監視システム及び監視装置
【課題】監視エリアへの侵入者を自動追跡して撮影可能であるとともに、複数の侵入者が同時に侵入した場合であっても、当該複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能な、監視システムを得る。
【解決手段】監視システム5は、監視装置3と表示装置6とを備え、監視装置3は、所定の監視エリア4を撮影する広角カメラ11A,11Bと、広角カメラ11A,11Bによって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像300を取得して表示装置6に表示する望遠カメラ12Aと、オペレータによって遠隔操作されることにより、広角カメラ11A,11B及び望遠カメラ12Aとは独立して、監視エリア4内の所望箇所の画像を取得して表示装置6に表示可能な望遠カメラ12Bと、を有する。
【解決手段】監視システム5は、監視装置3と表示装置6とを備え、監視装置3は、所定の監視エリア4を撮影する広角カメラ11A,11Bと、広角カメラ11A,11Bによって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像300を取得して表示装置6に表示する望遠カメラ12Aと、オペレータによって遠隔操作されることにより、広角カメラ11A,11B及び望遠カメラ12Aとは独立して、監視エリア4内の所望箇所の画像を取得して表示装置6に表示可能な望遠カメラ12Bと、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システム及び監視装置に関し、特に、所定の監視エリアへの侵入者を監視するための監視システム及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラによって所定の監視エリアを撮影することにより、監視エリアへの侵入者を監視する監視装置が広く実用化されている。このような監視装置においては、一般的に、監視カメラによって撮影した監視エリアの映像をモニタに表示し、表示された映像を監視者が目視することによって、監視エリアへの侵入者が監視される。
【0003】
下記特許文献1には、パンチルト機能及びズーム機能が搭載された監視カメラが開示されている。当該監視カメラは、動体を検出すると、その動体の大きさ及び動きベクトルに基づいて、ズームレンズの画角の調整を行うとともに、パンチルタによる撮影範囲の調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4293236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モニタの表示映像を監視者が目視することによる侵入者の監視では、監視者は常にモニタを注視しているとは限らないため、監視者が侵入者を見落とす可能性がある。特に、施設の周囲に複数の監視カメラが設置されており、複数の監視カメラの映像を一人の監視者によって監視する場合等においては、監視者が侵入者を見落とす可能性は高まる。
【0006】
また、上記特許文献1に開示された監視カメラによると、パンチルト制御及びズーム制御によって侵入者を自動追跡して撮影することは可能であるが、監視エリア内に複数の侵入者が同時に侵入した場合の対策が施されていないため、複数の侵入者の全員を漏れなく撮影することは不可能である。例えば、監視エリア内に二人の侵入者が同時に侵入した場合において、監視カメラによって一方の侵入者に対する自動追跡撮影が開始されると、他方の侵入者の撮影が行われない。従って、監視カメラの機能としては不十分である。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、監視エリアへの侵入者を自動追跡して撮影可能であるとともに、複数の侵入者が同時に侵入した場合であっても、当該複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能な、監視システム及び監視装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る監視システムは、監視装置と、表示装置と、を備え、前記監視装置は、所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得して前記表示装置に表示する、第2の撮影手段と、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得して前記表示装置に表示可能な、第3の撮影手段と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
第1の態様に係る監視システムによれば、第2の撮影手段は、第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得して表示装置に表示する。このように、監視エリアへの侵入者を第2の撮影手段によって自動追跡して撮影することにより、侵入者の拡大画像を漏れなく撮影することが可能となる。また、第3の撮影手段は、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、監視エリア内の所望箇所の画像を取得して表示装置に表示する。従って、複数の侵入者が同時に監視エリアに侵入した場合であっても、第2の撮影手段によって撮影している侵入者とは異なる侵入者を第3の撮影手段によって撮影することができる。その結果、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る監視システムは、第1の態様に係る監視システムにおいて特に、前記第3の撮影手段は、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影と、自動追跡による移動物体の撮影とを切り換え可能であることを特徴とするものである。
【0011】
第2の態様に係る監視システムによれば、第3の撮影手段は、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影と、自動追跡による移動物体の撮影とを切り換え可能である。従って、複数の侵入者が同時に監視エリアに侵入した場合に、第2及び第3の撮影手段を用いて複数の侵入者を自動追跡して撮影するという動作と、第2の撮影手段によって侵入者を自動追跡して撮影しつつ、第3の撮影手段によって他の所望の侵入者を撮影するという動作とを切り換えることができるため、ユーザの利便性を向上することができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る監視システムは、第1又は第2の態様に係る監視システムにおいて特に、前記第2の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記第3の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記監視エリア内における前記移動物体の位置と、を示す位置情報が、前記表示装置にさらに表示されることを特徴とするものである。
【0013】
第3の態様に係る監視システムによれば、第2の撮影手段によって撮影されている監視エリア内の位置と、第3の撮影手段によって撮影されている監視エリア内の位置と、監視エリア内における移動物体の位置と、を示す位置情報が、表示装置に表示される。従って、オペレータは、当該位置情報に基づいて、第3の撮影手段によって次に撮影すべき侵入者を容易に特定することができるため、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る監視システムは、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る監視システムにおいて特に、前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該撮影画像のうち当該移動物体に対応する画像領域に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて前記移動物体の材質を分析する材質分析手段と、前記移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成するデータ生成手段と、をさらに備え、前記特徴データに基づいて前記移動物体の自動追跡が行われることを特徴とするものである。
【0015】
第4の態様に係る監視システムによれば、材質分析手段は、撮影画像のうち移動物体に対応する画像領域に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて移動物体の材質を分析する。従って、材質分析の結果、移動物体に対応する画像領域内に人肌や化学繊維等が含まれている場合には、その移動物体は人間であると識別することができる。その結果、所定の監視エリア内に移動物体が含まれている場合に、その移動物体が人間であるかそれ以外の動物等であるかを正確に識別することが可能となる。また、データ生成手段は、材質分析手段によって分析された移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成する。そして、当該特徴データに基づいて移動物体の自動追跡が行われる。従って、監視エリア内で移動する個々の移動物体を、各移動物体に関する特徴データに基づいて正確に追跡することができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る監視システムは、第4の態様に係る監視システムにおいて特に、複数の前記監視装置によって複数の前記監視エリアが撮影され、前記特徴データに基づいて、異なる監視エリアを跨ぐ前記移動物体の自動追跡が行われることを特徴とするものである。
【0017】
第5の態様に係る監視システムによれば、各移動物体に関する特徴データに基づくことにより、異なる監視エリアを跨ぐ移動物体の自動追跡を正確に行うことが可能となる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る監視装置は、所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得する、第2の撮影手段と、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得する、第3の撮影手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0019】
第6の態様に係る監視装置によれば、第2の撮影手段は、第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得する。このように、監視エリアへの侵入者を第2の撮影手段によって自動追跡して撮影することにより、侵入者の拡大画像を漏れなく撮影することが可能となる。また、第3の撮影手段は、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、監視エリア内の所望箇所の画像を取得する。従って、複数の侵入者が同時に監視エリアに侵入した場合であっても、第2の撮影手段によって撮影している侵入者とは異なる侵入者を第3の撮影手段によって撮影することができる。その結果、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、監視エリアへの侵入者を自動追跡して撮影可能であるとともに、複数の侵入者が同時に侵入した場合であっても、当該複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能な、監視システム及び監視装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る監視装置の使用状況の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る監視システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図3】監視装置の外観を模式的に示す図である。
【図4】監視装置の機能を概略的に示すブロック図である。
【図5】図4に示した各部の構成を具体的に示す図である。
【図6】受光素子部の構成の第1の例を示す図である。
【図7】受光素子部の構成の第2の例を示す図である。
【図8】波長選択フィルタ及び受光素子部の構成の第1の例を示す図である。
【図9】波長選択フィルタ及び受光素子部の構成の第2の例を示す図である。
【図10】材質分析部の構成を示すブロック図である。
【図11】監視装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図12】広角カメラによってそれぞれ撮影された撮影画像を示す図である。
【図13】材質識別部による材質の識別処理を示すフローチャートである。
【図14】材質識別部による材質の識別処理を示すフローチャートである。
【図15】望遠カメラによって侵入者を撮影した拡大画像を示す図である。
【図16】位置特定部によって作成された位置情報マップの一例を示す図である。
【図17】表示装置に表示される画像の一例を示す図である。
【図18】表示装置に表示される画像の他の例を示す図である。
【図19】通信基地局に複数の監視装置が設置された状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る監視装置3の使用状況の一例を示す図である。通信基地局1が山中に設置されており、通信基地局1の周囲はフェンス2で取り囲まれている。この例において、監視装置3は、所定の撮影エリアとして、フェンス2を含む監視エリア4を撮影することにより、フェンス2を乗り越えて通信基地局1へ侵入しようとする侵入者を監視する用途で使用される。なお、図1の例では通信基地局1に一つの監視装置3のみが設置されているが、後述の図19に示すように、通信基地局1の周囲を死角無く監視するために、複数の監視装置3A〜3Dが設置されてもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係る監視システム5の全体構成を概略的に示す図である。監視システム5は、監視装置3と、監視装置3によって撮影された画像を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置6とを備えている。表示装置6は、遠隔地の監視センタ内(又は通信基地局1内)に設置されており、表示装置6に表示された画像はオペレータ(監視者)によって目視可能である。また、監視センタ内には、監視装置3を遠隔操作するためにオペレータが操作可能な操作部7が設置されている。
【0025】
