説明

目標追尾装置及び目標観測システム及び目標追尾方法及びプログラム

【課題】複数の目標が重なって一つの目標として観測されたのち重なった目標が離れて再び複数の目標として観測された場合でも、正しく目標を同定できる相関処理を実現する。
【解決手段】重複判定装置115は、複数の目標が重なって一つの目標として観測されたか否かを判定する。目標間距離算出装置121は、複数の目標が重なる直前に観測された位置の間の距離(重複前距離)を算出する。目標間距離ゲート設定装置131は、重複前距離に基づいて分離判定範囲を設定する。分離判定装置132は、分離判定範囲内に新たな目標が観測された場合に、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測されたと判定する。分離妄評移動距離算出装置133は、分離目標移動距離を算出する。分離目標判定装置135は、分離目標移動距離に基づいて重なった目標が離れて観測された複数の目標を同定する。追尾装置150は、分離目標判定装置135が同定した目標を追尾する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、観測装置が観測した目標を追尾する目標追尾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダなどのセンサを用いて目標の位置などを観測する目標観測システムにおいて、観測装置が時々刻々と観測した情報に基づいて、目標の動きを予測するため、目標の追尾が行われる。
目標の追尾においては、観測時刻の異なる目標を同定する相関処理が必要となる。
【特許文献1】特開平7−270524号公報
【特許文献2】特開平11−281737号公報
【特許文献3】特開2003−149333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の目標が重なって一つの目標として観測されたのち、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測される場合がある。このような場合において、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測されたことを認識し、かつ、重なる前の目標と、離れた後の目標とを正しく同定できる相関処理が必要である。
しかし、従来の相関処理では、一度重なった目標が離れて再び複数の目標として観測される現象を認識することが困難であり、重なる前の目標と、離れた後の目標とを正しく同定することは更に困難な場合がある。
この発明は、例えば、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の目標が重なって一つの目標として観測されたのち、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測される状況でも、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測されたことを認識し、重なる前の目標と、離れた後の目標とを正しく同定し、追尾を継続できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明にかかる目標追尾装置は、
情報を処理する処理装置と、重複判定装置と、分離判定装置と、追尾装置とを有し、
上記重複判定装置は、上記処理装置を用いて、観測された目標の位置を表わす目標位置情報に基づいて、追尾中の目標を含む複数の目標が重なって一つの目標として観測されたか否かを判定し、
上記分離判定装置は、上記処理装置を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを判定し、
上記追尾装置は、上記処理装置を用いて、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうちのいずれかの目標を、上記追尾中の目標として追尾することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明にかかる目標追尾装置によれば、複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと重複判定装置が判定した場合、通常の追尾処理と異なり、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを分離判定装置が判定して、重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のいずれかを追尾装置が追尾するので、追尾を外すことがないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
実施の形態1.
実施の形態1を、図1〜図22を用いて説明する。
【0007】
図1は、この実施の形態における目標観測システム800の全体構成の一例を示すシステム構成図である。
目標観測システム800は、航空機、船舶、車両など複数の目標511〜512を、レーダなどのセンサにより観測するシステムである。
目標観測システム800は、観測装置200、目標追尾装置100、表示装置300を有する。
【0008】
観測装置200は、ISAR(逆合成開口レーダ)などのレーダやその他のセンサを用いて、複数の目標の位置などを観測する。なお、観測装置200は、航空機、船舶、車両などの移動体を一つの目標として観測してもよいし、ISARなど解像度の高い画像が得られるセンサにより観測する場合には、一つの移動体を構成する各部分をそれぞれ目標として観測してもよい。
観測装置200は、観測した結果に基づいて、観測した目標に関する情報(以下「観測目標情報」と呼ぶ。)を生成する。観測目標情報には、観測した目標の位置を表わす情報(以下「目標位置情報」と呼ぶ。)が含まれる。
観測装置200は、生成した観測目標情報を出力する。
【0009】
目標追尾装置100は、観測装置200が生成した観測目標情報を入力する。
目標追尾装置100は、入力した観測目標情報に基づいて、複数の目標をそれぞれ追尾する。すなわち、目標追尾装置100は、時々刻々と観測装置200が生成する観測目標情報に基づいて、ある時点において観測装置200が観測した目標と、別の時点において観測装置200が観測した目標とが同一の目標であるか異なる目標であるかを判定し、目標の移動方向や移動速度などを求める。
目標追尾装置100は、追尾した結果に基づいて、追尾した目標に関する情報(以下「追尾目標情報」と呼ぶ。)を生成する。
目標追尾装置100は、生成した追尾目標情報を出力する。
【0010】
表示装置300は、目標追尾装置100が生成した追尾目標情報を入力する。
表示装置300は、入力した追尾目標情報に基づいて、観測装置200が観測した目標の位置、移動方向、速度などを表示する。
【0011】
図2は、この実施の形態における目標追尾装置100のハードウェア資源の一例を示す図である。
目標追尾装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913(Read Only Memory)、RAM914(Random Access Memory)、通信装置915、表示装置901、キーボード902、マウス903、FDD904(フレキシブルディスク装置)、CDD905(コンパクトディクス装置)、プリンタ装置906、スキャナ装置907、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
通信装置915、キーボード902、スキャナ装置907、FDD904などは、入力部、入力装置の一例である。
また、通信装置915、表示装置901、プリンタ装置906などは、出力部、出力装置の一例である。
【0012】
通信装置915は、ファクシミリ機932、電話器931、LAN942(ローカルエリアネットワーク)等に接続されている。通信装置915は、LAN942に限らず、インターネット940、ISDN等のWAN(ワイドエリアネットワーク)などに接続されていても構わない。インターネット940或いはISDN等のWANに接続されている場合、ゲートウェイ941は不用となる。
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0013】
上記プログラム群923には、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、以下に述べる実施の形態の説明において、「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」として説明する情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリになどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、以下に述べる実施の形態の説明において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD(Digital・Versatile・Disk)等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0014】
また、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、以下に述べる「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、以下に述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0015】
図3は、この実施の形態における目標追尾装置100の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図である。
目標追尾装置100は、ゲート判定装置110、追尾装置150を有する。
【0016】
ゲート判定装置110は、観測装置200が生成した観測目標情報に基づいて、相関処理をする。すなわち、ゲート判定装置110は、追尾中の複数の目標それぞれについて、観測装置200が観測した目標のうちから、追尾中の目標と同一の目標を判定する。
追尾装置150は、追尾中の複数の目標それぞれについて、移動方向や移動速度を推定する。追尾装置150は、ゲート判定装置110が追尾中の目標と同一であると判定した目標に関する目標位置情報をカルマンフィルタなどにより処理して、目標の移動方向や移動速度を推定し、次に目標が観測される位置を予測する。
【0017】
追尾装置150は、平滑装置151、平滑値ベクトル初期値設定装置152、平滑値ベクトル記憶装置153、予測装置154、平滑誤差共分散行列初期値設定装置161、平滑誤差共分散行列算出装置162、平滑誤差共分散行列記憶装置163、駆動雑音分散設定装置171、駆動雑音共分散行列算出装置172、予測誤差共分散行列算出装置173、観測雑音共分散行列算出装置181、残差共分散行列算出装置182、ゲイン行列設定装置191を有する。
【0018】
平滑装置151は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標について、ゲート判定装置110が追尾中の目標と同一であると判定した目標に関する目標位置情報と、ゲイン行列設定装置191が設定したカルマンゲイン行列とに基づいて、追尾中の目標が観測されると予測した位置(以下「予測位置」と呼ぶ。)と、追尾中の目標が観測された位置(以下「観測位置」と呼ぶ。)との平滑を求め、平滑値ベクトルを生成する。
【0019】
平滑値ベクトル初期値設定装置152は、CPU911などの処理装置を用いて、平滑値ベクトルの初期値を設定する。
【0020】
平滑値ベクトル記憶装置153は、RAM914などの記憶装置を用いて、平滑値ベクトルを記憶する。その目標について追尾を開始したばかりで平滑装置151がまだ平滑値ベクトルを生成していない場合、平滑値ベクトル記憶装置153は、平滑値ベクトル初期値設定装置152が設定した平滑値ベクトルの初期値を記憶している。平滑装置151が平滑値ベクトルを生成した場合、平滑値ベクトル記憶装置153は、平滑装置151が生成した平滑値ベクトルを記憶する。
【0021】
予測装置154は、CPU911などの処理装置を用いて、平滑値ベクトル記憶装置153が記憶した平滑値ベクトルに基づいて、追尾中の目標の次回の予測位置を予測する。
【0022】
平滑誤差共分散行列初期値設定装置161は、CPU911などの処理装置を用いて、平滑誤差共分散行列の初期値を設定する。
【0023】
平滑誤差共分散行列記憶装置163は、RAM914などの記憶装置を用いて、平滑誤差共分散行列を記憶する。その目標について追尾を開始したばかりで平滑誤差共分散行列算出装置162が平滑誤差共分散行列を算出していない場合、平滑誤差共分散行列記憶装置163は、平滑誤差共分散行列初期値設定装置161が設定した平滑誤差共分散行列の初期値を記憶している。平滑誤差共分散行列算出装置162が平滑誤差共分散行列を算出した場合、平滑誤差共分散行列記憶装置163は、平滑誤差共分散行列算出装置162が算出した平滑誤差共分散行列を記憶する。
【0024】
駆動雑音分散設定装置171は、CPU911などの処理装置を用いて、駆動雑音分散を設定する。
駆動雑音共分散行列算出装置172は、CPU911などの処理装置を用いて、駆動雑音分散設定装置171が設定した駆動雑音分散に基づいて、駆動雑音共分散行列を算出する。
予測誤差共分散行列算出装置173は、CPU911などの処理装置を用いて、駆動雑音共分散行列算出装置172が算出した駆動雑音共分散行列と、平滑誤差共分散行列記憶装置163が記憶した平滑誤差共分散行列とに基づいて、予測誤差共分散行列を算出する。
【0025】
観測雑音共分散行列算出装置181は、CPU911などの処理装置を用いて、観測雑音共分散行列を算出する。
残差共分散行列算出装置182は、CPU911などの処理装置を用いて、観測雑音共分散行列算出装置181が算出した観測雑音共分散行列と、予測誤差共分散行列算出装置173が算出した予測誤差共分散行列とに基づいて、残差共分散行列を算出する。
ゲイン行列設定装置191は、CPU911などの処理装置を用いて、残差共分散行列算出装置182が算出した残差共分散行列と、予測誤差共分散行列算出装置173が算出した予測誤差共分散行列とに基づいて、カルマンゲイン行列を設定する。
平滑誤差共分散行列算出装置162は、ゲイン行列設定装置191が設定したカルマンゲイン行列と、予測誤差共分散行列算出装置173が算出した予測誤差共分散行列とに基づいて、平滑誤差共分散行列を算出する。
【0026】
図4は、この実施の形態における観測装置200が観測する目標と、観測装置200が生成する目標位置情報との関係の一例を示す模式図である。
観測領域510に2つの目標511,512があるとする。
観測装置200は、例えば、観測領域510に向かって電波を送信し、送信した電波の反射波を受信することにより、目標511,512を観測する。
観測結果520は、観測装置200が受信した反射波の強度を示している。なお、色が濃いほど反射波の受信強度が強いことを示す。
