説明

直交する二面の三次元開口部の気密試験装置

【課題】
直交する二面の三次元開口部を有する気密性を必要とする被測定物に対し、信頼性の高い気密試験を実施する。
【解決手段】
第1ベース板(4)は、被測定物(1)のA面(2)の軌跡に合わせた紐状シール(6)とA面(2)とB面(3)の交点部分の端々をつなぐU字型の帯状シール(7)を取付ける構造とし、第2ベース板(5)は、被測定物(1)のB面(3)の軌跡と帯状シール(7)に合わせた円環状シール(8)を取付ける構造とする。シールは、弾性材を使うが、ベース板は、弾性材を使わない。気密試験時、被測定物(1)は、シールを変形させた後ベース板と接触することで内容積の変化を防ぎ、信頼性の高い気密試験を実施できる。また、帯状シール(7)に硬度の低い弾性材を使用することで、被測定物(1)のB面(3)部分の寸法誤差を吸収できることや、紐状シール(6)と帯状シール(7)のつなぎ部分の当たり形状を面から線にすることは、気密試験に有効です。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交する二面の三次元開口部を有する品物において、気密性を向上させるシール技術、特に気密試験に関するものです。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示す直交する二面の三次元開口部を有する被測定物(1)の気密試験は、図5に示すように被測定物のA面(2)の開口面を、弾性材で厚みの有る第1シール板(11)に載せ、その第1シール板(11)の端面(13)と被測定物のB面(3)の開口面とを同一面にして、その面に別の弾性材で厚みの有る第2シール板(12)を押し当て、供給口(10)より気体を供給し、一定の圧力を掛けて、被測定物の気密性を検査測定します。
【0003】
しかし、弾性材のシール板は、気密試験の実施時には被測定物に強く押し付けられる事で変形して、被測定物の内側に入り込んで内容積を変化させるため、正確な気密試験が出来ません。この事実に、気付かずに気密試験を実施している場合も有るようです。
【0004】
また被測定物を位置決めした場合、位置決め位置から被測定物のB面(3)までの寸法が、被測定物の許容公差範囲内で変化することで、第1シール板(11)の端面(13)と被測定物のB面(3)が、同一面にならないと考えられます。この時、安定した気密試験ができません。
【0005】
改善策としては、特許文献2の様に、直交する二面の一方(第1シール板側)に弾性材の紐状シールを使用し、その端末をベース板端面より少し出して、そこへ直交する面をシールする紐状シール(または、Oリング)を組み込んだベース板を圧着させて、連結した立体的なシール形状を形成して、被測定物の気密性を検査測定する方法も有ります。
【0006】
しかし、この場合も被測定物のクランプ完了後は、図6の様に紐状シールがシール取り付け溝内に収まらずに溝よりはみ出し、そのシールの上に被測定物が乗っている状態になります。このことは、被測定物の内容積を変化させることや、シール同志の圧着箇所を芯ズレさせることとなり、正確な気密試験ができません。
【0007】
また、この紐状シールを使用した場合も、被測定物を位置決めした場合では、ベース板の端面と被測定物の端面が同一面にならないことが考えられますので、安定した気密試験ができません。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平1−95646号公報
【特許文献2】特開平1−153870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の気密試験装置では、直交する二面の三次元開口部を有する被測定物に対する気密測定において、不確かな要素が多い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、直交する二面の三次元開口部を有する被測定物に対する気密試験装置での、シール変形による測定値の不確かさを解消するために、シール部を被測定物のA面(2)のシール部とB面(3)のシール部との構成とし、A面(2)のシール部は、B面(3)に近い部分の帯状シール(7)とそれ以外の部分の紐状シール(6)とに分割された弾性材のシールを使用して、B面(3)用のシール部は、B面(3)と帯状シール(7)を同時にシール出来る弾性材の円環状シール(8)を使用することを特徴とします。
【0011】
気密性を向上させる方法として、帯状シール(7)は、紐状シール(6)より硬度の低い弾性材を用いることや、紐状シール(6)は、端末部を板状として、帯状シール(7)のつなぎ部分を線接触する形状にすることは有効です。
【0012】
また、紐状シール(6)は、ベース板に加工されたシール取り付け用溝の底面や被測定物と線接触する形状にすることや、被測定物のクランプ完了時に、紐状シール(6)の取り付け用溝内に収容される形状とすることも、気密性を向上させることに有効です。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分割したシールは、直交する二面の三次元開口部を有する被測定物に対する気密試験において、シール変形による測定値への影響を無くせます。また、被測定物との当たりを面接触から線接触にすることで、狭い箇所に押し付け圧力を集中させる事ができるので、気密性を確保し易くなります。加えて、被測定物のシールする部分の寸法誤差も吸収できます。その結果、気密試験の測定値が、被測定物の本来の評価とみることができます。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の気密試験を示した説明図。
