説明

皮膚血行促進化粧料

【課題】皮膚の血行促進作用を充分に発現しつつ、その作用を持続的に保持し、皮膚刺激性が低い上に使用時における匂いが不快でない皮膚血行促進化粧料を提供する。
【解決手段】炭酸ガスを100〜20000ppm含有し、かつゲラニオール又はネロールを0.001〜0.5質量%含有する皮膚血行促進化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の血流量を持続的に増大させる血行促進化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の血行を促進することは、身体の健康と美容にとって大変有益であり、身体の新陳代謝の促進や、肌のくすみ防止、皮膚組織への栄養と水分の供給等、その効果・効能及び応用分野は計り知れない。例えば、皮膚血流量を増加させて、冷え性や肩こり等の血液循環不調による症状等を安全かつ効果的に改善する方法が知られている(特許文献1)。また血行促進剤を毛根に浸透させ、血管を拡張することによって毛髪の生成が促進されることも知られている(特許文献2)。
【0003】
一方、血行促進剤としては、カプサイシン或いはカプサイシンを含有する唐辛子末、唐辛子エキス等の数多くのものが報告されており、なかでも、テルピネオールやリナロール、ゲラニオール等のテルペンは、皮膚の血行促進作用を発現し得る上、皮膚刺激性が低いという利点を有することも知られている(特許文献3)。また、炭酸ガスを含有させることによっても、皮膚の血行を促進させることは可能であり、香料としてゲラニオール等も添加することができる(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−235016号公報
【特許文献2】特開2009−139368号公報
【特許文献3】特開2009−139371号公報
【特許文献4】特開2009−161439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、皮膚の血行促進作用をもたらす化粧料を得るにあたり、その有効成分としてゲラニオールやネロールのような香料を配合する場合、充分な皮膚血行促進作用が発現する濃度範囲とする必要があるものの、こうした濃度範囲では香料本来の特有の匂いが強くなる傾向にある。また、皮膚の血行促進作用をもたらす化粧料を得るにあたり、その有効成分として炭酸ガスを含有させた場合、皮膚に適用後、炭酸ガスは速やかに大気中に放散され或いは生体中で代謝されてしまうため、皮膚血行促進時間の持続性を充分に図ることができないおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、皮膚の血行促進作用を充分に発現しつつ、その作用を持続的に保持し、皮膚刺激性が低い上に使用時における匂いが不快でない皮膚血行促進化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、不快な匂いを低減するためにゲラニオールやネロールの濃度を低めつつ、良好な皮膚の血行促進作用を持続的に発現できる皮膚血行促進化粧料を開発すべく種々検討した結果、特定量の炭酸ガスと低濃度のゲラニオール又はネロールとを併用したところ、これらゲラニオールやネロール単独では皮膚血行促進作用が極めて弱い、或いは皮膚血行促進作用が認められないような低含有量としながらも、良好な皮膚の血行促進持続作用を発現し、炭酸ガスを単独で含有させただけでは認められない優れた皮膚の血行促進作用の持続性を発揮し得る皮膚血行促進化粧料が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、炭酸ガスを100〜20000ppm含有し、かつゲラニオール又はネロールを0.001〜0.5質量%含有する皮膚血行促進化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲラニオールやネロールをその匂いが気にならない低い含有量としても、炭酸ガスと共に経皮吸収させることによって、良好な皮膚血行促進作用が認められるようになり、さらにこの皮膚血行促進作用を長期に亘り有効に持続させることができる。そのため、極めて高い皮膚血行促進持続効果を得ることが可能であり、持続的に皮膚血流量を高めて使用者の健康や美容に大いに貢献することができる。従って、本発明は皮膚血行促進持続化粧料として、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の皮膚血行促進化粧料を前腕内側部に貼付した後に剥離した際における、比較例1、実施例1〜6の7分後の血流量変化結果、すなわち皮膚血行促進作用の持続性を示す説明図である。それぞれの系において、CO2(−)は炭酸ガスを含有しない場合、CO2(+)は炭酸ガス濃度が1800ppmの場合の結果を示す。
