説明

目視感評価方法並びにシステム、メタリック塗装面評価装置、その動作プログラム及びメタリック塗装面の目視感評価方法

【課題】 メタリック塗装板の目視感(粒子感)を、より人間の目で見た目視感に近い状態で定量的に評価できるようにする。
【解決手段】 メタリック塗装板の光像を光電変換して二次元画像を取得する撮像手段1と、この二次元画像の解像度を、空間デジタルフィルタ等により、人間の目の解像度に合わせる画像処理を行うことで所定の処理画像を生成する画像処理手段3と、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出する演算手段4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば照明あるいは観察方向によって異なる色彩を呈するメタリック塗装面等の目視感を客観的に評価する方法、装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の塗装などに汎用されているメタリック塗装やパールカラー塗装(本明細書ではこれらをまとめて「メタリック塗装」という)は、塗装塗膜内に光輝材と呼ばれるフレーク状のアルミ片やマイカ片が含まれてなり、いわゆるメタリック効果やパール効果を呈する。これは、反射特性に対する光輝材の寄与が照明および観察方向によって異なることに起因するものである。メタリック塗装面の目視感は、前記光輝材の大きさ、分布密度、配向等に起因する光輝度合いの変化により異なるものとなる。このような光輝材に依存性のある目視感は特に「粒子感」と呼ばれている(光輝感やキラキラ感などと呼ばれる場合もあるが、本明細書では「粒子感」という)。かかる粒子感は主観的なものであり、観察する者によって相違することから、例えば自動車ボディ等におけるメタリック塗装面の品質管理等のためには、該粒子感の定量化測定が必要となる。
【0003】
このような定量化測定方法として、例えば前記メタリック塗装面の所定の測定エリアに照明光を照射し、その反射光をCCD(charge coupled device)のような二次元撮像素子で受光(光電変換)して前記測定エリアの二次元画像(輝度情報)を取得し、該画像から抽出される所定の特徴量に基づいて評価を行う方法がある。
【0004】
このような評価方法に関し、例えば特許文献1には、測定エリアの輝度分布を基礎情報とし、その平均輝度と最頻出輝度との比較によりメタリック塗装面の深み感を評価する方法が開示されている。また、特許文献2には、前記二次元画像を所定の輝度閾値により二値化し、高輝度部の面積のばらつきからメタリック塗装面の深み感を評価する方法が開示されている。さらに特許文献3には、前記二次元画像における平均輝度の1.05〜1.50倍の範囲で輝度閾値を選んで二値化し、前記輝度閾値以上の輝度値の総計から光輝感を定量評価する方法が開示されている。また特許文献4には、前記二次元画像を2つの閾値で二値化したときの高輝度部分の面積や体積に基づいてキラキラ感と粒子感とを求める方法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−117934号公報
【特許文献2】特開平7−55705号公報
【特許文献3】特開平10−170436号公報
【特許文献4】特開2000−304696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粒子感を評価するためのベースとなるメタリック塗装面の二次元画像はCCD等により撮像されるが、前記CCDの解像度と人間の目の解像度とは一般に相違する。画素数等にもよるが、この種の評価装置においては、高精度な評価パラメータ計測が行えるよう、人間の目の解像度よりも高い解像度を有するCCDが通常用いられている。つまり、人間の目では識別できないような細かいコントラストまで、CCDによる撮影画像には現れることとなる。
【0006】
しかしながら、このことは人間の目で見た粒子感との相関を悪化させる要因になり得る。すなわち、高解像度のCCDにて取得された二次元画像は、人間が目で感じる画像とは異なるものとなり、そのような二次元画像の特徴量に基づき粒子感を求める評価パラメータを演算により抽出しても、人間の目を基準とする粒子感を相関性良く評価することができない。さらに、人間の目の感度は、輝度に対して対数的に明るさを感じる習性があるため、明るさを評価する場合において撮像された二次元画像の平均輝度に関連付けた閾値を設定する方式では、目で感じる明るさの平均値と撮影画像から導出される輝度平均値とは乖離する場合があることから、この点においても相関が取れない要因が発生しうる。上記特許文献1〜4の評価方法はこれらの点が考慮されておらず、結果的に目視と十分に相関のある粒子感評価が行えないという問題があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、測定対象物の目視感を、より人間の目で見た目視感に近い状態で定量的に評価できる目視感評価方法並びにシステム、特にメタリック塗装における粒子感を定量的に評価できるメタリック塗装面評価装置、その動作プログラム及びメタリック塗装面の目視感評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1にかかる目視感評価方法は、測定対象物の光像を光電変換して前記測定対象物の二次元画像を取得し、前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行い、前記画像処理後の画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出することを特徴とする。
【0009】
この方法によれば、測定対象物より取得された二次元画像の解像度を、目の解像度に合わせる画像処理を行い、その画像処理後の画像の特徴量を用いて評価パラメータを取得するので、目視での評価値と測定値との相関性を高めることができる。人間の目が感知できるコントラスト感度は、空間周波数に対して図1に示すような特性である。ここで横軸の空間周波数は、1°視野で所定の縞模様チャート(例えばCampbell−Robson CSF chartなど)を観察するときの、その1°視野に含まれる縞模様の数(単位は「サイクル/1°」)を示し、また縦軸のコントラスト感度はコントラストの逆数で表されている。図1に示すように、人間の目は、5サイクル/1°(1°視野に5つの縞模様がある)付近の空間周波数で縞模様を認識するのに必要な輝度比が最小となる(つまり、低いコントラストでも縞模様を認識できる)が、60サイクル/1°よりも小さな縞模様(粒子)は、いくら輝度比が高くても知覚できないという特性がある。
【0010】
一方、CCDのような撮像素子の解像度は、一般に図1に示した特性とは異なる特性となる。通常、撮像素子の方が高い解像度を備えており、例えば60サイクル/1°よりも小さな縞模様も識別した状態で画像が取得される。従って、このような人間の目の解像度と乖離した画像に基づき所定の特徴量に基づき評価パラメータを抽出して所定の目視感評価(例えばメタリック塗装面の粒子感評価)を行うと、人間の目視感と相関性のない評価を行ってしまう場合があるが、前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行うことで、人間の目の解像度にマッチした画像から評価パラメータを抽出できるようになる。
【0011】
上記構成において、前記画像処理が、取得された二次元画像の解像度を、人間の目の解像度に合わせるフィルタ処理であるが望ましい(請求項2)。この構成によれば、例えば人間の目と等価の空間フィルタ等を取得された二次元画像にかけることで、当該二次元画像の解像度が人間の目の解像度に合わせられるようになる。
【0012】
この場合、前記フィルタ処理を、取得された二次元画像に対し、空間周波数に対する人間の目のコントラスト感度に近似させたバンドパスフィルタをかける処理とすることができる(請求項3)。この構成によれば、空間周波数の全域にわたり、取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合致させることが可能となる。
【0013】
或いは、前記フィルタ処理を、取得された二次元画像に対し、空間周波数に対する人間の目のコントラスト感度における高周波部の特性に近似させたローパスフィルタをかける処理とすることができる(請求項4)。この構成によれば、少なくとも人間の目の解像度に実質的な影響を与える高周波部につき、取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合致させることが可能となる。
【0014】
また、上記構成において、前記画像の特徴量が、前記画像処理後の画像における下記(1)〜(3)からなる群より選ばれる少なくとも1以上の特徴量である構成とすることができる(請求項5)
(1)画像の明るさ及び明るさの分布
(2)画像を所定の閾値で二値化したときの、黒部分及び/又は白部分の面積
(3)画像を所定の閾値で二値化したときの、独立的な黒部分及び/又は白部分の数
この構成によれば、目視感に影響を与える特徴量が、デジタル的な特徴付けが比較的容易な上記(1)〜(3)のいずれか又はその組み合わせで取り出される。
【0015】
上記構成において、前記評価パラメータが、前記測定対象物に含まれる粒子からの反射光が人間の目視感に与える影響を評価するための評価パラメータであることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、各種の光反射性粒子が含まれた測定対象物における光反射特性に対する前記粒子の寄与度合いが、定量的に評価できるようになる。
【0016】
また上記構成において、前記画像処理として、取得された画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理と共に、該画像の明るさを人間が知覚する明るさに変換する画像処理が行われる構成とすることが望ましい(請求項7)。この場合、前記明るさを変換する画像処理が、取得された画像の明るさを、その明るさが増加するほど出力が非線形的に圧縮されるようにして、明るさのスケールを人間の感度に合わせる画像処理であることが望ましい(請求項8)。
【0017】
前述の通り、人間の目の感度は、輝度に対して対数的に明るさを感じる習性がある一方で、CCD等の撮像素子は特定の回路処理等を行わない限り対数的な出力は得られず、線形的に明るさが表現された画像が得られる傾向がある。従って、これらの構成によれば、明るさに関する目視感につき人間の知覚にマッチさせた画像から、所定の評価パラメータを取得できるようになる。
【0018】
上記請求項1〜8のいずれかの構成において、前記測定対象物が、メタリック塗装面であることが望ましい(請求項9)。この構成によれば、メタリック塗装面における光反射特性に対する光輝材の寄与度合いとも言える前記粒子感が、定量的に評価できるようになる。
【0019】
この場合、前記画像処理において、メタリック塗装面の塗装ムラを除去する画像処理をさらに施すことが望ましい(請求項10)。メタリック塗装面においては、塗装ムラ等により明るさのムラが生じる場合がある。このような明るさのムラは、通常光輝材によって生じる粒子性の空間周波数よりも低い低周波性のものである。この構成によれば、取得された画像に所定のハイパスフィルタをかける等の画像処理を行うことで、前記明るさのムラの影響を除去できるようになる。
【0020】