図3は、監視装置3の外観を模式的に示す図である。ステレオカメラとして機能する一対の広角カメラ11A,11Bと、望遠カメラ12A,12Bと、制御装置13とが、フレーム10に取り付けられている。広角カメラ11A,11Bは、監視エリア4の全体を撮影可能なように、視野が固定されている。望遠カメラ12A,12Bは、例えば、パンチルト機能及びズーム機能を搭載したPTZカメラである。広角カメラ11A,11B及び望遠カメラ12A,12Bは、対象物からの太陽光の反射光を受光することによって対象物を撮影する。但し、監視装置3においては、夜間における撮影をも可能とすべく、ハロゲン光又は赤外光を監視エリア4に向けて照射する光照射器を備えてもよい。
【0026】
図4は、監視装置3の機能を概略的に示すブロック図である。監視装置3は、撮影部21、分析部22、識別部23、特徴データ生成部24、及びデータ処理部40を備えている。撮影部21は、図3に示した広角カメラ11A,11B及び望遠カメラ12A,12Bを有している。また、図5は、図4に示した各部の構成を具体的に示す図である。
【0027】
図4,5を参照して、撮影部21は、広角カメラ11Aに対応する光学系31A、分岐部32A、受光素子部33A、波長選択フィルタ34A、及び受光素子部35Aを有しており、また、広角カメラ11Bに対応する光学系31B、分岐部32B、受光素子部33B、波長選択フィルタ34B、及び受光素子部35Bを有している。なお、以下の説明では、広角カメラ11A,11Bを総称して「広角カメラ11」と称し、光学系31A,31Bを総称して「光学系31」と称し、分岐部32A,32Bを総称して「分岐部32」と称し、受光素子部33A,33Bを総称して「受光素子部33」と称し、波長選択フィルタ34A,34Bを総称して「波長選択フィルタ34」と称し、受光素子部35A,35Bを総称して「受光素子部35」と称する。
【0028】
分析部22は、広角カメラ11Aに対応する動体検出部36A、抽出部37A、形状分析部38A、及び材質分析部39Aと、広角カメラ11Bに対応する動体検出部36B、抽出部37B、形状分析部38B、及び材質分析部39Bとを有している。
【0029】
識別部23は、広角カメラ11Aに対応する識別部23Aと、広角カメラ11Bに対応する識別部23Bとを有している。
【0030】
特徴データ生成部24は、広角カメラ11Aに対応する特徴データ生成部24Aと、広角カメラ11Bに対応する特徴データ生成部24Bとを有している。
【0031】
データ処理部40は、同一対象特定部41、個別対象特定部42、位置特定部43、及び追跡処理部44を有している。
【0032】
図6は、受光素子部33,35の構成の第1の例を示す図である。図6の(A)には受光素子部33の構成を示しており、図6の(B)には受光素子部35の構成を示している。受光素子部33は、CCD等の複数の受光素子が行列状に配列された構成を有している。受光素子部35は、InGaAs等を用いた複数の受光素子が行列状に配列された構成を有している。図6の例では、受光素子部33の画素数と受光素子部35の画素数とは互いに等しく、受光素子部33,35の各画素は一対一に対応する。つまり、受光素子部33,35の空間分解能は互いに等しい。
【0033】
図7は、受光素子部33,35の構成の第2の例を示す図である。図6と同様に、図7の(A)には受光素子部33の構成を示しており、図7の(B)には受光素子部35の構成を示している。図7の例では、後述する材質分析部39A,39Bにおける演算処理の負荷を低減すべく、受光素子部35の画素数は受光素子部33の画素数より少なく設定されている。つまり、受光素子部35の空間分解能は受光素子部33の空間分解能より低い。
【0034】
図5を参照して、対象物からの反射光は、光学系31によって受光素子部33上に導光される。受光素子部33を構成する各受光素子は、可視光の波長域における反射光の受光強度に応じた大きさの電気信号を出力する。また、広角カメラ11によって撮影された画像は、図2に示した表示装置6に表示される。
【0035】
分岐部32は、プリズム又はハーフミラー等であり、光学系31と受光素子部33との間に配置されている。光学系31から受光素子部33に向かう反射光は、分岐部32によって受光素子部35に向けて分岐される。分岐された反射光は、波長選択フィルタ34を介して受光素子部35上に導光される。受光素子部35を構成する各受光素子は、赤外光の波長域における反射光の受光強度に応じた大きさの電気信号を出力する。
【0036】
なお、分岐部32の構成としては、固定のプリズム又はハーフミラー等を用いる構成の代わりに、挿退可能な反射鏡を光学系31と受光素子部33との間に配置する構成としてもよい。第1のタイミングにおいて、光学系31と受光素子部33との間の光路上から上記反射鏡を退避させる。これにより、対象物からの反射光が受光素子部33上に導光される。また、第2のタイミングにおいて、光学系31と受光素子部33との間の光路上に上記反射鏡を挿入する。光学系31から受光素子部33に向かう反射光は、反射鏡によって受光素子部35に向けて反射される。これにより、対象物からの反射光が受光素子部35上に導光される。上記第1及び第2のタイミングは、所定の微小時間間隔で交互に繰り返される。
【0037】
図8は、波長選択フィルタ34及び受光素子部35の構成の第1の例を示す図である。波長選択フィルタ34は、それぞれが受光素子部35の受光面に略等しい大きさの5枚の波長選択フィルタ51〜55を有している。波長選択フィルタ51,52,53,54,55は、分岐部32から入射された反射光のうち、それぞれ1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の波長成分のみを透過する。波長選択フィルタ51〜55は、受光素子部35の受光面の前方に順に挿入される。これにより、受光素子部35は、各波長選択フィルタ51〜55に対応する波長成分の反射光を、順に受光する。
【0038】
図9は、波長選択フィルタ34及び受光素子部35の構成の第2の例を示す図である。受光素子部35は、同一構造の受光素子部351〜355が並設された構成を有しており、受光素子部351,352,353,354,355の各受光面の前方に、波長選択フィルタ51,52,53,54,55がそれぞれ配置されている。分岐部32によって分岐された反射光は、図示しない追加の分岐部によって、受光素子部351〜355に向けてさらに分岐される。これにより、受光素子部35は、各波長選択フィルタ51〜55に対応する波長成分の反射光を、並行して受光する。
【0039】
図10は、材質分析部39Aの構成を示すブロック図である。材質分析部39Aは、反射率算出部91A、正規化指標算出部92A、二次微分値算出部93A、及び材質識別部94Aを有して構成されている。材質分析部39Aは、広角カメラ11Aによって撮影された撮影画像のうち、当該撮影画像内に含まれている移動物体に対応する画像領域に関して、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の各波長成分のスペクトルを検出する。そして、当該スペクトルの検出結果に基づいて、当該移動物体の材質を識別する。なお、図10には材質分析部39Aの構成を示したが、材質分析部39Bの構成もこれと同様である。
【0040】
図11は、監視装置3の全体動作を示すフローチャートである。以下、図11に示したフローチャートに従って、監視装置3の動作について詳細に説明する。
【0041】
ステップP11において、広角カメラ11A,11Bによって監視エリア4の全体が常時撮影される。
【0042】
図12は、広角カメラ11A,11Bによってそれぞれ撮影された撮影画像200A,200Bを示す図である。図12の(A)には、監視エリア4内に侵入者61〜63が侵入した状況を示しており、図12の(B)には、図12の(A)の状況を広角カメラ11Aによって撮影した撮影画像200Aを示しており、図12の(C)には、図12の(A)の状況を広角カメラ11Bによって撮影した撮影画像200Bを示している。広角カメラ11A,11Bは異なる方向から監視エリア4を撮影しているため、その視差に起因して、撮影画像200A,200B内における侵入者61〜63の位置は互いに異なっている。
【0043】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP12において、監視エリア4内に何等かの移動物体が含まれているか否かが判定される。具体的には、図5を参照して、広角カメラ11A,11Bによって撮影された撮影画像200A,200Bが、受光素子部33A,33Bから動体検出部36A,36Bにそれぞれ入力される。そして、動体検出部36A,36Bは、時系列に順次入力される連続画像間の差分に基づいて、撮影画像200A,200B内に移動物体が含まれているか否かをそれぞれ判定する。また、動体検出部36A,36Bは、移動物体が含まれている場合には、撮影画像200A,200Bの全体領域のうち、移動物体に対応する画像領域をそれぞれ特定する。図12の例においては、動体検出部36Aは画像領域71〜73を特定し、動体検出部36Bは画像領域74〜76を特定する。
【0044】
図11のフローチャートを参照して、監視エリア4内に移動物体が含まれていない場合(つまりステップP12の判定結果が「NO」である場合)は、ステップP11,P12動作が繰り返し実行される。一方、監視エリア4内に移動物体が含まれている場合(つまりステップP12の判定結果が「YES」である場合)は、次にステップP13において、移動物体の形状分析及びスペクトル分析が行われる。具体的には、図5を参照して、抽出部37Aは、動体検出部36Aが特定した画像領域71〜73を、可視域の撮影画像200Aから抽出し、抽出した画像領域71〜73を形状分析部38Aに入力する。また、抽出部37Aは、動体検出部36Aが特定した画像領域71〜73を、赤外域の撮影画像200Aから抽出し、抽出した画像領域71〜73を材質分析部39Aに入力する。
【0045】
形状分析部38Aは、各画像領域71,72に関して、人間の外見に関する複数のテンプレート画像(予め準備されて図示しない記憶部に記憶されている)を用いてパターンマッチングを行うことにより、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であるか否かをそれぞれ分析する。形状分析部38Aは、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であることの確度を示すパラメータ情報を、後段の識別部23Aに入力する。
【0046】
材質分析部39Aは、各画像領域71〜73に関して、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の波長成分のスペクトルを検出し、その検出結果に基づいて、各画像領域71〜73に含まれている移動物体の材質をそれぞれ分析する。
【0047】
以下、材質分析部39Aにおける処理の内容について詳細に説明する。上記の通り、受光素子部35Aを構成する各受光素子は、反射光の受光強度に応じた大きさの電気信号を出力する。材質分析部39Aには、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の各波長成分に関して、画像領域71〜73に属する受光素子から出力された電気信号が、受光素子部35Aから抽出部37Aを介して入力される。図10を参照して、当該電気信号は、反射率算出部91Aに入力される。
【0048】
反射率算出部91Aは、受光素子部35Aから入力された電気信号に基づいて、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の各波長成分に関する反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600を算出する。
【0049】
正規化指標算出部92Aは、反射率算出部91Aによって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600に基づいて、以下に示す式により定義される正規化指標ND1〜ND4を算出する。
ND1 : (R1500−R1300)/(R1500+R1300)
ND2 : (R1500−R1200)/(R1500+R1200)
ND3 : (R1600−R1300)/(R1600+R1300)
ND4 : (R1300−R1100)/(R1300+R1100)
【0050】
また、二次微分値算出部93Aは、上記反射率と波長との関数の二次微分値を算出する。本実施の形態では、二次微分値算出部93Aは、反射率算出部91Aによって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600に基づいて、以下に示す式により定義される近似的な二次微分値2ndder1,2ndder2を算出する。
2ndder1 :
[{(R1500−R1300)/(R1500+R1300)}/200]
−[{(R1300−R1200)/(R1300+R1200)}/100]
2ndder2 :
[{(R1500−R1200)/(R1500+R1200)}/300]
−[{(R1200−R1100)/(R1200+R1100)}/100]
【0051】
反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600、正規化指標ND1〜ND4、及び二次微分値2ndder1,2ndder2は、材質識別部94Aに入力される。
【0052】
材質識別部94Aは、入力されたこれらの情報に基づいて、対象物(つまり監視エリア4内に含まれている移動物体)の材質を識別する。
【0053】
図13,14は、材質識別部94Aによる材質の識別処理を示すフローチャートである。まずステップP21において材質識別部94Aは、各反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0であるか否かを判定する。例えば、反射率の値が所定値(例えば0.02)未満である場合にはその反射率は近似的に0であると判定し、反射率の値が当該所定値以上である場合にはその反射率は近似的に0でないと判定する。全ての反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0である場合(つまりステップP21における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内(この例では各画像領域71〜73内)に窓ガラスが存在すると判定する。
【0054】