【図2】本発明の皮膚血行促進化粧料を前腕内側部に貼付し、これを剥離した後7分経過した時点における、実施例7〜8及び比較例4の皮膚感覚や血流変化結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の皮膚血行促進化粧料は、皮膚血行促進化粧料全量中に、炭酸ガスを100〜20000ppm含有する。このような量の炭酸ガスを含有することにより、ゲラニオールやネロールが低含有量であってもゲラニオールやネロールによる皮膚血行促進作用を充分に発現させることができる。しかも、炭酸ガスを単独で含有させると、これが時間の経過とともに大気中に放散され或いは生体中で代謝されてしまい、経時的に充分な皮膚血行促進作用をもたらすことが困難であるところ、本発明の皮膚血行促進化粧料では、ゲラニオールやネロールと相まって、皮膚血行促進作用を長期に亘り大いに発揮させることができる。従って、本発明は、炭酸ガス100〜20000ppmを含有し、かつゲラニオール又はネロールを0.001〜0.5質量%含有する皮膚血行促進化粧料を更に提供するものである。
【0012】
炭酸ガスは、低含有量のゲラニオール又はネロールの皮膚血行促進作用を高める点、及び炭酸ガス自体による皮膚血行促進作用を充分持続的に発揮させる点から、皮膚血行促進化粧料全量中に、好ましくは150〜18000ppm含有し、より好ましくは400〜10000ppm含有し、さらに好ましくは1500〜2000ppm含有する。
【0013】
炭酸ガスを皮膚血行促進化粧料に含有させるには、例えば本発明の皮膚血行促進化粧料をシート状に形成する場合、炭酸ガス以外の成分を予め混合溶解後シート状に形成したものと炭酸ガスとをアルミピロー等の二酸化炭素難透過性容器中へ封入することで、炭酸ガスをシート状の皮膚血行促進化粧料に溶存させることが可能である。
【0014】
また、本発明の皮膚血行促進化粧料をエアゾール容器等に高圧充填する場合、炭酸ガス以外の成分を予め混合溶解したものと、炭酸ガスとを耐圧容器に充填する。炭酸ガス濃度は、充填する炭酸ガスの量、及び併用する噴射ガスとの分圧により調節することができる。常圧系では、炭酸ガス以外の成分を予め混合溶解した後、密閉混合中で炭酸ガスを飽和溶解又は加圧溶解した後に容器に充填することで、或いは混合溶液を容器に充填した後に炭酸ガスを充填し置換し、密閉して保存することで、飽和濃度の炭酸ガスを溶存させることが可能である。
【0015】
なお、本発明の皮膚血行促進化粧料は、使用する直前に炭酸ガスを皮膚血行促進化粧料へ溶解させる態様や、アルミピロー等の封入容器やエアゾール容器に封入して予め炭酸ガスを皮膚血行促進化粧料へ溶解させておく、いわゆる使い切り仕様の態様等を採用してもよい。
【0016】
本発明の皮膚血行促進化粧料は、皮膚血行促進化粧料全量中に、ゲラニオール又はネロールを0.001〜0.5質量%含有する。一般に、ゲラニオールやネロールを経皮吸収させることによってこれらの皮膚血行促進作用を充分に発揮させるには、0.5質量%を遥かに超える量で含有させる必要がある。しかしながら、本発明の皮膚血行促進化粧料は、炭酸ガスと相まって、ゲラニオール又はネロールを低含有量としても優れた皮膚血行促進作用をもたらすことができるので、ゲラニオールやネロール由来の強いバラ様香気を弱めることが可能である。また、炭酸ガスを単独で含有させるだけでは持続的に皮膚血行促進作用をもたらすのが困難であるところ、ゲラニオール又はネロールを含有することによって、長期に亘り優れた皮膚血行促進作用を持続的に発揮させることができる。
【0017】
例えば、本発明の皮膚血行促進化粧料をシート状に形成して皮膚に貼付した場合、貼付後7分経過した時点でシートを剥離すると、炭酸ガスは大気中に放散される或いは生体中で代謝されてほとんど存在しない状態となる。すなわち、炭酸ガスを単独で含有させた場合には、この時点で炭酸ガスによる皮膚血行促進作用はほとんど認められなくなる。しかしながら、本発明の皮膚血行促進化粧料は、炭酸ガスと低含有量のゲラニオール又はネロールとを併用することによって相乗的に皮膚血行促進作用が高められ、加えて、シートを剥離した後、さらに7分経過するに至るまで、高い皮膚血行促進作用を発揮し続けることが確認されており、極めて持続性の高い皮膚血行促進作用をもたらすことができるものである。
【0018】
ゲラニオール又はネロールの含有量は、ゲラニオールやネロールによる皮膚血行促進作用の向上や持続性を図る点、及び化粧料として適する弱められた匂いを有するに留めつつ化粧料の安定性を確保する点から、皮膚血行促進化粧料全量中に、好ましくは0.005〜0.4質量%であり、より好ましくは0.02〜0.3質量%であり、さらに好ましくは0.06〜0.2質量%である。ゲラニオール及びネロールは、どちらか一方を単独で用いてもよく、双方を共に用いてもよい。なお、ゲラニオール又はネロールを含有させるにあたり、これらを含む植物や精油等を用いることもできる。