本発明の請求項11にかかる目視感評価システムは、測定対象物の光像を光電変換して前記測定対象物の二次元画像を取得する撮像手段と、少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行うことで所定の処理画像を生成する画像処理手段と、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出する演算手段とを具備することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、撮像手段にて測定対象物より取得された二次元画像の解像度が、画像処理手段により人間の目の解像度に合わせるよう画像処理が為される。そして演算手段により、前記画像処理後の画像の特徴量を用いて評価パラメータが取得されるので、目視での評価値と測定値との相関性を高めることができる。
【0022】
上記構成において、前記画像処理手段は、前記撮像手段により取得された二次元画像の解像度を、人間の目の解像度に合わせるための空間デジタルフィルタを備えることが望ましい(請求項12)。この構成によれば、例えば人間の目と等価になるようフィルタ特性が設定された空間デジタルフィルタを、撮像手段により取得された二次元画像にかけることで、当該二次元画像の解像度が人間の目の解像度に合わせられるようになる。
【0023】
この場合、前記空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に指定するフィルタ特性指定手段と、前記フィルタ特性指定手段により指定されたフィルタ特性に前記空間デジタルフィルタの特性を設定するフィルタ特性設定手段とを具備する構成とすることが望ましい(請求項13)。この構成によれば、ユーザがフィルタ特性指定手段により、前記空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に設定できるようになるので、測定目的に応じて当該目視感評価システムを活用できるようになる。
【0024】
また、上記構成において、前記画像処理手段が、前記撮像手段により取得された二次元画像の明るさを人間が知覚する明るさに変換するガンマ補正処理手段をさらに具備することが望ましい(請求項14)。この構成によれば、前記演算手段において、明るさに関する目視感につき人間の知覚にマッチさせた画像から、所定の評価パラメータを取得できるようになる。
【0025】
上記請求項11〜14のいずれかの構成において、前記演算手段により抽出された評価パラメータに基づいて、人間の目視感に関する評価指数を求める心理物理量演算手段を備える構成とすることが望ましい(請求項15)。この構成によれば、人間の目による目視感(例えばメタリック塗装面の粒子感)を、演算手段により抽出された評価パラメータに基づき、心理物理量演算手段により所定の評価指数として定量的に自動計算できるようになる。
【0026】
本発明の請求項16にかかるメタリック塗装面評価装置は、メタリック塗装面に含まれる光輝材からの反射光が前記メタリック塗装面に対する人間の目視感に与える影響である粒子感を定量的に評価するためのメタリック塗装面評価装置であって、測定対象となるメタリック塗装面の所定の測定エリアに照明光を照射し、その反射光を光電変換して前記測定エリアの二次元画像を取得する撮像手段と、少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行うことで所定の処理画像を生成する画像処理手段と、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出する演算手段とを具備することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、撮像手段により取得されたメタリック塗装面の所定の測定エリアからの反射光から形成された二次元画像の解像度が、画像処理手段により人間の目の解像度に合わせるよう画像処理が為される。そして演算手段により、前記画像処理後の画像の特徴量を用いてメタリック塗装面の粒子感に関する評価パラメータが取得されるので、目視での評価値と測定値との相関性を高めることができる。
【0028】
上記構成において、前記画像処理手段は、前記撮像手段により取得された二次元画像の解像度を、人間の目の解像度に合わせるための空間デジタルフィルタを備え、さらに前記空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に指定するフィルタ特性指定手段と、前記フィルタ特性指定手段により指定されたフィルタ特性に前記空間デジタルフィルタの特性を設定するフィルタ特性設定手段とを有する構成とすることが望ましい(請求項17)。この構成によれば、ユーザがフィルタ特性指定手段により、前記空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に設定できるようになるので、測定目的に応じて当該メタリック塗装面評価装置を活用できるようになる。
【0029】
この場合、前記フィルタ特性設定手段は、前記メタリック塗装面の塗装ムラに起因する低周波ムラを除去可能なフィルタ特性が設定可能とされていることが望ましい(請求項18)。この構成によれば、例えば人間の目の解像度に実質的な影響を与える空間周波数の高周波部につき、取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合致させるフィルタ特性を選びつつ、塗装ムラに起因する明るさムラが存在する低周波部についてはこれを遮断するフィルタ特性(ハイパス性のフィルタ特性)を設定することが可能となる。
【0030】
また、前記フィルタ特性設定手段は、前記メタリック塗装面の観察距離に関連付けたフィルタ特性が設定可能とされていることが望ましい(請求項19)。図1に示した人間の目のコントラスト感度は、観察距離によって変動する。1°視野内に収まる縞模様の数が変動するからである。この構成によれば、観察距離に関連づけた人間の目のコントラスト感度を適宜適用することにより、撮像手段により取得された1つの二次元画像から、複数の観察距離に対応するフィルタ画像(人間の目の解像度に合致させた画像)を取得できるようになる。
【0031】
上記請求項17〜19のいずれかの構成において、前記フィルタ特性指定手段は、前記空間デジタルフィルタによるフィルタ処理を実行させないスルー処理が指定可能とされており、前記スルー処理が指定された場合において、前記撮像手段により取得された二次元画像に基づいて、光輝材自体に関する評価パラメータを抽出する光輝材評価手段を具備する構成とすることが望ましい(請求項20)。フィルタ処理が施されていない、いわば生画像は、一般に高解像度の画像であることから、光輝材自体の明るさ(反射率)、大きさ、密度等を測定するには有利である。この構成によれば、前記生画像に基づき、光輝材評価手段により光輝材自体に関する評価パラメータが抽出できるようになる。
【0032】
上記請求項16〜20のいずれかの構成において、前記演算手段により抽出された評価パラメータに基づいて、前記粒子感に関する評価指数を求める粒子感指数演算手段を備える構成とすることが望ましい(請求項21)。この構成によれば、目視によるメタリック塗装面の粒子感を、演算手段により抽出された評価パラメータに基づき、粒子感指数演算手段により所定の評価指数として定量的に自動計算できるようになる。
【0033】
本発明の請求項22にかかるメタリック塗装面評価装置の動作プログラムは、所定の画像処理手段及び演算手段を備えるメタリック塗装面評価装置を動作させるためのプログラムであって、測定対象となるメタリック塗装面における所定の測定エリアの光像を光電変換して得られた二次元画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、前記画像処理手段に、少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行わせ所定の処理画像を生成させる画像処理ステップと、前記演算手段に、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出させる演算ステップとを実行させることを特徴とする。
【0034】
本発明の請求項23にかかるメタリック塗装面評価装置の動作プログラムは、所定の撮像手段、画像処理手段及び演算手段を備えるメタリック塗装面評価装置を動作させるためのプログラムであって、前記撮像手段に、測定対象となるメタリック塗装面の所定の測定エリアに照明光を照射させ、その反射光を光電変換して前記測定エリアの二次元画像を取得させる撮像ステップと、前記二次元画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、前記画像処理手段に、少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行わせ所定の処理画像を生成させる画像処理ステップと、前記演算手段に、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出させる演算ステップとを実行させることを特徴とする。
【0035】
本発明の請求項24にかかるメタリック塗装面の目視感評価方法は、測定対象となるメタリック塗装面における所定の測定エリアの光像を光電変換して得られた二次元画像に基づいて前記メタリック塗装面の目視感を評価する方法であって、前記二次元画像を所定の輝度閾値で二値化して二値化画像を生成し、前記二値化画像における高輝度部分について、下記(4)〜(6)からなる群より選ばれる少なくとも1以上の特徴量の平均値と、前記測定エリア内におけるばらつきとから、目視感に関する所定の評価値を求めることを特徴とする。
(4)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさ
(5)高輝度部分の面積
(6)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさと高輝度部分の面積との積分値
【0036】
この構成によれば、二値化画像から取得される上記(4)〜(6)の特徴量につき、単に平均値だけで評価するのではなく、そのばらつき要素を取り入れて目視感に関する所定の評価値を求めるので、光輝材により生成される高輝度部分の細かな分析が可能となり、これを目視感評価値に反映させることが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
請求項1にかかる目視感評価方法によれば、測定対象物より取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行い、人間の目の解像度に合わせた画像から評価パラメータを抽出するので、目視での評価値と測定値との相関性を高めることができる。従って、測定対象物の目視感を、人間の目による目視感にマッチさせて定量的に評価できるようになる。
【0038】
請求項2にかかる目視感評価方法によれば、フィルタ処理により一括的な画像処理が行えるので、画像処理を簡素化できる。
【0039】
請求項3及び請求項4にかかる目視感評価方法によれば、空間周波数の所要領域につき、効率的に取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合致させることができる。
【0040】
請求項5にかかる目視感評価方法によれば、デジタル的な特徴付けが比較的容易な特徴量を用いるので、評価パラメータの抽出処理を簡素化できるようになる。
【0041】