観測装置200は、目標511からの反射波の観測値521に基づいて、目標511の位置531を求める。観測装置200は、同様に、目標512からの反射波の観測値522に基づいて、目標512の位置532を求める。観測装置200は、求めた目標の位置531,532に基づいて、目標位置情報530を生成する。
【0027】
図5は、この実施の形態における観測装置200が観測する目標と、観測装置200が生成する目標位置情報との関係の別の例を示す模式図である。
観測領域510には、2つの目標513,514があるが、図4の場合と異なり、2つの目標513,514が近接している。
観測装置200は、目標513と目標514とが近接しているため、目標513からの反射波の観測値523と、目標514からの反射波の観測値524とを一つの目標からの反射波であると判断し、目標の位置535を求める。
このように、複数の目標が近接している場合、観測装置200は、複数の目標を一つの目標として観測する場合がある。
なお、この現象は、複数の目標が物理的に近接している場合に限るものではない。例えば、観測装置200から見た方向が近ければ、実際の距離は離れていても、2つの目標が重複して、一つの目標として観測される場合がある。また、観測装置200からの距離が近かったり、目標が大きかったりすると、観測装置200が受信する反射波の受信強度が強くなるので、観測装置200から見て奥にいる(距離が遠い)目標や、小さい目標からの弱い反射波が吸収されて、一つの目標として観測される場合がある。
【0028】
このように、実際には複数の目標が存在するにも関わらず、観測装置200が一つの目標として観測した場合を、以下では「複数の目標が重なった」と表現する。
【0029】
複数の目標が重なると、吸収される側の目標の航跡は、それまでの移動航跡と異なる動きをして、突然長距離を移動し、吸収する側の目標の信号へ吸収されてしまい、目標同士がくっついたように観測される。また、この1個に重複された観測値から目標が分離する際も、それまでの航跡上ではない、連続性のない場所へ突然出現する場合がある。
【0030】
図6は、この実施の形態におけるゲート判定装置110の機能ブロックの構成の一例を示す詳細ブロック図である。
ゲート判定装置110は、大ゲート設定装置111、大ゲート判定装置112、小ゲート設定装置113、小ゲート判定装置114、重複判定装置115、第一モード記憶装置116、第二モード記憶装置117、目標間距離算出装置121、目標間距離記憶装置122、追尾目標移動距離算出装置123、重複目標移動距離算出装置124、重複目標判定装置127、重複目標記憶装置128、目標間距離ゲート設定装置131、分離判定装置132、分離目標移動距離算出装置133、分離目標判定装置135、通常ゲート設定装置141、通常ゲート判定装置142、追尾目標判定装置143を有する。
【0031】
以下の説明において「追尾中の目標」とは、追尾装置150が追尾している複数の目標のうち、ゲート判定装置110が着目した一つの目標のことを意味する。ゲート判定装置110は、追尾装置150が追尾している複数の目標のなかから、着目する目標を一つずつ選び、着目した目標について相関処理をする。ゲート判定装置110は、一つの目標についての相関処理が終わったら、着目する目標を変えて相関処理を繰返し、追尾装置150が追尾している複数の目標すべてについて一つずつ相関処理をする。したがって、以下の説明において「他の目標」とは、ゲート判定装置110が着目した目標以外の目標のことであって、追尾装置150が追尾していない目標を意味するものではない。
【0032】
第一モード記憶装置116は、RAM914などの記憶装置を用いて、第一判定モードを記憶する。第一判定モードとは、追尾中の目標が他の目標と重なる可能性があるか否かを示すものであり、目標が重なる可能性がある場合を重複判定モード、そうでない場合を通常判定モードと呼ぶ。初期状態において、第一モード記憶装置116は、第一判定モードが通常判定モードであることを記憶する。
第二モード記憶装置117は、RAM914などの記憶装置を用いて、第二判定モードを記憶する。第二判定モードとは、追尾中の目標が他の目標と重なっているか否かを示すものであり、目標が重なっている場合を分離判定モード、そうでない場合を通常判定モードと呼ぶ。初期状態において、第二モード記憶装置117は、第二判定モードが通常判定モードであることを記憶する。
【0033】
大ゲート設定装置111は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標について、追尾装置150の予測装置154が予測した予測位置に基づいて、進入判定範囲(大ゲート)を設定する。進入判定範囲は、例えば、追尾中の目標の予測位置を中心とした所定の半径を有する円の内側の範囲である。
【0034】
大ゲート判定装置112は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報に基づいて、大ゲート設定装置111が設定した進入判定範囲内に観測された目標の数(以下「大ゲート目標数」と呼ぶ。)を算出する。
進入判定範囲内には追尾中の目標があるので、進入判定範囲内に他の目標がなければ、。大ゲート判定装置112が算出した大ゲート目標数は1となる。大ゲート目標数が2以上である場合、進入判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標があることがわかる。
大ゲート判定装置112は、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードが通常判定モードである場合、CPU911などの処理装置を用いて、算出した大ゲート目標数に基づいて、進入判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標があるか否かを判定する。
【0035】
小ゲート設定装置113は、CPU911などの処理装置を用いて、進入判定範囲内に他の目標があると大ゲート判定装置112が判定した場合に、追尾中の目標について、追尾装置150の予測装置154が予測した予測位置に基づいて、重複判定範囲(小ゲート)を設定する。重複判定範囲は、追尾中の目標の予測位置を中心とした円の内側の範囲である。重複判定範囲の半径は、進入判定範囲の半径よりも小さい。したがって、進入判定範囲は、重複判定範囲を包含し、もっと遠い範囲まで含んでいる。
【0036】
小ゲート判定装置114は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報に基づいて、小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲内に観測された目標の数(以下「小ゲート目標数」と呼ぶ。)を算出する。
重複判定範囲内には追尾中の目標があるので、重複判定範囲内に他の目標がなければ、。小ゲート判定装置114が算出した小ゲート目標数は1となる。小ゲート目標数が2以上である場合、重複判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標が進入してきたことがわかる。
小ゲート判定装置114は、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードが通常判定モードである場合、CPU911などの処理装置を用いて、算出した目標の数に基づいて、追尾中の目標以外の他の目標が、重複判定範囲内に進入してきたか否かを判定する。重複判定範囲内に他の目標が進入してくると、追尾中の目標に近づいて、追尾中の目標と重なる可能性がある。
【0037】
重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、重複判定範囲内に他の目標が進入したと小ゲート判定装置114が判定した場合、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードを重複判定モードとする。
【0038】
小ゲート判定装置114は、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードが重複判定モードである場合、CPU911などの処理装置を用いて、算出した小ゲート目標数に基づいて、小ゲート目標数が減ったか否かを判定する。重複判定範囲内には、追尾中の目標と、重複判定範囲内に進入した他の目標とがあるはずなので、小ゲート目標数が減った場合、追尾中の目標と他の目標とが重なった可能性がある。
【0039】
大ゲート判定装置112は、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードが重複判定モードである場合、CPU911などの処理装置を用いて、算出した大ゲート目標数に基づいて、進入判定範囲内に重複判定範囲から出た目標が観測されたか否かを判定する。
小ゲート目標数が減る場合には、追尾中の目標と他の目標とが重なった場合と、その目標が重複判定範囲から出た場合とがある。その目標が重複判定範囲から出た場合、大ゲート目標数は変わらないのに対し、追尾中の目標と他の目標とが重なった場合には、大ゲート目標数も減る。これにより、その目標が重複判定範囲から出たのか、追尾中の目標と他の目標とが重なったのかを区別することができる。
【0040】
重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲内の目標の数が減ったと小ゲート判定装置114が判定し、かつ、大ゲート設定装置111が設定した進入判定範囲内に、重複判定範囲から出た目標がないと大ゲート判定装置112が判定した場合に、追尾中の目標と他の目標とが重なったと判定する。
重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標と他の目標とが重なったと判定した場合、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードを通常判定モードに戻し、第二モード記憶装置117が記憶した第二判定モードを分離判定モードにする。
【0041】
目標間距離算出装置121は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定した場合、観測装置200が生成した目標位置情報に基づいて、追尾中の目標が重なる直前に観測された位置と、追尾中の目標と重なった他の目標が重なる直前に観測された位置との間の距離(以下「重複前距離」と呼ぶ。)を算出する。
目標間距離記憶装置122は、RAM914などの記憶装置を用いて、目標間距離算出装置121が算出した重複前距離を記憶する。
【0042】
なお、目標間距離算出装置121は、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定してから重複前距離を算出するのではなく、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードが重複判定モードである場合に、追尾中の目標と他の目標との間の距離(以下「目標間距離」と呼ぶ。)を算出してもよい。目標間距離記憶装置122は、目標間距離算出装置121が算出した目標間距離を、上書きして記憶する。そうすれば、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定した場合、第一判定モードを通常判定モードに戻すので、目標間距離算出装置121は、目標間距離の算出を止める。目標間距離記憶装置122には、追尾中の目標と他の目標とが重なる直前の目標間距離(すなわち、重複前距離)が上書きされずに残る。
【0043】
追尾目標移動距離算出装置123は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定した場合、観測装置200が生成した目標位置情報に基づいて、追尾中の目標が重なる直前に観測された位置と、追尾中の目標と他の目標とが重なって1つの目標として観測された直後の位置との間の距離(以下「追尾目標移動距離」と呼ぶ。)を算出する。
【0044】
重複目標移動距離算出装置124は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定した場合、観測装置200が生成した目標位置情報に基づいて、他の目標が重なる直前に観測された位置と、追尾中の目標と他の目標とが重なって1つの目標として観測された直後の位置との間の距離(以下「重複目標移動距離」と呼ぶ。)を算出する。
【0045】
なお、追尾目標移動距離算出装置123は、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定してから追尾目標移動距離を算出するのではなく、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードが重複判定モードである場合に、追尾中の目標の移動距離を算出してもよい。追尾目標移動距離算出装置123は、算出した移動距離を上書きして記憶する。そうすれば、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定した場合、第一判定モードを通常判定モードに戻すので、追尾目標移動距離算出装置123は、移動距離の算出を止める。追尾目標移動距離算出装置123には、追尾中の目標と他の目標とが重なる直前の移動距離(すなわち、追尾目標移動距離)が上書きされずに残る。追尾目標移動距離算出装置123は、記憶した追尾目標移動距離を出力する。
重複目標移動距離算出装置124も、同様である。
【0046】
重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾目標移動距離算出装置123が算出した追尾目標移動距離と、重複目標移動距離算出装置124が算出した重複目標移動距離とを比較する。重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、比較した結果に基づいて、追尾目標移動距離のほうが重複目標移動距離より短い場合、追尾中の目標が重複前第一目標であると判定し、追尾中の目標に重複した他の目標が重複前第二目標であると判定する。逆に、重複目標移動距離のほうが追尾目標移動距離より短い場合、重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標が重複前第二目標であると判定し、他の目標が重複前第一目標であると判定する。
【0047】
重複目標記憶装置128は、RAM914などの記憶装置を用いて、重複目標判定装置127が判定した判定結果を記憶する。
【0048】
目標間距離ゲート設定装置131は、CPU911などの処理装置を用いて、第二モード記憶装置117が記憶した第二判定モードが分離判定モードである場合、追尾中の目標と他の目標とが重なった目標について、追尾装置150の予測装置154が予測した予測位置と、目標間距離記憶装置122が記憶した重複前距離とに基づいて、分離判定範囲を設定する。分離判定範囲は、追尾中の目標と他の目標とが重なった目標の予測位置を中心とした円の内側の範囲である。重なった追尾中の目標と他の目標とが再び2つの目標として観測される場合、重なる直前の距離と同じくらい離れた位置に観測されることが予想される。このため、分離判定範囲の半径は、重複前距離より長く設定し、例えば重複前距離の2倍とする。