一方、いずれかの反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0でない場合(つまりステップP21における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP22において材質識別部94Aは、二次微分値2ndder1に正規化指標ND1,ND3の和を乗じた値「2ndder1×(ND1+ND3)」が所定の閾値Th11未満であるか否かを判定する。
【0055】
「2ndder1×(ND1+ND3)」の値が閾値Th11以上である場合(つまりステップP22における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP23において材質識別部94Aは、正規化指標ND2の値が所定の閾値Th12より大きいか否かを判定する。
【0056】
正規化指標ND2の値が閾値Th12より大きい場合(つまりステップP23における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に動物又は布地が存在すると判定する。
【0057】
一方、正規化指標ND2の値が閾値Th12以下である場合(つまりステップP23における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP24において材質識別部94Aは、二次微分値2ndder2の値が所定の閾値Th13未満であるか否かを判定する。
【0058】
二次微分値2ndder2の値が閾値Th13未満である場合(つまりステップP24における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に植物が存在すると判定する。
【0059】
一方、二次微分値2ndder2の値が閾値Th13以上である場合(つまりステップP24における判定結果が「NO」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に人肌が存在すると判定する。
【0060】
上記ステップP22の判定において、「2ndder1×(ND1+ND3)」の値が閾値Th11以上である場合(つまりステップP22における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP25において材質識別部94Aは、正規化指標ND3の値が所定の閾値Th14未満であるか否かを判定する。
【0061】
正規化指標ND3の値が閾値Th14未満である場合(つまりステップP25における判定結果が「YES」である場合)には、次にステップP26において材質識別部94Aは、正規化指標ND4の値が所定の閾値Th15未満であるか否かを判定する。
【0062】
正規化指標ND4の値が閾値Th15未満である場合(つまりステップP26における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に金属が存在すると判定する。
【0063】
一方、正規化指標ND4の値が閾値Th15以上である場合(つまりステップP26における判定結果が「NO」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内にコンクリート又は石が存在すると判定する。
【0064】
上記ステップP25の判定において、正規化指標ND3の値が閾値Th14以上である場合(つまりステップP25における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP27において材質識別部94Aは、正規化指標ND2の値が所定の閾値Th16未満であるか否かを判定する。
【0065】
正規化指標ND2の値が閾値Th16未満である場合(つまりステップP27における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内にアスファルトが存在すると判定する。
【0066】
一方、正規化指標ND2の値が閾値Th16以上である場合(つまりステップP27における判定結果が「NO」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内にコンクリート又は石が存在すると判定する。
【0067】
なお、各閾値Th11〜Th16は、予め、金属や人肌等の既知の対象に対して測定領域を設定して材質識別部94Aによる上記識別フローを実施することにより、対象を正確に識別できる適切な値に設定される。
【0068】
以上の結果、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に人肌が存在すると判定した場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は人間であると識別する。一方、それ以外の場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は人間でないと識別する。例えば、解析対象範囲内に窓ガラス又は金属が存在すると判定した場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は車であると識別する。
【0069】
なお、監視エリア4への侵入者が覆面や手袋を着用することによって人肌が露出していない状況も想定される。そのため、人間のみが着用する化学繊維等の材質を検出可能な識別フローを設定することにより、解析対象範囲内に化学繊維が存在すると判定した場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は人間であると識別してもよい。また、ウール、綿、ナイロン、ポリエステル等の繊維の種別を検出可能な識別フローを設定することにより、人間が着用している衣服の材質を識別することもできる。
【0070】
図5を参照して、材質分析部39Aは、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であることの確度を示すパラメータ情報を、後段の識別部23Aに入力する。
【0071】
なお、以上の説明では広角カメラ11Aに対応する形状分析部38A及び材質分析部39Aにおける処理について説明したが、広角カメラ11Bに対応する形状分析部38B及び材質分析部39Bにおける処理もこれと同様であるため、重複した説明は省略する。
【0072】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP14において識別部23Aは、形状分析部38A及び材質分析部39Aからそれぞれ入力された、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であることの確度を示すパラメータ情報に基づいて、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であるか否かを識別する。例えば、形状分析部38A及び材質分析部39Aから入力されたパラメータ情報の双方の値が所定の閾値以上である場合に、各画像領域71〜73に含まれている移動物体は人間であると識別する。
【0073】
ここで、撮影画像200A内における各画像領域71〜73のサイズが小さい場合(特に、図7に示したように受光素子部35の空間分解能が低い場合)には、材質分析部39Aによる材質分析の精度が低下する可能性がある。そこで、識別部23Aは、撮影画像200A内における各画像領域71〜73のサイズが所定値より小さい場合には、材質分析部39Aから入力されたパラメータ情報よりも形状分析部38Aから入力されたパラメータ情報を重視して、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であるか否かを識別する。例えば、各画像領域71〜73のサイズが上記所定値未満である場合には、形状分析部38Aから入力されたパラメータ情報のみに基づいて識別を行い、各画像領域71,72のサイズが上記所定値以上である場合には、形状分析部38A及び材質分析部39Aの双方から入力されたパラメータ情報に基づいて識別を行う。
【0074】
なお、以上の説明では広角カメラ11Aに対応する識別部23Aにおける処理について説明したが、広角カメラ11Bに対応する識別部23Bにおける処理もこれと同様である。
【0075】
各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間でないと識別された場合(つまりステップP14の判定結果が「NO」である場合)は、ステップP11以降の動作が繰り返し実行される。一方、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間(つまり侵入者)であると識別された場合(つまりステップP14の判定結果が「YES」である場合)は、次にステップP15において特徴データ生成部24Aは、各画像領域71〜73に含まれている移動物体の特徴量を表す特徴データを生成する。例えば、各移動物体に関して、撮影画像200A内における行方向及び列方向の位置座標、前フレームからの位置の変化量、及び、材質分析部39Aによって画素毎に求めた材質情報等をパラメータとして記述した特徴データを生成する。画素毎の材質情報を記述することにより、侵入者が着用している衣服の材質に関する情報を、特徴データに含めることができる。特徴データ生成部24Aによって生成された各移動物体に関する特徴データは、データ処理部40に入力される。
【0076】
なお、以上の説明では広角カメラ11Aに対応する特徴データ生成部24Aにおける処理について説明したが、広角カメラ11Bに対応する特徴データ生成部24Bにおける処理もこれと同様である。特徴データ生成部24Aによって生成された、各画像領域74〜76に含まれている移動物体に関する特徴データは、特徴データ生成部24Bからデータ処理部40に入力される。
【0077】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP16において個別対象特定部42は、特徴データ生成部24A,24Bからそれぞれ入力された特徴データに基づいて、各撮影画像200A,200B内に含まれている移動物体を個々に特定する。例えば、侵入者61が覆面を着用しており、侵入者62,63が覆面を着用していない場合には、侵入者61の顔部分の材質は繊維となる一方、侵入者62,63の顔部分の材質は人肌となる。従って、個別対象特定部42は、顔部分の材質の相違に基づいて、侵入者61と侵入者62,63とを区別することができる。また、侵入者62と侵入者63とで着用している衣服の材質が異なる場合には、各侵入者62,63の体部分の材質が互いに異なる。従って、個別対象特定部42は、体部分の材質の相違に基づいて、侵入者62,63を個々に区別することができる。本実施の形態では、個別対象特定部42は、画像領域71に対応する特徴データに基づいて侵入者61を特定し、画像領域72に対応する特徴データに基づいて侵入者62を特定し、画像領域73に対応する特徴データに基づいて侵入者63を特定する。同様に、個別対象特定部42は、画像領域74に対応する特徴データに基づいて侵入者61を特定し、画像領域75に対応する特徴データに基づいて侵入者62を特定し、画像領域76に対応する特徴データに基づいて侵入者63を特定する。
【0078】
また、ステップP16において同一対象特定部41は、特徴データ生成部24A,24Bからそれぞれ入力された特徴データに基づいて、撮影画像200A,200B内に含まれている同一対象の移動物体を特定する。本実施の形態では、同一対象特定部41は、撮影画像200Aの画像領域71に含まれている人間と、撮影画像200Bの画像領域74に含まれている人間とが同一対象(侵入者61)であると特定し、撮影画像200Aの画像領域72に含まれている人間と、撮影画像200Bの画像領域75に含まれている人間とが同一対象(侵入者62)であると特定し、撮影画像200Aの画像領域73に含まれている人間と、撮影画像200Bの画像領域76に含まれている人間とが同一対象(侵入者63)であると特定する。
【0079】
次にステップP17において位置特定部43は、広角カメラ11A,11B間の距離、及び、撮影画像200A,200B内における同一対象の画像領域71,74の位置関係に基づいて、監視エリア4内における侵入者61の位置を特定する。同様に、位置特定部43は、広角カメラ11A,11B間の距離、及び、撮影画像200A,200B内における同一対象の画像領域72,75の位置関係に基づいて、監視エリア4内における侵入者62の位置を特定する。同様に、位置特定部43は、広角カメラ11A,11B間の距離、及び、撮影画像200A,200B内における同一対象の画像領域73,76の位置関係に基づいて、監視エリア4内における侵入者63の位置を特定する。
【0080】
また、ステップP17において位置特定部43は、監視エリア4内における各侵入者61〜63の位置を示す位置情報マップを作成する。図16は、位置特定部43によって作成された位置情報マップ250の一例を示す図である。監視エリア4内における侵入者61,62,63の位置をそれぞれ示す図形81,82,83が、監視エリア4に対応する平面マップ上に表示されている。また、位置情報マップ250においては、監視エリア4の中でも特に重点的な監視を要するエリア(例えば通信基地局1の建屋への出入り口に近いエリア)が、重点監視エリア80として設定されている。重点監視エリア80は、監視エリア4内において予め任意に設定することが可能である。図16の例では、侵入者61に対応する図形81は重点監視エリア80内に含まれており、侵入者62,63にそれぞれ対応する図形82,83は重点監視エリア80外に含まれている。
【0081】
なお、本実施の形態では、フェンス2を乗り越えて通信基地局1へ侵入しようとする侵入者を監視する用途での監視装置3の使用を想定しており、フェンス2を乗り越える際の高さ方向の移動量をも考慮する必要がある。二つの広角カメラ11A,11Bを用いてステレオカメラを構成しているため、高さ方向を含め侵入者の位置、侵入者までの距離を特定できる。しかし、必ずしもステレオカメラを用いる必要はなく、一つの広角カメラのみを用いてもよい。
【0082】
次にステップP18において、位置特定部43によって特定された移動物体の位置を視野の中心として、望遠カメラ12Aによる撮影を行う。望遠カメラ12Aは、監視エリア4内に含まれている侵入者61〜63のうち、最も重要度の高い侵入者を撮影する。図16に例示した位置情報マップ250においては、重点監視エリア80内に含まれている侵入者61の重要度が、重点監視エリア80外に含まれている侵入者62,63の重要度よりも高く設定されることにより、望遠カメラ12Aによって侵入者61が撮影される。監視エリア4内における侵入者61の位置を示す情報が位置特定部43から望遠カメラ12Aに通知され、望遠カメラ12Aは、通知された位置を撮影する。ここで、重点監視エリア80内に複数の侵入者が含まれている場合には、望遠カメラ12Aは、当該複数の侵入者を所定の時間間隔で交互に撮影する。