請求項6にかかる目視感評価方法によれば、各種の光反射性粒子が含まれた測定対象物の光反射特性に対する前記粒子の寄与度合いを、目視感にマッチさせつつ定量的に評価できる。
【0042】
請求項7及び請求項8にかかる目視感評価方法によれば、明るさに関する目視感につき人間の知覚にマッチさせた画像から、所定の評価パラメータを取得できるので、一層正確な目視感評価を行うことができる。
【0043】
請求項9にかかる目視感評価方法によれば、メタリック塗装面の光反射特性に対する光輝材の寄与度合いとも言える前記粒子感が、目視感にマッチさせつつ定量的に評価できるようになる。
【0044】
請求項10にかかる目視感評価方法によれば、取得された二次元画像から塗装ムラに起因する明るさのムラの影響を除去できることから、一層正確な目視感評価を行うことができる。
【0045】
請求項11にかかる目視感評価システムによれば、撮像手段にて測定対象物より取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理が画像処理手段により為され、演算手段により人間の目の解像度に合わせた画像から評価パラメータが抽出される構成であるので、目視での評価値と測定値との相関性を高めることができる。従って、測定対象物の目視感を、人間の目による目視感にマッチさせて定量的に評価できるようになる。
【0046】
請求項12にかかる目視感評価システムによれば、空間デジタルフィルタによる一括的な画像処理が行えるので、画像処理を簡素化できる。
【0047】
請求項13にかかる目視感評価システムによれば、ユーザがフィルタ特性指定手段により、空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に設定できることから、種々の目的に合致させた画像を生成することができる。従って、前記撮像手段により取得された1つの二次元画像から様々な評価パラメータを取得でき、多様な目視感評価を効率的に行うことができる。
【0048】
請求項14にかかる目視感評価システムによれば、ガンマ補正処理手段により、明るさに関する目視感につき人間の知覚にマッチさせた画像から、所定の評価パラメータを取得できるので、一層正確な目視感評価を行うことができる。
【0049】
請求項15にかかる目視感評価システムによれば、人間の目による目視感が所定の評価指数として定量的に自動計算できるので、速やかに測定対象面の目視感に関する客観的評価データを得ることが可能となる。
【0050】
請求項16にかかるメタリック塗装面評価装置によれば、画像処理手段により人間の目の解像度に合わせるよう画像処理が為され、演算手段により前記画像処理後の画像の特徴量を用いてメタリック塗装面の粒子感に関する評価パラメータが取得される構成であるので、目視での評価値と測定値との相関性を高めることができる。従って、メタリック塗装面の粒子感を、人間の目による粒子感にマッチさせて定量的に評価できるようになる。
【0051】
請求項17にかかるメタリック塗装面評価装置によれば、ユーザがフィルタ特性指定手段により、空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に設定できることから、種々の目的に合致させた画像を生成することができる。従って、前記撮像手段により取得された1つのメタリック塗装面画像から様々な評価パラメータを取得でき、多様な粒子感評価を効率的に行うことができる。
【0052】
請求項18にかかるメタリック塗装面評価装置によれば、塗装ムラに起因する明るさのムラの影響を除去できることから、一層正確な粒子感評価を行うことができる。
【0053】
請求項19にかかるメタリック塗装面評価装置によれば、撮像手段により取得された1つのメタリック塗装面画像から、複数の観察距離に対応するフィルタ画像(人間の目の解像度に合致させた画像)を取得できるので、多面的な粒子感の評価を効率的に行うことが可能となる。
【0054】
請求項20にかかるメタリック塗装面評価装置によれば、光輝材評価手段により光輝材自体に関する評価パラメータが抽出でき、1つのハードウェアにより、目で感じる粒子感と光輝材自身の評価パラメータという2種類の情報を取得できる。これら2種類の情報は、塗料の開発や自動車ボディの修理の現場等で必要な情報であることから、かかる用途に好適な評価装置を提供できる。
【0055】
請求項21にかかるメタリック塗装面評価装置によれば、人間の目による粒子感が所定の評価指数として定量的に自動計算できるので、速やかに測定対象面の粒子感に関する客観的評価データを得ることが可能となる。
【0056】
請求項22及び請求項23にかかるメタリック塗装面評価装置の動作プログラムによれば、所定の構成を有するメタリック塗装面評価装置を用いて、メタリック塗装面の粒子感を、人間の目による粒子感にマッチさせて定量的に評価できるようになる。
【0057】
請求項24にかかるメタリック塗装面の目視感評価方法によれば、光輝材により生成される高輝度部分の細かな分析が可能となり、これを目視感評価値に反映させることが可能となることから、より正確に目視感評価を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき説明する。
(ハード構成の説明)
図2は、本発明の実施形態にかかる目視感評価システムの全体構成を概略的に示すブロック図である。この目視感評価システムは、各種測定対象物の塗装感、重厚感、表面状態感などの目視感を客観的に評価するシステムとして適用可能であるが、本実施形態では、メタリック塗装面の粒子感、つまりメタリック塗装面に含まれる光輝材からの反射光が前記メタリック塗装面に対する人間の目視感に与える影響である粒子感を、定量的に評価するためのメタリック塗装面評価装置Sを例示して説明する。このメタリック塗装面評価装置Sは、撮像手段1、測定制御手段2、画像処理手段3、演算手段4、操作部5、出力部61及び表示部62から構成されている。
【0059】
撮像手段1は、測定対象となるメタリック塗装面の所定の測定エリアに照明光を照射し、その反射光を光電変換して前記測定エリアの二次元画像を取得する。測定制御手段2は、前記撮像手段1に、所定の手順で前記二次元画像を取得させる制御を行う。画像処理手段3は、取得された前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行うことで所定の処理画像を生成する。演算手段4は、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出すると共に、粒子感を定量的に評価するための所定の粒子感指数を求める演算を行う。操作部5は、前記測定制御手段2、画像処理手段3及び演算手段4に対し、ユーザが所定の処理指令、設定指令等を与えるためのものである。出力部61はプリンタ等からなり、前記演算手段4により求められた粒子感指数等を数値データとして出力する。表示部62はLCDやCRT等からなり、前記粒子感指数等をユーザに対して表示する。
【0060】
このメタリック塗装面評価装置Sのハード構成は適宜設定することができる。例えば、
(a)撮像手段1を単方向照明型の反射光測定装置やマルチアングル照明型の反射光測定装置で構成し、測定制御手段2、画像処理手段3、演算手段4、操作部5及び表示部62をパーソナルコンピュータ等で構成し、両者をUSBケーブル等で接続するハード構成、
(b)上記(a)の構成において、前記反射光測定装置が前記測定制御手段2を有しているハード構成、
(c)撮像手段1としての前記反射光測定装置に、測定制御手段2、画像処理手段3、演算手段4、操作部5及び表示部62を搭載して一体型化したハード構成、
などを例示することができる。
【0061】
なお、予め他の撮像手段で撮像されたメタリック塗装面の二次元画像を取り込み、前記画像処理手段3、演算手段4に相当する処理をパーソナルコンピュータ等に実行させる動作プログラム、或いは上記(a)〜(c)のハード構成とされたメタリック塗装面評価装置Sを動作させる動作プログラムを提供する態様でも実施することができる。
【0062】
図3は、上記(a)のハード構成を備えたメタリック塗装面評価装置Sの一例を示す構成図である。このメタリック塗装面評価装置Sは、マルチアングル照明型の反射光測定装置10とパーソナルコンピュータPCとが、USBケーブル103で接続されて構成されている。反射光測定装置10は箱型のアウターボディ101、該アウターボディ101に収納される照明光学系11、受光光学系14、撮像素子15及び信号処理回路16を備えている。
【0063】
アウターボディ101の底面部には測定開口102が設けられており、この測定開口102には、測定対象物であるメタリック塗装板7のメタリック塗装表面71が、密接して対向配置される。前記メタリック塗装板7は、例えば自動車ボディのメタリック塗装面等からなる。図4は、前記メタリック塗装板7の斜視図であり、その部分拡大図に示しているように、該メタリック塗装板7は、塗装素地となる基材701と、その上に塗布されたメタリック塗膜702とで構成されている。前記メタリック塗膜702には、フレーク状のアルミ片やマイカ片等からなる光輝材703が分散配合されている。この光輝材703が含有されていることで、メタリック塗装表面71に光が照射された場合にいわゆるメタリック効果が発生し、当該メタリック塗装表面71の観察者に粒子感を与えるものである。このようなメタリック塗装表面71の、前記測定開口102のサイズに相当する部分が、粒子感を測定するための測定エリア72とされる。
【0064】
照明光学系11は、試料面(メタリック塗装表面71)の法線方向から、それぞれ15°、45°、75°の方向に配置された第1の照明系11a、第2の照明系11b及び第3の照明系11cから構成されている。第1の照明系11aは、タングステンランプ等からなる光源12aと、該光源12aの前方に配置されたコリメートレンズ13aとを備えている。前記光源12aから発せられた光は、コリメートレンズ13aによってコリメートされて平行光束とされ、メタリック塗装表面71を対法線角15°の方向から照明する。第2の照明系11b及び第3の照明系11cも同様に光源12b、12cとコリメートレンズ13b、13cとを有しており、それぞれメタリック塗装表面71を対法線角45°、75°の方向から照明する。これにより、太陽光に近似した平行光束で、メタリック塗装表面71に対し対法線角15°、45°、75°の方向から照明光をそれぞれ個別に照射できるようになっている。なお、この照明光学系11の構成は適宜設定してよく、例えば第1の照明系11aのみからなる構成、第1の照明系11aと第3の照明系11cとからなる構成、あるいは4以上の照明系からなる構成としても良い。
【0065】
一方、受光光学系14は、試料面(メタリック塗装表面71)の法線方向に配置され、後段に配置された撮像素子15に、メタリック塗装表面71から反射される反射光の光像を結像させる。このような照明光学系11及び受光光学系14の配置は、人間が目視でメタリック塗装板7を観察する条件に近似させるためのものである。すなわち、対法線角15°の方向から照明した場合は、メタリック塗装表面71からの正反射光に近い反射光を撮像素子15にて撮像することができる。また、対法線角75°の方向から照明した場合は、正反射から離れた拡散光に近い反射光を撮像することができ、さらに対法線角45°の方向から照明した場合は、その中間的な反射光を撮像することができる。
【0066】