【0049】
分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、第二モード記憶装置117が記憶した第二判定モードが分離判定モードである場合、目標間距離ゲート設定装置131が設定した分離判定範囲内に新たな目標が観測されたか否かを判定する。
分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、分離判定範囲内に新たな目標が観測されたと判定した場合、重なった目標が離れて再び2つの目標として観測されたと判定する。
分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、重なった目標が離れて再び2つの目標として観測されたと判定した場合、第二モード記憶装置117が記憶した第二判定モードを通常判定モードに戻す。
【0050】
分離目標移動距離算出装置133は、CPU911などの処理装置を用いて、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測されたと分離判定装置132が判定した場合、観測装置200が生成した目標位置情報に基づいて、重なった目標が離れる直前に観測された位置と、重なった目標が離れて複数の目標として観測された直後のそれぞれの位置との間の距離(以下「分離目標移動距離」と呼ぶ。)を算出する。
【0051】
分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標移動距離算出装置133が算出した複数の分離目標移動距離を比較する。分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、比較した結果に基づいて、重なった目標が離れて観測された複数の目標のうち、分離目標移動距離が最も短い目標を分離後第一目標と判定し、分離後第一目標以外の目標を分離後第二目標と判定する。
分離目標判定装置135は、重複目標記憶装置128が記憶した重複目標判定装置127の判定結果に基づいて、分離後第一目標と分離後第二目標とのうち、どちらが追尾中の目標であるかを判定する。
追尾中の目標が重複前第一目標であると重複目標判定装置127が判定した場合、分離目標判定装置135は、分離後第一目標が追尾中の目標であると判定し、分離後第二目標が他の目標であると判定する。
追尾中の目標が重複前第二目標であると重複目標判定装置127が判定した場合、分離目標判定装置135は、分離後第二目標が追尾中の目標であると判定し、分離後第一目標が他の目標であると判定する。
【0052】
通常ゲート設定装置141は、CPU911などの処理装置を用いて、第二モード記憶装置117が記憶した第二判定モードが通常判定モードである場合、追尾中の目標について、追尾装置150の予測装置154が予測した予測位置に基づいて、追尾判定範囲(通常ゲート、追尾ゲート)を設定する。追尾判定範囲は、追尾中の目標の予測位置を中心とした範囲である。
【0053】
通常ゲート判定装置142は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報に基づいて、通常ゲート設定装置141が設定した追尾判定範囲内に観測された目標を、追尾中の目標と判定する。
なお、追尾判定範囲内に複数の目標が観測された場合、通常ゲート判定装置142は、追尾判定範囲内に観測された複数の目標のうちのいずれか一つを追尾中の目標と判定する。例えば、NN(Nearest Neighbor)方式であれば、通常ゲート判定装置142は、予測装置154が予測した予測位置に最も近い目標を、追尾中の目標と判定する。
【0054】
追尾目標判定装置143は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標判定装置135が判定した結果、または、通常ゲート判定装置142が判定した結果に基づいて、観測装置200が観測した目標のうち、どの目標が追尾中の目標であるかを判定する。すなわち、追尾目標判定装置143は、通常判定モード時は、通常ゲート判定装置142の判定結果に基づいて追尾中の目標を判定し、分離判定モード時は、分離目標判定装置135の判定結果に基づいて追尾中の目標を判定する。
【0055】
追尾装置150は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾目標判定装置143の判定結果に基づいて、追尾中の目標であると判定された目標を、追尾中の目標として追尾する。また、重なった目標が離れて再び2つの目標として観測された場合、追尾装置150は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標判定装置135の判定結果に基づいて、他の目標であると判定された目標を、他の目標として追尾する。
【0056】
図7は、この実施の形態におけるゲート判定装置110が設定するゲートの間の関係の一例を示す模式図である。
予測位置540は、追尾中の目標515が次回の観測で観測されると予測装置154が予測した位置である。
追尾判定範囲543は、予測位置540を中心として通常ゲート設定装置141が設定した範囲である。
重複判定範囲542は、予測位置540を中心として小ゲート設定装置113が設定した範囲である。重複判定範囲542は、追尾判定範囲543を包含し、追尾判定範囲543よりも広い範囲である。
進入判定範囲541は、予測位置540を中心として大ゲート設定装置111が設定した範囲である。進入判定範囲541は、重複判定範囲542を包含し、重複判定範囲542よりも更に広い範囲である。
【0057】
図8は、この実施の形態における大ゲート設定装置111が設定した進入判定範囲541に他の目標516が入ってきたところを示す模式図である。
この例において、進入判定範囲541内に2つの目標が観測されたので、大ゲート判定装置112は、大ゲート目標数2を算出し、進入判定範囲541内に追尾中の目標以外の他の目標があると判定する。小ゲート設定装置113は、重複判定範囲542を設定して、他の目標の接近に備える。
【0058】
図9は、この実施の形態における小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲542に他の目標516が入ってきたところを示す模式図である。
この例において、重複判定範囲542内に2つの目標が観測されたので、小ゲート判定装置114は、小ゲート目標数2を算出し、重複判定範囲542内に追尾中の目標以外の他の目標が進入したと判定する。重複判定装置115は、第一判定モードを重複判定モードとし、目標の重複に備える。
【0059】
図10は、この実施の形態における小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲542内で他の目標516が観測されなくなったところを示す模式図である。
なお、他の目標516を白抜きで示しているのは、実際には存在しているが、追尾中の目標515と重なったため、観測装置200が観測しなかったことを表わしている。
この例において、重複判定範囲542内に1つの目標が観測されたので、小ゲート判定装置114は、小ゲート目標数1を算出し、小ゲート目標数が減ったと判定する。進入判定範囲541内にも1つの目標しか観測されていないので、大ゲート判定装置112は、大ゲート目標数1を算出し、進入判定範囲541内に重複判定範囲542から出た目標が観測されていないと判定する。重複判定装置115は、追尾中の目標515と他の目標516とが重なったと判定し、第二判定モードを分離判定モードとして、目標の分離に備える。
目標間距離ゲート設定装置131は、目標間距離記憶装置122が記憶した重複前距離に基づいて、分離判定範囲544を設定する。
【0060】
図11は、この実施の形態における目標間距離ゲート設定装置131が設定した分離判定範囲544内で再び他の目標516が観測されたところを示す模式図である。
この例において、分離判定装置132は、分離判定範囲544に新たな目標が観測されたので、重なった目標が離れて再び2つの目標として観測されたと判定する。分離目標判定装置135は、分離目標移動距離に基づいて、新たに観測された目標が他の目標516であると判定する。
【0061】
図12は、この実施の形態における観測装置200が観測する目標の動きと、観測装置200が生成する目標位置情報が表わす目標の位置との関係の一例を示す模式図である。
【0062】
目標511及び目標512は、それぞれ破線上を矢印の方向へ向かって移動している。
目標511と目標512との間の距離550が長い場合、観測装置200は、目標511と目標512とを正しく2つの目標であるとして観測し、目標位置情報を生成する。
目標511と目標512が近づいてくると、観測装置200は、2つの目標を区別できなくなる。観測装置200は、重なった2つの目標を1つの目標として観測する。
このとき、目標511及び目標512は、実際よりも長距離を移動したように見える。特に、反射波の受信強度が弱いほうの目標(この例では目標511)は、反射波の受信強度が強いほうの目標(この例では目標512)に引き込まれるように長距離を移動したように見える。
その後、目標511と目標512との間の距離が離れ始める。ある程度まで離れると、観測装置200は、重なっていた目標を再び2つの目標として観測できるようになる。このときも重複時と同様、目標511及び目標512は、実際よりも長距離を移動したように見える。
【0063】
重複前距離551と、目標511と目標512とが離れた直後の目標間距離552とは、ほぼ同じであると予想される。したがって、重複前距離551に基づいて目標間距離ゲート設定装置131が設定した分離判定範囲内の目標を捕捉すれば、追尾中の目標を見失うことなく、目標を捕捉できる。
【0064】
また、目標511が目標512に重なる前の位置531と重なった後の位置535との間の距離561、及び、目標512が目標511に重なる前の位置532と重なった後の位置535との間の距離は、通常より長いので、追尾判定範囲から外れる可能性がある。しかし、複数の目標が重なったと重複判定装置115が判定するので、重なった目標の追尾を続けることができる。
【0065】
同様に、目標511と目標512とが離れる前の位置536と離れた後の位置533との間の距離563、及び、目標511と目標512が離れる前の位置536と離れた後の位置534との間の距離564も、通常より長いので、追尾判定範囲から外れる可能性がある。しかし、追尾判定範囲よりも広い分離判定範囲を目標間距離ゲート設定装置131が設定するので、離れた目標の追尾を続けることができる。
【0066】
また、目標511は反射波の受信強度が弱いので、重なるときの移動距離561が、目標512の移動距離562よりも長い。離れるときも同様に、移動距離563が、目標512の移動距離564よりも長い。
そこで、重なるときに移動距離の長かった目標511は、離れるときも移動距離が長く、重なるときに移動距離が短かった目標512は、離れるときも移動距離が短いものとして、分離目標判定装置135は、位置533に観測された目標が目標511であり、位置534に観測された目標が目標512であると判定する。
【0067】
図13は、この実施の形態における観測装置200が観測する目標の動きと、観測装置200が生成する目標位置情報が表わす目標の位置との関係の別の例を示す模式図である。
図12と異なり、目標511と目標512とが接近して重なるが、交差することなく、再び離れていく。
【0068】
この例において、2つの目標が離れるときの移動距離563と移動距離564とを比較すると、移動距離563のほうが短い。
そこで、分離目標判定装置135は、位置533に観測された目標が目標512であり、位置534に観測された目標が目標511であると判定する。
【0069】
このように、重なるときの移動距離の関係と、離れるときの移動距離の関係とを比べることにより、離れた後の目標を正しく追尾できる。
【0070】
次に、動作について説明する。
【0071】
図14は、この実施の形態におけるゲート判定装置110が複数の目標の重複を判定する重複判定処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0072】
大ゲート設定工程S11において、大ゲート設定装置111は、CPU911などの処理装置を用いて、予測装置154が追尾中の目標について予測した予測位置を入力する。
大ゲート設定装置111は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した予測位置に基づいて、進入判定範囲を設定する。
大ゲート設定装置111は、CPU911などの処理装置を用いて、設定した進入判定範囲を出力する。
【0073】
大ゲート目標数算出工程S12において、大ゲート判定装置112は、CPU911などの処理装置を用いて、大ゲート設定工程S11で大ゲート設定装置111が出力した進入判定範囲を入力する。
大ゲート判定装置112は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報を入力する。
大ゲート判定装置112は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した進入判定範囲と、入力した目標位置情報とに基づいて、大ゲート目標数を算出する。
大ゲート判定装置112は、RAM914などの記憶装置を用いて、算出した大ゲート目標数を記憶する。
【0074】
小ゲート設定工程S13において、小ゲート設定装置113は、CPU911などの処理装置を用いて、予測装置154が追尾中の目標について予測した予測位置を入力する。
小ゲート設定装置113は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した予測位置に基づいて、重複判定範囲を設定する。
小ゲート設定装置113は、CPU911などの処理装置を用いて、設定した重複判定範囲を出力する。
【0075】
小ゲート目標数算出工程S14において、小ゲート判定装置114は、CPU911などの処理装置を用いて、小ゲート設定工程S13で小ゲート設定装置113が出力した重複判定範囲を入力する。
小ゲート判定装置114は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報を入力する。
小ゲート判定装置114は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した重複判定範囲と、入力した目標位置情報とに基づいて、小ゲート目標数を算出する。
小ゲート判定装置114は、RAM914などの記憶装置を用いて、算出した小ゲート目標数を記憶する。
【0076】
第一モード判定工程S15において、重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、第一モード記憶装置116が記憶した第一判定モードを入力する。