【0083】
なお、重要度の設定手法は、上記の例に限らず任意である。例えば、監視エリア4内に侵入した時刻が新しい(又は古い)侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。あるいは、移動速度が大きい侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。あるいは、通信基地局1の出入り口に向かって近付く方向に移動する速度成分が大きい侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。あるいは、通信基地局1の出入り口との距離が短い侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。また、これらの要素を任意に組み合わせることによって重要度を設定してもよい。
【0084】
図15は、望遠カメラ12Aによって侵入者61を撮影した拡大画像300を示す図である。拡大画像300は、ハードディスク又は半導体メモリ等の任意の記録媒体に記録されるとともに、図2に示した表示装置6に表示される。
【0085】
また、ステップP18において、位置特定部43によって特定された移動物体の位置を視野の中心として、望遠カメラ12Bによる撮影を行う。望遠カメラ12Bは、監視エリア4内に含まれている侵入者61〜63のうち、二番目に重要度の高い侵入者を撮影する。図16に例示した位置情報マップ250においては、侵入者62,63のうち重点監視エリア80に近い侵入者63の重要度が、侵入者62の重要度よりも高く設定されることにより、望遠カメラ12Bによって侵入者63が撮影される。監視エリア4内における侵入者63の位置を示す情報が位置特定部43から望遠カメラ12Bに通知され、望遠カメラ12Bは、通知された位置を撮影する。なお、望遠カメラ12Bは、侵入者62,63を所定の時間間隔で交互に撮影してもよい。望遠カメラ12Bによって撮影された拡大画像は、ハードディスク又は半導体メモリ等の任意の記録媒体に記録されるとともに、図2に示した表示装置6に表示される。
【0086】
また、監視装置3は、望遠カメラ12A,12Bによる侵入者61〜63の撮影を行うととともに、音又は光等によって侵入者61〜63に対して所定の警告を行う。
【0087】
また、侵入者61〜63が監視エリア4内で移動する場合には、時系列に並ぶ複数の撮影画像200A内において、画像領域71〜73の位置が変化する。追跡処理部44は、特徴データが一致又は近似する画像領域を、連続する撮影画像200A内で探索することにより、侵入者61〜63の移動に伴う画像領域71〜73の位置変化を追跡する。同様に、追跡処理部44は、特徴データが一致又は近似する画像領域を、連続する撮影画像200B内で探索することにより、侵入者61〜63の移動に伴う画像領域74〜76の位置変化を追跡する。これにより、望遠カメラ12A,12Bによって侵入者61〜63を自動追跡して撮影することができる。
【0088】
図17は、表示装置6に表示される画像の一例を示す図である。表示装置6の表示画面は四つの領域151,152,153,154に分割されている。領域151には、広角カメラ11Aによって撮影された、監視エリア4の全体画像が表示される。領域152には、望遠カメラ12Aによって撮影された、侵入者61の拡大画像が表示される。
【0089】
領域153には、望遠カメラ12Bによって撮影された、侵入者63の拡大画像が表示される。領域154には、位置特定部43によって作成された位置情報マップ250が表示される。位置表示マップ250においては、望遠カメラ12Aによって現在撮影している監視エリア4内の位置を示す図形85と、望遠カメラ12Bによって現在撮影している監視エリア4内の位置を示す図形86とが、併せて表示される。
【0090】
また、領域153においては、望遠カメラ12Bが自動追跡モードであることを示す情報(及び手動撮影モードに切換可能であることを示す情報)と、手動撮影モードに切り換える際にオペレータによって選択される選択ボタン88とが、併せて表示される。表示装置6はタッチパネルとしての機能を有しており、オペレータが選択ボタン88にタッチすることによって、望遠カメラ12Bは、二番目に重要度の高い侵入者を自動追跡して撮影する自動撮影モードから、オペレータの遠隔操作による手動撮影モードに切り換えられる。手動撮影モードにおいて、オペレータは、図2に示した操作部7を用いて望遠カメラ12Bのパンチルト機能及びズーム機能を遠隔操作することができ、これにより、監視エリア4内の所望箇所を望遠カメラ12Bによって撮影することができる。例えば、自動追跡モードの望遠カメラ12Bが侵入者63を撮影している状況において、侵入者63ではなく侵入者62を撮影したい場合には、オペレータは望遠カメラ12Bを手動撮影モードに切り換えた後、領域154に表示されている位置情報マップ250を参照しながら操作部7を用いて撮影位置を指定することにより、望遠カメラ12Bによって侵入者62を撮影することができる。
【0091】
図18は、表示装置6に表示される画像の他の例を示す図である。領域153には、手動撮影モードの望遠カメラ12Bによって撮影された、侵入者62の拡大画像が表示される。また、望遠カメラ12Bの撮影モードが自動追跡モードから手動撮影モードに切り換えられたことにより、領域153には、望遠カメラ12Bが手動撮影モードであることを示す情報(及び自動追跡モードに切換可能であることを示す情報)と、自動追跡モードに切り換える際にオペレータによって選択される選択ボタン89とが、併せて表示される。
【0092】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP19において、侵入者61〜63が監視エリア4から去ったか否かが判定される。侵入者61〜63が監視エリア4内に滞在している場合(つまりステップP19の判定結果が「NO」である場合)は、ステップP16以降の動作が繰り返される。一方、侵入者61〜63が監視エリア4から去った場合(つまりステップP19の判定結果が「YES」である場合)は、ステップP11以降の動作が繰り返される。
【0093】
なお、侵入者の自動追跡のための望遠カメラ12A,12Bの駆動制御は、図3に示した制御部13によって行われる。但し、追跡のための所定の制御プログラムを格納したFPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)を望遠カメラ12A,12B内に実装することにより、望遠カメラ12A,12B自らの制御によって侵入者の追跡を行ってもよい。
【0094】
また、図17,18の例では、表示装置6の表示画面が四分割表示されたが、四つの表示装置の各々の表示画面に各画像を全面表示してもよい。
【0095】
図19は、通信基地局1に複数の監視装置3が設置された状況を示す図である。通信基地局1の建屋の外周に沿って、監視装置3A〜3Dが設置されている。監視装置3A,3B,3C,3Dは、それぞれ監視エリア4A,4B,4C,4Dを監視する。監視装置3A〜3Dは、通信基地局1内に構築された通信ネットワーク160に接続されている。通信ネットワーク160には、監視装置3A〜3Dを統括して制御する制御装置161が接続されている。
【0096】
例えば、通信基地局1の敷地外から監視エリア4Aに侵入した侵入者が、監視エリア4Aから監視エリア4Bに移動した場合を想定する。この場合、まず監視装置3Aによって侵入者が撮影されることにより、監視装置3Aが備える特徴データ生成部24によって侵入者に関する特徴データが生成される。当該特徴データは、監視装置3Aから制御装置161に通知される。侵入者が監視エリア4Aから監視エリア4Bに移動すると、次に監視装置3Bによって侵入者が撮影されることにより、監視装置3Bが備える特徴データ生成部24によって侵入者に関する特徴データが生成される。当該特徴データは、監視装置3Bから制御装置161に通知される。制御装置161は、監視装置3Aから通知された特徴データと、監視装置3Bから通知された特徴データとを比較し、両特徴データが一致(又は近似)している場合には、監視装置3A,3Bによって撮影された侵入者は同一人物であると特定する。そして、監視装置3Aが備える望遠カメラ12Aが行っていた侵入者の自動追跡を、監視装置3Bが備える望遠カメラ12Aによって引き継ぐよう、監視装置3Bに対して追跡命令を入力する。これにより、監視エリア4A,4Bを跨ぐ侵入者の自動追跡が行われる。
【0097】
このように本実施の形態に係る監視システム5(及び監視装置3)によれば、望遠カメラ12Aは、広角カメラ11によって撮影された撮影画像内に侵入者が含まれている場合に、当該侵入者を自動追跡して撮影することにより、当該侵入者の拡大画像300を取得して表示装置6に表示する。このように、監視エリア4への侵入者を望遠カメラ12Aによって自動追跡して撮影することにより、侵入者の拡大画像300を漏れなく撮影することが可能となる。また、望遠カメラ12Bは、オペレータによって遠隔操作されることにより、監視エリア4内の所望箇所の画像を取得して表示装置6に表示する。従って、複数の侵入者が同時に監視エリア4に侵入した場合であっても、望遠カメラ12Aによって撮影している侵入者とは異なる侵入者を望遠カメラ12Bによって撮影することができる。その結果、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0098】
また、本実施の形態に係る監視システム5によれば、望遠カメラ12Bは、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影(手動撮影モード)と、自動追跡による侵入者の撮影(自動追跡モード)とを切り換え可能である。従って、複数の侵入者が同時に監視エリア4に侵入した場合に、望遠カメラ12A,12Bを用いて複数の侵入者を自動追跡して撮影するという動作と、望遠カメラ12Aによって侵入者を自動追跡して撮影しつつ、望遠カメラ12Bによって他の所望の侵入者を撮影するという動作とを切り換えることができるため、ユーザの利便性を向上することができる。
【0099】
また、本実施の形態に係る監視システムに5よれば、望遠カメラ12Aによって撮影されている監視エリア4内の位置と、望遠カメラ12Bによって撮影されている監視エリア4内の位置と、監視エリア4内における侵入者の位置と、を示す位置情報マップ250が、表示装置6に表示される。従って、オペレータは、当該位置情報マップ250に基づいて、手動撮影モードの望遠カメラ12Bによって次に撮影すべき侵入者を容易に特定することができるため、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0100】
また、本実施の形態に係る監視システム5によれば、材質分析部39Aは、撮影画像200Aのうち移動物体に対応する画像領域71〜73に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて移動物体の材質を分析する。従って、材質分析の結果、移動物体に対応する画像領域71〜73内に人肌や化学繊維等が含まれている場合には、その移動物体は人間であると識別することができる。その結果、所定の監視エリア4内に移動物体が含まれている場合に、その移動物体が人間であるかそれ以外の動物等であるかを正確に識別することが可能となる。また、特徴データ生成部24Aは、材質分析部39Aによって分析された移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成する。そして、追跡処理部44は、当該特徴データに基づいて移動物体の自動追跡を行う。従って、監視エリア4内で移動する個々の移動物体を、各移動物体に関する特徴データに基づいて正確に追跡することができる。
【0101】
また、本実施の形態に係る監視システム5によれば、図19に示したように、各移動物体に関する特徴データに基づくことにより、異なる監視エリア4A〜4Dを跨ぐ移動物体の自動追跡を正確に行うことが可能となる。
【0102】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
3,3A〜3D 監視装置
4,4A〜4D 監視エリア
5 監視システム
6 表示装置
11A,11B 広角カメラ
12A,12B 望遠カメラ
21 撮影部
22 分析部
23,23A,23B 識別部
24,24A,24B 特徴データ生成部
39A,39B 材質分析部
43 位置特定部
44 追跡処理部
250 位置情報マップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システム及び監視装置に関し、特に、所定の監視エリアへの侵入者を監視するための監視システム及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラによって所定の監視エリアを撮影することにより、監視エリアへの侵入者を監視する監視装置が広く実用化されている。このような監視装置においては、一般的に、監視カメラによって撮影した監視エリアの映像をモニタに表示し、表示された映像を監視者が目視することによって、監視エリアへの侵入者が監視される。
【0003】
下記特許文献1には、パンチルト機能及びズーム機能が搭載された監視カメラが開示されている。当該監視カメラは、動体を検出すると、その動体の大きさ及び動きベクトルに基づいて、ズームレンズの画角の調整を行うとともに、パンチルタによる撮影範囲の調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4293236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モニタの表示映像を監視者が目視することによる侵入者の監視では、監視者は常にモニタを注視しているとは限らないため、監視者が侵入者を見落とす可能性がある。特に、施設の周囲に複数の監視カメラが設置されており、複数の監視カメラの映像を一人の監視者によって監視する場合等においては、監視者が侵入者を見落とす可能性は高まる。
【0006】