撮像素子15は、メタリック塗装表面71から反射される反射光の光像を光電変換するもので、例えばCCD二次元センサを適用することができる。この撮像素子15も、受光光学系14と同様に法線方向に配置される。図3では、試料面と平行に配置された固定板130の光軸位置に、撮像素子15を取り付けた例を示している。
【0067】
前記受光光学系14を含めて、この撮像素子15は、人間の目の解像度よりも高い解像度を有していることが望ましく、例えば140万画素のモノクロCCD(撮像分解能=8.4×8.4μm)を用いることができる。なお、上記CCD二次元センサに代えて、二次元の画像を電気信号に変換できる他の素子、例えばCMOSセンサや、フォトダイオードをスキャンするもの等も用いることができる。
【0068】
信号処理回路16は、撮像素子15から出力されるアナログ信号を増幅し、デジタル信号に変換し、さらにシャッタスピードに応じた明るさ補正を行う回路である。この信号処理回路16については、後記で詳述する。信号処理回路16から出力される信号(二次元画像データ)は、図略のインターフェイス部及びUSBケーブル103を経て、パーソナルコンピュータPCへ送信される。
【0069】
(電気的構成の説明)
図5は、撮像手段1及び測定制御手段2の電気的な機能構成を示すブロック図である。撮像手段1の信号処理回路16には、増幅回路161、A/D変換部162及び明るさ補正部163が備えられている。また、撮像素子15の露光量を調整するためのシャッタ17と、該シャッタ7の開閉駆動を行うシャッタ駆動部171が具備されている。
【0070】
増幅回路161は、電流電圧変換回路や可変ゲインアンプなどを備え、撮像素子15による光電変換により生成された電流を、電圧に変換して所定の電圧信号に増幅する。A/D変換部162は、前記増幅回路161から出力されるアナログ電圧信号を、デジタル信号に変換する。
【0071】
明るさ補正部163は、撮像素子15の露光量を調整する前記シャッタ17のシャッタスピードに応じて、撮像された画像の明るさ補正を行う。メタリック塗装は、明るいシルバー色から黒に近い色まで多様であり、その反射率はメタリック塗装のカラーにより大きく異なる。一方、CCD等の撮像素子のダイナミックレンジは、これらメタリック塗装のカラーを全てカバー出来るほどに広くないため、飽和画素や低輝度画素の割合を抑止するために、測定するメタリック塗装面の反射率に応じてシャッタスピードを切り替え、適正な露光量で撮像を行う必要がある。しかし、このようにして撮像された画像はシャッタスピードに依存しており、そのままでは実際のメタリック塗装面の反射率を反映していない。そこで明るさ補正部163は、このようなシャッタスピード依存性を平滑化するために、シャッタスピードに応じた明るさ補正を行うものである。なお、この明るさ補正部163は、後段の画像処理手段3に具備させるようにしても良い。
【0072】
シャッタ17は、常時撮像素子15の受光面を遮光し、光源12a〜12cを動作させてメタリック塗装表面71からの反射光を前記撮像素子15に受光させるときに、所定時間だけ「開」とされて撮像素子15を露光させる。シャッタ駆動部171は、後述するシャッタ制御部22からの制御信号及びシャッタスピードの設定を受けて、前記シャッタ17の開閉駆動を前記シャッタスピードにて行うものである。なお、シャッタ17に代えて、CCD等に内蔵されている電子シャッタ機能を用いることもできる。このような電子シャッタ機能を用いれば、シャッタ17及びシャッタ駆動部171を省くことができる。
【0073】
次に、測定制御手段2は、点灯制御部21、シャッタ制御部22、タイミングジェネレータ(TG)23、シャッタスピード判定部24及び測定制御部25を備えている。点灯制御部21は、照明光学系11に備えられている光源12a〜12cの点灯動作を制御する機能部であり、測定制御部25から与えられる測定ルーチンに従って、光源12a〜12cのいずれか1つ、或いは対法線角が小さいものから順次点灯させるような点灯制御を行う。
【0074】
シャッタ制御部22は、シャッタ17の開閉制御信号及びシャッタスピードの設定信号を生成して、前記シャッタ駆動部171へ出力する。
【0075】
タイミングジェネレータ23は、撮像素子15による撮影動作(露光に基づく電荷蓄積や蓄積電荷の読出し等)を制御するもので、測定制御部25からの撮影制御信号に基づいて所定のタイミングパルス(画素駆動信号、水平同期信号、垂直同期信号、水平走査回路駆動信号、垂直走査回路駆動信号等)を生成して撮像素子15に出力する。
【0076】
シャッタスピード判定部24は、メタリック塗装表面71を撮像するにあたり、撮像素子15の露光量を設定するための仮撮影画像に基づいて、撮像素子15の出力が飽和しないようなシャッタスピードの設定を行う。具体的には、前記仮撮影画像から平均的な反射光量を求め、当該反射光量から、撮像素子15のダイナミックレンジに応じた適正な露光が行えるようなシャッタスピードを設定する。このシャッタスピード判定部24により設定されたシャッタスピードは、測定制御部25を介してシャッタ制御部22へ出力される。また、前記信号処理回路16の明るさ補正部163へも前記シャッタスピード情報が出力され、明るさ補正部163によるシャッタスピードに応じた明るさ補正処理の際のパラメータとされる。
【0077】
測定制御部25は、操作部5からの操作信号の入力を受けて、各機能部に制御信号を与え、測定制御手段2による全体的な測定動作を制御する。すなわち、メタリック塗装表面71の二次元画像撮像のため、前記点灯制御部21、シャッタ制御部22、タイミングジェネレータ23等の機能部をそれぞれ動作させる制御信号を生成する。また、撮像素子15の露光量を設定するための仮撮影動作の制御も行う。この場合、前記シャッタ制御部22に予め定められている固定的なシャッタスピードを設定させ、これにより取得された仮撮影画像に基づき、前記シャッタスピード判定部24に適正なシャッタスピードを求める演算を行わせる。
【0078】
図6は、画像処理手段3及び演算手段4の電気的な機能構成を示すブロック図である。画像処理手段3は、画像メモリ31、空間デジタルフィルタ32、フィルタ特性設定部33、フィルタ特性記憶部34及びガンマ補正部35を備えている。画像メモリ31は、RAM等からなり、撮像手段1から送られてくる二次元画像データを一時的に格納したり、空間デジタルフィルタ32でフィルタ処理された画像を一時的に格納したりする。
【0079】
空間デジタルフィルタ32は、撮像手段1により取得された二次元画像の解像度を、人間の目の解像度に合わせるためのフィルタ処理を行うもので、所定のフィルタ特性を有する、例えば移動平均フィルタ、ラプラシアンフィルタ、FIRフィルタ、二次元FFTフィルタ等で構成される。
【0080】
図7(a)は、撮像手段1の出力画像(明るさ補正部163から出力される二次元画像)の一例を示す写真である。受光光学系14及び撮像素子15の解像度が高い場合、図7(a)に示すように、人間の目では知覚することができないような光輝材のひとつひとつによって生じるコントラスト(粒子性)までが撮像されるようになる。空間デジタルフィルタ32は、このような高解像度の二次元画像を、人間の目において実際に知覚される二次元画像にいわば劣化させるフィルタ処理を行うものである。図7(b)は、そのようなフィルタ処理が行われた画像(空間デジタルフィルタ32の出力)の一例を示す写真である。図7(a)の写真と比較して明らかなように、粒子性が劣化した画像となっており、両者の目視感には大きな違いがあると言える。
【0081】
これは、先に図1でも説明したが、人間のコントラスト感度が、コントラストのある観察対象物に対し、図8(a)に示すような特性を有していることに起因する。該特性に示すように、人間の目は、60サイクル/1°の空間周波数におけるコントラスト=1(最大)のパターン(上述の縞模様)と、5サイクル/1°の空間周波数におけるコントラスト=1/500のパターンとを、ほぼ同等のコントラストと知覚する。しかしながら、画像から抽出される輝度値などに基づき数値的にコントラストを計算すると、両者は同等のコントラストとはならない。
【0082】
しかし、図8(b)に示すような伝達関数(出力振幅/入力振幅)を有するフィルタを、元の高解像度の画像にかけることで、目視により感じられるコントラストと、計算上のコントラストとを等価に扱えるようになる。つまり、人間の目では知覚能が低下する、空間周波数が高い領域について伝達関数を低くし、元画像の解像度を人間の目の解像度に合わせるものである。このような伝達関数は、空間周波数上でコントラスト感度の最も高い点(5サイクル/1°)を「1」とし、その他の点については、コントラスト感度が最も高い点とのコントラスト比から求められる。
【0083】
さらに、目視感を評価するには、測定対象面からの観察距離を固定化する必要がある。例えば、60サイクル/1°のパターンは、25cm離れた距離から観察すると、そのパターンサイクル幅は約73μm/サイクルとなる。このような条件で試料面であるメタリック塗装表面71を観察したときの人間の目の感度に合わせたコントラストを評価するには、例えば図8(c)に示すようなフィルタ特性とすれば良いことになる。なお、図8(c)は、横軸を観察距離に換算して伝達関数を表示している。かかる伝達関数は、観察距離に応じて左右方向にシフトすることになる。
【0084】
従って空間デジタルフィルタ32は、例えば図8(c)に示すようなフィルタ特性を有するものとされ、このような空間デジタルフィルタ32をかけることで、撮像手段1から入力された二次元画像は、図7(a)の写真のような画像を、図7(b)の写真のように人間の目の解像度に合わせた画像に変換するものである。
【0085】
なお空間デジタルフィルタ32に設定されるフィルタ特性は、図8(b),(c)に示すような、知覚される空間周波数の全域にわたり、取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合致させるようなバンドパスフィルタでも良いが、空間周波数に対する人間の目のコントラスト感度における高周波部の特性に近似させたローパスフィルタであっても良い。このようなローパスフィルタでも、少なくとも人間の目の解像度に実質的な影響を与える高周波部につき、取得された二次元画像の解像度を人間の目の解像度に合致させることが可能となる。
【0086】
フィルタ特性設定部33(フィルタ特性設定手段)は、操作部5(フィルタ特性指定手段)からの指定(或いは自動設定)に基づいて、前記空間デジタルフィルタ32のフィルタ特性を任意の特性に設定する機能部である。フィルタ特性設定部33は、フィルタ特性記憶部34に格納されている各種フィルタ特性情報を操作部5からの指定情報に従って抽出し、必要に応じて複数のフィルタ特性を合成する演算を行い、空間デジタルフィルタ32に与える所定のフィルタ特性を特定する。
【0087】
フィルタ特性記憶部34は、空間デジタルフィルタ32に設定すべき各種フィルタ特性にデータを格納するもので、少なくとも観察距離別パターン記憶部341と、低周波ムラ除去パターン記憶部342とを備えている。観察距離別パターン記憶部341には、例えば図8(c)に示したようなフィルタ特性が、測定対象面からの観察距離(例えば観察距離25cm、50cm、75cm、1m別のフィルタ特性)に応じて格納されている。フィルタ特性設定部33は、例えば観察距離25cmにおける目視感を測定する場合は、観察距離別パターン記憶部341から観察距離25cmに相当するフィルタ特性を抽出し、そのフィルタ特性を空間デジタルフィルタ32に設定する。なお、前記観察距離別パターン記憶部341に、例えば観察距離25cmにおけるフィルタ特性のみを格納しておき、例えば観察距離50cmにおける粒子感を求める場合において、前記観察距離25cmにおけるフィルタ特性に基づいて、観察距離50cmにおけるフィルタ特性を計算により求め、そのフィルタ特性を空間デジタルフィルタ32に設定するようにしても良い。