重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した第一判定モードに基づいて、第一判定モードが通常判定モードであるか、重複判定モードであるかを判定する。
第一判定モードが通常判定モードであると判定した場合、通常大ゲート判定工程S21へ進む。
第一判定モードが重複判定モードであると判定した場合、重複小ゲート判定工程S31へ進む。
【0077】
通常大ゲート判定工程S21において、大ゲート判定装置112は、CPU911などの処理装置を用いて、大ゲート目標数算出工程S12で算出した大ゲート目標数が2以上である場合、進入判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標があると判定する。
進入判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標があると判定した場合、通常小ゲート判定工程S22へ進む。
進入判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標がないと判定した場合、重複判定処理を終了する。
【0078】
通常小ゲート判定工程S22において、小ゲート判定装置114は、CPU911などの処理装置を用いて、小ゲート目標数算出工程S14で算出した小ゲート目標数が2以上である場合、重複判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標があると判定する。
重複判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標があると判定した場合、重複モード設定工程S23へ進む。
重複判定範囲内に追尾中の目標以外の他の目標がないと判定した場合、重複判定処理を終了する。
【0079】
重複モード設定工程S23において、重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、第一判定モードを重複判定モードに設定する。
第一モード記憶装置116は、RAM914などの記憶装置を用いて、第一判定モードが重複判定モードであることを記憶する。
その後、重複判定処理を終了する。
【0080】
第一判定モードが重複判定モードである場合、重複小ゲート判定工程S31において、小ゲート判定装置114は、CPU911などの処理装置を用いて、小ゲート目標数算出工程S14で算出した小ゲート目標数と、前回の小ゲート目標数算出工程S14で記憶した小ゲート目標数とを比較して、小ゲート目標数が減ったか否かを判定する。
小ゲート目標数が減ったと判定した場合、重複大ゲート判定工程S32へ進む。
小ゲート目標数が減っていないと判定した場合、重複判定処理を終了する。
【0081】
重複大ゲート判定工程S32において、大ゲート判定装置112は、CPU911などの処理装置を用いて、大ゲート目標数算出工程S12で算出した大ゲート目標数と、前回の大ゲート目標数算出工程S12で記憶した大ゲート目標数とを比較して、進入判定範囲内に重複判定範囲から出た目標があるか否かを判定する。
進入判定範囲内に重複判定範囲から出た目標があると判定した場合、第一通常モード設定工程S35へ進む。
進入判定範囲内に重複判定範囲から出た目標がないと判定した場合、分離モード設定工程S33へ進む。
【0082】
分離モード設定工程S33において、重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、第二判定モードを分離判定モードに設定する。
第二モード記憶装置117は、RAM914などの記憶装置を用いて、第二判定モードが分離判定モードであることを記憶する。
【0083】
重複前距離算出工程S34において、目標間距離算出装置121は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報のうち、前回の目標位置情報を入力する。
目標間距離算出装置121は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した目標位置情報に基づいて、重複前距離を算出する。
目標間距離記憶装置122は、RAM914などの記憶装置を用いて、目標間距離算出装置121が算出した重複前距離を記憶する。
【0084】
重複目標判定処理S40において、ゲート判定装置110は、重なった目標が再び離れたときに目標を区別するための判定をする。重複目標判定処理S40の詳細については、後述する。
【0085】
第一通常モード設定工程S35において、重複判定装置115は、CPU911などの処理装置を用いて、第一判定モードを通常判定モードに設定する。
第一モード記憶装置116は、RAM914などの記憶装置を用いて、第一判定モードが通常判定モードであることを記憶する。
その後、重複判定処理を終了する。
【0086】
図15は、この実施の形態におけるゲート判定装置110が重なった目標を判定する重複目標判定処理S40の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0087】
追尾目標移動距離算出工程S41において、追尾目標移動距離算出装置123は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報のうち、最新の目標位置情報と、前回の目標位置情報とを入力する。
追尾目標移動距離算出装置123は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した目標位置情報に基づいて、追尾目標移動距離を算出する。
追尾目標移動距離算出装置123は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した追尾目標移動距離を出力する。
【0088】
重複目標移動距離算出工程S42において、重複目標移動距離算出装置124は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報のうち、最新の目標位置情報と、前回の目標位置情報とを入力する。
重複目標移動距離算出装置124は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した目標位置情報に基づいて、重複目標移動距離を算出する。
重複目標移動距離算出装置124は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した重複目標移動距離を出力する。
【0089】
移動距離比較工程S43において、重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾目標移動距離算出工程S41で追尾目標移動距離算出装置123が出力した追尾目標移動距離を入力する。
重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、重複目標移動距離算出工程S42で重複目標移動距離算出装置124が出力した重複目標移動距離を入力する。
重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した追尾目標移動距離と、入力した重複目標移動距離とを比較して、どちらが短いかを判定する。
追尾目標移動距離のほうが重複目標移動距離より短いと判定した場合、重複第一目標判定工程S47へ進む。
重複目標移動距離のほうが追尾目標移動距離より短いと判定した場合、重複第二目標判定工程S48へ進む。
【0090】
重複第一目標判定工程S47において、重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標が重複前第一目標であると判定する。
重複目標記憶装置128は、RAM914などの記憶装置を用いて、追尾中の目標が重複前第一目標であることを記憶する。
その後、重複目標判定処理を終了する。
【0091】
重複第二目標判定工程S48において、重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標が重複前第二目標であると判定する。
重複目標記憶装置128は、RAM914などの記憶装置を用いて、追尾中の目標が重複前第二目標であることを記憶する。
その後、重複目標判定処理を終了する。
【0092】
図16は、この実施の形態におけるゲート判定装置110が追尾中の目標を判定する追尾目標判定処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0093】
第二モード判定工程S51において、分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、第二モード記憶装置117が記憶した第二判定モードを入力する。
分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した第二判定モードに基づいて、第二判定モードが通常判定モードか、分離判定モードかを判定する。
第二判定モードが通常判定モードであると判定した場合、通常ゲート設定工程S61へ進む。
第二判定モードが分離判定モードであると判定した場合、目標間距離ゲート設定工程S52へ進む。
【0094】
目標間距離ゲート設定工程S52において、目標間距離ゲート設定装置131は、CPU911などの処理装置を用いて、予測装置154が重なった目標について予測した予測位置を入力する。
目標間距離ゲート設定装置131は、CPU911などの処理装置を用いて、目標間距離記憶装置122が記憶した重複前距離を入力する。
目標間距離ゲート設定装置131は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した予測位置と、入力した重複前距離とに基づいて、分離判定範囲を設定する。
目標間距離ゲート設定装置131は、CPU911などの処理装置を用いて、設定した分離判定範囲を出力する。
【0095】
目標間距離ゲート判定工程S53において、分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、目標間距離ゲート設定工程S52で目標間距離ゲート設定装置131が出力した分離判定範囲を入力する。
分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報を入力する。
分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した分離判定範囲と、入力した目標位置情報とに基づいて、分離判定範囲内に新たな目標が観測されたか否かを判定する。
分離判定範囲内に新たな目標が観測されたと判定した場合、分離目標判定処理S70へ進む。
分離判定範囲内に新たな目標が観測されなかったかと判定した場合、通常ゲート設定工程S61へ進む。
【0096】
分離目標判定処理S70において、ゲート判定装置110は、離れた複数の目標と、重なる前の複数の目標との間で、どの目標とどの目標とが同じ目標であるかを判定する。分離目標判定処理S70の詳細については、後述する。
【0097】
第二通常モード設定工程S54において、分離判定装置132は、CPU911などの処理装置を用いて、第二判定モードを通常判定モードに設定する。
第二モード記憶装置117は、RAM914などの記憶装置を用いて、第二判定モードが通常判定モードであることを記憶する。
その後、追尾目標判定処理を終了する。
【0098】
通常ゲート設定工程S61において、通常ゲート設定装置141は、CPU911などの処理装置を用いて、予測装置154が追尾中の目標について予測した予測位置を入力する。
通常ゲート設定装置141は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した予測位置に基づいて、追尾判定範囲を設定する。
通常ゲート設定装置141は、CPU911などの処理装置を用いて、設定した追尾判定範囲を出力する。
【0099】
通常ゲート判定工程S62において、通常ゲート判定装置142は、CPU911などの処理装置を用いて、通常ゲート設定工程S61で通常ゲート設定装置141が出力した追尾判定範囲を入力する。
通常ゲート判定装置142は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報を入力する。
通常ゲート判定装置142は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した追尾判定範囲と、入力した目標位置情報とに基づいて、追尾判定範囲内で観測された目標を、追尾中の目標(追尾目標)と判定する。
その後、追尾目標判定処理を終了する。
【0100】
図17は、この実施の形態におけるゲート判定装置110が離れた目標を判定する分離目標判定処理S70の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0101】
分離目標移動距離算出工程S71において、分離目標移動距離算出装置133は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した目標位置情報のうち、最新の目標位置情報と、前回の目標位置情報とを入力する。
分離目標移動距離算出装置133は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した目標位置情報に基づいて、複数の分離目標移動距離を算出する。
分離目標移動距離算出装置133は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した複数の分離目標移動距離を出力する。
【0102】
第一目標判定工程S72において、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標移動距離算出工程S71で分離目標移動距離算出装置133が出力した複数の分離目標移動距離を入力する。
分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した複数の分離目標移動距離を比較して、分離目標移動距離が短いほうの目標が分離後第一目標であると判定する。
第二目標判定工程S73において、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、第一目標判定工程S72における比較の結果に基づいて、分離目標移動距離が長いほうの目標が分離後第二目標であると判定する。
【0103】
判定結果参照工程S77において、分離目標判定装置135は、重複第一目標判定工程S47または重複第二目標判定工程S48で重複目標記憶装置128が記憶した重複目標判定装置127の判定結果を入力する。
分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した判定結果に基づいて、追尾中の目標が重複前第一目標であるか、重複前第二目標であるかを判定する。
追尾中の目標が重複前第一目標であると判定した場合、第一追尾目標判定工程S78へ進む。
追尾中の目標が重複前第二目標であると判定した場合、第二追尾目標判定工程S79へ進む。
【0104】