また、上記特許文献1に開示された監視カメラによると、パンチルト制御及びズーム制御によって侵入者を自動追跡して撮影することは可能であるが、監視エリア内に複数の侵入者が同時に侵入した場合の対策が施されていないため、複数の侵入者の全員を漏れなく撮影することは不可能である。例えば、監視エリア内に二人の侵入者が同時に侵入した場合において、監視カメラによって一方の侵入者に対する自動追跡撮影が開始されると、他方の侵入者の撮影が行われない。従って、監視カメラの機能としては不十分である。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、監視エリアへの侵入者を自動追跡して撮影可能であるとともに、複数の侵入者が同時に侵入した場合であっても、当該複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能な、監視システム及び監視装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る監視システムは、監視装置と、表示装置と、を備え、前記監視装置は、所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得して前記表示装置に表示する、第2の撮影手段と、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得して前記表示装置に表示可能な、第3の撮影手段と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
第1の態様に係る監視システムによれば、第2の撮影手段は、第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得して表示装置に表示する。このように、監視エリアへの侵入者を第2の撮影手段によって自動追跡して撮影することにより、侵入者の拡大画像を漏れなく撮影することが可能となる。また、第3の撮影手段は、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、監視エリア内の所望箇所の画像を取得して表示装置に表示する。従って、複数の侵入者が同時に監視エリアに侵入した場合であっても、第2の撮影手段によって撮影している侵入者とは異なる侵入者を第3の撮影手段によって撮影することができる。その結果、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る監視システムは、第1の態様に係る監視システムにおいて特に、前記第3の撮影手段は、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影と、自動追跡による移動物体の撮影とを切り換え可能であることを特徴とするものである。
【0011】
第2の態様に係る監視システムによれば、第3の撮影手段は、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影と、自動追跡による移動物体の撮影とを切り換え可能である。従って、複数の侵入者が同時に監視エリアに侵入した場合に、第2及び第3の撮影手段を用いて複数の侵入者を自動追跡して撮影するという動作と、第2の撮影手段によって侵入者を自動追跡して撮影しつつ、第3の撮影手段によって他の所望の侵入者を撮影するという動作とを切り換えることができるため、ユーザの利便性を向上することができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る監視システムは、第1又は第2の態様に係る監視システムにおいて特に、前記第2の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記第3の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記監視エリア内における前記移動物体の位置と、を示す位置情報が、前記表示装置にさらに表示されることを特徴とするものである。
【0013】
第3の態様に係る監視システムによれば、第2の撮影手段によって撮影されている監視エリア内の位置と、第3の撮影手段によって撮影されている監視エリア内の位置と、監視エリア内における移動物体の位置と、を示す位置情報が、表示装置に表示される。従って、オペレータは、当該位置情報に基づいて、第3の撮影手段によって次に撮影すべき侵入者を容易に特定することができるため、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る監視システムは、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る監視システムにおいて特に、前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該撮影画像のうち当該移動物体に対応する画像領域に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて前記移動物体の材質を分析する材質分析手段と、前記移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成するデータ生成手段と、をさらに備え、前記特徴データに基づいて前記移動物体の自動追跡が行われることを特徴とするものである。
【0015】
第4の態様に係る監視システムによれば、材質分析手段は、撮影画像のうち移動物体に対応する画像領域に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて移動物体の材質を分析する。従って、材質分析の結果、移動物体に対応する画像領域内に人肌や化学繊維等が含まれている場合には、その移動物体は人間であると識別することができる。その結果、所定の監視エリア内に移動物体が含まれている場合に、その移動物体が人間であるかそれ以外の動物等であるかを正確に識別することが可能となる。また、データ生成手段は、材質分析手段によって分析された移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成する。そして、当該特徴データに基づいて移動物体の自動追跡が行われる。従って、監視エリア内で移動する個々の移動物体を、各移動物体に関する特徴データに基づいて正確に追跡することができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る監視システムは、第4の態様に係る監視システムにおいて特に、複数の前記監視装置によって複数の前記監視エリアが撮影され、前記特徴データに基づいて、異なる監視エリアを跨ぐ前記移動物体の自動追跡が行われることを特徴とするものである。
【0017】
第5の態様に係る監視システムによれば、各移動物体に関する特徴データに基づくことにより、異なる監視エリアを跨ぐ移動物体の自動追跡を正確に行うことが可能となる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る監視装置は、所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得する、第2の撮影手段と、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得する、第3の撮影手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0019】
第6の態様に係る監視装置によれば、第2の撮影手段は、第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得する。このように、監視エリアへの侵入者を第2の撮影手段によって自動追跡して撮影することにより、侵入者の拡大画像を漏れなく撮影することが可能となる。また、第3の撮影手段は、オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、監視エリア内の所望箇所の画像を取得する。従って、複数の侵入者が同時に監視エリアに侵入した場合であっても、第2の撮影手段によって撮影している侵入者とは異なる侵入者を第3の撮影手段によって撮影することができる。その結果、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、監視エリアへの侵入者を自動追跡して撮影可能であるとともに、複数の侵入者が同時に侵入した場合であっても、当該複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能な、監視システム及び監視装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る監視装置の使用状況の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る監視システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図3】監視装置の外観を模式的に示す図である。
【図4】監視装置の機能を概略的に示すブロック図である。
【図5】図4に示した各部の構成を具体的に示す図である。
【図6】受光素子部の構成の第1の例を示す図である。
【図7】受光素子部の構成の第2の例を示す図である。
【図8】波長選択フィルタ及び受光素子部の構成の第1の例を示す図である。
【図9】波長選択フィルタ及び受光素子部の構成の第2の例を示す図である。
【図10】材質分析部の構成を示すブロック図である。
【図11】監視装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図12】広角カメラによってそれぞれ撮影された撮影画像を示す図である。
【図13】材質識別部による材質の識別処理を示すフローチャートである。
【図14】材質識別部による材質の識別処理を示すフローチャートである。
【図15】望遠カメラによって侵入者を撮影した拡大画像を示す図である。
【図16】位置特定部によって作成された位置情報マップの一例を示す図である。
【図17】表示装置に表示される画像の一例を示す図である。
【図18】表示装置に表示される画像の他の例を示す図である。
【図19】通信基地局に複数の監視装置が設置された状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る監視装置3の使用状況の一例を示す図である。通信基地局1が山中に設置されており、通信基地局1の周囲はフェンス2で取り囲まれている。この例において、監視装置3は、所定の撮影エリアとして、フェンス2を含む監視エリア4を撮影することにより、フェンス2を乗り越えて通信基地局1へ侵入しようとする侵入者を監視する用途で使用される。なお、図1の例では通信基地局1に一つの監視装置3のみが設置されているが、後述の図19に示すように、通信基地局1の周囲を死角無く監視するために、複数の監視装置3A〜3Dが設置されてもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係る監視システム5の全体構成を概略的に示す図である。監視システム5は、監視装置3と、監視装置3によって撮影された画像を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置6とを備えている。表示装置6は、遠隔地の監視センタ内(又は通信基地局1内)に設置されており、表示装置6に表示された画像はオペレータ(監視者)によって目視可能である。また、監視センタ内には、監視装置3を遠隔操作するためにオペレータが操作可能な操作部7が設置されている。
【0025】
図3は、監視装置3の外観を模式的に示す図である。ステレオカメラとして機能する一対の広角カメラ11A,11Bと、望遠カメラ12A,12Bと、制御装置13とが、フレーム10に取り付けられている。広角カメラ11A,11Bは、監視エリア4の全体を撮影可能なように、視野が固定されている。望遠カメラ12A,12Bは、例えば、パンチルト機能及びズーム機能を搭載したPTZカメラである。広角カメラ11A,11B及び望遠カメラ12A,12Bは、対象物からの太陽光の反射光を受光することによって対象物を撮影する。但し、監視装置3においては、夜間における撮影をも可能とすべく、ハロゲン光又は赤外光を監視エリア4に向けて照射する光照射器を備えてもよい。
【0026】
図4は、監視装置3の機能を概略的に示すブロック図である。監視装置3は、撮影部21、分析部22、識別部23、特徴データ生成部24、及びデータ処理部40を備えている。撮影部21は、図3に示した広角カメラ11A,11B及び望遠カメラ12A,12Bを有している。また、図5は、図4に示した各部の構成を具体的に示す図である。
【0027】
図4,5を参照して、撮影部21は、広角カメラ11Aに対応する光学系31A、分岐部32A、受光素子部33A、波長選択フィルタ34A、及び受光素子部35Aを有しており、また、広角カメラ11Bに対応する光学系31B、分岐部32B、受光素子部33B、波長選択フィルタ34B、及び受光素子部35Bを有している。なお、以下の説明では、広角カメラ11A,11Bを総称して「広角カメラ11」と称し、光学系31A,31Bを総称して「光学系31」と称し、分岐部32A,32Bを総称して「分岐部32」と称し、受光素子部33A,33Bを総称して「受光素子部33」と称し、波長選択フィルタ34A,34Bを総称して「波長選択フィルタ34」と称し、受光素子部35A,35Bを総称して「受光素子部35」と称する。
【0028】
分析部22は、広角カメラ11Aに対応する動体検出部36A、抽出部37A、形状分析部38A、及び材質分析部39Aと、広角カメラ11Bに対応する動体検出部36B、抽出部37B、形状分析部38B、及び材質分析部39Bとを有している。
【0029】
識別部23は、広角カメラ11Aに対応する識別部23Aと、広角カメラ11Bに対応する識別部23Bとを有している。
【0030】
特徴データ生成部24は、広角カメラ11Aに対応する特徴データ生成部24Aと、広角カメラ11Bに対応する特徴データ生成部24Bとを有している。
【0031】
データ処理部40は、同一対象特定部41、個別対象特定部42、位置特定部43、及び追跡処理部44を有している。
【0032】
図6は、受光素子部33,35の構成の第1の例を示す図である。図6の(A)には受光素子部33の構成を示しており、図6の(B)には受光素子部35の構成を示している。受光素子部33は、CCD等の複数の受光素子が行列状に配列された構成を有している。受光素子部35は、InGaAs等を用いた複数の受光素子が行列状に配列された構成を有している。図6の例では、受光素子部33の画素数と受光素子部35の画素数とは互いに等しく、受光素子部33,35の各画素は一対一に対応する。つまり、受光素子部33,35の空間分解能は互いに等しい。
【0033】
図7は、受光素子部33,35の構成の第2の例を示す図である。図6と同様に、図7の(A)には受光素子部33の構成を示しており、図7の(B)には受光素子部35の構成を示している。図7の例では、後述する材質分析部39A,39Bにおける演算処理の負荷を低減すべく、受光素子部35の画素数は受光素子部33の画素数より少なく設定されている。つまり、受光素子部35の空間分解能は受光素子部33の空間分解能より低い。