【0088】
低周波ムラ除去パターン記憶部342には、メタリック塗装面の塗装ムラを除去するための所定のフィルタ特性が格納される。メタリック塗装面においては、塗装ムラ等により明るさのムラが生じる場合がある。このような明るさのムラは、図9(a)に示すように、通常光輝材によって生じる粒子性の空間周波数(1サイクル/mm)よりも低い低周波領域で発生する。従って、例えば図9(a)に示すような、低周波領域をカットするいわゆるハイパスフィルタを適用することにより、撮像手段1にて取得された画像に塗装ムラに起因する明るさムラが含まれていても、その明るさのムラの影響を除去できるようになる。フィルタ特性設定部33は、操作部5から明るさのムラ除去の指令があった場合、観察距離別パターン記憶部341から抽出したフィルタ特性と、当該低周波ムラ除去パターン記憶部342から抽出したハイパスフィルタとを複合した、例えば図9(b)に示すようなフィルタ特性を生成し、このフィルタ特性を空間デジタルフィルタ32に設定する。
【0089】
なお、操作部5は、前記フィルタ特性設定部33に、空間デジタルフィルタ32によるフィルタ処理を実行させないスルー処理が指定可能とされている。このスルー処理は、後述する光輝材評価演算部44において、フィルタ処理が施されていない高解像度の画像に基づき、光輝材自体の評価パラメータを取得させるための処理である。このようなスルー処理が指定された場合、フィルタ特性設定部33は、空間デジタルフィルタ32の伝達関数を1/1に設定する。
【0090】
ガンマ補正部35(ガンマ補正処理手段)は、撮像手段1により取得された二次元画像の明るさを、人間が知覚する明るさに変換する画像処理を行う機能部である。ガンマ補正部35は、例えば空間デジタルフィルタ32の出力画像信号のレベルを所定のガンマ特性を用いて対数的に変換することで、画像の明るさのスケールを人間の目の感度に合わせるものである。
【0091】
ウェーバ・フェヒナーの法則によれば、人間に与えられる刺激の強さと、人間が感じる知覚との関係は、刺激の強さが等比級数的に増加すると感覚の大きさは等差級数的に増加する関係にある。これは明るさを知覚する感覚にも妥当し、明るさが線形的に増加しても人間が知覚する明るさは対数的にしか増加しない。例えば、色空間の一般的な表色系として知られているL***表色系では、人間が知覚する明るさである明度L*(エルスター)は、次の(1)式により表される。
*=116×(Y/Yn)1/3−16 ・・・(1)
但し、Y/Yn>0.008856
Y;標準視感度特性による刺激値
Yn;完全拡散反射面の刺激値
ここで、上記の「対数的な増加」とは、厳密な数学的意味での対数的増加に限定されるものではなく、入力が大きくなるほど出力が非線形的に圧縮されるような増加を広く含む意味である。上記L***表色系における明度L*は、刺激値Yの(1/3)乗という指数乗で定義されており、このような定義も「対数的」という概念に含まれる。
【0092】
ガンマ補正部35は、撮像手段1により取得された二次元画像の明るさを、例えば上記(1)式に従って人間の目が知覚する明るさへ対数的に変換するよう、各画素の出力を変換する画像処理を行う。図7(c)は、図7(b)の画像(空間デジタルフィルタ32の出力)を、ガンマ補正部35により明度変換された後の画像を示す写真である。以上の画像処理が施された後、その画像データは演算手段4に送られ、その画像処理後の画像から特徴量が抽出され、メタリック塗装面の粒子感(目視感)に関する評価パラメータが抽出されることとなる。
【0093】
演算手段4は、特徴量演算部41、粒子感指数演算部42(粒子感指数演算手段;心理物理量演算手段)、角度特性演算部43、光輝材評価演算部44(光輝材評価手段)、メモリ部45及び出力/表示制御部46を備えて構成されている。
【0094】
特徴量演算部41は、画像処理手段により画像処理が施された画像から、メタリック塗装面の粒子感に関連する所定の特徴量、例えば
(1)画像の明るさ及び明るさの分布、
(2)画像を所定の閾値で二値化したときの、黒部分及び/又は白部分の面積、
(3)画像を所定の閾値で二値化したときの、独立的な黒部分及び/又は白部分の数
のいずれか、あるいは上記(1)〜(3)の特徴量の組み合わせにより、粒子感を定量的に評価するための評価パラメータを演算により求める機能部である。
【0095】
前記特徴量演算部41で抽出される特徴量について、図10〜図12に基づいて説明する。図10は、図4に示したメタリック塗装表面71を撮影した画像を模式的に示す図である。図10において、面P1は測定エリア72を示しており、面P1の垂直方向は明るさの度合いを示し、高位である程に明るいという指標で描いている。円錐C1〜C3は、光輝材によって反射率が高い部分を示しており、また面P2は、測定エリア72全体の明るさの平均値(所定の閾値)を表す平面である。この面P2より上の部分を高輝度部とし、面P2より下の部分を低輝度部分として二値化するものとする。
【0096】
ここで、メタリック塗装表面71のメタリック特性に関連する特徴量としては、上述した通り、高輝度部の明るさa(面P2からの各円錐C1〜C3の突出高さ)、高輝度部の面積b(各円錐C1〜C3の、面P2において占める面積)、及び高輝度部の数(面P2から突出する円錐C1〜C3の数;この図10では3個)などが挙げられる。
【0097】
いま、測定エリア72の撮影画像において、面P2を超過する高輝度部に明るさを持つ、繋がった画素のまとまりを「粒子」と定義する。図10に示した模式図では、円錐C1〜C3のそれぞれが「粒子」となる。すると、これら各粒子において、高輝度部の明るさaの値、面積bの値を求めることができるが、これら明るさa及び面積bが粒子感を評価する評価パラメータとして扱えるようになる。
【0098】
図11は、図10の模式図を二次元平面に置換した模式図である。図11では、「粒子」が5個(円錐C1〜C5)ある場合を示している。図11に基づき、上記の点を詳述すると、この場合、各円錐C1〜C5について、高輝度部の明るさa1〜a5の値、面積b1〜b5の値をそれぞれ評価パラメータとして取得することができる。そして、各粒子の高輝度部の明るさa1〜a5につき統計処理を行うことで、高輝度部明るさの平均値、高輝度部明るさの標準偏差などを求めることが可能となる。
【0099】
同様に、各粒子の高輝度部の面積b1〜b5につき統計処理を行うことで、高輝度部面積の平均値、高輝度部明るさの標準偏差などを求めることが可能となる。さらに、測定エリア72内に存在する粒子の数をカウントすることで、高輝度部の総粒子数、単位面積当たりの粒子数を求めることができるようになる。このような統計処理値は、より端的に粒子感を評価する評価パラメータとして扱うことができる。
【0100】
上記のように、高輝度部明るさ及び高輝度部面積等につき、統計処理を行い、その平均値だけでなく標準偏差を求めると、粒子感評価において有利となる。すなわち、所定の領域内の画像を高輝度部の明るさや面積の平均値のみで評価すると、個々の粒子の明るさや面積のばらつきに起因する粒子感の相違を定量的に計測できなくなる。図12(a),(b)は、上記で定義された「粒子」を、面P2上において二値化して示した平面図であり、黒部分が高輝度の円錐Cn又は円錐Cm部分である。
【0101】
図12(a)と(b)とを比較すると、両者の粒子の数及び粒子面積の平均値は同一であるが、個々の粒子の面積が異なるため、目視感(粒子感)としては明らかに相違するものとなる。つまり、図12(a)では、個々の粒子の面積がほぼ一定であるため、略同一輝度の高輝度部が均一に分散されている粒子感となるが、図12(b)では、個々の粒子の面積ばらつきが大きく、かなり異なる粒子感となることは明らかである。メタリック塗装板では、微小な光輝材が多量に分散配合されることから上記「粒子」の数が非常に多いものとなり、個々の粒子の明るさや面積は正規分布に近い分布をする。従って、平均値と標準偏差(ばらつき)を求めることにより、メタリック塗装板における「粒子」の状態を正確に把握することができる。
【0102】
このようにメタリック塗装面の目視感(粒子感)は、撮像手段1で取得された所定の測定エリアについての二次元画像を、所定の輝度閾値(平均明るさ)で二値化して二値化画像を生成し、前記二値化画像における高輝度部分の明るさ或いは高輝度部分の面積の平均値と、前記測定エリア内におけるばらつきとから定量的に評価することができる。この他、例えば高輝度部分の明るさと高輝度部分の面積との積分値の平均値及びばらつきとからでも、同様に粒子感を定量的に評価することができる。なお、人間の目で見る粒子感にこだわらない場合は、撮像手段1で取得された二次元画像につき、前記空間デジタルフィルタ32でフィルタ処理を施さない(スルー処理)画像について、上述の平均値とばらつきを求める手法により、メタリック塗装面の表面反射特性について評価することもできる。
【0103】
図6に戻って、前記特徴量演算部41は、上述のような手法で評価パラメータを抽出するべく、平均明るさ算出部411、二値化処理部412、評価パラメータ抽出部413及び統計処理部414を備えている。
【0104】
平均明るさ算出部411は、画像処理手段3から入力された画像処理後の画像について、その平均明るさを算出する。例えば、前記画像について輝度ヒストグラムを作成し、その平均値を求める演算処理が為される。これは、上記の説明における面P2の明るさレベル(二値化のための閾値レベル)を求めるための処理である。
【0105】
二値化処理部412は、平均明るさ算出部411で求められた平均明るさを閾値として、画像処理後の画像を白・黒の二値領域に区分けする処理を行う。これにより、前記画像において、図12に示すように、高輝度部分と低輝度部分が区画され、上記「粒子」が検出されるようになる。
【0106】
評価パラメータ抽出部413は、前記二値化処理部412で検出された高輝度部分において、粒子感を評価するための所定の評価パラメータを抽出する。すなわち、先に図11に基づいて説明したように、各円錐C1〜C5について、例えば高輝度部の明るさa1〜a5の値、面積b1〜b5の値及び測定エリアにおける粒子の数等を、それぞれ評価パラメータとして求める。
【0107】
統計処理部414は、前記評価パラメータ抽出部413で求められた評価パラメータを用いて、所定の統計処理を行い、粒子感を定量的に評価する評価パラメータを演算により求める機能部である。例えば、評価パラメータ抽出部413で求められた高輝度部の明るさa1〜a5の値、及び面積b1〜b5の値などを用い、その平均値と標準偏差とを演算により求める。この統計処理部414で求められる評価パラメータは、人間の目の解像度に合わせた画像から抽出された特徴量に基づいたものであり、測定対象とされたメタリック塗装表面71の目視感(粒子感)を定量的に表したものとなる。
【0108】
粒子感指数演算部42は、上記特徴量演算部41で抽出された評価パラメータに基づいて、粒子感に関する評価指数を求める演算を行う。すなわち、粒子感指数演算部42は、統計処理部414で求められる評価パラメータ及び/又は評価パラメータ抽出部413で求められた高輝度部の明るさa1〜a5の値、及び面積b1〜b5の値などを使用して、粒子感を数値的に評価するための評価指数を自動計算する。
【0109】