第一追尾目標判定工程S78において、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、第一目標判定工程S72で判定した分離後第一目標が追尾中の目標であると判定する。また、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、第二目標判定工程S73で判定した分離後第二目標が他の目標であると判定する。
その後、分離目標判定処理を終了する。
【0105】
第二追尾目標判定工程S79において、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、第二目標判定工程S73で判定した分離後第二目標が追尾中の目標であると判定する。また、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、第二目標判定工程S72で判定した分離後第一目標が他の目標であると判定する。
その後、分離目標判定処理を終了する。
【0106】
追尾装置150は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標判定処理S70で分離目標判定装置135が追尾中の目標であると判定した目標を、追尾中の目標として追尾する。また、追尾装置150は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標判定処理S70で分離目標判定装置135が他の目標であると判定した目標を、他の目標として追尾する。
【0107】
次に、この実施の形態における目標追尾装置100の効果について説明する。
対比のため、重複判定をせず、複数の目標が重なった場合も通常と同じ追尾処理をする目標追尾装置と比較して説明する。
【0108】
図18は、対比例の目標追尾装置が目標を追尾する様子の一例を示す模式図である。
なお、目標511及び目標512は、図12に示したように移動したものとする。
【0109】
対比例の目標追尾装置は、目標512の追尾において、正しく目標を追尾する。
対比例の目標追尾装置は、目標511の追尾において、2つの目標が重なった時点では、目標の移動距離が大きいので、2つの目標が重なって観測された目標の位置535が追尾判定範囲543から外れて、メモリトラックが発生している。対比例の目標追尾装置は、追尾判定範囲543の外で受信した信号に対して追尾を行わないからである。
その後、対比例の目標追尾装置は、重なった目標を捕捉し、目標511として追尾する。すなわち、複数の目標が重複して観測値が1個になると、それぞれの追尾に同一の観測値が割り当てられた状態で追尾が継続する。
重なった目標が離れると、対比例の目標追尾装置は、離れた目標が観測された位置のうち、位置534は追尾判定範囲内だが、位置533は追尾判定範囲外なので、位置534にある目標を目標511として追尾する。すなわち、一度捕捉した目標を継続して追尾するため、分離することなく、1個の観測値に対して2つの追尾航跡が乗り移ったまま推移する。
このように、観測値が吸収される側の目標の追尾が、重なった目標の観測値を捕捉後は、そのまま継続し、目標が分離した後も乗り移りが継続する場合がある。
【0110】
図19は、この実施の形態における目標追尾装置100が目標511を追尾する様子の一例を示す模式図である。
なお、目標511及び目標512は、図18と同様、図12に示したように移動したものとする。
【0111】
目標511に着目した相関処理において、ゲート判定装置110は、追尾中の目標である目標511に、他の目標である目標512が近づいてきた段階で、重複判定モードとなり、目標511と目標512が重なって1つの目標として観測される可能性に備える。
ゲート判定装置110は、目標511と目標512とが重なって1つの目標として観測されると、分離判定モードになり、追尾判定範囲よりも広い分離判定範囲544を監視する。このため、2つの目標が離れて再び2つの目標として観測されたとき、目標が観測された位置533及び位置534は、どちらも分離判定範囲544に含まれる。
ゲート判定装置110は、更に、位置533に観測された目標と、位置534に観測された目標とのうち、どちらが目標511で、どちらが目標512かを判定する。この例において、追尾中の目標である目標511の追尾目標移動距離は、他の目標である目標512の重複目標位置距離よりも大きく、位置533に観測された目標の分離目標移動距離は、位置534に観測された目標の分離目標移動距離より大きいので、ゲート判定装置110は、位置533に観測された目標が、追尾中の目標である目標511と同一の目標であり、位置534に観測された目標が、他の目標である目標512と同一の目標であると正しく判定する。
【0112】
図20は、この実施の形態における目標追尾装置100が目標512を追尾する様子の一例を示す模式図である。
なお、目標511及び目標512は、図18と同様、図12に示したように移動したものとする。
【0113】
目標512に着目した相関処理においても、ゲート判定装置110は、追尾中の目標である目標512に、他の目標である目標511が近づいてきた段階で、重複判定モードとなる。
ゲート判定装置110は、目標511と目標512とが重なって1つの目標として観測されると、分離判定モードになり、分離判定範囲544を監視する。ここで、目標間距離551は、目標511に着目した相関処理の場合と同じであるから、分離判定範囲544も、目標511に着目した相関処理と同じである。
その後、2つの目標が離れて再び2つの目標として観測されたとき、ゲート判定装置110は、位置534に観測された目標とのうち、どちらが目標511で、どちらが目標512かを判定する。この例において、追尾中の目標である目標512の追尾目標移動距離は、他の目標である目標511の重複目標位置距離よりも小さく、位置533に観測された目標の分離目標移動距離は、位置534に観測された目標の分離目標移動距離より大きいので、ゲート判定装置110は、位置534に観測された目標が、追尾中の目標である目標512と同一の目標であり、位置533に観測された目標が、他の目標である目標511と同一の目標であると正しく判定する。
【0114】
このように、ゲート判定装置110は、目標511に着目した相関処理においても、目標512に着目した相関処理においても、同じ結論に達する。しかし、万一異なる結論に達した場合に備え、ゲート判定装置110は、両者の結論が一致するか否かをチェックしてもよい。
追尾装置150は、ゲート判定装置110の判定結果に基づいて、目標511及び目標512をそれぞれ正しく追尾する。
【0115】
図21は、対比例の目標追尾装置が目標を追尾する様子の別の例を示す模式図である。
なお、目標511は、目標512と重なったあと旋回して移動したものとする。
また、対比例の目標追尾装置は、1個の観測値に対して2つの追尾航跡が割り当てられることを禁止する追尾処理をするものとする。
【0116】
対比例の目標追尾装置は、目標513の追尾において、正しく目標を追尾する。
対比例の目標追尾装置は、2つの目標が重なって観測された目標の位置535を目標513の追尾航跡に使ってしまったので、目標511の追尾において、位置535が追尾判定範囲543内であるか否かに関わらず、他に観測された目標を探し、他に観測された目標がないので、メモリトラックが発生している。
その後しばらくは、メモリトラック状態が継続するが、目標511が旋回して、2つの目標が離れたあと全く違う方向に観測されるので、これを捕捉することができない。
このように、メモリトラックが起こった結果、追尾をはずす場合がある。
【0117】
図22は、この実施の形態における目標追尾装置100が目標を追尾する様子の別の例を示す模式図である。
なお、目標511及び目標512は、図21と同様に移動したものとする。
【0118】
分離判定範囲544は、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測される際、どちらの方向に離れても対応できるよう、重なった目標の予測位置を中心にして全方向対称に設定される。したがって、目標511が目標512と重なっている間に旋回した場合でも、目標が観測された位置533が分離判定範囲544に含まれ、正しく追尾することができる。
【0119】
この実施の形態における目標追尾装置100は、
情報を処理する処理装置(CPU911)と、重複判定装置115と、分離判定装置132と、追尾装置150とを有することを特徴とする。
上記重複判定装置115は、上記処理装置(CPU911)を用いて、観測された目標の位置を表わす目標位置情報に基づいて、追尾中の目標を含む複数の目標が重なって一つの目標として観測されたか否かを判定することを特徴とする。
上記分離判定装置132は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置115が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを判定することを特徴とする。
上記追尾装置150は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置132が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうちのいずれかの目標を、上記追尾中の目標として追尾することを特徴とする。
【0120】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと重複判定装置115が判定した場合、通常の追尾処理と異なり、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを分離判定装置132が判定して、重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のいずれかを追尾装置150が追尾するので、追尾を外すことがないという効果を奏する。
【0121】
この実施の形態における分離判定装置132は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標位置情報に基づいて、所定の分離判定範囲内に新たな目標が観測されたか否かを判定し、上記所定の分離判定範囲内に新たな目標が観測されたと判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと判定することを特徴とする。
【0122】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、分離判定範囲内に新たな目標が観測された場合に、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと分離判定装置132が判定するので、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測された場合に、離れた目標を確実に追尾することができるという効果を奏する。
【0123】
この実施の形態における目標追尾装置100は、更に、目標間距離算出装置121と、目標間距離ゲート設定装置131とを有することを特徴とする。
上記目標間距離算出装置121は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置115が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標が重なる前に観測された位置と、上記追尾中の目標と重なった他の目標が重なる前に観測された位置との間の距離を算出して、重複前距離とすることを特徴とする。
上記目標間距離ゲート設定装置131は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記重なった複数の目標が観測されると予測される位置を中心として、上記目標間距離算出装置121が算出した重複前距離よりも遠い範囲まで含む範囲を設定して、分離判定範囲とすることを特徴とする。
上記分離判定装置132は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標間距離ゲート設定装置131が設定した分離判定範囲を上記所定の分離判定範囲とし、上記分離判定範囲内に新たな目標が観測されたか否かを判定することを特徴とする。
【0124】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、複数の目標が重なる直前に観測された位置の間の距離に基づいて、目標間距離ゲート設定装置131が分離判定範囲を設定するので、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測される位置が、分離判定範囲に適切に含まれ、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを正しく判定することができるという効果を奏する。
【0125】
この実施の形態における目標追尾装置100は、更に、追尾目標移動距離算出装置123と、重複目標移動距離算出装置124と、重複目標判定装置127と、分離目標移動距離算出装置133と、分離目標判定装置135とを有することを特徴とする。
上記追尾目標移動距離算出装置123は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置115が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標が重なる前に観測された位置と、上記複数の目標が重なった後に一つの目標として観測された位置との間の距離を算出して、追尾目標移動距離とすることを特徴とする。
上記重複目標移動距離算出装置124は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置115が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標と重なった他の目標が重なる前に観測された位置と、上記複数の目標が重なった後に一つの目標として観測された位置との間の距離を算出して、重複目標移動距離とすることを特徴とする。
上記重複目標判定装置127は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記追尾目標移動距離算出装置123が算出した追尾目標移動距離と、上記重複目標移動距離算出装置124が算出した重複目標移動距離とを比較して、上記追尾目標移動距離のほうが上記重複目標移動距離よりも短い場合に、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると判定し、上記追尾目標移動距離のほうが上記重複目標移動距離よりも長い場合に、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると判定することを特徴とする。