【0034】
図5を参照して、対象物からの反射光は、光学系31によって受光素子部33上に導光される。受光素子部33を構成する各受光素子は、可視光の波長域における反射光の受光強度に応じた大きさの電気信号を出力する。また、広角カメラ11によって撮影された画像は、図2に示した表示装置6に表示される。
【0035】
分岐部32は、プリズム又はハーフミラー等であり、光学系31と受光素子部33との間に配置されている。光学系31から受光素子部33に向かう反射光は、分岐部32によって受光素子部35に向けて分岐される。分岐された反射光は、波長選択フィルタ34を介して受光素子部35上に導光される。受光素子部35を構成する各受光素子は、赤外光の波長域における反射光の受光強度に応じた大きさの電気信号を出力する。
【0036】
なお、分岐部32の構成としては、固定のプリズム又はハーフミラー等を用いる構成の代わりに、挿退可能な反射鏡を光学系31と受光素子部33との間に配置する構成としてもよい。第1のタイミングにおいて、光学系31と受光素子部33との間の光路上から上記反射鏡を退避させる。これにより、対象物からの反射光が受光素子部33上に導光される。また、第2のタイミングにおいて、光学系31と受光素子部33との間の光路上に上記反射鏡を挿入する。光学系31から受光素子部33に向かう反射光は、反射鏡によって受光素子部35に向けて反射される。これにより、対象物からの反射光が受光素子部35上に導光される。上記第1及び第2のタイミングは、所定の微小時間間隔で交互に繰り返される。
【0037】
図8は、波長選択フィルタ34及び受光素子部35の構成の第1の例を示す図である。波長選択フィルタ34は、それぞれが受光素子部35の受光面に略等しい大きさの5枚の波長選択フィルタ51〜55を有している。波長選択フィルタ51,52,53,54,55は、分岐部32から入射された反射光のうち、それぞれ1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の波長成分のみを透過する。波長選択フィルタ51〜55は、受光素子部35の受光面の前方に順に挿入される。これにより、受光素子部35は、各波長選択フィルタ51〜55に対応する波長成分の反射光を、順に受光する。
【0038】
図9は、波長選択フィルタ34及び受光素子部35の構成の第2の例を示す図である。受光素子部35は、同一構造の受光素子部351〜355が並設された構成を有しており、受光素子部351,352,353,354,355の各受光面の前方に、波長選択フィルタ51,52,53,54,55がそれぞれ配置されている。分岐部32によって分岐された反射光は、図示しない追加の分岐部によって、受光素子部351〜355に向けてさらに分岐される。これにより、受光素子部35は、各波長選択フィルタ51〜55に対応する波長成分の反射光を、並行して受光する。
【0039】
図10は、材質分析部39Aの構成を示すブロック図である。材質分析部39Aは、反射率算出部91A、正規化指標算出部92A、二次微分値算出部93A、及び材質識別部94Aを有して構成されている。材質分析部39Aは、広角カメラ11Aによって撮影された撮影画像のうち、当該撮影画像内に含まれている移動物体に対応する画像領域に関して、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の各波長成分のスペクトルを検出する。そして、当該スペクトルの検出結果に基づいて、当該移動物体の材質を識別する。なお、図10には材質分析部39Aの構成を示したが、材質分析部39Bの構成もこれと同様である。
【0040】
図11は、監視装置3の全体動作を示すフローチャートである。以下、図11に示したフローチャートに従って、監視装置3の動作について詳細に説明する。
【0041】
ステップP11において、広角カメラ11A,11Bによって監視エリア4の全体が常時撮影される。
【0042】
図12は、広角カメラ11A,11Bによってそれぞれ撮影された撮影画像200A,200Bを示す図である。図12の(A)には、監視エリア4内に侵入者61〜63が侵入した状況を示しており、図12の(B)には、図12の(A)の状況を広角カメラ11Aによって撮影した撮影画像200Aを示しており、図12の(C)には、図12の(A)の状況を広角カメラ11Bによって撮影した撮影画像200Bを示している。広角カメラ11A,11Bは異なる方向から監視エリア4を撮影しているため、その視差に起因して、撮影画像200A,200B内における侵入者61〜63の位置は互いに異なっている。
【0043】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP12において、監視エリア4内に何等かの移動物体が含まれているか否かが判定される。具体的には、図5を参照して、広角カメラ11A,11Bによって撮影された撮影画像200A,200Bが、受光素子部33A,33Bから動体検出部36A,36Bにそれぞれ入力される。そして、動体検出部36A,36Bは、時系列に順次入力される連続画像間の差分に基づいて、撮影画像200A,200B内に移動物体が含まれているか否かをそれぞれ判定する。また、動体検出部36A,36Bは、移動物体が含まれている場合には、撮影画像200A,200Bの全体領域のうち、移動物体に対応する画像領域をそれぞれ特定する。図12の例においては、動体検出部36Aは画像領域71〜73を特定し、動体検出部36Bは画像領域74〜76を特定する。
【0044】
図11のフローチャートを参照して、監視エリア4内に移動物体が含まれていない場合(つまりステップP12の判定結果が「NO」である場合)は、ステップP11,P12動作が繰り返し実行される。一方、監視エリア4内に移動物体が含まれている場合(つまりステップP12の判定結果が「YES」である場合)は、次にステップP13において、移動物体の形状分析及びスペクトル分析が行われる。具体的には、図5を参照して、抽出部37Aは、動体検出部36Aが特定した画像領域71〜73を、可視域の撮影画像200Aから抽出し、抽出した画像領域71〜73を形状分析部38Aに入力する。また、抽出部37Aは、動体検出部36Aが特定した画像領域71〜73を、赤外域の撮影画像200Aから抽出し、抽出した画像領域71〜73を材質分析部39Aに入力する。
【0045】
形状分析部38Aは、各画像領域71,72に関して、人間の外見に関する複数のテンプレート画像(予め準備されて図示しない記憶部に記憶されている)を用いてパターンマッチングを行うことにより、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であるか否かをそれぞれ分析する。形状分析部38Aは、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であることの確度を示すパラメータ情報を、後段の識別部23Aに入力する。
【0046】
材質分析部39Aは、各画像領域71〜73に関して、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の波長成分のスペクトルを検出し、その検出結果に基づいて、各画像領域71〜73に含まれている移動物体の材質をそれぞれ分析する。
【0047】
以下、材質分析部39Aにおける処理の内容について詳細に説明する。上記の通り、受光素子部35Aを構成する各受光素子は、反射光の受光強度に応じた大きさの電気信号を出力する。材質分析部39Aには、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の各波長成分に関して、画像領域71〜73に属する受光素子から出力された電気信号が、受光素子部35Aから抽出部37Aを介して入力される。図10を参照して、当該電気信号は、反射率算出部91Aに入力される。
【0048】
反射率算出部91Aは、受光素子部35Aから入力された電気信号に基づいて、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、及び1600nm帯の各波長成分に関する反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600を算出する。
【0049】
正規化指標算出部92Aは、反射率算出部91Aによって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600に基づいて、以下に示す式により定義される正規化指標ND1〜ND4を算出する。
ND1 : (R1500−R1300)/(R1500+R1300)
ND2 : (R1500−R1200)/(R1500+R1200)
ND3 : (R1600−R1300)/(R1600+R1300)
ND4 : (R1300−R1100)/(R1300+R1100)
【0050】
また、二次微分値算出部93Aは、上記反射率と波長との関数の二次微分値を算出する。本実施の形態では、二次微分値算出部93Aは、反射率算出部91Aによって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600に基づいて、以下に示す式により定義される近似的な二次微分値2ndder1,2ndder2を算出する。
2ndder1 :
[{(R1500−R1300)/(R1500+R1300)}/200]
−[{(R1300−R1200)/(R1300+R1200)}/100]
2ndder2 :
[{(R1500−R1200)/(R1500+R1200)}/300]
−[{(R1200−R1100)/(R1200+R1100)}/100]
【0051】
反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600、正規化指標ND1〜ND4、及び二次微分値2ndder1,2ndder2は、材質識別部94Aに入力される。
【0052】
材質識別部94Aは、入力されたこれらの情報に基づいて、対象物(つまり監視エリア4内に含まれている移動物体)の材質を識別する。
【0053】
図13,14は、材質識別部94Aによる材質の識別処理を示すフローチャートである。まずステップP21において材質識別部94Aは、各反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0であるか否かを判定する。例えば、反射率の値が所定値(例えば0.02)未満である場合にはその反射率は近似的に0であると判定し、反射率の値が当該所定値以上である場合にはその反射率は近似的に0でないと判定する。全ての反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0である場合(つまりステップP21における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内(この例では各画像領域71〜73内)に窓ガラスが存在すると判定する。
【0054】
一方、いずれかの反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0でない場合(つまりステップP21における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP22において材質識別部94Aは、二次微分値2ndder1に正規化指標ND1,ND3の和を乗じた値「2ndder1×(ND1+ND3)」が所定の閾値Th11未満であるか否かを判定する。
【0055】
「2ndder1×(ND1+ND3)」の値が閾値Th11以上である場合(つまりステップP22における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP23において材質識別部94Aは、正規化指標ND2の値が所定の閾値Th12より大きいか否かを判定する。
【0056】
正規化指標ND2の値が閾値Th12より大きい場合(つまりステップP23における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に動物又は布地が存在すると判定する。
【0057】
一方、正規化指標ND2の値が閾値Th12以下である場合(つまりステップP23における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP24において材質識別部94Aは、二次微分値2ndder2の値が所定の閾値Th13未満であるか否かを判定する。
【0058】
二次微分値2ndder2の値が閾値Th13未満である場合(つまりステップP24における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に植物が存在すると判定する。
【0059】
一方、二次微分値2ndder2の値が閾値Th13以上である場合(つまりステップP24における判定結果が「NO」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に人肌が存在すると判定する。
【0060】
上記ステップP22の判定において、「2ndder1×(ND1+ND3)」の値が閾値Th11以上である場合(つまりステップP22における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP25において材質識別部94Aは、正規化指標ND3の値が所定の閾値Th14未満であるか否かを判定する。
【0061】
正規化指標ND3の値が閾値Th14未満である場合(つまりステップP25における判定結果が「YES」である場合)には、次にステップP26において材質識別部94Aは、正規化指標ND4の値が所定の閾値Th15未満であるか否かを判定する。
【0062】
正規化指標ND4の値が閾値Th15未満である場合(つまりステップP26における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に金属が存在すると判定する。
【0063】
一方、正規化指標ND4の値が閾値Th15以上である場合(つまりステップP26における判定結果が「NO」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内にコンクリート又は石が存在すると判定する。
【0064】
上記ステップP25の判定において、正規化指標ND3の値が閾値Th14以上である場合(つまりステップP25における判定結果が「NO」である場合)には、次にステップP27において材質識別部94Aは、正規化指標ND2の値が所定の閾値Th16未満であるか否かを判定する。
