容されるレベルでいつまで残っているかを測定する、公知のインビトロおよびインビボ技術を基に決定され得る。
【0036】
例えば、乾皮症またはアトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎などの皮膚疾患または粘膜疾患の予防および処置にて、維持投与量の約2−3倍の初期投与量を投与するのが適当であり、続いて維持投与量の約2−3倍の日用量を1〜2週間の期間投与し、そしてその後、前記用量を1週間に約5%の割合で漸減し、維持投与量にする。一般に、大型動物、例えばヒトにおける乾皮症またはアトピー性皮膚炎もしくは接触性皮膚炎の予防および処置における使用のための経口投与にて、33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンおよびジメチコン、例えばピメクロリムスの相乗的有効用量は、上記のような相乗的効果率にて、約2mg/kg/日以下、例えば、約0.01mg/kg/日から約2mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日と、ジメチコンを約50mg/kg/日、例えば、約0.25mg/kg/日から約50mg/kg/日、好ましくは約2.5mg/kg/日で組合せるかまたは共投与する。故に、これらの化合物の経口共投与のための適当な単位用量剤形は、約0.5mgから約100mg、好ましくは約3mgから約30mgの33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシン、および約10mgから約3000mg、好ましくは約50mgから約500mgのジメチコンを含み得る。経口投与のための日用量は、好ましくは単一用量で摂取するが、一日に2回、3回または4回の用量に分けて良い。静脈内投与について、有効投与量は、経口投与に必要な量よりも少なく、例えば、経口投与量の約5分の1である。
【0037】
「共投与」とは、経口投与により、例えば、両化合物が胃腸管内で同時に存在するようにするために、一緒にまたは実質的に同時に、例えば15分以内かまたはそれ以下で、同じビヒクルかまたは別々のビヒクルのどちらかで、本発明の組成物の成分を投与することを意味する。しかしながら、局所使用における成分の投与は、少なくとも数時間、例えば6時間または12時間の時間間隔で分けられても良い。好ましくは、前記化合物は、固定された組合せとして、好ましくは局所的に投与される。
【0038】
本発明の組成物には、いかなる常套的な経路による投与にも適する組成物が含まれ、特に経腸的、例えば、飲料用の溶液、錠剤またはカプセルの形態で経口的に、または例えば、注射用溶液または懸濁液の形態で非経腸投与のどちらか;または、例えば、皮膚または粘膜の炎症性状態の処置のための、例えば、それぞれの成分の重量が約0.1%から約1%、好ましくは約1%の濃度の、とりわけ浸透促進物質と組合せてかまたは混合した、例えば、皮膚用クリーム、軟膏、点耳液、ムース、シャンプー、溶液、ローション、ジェル、エマルジェルまたは類似の製剤の形態で局所的に、ならびに、例えば、眼用クリーム、ジェルまたは点眼調製液の形態での眼投与、肺および気管の炎症状態の処置のための、例えば吸入可能組成物の形態での投与、および、例えば、膣錠の形態の粘膜投与に適する組成物が含まれる。
【0039】
本発明の組成物としては、相乗効果比率でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびエモリエントを含む、エマルジョン、マイクロエマルジョン、エマルジョン前濃縮物またはマイクロエマルジョン前濃縮物または固溶体、とりわけ油中水マイクロエマルジョン前濃縮物または水中油マイクロエマルジョンが適当である。
【0040】
本発明の組成物は、簡便な方法、例えば、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せるかまたは混合したエモリエントを混合することにより、製造され得る。
【0041】
前記活性物質成分は、必要に応じて、遊離型であるかまたは薬学的に許容される塩形態であり得る。
【0042】
本発明は主に、2個のみの薬学的および/または美容的に活性な成分の組合せまたは混合を検討しているが、本発明の目的と相反しない限りは、さらなる薬学的および/または美容的に活性な物質、例えば、殺菌剤などの1個のさらなる活性物質の存在を除外するものではない。
【0043】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。前記化合物は遊離型であり、すなわち他に特記しない限り中性または塩基性形態である。
実施例1クリーム (保護用疎水性フィルム)
【表1】

【0044】
製造を、エマルジョンのための常套的な製造方法で行う。アスコマイシン誘導体およびジメチコンを、中鎖トリグリセリド、オレイルアルコール、セシルステアリル硫酸ナトリウム、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリンを含む、加熱した均質の油相に加える。同時に、残りの成分を含む水相を、油相と同じ温度で加熱する。油相を水相に加え、均質化する。得られたクリームを、室温まで冷やす。
【0045】
実施例2クリーム (保湿剤を含む)
組成物を、ジメチコン5.00gをグリセロール3.00gに代えて(それは、製造のために、油相の代わりに水相に含まれる)、実施例1のとおりに製造する。
【0046】
実施例3クリーム (半密封性)
組成物を、ジメチコン5.00gをイソステアリン酸イソステアリル4.00gに代えて、実施例1のとおりに製造する。
【0047】
実施例4軟膏 (保護用疎水性フィルム)
【表2】

【0048】
製造を、常套的な製造方法で行う。アスコマイシンを、ジメチコンおよび残りの成分を含む、加熱した均質の油相に加える。均質化後、得られた軟膏を、室温まで冷やす。
【0049】
実施例5溶液(保護用疎水性フィルム)
【表3】

製造を、実施例4に記載のとおりの常套的な製造方法で行う。
【0050】
実施例6液体エマルジョン(保湿剤を含む)
【表4】

製造を、常套的な製造方法で行う。アスコマイシンを、中鎖トリグリセリド、オレイルアルコールおよびグリセリンモノオレートを含む、加熱した均質の油相に加える。同時に、グリセロールおよび残った成分を含む水相を、油相と同じ温度で加熱する。油相を水相に加え、均質化する。得られたエマルジョンを、室温まで冷やす。
【0051】
実施例7液体エマルジョン(半密封性)
グリセロール3.00gをイソステアリン酸イソステアリル4.00gに代えて(それは、製造のために、水相の代わりに油相に含まれる)、実施例6のとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチコン、グリセロールまたはステアリン酸イソステアリルからなる群から選択されるエモリエントと組合せたかまたは混合した33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンを、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項2】
前記エモリエントが、33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンの量の約10%から約5000%w/wで存在する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
相乗的有効用量の請求項1記載の組成物を共投与することを含む、皮膚疾患または粘膜疾患に罹患している被験者を処置する方法。
【請求項4】
33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンと、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合したジメチコン、グリセロールまたはイソステアリン酸イソステアリルからなる群から選択されるエモリエントを混合することを含む、請求項1または2のいずれか記載の組成物を製造する方法。
【請求項5】
使用のための説明書と共に、別々の単位用量剤形で33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンとジメチコン、グリセロールまたはステアリン酸イソステアリルからなる群から選択されるエモリエントを含んでなる、キット。

【公表番号】特表2006−522059(P2006−522059A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504966(P2006−504966)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003513
【国際公開番号】WO2004/087141
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】