上記分離目標移動距離算出装置133は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置132が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記重なった複数の目標が離れる前に一つの目標として観測された位置と、上記重なった複数の目標が離れた後に再び複数の目標として観測された位置それぞれとの間の距離を算出して、複数の分離目標移動距離とすることを特徴とする。
上記分離目標判定装置135は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記分離目標移動距離算出装置133が算出した複数の分離目標移動距離に基づいて、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標移動距離が最も短い目標を分離後第一目標と判定することを特徴とする。
上記追尾装置150は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると上記重複目標判定装置127が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置135が分離後第一目標と判定した目標を、上記追尾中の目標として追尾し、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると上記重複目標判定装置127が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置135が分離後第一目標と判定した目標以外の目標を、上記追尾中の目標として追尾することを特徴とする。
【0126】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、追尾目標移動距離が重複目標移動距離より短い場合、追尾装置150が、分離目標移動距離が短い目標を、追尾中の目標として追尾し、追尾目標移動距離が重複目標移動距離より長い場合、追尾装置150が、分離目標移動距離が長い目標を、追尾中の目標として追尾するので、重なった目標が離れて観測された複数の目標のうち、どの目標が追尾中の目標であるかを正しく判定することができ、重なる前と同じ目標を正しく追尾することができるという効果を奏する。
【0127】
この実施の形態における重複判定装置115は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標を含む複数の目標のいずれかが観測されなくなったか否かを判定し、上記追尾中の目標を含む複数の目標のいずれかが観測されなくなったと判定した場合に、上記追尾中の目標を含む複数の目標が重なったと判定することを特徴とする。
【0128】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、距離の近い複数の目標のいずれかが観測されなくなった場合に、複数の目標が重なったと重複判定装置115が判定するので、複数の目標が重なったことを正しく判定することができるという効果を奏する。
【0129】
この実施の形態における目標追尾装置100は、更に、小ゲート設定装置113と、小ゲート判定装置114とを有することを特徴とする。
上記小ゲート設定装置113は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記追尾中の目標が観測されると予測される位置を含む所定の範囲を設定して、重複判定範囲とすることを特徴とする。
上記小ゲート判定装置114は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標位置情報に基づいて、上記小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲内に観測された目標の数が減ったか否かを判定することを特徴とする。
上記重複判定装置115は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標の数が減ったと上記小ゲート判定装置114が判定した場合に、上記追尾中の目標を含む複数の目標が重なったとを判定することを特徴とする。
【0130】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲内に観測された目標の数が減った場合に、複数の目標が重なったと重複判定装置115が判定するので、複数の目標が重なったことを正しく判定することができるという効果を奏する。
【0131】
この実施の形態における目標追尾装置100は、更に、大ゲート設定装置111と、大ゲート判定装置112とを有することを特徴とする。
上記大ゲート設定装置111は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記重複判定範囲を包含する所定の範囲を設定して、進入判定範囲とすることを特徴とする。
上記大ゲート判定装置112は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標位置情報に基づいて、上記大ゲート設定装置111が設定した進入判定範囲内に、上記小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲から出た目標があるか否かを判定することを特徴とする。
上記重複判定装置115は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標の数が減ったと上記小ゲート判定装置114が判定し、かつ、上記進入判定範囲内に上記重複判定範囲から出た目標がないと上記大ゲート判定装置112が判定した場合に、上記追尾中の目標を含む複数の目標のいずれかが観測されなくなったと判定することを特徴とする。
【0132】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、重複判定範囲内の目標の数が減ったと小ゲート判定装置114が判定した場合に、重複判定範囲から進入判定範囲内に出た目標がないことを確認した上で、上記追尾中の目標を含む複数の目標のいずれかが観測されなくなったと重複判定装置115が判定するので、複数の目標が重なったことを更に正しく判定することができるという効果を奏する。
【0133】
この実施の形態における目標観測システム800は、
観測装置200と、目標追尾装置100とを有することを特徴とする。
上記観測装置200は、目標の位置を観測し、観測した結果に基づいて、上記目標位置情報を生成することを特徴とする。
【0134】
この実施の形態における目標観測システム800によれば、複数の目標が重なって、観測装置200が一つの目標として観測した場合であっても、複数の目標それぞれを正しく追尾することができるという効果を奏する。
【0135】
この実施の形態における目標追尾装置100が目標を追尾する目標追尾方法は、以下の工程を有することを特徴とする。
上記重複判定装置115が、上記処理装置(CPU911)を用いて、観測された目標の位置を表わす目標位置情報に基づいて、追尾中の目標を含む複数の目標が重なって一つの目標として観測されたか否かを判定する(重複判定処理)。
上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置115が判定した場合に、上記分離判定装置132が、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記目標位置情報に基づいて、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを判定する(分離判定処理)。
上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置132が判定した場合に、上記追尾装置150が、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうちのいずれかの目標を、上記追尾中の目標として追尾する(追尾処理)。
【0136】
この実施の形態における目標追尾方法によれば、複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと重複判定装置115が判定した場合、通常の追尾処理と異なり、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを分離判定装置132が判定して、重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のいずれかを追尾装置150が追尾するので、追尾を外すことがないという効果を奏する。
【0137】
この実施の形態における目標追尾装置100は、情報を処理する処理装置(CPU911)を有するコンピュータを目標追尾装置100として機能させるプログラムを、上記コンピュータが実行することにより、実現することができる。
【0138】
この実施の形態における目標追尾装置100を実現するプログラムによれば、複数の目標が重なって一つの目標として観測された場合、通常の追尾処理と異なり、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを判定して、重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のいずれかを追尾するので、追尾を外すことがない目標追尾装置100を実現できるという効果を奏する。
【0139】
以上説明した目標追尾装置100は、追尾処理において、複数の目標が立体的に交錯し、同じ航跡上に重複して検出されるような時、観測点が合体することにより、航跡が変形するような状況でも、それぞれの目標を継続して追尾し、重複目標が分離した後もそれぞれの追尾航跡がそれぞれの目標を追尾することができる。
【0140】
以上説明した目標追尾装置100は、複数の目標が立体的に交錯して重複する現象を把握するため、通常のゲート範囲(通常ゲート、追尾ゲート、追尾判定範囲)と並行し、ある一定の大きさをしたゲート(小ゲート、重複判定範囲)を設定し、接近する重複しそうな他の目標を検出し、その接近してくる他の目標との距離情報(重複前距離)を保持する。
【0141】
以上説明した目標追尾装置100は、目標同士が重複した際、通常のゲート(通常ゲート、追尾ゲート、追尾判定範囲)設定と同時に、他の目標との距離情報を使用し、ゲート(目標間距離ゲート、分離判定範囲)を設定し、重複目標から分離する目標を検出する。
【0142】
以上説明した目標追尾装置100は、目標が重複した際に、目標の重複時の移動距離が大の方の目標の順位を下位(重複前第二目標)、移動距離が小の方の目標の順位を上位(重複前第一目標)とする順位付けを行い、重複目標が分離した時にこの順位によって追尾する相手を選択し、目標の重複前と重複後の追尾航跡を連続させる。
【0143】
以上説明した目標追尾装置100は、小ゲート(重複判定範囲)内にて複数の目標が重複し、観測値が1個になった時、重複による観測値の統合なのか、他の目標が小ゲート外に出たために観測値が1個になったのかの判断を簡潔にするため、小ゲート外にさらに大ゲートを設定し、小ゲート内で検出中の複数目標の観測値が1個になり、大ゲート内への移動も確認できない場合に重複したと判断する。
【0144】
以上説明した目標追尾装置100によれば、このように目標同士が重複する際に発生する、ゲート設定範囲以上の距離を移動したり、その移動先が今までの航跡と不連続であったりするような状態でも、的確に追尾を維持し、また、目標分離時に分離目標に対して、目標重複前と同じ追尾航跡として追尾が継続される。すなわち、目標同士が接近し、重複しそうになった場合、通常のゲート設定の追尾だけでなく、接近してくる目標を検出するための小ゲートを設定し、重複現象に備え、また、目標同士が重複する直前の目標間の距離を記憶しておき、目標同士が重複して数サンプル後に重複目標からどの方向に分離するか不明である目標も的確に検出し、追尾を維持させる。
【0145】
以上説明した目標追尾装置100は、重複現象の発生に備えるため、通常のゲート設定以外に、他の目標との接近を検出するためのゲート(大ゲート、進入判定範囲)を使用する。また、大ゲート内に捕捉した他目標の動きを検出するため、もう少しサイズの小さいゲート(小ゲート、重複判定範囲)を使用する。
大ゲート判定装置112は、大ゲート内への他の目標の侵入を検出する。大ゲート内で他の目標を捕捉した場合、目標間距離記憶装置122は、目標A(追尾中の目標)と目標B(他の目標)の距離情報(目標間距離)を記録する。引き続き、小ゲート設定装置113は、小ゲートを設定し、目標Bの動きに備える。目標Bが大ゲートから小ゲートに入り、小ゲートから突然消えた場合、重複判定装置115は、目標重複と判断する。大ゲートからそのまま消えた場合、大ゲート外に出たものと判断し、重複現象とは判断しない。
小ゲート内で目標Bを捕捉した場合も、目標間距離記憶装置122は、継続して目標Aと目標Bの距離情報(目標間距離)を記録し、目標同士の重複に備える。この後、小ゲート内から目標Bが消え、大ゲート内に目標Bが移動していないことも確認できた場合、重複判定装置115は、目標Aと目標Bが重複したと判断する。これは、本来であれば目標Aと目標Bの2つの目標が存在しているが、目標同士が近接、あるいは重なっているため、観測値が1個に重複されている状態である。
この時に、最後に記録された目標Aと目標Bの距離α(重複前距離)を使い、目標間距離ゲート設定装置131は、ゲート(目標間距離ゲート、分離判定範囲)を設定する。
目標間距離ゲート(分離判定範囲)は、目標同士の重複時に、この距離α離れた箇所の目標同士が重複したことから、その後に目標同士が分離する際も、同じく距離α程度離れた箇所に出現する分離目標を捕捉するためのゲートであり、αの2倍程度のゲートサイズとなる。
【0146】
このようにして、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測された場合、離れた複数の目標は分離判定範囲内となるので、ゲート判定装置110は、離れた複数の目標を確実に捕捉することができる。
【0147】
以上説明した目標追尾装置100は、重複目標から分離目標へ追尾を割当てるため、2つの追尾航跡に対し、重複前にどちらの目標を追尾していたのかの記憶させておく。
小ゲート内に目標Bが侵入して来た後、目標A、目標B、それぞれ自分がどれだけ移動したのかの距離情報(追尾目標移動距離、重複目標移動距離)もあわせて記憶していく。
目標AとBが重複した際、重複目標に対し、目標Aと目標Bがどれだけ移動したか、移動距離を、重複目標判定装置127が比較し、移動距離の短い目標と、移動距離の長い目標を認識しておく。重複目標から分離した目標に対しては、距離の長い目標が追尾を行い、目標重複前と後とで連続性のある追尾航跡を作成する。
これにより、目標Bが目標Aから分離する際、目標間距離ゲートにて分離目標を捕捉し、再度目標Bの追尾が目標Bを追尾するように割り振ることができる。
【0148】
なお、以上の説明において、ゲート判定装置110は、追尾装置150が追尾中の複数の目標について、注目する目標を一つずつ選択して、相関処理をする構成として説明したが、ゲート判定装置110は、追尾装置150が追尾中の複数の目標について、同時にあるいは並行して、相関処理をしてもよい。
【0149】
実施の形態2.