【0065】
正規化指標ND2の値が閾値Th16未満である場合(つまりステップP27における判定結果が「YES」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内にアスファルトが存在すると判定する。
【0066】
一方、正規化指標ND2の値が閾値Th16以上である場合(つまりステップP27における判定結果が「NO」である場合)には、材質識別部94Aは、解析対象範囲内にコンクリート又は石が存在すると判定する。
【0067】
なお、各閾値Th11〜Th16は、予め、金属や人肌等の既知の対象に対して測定領域を設定して材質識別部94Aによる上記識別フローを実施することにより、対象を正確に識別できる適切な値に設定される。
【0068】
以上の結果、材質識別部94Aは、解析対象範囲内に人肌が存在すると判定した場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は人間であると識別する。一方、それ以外の場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は人間でないと識別する。例えば、解析対象範囲内に窓ガラス又は金属が存在すると判定した場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は車であると識別する。
【0069】
なお、監視エリア4への侵入者が覆面や手袋を着用することによって人肌が露出していない状況も想定される。そのため、人間のみが着用する化学繊維等の材質を検出可能な識別フローを設定することにより、解析対象範囲内に化学繊維が存在すると判定した場合には、監視エリア4内に含まれている移動物体の種別は人間であると識別してもよい。また、ウール、綿、ナイロン、ポリエステル等の繊維の種別を検出可能な識別フローを設定することにより、人間が着用している衣服の材質を識別することもできる。
【0070】
図5を参照して、材質分析部39Aは、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であることの確度を示すパラメータ情報を、後段の識別部23Aに入力する。
【0071】
なお、以上の説明では広角カメラ11Aに対応する形状分析部38A及び材質分析部39Aにおける処理について説明したが、広角カメラ11Bに対応する形状分析部38B及び材質分析部39Bにおける処理もこれと同様であるため、重複した説明は省略する。
【0072】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP14において識別部23Aは、形状分析部38A及び材質分析部39Aからそれぞれ入力された、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であることの確度を示すパラメータ情報に基づいて、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であるか否かを識別する。例えば、形状分析部38A及び材質分析部39Aから入力されたパラメータ情報の双方の値が所定の閾値以上である場合に、各画像領域71〜73に含まれている移動物体は人間であると識別する。
【0073】
ここで、撮影画像200A内における各画像領域71〜73のサイズが小さい場合(特に、図7に示したように受光素子部35の空間分解能が低い場合)には、材質分析部39Aによる材質分析の精度が低下する可能性がある。そこで、識別部23Aは、撮影画像200A内における各画像領域71〜73のサイズが所定値より小さい場合には、材質分析部39Aから入力されたパラメータ情報よりも形状分析部38Aから入力されたパラメータ情報を重視して、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間であるか否かを識別する。例えば、各画像領域71〜73のサイズが上記所定値未満である場合には、形状分析部38Aから入力されたパラメータ情報のみに基づいて識別を行い、各画像領域71,72のサイズが上記所定値以上である場合には、形状分析部38A及び材質分析部39Aの双方から入力されたパラメータ情報に基づいて識別を行う。
【0074】
なお、以上の説明では広角カメラ11Aに対応する識別部23Aにおける処理について説明したが、広角カメラ11Bに対応する識別部23Bにおける処理もこれと同様である。
【0075】
各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間でないと識別された場合(つまりステップP14の判定結果が「NO」である場合)は、ステップP11以降の動作が繰り返し実行される。一方、各画像領域71〜73に含まれている移動物体が人間(つまり侵入者)であると識別された場合(つまりステップP14の判定結果が「YES」である場合)は、次にステップP15において特徴データ生成部24Aは、各画像領域71〜73に含まれている移動物体の特徴量を表す特徴データを生成する。例えば、各移動物体に関して、撮影画像200A内における行方向及び列方向の位置座標、前フレームからの位置の変化量、及び、材質分析部39Aによって画素毎に求めた材質情報等をパラメータとして記述した特徴データを生成する。画素毎の材質情報を記述することにより、侵入者が着用している衣服の材質に関する情報を、特徴データに含めることができる。特徴データ生成部24Aによって生成された各移動物体に関する特徴データは、データ処理部40に入力される。
【0076】
なお、以上の説明では広角カメラ11Aに対応する特徴データ生成部24Aにおける処理について説明したが、広角カメラ11Bに対応する特徴データ生成部24Bにおける処理もこれと同様である。特徴データ生成部24Aによって生成された、各画像領域74〜76に含まれている移動物体に関する特徴データは、特徴データ生成部24Bからデータ処理部40に入力される。
【0077】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP16において個別対象特定部42は、特徴データ生成部24A,24Bからそれぞれ入力された特徴データに基づいて、各撮影画像200A,200B内に含まれている移動物体を個々に特定する。例えば、侵入者61が覆面を着用しており、侵入者62,63が覆面を着用していない場合には、侵入者61の顔部分の材質は繊維となる一方、侵入者62,63の顔部分の材質は人肌となる。従って、個別対象特定部42は、顔部分の材質の相違に基づいて、侵入者61と侵入者62,63とを区別することができる。また、侵入者62と侵入者63とで着用している衣服の材質が異なる場合には、各侵入者62,63の体部分の材質が互いに異なる。従って、個別対象特定部42は、体部分の材質の相違に基づいて、侵入者62,63を個々に区別することができる。本実施の形態では、個別対象特定部42は、画像領域71に対応する特徴データに基づいて侵入者61を特定し、画像領域72に対応する特徴データに基づいて侵入者62を特定し、画像領域73に対応する特徴データに基づいて侵入者63を特定する。同様に、個別対象特定部42は、画像領域74に対応する特徴データに基づいて侵入者61を特定し、画像領域75に対応する特徴データに基づいて侵入者62を特定し、画像領域76に対応する特徴データに基づいて侵入者63を特定する。
【0078】
また、ステップP16において同一対象特定部41は、特徴データ生成部24A,24Bからそれぞれ入力された特徴データに基づいて、撮影画像200A,200B内に含まれている同一対象の移動物体を特定する。本実施の形態では、同一対象特定部41は、撮影画像200Aの画像領域71に含まれている人間と、撮影画像200Bの画像領域74に含まれている人間とが同一対象(侵入者61)であると特定し、撮影画像200Aの画像領域72に含まれている人間と、撮影画像200Bの画像領域75に含まれている人間とが同一対象(侵入者62)であると特定し、撮影画像200Aの画像領域73に含まれている人間と、撮影画像200Bの画像領域76に含まれている人間とが同一対象(侵入者63)であると特定する。
【0079】
次にステップP17において位置特定部43は、広角カメラ11A,11B間の距離、及び、撮影画像200A,200B内における同一対象の画像領域71,74の位置関係に基づいて、監視エリア4内における侵入者61の位置を特定する。同様に、位置特定部43は、広角カメラ11A,11B間の距離、及び、撮影画像200A,200B内における同一対象の画像領域72,75の位置関係に基づいて、監視エリア4内における侵入者62の位置を特定する。同様に、位置特定部43は、広角カメラ11A,11B間の距離、及び、撮影画像200A,200B内における同一対象の画像領域73,76の位置関係に基づいて、監視エリア4内における侵入者63の位置を特定する。
【0080】
また、ステップP17において位置特定部43は、監視エリア4内における各侵入者61〜63の位置を示す位置情報マップを作成する。図16は、位置特定部43によって作成された位置情報マップ250の一例を示す図である。監視エリア4内における侵入者61,62,63の位置をそれぞれ示す図形81,82,83が、監視エリア4に対応する平面マップ上に表示されている。また、位置情報マップ250においては、監視エリア4の中でも特に重点的な監視を要するエリア(例えば通信基地局1の建屋への出入り口に近いエリア)が、重点監視エリア80として設定されている。重点監視エリア80は、監視エリア4内において予め任意に設定することが可能である。図16の例では、侵入者61に対応する図形81は重点監視エリア80内に含まれており、侵入者62,63にそれぞれ対応する図形82,83は重点監視エリア80外に含まれている。
【0081】
なお、本実施の形態では、フェンス2を乗り越えて通信基地局1へ侵入しようとする侵入者を監視する用途での監視装置3の使用を想定しており、フェンス2を乗り越える際の高さ方向の移動量をも考慮する必要がある。二つの広角カメラ11A,11Bを用いてステレオカメラを構成しているため、高さ方向を含め侵入者の位置、侵入者までの距離を特定できる。しかし、必ずしもステレオカメラを用いる必要はなく、一つの広角カメラのみを用いてもよい。
【0082】
次にステップP18において、位置特定部43によって特定された移動物体の位置を視野の中心として、望遠カメラ12Aによる撮影を行う。望遠カメラ12Aは、監視エリア4内に含まれている侵入者61〜63のうち、最も重要度の高い侵入者を撮影する。図16に例示した位置情報マップ250においては、重点監視エリア80内に含まれている侵入者61の重要度が、重点監視エリア80外に含まれている侵入者62,63の重要度よりも高く設定されることにより、望遠カメラ12Aによって侵入者61が撮影される。監視エリア4内における侵入者61の位置を示す情報が位置特定部43から望遠カメラ12Aに通知され、望遠カメラ12Aは、通知された位置を撮影する。ここで、重点監視エリア80内に複数の侵入者が含まれている場合には、望遠カメラ12Aは、当該複数の侵入者を所定の時間間隔で交互に撮影する。
【0083】
なお、重要度の設定手法は、上記の例に限らず任意である。例えば、監視エリア4内に侵入した時刻が新しい(又は古い)侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。あるいは、移動速度が大きい侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。あるいは、通信基地局1の出入り口に向かって近付く方向に移動する速度成分が大きい侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。あるいは、通信基地局1の出入り口との距離が短い侵入者ほど、重要度を高く設定することができる。また、これらの要素を任意に組み合わせることによって重要度を設定してもよい。
【0084】
図15は、望遠カメラ12Aによって侵入者61を撮影した拡大画像300を示す図である。拡大画像300は、ハードディスク又は半導体メモリ等の任意の記録媒体に記録されるとともに、図2に示した表示装置6に表示される。
【0085】
また、ステップP18において、位置特定部43によって特定された移動物体の位置を視野の中心として、望遠カメラ12Bによる撮影を行う。望遠カメラ12Bは、監視エリア4内に含まれている侵入者61〜63のうち、二番目に重要度の高い侵入者を撮影する。図16に例示した位置情報マップ250においては、侵入者62,63のうち重点監視エリア80に近い侵入者63の重要度が、侵入者62の重要度よりも高く設定されることにより、望遠カメラ12Bによって侵入者63が撮影される。監視エリア4内における侵入者63の位置を示す情報が位置特定部43から望遠カメラ12Bに通知され、望遠カメラ12Bは、通知された位置を撮影する。なお、望遠カメラ12Bは、侵入者62,63を所定の時間間隔で交互に撮影してもよい。望遠カメラ12Bによって撮影された拡大画像は、ハードディスク又は半導体メモリ等の任意の記録媒体に記録されるとともに、図2に示した表示装置6に表示される。
【0086】
また、監視装置3は、望遠カメラ12A,12Bによる侵入者61〜63の撮影を行うととともに、音又は光等によって侵入者61〜63に対して所定の警告を行う。
【0087】
また、侵入者61〜63が監視エリア4内で移動する場合には、時系列に並ぶ複数の撮影画像200A内において、画像領域71〜73の位置が変化する。追跡処理部44は、特徴データが一致又は近似する画像領域を、連続する撮影画像200A内で探索することにより、侵入者61〜63の移動に伴う画像領域71〜73の位置変化を追跡する。同様に、追跡処理部44は、特徴データが一致又は近似する画像領域を、連続する撮影画像200B内で探索することにより、侵入者61〜63の移動に伴う画像領域74〜76の位置変化を追跡する。これにより、望遠カメラ12A,12Bによって侵入者61〜63を自動追跡して撮影することができる。
【0088】
図17は、表示装置6に表示される画像の一例を示す図である。表示装置6の表示画面は四つの領域151,152,153,154に分割されている。領域151には、広角カメラ11Aによって撮影された、監視エリア4の全体画像が表示される。領域152には、望遠カメラ12Aによって撮影された、侵入者61の拡大画像が表示される。
【0089】
領域153には、望遠カメラ12Bによって撮影された、侵入者63の拡大画像が表示される。領域154には、位置特定部43によって作成された位置情報マップ250が表示される。位置表示マップ250においては、望遠カメラ12Aによって現在撮影している監視エリア4内の位置を示す図形85と、望遠カメラ12Bによって現在撮影している監視エリア4内の位置を示す図形86とが、併せて表示される。