【0019】
哺乳類、特にヒトの正常な皮膚のpHは、通常4〜6の範囲にあり、皮膚のpHが変化すると、皮膚の機能が妨げられてしまう。よって本発明の皮膚血行促進化粧料のpHは、良好な皮膚血行促進作用を奏する点で、好ましくは7.5以下、より好ましくは3.5〜6.5であり、さらに好ましくは4.0〜6.0である。かかるpHは、適宜pH調整剤を用いることによって、最終pHが上記範囲内となるように調整すればよい。pH調整剤としては、例えばコハク酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、或いはリン酸又はその塩等が好適に使用される。
【0020】
本発明の皮膚血行促進化粧料には、上記有効成分のほか、通常、化粧品や医薬品等で用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、個体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保温剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、アミノ酸誘導体、有機アミン類、合成樹脂エマルション、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、ゲラニオール及びネロール以外の成分の香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0021】
ゲラニオール及びネロール以外の成分を含む香料としては、特に限定されないが、様々な文献、例えば、「合成香料化学と商品知識」、印藤元一著、1996年化学工業日報社刊;「パフューム アンド フレバー ケミカルス(Perfume and Flavor Chemicals)」、ステファンアークタンダー(STEFFENARCTAMDER)著、1969年等の文献に記載された香料等が好適に使用できる。
【0022】
本発明の皮膚血行促進化粧料は、皮膚に塗布して使用するのが最適であり、外皮(頭皮を含む)に塗布する化粧料、医薬品、医薬部外品として、その用途は多岐に亘る。例えば、シート状化粧料、クリーム、化粧水、乳液、パック、美容液等のフェーシャル化粧料やスキンケア化粧料、ボディー化粧料、頭皮頭髪化粧料、洗浄料、ジェル、軟膏等として用いることができる。それぞれシート状、液状、乳液状、ペースト状、ゲル状、粉末状、顆粒状、ペレット状等のいずれの形態を呈していてもよい。
また、これら所望の用途に応じ、上記有効成分のほか、その他の成分を適宜選択して配合すればよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
[実施例1〜6、比較例1〜3]
表1に示す処方に従って未架橋状態の含水ゲル原液を調製した後、各成分を含有するゲルシートを作製した。
【0025】
具体的には、まず、グリセリンとプロピレングリコールとの混合液を混練機に投入し、コハク酸水溶液に分散させたカルボキシメチルセルロース、乾燥水酸化アルミニウムゲル、パラオキシ安息香酸メチルの順に添加して、水溶性ゲルを調製した。次いで、得られたゲルにゲラニオール又はネロールを適濃度にて混合し、この未架橋状態のゲルをPET(ポリエチレン)フィルムと不織布とを積層したEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)フィルムに挟み込み、ベーカー式アプリケーターによって含水ゲルの厚さが1.5mmとなるように展延した。さらに、50℃で5日間熟成し、含水ゲル層の架橋反応を完了させて、ゲルシートを得た。次いで、得られたゲルシートを正方形(面積25cm2)に型抜きしてアルミピロー中に炭酸ガスと共に封入し、ゲル中に炭酸ガスが溶存するシートを調製し、5日間室温にて保存したものを評価ゲルシートとした。評価ゲルシートのpHは、4.0〜6.0であった。
【0026】
なお、1気圧の炭酸ガスは水1gに対して0.878mL溶解するが、この炭酸ガスを質量に換算すると、約0.0018g(20℃、1atm)となる。そこで、本発明において評価に用いる評価ゲルシート(水分活性値(実測):0.985)が全て水で構成されていると仮定した場合、ゲルシート中に含有される炭酸ガス量は、炭酸ガスをアルミピローに常圧にて封入した場合、約1800ppmと見積られる。
得られた評価ゲルシートを用い、下記に示す方法にしたがって各評価を行った。
【0027】
《匂いの評価》