図13は、実際にメタリック塗装板37枚について撮影した画像から抽出した高輝度部明るさの平均値と、前記メタリック塗装板を目視で評価して評価した粒子感との相関を示すグラフ図である。このグラフ図から明らかなように、目視による粒子感と高輝度部明るさの平均値とは高い相関性を有していることがわかる。従って、粒子感指数演算部42において、例えば図13に示した直線の関数
y=0.9011x+0.1388
(但し、xは目視粒子感指数、yはピーク部明るさ平均)
を予め格納しておき、該関数を用いて、前記統計処理部414にて求められた高輝度部明るさの平均値から、目視感に関する評価指数を導出させることが可能となる。
【0110】
さらに、高輝度部明るさの平均値と標準偏差、及び高輝度部面積の平均値と標準偏差についての評価パラメータ等を組み合わせることで、粒子感について一層目視との相関性が高い評価指数を求めることも可能である。また、メタリック塗装板についての他の目視感、例えばキラキラ感や深み感などについても、予め評価関数を求めておくか、所定のルックアップテーブルを設定しておくことにより、特徴量演算部41において抽出される評価パラメータに基づいて評価指数を定量的に導出することができる。
【0111】
角度特性演算部43は、メタリック塗装面の粒子感の評価にあたり、粒子感の角度変化を定量化して評価するための機能部であって、角度特性パラメータ算出部431と、総合評価指数算出部432とを備えている。
【0112】
メタリック塗装面の粒子感は、その観察角度によって異なるものとなる。一般に、メタリック塗装面に照明光を照射した場合において、その正反射方向付近の方向から観察すると粒子感が高く感じられ(光輝材が良く輝いているように見える)、前記正反射方向から遠ざかるにつれて、粒子感が低く感じられる(光輝材の輝きが目立たなくなる)。すなわち図14に示すように、観察角度が試料の法線方向である場合、照明方向を基準に変化させると、人間の感じる粒子感はグラフのように変化する。このような粒子感の角度変化傾向は、どのような光輝材が含有されているメタリック塗装面であっても概ね共通しているのであるが、図14の試料1、試料2の曲線で示しているように、粒子感の変化度合いが光輝材の形状、種類、ベース塗料の種類等により異なるものとなる。例えば、正反射方向から大きく離れてもあまり粒子感が変化しないメタリック塗装面や、逆に正反射方向から少し離れるだけで粒子感が大きく変化するメタリック塗装面等が存在する。
【0113】
角度特性演算部43は、このような事情に鑑み、このようなメタリック塗装面に対する観察角度の変化に伴う粒子感の変化を定量的に評価するための演算を行うものである。従って、角度特性演算部43を機能させる場合、撮像手段1において、照明角度を異ならせた少なくとも2つの二次元画像を取得させる必要がある。すなわち、少なくとも図3に示した反射光測定装置10にて、測定対象となるメタリック塗装表面71の測定エリア72に照明光学系11のいずれかにて第1の照明角度(例えば対法線角15°の第1の照明系11aを使用)で照明光を照射し、その反射光を撮像素子15で撮像して第1の二次元画像を取得させると共に、前記第1の照明角度とは異なる第2の照明角度(例えば対法線角75°の第3の照明系11cを使用)で照明光を同じ測定エリア72に照射し、その反射光を撮像素子15で撮像して前記測定エリアについての第2の二次元画像を取得させる必要がある。
【0114】
そして、上記第1の二次元画像及び第2の二次元画像について、それぞれ画像処理手段3により人間の目の解像度に合わせる画像処理を行い、特徴量演算部41にて所定の評価パラメータを抽出させる。その上で、前記第1の二次元画像及び第2の二次元画像についての粒子感を、粒子感指数演算部42にてそれぞれ第1の評価指数、第2の評価指数として求めておく。
【0115】
角度特性パラメータ算出部431は、例えば前記第1の評価指数から第2の評価指数への変化量を求めたり、前記第1の評価指数から第2の評価指数への変化率を求めたりすることで、観察角度の変化に伴う粒子感の変化を定量的に評価する角度特性パラメータを求める。前者の変化量の場合、粒子感の角度変化が、粒子感評価のベースとなる前記第1及び第2の評価指数の、絶対量の相違として定量評価される。また、後者の変化率の場合、粒子感の角度変化が、正反射方向を異ならせたことにより粒子感の評価指数がどの程度変化したかという変化率として定量評価されるようになる。
【0116】
また、第1の照明角度(対法線角15°の第1の照明系11a)及び第2の照明角度(対法線角75°の第3の照明系11c)と、これらの中間にあたる第3の照明角度(対法線角45°の第2の照明系11b)とで照明光をそれぞれ前記測定エリア72に照射させ、その反射光を撮像素子15で各々撮像して前記測定エリアについての第1〜第3の二次元画像を取得させ、これら3つの二次元画像の特徴量に基づいて、角度特性パラメータを求めるようにすることもできる。この場合、例えば観察角度に対する粒子感指数の変化率を角度特性パラメータ算出部431で求めるようにする。すなわち、次の(2)式に基づいて、角度特性パラメータを求めることができる。
(第1の評価指数[15°]−第2の評価指数[75°])/第3の評価指数[45°]
・・・(2)
【0117】
或いは、目視で感じる粒子感の角度変化特性と計算値とを一致させるための定数a,bが予め求められている場合には、次の(3)式に基づいて、角度特性パラメータを求めることができる。
(第1の評価指数[15°]−第2の評価指数[75°])a/(第3の評価指数[45°])b
・・・(3)
この場合、目視で感じる粒子感の角度変化特性と計算値とを一致させるための定数a,bが用いられるので、第1〜第3の評価指数に基づき、粒子感を直接的に算出することができる。なお、前記定数a,bは、目視で感じる粒子感の角度変化特性と計算値とが一致するよう実験的に求められる定数である。
【0118】
総合評価指数算出部432は、前記第1の評価指数〜第3の評価指数の全て、或いはいずれか2つを用いて、これらを合成することで粒子感の角度特性を統合評価指数として求める機能部である。前述の通り、粒子感はその観察角度によって異なるが、人間には観察角度の相違による粒子感を総合的に判断して、一つの総合的な粒子感を導出する視覚能力が備えられている。これは、観察角度によって変わる粒子感を、何らかの脳内処理で平均化して総合的に粒子感を判定しているものと考えられる。総合評価指数算出部432は、粒子感指数演算部42で求められる複数の評価指数を合成した統合評価指数を求めるので、前記脳内処理に近似した総合的な粒子感を定量的な指数として求めることが可能となる。
【0119】
前記総合評価指数算出部432により統合評価指数を求める演算処理は、上記第1の評価指数〜第3の評価指数が得られている場合、例えば次の(4)式に基づいて求めることができる。なお、定数c,d,eは、目視で感じる粒子感の角度変化特性と計算値とが一致するよう実験的に求められる定数である。
c×第1の評価指数[15°]+d×第2の評価指数[75°]+e×第3の評価指数[45°]
・・・(4)
【0120】
このような角度特性演算部43を具備させることにより、メタリック塗装面の粒子感の評価にあたり、粒子感の角度変化を定量化して評価できるようになる。すなわち、光輝材の形状、種類、ベース塗料の種類等により異なるメタリック塗装面の粒子感の角度変化度合いを、定量的なデータとして取得できるので、メタリック塗装面の品質管理等を高精度に行えるようになる。また、角度依存性がある粒子感を一つの評価指数(上記角度特性パラメータ算出部431若しくは総合評価指数算出部432で求められる評価指数)で管理することが可能となるので、データ管理を簡素化することができる。
【0121】
光輝材評価演算部44は、操作部5にて前記スルー処理が指定された場合において、撮像手段1により取得された二次元画像に基づいて、メタリック塗膜中702に含有されている光輝材703(図4参照)自体に関する評価パラメータを抽出する。光輝材評価演算部44は、フィルタ処理されていない高解像度の画像から抽出される特徴量に基づいて、光輝材自体の明るさ(反射率)、大きさ、密度等を演算により求める。このような評価パラメータの導出方法は、各種画像処理技術を適用することができ、例えば前記特徴量演算部41で行われるような二値化処理と同様な処理方法を適用できる。この場合、光輝材評価演算部44の機能を、特徴量演算部41に兼用させるようにしても良い。
【0122】
メモリ部45は、RAM等からなり、演算手段4の各部、すなわち前記特徴量演算部41、粒子感指数演算部42、角度特性演算部43及び光輝材評価演算部44で求められた評価パラメータや評価指数が一時的に格納される。
【0123】
出力/表示制御部46は、演算手段4により求められた粒子感に関する評価パラメータや評価指数、光輝材の形状情報等を、所定の形式に変換して出力部61へ出力させたり、表示部62へ表示させたりするための制御を行う。
【0124】
(動作フローの説明)
以上の通り構成されたメタリック塗装面評価装置Sの動作について、図15〜図19に示すフローチャートに基づき、図2、図5、図6のブロック図等を参照しながら説明する。図15は、当該メタリック塗装面評価装置Sの全体的な動作フローを示すフローチャートである。先ず、撮像手段1により、測定対象となるメタリック塗装表面71の所定の測定エリア72(図4参照)についての二次元画像が取得される(ステップS1)。
【0125】
そして、撮像手段1により取得された二次元画像を用いて、粒子感(目視感)の測定を行うのか、或いは光輝材自体を評価する光輝材測定を行うのかが選択される(ステップS2)。この選択は、ユーザがいずれの処理を望むかに依存し、例えば操作部5による所定の指令処理により行われる。ステップS2で粒子感測定が選択された場合、画像処理手段3により前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理が行われ、演算手段4の特徴量演算部41により前記処理画像の特徴量に基づいて粒子感(目視感)に関する評価パラメータが抽出されると共に、粒子感指数演算部42により粒子感を定量的に評価するための粒子感指数を求める演算処理が実行される(ステップS3)。
【0126】
これに続いて、前記ステップS3で求められた粒子感指数を複数用いて、粒子感の角度特性を測定するかが確認される(ステップS4)。角度特性の測定を行う場合(ステップS4でYes)、演算手段の角度特性演算部43により、粒子感の角度変化を定量化して評価するための演算処理が実行される。なお、この角度測定処理を行う場合は、撮像手段1により、同一の試料について照明角度を異ならせた少なくとも2つの二次元画像が取得される。一方、角度特性の測定を行わない場合(ステップS4でNo)は、必要に応じて出力部61や表示部62に測定結果が出力又は表示され、処理が終了する。
【0127】
なお、上記ステップS2において光輝材測定が選択された場合、画像処理手段3では所定のフィルタ処理が実行されず(スルー処理)、撮像手段1により取得された二次元画像そのものに基づいて、光輝材評価演算部44により光輝材自体の評価パラメータが求められる(ステップS6)。その後、必要に応じて出力部61や表示部62に光輝材測定の結果が出力又は表示され、処理が終了する。
【0128】
図16は、図15のフローチャートにおける、二次元画像の取得ステップ(ステップS1)の詳細を示すフローチャートである。準備作業として、例えば図3に示すような反射光測定装置10を用い、その測定開口102に測定対象とされるメタリック塗装板7をセットする作業が予め行われる。そして、反射光測定装置10の照明光学系11に具備されている第1〜第3の照明系11a〜11cのうち、いずれの照明系を使用するかが選択される(ステップS11)。