【0090】
また、領域153においては、望遠カメラ12Bが自動追跡モードであることを示す情報(及び手動撮影モードに切換可能であることを示す情報)と、手動撮影モードに切り換える際にオペレータによって選択される選択ボタン88とが、併せて表示される。表示装置6はタッチパネルとしての機能を有しており、オペレータが選択ボタン88にタッチすることによって、望遠カメラ12Bは、二番目に重要度の高い侵入者を自動追跡して撮影する自動撮影モードから、オペレータの遠隔操作による手動撮影モードに切り換えられる。手動撮影モードにおいて、オペレータは、図2に示した操作部7を用いて望遠カメラ12Bのパンチルト機能及びズーム機能を遠隔操作することができ、これにより、監視エリア4内の所望箇所を望遠カメラ12Bによって撮影することができる。例えば、自動追跡モードの望遠カメラ12Bが侵入者63を撮影している状況において、侵入者63ではなく侵入者62を撮影したい場合には、オペレータは望遠カメラ12Bを手動撮影モードに切り換えた後、領域154に表示されている位置情報マップ250を参照しながら操作部7を用いて撮影位置を指定することにより、望遠カメラ12Bによって侵入者62を撮影することができる。
【0091】
図18は、表示装置6に表示される画像の他の例を示す図である。領域153には、手動撮影モードの望遠カメラ12Bによって撮影された、侵入者62の拡大画像が表示される。また、望遠カメラ12Bの撮影モードが自動追跡モードから手動撮影モードに切り換えられたことにより、領域153には、望遠カメラ12Bが手動撮影モードであることを示す情報(及び自動追跡モードに切換可能であることを示す情報)と、自動追跡モードに切り換える際にオペレータによって選択される選択ボタン89とが、併せて表示される。
【0092】
図11のフローチャートを参照して、次にステップP19において、侵入者61〜63が監視エリア4から去ったか否かが判定される。侵入者61〜63が監視エリア4内に滞在している場合(つまりステップP19の判定結果が「NO」である場合)は、ステップP16以降の動作が繰り返される。一方、侵入者61〜63が監視エリア4から去った場合(つまりステップP19の判定結果が「YES」である場合)は、ステップP11以降の動作が繰り返される。
【0093】
なお、侵入者の自動追跡のための望遠カメラ12A,12Bの駆動制御は、図3に示した制御部13によって行われる。但し、追跡のための所定の制御プログラムを格納したFPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)を望遠カメラ12A,12B内に実装することにより、望遠カメラ12A,12B自らの制御によって侵入者の追跡を行ってもよい。
【0094】
また、図17,18の例では、表示装置6の表示画面が四分割表示されたが、四つの表示装置の各々の表示画面に各画像を全面表示してもよい。
【0095】
図19は、通信基地局1に複数の監視装置3が設置された状況を示す図である。通信基地局1の建屋の外周に沿って、監視装置3A〜3Dが設置されている。監視装置3A,3B,3C,3Dは、それぞれ監視エリア4A,4B,4C,4Dを監視する。監視装置3A〜3Dは、通信基地局1内に構築された通信ネットワーク160に接続されている。通信ネットワーク160には、監視装置3A〜3Dを統括して制御する制御装置161が接続されている。
【0096】
例えば、通信基地局1の敷地外から監視エリア4Aに侵入した侵入者が、監視エリア4Aから監視エリア4Bに移動した場合を想定する。この場合、まず監視装置3Aによって侵入者が撮影されることにより、監視装置3Aが備える特徴データ生成部24によって侵入者に関する特徴データが生成される。当該特徴データは、監視装置3Aから制御装置161に通知される。侵入者が監視エリア4Aから監視エリア4Bに移動すると、次に監視装置3Bによって侵入者が撮影されることにより、監視装置3Bが備える特徴データ生成部24によって侵入者に関する特徴データが生成される。当該特徴データは、監視装置3Bから制御装置161に通知される。制御装置161は、監視装置3Aから通知された特徴データと、監視装置3Bから通知された特徴データとを比較し、両特徴データが一致(又は近似)している場合には、監視装置3A,3Bによって撮影された侵入者は同一人物であると特定する。そして、監視装置3Aが備える望遠カメラ12Aが行っていた侵入者の自動追跡を、監視装置3Bが備える望遠カメラ12Aによって引き継ぐよう、監視装置3Bに対して追跡命令を入力する。これにより、監視エリア4A,4Bを跨ぐ侵入者の自動追跡が行われる。
【0097】
このように本実施の形態に係る監視システム5(及び監視装置3)によれば、望遠カメラ12Aは、広角カメラ11によって撮影された撮影画像内に侵入者が含まれている場合に、当該侵入者を自動追跡して撮影することにより、当該侵入者の拡大画像300を取得して表示装置6に表示する。このように、監視エリア4への侵入者を望遠カメラ12Aによって自動追跡して撮影することにより、侵入者の拡大画像300を漏れなく撮影することが可能となる。また、望遠カメラ12Bは、オペレータによって遠隔操作されることにより、監視エリア4内の所望箇所の画像を取得して表示装置6に表示する。従って、複数の侵入者が同時に監視エリア4に侵入した場合であっても、望遠カメラ12Aによって撮影している侵入者とは異なる侵入者を望遠カメラ12Bによって撮影することができる。その結果、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0098】
また、本実施の形態に係る監視システム5によれば、望遠カメラ12Bは、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影(手動撮影モード)と、自動追跡による侵入者の撮影(自動追跡モード)とを切り換え可能である。従って、複数の侵入者が同時に監視エリア4に侵入した場合に、望遠カメラ12A,12Bを用いて複数の侵入者を自動追跡して撮影するという動作と、望遠カメラ12Aによって侵入者を自動追跡して撮影しつつ、望遠カメラ12Bによって他の所望の侵入者を撮影するという動作とを切り換えることができるため、ユーザの利便性を向上することができる。
【0099】
また、本実施の形態に係る監視システムに5よれば、望遠カメラ12Aによって撮影されている監視エリア4内の位置と、望遠カメラ12Bによって撮影されている監視エリア4内の位置と、監視エリア4内における侵入者の位置と、を示す位置情報マップ250が、表示装置6に表示される。従って、オペレータは、当該位置情報マップ250に基づいて、手動撮影モードの望遠カメラ12Bによって次に撮影すべき侵入者を容易に特定することができるため、複数の侵入者を漏れなく撮影することが可能となる。
【0100】
また、本実施の形態に係る監視システム5によれば、材質分析部39Aは、撮影画像200Aのうち移動物体に対応する画像領域71〜73に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて移動物体の材質を分析する。従って、材質分析の結果、移動物体に対応する画像領域71〜73内に人肌や化学繊維等が含まれている場合には、その移動物体は人間であると識別することができる。その結果、所定の監視エリア4内に移動物体が含まれている場合に、その移動物体が人間であるかそれ以外の動物等であるかを正確に識別することが可能となる。また、特徴データ生成部24Aは、材質分析部39Aによって分析された移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成する。そして、追跡処理部44は、当該特徴データに基づいて移動物体の自動追跡を行う。従って、監視エリア4内で移動する個々の移動物体を、各移動物体に関する特徴データに基づいて正確に追跡することができる。
【0101】
また、本実施の形態に係る監視システム5によれば、図19に示したように、各移動物体に関する特徴データに基づくことにより、異なる監視エリア4A〜4Dを跨ぐ移動物体の自動追跡を正確に行うことが可能となる。
【0102】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
3,3A〜3D 監視装置
4,4A〜4D 監視エリア
5 監視システム
6 表示装置
11A,11B 広角カメラ
12A,12B 望遠カメラ
21 撮影部
22 分析部
23,23A,23B 識別部
24,24A,24B 特徴データ生成部
39A,39B 材質分析部
43 位置特定部
44 追跡処理部
250 位置情報マップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視装置と、
表示装置と、
を備え、
前記監視装置は、
所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、
前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得して前記表示装置に表示する、第2の撮影手段と、
オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得して前記表示装置に表示可能な、第3の撮影手段と、
を有する、監視システム。
【請求項2】
前記第3の撮影手段は、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影と、自動追跡による移動物体の撮影とを切り換え可能である、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記第2の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記第3の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記監視エリア内における前記移動物体の位置と、を示す位置情報が、前記表示装置にさらに表示される、請求項1又は2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該撮影画像のうち当該移動物体に対応する画像領域に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて前記移動物体の材質を分析する材質分析手段と、
前記移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成するデータ生成手段と、
をさらに備え、
前記特徴データに基づいて前記移動物体の自動追跡が行われる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の監視システム。
【請求項5】
複数の前記監視装置によって複数の前記監視エリアが撮影され、
前記特徴データに基づいて、異なる監視エリアを跨ぐ前記移動物体の自動追跡が行われる、請求項4に記載の監視システム。
【請求項6】
所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、
前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得する、第2の撮影手段と、
オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得する、第3の撮影手段と、
を備える、監視装置。
【請求項1】
監視装置と、
表示装置と、
を備え、
前記監視装置は、
所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、
前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得して前記表示装置に表示する、第2の撮影手段と、
オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得して前記表示装置に表示可能な、第3の撮影手段と、
を有する、監視システム。
【請求項2】
前記第3の撮影手段は、オペレータの遠隔操作による所望箇所の撮影と、自動追跡による移動物体の撮影とを切り換え可能である、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記第2の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記第3の撮影手段によって撮影されている前記監視エリア内の位置と、前記監視エリア内における前記移動物体の位置と、を示す位置情報が、前記表示装置にさらに表示される、請求項1又は2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該撮影画像のうち当該移動物体に対応する画像領域に関して、赤外域を含む特定の複数の波長のスペクトルを検出し、当該検出の結果に基づいて前記移動物体の材質を分析する材質分析手段と、
前記移動物体の材質に関するパラメータを含めて、当該移動物体の特徴量を表す特徴データを生成するデータ生成手段と、
をさらに備え、
前記特徴データに基づいて前記移動物体の自動追跡が行われる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の監視システム。
【請求項5】
複数の前記監視装置によって複数の前記監視エリアが撮影され、
前記特徴データに基づいて、異なる監視エリアを跨ぐ前記移動物体の自動追跡が行われる、請求項4に記載の監視システム。
【請求項6】
所定の監視エリアを撮影する、第1の撮影手段と、
前記第1の撮影手段によって撮影された撮影画像内に移動物体が含まれている場合に、当該移動物体を自動追跡して撮影することにより、当該移動物体の拡大画像を取得する、第2の撮影手段と、
オペレータによって遠隔操作されることにより、前記第1の撮影手段及び前記第2の撮影手段とは独立して、前記監視エリア内の所望箇所の画像を取得する、第3の撮影手段と、
を備える、監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−109733(P2012−109733A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256089(P2010−256089)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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