【図2】紐状シールと帯状シールのつなぎ部分示す図。
【図3】図2のA−A断面を示す図。 (a)被測定物を、セットしていない状態。 (b)被測定部の気密試験実施時の状態。
【図4】被測定物の一例を示す図。
【図5】従来の気密試験方法の一例を示す図。
【図6】従来の紐状シールを使用した気密試験時のシールの状態を示す図。
【図7】気密試験装置の一例を示す概略図。 (a)被測定物を、セットした状態。(気密試験実施前) (b)被測定物の気密試験実施時の状態。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の気密試験を示します。第1ベース板(4)には、紐状シール(6)と帯状シール(7)用の溝が掘ってある。第2ベース板(5)には、円環状シール(8)用の溝が掘ってある。ベース板には、弾性材を使用しない。
【0017】
紐状シール(6)は、被測定物(1)のA面(2)のシールしたい部分の軌跡に合わせて作られた、弾性材のシールです。帯状シール(7)は、被測定物(1)のA面(2)とB面(3)の交点部分のA面(2)側で、紐状シール(6)の端々をつなぐ様にU字型で作られた角断面の弾性材のシールです。円環状シール(8)は、被測定物(1)のB面(3)のシールしたい部分の軌跡と帯状シール(7)の形状に合わせて作られる弾性材のエンドレスのシールです。単純な軌跡の場合は、Oリングも利用できます。
【0018】
図7は、気密試験装置の概略を示します。気密試験の手順は、図7(a)の状態で被測定物(1)を第1ベース板(4)にセットし、第1シリンダ(16)を用いて被測定物(1)を第1ベース板(4)に押し当てます。この時、被測定物(1)は、第1ベース板(4)に対し、位置決めが必要です。次に、第2ベース板(5)を被測定物(1)のB面(3)へ第2シリンダ(17)を用いて押し当て、図7(b)のシール状態にします。最後に、供給口(10)よりテスト気体を入れて、気密試験を実施します。
【0019】
図2は、つなぎ部分の詳細を示します。紐状シール(6)の端末の板状部(9)と帯状シール(7)のつなぎ部分をわずかに寸法が異なる凸凹にして噛み合わせることで、シールの当たりを面から線にできます。紐状シール(6)は、図3に示すように断面形状の上下をR形状にすることで、ベース板に加工されたシール取り付け用溝底面や被測定物との当たりを線に出来ます。
【0020】
この時、紐状シールの取り付け用溝を、被測定物(1)のクランプ完了時に、紐状シールが完全に溝内に収容される形状とすることで、被測定物(1)が第1ベース板(4)に接触するので、気密試験時にシール変形による内容量変化の影響を受けなくなります。
【0021】
また、帯状シール(7)は、紐状シール(6)より硬度の低い弾性材を使用することで、被測定物(1)の位置決めからB面(3)部分の寸法誤差を吸収できます。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、直交する二面の三次元開口部を有する気密性を必要とする被測定物に対して、信頼性の高い気密試験を実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 被測定物
2 A面
3 B面
4 第1ベース板
5 第2ベース板
6 紐状シール
7 帯状シール
8 円環状シール
9 紐状シールの端末の板状部
10 テスト気体供給口
11 第1シール板(弾性材)
12 第2シール板(弾性材)
13 端面
14 従来の紐状シール
15 従来の紐状シール用ベース板
16 第1シリンダ
17 第2シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する二面の三次元開口部を有する被測定物に対する気密試験装置のシール部は、被測定物のA面のシール部と、B面のシール部から構成され、A面のシール部は、B面に近い部分の帯状シールとそれ以外の部分の紐状シールとに分割された弾性材のシールからなり、B面用のシール部は、B面と帯状シールを同時にシール出来る弾性材の円環状シールからなることを特徴とする気密試験装置。
【請求項2】
前記帯状シールは、紐状シールより硬度の低い弾性材にすることを特徴とする請求項1記載の気密試験装置。
【請求項3】
前記紐状シールは、端末部を板状にすることを特徴とする請求項1または2記載の気密試験装置。
【請求項4】
前記シールは、紐状シールと帯状シールのつなぎ部分を線接触する形状にすることを特徴とする請求項1、2または3記載の気密試験装置。
【請求項5】
前記紐状シールは、ベース板に加工されたシール取り付け用溝底面や被測定物と線接触する形状で、被測定物のクランプ完了時にシール取り付け用溝内に収まることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の気密試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−27250(P2011−27250A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263017(P2009−263017)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【特許番号】特許第4457273号(P4457273)
【特許公報発行日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(399029857)サンゼキカイ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】