実施の形態2について、図23〜図25を用いて説明する。
この実施の形態における目標観測システム800の全体構成、目標追尾装置100のブロック構成は、実施の形態1で説明したものと同様なので、ここでは説明を省略する。
【0150】
この実施の形態では、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測された場合において、重なる前の目標と、離れた後の目標とを同定する他の方式について説明する。
【0151】
図23は、この実施の形態におけるゲート判定装置110の機能ブロックの構成の一例を示す詳細ブロック図である。
なお、実施の形態1で説明したゲート判定装置110と共通する部分については、同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0152】
ゲート判定装置110は、追尾目標移動距離算出装置123、重複目標移動距離算出装置124、分離目標移動距離算出装置133に代えて、追尾目標観測強度算出装置125、重複目標観測強度算出装置126、分離目標観測強度算出装置134を有する。
【0153】
観測装置200が生成する観測目標情報には、目標位置情報のほか、目標を観測した観測強度(例えば反射波の受信強度)を表わす情報(以下「観測強度情報」と呼ぶ。)が含まれる。
【0154】
追尾目標観測強度算出装置125は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定した場合、観測装置200が生成した観測強度情報に基づいて、追尾中の目標が他の目標と重なる直前に観測された観測強度(以下「追尾目標観測強度」と呼ぶ。)を算出する。
【0155】
重複目標観測強度算出装置126は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標と他の目標とが重なったと重複判定装置115が判定した場合、観測装置200が生成した観測強度情報に基づいて、追尾中の目標と重なった他の目標が重なる直前に観測された観測強度(以下「重複目標観測強度」と呼ぶ。)を算出する。
【0156】
重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾目標観測強度算出装置125が算出した追尾目標観測強度と、重複目標観測強度算出装置126が算出した重複目標観測強度とを比較する。重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、比較した結果に基づいて、追尾目標観測強度のほうが重複目標観測強度より強い場合、追尾中の目標が重複前第一目標であると判定し、追尾中の目標に重複した他の目標が重複前第二目標であると判定する。逆に、重複目標観測強度のほうが追尾目標観測強度よりも強い場合、重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾中の目標が重複前第二目標であると判定し、他の目標が重複前第一目標であると判定する。
【0157】
分離目標観測強度算出装置134は、CPU911などの処理装置を用いて、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測されたと分離判定装置132が判定した場合、観測装置200が生成した観測強度情報に基づいて、重なった目標が離れて複数の目標として観測された直後のそれぞれの観測強度(以下「分離目標観測強度」と呼ぶ。)を算出する。
【0158】
分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標観測強度算出装置134が算出した複数の分離目標観測強度を比較する。分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、比較した結果に基づいて、重なった目標が離れて観測された複数の目標のうち、分離目標観測強度が最も強い目標を分離後第一目標と判定し、分離後第一目標以外の目標を分離後第二目標と判定する。
分離目標判定装置135は、重複目標記憶装置128が記憶した重複目標判定装置127の判定結果に基づいて、分離後第一目標と分離後第二目標とのうち、どちらが追尾中の目標であるかを判定する。
追尾中の目標が重複前第一目標であると重複目標判定装置127が判定した場合、分離目標判定装置135は、分離後第一目標が追尾中の目標であると判定し、分離後第二目標が他の目標であると判定する。
追尾中の目標が重複前第二目標であると重複目標判定装置127が判定した場合、分離目標判定装置135は、分離後第二目標が追尾中の目標であると判定し、分離後第一目標が他の目標であると判定する。
【0159】
実施の形態1では、複数の目標が重なったとき、及び、複数の目標が離れたときの移動距離に基づいて、目標の同定をしている。この実施の形態では、複数の目標が重なる前、および、複数の目標が離れた後の観測強度に基づいて、目標を同定する。
【0160】
目標の観測強度は、目標の大きさ、反射率、観測装置200との間の距離などにより定まる。目標の大きさや反射率は変わらないので、観測装置200との間の距離が変わらなければ、目標の観測強度も変わらない。
そこで、複数の目標が重なる前と、複数の目標が離れた後とで、観測装置200との間の距離がほぼ同じだと仮定すれば、観測強度がほぼ同じ目標が、同一の目標であると判定することができる。
複数の目標が重なる前の観測強度に順位を付けて重複目標記憶装置128が記憶しておき、重なった目標が離れて再び複数の目標として観測された場合に、分離目標判定装置135が、順位の同じ目標を同一の目標であると判定する。これにより、目標を正しく同定することができる。
【0161】
次に、動作について説明する。
【0162】
図24は、この実施の形態におけるゲート判定装置110が重なった目標を判定する重複目標判定処理S40の流れの一例を示すフローチャート図である。
なお、実施の形態1で説明した重複目標判定処理と共通する部分については、同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0163】
追尾目標観測強度算出工程S44において、追尾目標観測強度算出装置125は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した観測強度情報を入力する。
追尾目標観測強度算出装置125は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した観測強度情報に基づいて、追尾目標観測強度を算出する。
追尾目標観測強度算出装置125は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した追尾目標観測強度を出力する。
【0164】
重複目標観測強度算出工程S45において、重複目標観測強度算出装置126は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した観測強度情報を入力する。
重複目標観測強度算出装置126は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した観測強度情報に基づいて、重複目標観測強度を算出する。
重複目標観測強度算出装置126は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した重複目標観測強度を出力する。
【0165】
観測強度比較工程S46において、重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、追尾目標観測強度算出工程S44で追尾目標観測強度算出装置125が出力した追尾目標観測強度を入力する。
重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、重複目標観測強度算出工程S45で重複目標観測強度算出装置126が出力した重複目標観測強度を入力する。
重複目標判定装置127は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した追尾目標観測強度と、入力した重複目標観測強度とを比較して、どちらが強いかを判定する。
追尾目標観測強度のほうが重複目標観測強度よりも強いと判定した場合、重複第一目標判定工程S47へ進む。
重複目標観測強度のほうが追尾目標観測強度よりも強いと判定した場合、重複第二目標判定工程S48へ進む。
【0166】
図25は、この実施の形態におけるゲート判定装置110が離れた目標を判定する分離目標判定処理S70の流れの一例を示すフローチャート図である。
なお、実施の形態1で説明した分離目標判定処理と共通する部分については、同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0167】
分離目標観測強度算出工程S74において、分離目標観測強度算出装置134は、CPU911などの処理装置を用いて、観測装置200が生成した観測強度情報を入力する。
分離目標観測強度算出装置134は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した観測強度情報に基づいて、複数の分離目標観測強度を算出する。
分離目標観測強度算出装置134は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した複数の分離目標観測強度を出力する。
【0168】
第一目標判定工程S75において、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、分離目標観測強度算出工程S74で分離目標観測強度算出装置134が出力した複数の分離目標観測強度を入力する。
分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した複数の分離目標観測強度を比較して、分離目標観測強度が強いほうの目標が分離後第一目標であると判定する。
第二目標判定工程S76において、分離目標判定装置135は、CPU911などの処理装置を用いて、第一目標判定工程S75における比較の結果に基づいて、分離目標観測強度が弱いほうの目標が分離後第二目標であると判定する。
【0169】
このように、目標の観測強度に基づいて、重なる前の目標と、離れた後の目標とを同定することにより、目標が重なる前と同じ目標の追尾を継続することができる。
【0170】
この実施の形態における目標追尾装置100は、更に、重複目標判定装置127と、分離目標判定装置135とを有することを特徴とする。
上記重複目標判定装置127は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記追尾中の目標と上記他の目標とが重複したと上記重複判定装置115が判定した場合に、観測された目標の観測強度を表わす観測強度情報に基づいて、上記追尾中の目標が重なる前に観測された観測強度と、上記追尾中の目標と重なった他の目標が重なる前に観測された観測強度とを比較して、上記追尾中の目標の観測強度のほうが上記他の目標の観測強度よりも強い場合に、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると判定し、上記追尾中の目標の観測強度のほうが、上記他の目標の観測強度よりも弱い場合に、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると判定することを特徴とする。
上記分離目標判定装置135は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置132が判定した場合に、上記観測強度情報に基づいて、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標の観測強度を比較して、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、観測強度が最も強い目標を分離後第一目標と判定することを特徴とする。
上記追尾装置150は、上記処理装置(CPU911)を用いて、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると上記重複目標判定装置127が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置135が分離後第一目標であると判定した目標を、上記追尾中の目標として追尾し、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると上記重複目標判定装置127が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置135が分離後第一目標であると判定した目標以外の目標(分離後第二目標)を、上記追尾中の目標として追尾することを特徴とする。
【0171】
この実施の形態における目標追尾装置100によれば、追尾目標観測強度が重複目標観測強度より強い場合、追尾装置150が、分離目標観測強度が強い目標を、追尾中の目標として追尾し、追尾目標観測強度が重複目標観測強度より弱い場合、追尾装置150が、分離目標観測強度が弱い目標を、追尾中の目標として追尾するので、重なった目標が離れて観測された複数の目標のうち、どの目標が追尾中の目標であるかを正しく判定することができ、重なる前と同じ目標を正しく追尾することができるという効果を奏する。
【0172】
なお、実施の形態1で説明した移動距離に基づく同定と、この実施の形態で説明した観測強度に基づく同定とを組み合わせて、目標を同定してもよい。
例えば、移動距離による同定を主、観測強度による同定を従として、分離目標判定装置135は、まず、移動距離による同定を試みる。追尾目標移動距離と重複目標移動距離との差や、分離目標移動距離の差がわずかである場合、分離目標判定装置135は、観測強度による同定に切り替えて、目標を同定する。
逆に、観測強度による同定を主、移動距離による同定を従としてもよい。あるいは、移動距離による同定と観測強度による同定とを所定の重み付けにより結合して、より信頼性の高い判定結果を得ることとしてもよい。
例えば、重複目標判定装置127は、追尾目標移動距離と重複目標移動距離との差ΔL1と、追尾目標観測強度と重複目標観測強度との差ΔA1とを算出し、重複目標記憶装置128が記憶しておく。分離目標判定装置135は、分離目標移動距離の差ΔL2と、分離目標観測強度の差ΔA2とを算出する。分離目標判定装置135は、D=a・ΔL1・ΔL2+b・ΔA1・ΔA2(a及びbは、所定の重み付けを表わす定数。)を算出し、Dの符号により、目標を同定する。
【0173】
また、分離目標判定装置135は、観測強度の値に基づいて目標を同定してもよい。
例えば、重複目標記憶装置128は、追尾目標観測強度算出装置125が算出した追尾目標観測強度と、重複目標観測強度算出装置126が算出した重複目標観測強度とを記憶しておく。分離目標判定装置135は、重複目標記憶装置128が記憶した追尾目標観測強度及び重複目標観測強度と、分離目標観測強度算出装置134が算出した複数の分離目標観測強度とをそれぞれ比較して、追尾目標観測強度または重複目標観測強度と、分離目標観測強度との差が小さいペアを見つけることにより、目標を同定する。
【0174】
この方式は、特に3以上の目標が重なった場合に有効である。
例えば、2つの目標が重なって1つの目標として観測された目標に、更に別の目標が重なって、合計3つの目標が重なった1つの目標として観測された後、いずれかの目標が離れて2つの目標として観測されたとする。分離目標判定装置135は、それぞれの目標の追尾目標観測強度または重複目標観測強度と、2つの分離目標観測強度とをそれぞれ比較し、追尾目標観測強度または重複目標観測強度と、分離目標観測強度との差が最も少ないペアを見つける。分離目標判定装置135は、見つけたペアが同じ目標であり、残った2つの目標がまだ重なっていると仮定する。分離目標判定装置135は、その仮定に矛盾がないか検証し、矛盾があれば、次に差が少ないペアを見つけて仮定を立てる。仮定に矛盾がある場合とは、例えば、観測強度の強い2つの目標がまだ重なっているはずなのに、残った目標の観測強度が弱い場合などである。分離目標判定装置135は、矛盾がない仮定が見つかった場合、その仮定に基づいて、目標を同定する。
【0175】
同様に、分離目標判定装置135は、移動距離の値に基づいて目標を同定してもよいし、観測強度の値による同定と、移動距離の値による同定とを組み合わせて、目標を同定してもよい。
【0176】
以上説明した目標追尾装置100は、目標が重複する前のそれぞれの目標の受信強度を記憶させておき、分離後のそれぞれの目標の受信強度と比較し、割当てることにより、目標重複前と連続性のある追尾航跡を作成する。
【0177】
以上説明した目標追尾装置100は、重複目標から分離目標へ追尾を割り当てるため、2つの追尾航跡に対し、重複前に各目標の受信強度を記憶させておき、分離後の目標の受信強度と比較し、近い値のものを割当てることにより、目標重複前と連続性のある追尾航跡の作成を可能とする。
これにより、重なった目標からある目標が分離する際、目標間距離ゲートにて分離目標を捕捉し、目標重複前と同じ目標の追尾を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】実施の形態1における目標観測システム800の全体構成の一例を示すシステム構成図。
【図2】実施の形態1における目標追尾装置100のハードウェア資源の一例を示す図。