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた各評価ゲルシートが封入されたアルミピローを開封し、速やかに評価ゲルシートを前腕内側部に貼付し、その際における匂いについて被験者に聞き取り調査を行い、下記基準にしたがって評価した。得られた結果を表1に示す。
5:ほとんど匂いがなく、気にならない
4:匂いはあるが心地よい匂いであり、気にならない
3:匂いがあり、若干気にはなるが不快ではない
2:匂いがありやや不快
1:匂いが強く不快
【0028】
《皮膚血行促進作用の評価》
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた各評価ゲルシートが封入されたアルミピローを開封して評価ゲルシートを前腕内側部に7分間貼付した後に剥離し、貼付前と7分間貼付して剥離した後にさらに7分経過した時点とのそれぞれの血流量を測定した。血流量は、前腕部の血流をリアルタイム血流画像化装置FLPI(Moor Instruments Ltd.製、Moor FLPI)を用いた。シート剥離後の血流量を、シートを貼付する前の前腕部の皮膚血流を100として、剥離後7分経過した時点の血流量を相対値で示し、皮膚血行促進作用効果及び皮膚血行促進作用の持続性の指標とした。シート貼付前及び貼付して剥離した後に7分経過した時点における血流量の変化は、3回以上行った測定の平均値として示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた各評価ゲルシートについて、炭酸ガスを溶存しないシートとした場合についても、同様にして評価を行った。得られた結果を図1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1によれば、実施例1〜6ではその匂いがほとんど気にならないものの、比較例2ではバラ様香気がかなり強く不快と判断された。比較例3に示されるように、ネロールもゲラニオールと同様に匂いがきつく、皮膚化粧料としては不快であると判断された。
【0031】
また、図1によれば、ゲラニオール及びネロールを含有しない比較例1のシートでは、炭酸ガスの有無によらず、血流量はゲルシート貼付前よりも低く、貼付前の95%程度の血流量を示すにすぎない。これは、ゲルシートに含有される水分が皮膚に移行した結果、水の蒸散熱によって皮膚表面温度が低下し、血流量がシート貼付前に比べて減少したためと考えられる。また炭酸ガス自体の皮膚血行促進作用は、シート剥離後7分経過時点では消失してしまい、ゲラニオール及びネロールを含有しない比較例1のシートでは、皮膚血行促進作用の持続性が得られないこともわかる。なお、本評価は、この比較例1の血流量変化を指標とするものであり、シート貼付前の血流量に対し、比較例1におけるシートを貼付して剥離後7分経過した時点の血流量(約95%)を上回る血流量を示した際に、皮膚血行促進作用が認められると定義した。
【0032】
ゲラニオールを含有させた実施例1〜3について、炭酸ガスを溶存させないシートとして貼付した場合、いずれもはっきりとした皮膚血行促進作用が認められなかった。これに対し、実施例1〜3の炭酸ガスを溶存しているシートを貼付すると、炭酸ガスが溶存していないシートではほとんど認められなかったシート剥離後7分経過時点の皮膚血行促進作用が、はっきりと確認された。したがって、ゲラニオール濃度0.01、0.05、0.1質量%では、炭酸ガスとゲラニオールとによって相乗的に皮膚血行促進作用が高められ、各々単独でははっきりと認められない皮膚血行促進持続作用が明確に確認できるようになることがわかる。
【0033】
ネロールを含有させた実施例4〜6について、炭酸ガスを溶存させないシートとして貼付した場合、いずれの条件においてもはっきりとしたシート剥離後7分経過時点の皮膚血行促進作用は認められなかった。これに対し、実施例4〜6の炭酸ガスを溶存しているシートを貼付すると、炭酸ガスが溶存していないシートではほとんど認められなかったシート剥離後7分経過時点の皮膚血行促進作用が、はっきりと確認された。したがって、ネロール濃度0.05、0.1、0.5質量%では、炭酸ガスとネロールとによって相乗的に皮膚血行促進作用が高められ、各々単独でははっきりと認められない皮膚血行促進持続作用が明確に確認できるようになることがわかる。
【0034】
[実施例7〜8、比較例4]
炭酸ガスとネロールとによって相乗的に高められる皮膚血行促進作用について、表2に示すように、実施例1と同様にしてネロールを0.2質量%配合したゲルシートを調製し、ゲルシートと共にアルミピローに封入する炭酸ガスの濃度を90ppm〜1800ppmとした評価ゲルシートを作製した。なお、炭酸ガス濃度の調整には、炭酸/窒素の混合ガスを用い、炭酸ガス:窒素ガス=5:95(分圧比)又は炭酸ガス:窒素ガス=20:80の混合ガスをアルミピロー内に封入密封することにより行った。