【0129】
通常、粒子感は正反射方向の目視で評価されることから、複数のメタリック塗装板試料について粒子感を相対的に評価する場合は、対法線角15°の第1の照明系11aのみが使用対象となり、これが選択される。一方、一つのメタリック塗装板試料について、粒子感の角度特性を評価する場合(前記ステップS5を実行する場合)は、第1〜第3の照明系11a〜11cの全て、或いはいずれか二つが使用対象とされ、そのうちのいずれかの照明系が選択される。この選択は、ユーザにより操作部5から測定制御部25に対して行われる。
【0130】
続くステップS12〜ステップS14は、測定するメタリック塗装表面の反射率に応じたシャッタスピードを求め、撮像素子の適正な露光量を設定するための処理である。ステップS11で選択された照明系の光源を点灯させ(ステップS12)、測定対象とされたメタリック塗装板からの表面反射光を撮像素子15で撮像する仮撮像が行われる(ステップS13)。この際、シャッタ制御部22(図5参照)は、シャッタ17のシャッタスピードを、デフォルトの固定的なシャッタスピードに設定する。
【0131】
そして、ステップS13の仮撮像で得られた画像から求められる反射光量に基づいて、シャッタスピード判定部24により、測定対象とされたメタリック塗装板を撮像するにあたり、撮像素子15の出力が飽和しないようなシャッタスピードが算出される(ステップS14)。このように算出されたシャッタスピードは、測定制御部25を介してシャッタ制御部22へ設定される。
【0132】
しかる後、前記ステップS11で選択された照明系を用い、前記ステップS14で算出されたシャッタスピードにて、測定対象とされたメタリック塗装板の本撮像が行われる(ステップS15)。この動作により、メタリック塗装表面71の測定エリア72(図4参照)についての二次元画像が、撮像素子15により撮像される。撮像素子15から出力されるアナログデータは信号処理回路16へ送られ、該信号処理回路16において、増幅、デジタル変換処理が為されると共に、明るさ補正部163によりシャッタスピード依存性を平滑化するために、シャッタスピードに応じた明るさ補正が行われる(ステップS16)。この明るさ補正後の二次元画像データは、画像処理手段3へ向けて出力される。その後、当該照明系の光源が消灯される(ステップS17)。
【0133】
そして、同一のメタリック塗装板試料について、異なる照明角度で撮像するかが確認され(ステップS18)、例えば粒子感の角度特性を測定する場合、単に照明角度を異ならせた粒子感指数を求める場合には(ステップS18でYes)、ステップS11に戻って別の照明系について同様な処理が実行される。一方、異なる照明角度で撮像しない場合は(ステップS18でNo)、処理が完了する。
【0134】
次に、図17は、図15のフローチャートにおける、粒子感指数演算処理のステップ(ステップS3)の詳細を示すフローチャートである。ここでは、先ず画像処理手段3のフィルタ特性設定部33により、空間デジタルフィルタ32のフィルタ特性が設定される(ステップS31)。このフィルタ特性の設定は、粒子感を求めるべき測定対象面からの観察距離、塗装ムラの除去などのオーダーに応じ(ユーザによる操作部5からの指令信号)、フィルタ特性記憶部34が活用されて設定される。なお、空間デジタルフィルタ32のフィルタ特性を固定化している場合は、このステップ31はスキップされる。
【0135】
そして、所定のフィルタ特性が設定された空間デジタルフィルタ32により、撮像手段1から出力された(高解像度の)二次元画像を、人間の目の解像度に合わせるフィルタ処理が実行される(ステップS32)。これに続き、ガンマ補正部35により、空間デジタルフィルタ32から出力される二次元画像の明るさを、人間が知覚する明るさに変換する画像処理が行われる(ステップS33)。以上が、画像処理手段3における処理である。このような処理が為された画像データは、演算手段4へ出力される。
【0136】
演算手段4では、先ず特徴量演算部41の平均明るさ算出部411により、画像処理手段3から与えられた画像処理後の画像について、その平均明るさが算出される(ステップS34)。そして二値化処理部412により、前記平均明るさ算出部411で求められた平均明るさを閾値として、前記画像を高輝度領域と低輝度領域との二値領域に区分けする二値化処理が行われる(ステップS35)。これは、当該画像の特徴量を把握するための処理でもある。
【0137】
さらに、評価パラメータ抽出部413により、前記二値化処理部412で検出された高輝度部分において、粒子感を評価するための所定の評価パラメータが抽出される(ステップS36)。この評価パラメータは、上述した通り、例えば高輝度部の明るさの値、面積の値及び測定エリアにおける粒子の数等である。
【0138】
そして、ステップS36で求められた評価パラメータを用い、統計処理部414により所定の統計処理が行われ、粒子感を定量的に評価するための評価パラメータが演算により求められる(ステップS37)。ここでの評価パラメータは、例えば前記高輝度部の明るさの値、面積の値の平均値と、そのばらつき(標準偏差)等である。
【0139】
前記ステップS37の処理により、粒子感を間接的に評価する評価パラメータは求められたことになるが、より粒子感を直接的に評価するために、粒子感指数演算部42により、特徴量演算部41で抽出された各種評価パラメータに基づいて、粒子感に関する評価指数を求める演算が行われる(ステップS38)。これにより、測定対象とされたメタリック塗装表面71の光学特性、特に粒子感を定量的に評価する評価指数が得られる。
【0140】
さらに図18は、図15のフローチャートにおける、角度特性演算処理のステップ(ステップS5)の詳細を示すフローチャートである。この場合、撮像手段1により同一の試料について、照明角度を異ならせた少なくとも2つの二次元画像が取得され、それぞれの画像に基づいた粒子感指数が粒子感指数演算部42により求められていることが前提となる。
【0141】
先ず、角度特性演算部43の角度特性パラメータ算出部431において、前記粒子感指数を用いて粒子感の角度変化を定量評価するための角度特性評価式が設定される(ステップS51)。この角度特性評価式は、例えば照明角度を異ならせた2つの画像を用いる場合は、それぞれの画像について粒子感指数演算部42で第1の評価指数及び第2の評価指数を求め、第1の評価指数から第2の評価指数への変化量を求めたり、前記第1の評価指数から第2の評価指数への変化率を求めたりする算術式となる。また、照明角度を異ならせた3つの画像について、第1の評価指数〜第3の評価指数が粒子感指数演算部42で求められている場合は、例えば観察角度に対する粒子感指数の変化率を求めるための上記(2)式又は(3)式のいずれかが設定される。
【0142】
その後、粒子感指数演算部42で求められている複数の粒子感指数が角度特性パラメータ算出部431に取得され(ステップS52)、ステップS51で設定された角度特性評価式に基づいて角度特性パラメータが算出される(ステップS53)。これにより、メタリック塗装面の粒子感の角度変化を定量化して評価するパラメータが求められる。
【0143】
これに続いて、総合評価指数算出部432により粒子感指数演算部42で求められている複数の粒子感指数を用いて、粒子感の角度特性を統合評価指数として求めるか否かが確認される(ステップS54)。前記統合評価指数を求めない場合は(ステップS54でNo)、角度特性演算処理は終了する。一方、統合評価指数を求める場合は、総合評価指数算出部432に所定の総合評価式が設定される(ステップS56)。この総合評価式は、例えば上掲の(4)式のような演算式である。
【0144】
そして、上記ステップS52で取得された複数の粒子感指数を、前記ステップS56で設定された総合評価式に当てはめることで、総合評価指数算出部432により、複数の粒子感指数を合成した角度特性の統合評価指数が求められる(ステップS57)。これにより、人間の脳内処理に近似した総合的な粒子感が、定量的な指数として求められることとなる。
【0145】
図19は、図15のフローチャートにおける、光輝材評価演算処理のステップ(ステップS6)の詳細を示すフローチャートである。この場合、先ず撮像手段1で取得された二次元画像について、人間の目の解像度に合わせる画像処理の実行は不要であることから、空間デジタルフィルタ32でフィルタ処理がなされないよう、操作部5によりフィルタ特性設定部33にスルー処理指定が為される(ステップS61)。
【0146】
この非フィルタ処理画像は、演算手段4の光輝材評価演算部44へ取り込まれる。そして、光輝材評価演算部44により、フィルタ処理されていない高解像度の画像から特徴量が抽出され(ステップS62)、当該特徴量に基づいて、光輝材自体の明るさ(反射率)、大きさ、密度等の、光輝材自体の評価パラメータが演算により求められる(ステップS63)。以上が、本実施形態にかかるメタリック塗装面評価装置Sの動作フローである。
【0147】
以上、本発明の実施形態を、主にメタリック塗装面における粒子感を評価するメタリック塗装面評価装置Sを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光輝材が含まれていない塗装面の目視感評価や、建材、化粧板、その他各種物品の目視感評価に適用することができる。
【0148】
また、上述のメタリック塗装面評価装置Sとしてではなく、該メタリック塗装面評価装置Sが行う処理を実行する動作プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。若しくは、図3に示すパーソナルコンピュータPCのハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】人間の目の空間周波数に対するコントラスト感度を示すグラフ図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるメタリック塗装面評価装置Sの全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】実施形態にかかるメタリック塗装面評価装置Sのハード構成の一例を示す構成図である。
【図4】測定対象となるメタリック塗装板の斜視図及びその部分拡大図である。
【図5】撮像手段及び測定制御手段の電気的な機能構成を示すブロック図である。
【図6】画像処理手段及び演算手段の電気的な機能構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態にかかるメタリック塗装面評価装置Sにおいて処理対処とされる画像を示す写真形式の図であり、(a)は撮像手段からの出力画像、(b)はフィルタ処理後の画像、(c)はガンマ補正後の画像をそれぞれ示している。
【図8】空間デジタルフィルタに設定されるフィルタ特性についての説明図であり、(a)は人間の目のコントラスト感度についてのグラフ図、(b)は基本的なフィルタ特性を示すグラフ図、(c)は観察距離を考慮したフィルタ特性を示すグラフ図である。
【図9】塗装ムラを除去するためのフィルタ特性についての説明図である。
【図10】図4に示したメタリック塗装表面71を撮影した画像を模式的に示す図である。
【図11】図10の模式図を二次元平面に置換した模式図である。
【図12】定義された「粒子」を、面P2上において二値化して示した平面図である。