【図3】実施の形態1における目標追尾装置100の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図。
【図4】実施の形態1における観測装置200が観測する目標と、観測装置200が生成する目標位置情報との関係の一例を示す模式図。
【図5】実施の形態1における観測装置200が観測する目標と、観測装置200が生成する目標位置情報との関係の別の例を示す模式図。
【図6】実施の形態1におけるゲート判定装置110の機能ブロックの構成の一例を示す詳細ブロック図。
【図7】実施の形態1におけるゲート判定装置110が設定するゲートの間の関係の一例を示す模式図。
【図8】実施の形態1における大ゲート設定装置111が設定した進入判定範囲541に他の目標516が入ってきたところを示す模式図。
【図9】実施の形態1における小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲542に他の目標516が入ってきたところを示す模式図。
【図10】実施の形態1における小ゲート設定装置113が設定した重複判定範囲542内で他の目標516が観測されなくなったところを示す模式図。
【図11】実施の形態1における目標間距離ゲート設定装置131が設定した分離判定範囲544内で再び他の目標516が観測されたところを示す模式図。
【図12】実施の形態1における観測装置200が観測する目標の動きと、観測装置200が生成する目標位置情報が表わす目標の位置との関係の一例を示す模式図。
【図13】実施の形態1における観測装置200が観測する目標の動きと、観測装置200が生成する目標位置情報が表わす目標の位置との関係の別の例を示す模式図。
【図14】実施の形態1におけるゲート判定装置110が複数の目標の重複を判定する重複判定処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【図15】実施の形態1におけるゲート判定装置110が重なった目標を判定する重複目標判定処理S40の流れの一例を示すフローチャート図。
【図16】実施の形態1におけるゲート判定装置110が追尾中の目標を判定する追尾目標判定処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【図17】実施の形態1におけるゲート判定装置110が離れた目標を判定する分離目標判定処理S70の流れの一例を示すフローチャート図。
【図18】対比例の目標追尾装置が目標を追尾する様子の一例を示す模式図。
【図19】実施の形態1における目標追尾装置100が目標511を追尾する様子の一例を示す模式図。
【図20】実施の形態1における目標追尾装置100が目標512を追尾する様子の一例を示す模式図。
【図21】対比例の目標追尾装置が目標を追尾する様子の別の例を示す模式図。
【図22】実施の形態1における目標追尾装置100が目標を追尾する様子の別の例を示す模式図。
【図23】実施の形態2におけるゲート判定装置110の機能ブロックの構成の一例を示す詳細ブロック図。
【図24】実施の形態2におけるゲート判定装置110が重なった目標を判定する重複目標判定処理S40の流れの一例を示すフローチャート図。
【図25】実施の形態2におけるゲート判定装置110が離れた目標を判定する分離目標判定処理S70の流れの一例を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0179】
100 目標追尾装置、110 ゲート判定装置、111 大ゲート設定装置、112 大ゲート判定装置、113 小ゲート設定装置、114 小ゲート判定装置、115 重複判定装置、116 第一モード記憶装置、117 第二モード記憶装置、121 目標間距離算出装置、122 目標間距離記憶装置、123 追尾目標移動距離算出装置、124 重複目標移動距離算出装置、125 追尾目標観測強度算出装置、126 重複目標観測強度算出装置、127 重複目標判定装置、128 重複目標記憶装置、131 目標間距離ゲート設定装置、132 分離判定装置、133 分離目標移動距離算出装置、134 分離目標観測強度算出装置、135 分離目標判定装置、141 通常ゲート設定装置、142 通常ゲート判定装置、143 追尾目標判定装置、150 追尾装置、151 平滑装置、152 平滑値ベクトル初期値設定装置、153 平滑値ベクトル記憶装置、154 予測装置、161 平滑誤差共分散行列初期値設定装置、162 平滑誤差共分散行列算出装置、163 平滑誤差共分散行列記憶装置、171 駆動雑音分散設定装置、172 駆動雑音共分散行列算出装置、173 予測誤差共分散行列算出装置、181 観測雑音共分散行列算出装置、182 残差共分散行列算出装置、191 ゲイン行列設定装置、200 観測装置、300 表示装置、800 目標観測システム、901 表示装置、902 キーボード、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ装置、907 スキャナ装置、910 システムユニット、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を処理する処理装置と、重複判定装置と、分離判定装置と、追尾装置とを有し、
上記重複判定装置は、上記処理装置を用いて、観測された目標の位置を表わす目標位置情報に基づいて、追尾中の目標を含む複数の目標が重なって一つの目標として観測されたか否かを判定し、
上記分離判定装置は、上記処理装置を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを判定し、
上記追尾装置は、上記処理装置を用いて、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうちのいずれかの目標を、上記追尾中の目標として追尾する
ことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
上記分離判定装置は、上記処理装置を用いて、上記目標位置情報に基づいて、所定の分離判定範囲内に新たな目標が観測されたか否かを判定し、上記所定の分離判定範囲内に新たな目標が観測されたと判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと判定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項3】
上記目標追尾装置は、更に、目標間距離算出装置と、目標間距離ゲート設定装置とを有し、
上記目標間距離算出装置は、上記処理装置を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標が重なる前に観測された位置と、上記追尾中の目標と重なった他の目標が重なる前に観測された位置との間の距離を算出して、重複前距離とし、
上記目標間距離ゲート設定装置は、上記処理装置を用いて、上記重なった複数の目標が観測されると予測される位置を中心として、上記目標間距離算出装置が算出した重複前距離よりも遠い範囲まで含む範囲を設定して、分離判定範囲とし、
上記分離判定装置は、上記処理装置を用いて、上記目標間距離ゲート設定装置が設定した分離判定範囲を上記所定の分離判定範囲とし、上記分離判定範囲内に新たな目標が観測されたか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
上記目標追尾装置は、更に、追尾目標移動距離算出装置と、重複目標移動距離算出装置と、重複目標判定装置と、分離目標移動距離算出装置と、分離目標判定装置とを有し、
上記追尾目標移動距離算出装置は、上記処理装置を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標が重なる前に観測された位置と、上記複数の目標が重なった後に一つの目標として観測された位置との間の距離を算出して、追尾目標移動距離とし、
上記重複目標移動距離算出装置は、上記処理装置を用いて、上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標と重なった他の目標が重なる前に観測された位置と、上記複数の目標が重なった後に一つの目標として観測された位置との間の距離を算出して、重複目標移動距離とし、
上記重複目標判定装置は、上記処理装置を用いて、上記追尾目標移動距離算出装置が算出した追尾目標移動距離と、上記重複目標移動距離算出装置が算出した重複目標移動距離とを比較して、上記追尾目標移動距離のほうが上記重複目標移動距離よりも短い場合に、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると判定し、上記追尾目標移動距離のほうが上記重複目標移動距離よりも長い場合に、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると判定し、
上記分離目標移動距離算出装置は、上記処理装置を用いて、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置が判定した場合に、上記目標位置情報に基づいて、上記重なった複数の目標が離れる前に一つの目標として観測された位置と、上記重なった複数の目標が離れた後に再び複数の目標として観測された位置それぞれとの間の距離を算出して、複数の分離目標移動距離とし、
上記分離目標判定装置は、上記処理装置を用いて、上記分離目標移動距離算出装置が算出した複数の分離目標移動距離に基づいて、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標移動距離が最も短い目標を分離後第一目標と判定し、
上記追尾装置は、上記処理装置を用いて、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると上記重複目標判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置が分離後第一目標と判定した目標を、上記追尾中の目標として追尾し、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると上記重複目標判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置が分離後第一目標と判定した目標以外の目標を、上記追尾中の目標として追尾する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の目標追尾装置。
【請求項5】
上記目標追尾装置は、更に、重複目標判定装置と、分離目標判定装置とを有し、
上記重複目標判定装置は、上記処理装置を用いて、上記追尾中の目標と上記他の目標とが重複したと上記重複判定装置が判定した場合に、観測された目標の観測強度を表わす観測強度情報に基づいて、上記追尾中の目標が重なる前に観測された観測強度と、上記追尾中の目標と重なった他の目標が重なる前に観測された観測強度とを比較して、上記追尾中の目標の観測強度のほうが上記他の目標の観測強度よりも強い場合に、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると判定し、上記追尾中の目標の観測強度のほうが、上記他の目標の観測強度よりも弱い場合に、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると判定し、
上記分離目標判定装置は、上記処理装置を用いて、上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置が判定した場合に、上記観測強度情報に基づいて、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標の観測強度を比較して、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、観測強度が最も強い目標を分離後第一目標と判定し、
上記追尾装置は、上記処理装置を用いて、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると上記重複目標判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置が分離後第一目標であると判定した目標を、上記追尾中の目標として追尾し、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると上記重複目標判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置が分離後第一目標であると判定した目標以外の目標を、上記追尾中の目標として追尾する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の目標追尾装置。
【請求項6】
上記追尾装置は、更に、上記処理装置を用いて、上記追尾中の目標が重複前第二目標であると上記重複目標判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置が分離後第一目標と判定した目標を、上記追尾中の目標と重なった他の目標として追尾し、上記追尾中の目標が重複前第一目標であると上記重複目標判定装置が判定した場合に、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうち、上記分離目標判定装置が分離後第一目標と判定した目標以外の目標を、上記追尾中の目標として追尾することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の目標追尾装置。
【請求項7】
上記重複判定装置は、上記処理装置を用いて、上記目標位置情報に基づいて、上記追尾中の目標を含む複数の目標のいずれかが観測されなくなったか否かを判定し、上記追尾中の目標を含む複数の目標のいずれかが観測されなくなったと判定した場合に、上記追尾中の目標を含む複数の目標が重なったと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の目標追尾装置。
【請求項8】
上記目標追尾装置は、更に、小ゲート設定装置と、小ゲート判定装置とを有し、
上記小ゲート設定装置は、上記処理装置を用いて、上記追尾中の目標が観測されると予測される位置を含む所定の範囲を設定して、重複判定範囲とし、
上記小ゲート判定装置は、上記処理装置を用いて、上記目標位置情報に基づいて、上記小ゲート設定装置が設定した重複判定範囲内に観測された目標の数が減ったか否かを判定し、
上記重複判定装置は、上記処理装置を用いて、上記目標の数が減ったと上記小ゲート判定装置が判定した場合に、上記追尾中の目標を含む複数の目標が重なったとを判定する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の目標追尾装置。
【請求項9】
上記目標追尾装置は、更に、大ゲート設定装置と、大ゲート判定装置とを有し、
上記大ゲート設定装置は、上記処理装置を用いて、上記重複判定範囲を包含する所定の範囲を設定して、進入判定範囲とし、
上記大ゲート判定装置は、上記処理装置を用いて、上記目標位置情報に基づいて、上記大ゲート設定装置が設定した進入判定範囲内に、上記小ゲート設定装置が設定した重複判定範囲から出た目標があるか否かを判定し、
上記重複判定装置は、上記処理装置を用いて、上記目標の数が減ったと上記小ゲート判定装置が判定し、かつ、上記進入判定範囲内に上記重複判定範囲から出た目標がないと上記大ゲート判定装置が判定した場合に、上記追尾中の目標を含む複数の目標のいずれかが観測されなくなったと判定する
ことを特徴とする請求項8に記載の目標追尾装置。
【請求項10】
観測装置と、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の目標追尾装置とを有し、
上記観測装置は、目標の位置を観測し、観測した結果に基づいて、上記目標位置情報を生成する
ことを特徴とする目標観測システム。
【請求項11】
情報を処理する処理装置と、重複判定装置と、分離判定装置と、追尾装置とを有する目標追尾装置が目標を追尾する目標追尾方法において、
上記重複判定装置が、上記処理装置を用いて、観測された目標の位置を表わす目標位置情報に基づいて、追尾中の目標を含む複数の目標が重なって一つの目標として観測されたか否かを判定し、
上記複数の目標が重なって一つの目標として観測されたと上記重複判定装置が判定した場合に、上記分離判定装置が、上記処理装置を用いて、上記目標位置情報に基づいて、重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたか否かを判定し、
上記重なった複数の目標が離れて再び複数の目標として観測されたと上記分離判定装置が判定した場合に、上記追尾装置が、上記処理装置を用いて、上記重なった複数の目標が離れて観測された複数の目標のうちのいずれかの目標を、上記追尾中の目標として追尾する
ことを特徴とする目標追尾方法。
【請求項12】
情報を処理する処理装置を有するコンピュータを請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の目標追尾装置として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−109293(P2009−109293A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280755(P2007−280755)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】