【0035】
得られた各評価ゲルシートが封入されたアルミピローを開封して評価ゲルシートを前腕内側部に7分間貼付した後に剥離し、7分後における血流増加作用を比較した。結果を図2に示す。なお、これらの実施例及び比較例における評価ゲルシートのpHは4.0〜6.0であった。
【0036】
【表2】

【0037】
図2によれば、炭酸ガスとネロールとが共存していても、炭酸ガス濃度がそれぞれ360ppm及び1800ppmである実施例7及び8に比べ、炭酸ガス濃度が90ppmの比較例4においては、ほとんど皮膚血行促進作用が認められなかった。
【0038】
以下に、本発明に関する種々の皮膚血行促進化粧料の態様を例示するが、いずれの実施例も優れた皮膚血行促進作用及び皮膚血行促進作用の持続性を発揮し、同時に皮膚刺激性がなく使用性が良好であった。なお、これらの実施例における身体化粧料の製造方法は、それぞれにおける製造方法として一般的に用いられている方法に従った。また、これらの実施例における身体化粧料のpHは4.0〜6.0であった。
【0039】
[実施例9:化粧水]
質量%
エタノール 3.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
グリセリン 5.0
プロピレングリコール 5.0
POE(15)ラウリルエーテル 0.5
ネロール 0.1
防腐剤 適量
精製水 残余
炭酸ガス以外の成分を混合、攪拌して均一とし、所定の量をアルミピローに入れた後に炭酸ガスを封入して皮膚血行促進化粧水(炭酸ガス濃度約1500ppm)を得た。
【0040】
[実施例10:乳液]
質量%
ステアリン酸 2.5
セチルアルコール 1.5
エタノール 0.5
ワセリン 5.0
ゲラニオール 0.1
プロピレングリコール 3.0
流動パラフィン 10.0
POE(10)モノオレイン酸エステル 2.0
PEG1500 3.0
トリエタノールアミン 1.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
カルボキシビニルポリマー 0.05
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残余
炭酸ガス以外の成分を混合、攪拌して均一とし、所定の量をアルミピローに入れた後に炭酸ガスを注入して皮膚血行促進乳液(炭酸ガス濃度約1300ppm)を得た。
【0041】
[実施例11:スキンローション]
質量%
エタノール 3.0
乳酸 0.1
プロピレングリコール 2.0
乳酸ナトリウム 0.3
POE(20)硬化ヒマシ油 0.5
ネロール 0.1
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残余
炭酸ガス以外の成分を混合、攪拌して均一とし、所定の量をアルミピローに入れた後に炭酸ガスを注入して皮膚血行促進スキンローション(炭酸ガス濃度約1700ppm)を得た。
【0042】
[実施例12:エアゾール]
質量%
ラウリルリン酸 3.9
モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
カルボキシビミニルポリマー 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
キサンタンガム 0.1
トリメチルグリシン 4.9
プロピレングリコール 1.6
L−アルギニン 3.0
ニコチン酸dl−α―トコフェロール 1.0
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
ゲラニオール 0.05
香料 適量
精製水 残量
二酸化炭素及び液化石油ガス以外を混合して原液を調製し、その後混合液に全量の1.5%になるような二酸化炭素と全量の1.2%になるような液化石油ガスの混合ガスを耐圧容器に密封して皮膚血行促進用マッサージ化粧料(炭酸ガス濃度約12000ppm)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスを100〜20000ppm含有し、かつゲラニオール又はネロールを0.001〜0.5質量%含有する皮膚血行促進化粧料。
【請求項2】
皮膚に適用して用いられる請求項1に記載の皮膚血行促進化粧料。
【請求項3】
pHが、7.5以下である請求項1又は2に記載の皮膚血行促進化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−18719(P2013−18719A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151533(P2011−151533)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】