【図13】実際に複数のメタリック塗装板について撮影した画像から抽出した高輝度部明るさの平均値と、前記メタリック塗装板を目視で評価して評価した粒子感との相関を示すグラフ図である。
【図14】粒子感の角度依存性を示すグラフ図である。
【図15】実施形態にかかるメタリック塗装面評価装置Sの全体的な動作フローを示すフローチャートである。
【図16】図15のフローチャートにおける、二次元画像の取得ステップ(ステップS1)の詳細を示すフローチャートである。
【図17】図15のフローチャートにおける、粒子感指数演算処理のステップ(ステップS3)の詳細を示すフローチャートである。
【図18】図15のフローチャートにおける、角度特性演算処理のステップ(ステップS5)の詳細を示すフローチャートである。
【図19】図15のフローチャートにおける、光輝材評価演算処理のステップ(ステップS6)の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0150】
1 撮像手段
10 反射光測定装置
11 照明光学系
14 受光光学系
15 撮像素子(測定対象物の光像を光電変換する手段)
163 明るさ補正部
2 測定制御手段
25 測定制御部
3 画像処理手段
32 空間デジタルフィルタ(フィルタ処理を行う手段)
33 フィルタ特性設定部(フィルタ特性設定手段)
34 フィルタ特性記憶部
35 ガンマ補正部(ガンマ補正処理手段)
4 演算手段
41 特徴量演算部(演算手段)
42 粒子感指数演算部(粒子感指数演算手段;心理物理量演算手段)
43 角度特性演算部
44 光輝材評価演算部(光輝材評価手段)
5 操作部(フィルタ特性指定手段)
7 メタリック塗装板
71 メタリック塗装表面(測定対象物)
72 測定エリア
702 メタリック塗膜
703 光輝材
S メタリック塗装面評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の光像を光電変換して前記測定対象物の二次元画像を取得し、
前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行い、
前記画像処理後の画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出することを特徴とする目視感評価方法。
【請求項2】
前記画像処理が、取得された二次元画像の解像度を、人間の目の解像度に合わせるフィルタ処理であることを特徴とする請求項1記載の目視感評価方法。
【請求項3】
前記フィルタ処理が、取得された二次元画像に対し、空間周波数に対する人間の目のコントラスト感度に近似させたバンドパスフィルタをかける処理であることを特徴とする請求項2記載の目視感評価方法。
【請求項4】
前記フィルタ処理が、取得された二次元画像に対し、空間周波数に対する人間の目のコントラスト感度における高周波部の特性に近似させたローパスフィルタをかける処理であることを特徴とする請求項2記載の目視感評価方法。
【請求項5】
前記画像の特徴量が、前記画像処理後の画像における下記(1)〜(3)からなる群より選ばれる少なくとも1以上の特徴量であることを特徴とする請求項1記載の目視感評価方法。
(1)画像の明るさ及び明るさの分布
(2)画像を所定の閾値で二値化したときの、黒部分及び/又は白部分の面積
(3)画像を所定の閾値で二値化したときの、独立的な黒部分及び/又は白部分の数
【請求項6】
前記評価パラメータが、前記測定対象物に含まれる粒子からの反射光が人間の目視感に与える影響を評価するための評価パラメータであることを特徴とする請求項1記載の目視感評価方法。
【請求項7】
前記画像処理として、取得された画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理と共に、該画像の明るさを人間が知覚する明るさに変換する画像処理が行われることを特徴とする請求項1記載の目視感評価方法。
【請求項8】
前記明るさを変換する画像処理が、取得された画像の明るさを、その明るさが増加するほど出力が非線形的に圧縮されるようにして、明るさのスケールを人間の感度に合わせる画像処理であることを特徴とする請求項7記載の目視感評価方法。
【請求項9】
前記測定対象物が、メタリック塗装面であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の目視感評価方法。
【請求項10】
前記画像処理において、メタリック塗装面の塗装ムラを除去する画像処理をさらに施すことを特徴とする請求項9記載の目視感評価方法。
【請求項11】
測定対象物の光像を光電変換して前記測定対象物の二次元画像を取得する撮像手段と、
少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行うことで所定の処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出する演算手段とを具備することを特徴とする目視感評価システム。
【請求項12】
前記画像処理手段は、前記撮像手段により取得された二次元画像の解像度を、人間の目の解像度に合わせるための空間デジタルフィルタを備えることを特徴とする請求項11記載の目視感評価システム。
【請求項13】
前記空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に指定するフィルタ特性指定手段と、
前記フィルタ特性指定手段により指定されたフィルタ特性に前記空間デジタルフィルタの特性を設定するフィルタ特性設定手段とを具備することを特徴とする請求項12記載の目視感評価システム。
【請求項14】
前記画像処理手段が、前記撮像手段により取得された二次元画像の明るさを人間が知覚する明るさに変換するガンマ補正処理手段をさらに具備することを特徴とする請求項11記載の目視感評価システム。
【請求項15】
前記演算手段により抽出された評価パラメータに基づいて、人間の目視感に関する評価指数を求める心理物理量演算手段を備えることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の目視感評価システム。
【請求項16】
メタリック塗装面に含まれる光輝材からの反射光が前記メタリック塗装面に対する人間の目視感に与える影響である粒子感を定量的に評価するためのメタリック塗装面評価装置であって、
測定対象となるメタリック塗装面の所定の測定エリアに照明光を照射し、その反射光を光電変換して前記測定エリアの二次元画像を取得する撮像手段と、
少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行うことで所定の処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出する演算手段とを具備することを特徴とするメタリック塗装面評価装置。
【請求項17】
前記画像処理手段は、前記撮像手段により取得された二次元画像の解像度を、人間の目の解像度に合わせるための空間デジタルフィルタを備え、さらに
前記空間デジタルフィルタの特性を任意の特性に指定するフィルタ特性指定手段と、
前記フィルタ特性指定手段により指定されたフィルタ特性に前記空間デジタルフィルタの特性を設定するフィルタ特性設定手段とを有することを特徴とする請求項16記載のメタリック塗装面評価装置。
【請求項18】
前記フィルタ特性設定手段は、前記メタリック塗装面の塗装ムラに起因する低周波ムラを除去可能なフィルタ特性が設定可能とされていることを特徴とする請求項17記載のメタリック塗装面評価装置。
【請求項19】
前記フィルタ特性設定手段は、前記メタリック塗装面の観察距離に関連付けたフィルタ特性が設定可能とされていることを特徴とする請求項17記載のメタリック塗装面評価装置。
【請求項20】
前記フィルタ特性指定手段は、前記空間デジタルフィルタによるフィルタ処理を実行させないスルー処理が指定可能とされており、
前記スルー処理が指定された場合において、前記撮像手段により取得された二次元画像に基づいて、光輝材自体に関する評価パラメータを抽出する光輝材評価手段を具備することを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載のメタリック塗装面評価装置。
【請求項21】
前記演算手段により抽出された評価パラメータに基づいて、前記粒子感に関する評価指数を求める粒子感指数演算手段を備えることを特徴とする請求項16〜20のいずれかに記載のメタリック塗装面評価装置。
【請求項22】
所定の画像処理手段及び演算手段を備えるメタリック塗装面評価装置を動作させるためのプログラムであって、
測定対象となるメタリック塗装面における所定の測定エリアの光像を光電変換して得られた二次元画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、
前記画像処理手段に、少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行わせ所定の処理画像を生成させる画像処理ステップと、
前記演算手段に、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出させる演算ステップとを実行させることを特徴とするメタリック塗装面評価装置の動作プログラム。
【請求項23】
所定の撮像手段、画像処理手段及び演算手段を備えるメタリック塗装面評価装置を動作させるためのプログラムであって、
前記撮像手段に、測定対象となるメタリック塗装面の所定の測定エリアに照明光を照射させ、その反射光を光電変換して前記測定エリアの二次元画像を取得させる撮像ステップと、
前記二次元画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、
前記画像処理手段に、少なくとも前記画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行わせ所定の処理画像を生成させる画像処理ステップと、
前記演算手段に、前記処理画像の特徴量に基づいて、人間の目視感に関する評価パラメータを抽出させる演算ステップとを実行させることを特徴とするメタリック塗装面評価装置の動作プログラム。
【請求項24】
測定対象となるメタリック塗装面における所定の測定エリアの光像を光電変換して得られた二次元画像に基づいて前記メタリック塗装面の目視感を評価する方法であって、
前記二次元画像を所定の輝度閾値で二値化して二値化画像を生成し、
前記二値化画像における高輝度部分について、下記(4)〜(6)からなる群より選ばれる少なくとも1以上の特徴量の平均値と、前記測定エリア内におけるばらつきとから、目視感に関する所定の評価値を求めることを特徴とするメタリック塗装面の目視感評価方法。
(4)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさ
(5)高輝度部分の面積
(6)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさと高輝度部分の面積との積分値

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−208333(P2006−208333A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24342(P2005−24342)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】